ランス再び   作:メケネコ

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ランスとガイ

 ガイは今日ジルとの決着をつけるつもりだった。

 あまり時間をかければ魔王城を覆っている結界の力が切れてしまうだろう。

 そもそも4年間結界が持つという事自体が、ガイという存在の異質さを表していた。

 それは順調に行っていた―――はずだった。

 だが、ガイの想像もしていないような事が起こった。

 空間が歪んだかと思うと、そこから男が現れた。

 そして勇者の持つ剣を黒い剣で受け止めていた。

「がはははは! 英雄ランス様参上!」

 そのまま力任せに勇者の剣を弾き、勇者に蹴りを放つ。

 それをまともに受けた勇者は吹き飛ばされる。

「ラン…ス…」

「おう、ジルか。お前が来ないから結局あんな奴を頼る事になったぞ」

「あんな奴とは何よあんな奴とは!」

 ランスが指を刺すと、そこからは明らかに怒っている水色の髪の女性が現れる。

「というかお前そんなにいい体をしてたのか…」

「いやらしい目で見るな! そんな事より怪獣王子様は…」

 水色の髪の女性―――ハウセスナースは周囲を見渡す。

 すると空間が揺らいだかと思うと、そこから3人の女性と1体の異形の存在が現れる。

「まさかこんな光景に出くわすとは…いや、そもそもこれがあり得ない状況か」

「こういう場面に出くわすのはもう才能ね。それにしてももうこんな状況になってるなんてね」

「よもや…としか言えぬな」

 スラル、レン、お町が周囲を見渡してそれぞれ驚いている。

「ランス殿…この状況はどういう事ですぎゃ?」

 そして最後にクリスタルに封印されているケッセルリンクを担いだ怪獣王子が目を白黒させていた。

「ケッセルリンク…」

 クリスタルに封印されているケッセルリンクを見てガイが驚く。

 まさかケッセルリンクがこんな状況になっているとは思っても居なかった。

「で、ジル。こいつは誰だ」

 ランスはガイに剣を向ける。

 相手が魔人なのは気配で分かるが、この魔人はランスも知らない魔人だった。

「…ガイ。魔人筆頭…魔人の中で最強の男だ」

「ふーん。こんな奴がカミーラとケッセルリンクよりも強いのか」

 魔人最強、それが目の前の男。

 そしてこの魔人こそが歴代最強の魔人だろう。

「人間。何故お前が魔王を助ける」

「そんなのこいつが俺様の女だからに決まってるだろうが」

「…狂人か。ならばジルと共に死ね」

 ガイにとっては乱入者だろうが何だろうが敵でしかない。

 そしてこんな人間がどうなろうが知った事では無い。

「待って下さい!」

 ガイが殺意を向けた時、勇者の手の中にあった日光が叫ぶ。

「その声は…日光か」

 ランスは勇者の手の中にある日光に気づく。

「おい日光。どういうつもりだ」

「………私の目的は魔王を倒す事。それは以前から言っていたはずです」

「俺様の前でもそれを言うか」

「はい。魔王さえ倒せば人は救われるのです」

「フン、世界や人がどうなろうが俺様の知った事か」

 ランスは本気で世界などどうでもいいと思っている。

 全ては自分の女の為、それがランスの行動原理の全てだからだ。

「よせ。この狂人には言葉は通じない。だったらジルと共にここで殺してやる」

 ガイは殺意をむき出しにしてランスを睨む。

「む…」

 その殺気とプレッシャーにはランスも思わず剣を握る手が強くなる。

 ジルの言う通り、確かにこの男は魔人の中でも相当強そうだ。

 しかも手の中にあるのはよく見ればカオスだ。

(…という事はこいつがジルをリーザスに封じやがった奴か)

 魔王ジルの城が、ランスの知っているリーザス城と全く同じ位置に有る事にはランスも驚いた。

 何しろランスにとっては魔王の城は大陸の西、即ち魔物の領域にあるものという認識だったからだ。

 それはランスが自分の世界の歴史に全く興味が無い事から来る事なのだが、ランスは別にそんな事は気にしない。

 重要なのは、こいつがカオスを使ってジルを封じ込めるという事実だけだ。

「フン、お前程度が俺様を殺せると思うなよ。逆にぶっ殺してやる」

 ランスは凄まじい速度でガイに斬りかかる。

「!」

 ガイはその速度に反応が出来なかった。

 それはガイですらも反応できない速度とタイミングだった。

 たかが人間の狂人と油断もあったのかもしれないが、とにかくその速さはガイを驚かせた。

 

 ガンッ!

