ランス再び   作:メケネコ

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GI期
運命の再会


 カオスの切っ先はジルの心臓を貫いていた。

 その返り血でガイの顔は真っ赤に染まるが、ガイは確かに笑みを浮かべていた。

 それは自分の予想通りにいった事に対する会心の笑みだった。

「やはりな、ジル。この男を殺そうとすればお前は必ず庇うと思っていた」

 ガイはカオスを捻り、ジルの傷口を広げる。

 ジルの胸から勢いよく血が飛び散り、それが再びガイの体を濡らす。

「お前はこの男が来た時に顔色を変えた。俺がこれまで見た事の無い、女の顔をしていた」

 ガイはジルのあの時の表情を思い出す。

 ジルに仕えてはいたが、本心からジルに従っていた訳では無い。

 魔王の絶対命令権をもう一つの人格に押し付け、ガイはジルを殺す機会を狙っていた。

 だが、流石に魔王と魔人の力の差は歴然としており、ガイとしてもどうしようもなかったのも事実だ。

 時間だけが過ぎるが、ガイはそれでも諦めるつもりは毛頭なかった。

 そしてチャンスは巡って来たと思った時、予想外の邪魔者が現れた。

 が、同時にその予想外の邪魔者は確かにジルの隙を作ってくれた。

 その結果が今の状況だ。

「…ガイ」

 ジルは血を吐きながらガイを睨む。

 しかし、そこには魔王としての圧倒的な力は失われつつあった。

「ジル!」

 ランスは思わず声を出すが、それに対してガイは笑うだけだ。

「礼を言うぞ。お前のおかげで予想よりも楽にジルを殺せそうだ」

 ガイの言葉にランスは完全に切れる。

 そして痛む体を無視してガイに斬りかかる。

「デビルビーム」

 ガイはそんな動きを予想していたかのようにランスに魔法を放つ。

 ランスはスラルの元へと吹き飛ばされる。

「ぐっ…」

「ランス…」

 ランスが倒れた事に気づき、レンとお町が何とか体を起こす。

 だが、当然二人は戦える状況ではない。

「フン」

 ガイはカオスを捻ってからジルから剣を抜く。

 ジルの体から勢いよく血が噴き出し、ガイはそれを受け止める。

 ようやくガイは己の本懐を遂げたのだ。

「返してやる」

 ガイは倒れている怪獣王子の体を掴むと、そのままランスに向かって投げつける。

 幸いにも当たりはしなかったが、それでも怪獣王子は立ち上がれなかった。

「貴様」

 ランスはそれでも何とか立ち上がると、痛む体を無視してジルの元へと向かう。

「いいのか、ガイ」

「構わん。最後の言葉の時間くらいはくれてやる。ジルを倒せたのはこいつらのおかげでもあるからな」

「おやさしいの。おい日光、これが結果だ」

 カオスの言葉に日光は人の姿に戻る。

 そしてランスを支えると、ジルの元へとランスを連れていく。

「おいジル!」

「ランス…か」

 ランスの言葉にジルは笑う。

「お前は俺様の奴隷だろうが! 奴隷が主人より先に死ぬなど許さんぞ!」

「…魔王を前にして、まだそれを言うか。だが…許そう」

 ジルはこんな状況でありながらも楽しそうに笑う。

「お前は…我を楽しませた…だから…褒美を与えよう」

 ジルはそう言って立ち上がる。

 それを見てガイは驚く。

 カオスで心臓を貫いたにも関わらず、ジルはまだ立ち上がったのだ。

「ランス…貴様の行いに免じて…『ジル』は返してやる」

「落ち着け! ジルにはもう魔王としての力は無い! 今のお前なら勝てる!」

「ククク…勝敗に…意味は無い。我は…魔王ジル…」

 ジルはそう言って笑う。

 その笑みはまごう事無き、邪悪な笑みだった。

「ランス…あの時の言葉が…嘘でないならば…それを証明して見せろ…」

 ジルはランスに向かって風を飛ばす。

 同時に封印されているケッセルリンクも同時に飛ばされる。

「どわっ!」

 風に吹き飛ばされたランスとケッセルリンクは、スラル達の元へと飛ばされる。

 そしてそのままランス達の姿が光に包まれたかと思うと、その姿が消えていった。

「な、なんじゃと!?」

「それが貴様の選択か…」

 まだそれだけの力を残していた事にカオスは驚き、ガイも真剣な顔でジルを見る。

「ジル。お前は何をしていた」

 ガイは気になっていた事をジルに聞く。

