ランス再び   作:メケネコ

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漢の登場

 黒部と再会し、スラルが肉体を取り戻し、戦力が大幅に増強されたランス達。

 その勢いのまま狂王に挑むが―――現実はそう甘くは無かった。

「グオオオオオオオオ!!!」

「チィ! 何だこいつは! レキシントンより滅茶苦茶じゃねえか!」

 黒部は狂王の攻撃に唇を歪める。

 ランスが苦戦しているのでどれだけ強い奴か楽しみにしていたのだが、その強さは黒部の予想以上だった。

 何よりもあのレキシントンよりも滅茶苦茶な攻撃を繰り返してくる。

 どれだけ攻撃しようとも退く事もせず、狂ったように攻撃を仕掛けてくる。

 その姿はまさに『狂王』と呼ぶにふさわしい。

「クッ! スノーレーザー!」

 スラルの渾身のスノーレーザーが狂王に直撃する。

 流石にレーザー級の魔法の直撃には狂王もぐらつく。

「効いている。見た目通り氷が有効か」

(問題なのはそれだけでは倒せない事だがな…)

 弱点は分かっても相手の凄まじい耐久力と体力の前にはどれだけ効果があるか分からない。

「ラーンスあたたたーーーーーーっく!」

 ランスの必殺技が狂王に直撃する。

 強烈な一撃ではあるが、狂王は構わずにランスに殴りかかる。

 黒部とスラルが居るので以前ほどの手数は感じない。

 ランスは狂王の拳を受け流し、返す刃で狂王に向かって居合斬りを放つ。

 空間すらも断ち切るランスの居合ではあるのだが、それが狂王に対しては有効打にはならない。

「グオオオオオオオ!」

 ランスが斬ったはずの傷は直ぐに塞がり、狂王はランスに向かって拳を放つ。

「くっ!」

 お町は陰陽術で壁を作り狂王の拳を防ぐ。

 だが、魔人に匹敵する…いや、上回りかねない攻撃の前にはお町の術は付け焼刃でしか無かった。

 あっさりとバリアは破られるが、それでも狂王の攻撃は遅れる。

 ランスは狂王の拳を避け、狂王に斬りかかる。

「きりが無いぞ! 何だこいつは!」

 いくらランスが剣で斬りつけても狂王は全く倒れる気配が無い。

「マジかよ…レキシントンよりヤバイぜ!」

 黒部は以前に戦ったレキシントンと比較するが、そのレキシントンを上回る凶悪さだ。

 技術はレキシントンの方があるが、それを圧倒する暴力…それだけでランス達を追い詰めているのだ。

「うぐぐ…退くぞ!」

 ランスはこのまま戦っても勝ち筋が見えない事から撤退を指示する。

 その判断には誰も異論を唱える事無く、ランス達は即座にその場から逃げ出した。

 

