「ラーンスあたたたーーーーーーっく!!!」
「無駄だ! 抗うか!」
ランスの必殺の一撃を受けてモンスターが倒れる。
背中にお盆を背負い、そこからにょ~を生やした灰色のフリーダムが倒れる。
「強くは無いがうざかったな。こいつは外れだな」
ランスは召喚ドアにフリーダムの死体を蹴り込みながら愚痴る。
召喚ドアはやはり当たり外れが多い…というよりも外れの方が圧倒的に多い。
経験値は持っているのだろうが、ランスにとっては全ては外れだ。
「お前からすれば女が出なければ全部外れだろう」
スラルは呆れながらも次の召喚ドアに手をかける。
「さ、次に行くぞ」
召喚ドアから再びモンスターが出てくる。
「ちょぷー!」
出てきたのは真っ白いオクトマン、即ちオクトキングだ。
だが、そのオクトキングはただのオクトキングではなく、全身が筋肉ムキムキでやたらとてかっている。
ランスはそんなオクトキングを見てげんなりする。
「外れも外れではないか! 全く、本当につまらん事だ」
オクトキングは4本の腕を使って目にも止まらぬ攻撃を仕掛けてくる。
「むぅ!」
「うお! こいつ強いぞ!?」
その目のも止まらぬ拳はランス達全員を襲い、タイガージョーも黒部もその拳に足を止めさせられる。
「ふん、多少は強かろうが所詮はオクトマンだ。とっとと死ねーーーーっ!」
ランスは触手の先についている拳を器用に弾くと、そのままオクトキングに斬りかかる。
だが、このオクトキングもまた只者では無く、ランスの攻撃をその体捌きで受け流した。
「むっ」
まさかただのオクトキングが自分の攻撃をここまで器用に避けるなど思ってもおらず、ランスも思わず不満そうな声を漏らす。
何しろランスにとってオクトマンは中堅処のモンスターでしかなく、その王とされるオクトキングもそこまで強いモンスターとは思っていない。
だが、このオクトキングは普通のオクトキングとは違うらしい。
その証拠に、ランスに対して敵意と言うよりも闘志を剝き出しにして襲い掛かって来る。
「なんだこいつ。本当にオクトマンか?」
ランスの知るオクトマンとは全く違う様子にランスも訝しむ。
「こいつは召喚ドアから出てきたオクトキングだ。我等の居る世界のオクトキングとは違うのだろう」
「ふーん。まあ所詮はオクトキングだ。ぶっ殺す!」
ランスにとってはオクトキングはオクトキングでしかない。
事実、このオクトキングはランスの知るオクトキングでは無い。
このオクトキングは武人的な思考を持つ、退く事を全く考えていない存在だ。
「上等じゃねえか!」
「フッ…こいつもまた漢か。ならば拳で応えるのみ!」
黒部とタイガージョーもそのオクトキングの闘志に当てられたのか、闘志を漲らせてオクトキングに向かって行く。
「…男と言うのは分からぬの」
「まあ世界には色々なタイプが居るものだ。我等はゆっくりと見てるとするか」
スラルとお町は少し離れて男達の戦いを見る。
「ふむ…やはり我等の世界に居るオクトキングとは違うか。さながら大怪獣と言った所か」
「大怪獣?」
「ああ。以前に戦った事もあったが…ランスと黒部、そしてレンが居ても勝てなかったダイクウマリュウカイキングとかいう奴も居たな。まあ今ならどうなるか分からんが。そしてある刀を手に入れるために戦った富嶽という奴も居たな。何れも恐ろしく強い奴等だった」
「ランスと黒部殿、そしてレンが居ても勝てぬ奴か。魔人以外にもそんな奴が居るのか」
スラルの言葉にお町は驚愕する。
ランス、黒部、そしてレン…何れも自分を圧倒的に上回る強者だ。
そんな存在が集まっても勝てぬ相手が居るとは思っても居なかった。
それも魔人では無い存在だと言うのだから驚きだ。
「世界は広いという事だ。我も元魔王ではあるが…まあ今の現状は我の臆病さが招いた事か…」
「どういう意味じゃ」
「いや、忘れてくれ。これは我としても忘れたい事だからな…それよりもお前も見ているがいい。アレが人類…いや、世界でもトップレベルの者達の戦いだ」
スラルに促され、お町はランス達の戦いを見る。
