「早速だけどさ。一度ペンシルカウに来てくれないかね。こっちとしてはそこで話し合うのが良いと思うんだよ」
「別に構わんぞ。それに呪いの事はカラーに聞くのか一番だからな」
ハンティの提案にランスは直ぐに飛びつく。
事実、ケッセルリンクの呪いについてはカラーに聞くのが一番だ。
カラーは呪いのスペシャリストであり、ランスも手痛い目に合わされている。
「だがなあ…」
ランスは封印されているケッセルリンクを見る。
(あのパステルでもシィルの氷は解けんかったからな)
パステル・カラー…リセットの母にして、ランスが知っているカラーの女王。
へっぽこで考え無しで要領も悪いが、呪いに関してはエキスパートだ。
そのパステルでもシィルを一時的にしか解放できなかった。
ランスがシィルを解放したのはヘルマン革命の後で、魔王の呪いを解除するアイテムを手に入れたから…と、ランスは思っている。
実際にはシィルの呪いは解けていないのだが、ランスはその事を知らないままだ。
「それ以外に方法は無いなら仕方なくない?」
レンの言葉にランスもそれしかないかと思う。
「あ、だがジルならその手のアイテムを持っててもおかしくないな」
「え? 私ですか?」
ランスの言葉にジルは素っ頓狂な声を出す。
「お前じゃない。魔王の方だ。魔王ジルからどんな魔法も解除できるアイテムとかいうのを貰ったからな。ジルなら魔王の呪いを解けるアイテムを持っていてもおかしくないぞ」
狂王を倒した褒美として、ランスはジルからバランスブレイカーと呼ばれるアイテムを貰った。
生憎とこれでは呪いは解除できなかったが、それでも魔法の解除は出来るらしい。
使い切りらしいので、ランスとしてもどんなタイミングで使うかは迷う所だ。
「魔王城に乗り込むのは当分は止めた方がいいと思うよ。今は世界から魔物や魔人が集まってるだろうしね」
「…それは面倒だな」
ハンティの言葉にランスはうんざりした顔をする。
その言葉が本当なら流石に面倒くさすぎる。
ハンティの言う通り、ペンシルカウに向かうのが一番良いだろう。
「ケッセルリンクは…なるべくペンシルカウには入らない方が良いんだよね」
クリスタルに封印されているケッセルリンクを見てハンティが頭をかく。
「なんでだ」
「目に見えて守られてる、ってなったらカラーにも良くないんだよ。昔の二の舞は絶対に避け無いとならない」
ハンティが厳しい顔をする。
「そんなもんか?」
「そうだよ。カラーは人間がいないと増える事が出来ないんだ。話しただろう、昔にカラーが何をしてしまったのかを」
「…何かあったっけ?」
「あんた達はその時は関わって無かったからね…今思えば関わってくれたらこうはならなかったのかもね…」
ランス達を見てハンティは頭を押さえる。
「言っただろ。カラーがカラーの王国を作ろうとして失敗した話」
「…ああ、そういやそんな事もあったな。俺様は関わって無いから忘れてたぞ」
「それはカラーが悪いから反逆されるのは仕方ないさ。問題なのはその後…カラーのクリスタルを狙ってカラー狩りが続いている事だからね」
「前にも言ったがそれはカラーが悪いぞ。反逆されて当たり前だ」
ランスの厳しい言葉にハンティはため息をつくしかない。
ハンティからしてもあれはカラーの凄いやらかしで、ハンティの力を以てしてもどうしようもない事もあると思い知らされた事でもあった。
「ケッセルリンクの話に戻るけど、カラーが魔人の保護下にあるって事が広まると困るのさ。また調子に乗るカラーが出るかもしれないし、何よりも魔軍に与しているとみなされて絶滅戦争なんて事になったら洒落にならないからね」
