大陸―――魔王は居ないが、魔人達は思い思いに過ごしている。
その中で、一人の魔人が驚き、そして歓喜の表情を浮かべた
「どうした、ガイ」
カオスはそれに気づく。
そこにあるのは明らかな喜びも有りながら、同時に狂気すらも浮かんでいた。
「魔王の支配が弱くなった。理由は知らんが、ジルの力が大幅に下がった」
「そんな事が分かるのですか?」
ガイの言葉に日光は驚く。
この魔人はなんと魔王による絶対命令権を受けていない。
理由は知らないが、とにかくそういう体質らしい。
だからこそ、魔王に対してここまで強い翻意を抱いているとも言える。
「だがチャンスじゃの。お前ならジルをぶっ殺せるぞ」
「ああ…だが、今はジルはここに居ない」
「だったら準備を整えろ。そのために色々と動いていたんじゃろ」
カオスの言葉にガイは笑う。
全てはこの時のために、ガイは色々と手を回していた。
魔王を殺すために人間とも出会い、ある存在を見出していた。
「日光…お前は本当に魔王を殺す気があるんだな」
「ええ。それは間違いありません」
ガイの言葉に日光は頷く。
例えランスに何を言われようとも、日光はそれを曲げる気はない。
その後でどうなろうとも、まずは魔王という存在を倒さなければ何も始まらないのだ。
「ならばお前に会わせたい奴が居る。そいつならばお前を使いこなせるだろう」
「…そうですか」
「ブリティシュ、お前は使わんのか?」
カオスがブリティシュを見る。
ブリティシュならば問題無く日光を使える力があるだろう。
「僕は日光との相性が悪いみたいだからね」
ブリティシュは苦笑するしかない。
事実、ブリティシュでは日光の力を完全に扱う事は出来なかった。
「本当はランスが使うのが一番いいんだけどね…」
「…ランス殿は無理です」
ジルと戦う事はランスは絶対に拒否するだろう。
それどころかジルについてしまうかもしれない。
それは極端かもしれないが、ランスならあり得なくないというのが恐ろしい。
「後は…ジルがこの世界に戻るのを待つだけか」
ガイはその目に静かな炎を宿しながら佇んでいた。
天界―――
クエルプランは自分の腕輪に触れる。
「…ランスは力を使えたようですね」
ランスが持っている腕輪はクエルプランが身に着けていたモノ。
その腕輪に細工を施し、ランスへと手渡したのだ。
「次のレベルへの獲得経験値が30%減るというアイテム…有効活用してくれていれば良いのですが」
クエルプランがランスへと渡した腕輪には、超素質のオカリナというバランスブレイカーの効果を移しこんで渡していた。
本来であればクエルプランの腕輪など渡す必要は無く、そのアイテムを渡せば良いだけなのだが、クエルプランは何故かそうしてしまった。
自分の持っている物をランスが身に着けている、という事が何故が無性に嬉しかった。
「そしてもう一つの力…上手く機能しているようです」
クエルプランが施した最大の機能…それはバスワルドに纏わる物だ。
もしこれをALICEが知ったら間違いなく怒鳴り込んでくる案件だ。
(まあ…ALICEも色々と干渉しているのですから、私にもそれくらいは許されるでしょう)
本来であればクエルプランに人間界に干渉する権利は無い。
が、ランスは今は超法規的措置が取られている状態だ。
クエルプランがランスのレベル神をしているのは、ランスの監視の役割も有る。
尤も、今はそれも形骸化してしまっており、今では神の実験の一つにもなってしまっている。
今回クエルプランにこの話を持ち込んだのは他でもない、ラグナロクの言葉だ。
二つに分かれたラ・バスワルド…そしてその神聖を使い現魔王ジルにある事を施したとの事だ。
同時に、そのジルを目的としてるランスもまたバスワルドの力の一部がその剣に宿っている。
それがぶつかり合うとどうなるか…そんな事も神の間では検証の対象になっている。
