ランスとガイ―――後の世で何人かの魔人がその二人を重ね合わせる。
別に二人の容姿が似ている訳では無い。
しかし、その戦い方…相手に勝つためにはあらゆる手段を取るのが似ていたのかもしれない。
そしてガイは静かにランスを見ていた。
ガイにとってはランスは厄介な乱入者…では無かった。
確かに剣は強いが、ガイに言わせれば剣だけ警戒すれば良いだけだ。
そして勇者ならばその特性を生かし、あの男を封じる事は可能なはずだ。
その取り巻きも厄介そうだが、所詮は魔人の敵では無いのだ。
「フン、俺様の邪魔をするなら誰だろうとぶっ殺す」
「剛毅な事だ。己の力も推し量る事も出来んか」
「そういう奴ほど大したこと無い奴だ。とにかく殺す、それだけだ」
ランスはそのままガイに向かって突っ込んでいく。
「させない!」
それを邪魔するのが勇者だ。
勇者は本来エスクードソードとという勇者専用の強力な剣を持っているのだが、生憎とそれは錆びついてて話にならない。
今の世界の人口はLPすらを超えており、勇者がその力を発揮できるような状況では無かった。
勿論この勇者本人はその理由を知っていたが、だからと言って後世のある勇者のような考えに至る事は出来なかった。
考えたとしても実行は物理的に不可能だったろうが―――とにかく、この勇者はごく普通の人間だった。
だからこそ、魔王を守るために自分達に戦いを挑んでくるこの人間が信じられなかった。
「どうしてあなたは魔王の味方をするんです!」
「魔王だろうが何だろうが俺様の女を殺そうとする奴は許さん!」
「魔王が…女!?」
勇者はランスと剣を通して睨み合う。
その目は怒りに満ちており、本気で怒っている事が分かる。
だからこそ尚の事目の間の男の事が信じられなかった。
魔王に操られていると言われても納得出来るほどだ。
そしてそんな男が日光の契約者で有り、自分以上に日光を扱いこなしていた。
それが勇者には許せなかった。
「魔王を倒す! その邪魔はさせない!」
「む…」
勇者の力が上がり、ランスですらも押し返される程の力がある。
ランスはその動きに逆らわずに受け流す。
勇者はそれにもバランスを崩すことなく、日光を巧みに使ってランスに斬りかかる。
その動きは非常に鋭く早い。
まるで上杉謙信のような動きにランスは不快な顔をする。
「邪魔をするな!」
ランスは力任せに勇者の剣を弾く。
ランスの剣を受けた腕が痺れるが、勇者にはそんな痛みはどうでも良かった。
この程度の痛み、魔王との戦いで何度も負っている。
勇者は続けざまにランスに攻撃を続ける。
ランスもまた剣と刀を使って勇者に斬りつける。
(凄い剣だ…! 僕よりも遥かに鋭い!)
そして勇者が分かったのは目の前の男が恐ろしい程に強いという事だ。
純粋な剣の腕前では完全に自分が負けているのは間違いない。
自分がこうして目の前の男と打ち合えているのは勇者の能力が有るからだ。
勇者には一度受けた攻撃は直ぐに見切れるようになるという能力が有る。
その能力でランスの剣を確実に見切っていった。
(お願いです…ランス殿…このまま勇者と戦っていてください…)
日光は勇者の手の中で祈るしかない。
もう一方ではガイがレン、スラル、お町、怪獣王子と戦っている。
幸いにもジルは傷が大きいらしく動けないのが幸いだ。
無敵結界が無くても、ガイならば間違いなくスラル達を制圧出来ると日光は思っている。
ガイも無暗にランス達を殺すような事はしないと日光は信じている。
万が一の事を考えて、日光は魔王と魔人以外の者は殺さないで欲しいと約束をした。
ガイもそれを受けて入れており、ガイの戦い方を見る限り可能限り殺さないように戦っているのが分かる。
そしてこの勇者なら、ランスを殺さずに制圧できるのではないかという淡い期待をしていた。
勇者の力は数年間の魔王との戦いで理解している。
それはまさに異質で、ランスとは違った意味で日光を使いこなしている。
魔王との戦いでピンチに陥ることもあったが、決して死ぬことは無かった。
そして魔王の攻撃ですら一度受ければ直ぐに見切っていた。
その力が有れば、ランスですらも倒せるのでは無いかと思った。
「お願いです! そこを退いて下さい!」
