ケッセルリンクは周囲を見渡す。
戦によって荒れたであろう魔王城。
そしてそこには自分の主であるジルが座っていた。
ただ、ジルには今まであった迫力は小さくなっているように見えた。
ガイが魔王に戦いを挑んでいるのは何となく理解出来たが、何故そんな事になっているのかは分からない。
ただ一つ分かっているのは―――ガイがジルを殺そうとしている事だ。
それもランスの目の前でだ。
「ジル様」
ランスから離れたケッセルリンクはジルに跪く。
魔王とは魔人である自分が頭を垂れる相手。
それはどんな存在が魔王であっても変わる事は無い。
「ケッセルリンク…」
ジルはケッセルリンクを見る。
「お前は…いや、言うまい」
ジルは何かを言おうとして止める。
ケッセルリンクならばどんな事があろうとも、自分に逆らうはずが無いのだ。
そこには魔王の持つ絶対命令権など必要無い、確かな確信があった。
「ガイを…」
ガイを殺せ、そう言おうとしてジルは言葉を引込めた。
「いや…お前はお前の好きにするがいい…」
そして口から出たのは自分でも意外な言葉だった。
一言命令すればすぐすむ事なのだが、何故かそんな言葉しか出なかった。
「はい、ジル様」
ケッセルリンクはそれに頷くと立ち上がって再びランスの隣に立つ。
「済まない、ランス。遅くなった」
「間に合ったんならいいだろ。それよりも大丈夫なんだろうな」
「問題無い。少々事情が理解出来ないのだが難点だがな」
ケッセルリンクはガイを見る。
魔人筆頭ガイ…特に接点がある魔人では無かった。
ケッセルリンクも特に理由が無い限りは魔王城に近付く事は無いし、ジルもケッセルリンクを呼ぼうとは思わなかった。
結局ジルがケッセルリンクに命令をしたのは、スラルの残した書物に関しての事だけだった。
なのでガイとは親しくも険悪な仲でも無いが…強い魔人という事だけは知っていた。
ランス同様、人間の身でありながらも魔人を倒したという事も知っている。
「ガイ…理由くらいは聞こうか」
ケッセルリンクの声には、普段の彼女が出さない怒りが籠っていた。
そんなケッセルリンクを相手にしてもガイは顔色一つ変えない。
「魔王を殺すのに理由は必要無い。ただ魔王は殺す、それだけだ」
「…実にシンプルな理由だ。ある意味納得もいく。ジル様に逆らえる理由は知らないが…別に聞く必要も無いだろう」
「お前は何故ジルを守る。命令は出ていないはずだ」
ガイもジルがケッセルリンクに発した言葉は聞いていた。
ジルが発した言葉はガイにとっても意外だったが、まさかケッセルリンクが自らの意志でジルを守ろうとするのは意外だった。
「お前はジルを嫌っていたと思ったのだがな」
「嫌ってなどいない。複雑な感情は有るのは否定しないが…お前には関係の無い事」
ケッセルリンクはそう言って一対の手袋を取り出す。
深紅に染まった手袋には豪華な装飾が施されており、そこからは強い力を感じられる。
「まさか再びこれを使える日が来るとは思わなかった…嬉しい反面複雑だな」
ケッセルリンクは手袋を嵌めて複雑な表情を浮かべる。
「そういやお前はそれを使わんのだったな」
「ああ。私がこれを付けていいのはお前と共に戦う時だけ…私が魔人になってから守ってきた誓いだ」
この手袋はランスと手に入れた物で、それは運命の相手と一緒では無いと得られない物。
だが、ケッセルリンクは魔人となってしまった事でこの手袋を装備して戦う事は無いとも思っていた。
「これは魔人では無く、カラーのケッセルリンクがお前と共に手に入れたもの…私の宝だ」
これはランスとの絆の証でもあると思っている。
だからこそ、これはランスのために使うべきだという誓いも守り通してきた。
「そして…これ以上お前の前でジル様…ジルを傷つけさせる訳にはいかない」
それはケッセルリンクの持つ強い後悔。
ランスの目の前でジルを魔王にしてしまったという過去からくる贖罪なのだ。
「ガイ…おまえが何をしようとしているかは関係ない。だが、これ以上私の前で大切な者を奪わせる訳にはいかない」
ケッセルリンクの放つ圧倒的な力に勇者と日光は息をのむ。
(あれが…本気の魔人ケッセルリンク…)
日光はそのあまりの存在感に押されてしまう。
この感覚は初めて魔人に襲われた時のようだ。
それ程までに圧倒的な力をケッセルリンクは放っていた。
「ケッセルリンク。その人間のために命を懸けると言うのか」
「ああ。ジル様の命令があるからお前と戦うのではない。私は…そう、私はランスのために戦う。それはあの時から変わらない私の決意だ」