それもそんなに期待している訳でも無く、何かしら面白い事が起きれば良いという緩いものではあるのだ。
「私の神聖を宿してバスワルドの力を引き出す…一体ラグナロクは何を考えているのでしょうか」
ラグナロクからこの提案をされた時は驚いた。
まあラグナロクはバスワルドの直属の上司だから、何かしらの思惑は有るのだろう。
そもそもバスワルドの力は人間にどうにか出来るものではないので、こうして神が干渉せざるを得ない状況になっているのだ。
言ってしまえば神の暇潰しであり、同時に創造神を喜ばせるための一石を投じたものでもある。
ランスは創造神のお気に入りのようで、その活躍・挫折・冒険を楽しんでいるらしい。
だからこそ一切の手出しは無用なのだが、ALICEはそれでもランスをどうにか排除しようとしているようだ。
神の力が使えないなら、人を動かして排除しようとしているのだろうが、生憎とそれは今の時代が許さなかった。
なので今回はセラクロラスに干渉したのだが、それは結果として神を喜ばせる結果にはなったようだ。
「それにしても…ランスが居るのは異世界…それもかなり厄介な所のようです」
今回ランスが意図せずにクエルプランの神聖を引き出し、バスワルドの力をその剣に宿したのだろう。
その波動はクエルプランの腕輪越しに伝わって来た。
同時にランスがどの世界にいるのかも大体だが理解出来た。
クエルプランが今している腕輪と、ランスに渡した腕輪は元々一つの存在、その程度の事は造作も無い。
「クエルプラン様! ハウセスナースを連れてきました!」
「ちょっと放しなさいよ! 私、これから子供を産もうと思ってたんだから!」
その時、一人のエンジェルナイトがハウセスナースを連れてくる。
「ご苦労。ハウセスナース、あなたに話が有ります」
「え? ってクエルプラン様!?」
まさか目の前に居るのが自分よりも遥かに階級が上の神な事にハウセスナースは驚く。
元々地上で新種のモンスターを生み出すのが聖女の子モンスターと呼ばれる神の仕事。
なので天上界の神とは接触は皆無だ。
「あ、あの…どうして私はここに…」
流石のハウセスナースもクエルプランの前では冷や汗が止まらない。
それだけの力の差があるし、上の言う事は絶対なのは神の世界でも同じだった。
「いえ、あなたに仕事を与えます。この世界に居る彼等を呼び戻してください」
「え…? でもそれってクエルプラン様なら簡単に出来るのでは…」
「あなたがやる事に意味が有るのです」
「は、はい…でもどうしようか…」
ハウセスナースには確かに異世界の存在にコンタクトを取る力が有る。
そしてその世界に人間を送り込むことも可能だ。
実際、そうやってハウセスナースはランス達を異世界へと送り込んだ。
クエルプランが映し出した映像を見ていた時、そこに居る一体の緑の存在を見てハウセスナースは目を輝かせる。
「あ…この方いい!」
それは怪獣王子であった。
以前の怪獣神官には残念ながら会う事すら叶わなかった。
少しの間泣きはらしたが、こうして新たな恋を見つけたのだ―――尚、その恋は実る事は無い。
「よーし、交信開始。なむなむ…」
こうしてハウセスナースは怪獣王子に向けて交信を始めるのであった。
そして異世界では―――
「ま、待てランス。お前は何を」
「がはははは! 誰がお前の主人かしっかりと教えてやるからな!」
魔王であるジルが人間のランスに押し倒されていた。
いくら力が落ちたとはいえ魔王、人間が勝てる訳が無い。
が―――何故かジルは力が全く入らなかった。
それどころか今までにないくらい心臓が高鳴り、その冷たい肌が温かみを帯びていた。
「まずは早速一発行くぞ! とーーーーーーっ!!」
「う…きゃ、ああああああ!」
まるで生娘のような悲鳴を上げるジル。
