ランス再び   作:メケネコ

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再びの出会い

 狂王、それは異世界に住まう恐ろしく強い存在。

 それはまさにその名の如く狂ったような強さを持つ者。

 ランスはその王を前にして苦戦を強いられていた。

「ぐっ…何だこいつは。滅茶苦茶強いぞ」

 ランスは狂王の攻撃を何とか受け流しながら呻く。

 狂王の攻撃は極単純なパンチなのだが、その威力が半端ではない。

 並のガードでは全く意味をなさない程の攻撃力で、その一撃はランスをして一瞬で冷や汗をかかせるほどだ。

 もしロッキーがこの場に居ても、それこそ一瞬の捨て駒にしかならない程に恐ろしい強さを持っていた。

 それは正に魔人級…いや、小細工が通じそうにない分魔人よりも性質が悪いかもしれない。

「グオオオオオオオオオ!!!」

 雄叫びを上げながら狂王はランスに向けて拳を放つ。

 炎に包まれたその体は非常に硬く、ランスの攻撃も殆ど堪えていない。

 ランスの剣は狂王に当たりはするが、その強固な肌と筋肉の前に弾かれてしまうのだ。

「この剣とランスの技を以てしても傷がつかんだと」

 スラルもランスの剣の中で驚愕するしかない。

 魔人ですらもランスの剣を受ければタダでは済まないというのに、この相手は極単純な防御力だけでランスの攻撃を受け止めているのだ。

 そこには防御も何も無いが、ごく単純な恐ろしい程の暴力があった。

 ランスはそれでも剣を当てていくが、特にダメージらしいダメージを与えているとは思えなかった。

「この…喰らえ!」

 お町が放った雷撃が直撃するが狂王には全く影響が無いように見える。

「グオオオオオオオ!」

 ランスは狂王の攻撃を受け流そうとするが、その威力はやはり桁違いだ。

 魔人レキシントンの戦い方が近いのかもしれないが、感情が全く見えない事が非常に恐ろしい。

 至極単純に硬くて強い、それがランスを苦しめていた。

「いい加減にくたばれ! ランスあたたたーーーっく!!!」

 ランスが隙を突いて必殺一撃を喰らわせる。

 相手の動きも早いので、刀も共に使った一撃は放てない。

 ただ、それでも普通に魔人すらも相手に出来る必殺技だ。

 だが、

「うおっ!?」

 ランスの一撃は頭から狂王を斬り裂くが、狂王はそんな事は意にも介さずにランスに強烈な一撃を叩きこむ。

「ランス!」

 スラルは悲鳴に近い声を上げる。

 ランスは狂王の一撃を喰らい吹き飛ばされるが、空中で姿勢を直すと何とか着地する。

「ランス! お前…大丈夫なのか!?」

 狂王の一撃がまともに入ったと思ったが、ランスはどうにか防いだようだ。

「柄で受け止めて飛んだだけだ。だが相当ヤバいぞ。あいつ、カミーラよりも性質が悪いぞ」

 まともに戦えばカミーラの方が厄介ではあるが、カミーラはカミーラで事情がある。

 しかし、相手にはそんな事情も全く無く、全力でランスを叩き潰してくる。

 そして間違いなく並の魔人よりも硬く、そして恐ろしく攻撃力が高い。

「レン無しでは厳しいか」

「あいつは俺様を守るのが仕事なのに何をやっとるんだ」

 やはりレンが居ないというのは非常に厳しい。

 彼女が居れば防御と回復が同時にこなせる上に、攻撃も出来るまさに万能の存在だ。

 だが、居ない者を事を言っても事態は何も解決しない。

「グオオオオオオオオ!!!」

 狂王は狂ったような咆哮を上げてランスに向けて拳を放つ。

 ランスはそれを避けながら狂王に攻撃を加えていく。

 お町はそんなランスを陰陽術を使ってサポートするが、それも限界が来る。

 ランスの息がだんだんと荒くなっていき、攻撃もどんどんと少なくなっていく。

(やはりランスだけでは厳しいか。ジルは魔王、それを良く分かっているはずだ。それなのに何故こんな奴をぶつける?)