「…いいだろう。だが、お前は俺には勝てない。お前は嫌でもそれを思い知る事になるだろう」
ガイは剣を構える。
「ケッセルリンク。あの馬鹿剣は無敵結果を斬って来るぞ。それと魔人が斬られると滅茶苦茶痛いらしいぞ」
「だろうな。魔人への強い殺意を感じる…私はガイとは僅かにしか会った事が無いからな」
「使え。結構いい剣だぞ」
ランスは自分が冒険の時に見つけた剣を渡す。
ミスリルという金属で出来ているらしいが、ランスにはこの剣があるので必要無いモノだった。
「…良い剣だ。私が持っている剣よりも余程いい。流石はお前の目に適った剣だ」
ケッセルリンクはランスから渡された剣を握り笑みを浮かべる。
「こうしてお前の隣に立てる…不謹慎だが、これほど嬉しい事は無い」
「そんな事よりこいつらをとっととぶちのめすぞ」
「分かった。ガイは私に任せろ。お前はもう一人の人間を頼む」
「フン、一回ぶっ殺したんだ。今度こそしっかり殺してやる」
二人はそんなやり取りの後、真っ直ぐにそれぞれの相手へと向かう。
ケッセルリンクはガイに、ランスは勇者に。
「今度こそ死ね!」
「負ける訳はいかないんだ!」
ランスと勇者の剣は互いにぶつかり合い、再び火花を散らせた。
「ケッセルリンク。お前ならばこの事態を静観するのだと思っていたのだがな」
「それが分かるほど付き合いが長い訳では無いだろう。互いにな」
「違いない」
ガイとケッセルリンクは互いに睨み合う。
最初に仕掛けたのは当然ガイだ。
「ファイヤーレーザー!」
ガイの放つ魔法は非常に強力。
だが、それはケッセルリンクも同じことだ。
ケッセルリンクはバリアを張ると、ファイヤーレーザーは軌道を変えてしまう。
「成程、流石はカラーか」
ガイはカオスを使ってケッセルリンクに斬りかかる。
ケッセルリンクも剣を使ってガイを迎え撃つ。
「む」
ガイの剣を受けてケッセルリンクの顔が歪む。
夜の自分は本気の時間で有り、その身体能力も大きく上がる。
それなのに、ガイの剣は圧倒的な力でケッセルリンクを弾き飛ばしたのだ。
「成程。魔人筆頭と呼ばれるだけはある」
「お前も流石に魔人四天王…それも四天王最強と呼ばれる事はある」
「下らぬ称号だ」
ケッセルリンクは立場などに興味は無い。
魔人四天王だろうが何だろうが勝手に言わせておけばいい。
ただ、その立場は便利だから利用はさせて貰っているのも事実だ。
「ライトニングレーザー」
「フン」
ケッセルリンクの放った魔法はやはり魔法バリアによって防がれる。
当然それは織り込み済みで、ケッセルリンクはその剣でガイに斬りかかる。
技能レベルの差はあるのだが、それでもケッセルリンクには長年の勘もある。
それにいくらガイの剣が優れていると言っても、ランスのような非常識な剣で有る訳では無いのだ。
そしてケッセルリンクはランスの隣でその剣を見続けてきたのだ。
「む」
ケッセルリンクの剣がガイの腕を斬りつける。
互いの無敵結界が斬られている影響か、魔人同士の戦いでも互いにダメージは大きく入る。
だが、それでも持っている得物の差は大きいモノがあるのも事実だった。
「浅いな」
ガイは少しのダメージは無視してケッセルリンクに斬りかかる。
ケッセルリンクも何とか防いでいるが、カオスによって体を斬られる。
「…成程、これが魔剣の力か」
ケッセルリンクは斬られた頬に触れる。
焼けつくような痛みが有るが、直ぐに血が止まる。
「カオスの傷すらも消えるか」
「夜は私の時間。その再生能力も上がる。いくら魔剣と言えども、私の再生能力を無視する事は出来んよ」
ケッセルリンクはその腕で強烈な薙ぎ払いを放つ。
これもケッセルリンクの魔人としての技で有り、戦いにおいてもっとも有効な技でもある。
その強烈な一撃はガイであってもまともに受ければタダでは済まない。
事実、ガイもケッセルリンクの薙ぎ払いをカオスで受け止めるが、その衝撃で腕が痛む。
「く…これは」
同時にガイの体から少しの力が抜ける。
「呪い、か」
「私はカラーだ。確かに呪いは得意とは言えないが…それでも扱う事は出来る」
「なるほど、流石は魔人四天王最強と呼ばれる存在。だが、それでも俺を止める事は出来ないな」
ガイは力を入れて立ち上がると、カオスをケッセルリンクに向ける。
やはり魔人相手には有効なのは魔剣カオスによる攻撃だ。
「ケッセルリンク。お前があの人間のために動く…奇妙な事だな」
「お前には関係の無い事だ。私にはそうする理由がある」