ハイパー兵器は何の躊躇いも無くジルの中に入っていき、ランスもその刺激に満足そうにする。
何故か今のジルは人間のような感触で、入れただけで強制的に絞られる感覚はもうない。
「うむうむ、さっきのお前もいいが、やっぱりセックスは楽しむもんだ」
「お、お前は…」
ジルは何かを言おうとするが、その甘い刺激に何も声を出せない。
(一体…何が起きて…)
まるで人間のように喘ぐ自分にジルは困惑する。
体が思うように動かず、人間に好きにされている。
だが、それを全く不快に思う事は無い。
それどころかもっとして欲しいと心がこの男を欲していた。
(ジル…か。人であるジル…昔に捨てたモノが…また現れたとでもいうのか)
魔王ジルと人間ジル…実際には二人は全く違う存在となってしまっていた。
本来のジルならば、人に犯さられ両手足を斬られ、人を恨んでいた時に魔王となってしまった。
それ故に心が歪み、魔王の血に飲み込まれてしまった。
しかし…ランスと出会った事でその悲劇は変わってしまった。
奴隷になるところを助けられ、共に旅をし、仲間たちと共に危険を乗り越えてきた。
そして悲願であった魔人を倒し、愛する男に抱かれた。
更にはその身に子供まで出来…ジルは幸せだった。
だが、悲劇は起き、ジルは己の手足を斬られ子も殺されてしまった。
しかし、その悲劇を起こしたのは人では無く魔王だった。
ジルは魔王の血に飲み込まれたが、その憎しみは魔王ナイチサ、そしてその配下の魔物達に向かった。
その結果、魔王としてのジルは人としてのジルの心を疎ましく思い、その心を封印した。
そのはずなのに…それでもジルはランスという人間を忘れる事は出来なかった。
そして魔王ジルもまたランスという人間に興味を持ってしまった。
二人のジルが互いにランスの事を想った結果が、今のジルを作ってしまった。
(我の力が弱まった…だから我が捨てた人のジルが力を戻してきた…なのに…)
それなのに魔王ジルは全く不快では無かった。
誰もが自分に媚び諂い、本音では全く喋らない。
配下のノスとて本当の自分を全く知らないし、ジルもノスを手駒くらいにしか思っていない。
ただ唯一…ケッセルリンクのみジルは気になった。
ランスに最も近い魔人であり、同時に魔人でありながら人を愛する女。
だからこそ…彼女を人質にしてランスを動かした。
その結果は大成功で有り、ランスは見事に狂王を倒して見せた。
(そうか…我はケッセルリンクに嫉妬していたのか…)
ケッセルリンクは確かに自分に忠誠を誓っているのは間違いない。
それはジルへの後悔と、ランスとジルの子供を間接的に殺してしまった償い。
しかし、それでも彼女の一番の理由はランスという人間を愛しているからなのだ。
だから…ジルはそれが気に入らなかったのだ。
「あ、こら。泣くな。お前は魔王だろうが」
「…泣いてなどいない」
ランスは涙を流したジルに対して困惑する。
まさか魔王ジルが涙を流すなんて思っても居なかった。
「ほれ」
ランスはジルの涙を拭い、そのままジルに対して濃厚なキスをする。
ジルはそれを当然のように受け入れ、その黒い手足でランスを抱きしめる。
それだけでジルからは蜜が溢れ、ランスが触れている部分が非常に心地よい。
魔王になってからこんな気分になったのは初めてかもしれない。
長い水色の髪がベッドで揺れ、ランスはその形の良い胸を揉みながら動く。
異世界でジルとしたときは少女の姿であった。
その性癖も特殊で、今にして思えば随分なセックスをしたものだとランスは思う。
(やっぱああいうのはいかんな。ちょっぴりいじめるくらいなら良いが、首はいかんな)
あの時はジルの性癖に合わせていたが、このジルは違うらしい。
実はセックスに関してはオーソドックスで、アブノーマルなプレイはした事が無かった。
「ランス…お前は…不思議な男だ…」