「やかましい! さっさと死ね!」
ランスの強烈な一撃を勇者は華麗に受け流した。
それはランスの剣の動きを完全に見切った動きであり、その動きにはランスですらも捉えられるものでは無かった。
いっそ不条理と思われるくらいに勇者はランスの攻撃を見切ったのだ。
勇者は返す刃でランスの胴を狙う。
決して殺さないように、峰打ちでランスを狙う。
ランスの鎧は壊れているので、まともに当たればランスでも骨が折れる程の一撃があるはずだ。
そうすればランスも動けなくなるだろうと思ったが、ランスはその攻撃を自身の刀で防いだ。
何時の間に抜いたのか分からないくらいの速さで刀を抜き、日光の刃を弾く。
「! 気を付けて! ランス殿の居合が来ます!」
「え!?」
そしてランスの動きを見て日光が鋭く叫ぶ。
日光の知るランスは剣士としては異質であった。
見るからに大陸の人間なのに、刀すらも見事なまでに扱って見せた。
ブリティシュも非常に凄い剣士だし、自分自身も相当な腕前の侍だったと自負している。
だが、ランスはそのどちらにも当てはまらない異質な剣士だった。
一見すると隙だらけに見えるのに、その実恐ろしい程の攻撃力を持っている。
そういう意味では侍に近いのかもしれないが、実際には全く違う。
それはランスだからとしか言いようの無い。
だからこそ、ランスという男と相対すると異常なまでにやりにくいのだ。
そしてランスは何時の間にか鞘に仕舞った刀を左手で掴み、居合斬りの態勢を取る。
勇者はそんなランスに対して嫌な汗が流れ、体が強張るのが分かる。
それでも日光を構えたのは勇者としての能力と言っても良かった。
一歩を踏み出すランスだが、その一歩が異常なまでに早い。
そして刀を抜くその手も勇者には残像しか残らないくらいの速度だった。
ランスの刀と日光が激しくぶつかり火花が散る。
日光はあまりのランスの居合の威力に、刀でありながらも冷や汗が流れるような感覚を味わう。
並の刀ならばあっさりと刀ごと斬られるでろう威力。
そんな一撃が凄まじい速度で放たれたのだ。
「…!」
勇者の腕が悲鳴を上げるが、そんな事を言う暇もなくランスの一撃が襲ってくる。
居合を防がれたのも気にせず、すぐさま刀を鞘に納めて剣で攻撃をしてきたのだ。
「グウッ!」
刀による一撃と比べると非常に重い。
その重さを受けていると間違いなく自分の腕が壊れてしまう、そう思ってしまうくらいにランスの剣は重く鋭い。
「フン、とっとと死ね!」
ランスはそのまま剣と刀を繰り出してくる。
(何てやりにくい…! まるで複数の剣士と戦っているような気分だ!)
勇者はそんなランスに対して冷や汗が止まらない。
確かに勇者は相手の攻撃を見切る事が出来るが、この男の攻撃はそもそも滅茶苦茶なのだ。
完全な我流で、尚且つ凄まじい膂力と速さを両立した完成された技術。
凡そこの男にしか使えない技だが、同時に勇者の能力ですらも困惑させる技となっていた。
(これがランス殿の力…やっぱり強い…)
日光は勇者ならばやれると思ったが、その考えが甘かった事を自覚する。
勇者の力は確かに凄いが、ランスという人間はそれをも覆しかねない力だった。
(ガイは…)
日光はガイの方を見るが、ガイはガイでこちらを援護する事は出来ないようだった。
レンと怪獣王子が前線に立ち、スラルとお町がそれを援護する。
何よりもレンの防御技術がずば抜けている。
ガイの剣すらも難なく防ぎ、高い魔力からくる防御魔法と回復魔法、そして単純に高い身体能力。
ランスすらも上回る身体能力に非常に強力な武具。
それらがガイの攻撃すらも防ぐ力となっていた。
「ラーンスあたたたーーーーーっく!」
「受けないで! 避けて下さい!」
ランスの必殺の一撃の気配を感じ取り日光が叫ぶ。
その必殺技の威力は日光は身に染みて知っている。
クリーンヒットすれば魔人すらも致命傷を負いかねない恐ろしい一撃。
それが今自分達に向けって放たれている。
勇者は日光の指摘に従い何とか避けようとする。
ランスアタックの一撃を何とか避けるが、襲ってくる衝撃波までは避けられない。
しかもそれが連続で来るのだからたまったものでは無い。
勇者は直撃こそ避けたが、ランスアタックの影響で大きく傷を負う。