 ジルがランスの事を強くしているのは明らかなのだが、流石に相手が悪すぎる。

 この存在は明らかに魔人級だ。

 流石のランスも1対1では魔人には敵わないのは理解しているだろう。

「あっ」

 動きが鈍って来たランスはバランスを崩す。

 そこを狂王の巨大な足が襲い掛かる。

 ランスが狂王の足に踏みつぶされそうになった時、その狂王の足をジルが支える。

「今日は…ここまでだ」

 ジルは狂王の足を掴むと、狂王が出てきた扉の中に狂王を押し返す。

 そして扉を封印すると、悠然とランスを見下ろす。

「まだまだ…だな」

 ジルの言葉にランスは何も答えない。

 相当に体力と神経を削られたようで、ランスも言い返す元気が無いのだ。

「ジル、何故こんな事をする。あいつは流石にランスとお町だけでは倒せる存在では無い。お前もそれを理解しているはずだ」

 スラルの言葉にもジルはただ唇を吊り上げるだけだ。

「何故、か。お前が…それを言うのか」

「…」

 ジルの言葉にスラルは何も言えない。

 スラルはジルの行動は何となくだが理解している。

 ランスがより強く、そして自分の剣を理解するためには強大な敵にぶつけるのが一番だ。

 そして何よりも必要なのはランスの本人のやる気だ。

 ランスはジルを取り戻すため、己の剣を磨く事で魔王と魔人に対抗しようとした。

 ジルはそれを同じことをやっているだけだ―――ケッセルリンクを人質にする事で。

「まあいい…来るがいい」

 ジルはランスを担ぎ、魔法でクリスタルに閉じ込められたケッセルリンクを動かす。

 ランスは何か文句を言おうとするが、疲労がたたったのかそのままジルの背中で眠る。

 ランスと同じように疲労が激しいお町だが、何とか立ちあがる。

 狂王の攻撃にさらされて無かったので、お町は体的には何とかなっている。

 ジルはそのまま歩き続けると、そこには謎の空間が広がっていた。

「ここは…」

 スラルは剣の中から周囲を見渡す。

 異空間で有る事は間違い無いが、そこにはランスの魔法ハウスに似た空間があった。

 凡そ魔王には似つかわしくない、リラックスした空気がそこにはあった。

 ジルは疲労で眠っているランスを備え付けてあるソファに寝かせ、その鎧を脱がせる。

 その手際はランスの奴隷であった頃と何も変わらない。

「…相変わらず重い。魔王の力をもってしてもな」

 ただ、ランスの持つ剣だけは相変わらず重いようで、その剣をソファに立てかける事しか出来ないようだった。

 お町も限界が来たのか、少し悩んだ様子を見せた後、ランスが眠っているソファに同じように眠り始めた。

「ジル…ここは何処だ」

「異空間…お前も元魔王ならば理解出来よう…」

 ランスとお町が眠ったからか、ジルはスラルの言葉に答える。

「フン…」

 ジルは指を軽く動かすと、スラルは自分に纏っていた重い空気が消えた事に気づく。

「ジル、お前は」

「お前の力は…必要だろう。それに…貴様とはこうして話してみたかった」

 その言葉にスラルは剣の中でため息をつくと、剣の中から姿を見せる。

 以前のように半透明の姿ではある。

 スラルは一度自分の手を軽く握りしめると、ランスに向かって魔法を放つ。

 それは黒い腕となって、ランスの懐から人形のようなものを取り出す。

 ランスが常に持っていたスラルの体―――IPボディだ。

「ソウルブリング」

 スラルが呪文を唱えるとIPボディがスラルの肉体を作り出し、スラルの魂がそれに入っていく。

 久々に感じる体の重さ、そして感じる空気にスラルは体を動かす。

 以前と全く同じで、体に違和感は全く無い。

 どうやらジルは完全に自分に対しての呪いを解除したようだ。

「さて…我に話とは何だ」

「魔王を前にして震えもせぬか…それも元魔王だからか」

「…昔の我ならばお前との力の差に震えていただろうな。だが、今の我は違う」

 スラルはランスと出会って変わったと思っている。

 それはランスの持つ、時には無謀とも言える行動…逆に言えば退けない時は必ず打ち勝つ勇気に影響されたのかもしれない。

 そんなスラルに対してジルは悠然と微笑む。

「お前は…この世界を知っているか」

「世界、とはどういう意味でだ?」

「世界の仕組み、だ」