「全く敵わんな」

 スラルは結構深刻な様子で言葉に出す。

 ランスですらも今の状況に苛立っているのか、不機嫌そうな様子を隠さない。

「あんな奴が居るなんてな。俺の体が鈍ったのかと思ったが、そうじゃねえみてえだ。まさかランスの攻撃にあれだけ耐えるなんてよ」

 黒部は何処となく楽しそうな態度を取っている。

 久々の戦いと、ランスとスラルと共に戦える喜びが入り混じっているのだ。

「レンが居れば大分違うとおもうのじゃがな…」

 お町もここに居ない仲間の事を思い難しい顔をする。

「そうだな…やはりレンが不在というのが痛いな。逆に言えば彼女がそれだけ何でも出来るという事なのだが…」

 レンは攻撃に防御、攻撃魔法に回復魔法とまさに万能の存在だ。

 攻撃に関してはランスの方が上回っているが、総合力ならばランスをも上回るだろう。

「スラルちゃんは回復魔法は使えんのか」

「生憎と才能が無いな。才能が無ければどんなに努力しても意味は無い」

「フン」

 ランスもスラルの言っている事は分かる。

 使えないのならばそれに文句を言っても仕方が無い。

 問題なのはタンクもヒーラーも居ないというどうしようもない現実だ。

「後はレベルだな…我とランスに関してはレベル神が居なければレベルが上がらない」

「クエルプランちゃんが呼んでも来ないとは…」

 そして次の問題はランスとスラルがレベルが上がらないという現実。

 ランス達が人間である以上、こればかりは本当にどうしようもない。

 それが世界の法則なのだからそれを破る事は不可能なのだ。

「スラルちゃんはレベル屋は出来んのか」

「…パレロアが学んだように書物を見れば分かるかもしれないが…生憎その手の本は我は興味が無かったからな。それこそパレロアにあげてしまった物しかない」

「知識を求めていたくせによくそんな事が出来たな」

「し、仕方ないだろう。我はその時はレベルにそこまで関心が無かったのだ」

 ランスの指摘にスラルはバツが悪そうな顔をする。

 あの時自分もその書物を読んでいれば、こうした事態は防げたかもしれないのだ。

 だが、このままではあの狂王を倒す事は出来ない。

「ケッセルリンクが居れば間違いなく倒せるだろうが…生憎とこんな状況だ」

「…何かと思ったが、こいつが魔人ケッセルリンクか」

 スラルは未だにクリスタルに封印されているケッセルリンクを見る。

 魔王による封印なので、人間であるランス達にはどうしようもない。

 それこそバランスブレイカーアイテムでも無い限り、彼女を解放する事は出来ないだろう。

 手詰まりに近い状態だが、それでもまだ希望はあるし、ランスがそれくらいで諦める訳は無い。

「他の扉を開けるか。そしたらなんとかなるかもしれんしな」

「かもしれないが…不確定要素に頼るのはよくないとも思うがな」

 ランスの言葉にスラルは複雑な顔をする。

 スラルはスラルであの扉を調べたが、正直に言えばこの空間にはあまり留まりたくは無い。

 ジルがランスの行動を止めた時から、この世界が相当にヤバい世界だとは気づいていた。

 ランスやお町には分からないだろうが、魔王が止めるというのはそういう事だ。

 それでもジルがこの世界にランスを送り込んだのは何か意図があるのは分かっているのだが、その意図が分からない。

「我とランスはレベルの問題をどうにかしなければならんな…」

 スラルが頭を悩ませていた時、周囲の空気が重くなる。

「何だ!?」

 黒部は突然感じたプレッシャー…それもかつて自分が戦った魔人をも超える圧力に毛が逆立つ。