「俺様をそこらへんの男と一緒にするな」
ランスはジルを絶頂に導くべく激しく腰を動かす。
ジルはランスの成すがままになっており、顔色も桜色に染まっている。
それに気分を良くしたランスは更にジルの奥を責め続け、その最奥もハイパー兵器を喜んで迎え入れている。
そして最も奥にハイパー兵器を押しつけると、そのまま皇帝液を放つ。
「ん…」
ジルは満足そうに受け入れると、魔王とは思えない程優しくランスを抱きしめる。
ランスも久しぶりのジルとのセックスに満足していた。
(うむ、これこそ俺様の奴隷のジルだな。そう思うともっと色々とやれそうな気がするぞ)
ハイパー兵器に力が宿り、ぐったりとしているジルをうつ伏せにする。
そしてそのまま有無を言わさずにハイパー兵器を突っ込み、そのまま激しく動かす。
「あ…く…」
ジルは短く呻くが、それ以上は何も言わない。
弱弱しくシーツを掴み、枕に顔を埋めてされるがままになっている。
それを見たランスは上機嫌で腰を動かし続け、そのまま何度も何度もジルを絶頂に導いた。
「ふーっ。そろそろ疲れてきたな」
何度目かの絶頂の後、流石のランスもハイパー兵器に力が入らなくなってしまった。
ランスの欲望を命一杯受け止めたジルの様子は凄まじく、荒い息をつきながら虚ろな目をしていた。
何度も何度も絶頂に導かれただけでなく、その口も胸も使ってランスとセックスをしていたのだ。
(いかんな。相手が魔王だからってやり過ぎたか)
流石のランスもやり過ぎたかと思った時、ジルがランスを見る。
「ランス『様』…」
「…あん?」
ジルの口から聞こえたランスの名前…それは魔王ジルがランスを呼ぶ時の言葉ではなく、奴隷であるジルがランスを呼ぶ声だった。
「指…輪…私の…指輪」
「ジル…お前ジルか!?」
ランスは少し慌てると、ベッドの棚に置いておいた指輪を取り出す。
これこそランスの運命の女としてジルのアイテムだ。
ナイチサに腕を落とされた時に回収したもので、ランスが常に手元にもっていた物だ。
ランスはジルの指に指輪を嵌める。
するとジルの赤い目がその髪と同じ色のブルーへと変わっていく。
「ランス様…」
「ジル…! この馬鹿が!」
ランスの怒鳴り声にジルは薄く笑う。
「ごめん…なさい…」
「一体どーなっとるんだ! 説明しろ!」
「はい…スラルさんを…呼んで下さい…」
「待ってろ!」
ジルの言葉にランスは急いでスラルを呼びに行く。
全裸で現れたランスにスラルは呆れた声を出すが、ランスは有無を言わさずスラルをジルの元に連れていく。
「スラル…さん」
「…お前、ジルか!?」
そしてジルを見てスラルもまた驚く。
今のジルには明らかに理性が有るからだ。
「魔王の力が大幅に弱まっている…? 一体どういう事だ」
「その話は後だ。ジル、とにかく説明できるなら説明しろ」
「…はい」
ジルは快感に震える体を何とか起こす。
ランスはそれを見てジルの体を自分の体で支える。
「ジル。魔王の時の記憶はあるか?」
スラルの言葉にジルは首を振る。
「ありません…魔王ジルは…人としてのジルの心を封じました。でも…私のランス様への想いだけは封じられなかった…だから魔王ジルもランス様を求めていたのだと思います」
「そうか…お前もまた魔王の血に抗っていたという事か。そして魔王としてのジルがそんなお前を疎んじて封じたという事か」
「はい。でも急に魔王の私の力が弱まって…そしてランス様の持っている剣と、この指輪の力で何とか意識を…」
「奇跡だな…お前のランスへの想いは魔王の血に飲み込まれる事は無かったという事か」
スラルはジルの心の強さに苦笑するしかない。
「どういう事だ、スラルちゃん」
「魔王ジルと人としてのジルは別人格という事だ。だが、ジルは魔王の人格の方が圧倒的に強い。だから人としてのジルの心は魔王ジルが何をやっているか全く分からないんだ。だが、魔王ジルは人のジルが分かるのだろうな」