 ジルはそう言って笑うが、その笑みは何処か乾いているようにスラルには見える。

「もしかしたら知っていたのかもしれないな。だが、今は記憶に無い。尤も、必要も無いが」

 スラルの言葉にジルは少し目を見開く。

「知識を求めてきた…お前がか」

「全てを知るという事と知識を求める事は違う。それだと面白く無いだろう。まあ、これも我がランスと共に居たからこそ、そういう考えに至ったと言えるがな」

 ソファで眠っているランスを見てスラルは微笑む。

 自分を助けたこの男は、魔王である自分に色々な事を教えてくれた。

 それはとてもスリリングで、時には下らないような事でも全てがスラルには新鮮だった。

「そう…か。ならば今我がそれをお前に話したとしたらどうだ」

 ジルは挑発的な笑みを浮かべる。

 スラルはそれを受けて、同じように不敵に笑って見せる。

「その時は全ての記憶を忘れるだけだ」

「………言ってくれる」

 迷いの無い言葉にジルは詰まらなそうにする。

「我からもお前に聞きたい」

「…構わぬ。答えられる範囲で教えてやる」

「ここは何だ。異世界というのは分かる」

「さあな…特には知らぬ。我はランスに相応しい空間として選んだ。それだけの世界だ」

 ランスに相応しい世界、それは確かにとスラルは思った。

 冒険が好きなランスならばこういう世界も気にいるだろう。

「あの扉は何だ」

「異界の存在と戦える扉…それだけだ」

「それだけ、か。まあお前が選んだ扉はとんでもないがな」

 狂王…その存在にはスラルも驚いた。

 まさに魔人級の力を持つ存在だ。

 単純な暴力を行使してくるだけだが、それに特化し過ぎている。

 技も何も無いがそれを補って余りある体力、パワー、固さを兼ね備えた存在だ。

「だが、流石に早いな。まだ一人では倒せまい」

「ランスなら手段は問わぬだろう」

「違いない」

 ジルの言葉にスラルは苦笑する。

 ランスという人間の強さは唯強いだけじゃない。

 卑怯と呼ばれようが勝つという事にかけてはランスはずば抜けている。

「ここは異界の休憩所…好きに使えばいい」

「そうさせて貰おう。で、我からもう一つ聞きたい」

「何だ」

「人間牧場の意味は何だ」

 スラルの言葉にジルは薄く笑う。

「必要だから作った。それだけだ…」

「『必要』か…魔王がそれを言うか」

 ジルの言葉にスラルは唇を歪める。

 魔王が『必要』と言ったからには必ず意味があるのだ。

 何故なら魔王はこの世界最強の存在、魔人が束になろうとも魔王には遠く及ばない。

 無敵結界や絶対命令権など無くても、魔王は圧倒的な力でこの世界を好きに出来る存在なのだ。

「これ以上話すつもりは無い…」

「聞かんよ。どうせ碌でも無い理由なのだろう」

 スラルは吐き捨てるように言う。

 ジルが必要と言うからにはジルにとっては本当に必要なのだろう。

 ただ、その理由は決して良いものでは無いという事だけは分かる。

 スラルもそんな事を知ろうとは思わなかった。

「後は…好きにしろ。狂王に勝てなければ…他の扉を開けて戦うのもいいだろう…狂王以上の存在は居ない」

 ジルは話は終わったと言わんばかりに椅子を離れる。

「いいのか? ランスと共にいなくとも」

 揶揄するかのようなスラルの言葉に、ジルは薄く笑う。

「何れ…永遠に居られる」

 そう言ってジルは姿を消す。

 恐らくは元の世界に戻ったのだろう。

「勝手な事だな」

 魔王だからこその振る舞いにスラルは呆れてしまう。

 同時に自分もあんな感じだったんだろうなとも思ってしまった。

「さて…思った以上に早く我の呪いは解けたか。いや、恐らくはこのタイミングで解く予定だったのだろうな」

 ランスは自分の呪いを解くために色々と世界を回ったが、それも空振りに終わってしまった。

 まあランスならそんな事くらいで落ち込んだり怒ったりすることは無いだろう。

「我の体は…まあ問題無いか。魔法も以前と変わらずに使える」

 自分の体に流れる魔力を感じ取り、スラルは笑みを浮かべる。

 鈍ってないかと思ったが、どうやらそれは杞憂だったようだ。

 これならば問題無く自分も戦闘に参加出来るだろう。

「戦闘に参加は出来るが…流石に狂王は今の状況だと厳しいな」

 あのバケモノを相手にするためには、どうしてもガードの存在が必要になる。