吹き飛ばされ、血を吐き出すがそれでも勇者は立ち上がる。
勇者としてはここで必ず魔王を倒さねばならないのだ。
「まだ倒れていない…! 倒れる訳にはいかない!」
「…暑苦しい奴」
決意を秘めた勇者を見てランスは呆れた顔をする。
ランスにとってこういう暑苦しい奴は好きじゃない。
ましてやそれが自分の敵なら猶更だ。
「…お前は非常にムカつくな。うん、そうだ。邪魔しなければいいと思っていたが、お前は殺す」
「ランス殿!?」
ランスのあっさりとした殺意に日光は悲鳴に近い声を上げる。
昔から男に対しては辛辣だったが、それでもここまで強い不快感を示したのは初めてだ。
日光は知らないのだが、この男はランスの嫌いな男と雰囲気が似ていた。
その男とはアリオス・テオマン…LP期の勇者であり、ランスとも戦った事のある相手だ。
その時は引き分けに終わり、ランスは復讐のためにアリオスの女を襲おうとしていた事も有る。
その後はアリオスとの再会は無かったが、ランスは今でも気に入らない男としてアリオスの事を覚えていた。
そして目の前の男はそのアリオスとそっくりだ。
ランスにとってはそれだけで殺すという理由には十分だった。
「…どうしても退く気は無いと?」
「当たり前だ。分かったらさっさと死ね」
ランスのあまりにも自分勝手な言葉に勇者も覚悟を決める。
目の前の男は生かしておいてはいけない存在だ、そう思い本気で殺意を向ける。
その殺意を感じ取り、ランスもますます気に入らないという空気を隠そうともしない。
ランスの黒い剣が鈍く光ったような気がし、その圧力はどんどんと増していく。
「ランス殿! 私達が争う事は無いでしょう」
日光はそれでも尚ランスの説得を試みる。
ランスが自分達の前に立ち塞がるのは当然だ。
それは分かってはいるが、全ては人類の解放のためなのだ。
ランスにそれを分かって貰いたいが、やはりランスにはそんな事は関係無いようだ。
だがそれでも…日光はランスを止めたかった。
しかし、そんな日光の願いも虚しくランスと勇者は激しい戦いを繰り広げる。
そしてスラル達はと言うと―――ガイの圧倒的な力に押されていた。
「ク…こいつ!」
スラルは歯を食いしばってガイの魔法をバリアで弾く。
バリアの強さはそのまま魔力の強さに比例する。
スラルは元魔王である事と、これまでのランスとのセックスで限界レベルも上がっている。
そのスラルの魔力をもってもしても、ガイの魔法を防ぐだけでも手一杯だった。
「人間にしては中々やる。だが、それだけだ」
ガイは魔法だけでなく剣も使える。
なのでスラルは接近されればあっさりと倒されてしまうのは明らかだ。
よってレンと怪獣王子がフォローしながら戦っているのだが、それでもガイは圧倒的な強さを持っていた。
単純な攻撃力ならば狂王の方が上だが、攻撃一辺倒で知性の欠片も無さそうな狂王と違い、ガイは非常に戦いが巧みだった。
魔法と剣を巧みに使いこなしスラル達を全く寄せ付けない。
「魔人筆頭か…ケッセルリンクが警戒する訳だ…」
以前にケッセルリンクから聞いた話を思い出す。
ケッセルリンクはジルとの接触を控えてはいたが、完全に無くすことは出来ない。
そして魔王城に行った時にジルの側に居た二人の魔人の内の一体がガイだ。
ケッセルリンクはガイに対して非常に警戒していたようだが、幸いかどうかは知らないがガイからケッセルリンクに接触してくる事は無かった。
だが、それでもケッセルリンクはガイという魔人の得体の知れなさを自分達に警告していた。
しかしそれがまさかこんな形で自分達に牙を向くとは思っていなかった。
(時間か…無常だな。永遠とも思われた時間にこれほど苦しめられるとは)
話の流れからして、ガイとジルの戦いは長い間続いていたはずだ。
そうで無ければジルにあれほどのダメージが蓄積する訳が無いのだ。
(もしこいつらの争いのもっと早くに来ていれば…)
変な話だが、ジルの体が万全ならば苦労は無かっただろう。
もっと早くにこの魔人に対する対策が出来ていたはずだ。
しかし時間は無情にもランス達の敵になってしまった。
「邪魔をするな」
ガイから放たれる魔法がスラル達を襲う。
「クッ!」
「この…!」
「やらせん…!」