「そうだと…思います。でも急に魔王としての力が弱まって…」
「確かにな…今のお前の力は凡そ5%あれば良いといった所か…」
ジルから放たれる魔王の波動を感じ取りスラルは呻く。
どういう理由かは分からないが、魔王ジルは大幅に弱体化したという事は確かなようだ。
「私が…魔王になって丁度1000年というのが関係しているのかもしれません」
「1000年…確かナイチサも950年の間魔王をしていたな。そしてジルを後継者として選んだ。つまりは血を渡さねばならなかったという事になる…」
魔王とは永遠…のはずだった。
スラルの先代の魔王であるアベル、そして初代魔王であるククルククルは死亡したと聞いている。
そしてスラルもまた血に飲み込まれて死亡してしまった。
もしかしたらその時に魔王という存在に何か変化があったのかもしれない。
「ナイチサが次の魔王を選んだ…そうか、魔王の血とは誰かに受け継いでいくものとなったのか。その期間が凡そ1000年といった所か」
「そうなのか?」
「我の予想だからそれがあっているとは言えん。だが、そうで無いとジルが急激に弱体化した理由が説明出来ない」
ナイチサもランスと戦った時は大幅に弱体化していた。
魔王でありながらナイチサは死にかけだった。
だからランス一人も殺しきる事が出来なかったのだ。
そして今のジルがそのナイチサと似たような状態だとしたら…
「ジル、お前を救う方法はあるか」
「有ります…魔王である私が…私を排除する方法を見つけ…でも実行出来ずにいた…」
「ではその方法を手早く教えてくれ。魔王ジルが絶頂から戻れば再びお前の意識は沈む」
スラルの言葉にジルは頷く。
言われるまでも無く、ジル自身それは理解していた事だった。
「ランス様の剣で…私の魂を回収させる…それがジルの目的の一つ…」
「そうか。だからジルはランスを強くしようとしていたのか。ランスに自分を斬らせ、余分な人の心を回収させる…随分と回りくどい手段だとは思うが」
「それは…魔王ジルも…ランス様を求めていたから…自分のために…ランス様が動くのが楽しかったから…」
ジルはランスを見る。
ランスは少し不機嫌そうな顔をしている。
「フン、だったら回りくどい事をしてないでさっさと言え」
「魔王ジルは回りくどいんです…私には…魔王ジルの記憶はありませんが、魔王ジルがどう考えていたのか…それだけは分かりますから」
「成程な…しかしそこで予想外の事が起きた。1000年経過し己の力が落ち、人としてのジルが力を取り戻した」
スラルはジルがしている指輪を見る。
「約束の指輪…」
「何?」
「この指輪の名前…なんです。ランス様は私を取り戻すと約束してくれました…だからこの指輪が私を呼び戻してくれたんです」
ジルは嬉しそうに自分の指輪を見る。
異形と化していても、やはりランスと共に手に入れたこの指輪を出来たのは大きい。
「あ…魔王ジルが…目覚めます」
「ランス、後は頼む。我は我で色々と考える」
「おう。ジルの事は俺様に任せておけ」
「頼んだぞ」
スラルはそう言うとランスの部屋を出ていく。
「ランス様…」
「気にするな。お前は俺様が取り戻す。だからそれまで寝ておけ」
「…はい、ランス様。でも…これだけは言わせてください」
「何だ」
「私はランス様の奴隷ですけど…ランス様を愛しています」
そう言ってジルは恥ずかしそうに笑う。
「バカが。そんなのはとうの昔に知っとるわ。だからとっとと俺様の所に戻ってこい」
「…ありがとう、ランス様」
そう言ってジルは目を閉じる。
ランスはジルがしていた指輪を外すと、それを常に見つけていた袋に仕舞う。
ジルの目が開くと、そこには魔王ジルの赤い目があった。
「ランス…貴様、我に何をした」