 ランスも相手の攻撃を受け流してカウンターを決めていたが、いかんせん相手の防御力が高すぎる。

 狂王を倒す前にランスの体力が尽きるのは明らかだ。

 そして自分が加わっても狂王と何処まで戦えるか分からない。

「まあそれもランスが起きてからの話か」

 スラルは未だに寝ているランスを見る。

「ふむ…我もランスを少し追い詰めてみるか」

 ニヤリと笑ってからスラルは再び霊体に戻る。

 そのまま魔法でIPボディをランスの懐に戻してから自分も剣の中に戻る。

「ランスがどこまでやれるか…それは我も興味が有るからな」

 スラルはランスがどうなるか、それを見極めるためにあえて自分も手を出さない事に決める。

 ただ、それを後悔するのは少し先の事だった。

 

 

「厳しいな」

「やかましい。俺様なら何とか出来る。出来るはずだ…」

 スラルの言葉にランスは少しイライラしている。

 あれから狂王に何回か挑んだが、何れも倒す気配が全く見られない。

「あれが同一個体の狂王だという保証は無いからな。一度で倒さなければいかんのだろうな」

 ランスはアレから目に見えてイライラしている。

 スラルはそれだけランスが狂王に手を焼いていると思ったのだが、実はそれは見当違いだったりする。

(そろそろ限界だぞ。だがお町に手を出すのもな…)

 実はランスはセックスが出来ない事にイライラしているのだ。

 これまでは常にその相手…レンと日光が側に居たのだが、生憎と今二人は居ない。

 一応お町も居るのだが、流石のランスも戦闘で苦労をして、毎度ヘトヘトになっているお町に手を出すのは躊躇われた。

 そろそろ食べ頃なのは間違い無いが、今襲っては何にもならない。

 それを我慢するだけの理性がランスには存在していた…ただ、その理性とは非常に脆いものなのだが。

(ケッセルリンクはシィルと同じような状態だしな)

 アレからジルはこちらにやってこないのでセックスが出来ない。

 ケッセルリンクは一応居るのだが、ジルの手でクリスタルの中に閉じ込められている。

 JAPANで魔王の氷に閉じ込められたシィルと同じで、ランスでも全く手が出なかった。

 なので彼女もランスのセックスの相手にはなれない。

「あ、そうだ。クエルプランちゃんが居たな。頼めばやらせてくれるかもしれん。カモーン! クエルプラン!」

 ランスがいつもの様に彼女を呼び出そうと指をならす。

 しかし帰って来たのは沈黙で、彼女がランスの呼びかけに応える様子は無い。

「む。レベル神が来ないだと」

「ああ…ここは異空間だからな。彼女もお前が何処に居るのか分からないのではないか?」

「何だと!? じゃあ俺様はどうやってレベルを上げればいいんだ!」

「そういう問題があったな…迂闊だった」

 ランスの言葉にスラルも呻く。

 人間が強くなるためにはレベルを上げるしかない。

 そしてレベルを上げるためには担当レベル神を呼ぶ、又はレベル屋でレベルを上げて貰う必要がある。

 その二つが出来なければどんなに経験値を溜めようと意味が無いのだ。

「…なあランス」

「む、何だ。お町」

「いや、狂王を倒すのが無理なら、他の扉に挑むのはどうだ? 何かしらのアイテムなども手に入る可能性はあるのではないか」

「そういやそうだな。アレから他の扉には手を出していないしな」

 最初に宇宙刑事ユーダインを倒してからは他の扉には手をつけていなかった。

 なのでそれ以外がどうなっているのか、それは今更ながらランスも興味が出てきた。

「いいのではないか? ジルも扉を開けるなとは言わなかった。もし狂王以上の存在が居るなら、ジルがそのままにしておくはずがないからな」

「そうだな。じゃあ他の扉も開けてみるか」

 次の日、ランス達は早速扉の前にやって来た。

 目当ては狂王ではなく、他の扉だ。

「奇妙な扉じゃな…一体どういう物なのか…見当もつかんな」

 お町は扉を見るがどういうモノなのか全く理解できない。

 だが、ここを開ければ異界のモンスターが出てくるのだろうとは思う。

「…封印されている扉もあるな」

 スラルは改めてじっくりと扉を見たが、中にはジルが封印したであろう扉がある。

(何かあるのだろうが…まあジルが封印したのならばランスでもどうしようもないがな)