スラルとレンとお町がそれぞれバリアを放つ。
だが、この三人のバリアを無常にもかき消してガイの放つ魔法が襲い掛かる。
「貴様…一体何者だ? これ程の威力の魔法…これは間違いなく禁術。しかしお前はそれを躊躇わずに使ってくる」
スラルもガイが放つ魔法は俗にいう禁術と呼ばれる類の物だと理解していた。
魔王である自分にはそもそも必要では無い代物だったし、人間になっても禁術に手を伸ばす必要は無かった。
代償は決して軽く無いし、そんなモノに頼らなければならない程弱くないつもりだった。
「分かるか。だが答える必要は無い。そのまま大人しくしているのだな」
ガイはスラル達では無く、その後ろに居るジルを見ている。
言ってしまえばスラル達など眼中には無いのだろう。
それがまたスラルをイラつかせたが、それが出来る程の実力差もあるのも事実だ。
「させんぎゃ!」
そこに飛び掛かっていくのが怪獣王子だ。
怪獣王子も正面からガイの攻撃を受けているにも関わらず、その圧倒的な体力で耐え抜いていた。
そしてその小さな体に秘めた力でガイを攻撃する。
流石のガイも無敵結界を斬られた影響からか、怪獣王子の攻撃をまともに受けようとしない。
「…モンスターではないな」
ガイは怪獣王子の鋭い一撃をまともに受ける。
その衝撃は流石に大きかったようで、あのガイが思わず吐血する程だ。
ただ、吐血したと言っても魔人の再生能力は並ではない。
カオス、日光といった魔人に対して特効の武器で無ければ、魔人は傷ついても直ぐに再生してしまう。
(日光で一太刀入れられていれば…あの再生能力だけでも何とかなったのにね)
レンはそれを見て内心で唇を噛む。
強いとは思っていたが、まさかここまで強いとは思っていなかった。
「モンスターでもないお前が何故私の邪魔をする」
「言葉は不要ぎゃ。ランス殿が守ろうとしているのなら、それを守るのが最大の恩返しぎゃ。何よりも、友の危機を助けるのに理由は必要無いぎゃ」
「律儀な事だ…だが、お前のその行動は私達の世界を破滅させる。それをさせる訳にはいかぬ」
ガイは強力な魔法で一気に怪獣王子を倒そうとする。
「させない!」
その魔法の前に強力なバリアと盾の複合技術で対抗するのがレンだ。
持ち前のその技術を使い、禁術を放つガイの魔法すらも防いで見せる。
しかし、ガイの魔力は無尽蔵なのか、その禁術を連発してくる。
その威力の前にはレンも怪獣王子も押されていく。
やはり魔人筆頭の力は圧倒的で、ランスの力無しで相手をするのは難しかった。
(そのランスと互角に渡り合う…一体何者だ?)
スラルとしては日光を手にする男も気になる。
ランスと渡り合える人間など藤原石丸くらいしかいないと思っていた。
だが、現実にランスと渡り合っているのを見て、スラルは危機感を覚える。
(いかんな…流石に相手が悪い。まさかここまでの強さを持っているとは…)
魔人ガイの強さはカミーラもケッセルリンクをも上回っている。
特に夜のケッセルリンクよりも明らかに強いのが分かる。
魔法に関してはそれこそ非常識なレベルで、あのレッドアイよりも高い魔力を持っているだろう。
使ってくるのはLV2までの魔法だが、それに加えて禁術を代償無しで使ってくるので始末に悪い。
「いい加減にどけ」
「いかん!?」
ガイに手に宿る魔法を見てスラルは顔色を変える。
あの魔法は間違いなく白色破壊光線だ。
しかもそれに禁術の力が上乗せされている。
そんなのが放たれれば間違いなく自分達の方が持たない。
「白色破壊光線」
そしてガイから強烈な魔法が放たれる。
異常なまでに魔法の詠唱も早く、威力も尋常ではない。
それこそ禁術の力があるのだろうが、それでも異常とも言える力だった。
だが…その白色破壊光線はスラル達を飲み込む前に消滅させられる。
「…ジル」
ガイが憎々し気にその名前を呼ぶ。
ガイの白色破壊光線を無効化したのは魔王ジルだった。
しかしジルは息も荒く、明らかに無理をしているのが分かる。
「ジル!」
「…この一度だけだ。奴に…魔法を…使わせるな」
そう言ってジルはクリスタルに封印されているケッセルリンクに手を伸ばす。
それを見てガイは唇を歪める。