そこは既に凄まじいプレッシャーが放たれており、側で見ているだけなのに冷や汗が出てくるほどだ。
黒部の爪が、タイガージョーの拳が、そしてランスの剣がオクトキングに突き刺さる。
だが、オクトキングはそんな攻撃に一歩も退く事無く、その肉体を駆使して攻撃をする。
タイガージョーはその拳を受け流し、黒部は一撃を喰らっても構わず前進し、ランスに至ってはカウンターを叩きこむ程の余裕がある。
「…我には入れぬ世界じゃの」
お町はそう感嘆の声を上げるしかない。
事実、あの戦いは最早人外の戦いという他に無い。
そしてそんな奴等が集まれば、常人はただ遠くから見ているしか無いのだ。
「それにしてもランスの奴…何だかんだ言ってもタイガージョーとの特訓が役に立っているではないか」
「む、そうなのか?」
「ああ。足さばきが洗練されている。無駄が無くなっていると言えば良いか。まあ、ランスの攻撃は昔から無駄は無かったが…」
ランスの剣の中に居たスラルはランスの動きが一番良く分かっている。
昔に比べればその動きは洗練されているのは明らかだ。
肉体を使った技術には詳しくは無いが、それでも元魔王として知識くらいは存在している。
「恐らくは無意識なのだろうな」
「黒部殿はランスより石丸が強いと言って居たが…スラルの目から見てもそうなのか?」
「我は昔の藤原石丸を知らぬ。恐らくは昔ランスと戦った時が全盛期では無いのだろうな。それに帝の力とやらの影響力を考えれば…まあ正直分からんな。我は帝の力とやらを見て無いからな。見て無い物を評価する事は出来ぬよ」
ただ、あの黒部が言うのだから間違いは無いのだとは思う。
黒部がランスを焚きつけているのは理解しているが、スラルとしても帝の力とやらは大きいのだと思う。
(バランスブレイカー…か。あの時黒部が持っていたのはリングだった。それと同等の物が三つ揃い、使いこなせるとなれば…それを差し引けばランスを上回ってもおかしくは無いか。ランスにも切り札は有るが、ランスはまだ発展途上だからな)
スラルにとってはランスはまだ完成しているとは言えない。
いや、剣術に限ればランスの技はスラルにはもう到底理解出来ない域に達している。
だが、スラルにとって何よりも興味深いのは、ランスが色々な力を引っ張って来ることだ。
あの時の神の試練…ガイズで魔王ククルククルの一部と戦った時もそうだった。
ランスの剣はククルククルの力を取り込んでいた。
それこそがランスの意志で形を変えるランスの剣なのだろう。
(恐らくは今はラ・バスワルドの力が大きいゆえにククルククルの力の片鱗が抑えられている。だがそれが融合すれば…非常に興味深い)
ランスはこの事に関しても特に何も考えていないだろう。
自分の剣が便利に使いやすくなった、それくらいの認識しかないのは間違いない。
だが、スラルにとってはまさに可能性の塊…その未来はまさに無限、ランスのレベルと同じなのだ。
(バランスブレイカーは物だけでなく人にも当てはまる。パイアールもそうだろうし、石丸もそうなのだろう。だが、それはランスとて同じだ)
やはり自分が見込んだ男は凄い男だった。
スラルは自分の目利きに満足していた。
「なあ…一つ下世話な事を聞いてもよいか」
「ほう…お前からそんな言葉が出るとはな。聞こう」
お町は少し顔を赤らめる。
「…性交というのはそんなに気持ちが良いのか?」
「………本当に下世話な事だな」
お町から出た言葉にスラルは言葉を失う。
何とかそう絞り出したが、直ぐに頭を切り替える。
(ま、まあお町の周りにはそういう事を教えるような奴は居なかっただろうしな…側に居た男がアレだからな)
「ま、まあ気持ちが良いと言えば…そ、そうだな」
「…随分と歯切れが悪いな。お前らしくも無い」
「う、うるさい! わ、我はそういう会話はしたことが無いのだ! いつもランスに巻き込まれてばかりだしな…」
思えば初体験の時から散々だったような気がする。
(いや、そもそもランスが悪いのだ。魔王城で捕らわれの身で堂々と我の部下と性行為に及んでいるなどと誰が想像する!?)