 あの人間達が来てから、ジルはこちらに対して何もしてこなかった。

 ガイはそれだけが気になっていた。

 もう一人の少女と共に、何かの魔法を使っていたという事だけは分かるが、それが何なのかまでは分からなかった。

「言ったはずだ…褒美、だと。そして…余計な部分を…捨てただけだ…」

 そう言うジルの顔には笑みが浮かんでいるのだが、その顔を見てガイは顔を顰める。

 確かにジルは恐ろしく残酷ではあったが、同時に人間には興味を持たない魔王だった。

 人間牧場を作ってはいたが、ジルの悪意は人間よりも魔物に対して向けられていた。

 その時のジルは非常に楽しそうだったが…今のジルの顔はその時よりも邪悪で歪んでいた。

 そして―――その特徴的な姿が変わっていた。

 ジルは両手両足が黒い異形の姿だった。

 しかし、今のジルは右手と右足が白くなっていた。

 本来の肌の色と言えば良いのだろうか、とにかくジルの右手と右足が変わっていた。

「我は…今こそ…完全な魔王になった…ガイ…我は不死身…そう願った」

 ジルからは強大な魔力が沸き上がる。

 その魔力を感じ取り、ガイはカオスを構える。

 確かに強力な魔力は感じるが、それでもガイから見れば既にジルは虫の息だ。

 だがそれでもジルは笑っている。

「ジル。お前の時代は終わった。ここからは新たな時代が始まる」

「そう…始まる。だが…貴様の思うようには…いかない」

 そして、二人の本当の意味での最後の戦いが始まり、そして終わる。

 終わりはしたが―――ガイはジルを殺す事が出来ない。

 何度カオスで斬っても、何度強力な魔法を浴びせても、ジルが死ぬ気配は一向に無かった。

「…貴様、不死身か」

「言ったはず…我は死なない…こんな姿になってもな…」

 ジルは酷い姿ではあるが、それでも死ぬ様子は全く無かった。

「どうするガイ!? 時間をかけると他の魔人が来るぞ!?」

 もし他の魔人が来れば、その時は面倒な事になる。

「…ならば封じるしか無いな」

 カオスの言葉にガイは苦渋の決断をする。

 これはジルを殺せなかった時の備えだ。

 しかし、そのためにはカオスを触媒にせねばならず、それは人類が魔人に対する手段を一つ失う事を意味していた。

「カオス、アレを使う」

「…それしか無いか。まあ魔王を封印できるなら御の字か」

 カオスもガイの言葉を聞いて理解する。

 手段としては聞いていたが、確かにそれしかもう方法は無い様だ。

「悪いな、カオス」

「別にどーでもいいわい。本音を言うとお前も殺したかったしの」

「お前らしいな。とにかくジルを封印する!」

 ガイは封印術を展開する。

 この封印を使えば魔王であるジルを封印できる。

 即ち、この世界から魔王が居なくなる。

 展開される封印術を見てもジルは顔色一つ変えない。

「終わりだ、ジル」

「ククク…終わらない。我は…永遠の魔王…」

 ガイはジルにカオスを突き刺す。

 そのまま呪文を唱え、とうとうジルの姿が消え、残ったのは床に突き刺さったカオスだけだ。

「…終わった」

 ガイはそう言うと地面に膝をつく。

 魔王を倒せた以上、ガイはもう全てがどうでも良かった。

 ガイはそう思った時、自分の体の異変に気付く。

 ランスに刺された傷が全く痛くない…それどころか、日光に刺された傷が完全に塞がっていた。

 カオスと日光に傷つけられた傷はそう簡単に癒える事は無い。

 いくら秘薬を使用したとはいえ、殺された再生能力はそう簡単に癒されないはずなのだ。

 それを不思議に思うことも無く、どこからか声が聞こえてきた。

『世界の変革をお知らせします』

 それはアコンカの花。

 時代の移り変わりを知らせる神の花。

『新しい魔王が誕生しました。GL期は1004年で終了となります』

 新たな魔王が誕生した時に咲く花の無常な声が響く。

『来年からGI1年となるます。お間違えなきように』

 GL期は終わりGI期の到来を知らせる。

 それと同時にガイは立ち上がる。

 魔王となった事で二つの人格の部分が表面に出てくる。

 そして半身は人間、半身は魔物のような異形な姿となる。

「…そうだ、人間を殺さねば」

 ガイはこれまでの魔王がそうであったように、人類に悪意と敵意を向ける。

 人類の地獄はまだまだ終わりそうには無かった。

 

 

 