 

 ランスの剣が無敵結界に阻まれるが、その衝撃でガイも揺らぐ。

「ぐ…無敵結界か」

「無敵結界の上から魔人に衝撃を与えるだと…? 貴様、何者だ」

 互いが互いに睨み合う。

「お前なんぞに俺様の名前など勿体ないな。とにかく殺す」

 ランスが剣を構えた時、

「待って下さいランス殿!」

 聖刀日光が人の姿を取る。

「何だ日光。この裏切り者が」

「…お願いです、ランス殿。ここは退いて下さい」

 日光としてはランスをこの戦いから遠ざけたかった。

 ジルとランスの関係を知っており、尚且つランスがジルを救うために動いているのも知っている。

 だからこそ、この場には現れて欲しく無かった。

 でも、この男が自分の女の危機に駆け付けない訳が無いのだ。

 それを分かっていたのに、自分はそれでもガイと共に協力する事を選んだ。

「俺様の女を虐める奴は誰だろうと許さん。それが神だろうがぶっ殺す。それは分かってるだろう」

「それでも…お願いします。退いて下さい」

 日光は地面に手をついてランスに頼む。

「断る。ようやくジルが俺様の元に戻るのだ。それを邪魔するなら誰だろうと敵だ」

「ランス殿…」

 日光の懇願にもランスの意志は全く揺るがない。

(分かっていた…分かっていたのに…)

 だからこそ、日光はランスに来てほしく無かった。

 もし来てしまえば…こうなるのは分かっていたから。

「互いに互いが邪魔だという事だ。ならばお前から死ね」

 ガイの手に強力な魔法が宿る。

 その威力はまさに強大かつ凶悪、あのレッドアイをも上回りかねない力がそこにある。

「ファイヤーレーザー」

 ガイはランスに魔法を放つ。

 ランスはその魔法にも躊躇いなく突っ込んでいく。

 本来であれば人間などガイの魔法があれば一撃だ。

 ましてや魔法は必中、逃れる事は出来ない。

 だが―――そこにはガイが想像も出来ない事が起きた。

「!」

 ランスが黒い剣を構えると、ガイの放った魔法がその剣に吸い込まれるように消滅したのだ。

 そしてランスの右手に有るのは聖刀日光だった。

「おい日光!?」

 カオスが驚きの声を出すが、ランスの放った一撃はガイの無敵結界を斬った。

 そして返す刃でランスの黒い剣とガイの黒い剣がぶつかる。

「も、申し訳ありません! ま、まさかこんな事になるなんて…!」

 ランスの手の中で日光が驚きの声を上げる。

 その様子に、カオスも日光に想定外の事が起きたのを理解する。

「がはははは! 俺は日光のオーナーだぞ!」

 ランスは偉そうに言っているが、実際にはかなり行き当たりばったりだ。

 ランスが日光が必要だと思い、彼女に触れた時日光の姿が刀になったのだ。

 そしてランスはそのまま日光を手に、ガイの持つ無敵結界を断ち切った、それだけの話だった。

「バカオスが! もう貴様などいらん! このままぶっ壊してやる!」

「お前にバカと言われる筋合いは無いわい! おいガイ! 何とかしろ!」

 カオスは魔人を斬れるが自分では手も足も出せない。

 なので持ち主に任せる以外に無いのだが、ガイはカオスにとっては理想の持ち手だった。

「く…」

 ランスの凄まじい連撃にはガイも驚愕する。

 ガイは確かに魔法が得意だが、剣も得意なのだ。

 究極の魔法戦士であり、歴代でもトップに入る人間が魔人となったのだ。

 魔力は人間の頃よりも落とされたが、剣はそんな事は無かった。

 だが、目の前の人間の剣の腕は別格だった。

「こ、こいつは…!」

 これにはカオスも驚愕するしかない。

 この男が強いというのは理解はしていた。

 だがまさか魔人であるガイを上回る剣を持っているとは思ってもいなかった。

 ガイは何とか反撃をする。

 ガイから見てもランスの剣は無茶苦茶で、一見すると隙だらけなのだ。

 だが、その隙を見て攻撃すると、何故かカウンターが飛んでくる。

 そしてついにランスの剣―――日光がガイの体を捉えた。

「!」

 鋭い痛みと共に手から勢いよく血が噴き出る。

 これまでに感じた事の無い痛みにガイの顔が一瞬歪む。

(これが…聖刀の力か)

