ランス再び   作:メケネコ

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魔王ガイ

 魔王城―――そこはこの世界の支配者の城。

 魔王はこの世界の絶対的な支配者で有り、誰も逆らう事は許されない。

 そして魔王ジルの時代が終わり、新たな魔王であるガイが玉座に座っていた。

 魔人を先頭に、魔物達が一斉に頭を垂れる。

 その魔物の中から一際大きな体格を持つ存在―――魔物大元帥が前に出る。

「新たな我らの王―――その誕生を、皆を代表して心よりお祝い申し上げます」

 そう言う魔物大元帥だが、その声は僅かに震えている。

 そこにあるのは極単純な感情…即ち、恐怖だ。

「本日をもって…我ら魔に属する全ての生き物は貴方の僕となりました…魔王ガイ様」

「…」

 玉座に座る新たな魔王―――ガイは何も答えない。

 だが、その強大なプレッシャーはそこにいる全ての存在に重くのしかかっていた。

(…やっぱ魔王はやべえ。ガイの奴は気に入らなかったけどよ…勝てる気が全くしねえ)

 ケイブリスはいくら強くなったと言っても、自分と魔王の圧倒的な力の差に気づいている。

 ガイは気に入らないが、それでも魔王に逆らう気は全く起きない。

 だが、それはここに居る魔人達が思っている事で、ケイブリスだけが特別臆病な訳では無い。

 全ての魔物達は己の主である存在の言葉を待つ。

 どれくらい時間がたったのか…あるいは時間などそれほど経過して居なかったのかもしれない。

 だが、それでも全ての魔物達には非常に長い時間だった。

「…殺せ」

「…は?」

「殺せ。人間牧場など…必要無い。魔物牧場もだ」

「は、ははっ!」

 魔王の言葉に魔物大元帥は慌てて声を正す。

 だが、その声には言い表せない喜びが出ていた。

 そう、ジルの作った制度の全てをガイは否定した。

 魔物達にとってはジルの時代はまさに地獄の日々だった。

 いつ魔王に殺されるか、そんな恐怖を感じながら日々生きてきたのだ。

 魔物牧場だけでなく、人間牧場にも魔物の安息は無かった。

 だが、その生活にようやく終わりが告げられたのだ。

「だが…殺し過ぎるな」

 最後の言葉だけは気に入らないが、それでも人間を殺す許可を得られたのだ。

 魔物達は魔王の言葉に歓喜して人間を殺すべく消えていった。

 そして残されたのは魔人ケッセルリンクの使徒のみ。

 そんな彼女たちの元にガイは歩いて行く。

 それだけで使徒達には冷や汗が流れ、死の恐怖が襲い掛かる。

 だが、それでも彼女達は一歩も退く訳には行かないのだ。

「…主の事は知っているか」

 ガイは何処か面白そうに言い放つ。

 今は行方の知れないケッセルリンクの使徒達が残ったという事は、全ての結末を知っているという事だ。

「はい。何があったのか全てを」

「それでも貴様等は私の元へ来た…ならば覚悟があるという事だろう」

 その言葉だけで使徒達の体が震える。

 圧倒的な魔王の力…それがシャロン達を包み込んでいた。

「はい。私達はケッセルリンク様に殉ずる覚悟が出来ております」

「フン…」

 ガイはそんなシャロンの言葉を聞いて何処かつまらなそうに声を出す。

 するとガイの圧倒的な殺気が消え去り、ガイは玉座に再び座る。

「ならば失せろ…」

「…我等に何もしないと?」

「二度は言わん。失せろ」

 ガイの言葉にシャロンは改めて一礼すると、他の者も率いて魔王の元から去っていく。

 ガイはそんな使徒達を見て何処か楽しそうに笑みを浮かべる。

「あの男…生きているか」

 ランスは再び自分の元へとやってくる。

 それを確信し、ガイは静かに笑っていた。

 

 

 