ハンティが危惧しているのは人類との戦争が起きる事だ。
もしそうなれば数に劣るカラーは間違いなく絶滅する。
良くてクリスタルを生産するために、ジルがそうしたように牧場なんて事もあり得るのだ。
GL期であってもカラーのクリスタルを狙って人間が姿を現していた。
魔王が変わったGI期ではどうなるか…それがまだ分からない。
「流石にカラーが全滅とは許せんな。カラーは美女しかいないからな、全員助けるのは当然の事だ」
「ランス様…」
ランスの言葉にジルは微妙な顔をする。
相変わらずのランスの言葉に何処となく安心すると共に、改めてその過激さを認識していた。
恐ろしい事に、ランスはこれを本気で言っているという事なのだ。
「あんまり有難いとは言えないけどね。特にアンタは魔人と近すぎる。あんたが世界を纏めるっていうなら話は別だけどね」
「そんな面倒くさい事する訳無いだろ。それに俺様にはやる事があるからな」
「まあそれはいいさ。とにかく、ペンシルカウに行ってくれるかい?」
「おう。久しぶりにカラーに会いに行くか。お前達もそれでいいな?」
ランスの言葉に皆が頷く。
「お町もいいか」
「流石に今の状況ではな。出来ればランス達にJAPANに送って欲しい所ではあるのだがな…」
お町としてはランスと共にJAPAN入りするのが一番いい。
ここからJAPANまでは遠いし、何よりもランスと共に少しでも長くいたい…という心もあった。
「JAPANか…まあ行くのもいいかもしれんな。ジル、スラルちゃんはまだ起きる気配は無いか?」
「あ、はい。まだスラルさんが目覚める気配は無いです」
「よーし、カラーの所に行ったらJAPANに行くか」
ランスは行動方針を決める。
「だがその前に…ケッセルリンクをどうするかだな」
ランスはクリスタルに閉じ込められているケッセルリンクを見る。
美樹によって氷に閉じ込められたシィルと同じように、結構な大きさだし重さもある。
流石にこんなものを持って移動するなんて出来ない。
「ケッセルリンクは…寝てるか」
ケッセルリンクの話題になっても彼女が出てくる様子は無い。
つまりは彼女の意識はまだ覚醒していないという事だ。
「とりあえず魔法ハウスに入れておく? そうすれば持ち運びは出来るけど」
「それしかないな。レン、入れとけ」
「了解。じゃあ取り敢えずはカラーの里に向かいましょうか」
レンは封印されているケッセルリンクを軽々と持ち上げる。
やはり彼女は細身には見えるが、実際には恐ろしい腕力を持っているのは間違いない。
「あの…加奈代さん達はどうしますか?」
「特に何も言う必要は無いだろ。下手に教えたら魔王に俺達が何処に向かったか教える羽目になるからな」
魔王の命令に使徒は逆らう事は出来ない。
もしかしたら今もメイド達は魔王の命令で色々と白状させられているかもしれない。
それを考えるとやはり手早く移動はするべきだ。
「連絡は私がしてあげるよ。あんた達の行方はぼかす、それでいいかい?」
「そうだな。魔王がジルを狙わんとも限らんからな」
ただ…とランスは思う。
(そういや俺様が生まれた時代には魔人なんていなかったな。リーザスの時が最初だったな)
ランスはリーザスでの出来事を思い出す。
あの時に初めて魔人と戦ったが、思えば魔人なんて存在はその時になって初めて知ったような気がした。
しかもその時にはリーザスにはジルが封印されていた。
(あれ? そういやあのジルはどうなるんだ?)