 ジルが封印したのならば人間であるランスに出来る事は無い。

 つまりはどうあっても開けられない扉という事だ。

「よーし、じゃあ開けてみるか」

 ランスは扉の一つを開ける。

 するとそこからモンスターが現れる。

「フォースの力を見せてやろう」

 それはサメラーイと同じ頭身で、リックのような光る剣を装備している。

「なんだこいつは」

 ランスはもしかしたら美女が出てくるのではないかという希望が打ち砕かれた事に絶望する。

「帝国の好きにはさせんぞ!」

 サメラーイ…いや、ジエダーイマスターはそんなランスを無視して襲い掛かって来る。

「フン、雑魚が」

 二本の剣を駆使して襲ってくるジエダーイマスターだが、今のランスにとっては普通のモンスターと何ら変わりは無い。

 その剣をあっさりと弾き飛ばすと、そのまま刀で一刀両断する。

「見事…」

 ジエダーイマスターはそうとだけ言うと崩れていく。

 そのまま光に包まれるとその姿が消えていく。

「なんだこいつは」

「我が見た所、男の子モンスターのサメラーイに似ているな。恐らくはサメラーイの突然変異モンスターだろう」

「どうでもいいわ」

 突然変異だろうが何だろうが、ランスにとってはただの経験値でしかない。

 ただ、一つ分かったのはその辺のモンスターよりも遥かに強いという事は確かだ。

 普通のサメラーイよりも確かに強いのはランスも分かった。

 強ければ当然経験値も多い、それは当然だ。

 つまりはここの扉からは結構な経験値を持つモンスターが登場してもおかしく無いという事だ。

 問題があるとすれば、レベル神が呼び出せないのでランスとスラルのレベルが上がらないという事だろう。

「とにかく扉を開けてくぞ」

 ランスは気を取り直して、次の扉に手をかけた。

 そして数時間が経過し―――

「あいやー! やられた!」

 ランスは金髪が逆立ったスーパーハニーを倒す。

「あー…疲れた。無駄に強かったぞこのハニー」

「そうだな。スーパーハニーの突然変異だと思うが、確かに強かったな」

 このスーパーハニーはランスが一度倒したらパワーアップして襲い掛かって来たのだ。

 それを繰り返す事4回、ようやくスーパーハニーを倒す事が出来たのだ。

「それにしても突然変異モンスターばかりだな…まあ修行になると思えばいいが」

「全部外れだ外れ。全く、気のきかんドアだな」

 ランスは腹立たし気にドアを蹴り飛ばす。

 ここまで出てきたのは全てモンスター…しかも男の子モンスターだ。

 つまりはランスが全く楽しめない相手なので、ランスのイライラもどんどんと溜まっていった。

(うーむ…ランスは相当ストレスを貯めているな。やはりケッセルリンクやジルの事もあるからか…)