 新たな時代の始まりに各魔人達はそれぞれの反応を見せていた。

「何い!? あのジルが死んだだと!?」

 魔人ケイブリスはアコンカの花の言葉に目を見開いて驚く。

 魔人四天王の地位に上り詰めたケイブリスだが、未だに魔王ジルに対しては恐怖を感じていた。

 あのジルの前では、自分はちっぽけなリスになってしまったような感覚に陥るのだ。

 なのでジルの時代にはケイブリスは静かに強くなるように努力するしか無かった。

「そして…次の魔王がガイだと!? あの野郎…ジルを殺しやがったな…」

 ケイブリスは魔王の継承の仕組みを知っていた。

 かつて自分の主であるククルククルがドラゴンのアベルに止めを刺された事で、そのアベルが次の魔王になった。

 この事から、魔王を殺してその血を浴びた者が次の魔王になるとケイブリスは勘づいていた。

「…気に入らねえが、また大人しくしてねえとダメだな。魔王にはまだまだ勝てねえ…」

 ケイブリスはガイが嫌いだった。

 だが、次の魔王がガイならば頭を垂れて大人しくするだけの我慢がケイブリスにはあった。

「焦る事はねえ…一歩ずつだ。地道にいきゃあいいんだよ」

 それでも魔王の元へは一度赴いておかなくてはならない。

 ケイブリスは魔人の義務を果たすべく、魔王城へと向かって移動を始めた。

 

「…マジかよ、あの野郎」

 魔人レイもアコンカの花の言葉に茫然としていた。

 あの魔王ジルが…レイにとっての一番の力の象徴であるジルが倒れた。

 その事実はレイをもってして驚くしか無かった。

「…だとすると、アイツはどうすんのかね」

 レイの頭にあるのは、自分が全力をぶつけたい相手だ。

 そしてジルとの関係もある程度は察しもついてはいた。

 もしそうならば、ランスがガイを許さないのは間違い無いだろう。

「まっ、退屈はしねえだろうさ」

 レイはそう言いながら、面倒くさそうに魔王の城へと向けて歩き出した。

 

「フーン、魔王が変わったんだ。ま、僕の研究の邪魔にならなきゃそれでいいんだけど」

 魔人パイアールは魔王が変わった事には興味は全く無かった。

 パイアールにとっては自分の研究の邪魔をされなければ、誰が魔王であろうとも構わなかった。

 むしろジルは自分に何も言ってこないので、パイアールにとっては良い魔王だった。

「それにしても…大分大きくなってきたな」

 パイアールは姉を再生させる技術を発展させていた。

 ランスには依頼をしてはいるが、自分の手で姉を治せるならそれに越した事はない。

 しかし、それは想像以上…いや、非常識な程に大きくなっていた。

「まあ研究を続けるだけだね」

 パイアールはそう思いながらも、あの男が絶対に何かをやるだろうという事は予見していた。

 

「ジル様が…魔王で無くなったか」

 アイゼルもまたアコンカの花が告げた言葉を茫然と聞いていた。

 アイゼルにとってはジルは絶対的な力と恐怖の象徴だった。

「アイゼル様…」

 そんなアイゼルを使徒達は心配そうに見ている。

「まさかジル様が…」

「そんな訳が…」

 使徒であるサファイア、トパーズ、ガーネットも体を震わせている。

 彼女達もまた魔王ジルの恐ろしさは分かっていた。

「新たな魔王は…ガイですか。さて、一体どういう事やら…」

 そう言いながらもアイゼルは少し安堵をしたように、新たな魔王の元へと歩き始めた。

 

「………」

 魔人メガラスは新たな時代の幕開けを聞いても何も言わない。

 その容姿からはどんな事を思っているのか全く伺う事は出来ない。

 メガラスは無言で新たな魔王の元へと向かって行った。

 

「新しい魔王か」

 魔人ガルティアは食事を取りながらアコンカの花の言葉を聞いた。

 ガルティアにとっては誰が魔王だろうがあまり関係は無かった。

 魔王の命令があれば戦うし、そうで無いなら好きなモノを食べているだけだ。

 ただ、それでも一度は魔王の城へと向かう必要があるだろう。

「少しの間我慢だな」

 ガルティアは落ち込んだ顔をしながらも、目の前にある大量の食事に手を伸ばした。

 

「ウケケケケケケ!」

 魔人レッドアイは新たな魔王が生まれた事に狂気していた。

「ジルはヒューマンをキルさせてくれなかった! 新たな魔王はヒューマンはキルさせてくれるか!?」

 狂気の魔人であるレッドアイはジルに不満を持っていた。

 それは人間を殺してはならないという絶対的な命令だ。

 レッドアイはジルに恐怖を抱いていたので、ジルが魔王の間極力大人しくしていた。

 サンドバック用のケスチナの血族をいたぶりながら、醜悪な笑い声を発していた。

 