 何も無い空間から現れたのは魔王ジルだ。

「ジル…」

「こいつが…魔王ジル」

 スラルの言葉に黒部は驚愕する。

 全裸の女性ではあるが、そこから感じるのは恐ろしいまでの力だ。

 かつて戦った魔人ザビエルも魔人レキシントンも凄まじかったが、魔人とは比較にならない気配に黒部は思わず冷や汗が出る。

 ジルは黒部を見上げると首を傾げる。

「…どうやってこの世界に来た」

「そんな事はどうでもいいだろ。それよりもあいつは何だ」

「狂王は…倒せぬか」

 ジルの言葉にランスはカチンとくるが、当の本人は予想通りと言わんばかりに唇を吊り上げる。

「まあいい…予想はしていた…」

「予想してたんなら当然何とかする手段はあるんだろうな。ここは何も出来ん所だぞ」

 ランスはジロリとジルを睨む。

「スラルは…レベルを上げられんか」

「生憎とその知識は無い。必要無かったはずだったからな」

 ランスとスラルの視線を受けてジルは不敵に笑う。

「レベル神を呼べないなら…レベル屋が居ればいい」

「だからそのレベル屋のやり方が出来る奴が」

 ランスがそう言いかけた時、ジルはどこからか水晶玉を取り出す。

 そしてそれを手に何処からか取り出したメガネをかける。

「我がやってやろう」

 ジルから出た意外な言葉にランスは微妙な顔をする。

「それ魔王のやる事か」

「ならば…レベルが上がらぬ方がいいか」

「そうは言って無いだろうが。まあいい、だったら早速俺様のレベルを上げてみろ」

 魔王に対してもずけずけとモノを言うランスに対して黒部は内心ではビクビクだ。

 恐れ知らずの黒部でも、目の前に居る世界最強の存在には流石に恐怖を感じていた。

 だが、ランスはそんなものを微塵も感じさせない態度を取る。

「良いだろう…」

 そしてジルはレベルを上げるための呪文と唱える。

 全く抑制の無いほぼ棒読みな言葉だが、それでも効果はあったようだ。

「ランス…お前のレベルは91に上がった」

「おお! とうとう90を超えたか! ってこの場合はどうなるんだ」

「スラル…お前のレベルは89に上がった」

「呪わていた期間でも経験値は入ったのだな」

「お町…お前のレベルは57に上がった」

「そうか…」

「黒部…お前のレベルに変動は無い」

「そりゃ経験値とやらを取得してねえからな」

「以上だ…また私がこの世界に姿を現すまで…強くなっていろ」

 ジルがそう言って水晶玉とメガネを何処かにしまい、この世界から消えようとした時、

「ちょっと待て! 俺様のレベルは90を超えたぞ」

「…そうだな。それがどうした」

「しかし今クエルプランちゃんから褒美を貰えない。だったらお前が何か褒美を出せ」

 ランスの言っている事はハッキリ言って滅茶苦茶だ。

 ジルもそれを理解しているが、それでもジルは楽しそうな笑みを浮かべた。

「…魔王である我に…褒美を出せと言うか」

「そうだ。そもそもお前がこの世界に連れてこなければ、俺様はレベル90になった時点で褒美を受け取れるはずだったんだ。なのにお前はそれを奪った。それはお前が悪い」

 滅茶苦茶な理論だが、それでもジルは面白そうにするだけだった。

「ならば…お前は何を望む」

「クエルプランちゃんは俺様にレベルが上がりやすくなるアイテムをくれたぞ。お前は何か無いのか」

 クエルプランの名前が出た事でジルの表情が変わる。

 それはどちらかと言うと不快感を覚えたかのような顔で、その表情を見たランスは少しひっかかる。

(何だ? クエルプランちゃんが俺様のレベル神なのはジルもしってるだろ。何でそんな顔をする)