魔人ケッセルリンクがどうしてそんな事になっているか分からないが、もしジルがケッセルリンクの封印を解けば厄介な事になる。
「させん」
「それはこっちの言葉!」
「やらせないぎゃ!」
ガイはジルの妨害をしようとするが、それを邪魔するのがレンと怪獣王子だ。
「少しは本気でやるわよ。今回は『許可』が出てるのよ」
「む…」
レンの攻撃を受けてガイの顔色が変わる。
レンの武具の金色の輝きが強くなったと思うと、その背中から薄く透明の白い翼が生える。
「…元カラーか?」
ガイは一時期カラーの所に居た事がある。
そこで長い時間を生きたカラーは天使か悪魔になるのは聞いていた。
だが、流石のガイも本物の天使を見たのは始めてだ。
「生憎とそんなんじゃ無いわよ!」
レンは初めて『神』としての力を地上で解放した。
本来はこの力を使う事は禁じられていた。
それはクエルプランがこの世界のイレギュラーの介入を嫌ったからだ。
クエルプランはランス、そしてレンがこの世界のイレギュラーで有る事は分かっていた。
ただ、自分よりの上の存在である三超神が何も言わないので、クエルプランも放置していた。
そして上の言葉もあり、レダ0774と存在を『レン』という一人の神へと昇格させた。
その際にクエルプランはレンに神としての力を使う事を禁じた。
それはレンが本来はこの世界に存在しない神なので、その力を地上で振るうのを封じた。
しかし、今回のALICEの横入れの結果、その結果起こる事象に限って神の力を解放する事を認めた。
そして今こそがその時だ。
今回の戦いは本来であればあり得ない戦い、よってレンは神としての力を振るう事を認められた。
「ならば死ね。ファイヤーレーザー」
「光の壁!」
ガイの放つ強烈な魔法がレンに直撃するが、レンはその魔法を魔法と盾の力を使って弾く。
今のレンは『守護の神』と言うべき存在になっていた。
そしてレンには彼女も知らない秘密の姿がある。
それこそが『主人公を守る神』という力だ。
勇者を導く神がコーラスであるように、今のレンはこの世界のバグであり、主人公であるランスを守る神だ。
「エンジェルカッター!」
「フン」
レンの放つ強力な魔法をガイは防ぐ。
しかし先程よりも強力になっており、流石のガイも今のレンを一瞬で倒すというのは不可能に近かった。
「レン、お前…その力は」
スラルはレンの力に目を見開く。
前から強かったのは知っていたし、彼女がエンジェルナイトから階級が上がった事も知っていた。
だが、その力…言ってしまえば本気の力を出した事は無かった。
「今だけの力。あり得ない事が起きた時だけ…本当の想定外の事が起きた時だけに許されてるのよ」
「理由は分からないが…まあいい、とにかく力があるのならそれでいい」
スラルは魔法陣を展開する。
今のレンは間違いなく魔人級の力を持っている。
その彼女が完全防御に回るのならば、自分も出来る事をやるだけだ。
「ジル。ケッセルリンクの封印を解くのはどれくらいかかる」
「…わからぬ。我の力は…落ちた。魔王の力が…全てあった我の封印…直ぐには…解けぬ」
「そうか。ならば我の力が少しでもあった方が良いだろう」
スラルの魔法陣はジルにも作用している。
これは本来はジルが得意としていた魔法陣で、少しでも魔力の底上げになれば良いと考えてスラルは張った。
流石に焼け石に水なのだが、それでも無いよりも相当マシだ。
ここでケッセルリンクの封印を解けなければ、下手をすれば永遠にそのままという事もありえる。
それが魔王の力なのだ。
そして当人のジルはと言うと、ケッセルリンクの封印を解きながらも別の事を考えていた。
(…まさか…魔王である我が…追い詰められるとは)
ジルは実際には限界が近かった。
だからこそ…この4年間である事を模索していた。
ガイと勇者と戦いながらも、ジルは別の事を考えていた。
ただ、それももう限界だと思ったのだが、思わぬ助けが現れた。
(だからこそ…我も…やるだけ…)
そう、ジルにはやる事がある。
(ガイ…全てが全て…お前の…思うようには…させぬ)
GL1004年、運命の時は既に近づいていた
ルド大陸の禁術って本当に何なんだよ…
どんなのか分からないから中々戦いに組み込み難い
まあ私の想像力の低さから来ているんですけど