「クカカカカカ! 新しい魔王か!」

「新しい魔王はガイみたいだね」

「まさかジルが倒されるなんてねー。ちょっと意外」

 魔人レキシントンは新たな魔王が生まれても変わらずに笑っていた。

「ガイか…一度やりあいたかったがな。ジルに止められていたからな」

 レキシントンとしてはガイと戦いたかったが、流石にジルの側近となれば難しかった。

 魔王の絶対命令権はレキシントンも知っている。

「で、どうする? レキシントン」

「決まってるだろうよ。まずは酒だ! 酒を持ってこい!」

 レキシントンは誰が魔王だろうが構わなかった。

 自分の好きに出来ればそれでいい、それが魔人レキシントンなのだから。

 

「ジル様が倒れましたか…」

 魔人ジークは主であるジルが倒れた事に複雑な感情を持っていた。

 自分はジルによって魔人となった存在、当然思う事はある。

 ただ、あのジルが何を考えていたか…ジークにはそれは分からなかった。

「新たな魔王はガイ…ですか。奇しくも私同様にジル様によって魔人になった存在」

 誰が魔王だろうと、ジークには関係無い…と思っていた。

 しかし、ジークはガイには複雑な感情を抱いていた。

 だが、ジークは魔人界の紳士、誰が魔王だろうが態度は全く変えないだろう。

「さて…世界はどうなるのでしょうかね」

 

「ジルが…死んだ?」

 魔人メディウサは散らばっている死体を前に狂気の笑みを浮かべていた。

 やっとあの魔王が死んだ。

 自分の呪いが解けるかもしれないと思っての笑みだった。

 この忌まわしい呪いは今でもメディウサを蝕んでおり、メディウサは女を犯し殺す事が出来なくなっていた。

 女の子モンスターならば呪いは発動しないが、やはり人間と違って面白くなかった。

「次の魔王は…どんな奴かな」

 メディウサはガイの事を知らなかった。

 だからこそ、少しの期待を抱いてしまう。

 そう、魔人が魔人らしく生きる事が出来る世界を。

 

「…ガイめ」

 魔人ノスは怒りで岩を破壊する。

 敬愛するジルは恐らくはガイに倒されたのだろう。

 何故自分はそれに気づかなかったのか、それが不覚でならない。

 ただ、ノスは賢い魔人でもあり、直情的に動くような事は無い。

「ジル様ならば…何か保険を残しているやもしれん」

 あのジルならば何らかの処置を取っていてもおかしくは無い。

 短絡的に行動するのは愚か者のする事だ。

 そのためならば、気に入らないあの男に頭を垂れるのも苦では無い。

「ガイ…束の間の座を楽しむがいい」

 ノスは自分の主のために、今からでも動き始めた。

 

「カミーラ様…」

「………」

 使徒七星の言葉にカミーラは何も答えない。

 魔王が変わる、カミーラにとってはそれは大した問題ではない。

 どうせどんな魔王だろうとカミーラにはどうでも良い事だった。

 ただ、ジルだけはケッセルリンクからの話もあり、ランスとの因縁も大きいのも知っていた。

 実際、カミーラは以前にジルの命令でランスとの戦いに水を差された。

 その時は腹は立ったが、それが魔王というものだという事も知っていた。

 そのジルが魔王で無くなり、魔人ガイが魔王になった。

「フン…」

 カミーラには一つの確信があった。

 ジルが魔王で無くなったのならば、そこには絶対にあの男が絡んでいると。

(ならば…ケッセルリンクが絡んでいてもおかしくはないか)

 そして自分と同じ魔人四天王のケッセルリンク、もしかしたら彼女も関わって居るかもしれない。

「あのガイが魔王になるなんて…って言っても、ボクはガイの事全然知らないけど」

 ラインコックは使徒となって始めての魔王の交代だ。

 なのでどうなるのか全く分からない。

「ガイ…か」

 カミーラは別にガイには興味は無かった。

 ただ、あのジルが側近として使っている事には少々驚いた程度だ。

 カミーラは立ち上がる。

「行くぞ」

「はっ」

「分かりました、カミーラ様」

 新たな魔王の顔を見るため、カミーラも動き始めた。

 