 ジルの一瞬の微妙な変化、意外と女の感情の機微には鋭い時もあるランスはそれを見逃さなかった。

 リーザスの時にも浮かべなかった顔をランスは気になる。

 が、それも一瞬、どうせ後で分かると思い気持ちを切り替える。

「そうだ。俺様はどこかの誰かのせいでレベルが上がりにくくなっているからな。それなりの褒美が必要なのだ」

「…我はこれを一生言われるのか?」

 ランスの言葉にスラルはげんなりとした顔をする。

 まあ確かにランスをそういう体質にしてしまったのは自分なので、それに関しては文句を言われても仕方が無い。

「…次に来る時に持ってきてやる。それまでに…お前もより強くなることだ」

 ジルはそう言って消えていく。

「レベルの問題は解決したな。と、言っても不定期のような気がするが」

 意外と問題がすんなりと解決した事にスラルは複雑な顔をする。

 ランスの事だから、召喚ドアからレベルに関する出来事も何とかしそうだと思ってたのだ。

「レベル91か…まだ石丸には届いていないな」

「何だと? それはどういう事だ」

 ランスのレベルを聞いて黒部は何となく口にした言葉に当然ランスは反応する。

「ああ。あいつが一番レベルが高かった時は…確か100行ってたぜ」

「あの野郎が俺様よりもレベルが高いだと?」

 藤原石丸はランスにとっては明確な敵だ。

 今は死んだのでもう交わる事の無い奴ではあるが、それでもランスにとっては絶対に許せない奴の一人だ。

 まあ明確な恨みや憎しみが有る訳でも無く、実際にはランスが一方的に嫌っているだけだ。

 何しろ顔の良い奴、女にモテる奴は無条件で嫌うのがランスという人間だ。

 心が狭いと言ってしまえばそれまでだが、嫌いなものは嫌いなのだから仕方が無い。

「あいつの強さは本物だった。今のお前よりも強いんじゃねえのか? それでもザビエルにはやられちまったみたいだけどな…」

「むぐぐ…あいつが俺よりも強いなどとそんな事はある訳が無い」

 そしてランスは自分の持つ敵愾心が燃え上がる。

 嫌いな奴と比較されるのはランスにとっては非常に不愉快であり、許せない事だ。

「やれやれ…我等はまんまとジルの思惑に嵌っているな。まあお前が強くなろうとするのは良い事だが」

「やかましい。俺様は一気に不愉快になった。それを静める手段は当然分かってるのだろうな」

「ちょっと待て! お前が不愉快になろうが我には関係無いだろう! 我にそれを押し付けるな! ってああああああ!」

 ランスはそのままスラルを担ぎ上げると寝室へと消えていった。

 そんなランス達を見て、お町は黒部を見上げる。

「なあ黒部殿。石丸は本当にそんなに強いのか? 我は石丸は知らぬが、正直ランスを上回る人間が居るなど信じられん」

「まあ…正直差はねえよ。実際石丸だってレベル100なんていってねえしな」

 黒部の言葉にお町は目を見開く。

「なんと…嘘か」

「ああ言えば刺激になるかと思ったけどよ…想像以上だったぜ。ま、いいんじゃねえか?」

「やれやれ…黒部殿もそういう冗談を言うのだな」

 お町の言葉に黒部は笑う。

「あいつには帝の力があったからな。その力で言えばあいつの方がまだ上だろうさ。ただ、ランスはそれを更に上回る…俺はそんな気がしてんだよ」

「確かに…我もランスの限界というものを知らぬからの」

「これはあいつに言うんじゃねえぞ。そっちの方が面白いしな」

「言わんよ。まあランスがやる気ならそれは良い事じゃ」

 ランスは実際単純で、こういう言葉でも簡単に動かされる。

 ただ、それが良い方向に行く事が多いのも事実だ。

「で、お前はどうする?」

「どうするとは…どういう意味じゃ」

「そういう意味だよ。前にも言ったが俺は別に悪い事じゃねえと思ってるぜ。お前の出自を聞いたら猶更だ。あいつはそんな詰まらねえものなんざぶち壊していく奴だぜ」

 黒部の言葉を理解し、お町は顔を朱に染める。

「わ、我はそういう事は…」

「あいつは妖怪だろうが全く差別もしない奴だ。そういう人間は少ないぜ。実際俺の部下の妖怪からも人気があったしな」

「黒部殿が表向きの大将で、裏では奴が仕切ってたのだろう。他の妖怪からの不満も無かったのか」

 お町の言葉に黒部はニヤリと笑う。

「ああ、ねえよ。最初はあいつに反発した奴も居たが…あいつの強さと無茶苦茶さに誰もが振り回された。でもよ、振り回されている内に不思議とあいつについて行きたくなるのさ」

「藤原石丸もか?」

「そうだな。あいつもそういう所があったな。ま、ランス程滅茶苦茶じゃ無かったけどよ。とにかくよ、お前も正直になっても良いと思うぜ。妖怪なんてのは好きに生きればいいのさ。お前を作った奴が何を言おうと関係ねえ」

「ランスにも同じことを言われた…そして我は黒部殿には及ばぬと。黒部殿に比べれば妖怪王は名前だけだと」

 お町の言葉に黒部は嬉しそうに笑う。

 まさかランスがそういう風に言ってくれるとは思っても居なかった。

 女には兎も角、男には相当に厳しい奴…いや、男なんて好きでも何でもない奴だけに嬉しかった。

「別に俺のようになる必要はねえ。お前はお前で妖怪王になりゃいいのさ。俺はもう妖怪王なんて興味ねえしな」

「黒部殿はランスについて行くのか?」

「おう、それが石丸との約束だったからな。俺が再びあいつと出会ったら…あいつについて行くってよ。それにスラルとの約束もあるしな」

「そうか…我としても悩ましい言葉じゃな。いや…こうして悩め、相談できる相手が出来た事が何よりも嬉しい事なのじゃな」

 お町もまた何処か嬉しそうに微笑んでいた。

 

 

 そして召喚ドアの前でランス達が戦っていた。

「ラーンスアターーーーーック!」

「メタルなのに…あいやー」

「ぜえ…ぜえ…やたらと硬いハニーだったな」

 ランスは銀色に輝くハニーの残骸を前に荒い息をつく。

「お前の剣しか通用しないとはな…面倒くさい相手だったな。メタルハニーとでも言えば良いのか…」

 スラルは粉々になったハニーの欠片を拾う。

 異常なまでに硬かったハニーだが、通常のハニーと同様に死んでしまえばその硬度は消えてしまっていた。

 それを見てスラルは残念そうなため息をつく。

「スラル。お前、ハニーは嫌いなんじゃなかったか」

「ハニーは嫌いだが、知識を集めるのは好きだからな。こんなハニーは初めて見た事と、この材質を使えばいいアイテムを作れるかもしれないと思ったが…死んでしまえばただのハニーだな」