 日光の力はガイも分かっているつもりだった。

 自分にはカオスがあるので、日光は勇者に渡した。

 なので日光の力がどれ程のものなのか分からなかったが、ジルとの戦いでは非常に有効だった。

 魔人である自分程では無かったが、それでもジルに対してもダメージを与えられるのは大きかった。

 しかし、それは自分も同じだった。

「おい日光! お前いい加減にしろ! 何時までいいように使われてやがる!」

 カオスの怒声にランスの手にあった日光の姿が、刀から人型に変わる。

 ランスはそんな事を気にせずにもう一つのランスの剣である刀を抜く。

 剣とは違う鋭い一撃にカオスが悲鳴を上げる。

 日光と違って魔人への殺意は無いが、単純に日光よりも攻撃力が高い。

「クッ!」

 ガイは魔法が得意だが、同時に剣士としても一流だ。

 だが、その自分が剣では圧倒的な強さで押されている。

 魔人と人間の差を感じさせない、恐ろしい程の力と技だった。

 ガイとしては異常なまでにやり辛かった。

 だがしかし、ガイにはそんな事はどうでも良い事だった。

 確かに強い―――強いが所詮は剣だけだ。

「フン」

 ガイはランスの剣を受け止めると、そのまま力づくでランスを弾き飛ばす。

 剣で勝てなくとも魔人の持つ基礎能力で押し切る方法に切り替えたのだ。

 少々疲れるかもしれないが、ここでこの男を殺しておく方が良いと判断した。

 流石のランスも魔人最強の男の力には敵わず吹き飛ばされる。

「死ね」

 ガイが魔法を放とうとした時、

「スノーレーザー」

 恐ろしい威力の魔法がガイを襲う。

 ガイは咄嗟に魔法バリアをはるが、恐ろしい程の威力の魔法には驚愕する。

「魔王に逆らう魔人…非常に興味深い」

 スラルがランスの横に立ちガイを見る。

 スラルの目から見ても普通の人間の魔人に見える。

 だが、確かに強い…魔人最強の名は伊達では無いのだろう。

 ケッセルリンクが警戒するのも頷ける。

「とりあえずヒーリング。魔王相手ならスズメの涙だと思うけどね」

 レンはジルに回復魔法をかけるが、その傷の治りの遅さに眉を顰める。

「…魔剣と聖刀に…つけられた傷だ。簡単には…治らぬ」

 ジルはこれまでの戦いでカオスと日光に何度も傷をつけられた。

 力が大幅に落ちているとはいえジルは現役の魔王。

 魔王の体力は尋常では無いが、流石にカオスと日光で年単位で攻撃されればそれが蓄積してしまう。

 なのでレンが回復魔法をかけても完全には治る事は無い。

「ランス殿! お願いです! 止めて下さい!」

 日光がランスの前に立つ。

「どけ。日光」

 ランスの声は非常に低く、感情が感じられない声だった。

 その声を受けて日光の体が震える。

 それは普段から感情丸出しのランスから放たれたとは思えない程の声だった。

 だがそれでも、日光は引き下がる訳にはいかないのだ。

「お願いします! ここで魔王を倒さなければ、永遠に人類は…」

「そんなのは知らん。人類などどうなろうが俺の知った事では無い」

「ランス殿…」

 ランスの答えに日光は悲しそうな顔をする。

 しかし、ランスはそれを本気で言っているのだから始末が悪い。

 何だかんだ言って魔人と戦ったりしているが、それは全て女が絡んでいるからだ。

 ただし、それは決して悪い結果にはならず、確実に良い結界に向かっているのだ。

「日光。お前もいい加減にしろ! 儂等の目的を忘れたか!」

 カオスの言葉に日光は唇を噛むが、何かを決心したように一人の青年の所へ向かう。

 そして聖刀日光の姿になると、青年は日光を手に取る。

「それがお前の答えか。まあいい、もう一度誰が主人か思い知らせてやる」

 ランスは剣を構えるとガイと睨みあう。

「愚かな奴だ。女の為に世界を犠牲にするか」

「アホか。世界よりも女の方が重要に決まってるだろうが」

 何の躊躇いも無いランスの言葉にガイはむしろ感心してしまう。

 この男は本気でそう言っているのが分かったからだ。

「お前達もか」

 ガイはランスの後ろに居る者達を見る。