そう言うとケッセルリンクから闇が広がる。
「む」
ガイは広がる闇に眼を見開く。
「こ、これは!?」
カオスも突然広がった闇に驚く。
以前にケッセルリンクと戦った事があったが、その時は全く本気じゃ無かったのを理解する。
「ガイ。これ以上はやらせはせんよ」
闇の中からケッセルリンクの声が響く。
「これが本気のお前か」
ガイは魔人ケッセルリンクは四天王の中でも最強クラスの存在だという事は知っていた。
ただ、ケッセルリンクがどう戦うのか、どんな力を持っているのかは知らなかった。
ガイ自身他の魔人から嫌われていた事も有り、その辺りの事を教えてくれる者は誰も居なかった。
(まさかケッセルリンクが敵になるとはな)
一番の計算外はケッセルリンクが参戦してきた事だ。
正直に言えば、ガイは事情を知ってもこの戦いにケッセルリンクが積極的に介入してくるとは思っていなかったのだ。
ケッセルリンクはジルからも距離を取り、ジルが呼ばなければ決してジルに会おうとはしない。
自分の屋敷に使徒と共に引きこもっており、外界に興味が無いと思っていたのだ。
実際のケッセルリンクは結構外に出るし、色々と動いていたのだ。
だが、ケッセルリンクの動きはある意味完璧とも言えた。
優秀な使徒達がケッセルリンクの手足となって動いてくれた事、そしてカラーとの繋がりが有ったこと。
始祖であるハンティ・カラーとも密かに協力し、色々と動いて来ていたのだ。
何よりも、ランスと共に強敵と戦いと、ランスと共に手に入れたアイテムが有るのだ。
「光の矢!」
ガイはケッセルリンクに対して魔法を放つ。
それは確かに当たったのだが、まるで手応えが無かった。
いや、効いていないという事は無いのだろうが、それでも闇が晴れる様子は全く無かった。
「無駄だ。この闇こそが私そのもの」
闇から声が聞こえてくると同時にガイの体が斬りつけられる。
「クッ」
闇からの攻撃には流石のガイも驚く。
「行くぞ」
そしてケッセルリンクの声を共に激しい攻撃が襲ってくる。
ケッセルリンクの闇からの攻撃は出所が全く見えない。
それでいて強烈な攻撃が死角から襲ってくるのだ。
「おいガイ! 何とかしろ!」
「したいのはやまやまだが…この闇は魔法の明かりで何とかなる訳では無さそうだ」
ガイは斬られた腕を見て顔を歪める。
腕を見たと言っても、闇の中なので何も見えないので、自分から見て腕を見ているという認識があるだけだ。
それだけ闇が濃く、魔法でも晴らす事が出来ない。
「だが、これでは俺を倒す事は出来ない」
それでもガイの余裕の表情は変わらない。
「ケッセルリンク。確かにお前の力は凄まじい。俺でもお前を殺すのは骨が折れるだろうな。だが…それだけだ。光爆!」
ガイの放った凄まじい光の魔法が爆発する。
それは闇に飲まれてはいるが、確実にケッセルリンクに当たっている。
「お前では俺には勝てない。理由は単純、お前の攻撃で俺を完全に殺し切る事は出来ないからだ」
ガイがそう言うと、闇が人の形を取りケッセルリンクが現れる。
そこには傷は無いが、ケッセルリンクも強者故にガイの言葉の意味をよく理解していた。
「分かったようだな。そう、俺にはお前を殺せる武器がある。だが、お前には俺に致命傷を与える武器が無い」
ガイの手に有るのは魔剣カオス…それこそが魔人相手の絶対的に有効な切り札だ。
まともに喰らえば魔人ですらも容易く両断できる武器…それがカオスと日光だというのは知っている。
「そして単純な力で俺はお前を上回る。単純な絶対的な力の差…それが俺とお前の違いだ」
「…魔人筆頭、その肩書は伊達では無いようだな」
ケッセルリンクは少しの間刃を交えた事でガイとの力の差を理解した。
確かに圧倒的な強さを持っている。
あの魔王ジルに逆らい、そして追い詰めたのは完全にガイの実力だという事だ。
そしてその手にある魔剣カオス…それで斬られれば間違いなく自分は致命傷を負う。
それが分からない程ケッセルリンクは人間を過小評価していない。
「退け。お前を殺す気は無い」
「退けぬ理由がある。お前には分からぬだろうがな」
「ならば…そのまま死ぬんだな!」
ガイはそう言ってケッセルリンクに斬りかかる。
カラーであるケッセルリンクに魔法で攻めるのは時間がかかってしまう。
ガイとしては勇者が万全な内に魔王を倒す必要があるのだ。
そしてその期限は今日なのだ。
こんな所で邪魔される訳にはいかないのだ。
「悪いが…死ぬ気は一切ない!」
ケッセルリンクはカオスを受け止める。