「…はぁ」

 魔王の間から出るとバーバラは思わず膝をつく。

「大丈夫ですか? バーバラ」

 パレロアはバーバラに手を差し出すが、そのパレロアの手も汗で濡れている。

 使徒達も誰もが魔王の圧倒的な存在感に恐怖していた。

 同時に、魔王が何も言ってこなかった事に安堵もしていた。

「魔王様は…全てを知った上で私達を放置するという事ですね」

 エルシールも冷静に頭を回転させようとするが、それでも考えはまだ纏まらない。

 とりあえずこの場は難を逃れただけで、これからどうなるののかは全く分からないままだからだ。

「まずは城に戻りましょう。これからの事を話さなければなりませんし」

 エルシールの言葉に皆が頷くが、加奈代が誰かを見つけて顔色を変える。

「加奈代?」

 パレロアが不思議そうな顔をするが、その時に加奈代の表情が変わった理由が分かる。

 濃厚になる魔人の気配…そう、そこに居たのは魔人四天王の一人のカミーラだ。

「ケッセルリンクの使徒か」

「カミーラ様」

 声をかけてきたカミーラに対し、シャロンは優雅に一礼する。

 そのシャロンに合わせてメイド達は一礼する。

「…来るがいい」

 カミーラは特に何の感情も出さず、シャロン達について来るように促す。

 シャロン達は正直に言えば主の城に戻りたいが、流石に魔人カミーラには逆らえない。

 カミーラについて行くと、そこにはカミーラが使用しているであろう豪華なテントが立っている。

 使徒達はそこに入ると、そこにはカミーラの使徒達が居た。

 カミーラは自分に用意された豪華な椅子に座ると、シャロン達を見る。

「何が起きた」

 その短い言葉だけだが、使徒達にはそれが何を意味するのかは分かる。

 何しろ彼女達も魔人カミーラとは長い付き合いがあるのだから。

「少々長くなるのと、私達は何が起きたのかを見てきた訳ではありません。それで宜しいですか?」

「構わぬ」

 シャロンの言葉にカミーラは頷いて見せる。

 それを見てシャロンはこれまでにあった事を話す。

 シャロンの話を聞いてカミーラの顔が歪んでいく。

 そこにあるのは明らかな不快感だ。

「…そうか、ガイがか。予想はしていたが」

 カミーラも正直に言えばジルには興味は無かった。

 ランスに対する執着心は感じたが、それでも無理矢理ランスを自分のモノにするような相手では無いのは分かっていた。

 魔王が本気なら、ランスに自由など与えられるはずがないからだ。

 ただ、自分の邪魔をされた事に関しては腹が立っていたので、どちらかと言えば嫌いだった。

 しかし…そのジルがガイによって倒された。

 それは驚くべき事で有り、カミーラとしても何が起きたのかは知っておきたかった。

「これは全て聞いた話です。詳しく知りたければ、ランス様の口から聞くのが良いかと」

「…フン、別に疑ってはいない。だが…そうか、ランスがその場に居たか」

 カミーラは少し面白そうに笑う。

(そして…ケッセルリンクもか。あいつはジルが魔王になった時も居た)

「ならば…ランスは来るな」

 そしてカミーラは一つの確信をしていた。

 あのランスがガイに対してリベンジを考えていない訳が無い。

 それはどんなに無謀でも、ランスという男がそう簡単に諦めるような男では無い。

(しかし…相手はガイだが)