 そこには自分が匿っていたレンの姿もある。

「私の仕事はランスを守る事。ランスがどんな選択をしようともね」

 レンも躊躇いなく言いきる。

 説得は間違いなく不可能と言えるくらいにハッキリした態度だ。

「我はお前につく理由が無いな。それにジルの事は譲る事は出来んな」

「ランスが決めたのならば我もついていく。それが黒部殿の望みで有り…我の望みでも有る」

「ランス殿には世界を救ってもらった大恩があるぎゃ。それに…友を助けるのに理由は必要無いぎゃ」

 スラルも、お町も、怪獣王子もハッキリと言い切る。

「何故です!? あなたは魔人でも使徒でも無いのに…」

 勇者が本当に信じられないと言った顔でランスを見る。

 そんな勇者など眼中など無いように、ランスはその手の中の日光を睨む。

「おい日光。まさかこの男とヤッたんじゃないだろうな」

「………してはいません」

 ランスの鋭く低い声に日光も小さな声で答える。

「まあいい、信じてやる。とにかく俺様の女に手をだすならぶっ殺す。それが最強の魔人だろうが関係ない」

 突き出された剣を見てガイは鼻で笑う。

「ならばジルと共に死ね」

 ランスとガイは強く睨み合い―――同時に駆ける。

 ハデスとカオスがぶつかり合い火花を散らす。

「カオス! お前もとっとと死ね!」

「ハッ! ジルに誑かされたか!? お前こそとっとと死ね!」

 外から見ると仲が良いだの、似た物同士だと言われていたランスとカオスだが、今は互いに本気で殺意を向けていた。

 ランスにとっては最早カオスは濁声のうるさい剣でしか無かった。

 そしてそれを持てるこの男もどうせ下品な男なのだろうとランスは勝手に思っていた。

「お前などと遊んでいる暇はない」

 ガイは鬱陶し気に言うと力任せでランスの剣を弾く。

 だが、ランスにはそんな力任せの技など通用しない。

 剣を弾かれたというよりも、態と弾かせて見せる。

 想像と違った手応えを感じたガイは一瞬を眉を顰めるが、それはランスの剣によって答えが返って来る。

 弾かれた剣を拾うでも無く、ランスは手にした刀でガイの体を斬っていた。

 日光によって無敵結界を斬られているので、ガイはその攻撃を受けてしまう。

 流石にまともに受けるような間の抜けた事はしないが、思いもよらない攻撃にガイは唇を噛む。

 久々に感じた鋭い痛みにガイの動きは一瞬止まる。

「しっかりしろガイ! 無敵結界に頼り過ぎじゃ!」

 カオスの喝に直ぐに意識をランスに向けるが、その時にはランスは既にガイに迫っていた。

 その手には弾いたはずの黒と赤に彩られた剣が握られており、ガイに向けて強力な攻撃を仕掛けてくる。

「こいつ…!」

 ガイの体から嫌な汗が流れる。

 目の前の男の剣術は明らかに異常であり、間違いなく自分の剣を上回っている。

 矢継に放たれる剣、そして刀が交互に襲ってくるので、ガイとしては異常なまでにやりにくい。

 まるで複数の剣士の相手をしているように錯覚してしまう程に、ランスの剣はガイに着実に迫っていた。

「剣ならお前より上だ! だったら相手の土俵で戦うな!」

「分かっている! 一々うるさいぞ!」

 カオスの言葉に怒鳴ると、ガイはランスに対して力で対抗していく。

 ランスは人類の中でもかなりの膂力の持ち主だが、流石に身体能力では魔人には敵わない。

 それでもランスがガイの剣を受け止められるのは、それまでに重ねてきた戦闘経験と技術の賜物と言えよう。

「スノーレーザー!」

 そして横からはスラルの強力な魔法がガイを襲う。

 その魔力は凄まじく、ガイから見ても人間とは思えない程の威力を持っている。

 勿論魔人である自分の方が圧倒的に魔力は上だが、それでもこの男と完全な連携を取られるとガイでも厳しいと言わざるを得なかった。

 ただ―――それはガイが剣を使う魔人であった時の話だ。

「フン!」

 ガイは魔法バリアでスラルの魔法を防ぐ。

 そしてそのままランスに向かって凄まじい斬撃を浴びせる。

 確かに剣ではランスには敵わないだろうが、それでもガイは剣LV2の持ち主。