今思い出してもランスの非常識さには呆れてしまう。
だが、同時に昔を懐かしとも思ってしまう。
(魔王であった頃に比べれば僅かな時間なのにな…不思議とランスと居る時間の方が長く感じるな)
不思議な感覚を覚えるが、とにかくそれは今は頭の片隅に追いやる。
「きょ、興味があるにょか?」
「…噛むな。お前は散々ランスとしているだろう」
「そ、そういう話は我はした事が無いんだ! それに態々自分の性について話すなんて事を出来る訳が無いだろうに…」
散々ランスのセックスを見せつけられ、自分も何度もランスに抱かれているが、それでも改めて口にするのは気恥ずかしい。
魔王だった頃は興味は無かったが、ランスに出会ってからそういう知識が無駄に増えていってしまった。
「べ、別に我とてお前とランスの性行為の話を聞きたいなんて言っていない! た、ただ男に抱かれるのはどういう感覚なのかと聞いているだけだ!」
「そ、そうか! だったら最初からそう言え!」
スラルは改めて咳払いする。
そしてランスとの閨を思い出し―――顔が朱に染まってしまう。
「ま、まあ悪く無いぞ。あいつはああ見えて優しい所もあるからな。正直安心する所もある」
「優しい、か。一般的に見れば割と鬼畜な所もあると思うがな」
「鬼畜と言うよりも子供なだけだ。ランスが本当の意味で鬼畜なら、誰もついてはいかないさ」
ランスはその性格上鬼畜と呼ばれる事もあるが、スラルから言わせれば本当の鬼畜では無い。
本物の鬼畜はあんなものではない…スラルは人間のそういう面を見て笑って来た立場なのだから。
それに比べればランスは甘い所があるし、女に対しては基本的に優しい所を見せる。
男に関しては異常に厳しいが、まあそれは今更どうしようもない。
「あいつはあんな性格だが、奇妙なカリスマがある。それは我が持ちえなかったものだ」
「カリスマ、か。人間の英雄とはそういうものなのじゃろうな」
「そうだな。藤原石丸も同じだ。それ故にランスとは決して相容れぬ存在ではあったがな」
「頂点は常に一人か。黒部殿もそんな二人に魅せられたのだな…」
ランスと肩を並べて楽しそうに戦っている黒部を見てお町は羨ましいと思う。
まさに自由…アレこそ王としての姿なのだろう。
それに比べ、同じ王となるべく作られた自分が何と小さい事か、と思ってしまう。
「話は戻るが…まあランスはセックスも…上手いんじゃないのか? 我はランスしか経験が無いから何とも言えんが…」
「まあそうじゃの。日光もレンも喜んでランスに抱かれているようじゃからの」
「お前がランスに抱かれたいというのであれば我は止めんぞ。そういうのは個々の自由だしな」
「ランスが1人の女に縛られるのは想像出来ぬからな…まあそれがあの男に惹かれた者の宿命なのかもしれんな」
お町の言葉にスラルはため息をつく。
無意識から出た言葉なのかもしれないが、お町がランスを見る目はまさに御伽噺を見る少女の目だ。
(無理も無いか…鬱屈し、己の存在意義を疑問視していた少女が、ランスという劇薬に出会ってしまえばな)
ランスの性格はともかく、やって居る事は正に御伽噺のような英雄譚なのは間違いない。
それだけの力、決断力、そして強運を兼ね備えている。
問題なのは、ランス自身は混乱を招く事に長け、その中で最終的に結果を出してしまうという厄介な性質を持っている事だ。
ランスが関われば不幸になる者が出るが、同じようにランスに救われる者も居る。
ただ、不幸になる者が多いのが問題なのだろう。
「ただ、あいつに付き合うのならば相当な覚悟がいるぞ。何しろランスは魔人どころか魔王にも目を付けられる男だからな」
「最初に目を付けたお前が言うと説得力が有るな」
「…否定はしない」
ランスという男はそれだけ魅力が有るという事だろう。
ただ、その魅力は非常時に輝くのであり、平和な世界ではそれは波乱と混乱を招くのだ。
「いい加減に死ねーーーーーーっ!! ランスあたたたたーーーーーーーっく!!」