 ジルに関してはランスとは深い繋がりがあったのと、その経緯からジルはランスを殺す気は無いと確信していた。

 が、相手がガイとなれば話は別だ。

 ガイもまたランスと因縁があるが、その因縁は悪いものだ。

「ケッセルリンクは…どうする気だ?」

「ケッセルリンク様はランス様にお任せします。あの方のこれまでの事を考えると、一任するのが良いと思いました」

「…フッ」

 シャロンの言葉にカミーラは苦笑する。

 確かにあの男のこれまでの事を考えれば、魔王の封印すら解いてしまってもおかしくない。

 使徒の話が本当なら、ランスは魔王ジルから己の奴隷であるジルを取り戻したのだから。

 そこに何があったのかはカミーラには想像も出来ないが、カミーラとしては中々に愉快な事だ。

「魔王様も特に何も言ってきませんでした。ですので私達はケッセルリンク様はジル様の命令を受けて帰還してない…という体を装うと思っております」

「そうか…まあいい。下がるがいい…」

 カミーラの言葉にメイド達は一礼するとテントから消えていく。

 残されたのはカミーラとその使徒達。

「あの…カミーラ様…」

「どうした…ラインコック」

「いえ…その、カミーラ様凄い嬉しそうでしたので」

「………そうか」

 ラインコックの言葉にカミーラは苦笑する。

「カミーラ様、如何致しますか?」

 七星は何時もの様に冷静に主に聞いてくる。

「人間を殺せ、それが魔王の命令です」

「…くだらん」

 その言葉にカミーラは本当に下らなそうに言う。

「強き者ならば狩る…が、牧場の人間共等に興味は無い」

 もし昔のカミーラならば、戯れに人間の虐殺をしてもおかしくは無かった。

 しかし、ドラゴンのプライドを取り戻したカミーラには下らない事だった。

「は…ならばやはりランス殿を?」

「フ…これまでと変わりは無い。魔王の動向を探れば必ずそこに現れる。ジルに関しては…ガイに出し抜かれたがな」

 カミーラはガイとジルの戦いに全く気付けなかった事に苛立ちを覚えた。

 知ったからどうしたかと言えば、それは分からないが、ガイに出し抜かれた事に対して苛立ちを覚えていた。

「そのガイも結果的にはランス殿に出し抜かれた形になるでしょう。互いに目的を果たした…ある意味痛み分けですが、それを良しとする人間では無いでしょう」

「そうだろうな。七星…我が手の者を魔王城に向かわせろ。今の魔王はジルとは違う…それに最後の命令もある」

「そうですな。デカントの力も必要となるでしょう。ならば必要となるのは魔物将軍となります。ならば我が手の者を潜り込ませるのも容易い事かと…」

 魔王の最期の命令、それは破損している魔王城の修復だ。

 ジルとガイの戦いは魔王城すらも破損させた。

 その破損を直すには長い年月を要するのは明らかだ。

 勿論魔王城の修復に魔人が動く訳は無いが、魔物将軍が使われるのは明らかだ。

 ならば自分の息がかかった魔物将軍を送り込み、情報の収集をするのは容易となる。

 魔王がそれに気づくかどうかは謎だが、とりあえずはまずは実行しなければいけない。

「七星」

「はっ」

 主の言葉に全てを理解して、七星は動き始める。

「カミーラ様。あの人間…本当に魔王に挑むんですか? 無謀を通り越して馬鹿ですよ…」

「フッ…それがあの男だ。しかし…」

 カミーラは眉を顰める。

(ノス…奴がどうするか、だな。奴の事だ…ガイに従いながらも何かをするだろう)

 カミーラが気になるのはむしろ自分と同じドラゴンの魔人であるノスだ。

 ノスはジルの信奉者で、ガイの事を嫌っていた。

 それでもノスはガイの前に傅いた…それは今恥辱を味わっても後にそれを拭えば良いと考えているからだろう。

(時代は動いた…次はどうなるか…)

 今のカミーラはただ流されるままだけだった時とは違う。

 時代の流れを読み、どう動くか…それを考える意志と力が存在している。

 それでも今だけは、この流れに身を任せる以外には出来る事は無かった。

 

 

 

 使徒達がいなくなったケッセルリンクの城―――ランスはそこでようやく目を覚ます。

「…何だお前ら」

 そしてランスの側に居るのはジルと日光の二人だ。

(…なーんか仲良くなってる感じがするぞ、こいつら)

 眠っている二人を見て、ランスは何となくだがそんな風に感じてしまう。

「まあいいか」

 志津香とナギの関係が解決したように、ジルと日光の関係も解決したのだろう。

(そもそも美樹ちゃんと一緒に居た奴だしな)

 魔王リトルプリンセスとそのおまけを助けていた女だ、元々優しい女だったのだろう。

 それに今のジルは魔王では無いのだから、日光も殺そうとは思わないのは間違いない。

「おい起きろ。奴隷のくせに主人よりも寝てるとはどういう事だ」

 なのでランスは気にせずにジルの頭を軽く叩く。

「あ…ランス様」

 その衝撃でジルは目を覚ます。

「とっとと顔を洗って飯の支度でもしてこい。その前に着替えの手伝いをしろ」

「あ…はい!」

 ジルは嬉しそうな顔をしてランスの服を取りに行く。

 そしてその服を着せようとするが…その光景を見てランスも流石にため息をつくしかない。

「んー…んー…」

「もういい。自分でやる。それよりもとっとと飯の支度をしてこい」

「あ、は、はい」

「あ、待て。というかその体じゃ出来んか」

 そう、今のジルの体は小さい。

 流石にリセット程小さくは無いが、最初に出会った頃の香姫と同じくらいに小さい。

 その体では流石に食事を作るのは大変だなとランスも思う。

(あ、でも香ちゃんはやってたから出来るのか? いや、だがな…)