 スラルはハニーの欠片を捨てる。

「大丈夫か、ランス」

「疲れただけだ、ダメージは受けとらん」

 お町はランスを気遣って声をかける。

 ランスは荒い息を吐いていたが、直ぐに息を整える。

「俺の爪すら効かない相手とはな…ハニーってのは本当に面倒くさいな」

「そうだな。お前は役立たずだったな」

「グッ…」

 ランスの指摘に黒部は言葉に詰まる。

 その言葉通り、メタルハニー相手に黒部は全く役に立たなかった。

 というよりもメタルハニーは普通の攻撃では倒せる相手では無いのだが、それを無視して倒せるランスが異常なのだ。

 だが、それを知る術はランス達には無かった。

「で、次の扉を開けてみるか」

「ちょっと待て」

 スラルの言葉にランスは腕に触れる。

 結構無茶をしたが、これからの戦闘には影響は無いだろう。

「神魔法を誰も使えないのがこうも苦しくなるとはな…」

 お町も神魔法の有難さを改めて思い知る。

「我も巫女の技術を覚えておけば良かったかもしれんな…」

「今更言っても意味無いだろ。それよりも何かアイテムは無いのか」

「無いな」

「実入りが無いな…」

 ランスの顔が不機嫌になる。

 召喚ドアは確かに面白いが、ダンジョンとしての魅力が感じられない。

 何しろここにあるのは召喚ドアだけで、それ以外に見るものが何も無いからだ。

 ランスが常に考えている新たな出会いはあるのかもしれないが、生憎と風華以来女は出てこない。

 簡単に言えばランスは飽きてきたのだ。

 元々飽きっぽい性格なので、あまり長続きする方ではない。

 ケッセルリンク、そしてジルの事も関わっては居るのだが、それはランスの性質上仕方のない事だと言えた。

 なのでランスとしてはさっさと狂王を倒してしまいたい所だ。

「狂王に挑むのにはまだ早いぞ。我の見た所、まだまだ足りないと思うがな」

 そんなランスの心を察したようにスラルがランスに声をかける。

「フン」

 ランスは詰まらなそうにすると、そのまま次の召喚ドアを探す。

 結構な数を開けたのだが、幸か不幸か狂王を上回る存在は現れていない。

「次だ次。今度はコレを開けるぞ」

 ランスは次の召喚ドアを開くとそこからは何も出てこない。

「なんだこりゃ。外れか?」

 身構えていたが拍子抜けした声をだす。

 だが、その時何処からともなく不敵な笑い声が響いてきた。

「どこを見ている! 私はここだ!」

「な、何だ!?」

 黒部は声の方向を見る。

 そこには積み重なった召喚ドアの上に、腕組をしながら立っている人影が見えた。

 立派な黒い衣服を纏っているが…何よりも珍妙なのはその顔だ。

 その男の顔は何故か虎の顔だった。

「私の名前はタイガージョー!」

 そう名乗った男は召喚ドアから飛び降りるとそのまま真っすぐランスに向かってくる。

「愚か者がああああ!」

「ぐはっ!」

「ランス!」

 男の拳を受けてランスは倒れる。

「なんだ貴様! いきなり人を殴りおって! ぶっ殺す!」

「ええい、黙れ黙れ!」

 ランスの怒りの声を無視して男―――タイガージョーがランスを指さす。

「貴様、それでいいとお思っているのか!?」

「何がだ!」

「何が! ではない! 考えも無しにぽいぽいと物を捨てるなど、言語道断! 資源の無駄遣い、地球環境に百害あって一利なし、だ!」

「何の話だ!」

「日々の糧を得るために必死で働いている労働者の皆様方に申し訳ないと思わないのか!」

「お、おお…いや、なんかすまん…」

 そのあまりの迫力にランスは思わず謝ってしまう。

「分かればそれでよし! 言いたい事が終わったので戻ろうと思ったが…貴様、迷っているな」

 タイガージョーはランスの目を見て再び腕を組む。

「…スラルちゃん、なんだこいつ」

「いや、我に聞かれても…黒部、こいつは新手の妖怪か?」

「こんな妖怪聞いた事もねえよ。お町、お前の知り合いか?」

「このような珍妙な妖怪は聞いた事も無い。いや、もしかしたら禁妖怪だったら自信は無いが…」

「人を勝手に魑魅魍魎扱いをするな! 私の名前はタイガージョー! 見ての通り格闘家だ!」

「格闘家…?」

 格闘家を名乗る非常に…いや、異常なまでに胡散臭い存在にスラルは眉を顰める。

 だが、不意打ちとはいえランスに一撃を入れたのだからその実力は本物だ。

 そしてランスに迷い…言い換えれば飽きが来ている事を見抜く眼力は只者では無い。

「青年、お前の腕には迷いがある。その迷いが何なのか私には分からん!」

「分からんのに偉そうにするな!」

「だが! 漢とは拳を交えれば分かり合えるもの! さあ、かかってこい!」

 そう言ってタイガージョーは凄まじい闘気をランスに向ける。

「むっ」

 そう言うタイガージョーの気は本物で、流石のランスもその実力に気づく。

 この相手は間違いなく強いのは明らかだ。

「行くぞ青年! 閃真流奥義、しかと見るがいい!」

 こうしてランスは謎の男であるタイガージョーと戦う事となってしまったのだった。




召喚ドアのネタを出す時から決めてた人材
ぷろGのじっちゃんも良いかなと思ったけどチート過ぎるので却下
ただ、このキャラの元ネタのゲームはプレイ出来て無いのでキャラのブレは酷いかも…
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