ミスリルの剣は強度も十分で、相手がカオスでも問題無く受ける事が出来る。
ただ、カオスの持つ魔人への殺意、そして魔人に対して特効を持つ事からその剣を受けるのは危険だ。
「ケッセルリンク。あの人間と共に死ぬ気か」
「悪いが私は死んでもランスは死なない。あいつはそういう男だ」
「随分と入れ込むな…惚れた弱味だと言うつもりか」
ガイの言葉にケッセルリンクは笑う。
「違うな…経験だよ。ランスはお前以上の修羅場を潜って来たのだ。そう、お前などこれまでのランスの障害の中では大きなものでは無い」
ケッセルリンクは再びその手を振るう。
呪いの効果を持つケッセルリンクの腕をガイは華麗に避ける。
その動作のままケッセルリンクに斬りかかる。
ケッセルリンクの薄皮が斬られ、そこから血が滲み出る。
カオスの強烈な魔人に対する特効力がケッセルリンクの再生能力を殺そうと動いている。
流石に魔人の中でもトップクラスの再生能力を持つ彼女ならば抑えられるが、それでも不愉快な事には変わりは無い。
「ケッセルリンク、終わりだ!」
「生憎と…こんな所で終わるつもりは無い!」
再びケッセルリンクの体が闇に変わる。
纏わりつく闇の中では気配を探るのすら難しく、流石のガイもこの闇の中では迂闊には動けない。
ケッセルリンクを無視してジルを倒すという手も無くは無いが、流石にケッセルリンク相手に隙を見せる事は出来ない。
いくら身体能力では上回っていると言っても、まともにケッセルリンクの一撃を受ければそれは大ダメージになる。
勿論ガイはケッセルリンクに勝つ自信はあるし、実際ケッセルリンクを倒す事はガイにとっては難しくない。
相手の得意分野である夜で戦わなければ良いだけなのだから。
しかし、ガイの目的はケッセルリンクでは無くジルだ。
そして今日ジルを殺さなければ面倒な事になるのは明らかだ。
(…やはり使うしか無いか。カラーとの事を考えれば使いたくは無かったのだがな)
ガイはジルを倒すためにあらゆる手段を考えていた。
ただジルを倒すだけでなく、外部からの邪魔が入る事も考えた上で事を起こしたのだ。
その中には魔人ケッセルリンクへの対抗策もきちんと存在していた。
存在はしていたが、それを使用するのはガイとしても躊躇われた。
それは自分に協力してくれているカラーへの義理だ。
ガイは事を起こす際にカラーからも協力を取り付けていた。
人間だけでなく、この世界に存在する魔物以外の存在に協力をこぎつけたのだ。
それこそガイがこれまで築いてきた人脈という名の武器だ。
その時に考えたのが、万が一ケッセルリンクが自分を邪魔しに来た時の対策だった。
カラーの女王は葛藤しながらも、魔物からの脅威を排除するためにある一つのアイテムを渡してくれた。
ガイとしてもそれを使う事が無ければ良いと考えていた。
しかし、ケッセルリンクは事実として自分の前に現れた。
(ケッセルリンクを殺すのはやはり難しい…だが、俺の目的はジルだけだ)
だとすればもう躊躇う必要は無い。
「ケッセルリンク…これが最後の警告だ。退く気は無いな」
「くどい」
最後の警告にもケッセルリンクは短く答えるだけだった。
「ならば…終わりだ」
ガイはケッセルリンクの攻撃を耐える。
確かに闇のミストの中でケッセルリンクを倒すのは難しい。
しかし、ケッセルリンクもそう長い時間ミスト化出来ている訳では無い。
だからこそ、その時に切り札を切るだけだ。
「ファイヤーレーザー!」
闇の中から飛んでくる魔法をガイは防ぐ。
流石は魔人四天王の魔力、ガイですらもそれをまともに受ければタダでは済まない。
勿論色々と対策はしているが、それでも強力な事には変わりなかった。
そしてガイの予想通り、ケッセルリンクの体が再び闇から現れる。
「出てきたぞ、ガイ!」
「分かってる!」
カオスの声にガイは怒鳴るように答えると、ケッセルリンク目掛けて突進する。
その時、ケッセルリンクから強力な魔力が練られている事に気づく。
「!」
何かの魔法を放ってくると思ったが、それはそうでは無かった。
ケッセルリンクの手に持っている剣から凄まじい魔力が感じられたのだ。
「ゼットン!」
ケッセルリンクがその魔法を唱えると、その剣から凄まじい炎が上がる。
「まさか!」
ガイは全力でガードの態勢を取る。
そしてケッセルリンクの剣から凄まじい炎が放たれる。
それこそまさにLV2の炎の魔法であるゼットンなのだが、それはまるで火炎流石弾並の力でガイを飲み込んだ。
(出来たか…!)