戦いの方はそろそろ終わりを迎えるようであり、ランスの必殺の一撃がオクトキングの体を完全にとらえた。
「終わったな」
それを見ただけでスラルはランスの勝利を確信する。
ランスから放たれたのはジルに対して放った必殺技と同じだ。
ランスアタックの闘気と空間すらも斬り裂く技術が合わさり、全てを破壊する力となって襲い掛かるのだ。
その証拠にオクトキングの強靭な筋肉を引き裂き、その体がバラバラに砕け散る。
「フン、雑魚は雑魚だな」
ランスは剣を収める。
ただ、相応に苦戦はしたのは間違いなく、ランスの体にも傷が残ってしまっている。
「お前もまさしく強敵だった…」
「前に戦った怪獣みたいな奴だったな。まああの時みたいに負けねえけどな」
タイガージョーも黒部も無数に傷が有り、激しい戦いだった事を伺わせる。
「お疲れ。ランス、体は大丈夫か」
「慣れてきた。だが、ぶっ放した後は腕が痛いな」
スラルはランスの腕を見る。
前みたいに出血や筋肉にダメージは無いようだが、それでも腕は痛むようだ。
「技が技だけにな…連発して慣れる訳にもいかないか。だが、この調子なら完成も近そうだな」
スラルは満足そうに笑う。
「後は我がバスワルドの力を付与してどこまでやれるか…だな」
「そういやそっちもあったな…」
ランスは魔人レキシントンと戦った時の事を思い出す。
あの時は確かにレキシントンの無敵結界を斬れたが、ランスとスラルですら使えたのはほんの一瞬、一振り分の時間しか無かった。
それを解消するためにランスは色々と世界を回ったが、結局日光という無敵結界を斬れる存在が出来てしまった。
それでも新たな必殺技を得られたので無駄ではない時間なのは間違いなかった。
「今日はもうやめだ。戻るぞ」
ランスは腕を軽く振るがやはり戦闘は難しいと判断する。
威力は高いが、継戦能力が無いのはランスとしては不満だ。
この必殺技を放つたびに休まなければならないのなら、ランスの本分である冒険に大きな支障をきたしてしまう。
魔人や悪魔などを相手にしないなら必要無いのだが、魔人を相手にしている事が多くなってきたので、ランスとしても少し思考が寄り道してしまっていた。
スラルはそれに気づいているが勿論何も言わない。
今必要なのは、その魔人を相手にする力だからだ。
「ランス。一撃の技を鍛えるのではなく、魔人の無敵結界を斬れる一撃を長い時間維持する事も考えれば良いのではないか? 当たれば確かに決着がつくかもしれんが、その状況に持っていくのも大変だろう」
「そうだな。そっちも考えるか」
スラルは自分の言葉をランスが受け入れた事に内心で笑みを浮かべる。
ランスが自発的にやるのも良いが、こうして軽い誘導を入れる事も時には必要だ。
そしてその日もランスの召喚ドアでの戦いは終わりを告げた。
その夜、その女は突然現れる。
「………また、増えたな」
ジルはこの前まで居なかったタイガージョーを一瞥するが、直ぐに興味を失いランスを見る。
当の本人であるタイガージョーはその背筋が凍り付いていてそれ所では無かった。
「別に構わんだろ。で、それよりも褒美は決まったのか。あ、その前にレベルだレベル」
「良かろう…」
ランスの言葉にジルは何処からかメガネと水晶玉を取り出す。
そして魔王が唱えたとは思えない魔法を唱える。
「ランス。お前のレベルは93となった」
「おお、早いな。これもクエルプランちゃんのアイテムのおかげか」
「スラル。お前のレベルは89になった」
「仕組みを知っていると複雑な気分だ…」
「お町。お前のレベルは61となった」
「とうとうそこまで上がるか…」
「以上だ…さて、ランス。以前にお前が望んだ褒美…これをお前にやろう」
ジルはメガネを外すと、何処からか一枚の札を取り出す。
「なんだこりゃ」
ランスから見ればそれはただの札であり、価値が全く分からない。
そんなランスを見てジルは唇を吊り上げる。
「それは…魔法解除の符…これを使えばあらゆる魔法を解除できる…それが魔王であってもな…」
「何だと! よーし、じゃあ早速ケッセルリンクを」