 ランスは変な所で常識人だし、今のジルのような小さい子供を働かせる程落ちぶれてもいない。

 シィルやシーラは家事にも慣れていたが、ジルはどうだっただろうか。

(あの時は加奈代がやってたからな…ジルはそこまでやってなかったか)

 ジルが奴隷としてランスの元に居た頃は加奈代も一緒に居た。

 加奈代は戦闘ではあまり役に立てないからと、炊事に掃除に洗濯と自ら行っていた。

 ジルも時には手伝っていたが、そういう事は加奈代の仕事だったのも事実だ。

「まあいい。お前はお前の出来る事をやれ」

「はい!」

 ランスの言葉にジルは嬉しそうに答える。

「あ、そうだ。スラルちゃんはどうしてる?」

「スラルさんは…今も意識が感じられないです。私の中に微量に残っている魔王の血を押さえているのだと思います」

「そうか。まあ仕方ないか。そっちもどうにかせんといかんか」

 スラルは再び肉体を失う結果となってしまった。

 色々と忙しい事だが、それはそれで仕方が無いと割り切る事がランスには出来る。

 問題はその後の事であり、起こってしまった事は今更どうしようも無いのだ。

「ランス殿…」

「なんだ、お前も起きたか」

 ランスとジルの声が耳に入ったのか、日光も目を覚ます。

「あ…その、申し訳ありません」

 ランスの眠りの邪魔をしたと思ったのか、日光は慌てて頭を下げる。

「お前も一々謝るな。別に怒って…」

 ランスはそこで言葉を止める。

 即ち、ランスはここで何時もの様に悪い事を思いつく。

「いや、駄目だな。やっぱり許さん」

「ランス様…」

 突然の厳しい声にジルが不安そうな声を出す。

 ジルにとっては日光は優しい女性である。

 ランスとの出会い、そしてその後に起こった事も聞いており、そして魔王で有る自分を巡って対立してしまった事も聞いている。

「いえ、いいのです。ランス殿が怒るのは無理も無い事なのです。私は…ランス殿を信用しなかったのですから…」

「うむ、その通りだ。お前のせいで俺様の奴隷が死ぬところだったんだ」

「わ、私は気にしていません。だから酷い事は…」

 ジルはランスに向かって懇願する。

「いいや、駄目だ。こういうのはしっかりとしなければならん。お前も分かるだろう、日光」

「…はい」

 ランスはそれでも態度は変えない。

「という訳でお前はあっちに行ってろ。ここからは俺と日光の話だからな」

「…分かりました」

 ジルは結局はランスの言葉に逆らえず、不安そうな様子で部屋を出ていく。

 そして2人だけになった時、日光は改めて地面に手をついてランスに謝る。

「申し訳ありません。私はあなたを信じられず、あなたの大切な人を殺してしまう所でした」

「フン」

 ランスは日光の謝罪に詰まらなそうな顔をする。

 実際、ランスは日光に謝罪をして欲しい訳では無い。

 ランスはその事にかこつけて、日光とエッチをしたいだけなのだ。

 勿論ただのエッチでは無く、ハードなプレイをしたい…という邪な計画が有る。

 日光の罪悪感に付け込んで、そういうプレイを要求するつもりなのだ。

 まあ実際にはランスが望めば日光は渋い顔をしながらも受け入れてくれるだろうが。

「とにかく! お前は俺様に逆らった。だからお前は俺様に償う必要が有る。そうだな」

「…そうですね」

 ランスの言葉を聞いて、日光は内心で全てを理解する。

 自分の体を要求しているのだが、それならそれで言ってくれれば良いのだ。

(…ランス殿らしいといえばらしいですが)

 何かしらの特別なプレイを要求されているくらい事は日光も理解出来るくらい、ランスとは付き合いが長いつもりだった。

(普通に言ってくれれば…応えるのですが)