ケッセルリンクは炎に包まれるガイを見て、自分の技が上手くいった事に一先ず安堵する。
ランスとの運命のアイテムルントシュテット…その力はただ強いだけでは無い。
これを装備すると昼でもある程度の行動が可能となり、夜には更に力を増す。
今回は魔力を剣に宿らす技術…本来はケッセルリンクには出来ない技法だった。
しかし、このアイテムを装備すればそれが可能となる。
スラルのように繊細な魔力の制御ができ、自身の魔力を剣に乗せる事が出来る。
それはケッセルリンクの持つ剣技能とも合わさり、強力な力を発揮する事が出来るのだが、生憎とケッセルリンク自身その力を使うのは難しいのかもしれないと思っていた。
これはランスと共に戦う時の身に装備すると決めているもの、なので今回がぶっつけ本番だったのだ。
ゼットンの魔力をまともに受けては只では済まない…それは普通の考えだった。
「!」
だが―――魔人ガイは違った。
ゼットンの炎の中からガイは現れた。
そして大技を放っていたケッセルリンクの隙を突き、その腹部にカオスが突き刺さる。
「ぐぅ!」
「流石だなケッセルリンク…だが、全ては想定内だった…俺がどれ程準備をしたと思っている」
「…成程な。便利なアイテムがあるものだな」
ガイの手から崩れ落ちたアイテムが何なのかは分からないが、それがケッセルリンクの攻撃を防いだのだろう。
そして自身の体を貫いているカオスを前に顔を歪める。
「うほほほほほ! さあ殺れ! ガイ! 魔人をぶっ殺させろ!」
嬉しそうなカオスの言葉にケッセルリンクはそれでも不敵に笑う。
「もう一度…耐えられるか!?」
その手に有るのは紅い魔力の塊…即ちもう一発のゼットンの魔力だ。
「悪いがお前とこれ以上の戦いをする気は無い」
ケッセルリンクが魔法を放とうとするまえに、ケッセルリンクの首にネックレスがかけられる。
するとケッセルリンクの魔力が霧散し、途端に力が抜ける。
ガイはケッセルリンクからカオスを抜くと、ケッセルリンクはそのまま地面に膝をつく。
「これ…は…」
「カラーの秘宝。本来はカラーの中でも制御できない者を封じるアイテムのようだな。流石に魔人であるお前には完全な効果は望めんが…それでもお前はカラーだ。十分に有効なようだ」
ケッセルリンクの体が再びクリスタルに覆われていく。
「お前の事だ。1000年もあれば復活出来るだろう。それまで寝ているのだな」
「ガイ…貴様…」
ケッセルリンクはジルに向かって手を伸ばそうとし―――その動きが止まる。
(ジル…スラル様…)
その目に映った二人は何かをやっているように見えたが、それを見届ける事も出来ずにケッセルリンクは再びクリスタルに包まれた。
「ジル…これで終わりだ」
ガイは何かをやっているであろうジルに殺意を向ける。
だが、そのジルはこちらに意識を向けるでもなく、スラルと共に何かをやっている。
しかし、何をやろうとガイには関係無かった。
最早邪魔するものは何も無い、今ここでジルを殺せば済む事なのだ。
そう思いジルに向かおうとした時―――凄まじい衝撃がガイを襲った。
「貴様! 何をやっとるかー!」
ガイが気づいた時、その脇腹には刀が突き刺さっていた。
そこには刀を手に自分に殺意の目を向けてくるランスの姿があった。
あっさりですがガイとケッセルリンクの戦いは終わりました
まあ搦め手上手いガイならこれくらいの事前準備はしているよねと思いました
封印って便利過ぎるかもしれないけど、皆使ってるんですよね