「それは出来ぬ…ケッセルリンクに施したのは封印。その符で解除は出来ぬ」
「なにー!?」
怒るランスを見てジルは更に笑みを強くする。
だが、その笑みは決して好意的な物ではない。
「これならば…絶対服従の魔法等も解除できる…それが例え魔王の施したものでもな…ただし使用は一度きり…どう使うかはお前の自由だ」
「一度だけか…」
ランスはジルが寄越した符を見て考える。
魔法は便利だが厄介なものでもある。
魔法のトラップや魔法によるロック、例を挙げればきりが無いだろう。
「まあいいか。貰ってやる」
「魔王を相手に大きく出るな…まあいい…狂王を倒して見せろ」
ジルから邪悪な気配が消えると、そのまま薄い笑みを浮かべてジルの姿が消える。
魔王が消えた事で、張り詰めていた空気がようやく弛緩する。
「………アレは一体」
タイガージョーは絞り出すような声を出す。
アレは決して関わってはいけないもの…戦う気すらも起きなくなる絶対的な凶悪さしか感じられなかった。
「アレが魔王…この世界の支配者だ」
「魔王…か」
「そして…ランスの目的。彼女を取り戻すのがランスの目的だ」
「…あいつがランスの元奴隷と言われても信じられねえけどな」
黒部も魔王のプレッシャーを前には何も言えない。
そしてランスの目的がどれ程までに強大で無謀なのかとも。
「君の目的は…彼女を倒す事では無く、救う事か」
「フン、あいつは俺様の奴隷だ。奴隷が主人より偉くなるなどありえんだろうが」
「フッ…君も又漢だな」
タイガージョーはランスがどれ程重い決意を背負っているのかようやく理解した。
果たしてそれが可能なのか…普通は誰もが首を振るだろう。
「そのためにまずは狂王を倒す。魔王に比べれば狂王はまだマシだな」
スラルはこれからの事を考える。
「狂王について分かっているのは、魔法や小細工を一切使ってこないという事だ。その代わり硬い早い強いが備わった厄介な存在ではあるが」
単純で小細工は無いが、シンプルに強い。
その手の奴は搦め手で何とかしてきたのがランスだが、生憎とその搦め手が通じない。
やはり場所が悪く、あまり広くないこの空間ではランスの卑怯な作戦が立てられるほどの地形も無い。
幸いにもこのレストエリアと言うべき場所までは追って来ないが、逆に言うと狂王のテリトリーでしか戦えないという事でも有る。
「本来であれば耐久戦と行きたいのだが…その耐久戦を出来る条件が無いのがな」
今のメンバーは耐久戦に全く向いていない。
戦いを維持する能力を持った者が存在していないのだから仕方が無い。
レンが居ればそれが出来るのだが、居ない者の事を考えても意味が無い。
「だったら速攻だ。速攻でケリをつければいい」
「その通りなのだが…問題なのは速攻をかけても倒せない事なのだがな」
ランスの言葉は間違っていないのだが、問題なのはそれをしても倒せない狂王の耐久力だ。
何しろランスアタックがまともに決まっても平然と殴りかかって来る相手なのだ。
その硬さと耐久力は最早異常とも言える。
「ただ、氷の魔法が有効なのは分かっている。ランス、お前の剣に氷の魔法を付与すれば有効打になると思う」
「そうか。だったらそうすればいい。前みたいにスラルちゃんが剣の中に入る必要は無いのだろう」
「ああ。今の我なら直接付与できる。ただ、魔法の制御は出来ないから我とお前の合体技程の力は出せないがな」
「あんなのここだと出せないだろうが」
「まあそうだな。今分かるのはそれくらいか…」
狂王の性質、有効な属性は分かったがそれ以外の情報は無い。
一体どういう種族なのかも不明だ。
何度か戦ってはいるが、同一個体かどうかも怪しい所だ。
なので狂王を倒すのは一戦で倒す以外に方法は無い。
「ランス、取り敢えず我が付与する。お前の剣を貸してくれ。我では持てんから付与するのにも一苦労だ」
「そうだな。ほれ」
ランスはテーブルの上に剣と刀を乗せる。
「あ、そうだ。こっちにも付与しておけ。そういうのは何個あっても良いからな」