 十分すぎる程の剣の腕前を持っているのだ。

 流石のランスも魔人の膂力で放たれる斬撃を受ける訳にはいかない。

 なので剣で受け流し、そしてカウンターを決めていくという形になる。

「ガイ!」

 そしてそれを見た勇者がガイに加勢をする。

 その手に握られた刀でランスに向かって斬りかかる。

 今度はランスの方が防御に回らざるを得ない。

 何しろこの勇者も剣LV2の持ち主で有り、更には『勇者』なのだ。

 勇者とは言葉通りの存在であり、それこそ魔人を、そして魔王を倒す事の出来る力を秘めている存在だ。

 今はその本来の力は発揮は出来ないが、勇者としての特性は有効なのだ。

「エンジェルカッター!」

 勇者に対してレンの魔法が飛ぶ。

 勇者はそれをまともに受けたはずだが、大したダメージを受けてはいないようだった。

 それを見てレンは顔を顰める。

 相手は魔人や使徒の類では無いのは分かっていたが、まさか自分の魔法を受けてほぼ無傷だとは思っていなかった。

「業火炎破!」

 そうしている内にガイが凄まじい威力の魔法を放ってくる。

 辺り一面の炎がランス達に襲い掛かって来る。

 そして魔法は必中、決して避ける事は出来ないので防ぐしかない。

 ランスは襲ってくる炎を剣で吸収する。

 ハウゼルの力を持つこの剣は、魔法であっても炎ならば防ぐ事が出来る。

 スラル、レン、お町はバリアを使ってその攻撃を防ぐ。

「フン…」

 ガイはその結果を見て顔を歪める。

「ガイ。彼等の力は並じゃない。どうする」

 カオスの言葉にガイは鼻で笑う。

「所詮は並ではないだけだ。問題は無い」

 そう、魔人筆頭であるガイにとっては何も問題は無い事だった。

 何しろガイは魔王の血が5%とはいえ、魔王であるジルを倒せる程の男なのだから。

「だが…何故ケッセルリンクがああなっているのかは気になるがな」

 ガイはクリスタルに閉じ込められているケッセルリンクを見る。

 何故あの魔人ケッセルリンクがああなっているのか理解が出来ない。

 ただ、アレをしたのはジルなのだろうとは予想がつく。

 しかし、そのケッセルリンクが何故人間達と共に異世界のゲートから出てくるのだろうか。

 気にはなったが、今重大なのはやはり魔王ジルだ。

 回復魔法がかけられてはいるが、やはりカオスと日光につけられた傷はそう簡単に癒えるものでは無いようだ。

 ガイの予想からして、もう少しでジルを倒す事は出来る。

 それを邪魔するのならば誰であろうと排除するだけだ。

 そしてガイはその突破口を既に見つけていた。

 ジルというのは非常に冷酷だ。

 ただ、ガイの目から見れば冷酷なのは人間に対してではなく、むしろ魔物に対してだ。

 ジルは人間に対してはむしろ無関心な方だ。

 それは長年ジルに仕えてきた自分がよく分かっている。

 部下のノスですらジルにとっては所詮はコマにしか過ぎないし、それは魔人筆頭である自分も同じだ。

 だが―――あの人間が現れた時、ジルの顔色が変わった。

 それはガイが今まで見た事も無い顔…冷笑ではなく、熱い感情を込めてこの男を見ていた。

 つまり、ジルはこの男に対して何らかの感情を持っており、それはこの男も同じだという事だ。

(ジル…見つけたぞ、貴様の一番の弱点を)

 それを思えばこの男はジルの援軍では無い、自分の目的を達成するための最期のピースだった。

(これで最後だ、ジル)

 二重人格であるガイの二つの意識は完全に一致していた。

 そう、魔王は殺す…その意識の元、ガイはいよいよ最後の詰めを行う事にした。




ガイとジルの戦いは4年…その間の他の魔人の干渉は恐らく無い
なので隔離された戦いか、異世界で戦ってた思うんですよね…
ガイとジルの戦いなんて目立って仕方ないだろうに
それが無いならもう上記の理由しか考えられませんでした
そもそもノスがガイと交戦していないのがおかしいですしね
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