「普通にセックスしただけだぞ」
「…我は何を言った」
「がはははは! 俺様の事を愛してると言ってたぞ! もう離れたくないとな!」
「…愚かな」
ジルはそう言って笑うとランスを押し倒す。
「随分と…好きにしてくれた」
「がはははは! 好きにしてやったわ! あ、でもまだこっちはしてなかったな」
ランスはそう言って形のいいジルの尻に手を伸ばす。
こっちも何回か経験しているためか、ランスにとっても十分に快感を味わうための器官という認識があった。
ただ、相手が拒めば無理に使う気はない。
ランスは性癖に関してはノーマルだった。
「ククク…魔王相手によく言う…」
「あ、そうだ。どうせさっきの会話も聞いてたんだろ」
「………」
その言葉にジルは無言となる。
どこか不愉快な様子でランスを睨んでいる。
だが、ランスはもうそんな魔王の視線には臆さない。
目の前にいるのはやはりランスの奴隷であり、大切な女であるジルでしかないのだ。
「お前も俺様の女になれ。そうすりゃお前だって苦しまなくすむだろ」
「…貴様は何を言っている」
「思えばどっちもジルなのには変わらんのだからな。だったらどっちも助けてやる。ついでだしな」
ランスの言葉にジルは二の句を告げなかった。
一体この人間は何をいっているのだろうか。
この世界の支配者である魔王に対し、無礼にも程がある。
なのに―――どうしてこんなに胸が高鳴るのだろう。
「人間が…魔王に愛を囁くつもりか」
「魔王だろうが魔人だろうが女だろうが。俺様は相手が女なら常に全力だぞ」
ランスは嘘偽りなくそう思っている。
ジルもそれを嫌と言う程理解したからこそ…どうしようもなく心が騒いでいた。
魔王としてメインプレイヤーを苦しめたいという気持ちはある。
だが、それ以上に魔物に対する憎しみが勝っている。
だからこそ、ランスに対しては魔王としても殺意も何も無い。
有るのはランスの強さへの興味と…今になって湧いてきたどうしようも無いくらいの渇望だった。
「お前は…何故そんな事を言う」
「昔お前に酷い事を言ったからな。まあそいつにはもう会えんだろうが…今のお前なら話は別だ」
「ランス…」
(駄目だ…これ以上…こいつの言葉は危険だ)
この男は危険すぎる。
その言葉だけで自分を惑わせ、どうしようもないくらいに胸に気持ちが溢れてしまう。
「やめろ…」
「昔の俺様も余裕が無かったんだな。だが、俺様も成長したという事だ」
「これ以上は…」
「お前もジルだからな」
その言葉で―――魔王ジルの心はついに弾けた。
狂おしいまでの想いが全身に突き抜け、ランスを共に居るだけでもう何も必要無いと思ってしまうくらいに。
「ランス…!」
魔王ジルはそのままランスにキスをする。
そこにはランスをもてあそぶようなキスは無く、純粋に舌を絡めただただ勢いのまま相手を求めていた。
絡み合った舌から唾液を吸い、飲み込んでいく。
それだけで心が高鳴り自分の中に会った何かが満たされていくような感覚が広がっていく。
「がはははは! 普通にやるぞ。魔王としてもお前と普通にやるのは初めてだなー」
ランスは気楽そうにそう言うと、もう限界だと思われたハイパー兵器が大きくなる。
ジルはもうそこから目を離す事は出来ない。
セックスなどただの性処理であり、ランスにとっては尤も効率の良い褒美だった。
だというのに、今は自分がソレを心待ちにしている。
「魔王だろうが何だろうが関係ない。お前は俺様の女だ」
その言葉を最後にジルは初めてその日自分の記憶が無くなるという感覚を覚えた。
それほどまでに―――この男を求めた。
1000年間待っていた刺激はそれ程までに甘く、そして喜ばしいモノだった。
次から魔王戦争なんだけど、詳細が不明なのでどうすればいいか…
他の魔人は4年間も何してたんだよっていうのがネックなんですよね