 スラルはそんなランスを見てとんでもない勘違いをしていた。

 まあ間違ってはいないが、それ以前にもの凄い即物的な事が原因なのに気づいてはいなかった。

「よーし、次だ次。次こそ当たりの扉のはずだ」

 ランスは気を取り直して次の扉を開ける。

 するとそこから出てきたのは…

「あら…ここは一体どこかしら」

「お、おおおおおお! 当たりだ当たり大当たりだ!」

 1人の女性、それもJAPANの巫女のような服装をした女性だった。

「あら、ランスさん…ですか? 前見た時よりも随分お若いですけど」

 ランスは相手が自分の名前を呼んだことに驚く。

「あん? って君は…そうだ! 風華ちゃんだ! 久しぶりだな」

 扉から出てきたのはかつてランスがJAPANで出会った少女である、玉籤風華だった。

「ってあれ。俺様がオロチをぶっ倒した時君も消えたよな」

 ランスがJAPANでオロチを倒した問、彼女も又オロチとその周囲に居たオロチっこと共に消滅したはずだった。

 その際には「さよなら」とは言わなかったので、ランスも何処かで元気にやっているのだと思っていた。

「ええ…私も消えるはずだったんですけど…突然この扉に呼ばれた気がしまして」

「ちょっと待て、ランス。この少女と知り合いのようだが、どういう関係だ? それにオロチを倒したと…」

「その辺はややこしいからパスだ。で、風華ちゃんがここから来たという事は君が俺様の相手という事でいいのか」

 ランスの言葉に風華は困ったように首を傾げる。

「あの…相手と言っても、私ではランスさんの相手にならないと思いますよ」

「なんつったか…君もあのオロチの周りに居た奴等と同じなんだろ? だったらそこそこ強いだろ」

「そうかもしれませんけど…でも私は正直ランスさんとは戦いたくないです」

「そうか。まあ俺様もそんなつもりは無いがな。しかしこうして君とまた再会出来るとはな」

 ランスとしても彼女の最期はちょっと気になっていたのだ。

「ええ…でもどうしてランスさんはこんな所に…? そして私は何で呼ばれたのでしょう」

 風華は首を傾げた時、ランスの側に居たお町を見る。

 正確には、お町が首から下げている一つの牙を飾りを見る。

「これは…オロチの一部? それに…お町さん?」

 風華の言葉にお町は少し驚く。

「よく分かったな。これこそオロチの牙より生まれし妖怪王…黒部殿の牙。即ちオロチの一部と言っても良いだろう。というか何故お前は我の名を知っている? それもこの名を…」

「まあ…妖怪王の牙。あれ? 妖怪王は確か正宗さんでは?」

「その辺はパスだパス。お町もあまり気にするな。これ以上面倒くさいのは御免だからな。それよりも風華ちゃん。久々に再会したんだ。ここはズバッと俺様と一発やるぞ」

 ランスの言葉に風華は申し訳なさそうに頭を下げる。

「ごめんなさい…今の私は不安定みたいで、性行為は難しいです。私としてはランスさんにお礼をしたかったんですけど…」

 本当に申し訳なさそうな顔をする風華にランスは気にするなと手を振る。

「だったら出来る時で構わん。それよりもこれからどうするつもりだ」

 ランスの言葉に風華は少し考えるが、

「戻ります。多分それが正しい事なのでしょうし」

 結局は元の場所に戻る事を選ぶ。

「そうか。じゃあ達者でな」

「ええ、ランスさんも…あ、そうだ。私は大したことは出来ませんが、その牙に宿る力なら何とか出来るかもしれません」

 そう言って風華は一つの石のようなものを取り出す。

「これは…確かアレだ。妖怪がつけてたらJAPANから出れるやつだろ」

「オロチの鱗です。もう私には必要無いので、今眠っている方の役に立てて下さい。じゃあランスさん…縁があったらまた」

「おう。じゃあな」

 風華はそう言って扉に戻っていった。

「…ランス、どういう関係だ?」

「だから気にするなと言っただろうが。まあ風華ちゃんが元気でやってるならそれでいい」

 ランスは風華から渡されたオロチの鱗を見る。

「確かノワールが持ってた石と同じだな。だったらホレ」

 ランスはオロチの鱗をお町に渡す。

「ランス…」

「なんか妖怪にとっては有難いやつなんだろ。だったらお前が持ってろ」

「…そ、そうする」

 お町はランスから渡されたオロチの鱗をそっと握る。

 すると、その鱗とお町が首にかけていた牙が光始めた。

「な、なんじゃ!?」

 お町は困惑するが光は消えない。

「眩しいぞ! 何とかしろ!」

「ど、どうやってじゃ!?」

 ランスの言葉にお町は困惑するが、その光はどんどんと大きくっていき…そして光がどんどんと集まって何かの形を模る。

「こ、これはまさか…!?」

 剣の中からスラルは声を上げる。

 そして光が収まった時、そこには黒い毛皮をした巨体が姿を現した。

「ふあああぁぁ…よく寝たぜ。一体何年くらい寝てたんだろうな」

 巨体は大きく欠伸をすると、その口には鋭い牙が並んでいる。

「黒部!」

 剣の中からスラルが喜びの声を上げる。

「その声は…スラルか!? っていうかランス! ランスじゃねえか!」

 光の中から現れたのは、かつてのランスの仲間とも言える存在である、妖怪王黒部だった。

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