「そうだな。では始めるか」
スラルは精神を集中させ、ランスの剣に魔法の付与をする。
幸いにも狂王に有効なのはスラルが得意とする氷の攻撃。
スラルも付与がやりやすいのが非常に助かる。
「ふぅ…これで二つ。そしてもう一本はお前が何処かで手に入れた剣だったな」
「ああ。結構良さそうな物だったからな。俺様にはこいつがあるから問題無いが」
ランスは冒険の末に手に入れた一本の剣を乗せる。
中々良さそうな剣で、ランスも今手にしている剣、そして魔人と戦う時に使っていた魔剣カオスが無ければこの剣を使っていただろう。
そう思うくらい、この剣は中々良かった。
スラルはその剣を受け取るとその剣にも魔法の付与を行おうとする。
だが、その顔がどんどんと曇っていく。
「どうしたスラルちゃん」
「いや…何故か付与が上手くいかん。我の魔法が弾かれているような感じがする」
スラルは何回か付与を行おうとするが、中々上手く行かない事に首を傾げる。
ランスはそれを見て剣を手にする。
「別に出来ないなら構わん。こいつがあれば良いからな」
出来ないなら出来ないでランスとしても構わないので、そのまま剣を戻す。
「それよりもとっととあのバケモノをぶっ殺すぞ」
「そうだな。とりあえずまずは狂王を何とかするか」
そしてランス達は狂王に挑むべく、召喚ドアを開ける。
召喚ドアから出てくるのは普通よりも強いが、それでもランス達の敵では無い。
中にはオクトキングのような強いモンスターも出てくるが、ランス達は問題無く倒していく。
「おうランス、次はこいつにするか」
黒部は倒れているモンスターを尻目に次のドアを指さす。
「正直どれでもいいな。まあたまにはお前の言う事を聞いてやるか」
ランスが召喚ドアを開けると、そこから再びモンスターが現れる。
そこから現れたのは1m程の大きさしかない緑色のモンスターだった。
「む…お前は」
ランスはその緑色のモンスターを見て驚く。
「あなたは…ランス殿!」
「何だ。知り合いか?」
緑色のモンスター…怪獣王子はランスを見て喜びの声を上げる。
「久しぶりだな、怪獣王子」
「ランス殿も久しぶりですぎゃ」
ランスと怪獣王子は親し気に握手をする。
それを見て黒部は非常に複雑な顔をする。
「…ランスが男と握手してやがる」
「何でお前がこんな所に居る」
「虹色に輝くドアが現れたと思ったら、ランス殿が現れたのですぎゃ。そしてここは一体…」
怪獣王子は周囲を見渡す。
そこは異質な世界で、怪獣王子としても初めての場所なので目を輝かせている。
「ここは異世界だが…我等にとっても異世界だ。久しいな、怪獣王子」
「おお! スラル殿! お体が出来たんですぎゃ?」
「色々とあってな。ランス、久々の旧友との再会なんだ。今日は終わりにしないか?」
「そうだな。お前と話すのも久々だからな。ついてこい」
ランスは結構上機嫌に怪獣王子と共に歩いて行く。
その光景を見て黒部は憮然とした顔をしている。
「黒部殿?」
「…気に入らねえ。俺との態度の差があり過ぎねえか」
「まあ…恐らく男であろう怪獣王子ですが、ランスとは思えぬくらいに友好的でしたな」
「俺よりあいつがいいってか。あの野郎」
黒部が不機嫌な様子を見て、お町は思わず笑みを浮かべるのであった。
カミーラ関連の情報を集めるためにランス6をプレイしてます
パッチのおかげでスムーズに進むのはいいですね
あとランス4もクリアしないとな…
ランス1~3までって本来はアリオスが解決するはずだったらしいですけど…
仮にアリオスが全部解決したとして、第二次魔人戦争を解決出来たのかな?
ランス6プレイしてると、ランスが欲望に任せて無茶苦茶しないとゼスの問題解決しないんだよね…
腐った上の連中が根こそぎ魔軍に全滅させられた訳だし
ランスのやった事は確かに滅茶苦茶だけど、一応は良い方向に解決はしてるんですよね
石丸とかルーンがランスの立場だったとして、第二次魔人戦争解決出来てたのかなあ…とも思ってしまいます