 日光はそう思いながら苦笑する。

 ランスはそういう所は素直で無いというか、子供っぽいと言うか…とにかく変わらない。

 基本的には優しい人なのだと日光は思っている。

 確かにランスは男には厳しいが、女性や子供にはそういう一面がある。

「私は何をすれば」

「うむ、それはだな…」

 ランスは日光の言葉に考える。

(うーむ…流石にまだプレイ内容は考えてなかったぞ)

 ちょっとエッチなプレイをしようとは思っていたが、具体的な事は何も考えていない。

 今突如として思いついたのだからある意味当然だ。

「…後で考える」

 なのでそう言うしかなかった。

「お前もそうしてないでとっとと立て。申し訳ないと思ってるなら、もう二度とするな」

「はい」

 ランスの言葉に日光は少し嬉しそうに微笑んだのだが、ランスにはそれは見えなかった。

 

 

 

「ランス殿」

「おお、起きたのか」

 ランス達が広間に行った時、そこには既に皆が揃っていた。

「レン殿の魔法のおかげで傷の治りも早かったですぎゃ」

「あんたが常識はずれの体力を持ってただけよ」

 怪獣王子の言葉にレンは呆れた顔をする。

 実際、怪獣王子の体力が無ければあの戦いでは間違いなく命を落としていただろう。

 それだけの戦だったのだ。

「で、お前も大丈夫そうだな」

「我は妖怪王だぞ。まあ…流石に傷が大きかった故、本調子には遠いが」

 お町はランスを庇った傷が今でも大きいようで、本調子とは言えなかった。

 それでも死ななかったのは、自分が成長した証でもある事。

 黒部との出会い、そして己の成長にお町は誇りを持っていた。

「突然ですぎゃ、そろそろ自分の世界に戻ろうと思いますぎゃ」

「そういやお前は向こうの世界の奴だったな」

 ランスはすっかり忘れていたが、怪獣王子は怪獣界の存在だ。

「で、どうやって帰るんだ」

「問題無いですぎゃ。帰還の方法は分かっていますぎゃ。ハウセスナース殿に会いに行きますぎゃ」

「…アイツか」

 聖女の子モンスターのハウセスナース。

 ランス達はハウセスナースの手によって怪獣界に送り込まれた。

 ならば、彼女ならば問題無く怪獣王子を戻せるだろう。

「場所は分かるのか」

「分かりますぎゃ。突然の事で申し訳ないですぎゃ」

「構わん。まあもう一回こっちに来れたら今度は俺様の城に来い」

「ありがたいですぎゃ。ランス殿、それに皆も…御武運を」

 怪獣王子はランスに手を出すと、ランスもその手を取る。

「…凄い珍しい光景」

 レンはその光景に複雑な顔をする。

 まさかランスが男の相手にこんなにも親しくするとは思わなかった。

 まあ…怪獣王子は明らかに人間では無いので、ランスも警戒していないのだろう。

 怪獣王子が人間の女性をそういう目で見ているとも思えない。

「では失礼しますぎゃ」

 怪獣王子は優雅に一礼すると、そのまま広間を出ていく。

「あいつも忙しい奴だな」

「王族のようじゃから忙しいのだろう」

 お町は怪獣王子の行動にも納得がいく。

 自分も同じ王を名乗るのだから、それなりの行動を取らなければならない。

「ランス、我も一度JAPANに戻る。魔王が変わった事でJAPANも変わるだろうからな。それに…傷を癒さなければならぬ」

「そうか」

「済まぬな…黒部殿の意志を継ぎ、お主を助けたいのはやまやまじゃが…我にも妖怪王としての責務がある」

 お町は首に下げた黒部の牙を見る。

「それに、黒部殿の復活の方法を探さねばならぬ」

「ふーん。ま、いいんじゃないか」

「今すぐには移動は出来ぬじゃろうがな。それまではお主等に付き合おう」

「そうしろ。ここからJAPANまでは遠いからな」

 ヘルマン地方からJAPANまでは流石に遠い。

 いくらお町が妖怪王といっても、道中に魔人に出会わないとも限らない。

 ならば傷が癒えるまではランス達と共に居るのが良いだろう。

「さて…そろそろ私からいいかい」

 話しが終わったと判断して、ハンティが口を開く。

「と、言ってもまずはペンシルカウに来てもらう事が第一になるけどね」

 

 

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