「姉さん…」

「…まあそういう事よね」

 魔人ラ・ハウゼルとラ・サイゼルは複雑な顔をしていた。

「あの時の感覚って…」

「そうね。ランスが私達の貯蓄してた力を全部使ったって事よね…」

 二人の魔人の力はランスに宿っている。

 何故かは知らないが、そういう事と言われればそれまでなので、二人は何も言わない。

「その状況って…」

「それ以上は無し、今私達がやる事ってそうじゃないでしょ」

「そうだけど…」

 心優しいハウゼルはランスに何か良く無い事が起きたと確信している。

 そうでなければ自分と姉の力の全力を出すはずが無いのだ。

「何かあったらアイツから私達の所に来るでしょ。それよりも新しい魔王よ」

「ジル様は…私達の事を警戒していたみたいだし…」

 ハウゼルもサイゼルも何故自分が魔王に睨まれているのか、それが分からなかった。

 特に何も言ってこないが、監視されているのは何となく分かっていた。

 ただ、それで何か言われる事も無いので、二人は少々気持ち悪がった程度だ。

 そのジルが魔王で無くなった…つまりは自分達はジルの監視から逃れる事が出来たという事だ。

「行くしか無いでしょ。魔人ってそういうものでしょ」

「…そうね。私達が何を考えようと、新しい魔王様には逆らえないんだから」

 魔人姉妹はランスの事が気になりつつも、新たな魔王の元へと向かう以外に方法は無かった。

 

 

 

「どわっ!?」

 ランス達は突如として現れた地面に驚く。

 ジルによって何処かに飛ばされたという事だけは分かる。

「あだだだだだ!」

 同時にやってくる痛みにランスは呻く。

「ランス殿!」

 日光はランスに肩を貸す。

 誰もが大小の怪我を負っており、五体満足なのはスラルしかいない。

 そのスラルも脂汗を浮かべている。

「ランス様!」

「ランスさん!」

 その時にこちらに走って来る人間の姿が見える。

「シャロンとエルシールか。あだだ…」

 ランス達に近づいてきたのはケッセルリンクの使徒であるシャロンとエルシールだった。

「ああああああ! ケッセルリンク様!? 何というお姿に!」

「バーバラ、それよりも早く皆様を城の中に」

「急ぎましょう。下手に魔物達が集まってきたら面倒な事になりますし」

 エルシールとシャロンの言葉に使徒達は急いでランス達を回収する。

 姿は人間だが、その力は人間を大きく超えているので、迅速にランス達を運ぶことが出来た。

 取り敢えず皆をリビングへと集めるが、何しろほぼ全員が怪我人の上、主であるケッセルリンクはクリスタルの中に閉じ込められている。

 それでもパニックを起こさないのは、高い統率力を持つエルシールのおかげだろう。

「ランス様。一体何が起きたのですか? ケッセルリンク様は一体…」

「ちょっと待て。それよりもスラルちゃん、お前は大丈夫なのか」

 ランスとしても説明したいのだが、それ以上に気になっているのがスラルだ。

 何しろスラルは魔人ガイとの戦いにて一切戦闘に参加しなかった。

 だが、ジルと共に何かをしていたのは分かる。

 そして今でも脂汗を浮かべて苦しそうな表情をしている。

「加奈代…大まおーの鎌で我を斬れ」

「…え?」

 突然の言葉に加奈代は言葉を失う。

「頼む。出来るだけ急いでほしい。そうすれば全て説明できる」

「わ、分かりました」

 切羽詰まったスラルの言葉を聞いて、加奈代は急いで外に向かって魔法ハウスを発動させる。

 その中から大まおーの鎌を取り出し、魔法ハウスをしまうとそのまま戻って来た勢いでスラルを斬りつける。

「おいスラルちゃん!」

「…これでいい」

 驚いたランスを尻目に、スラルは安堵の表情を浮かべる。

 すると大まおーの鎌に引っ張られたように、IPボディがスラルから引き抜かれる。

 それが無ければスラルは肉体を維持できないはずなのだが、突然スラルの体が輝く。

「な、何だ!?」

 ランス達は驚いて光から目を庇う。

 そして光が収まった時―――そこに座り込んでいたのは、一人の水色の髪をした少女だった。

 年の頃はまだ幼く、ランスでもハイパー兵器が反応しない年齢に見える。

 そして少女の一番の特徴は…白い肌に対して異形の形となる右手と右足だった。

 少女は驚いたように瞬きすると、ランスを見て涙を浮かべる。

「…ランス様!」

 そして少女―――ジルは勢いよくランスに抱き着いた。




GI期の始まりです
いやー、長かった…全ては魔王戦争によるプロットの変更です
当初の予定と全く違った話になってしまいました
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