今になってランスは考える。
ここに人間のジルが居るという事は、リーザスには魔王のジルが居るという事になる。
(…ま、いいか。その時になったら考えるか)
正直考えても分からないのでランスはそれを頭の隅に追いやる事にする。
それよりも問題なのはやはりケッセルリンクなのだ。
魔人四天王にして魔界の重鎮である彼女の庇護は非常に大きい。
彼女の協力なしにして、ランスのこれまでの冒険はありえなかっただろう。
そしてこれからも彼女の力は必要になるし、何よりも彼女は自分の女だ。
自分の女に対しては何でも出来るのがランスという男なのだ。
「じゃあ入れてくるから。皆は準備してなさいよ」
レンはクリスタルに封印されているケッセルリンクを軽々と担ぐと、魔法ハウスを持って消えていく。
「ジル、日光、お町、お前達も準備はしておけよ。とっとと行くぞ」
ランスの言葉に三人は頷いてそれぞれの割り当てられた部屋へと向かっていく。
ランスも自分の部屋に戻ると武器を手に取る。
そして何時もの癖で鎧を着ようとするが、その鎧が無い。
「うーむ…俺様の鎧は直ぐに壊れるぞ。ビスケッタさんも居ないから手入れも出来ん」
一番最初に着ていた鎧は既に壊れ、その後二度三度と鎧を変えてはいるが、その鎧も全部壊れてしまった。
まあそれは相手が悪いので致し方ないのだが、こうも鎧がぽんぽんと壊れていてはランスとしても面白くない。
JAPANでは信長が「大陸の鎧は大げさすぎる」みたいな事を言っていたが、同時にランスもJAPANの奴が軽装過ぎると返していた。
「鎧の無い戦いにも慣れはしたが…うーむ」
何度も何度も鎧が壊れたので、ランスは自然に相手の攻撃を回避する戦いが身についていた。
勿論それはランスが超一流の剣士である証ではあるのだが。
色々と言葉を並べようが、やはり不安なものは不安なのだ。
魔法に対しては幸いにもレアアイテムであるドラゴンの加護があるが、単純な物理攻撃はどうしようもない。
致命的な攻撃は避け、それ以外は鎧である程度防いでいた戦いは出来ず、自ずと0か100かみたいな戦いをしてきた。
それはそれで神経を使うし、ランスの性に合わないという事もある。
「面倒だな」
やはりその言葉に尽きる。
どこかダンジョンで適当なアイテムを手に入れないといけないだろう。
「それよりもスラルちゃんとケッセルリンクをどうにかしなければいかんな。これではセックスも出来ん」
スラルはジルの中に居るし、ジルに至ってはあの体だ。
ランスはロ〇コンの趣味は無いので、流石に今のジルとエッチをするなど論外だ。
「後は日光だな。うむ、誰が真のマスターかしっかりと教えてやるか。体でな」
ランスはいやらしい笑みを浮かべると、何処か楽しそうに戻っていこうとし、
「あ、そうだ。その前にレベルだな。ジルがレベル神みたいな事をやっていが、クエルプランちゃんの顔も見んとな」
自分がまだレベルアップしていなかった事を思い出す。
狂王を倒してからジルによってレベルアップはされていなかったので、まずはレベル神を呼びだす必要がある。
ランスは手早く着替え、二本の剣を持ち、皆の所に戻る。
皆も既に準備を終えていたようで、直ぐに旅立てる支度が出来ている。
「お、ジルお前…服は何とかなったのか」
「はい! 加奈代さんが急いで手入れをしてくれたみたいです」
ジルはかつて自分が着ていた服を仕立て直した服を着ていた。
「で、その包帯は何だ」
「これは…その、やっぱりこの手足を見られると誤解を招くかなと思いまして…」
ジルの手はその手が見えなくなるように包帯が巻かれている。
実際には怪我などしていないのだが、やはりあの異形の手足を見られるのは抵抗があるようだ。
「俺様は気にせんがな。それもいいアクセントだろ。まあ…今は全くその気にならんが」
平坦な胸に色気が感じられない童顔が相まって、全くその気にはならない。
流石に志津香とナギよりは大きいが、出会った頃のミルを思い出してしまう。
魔法で年齢を上げていたとはいえ、ミルに関してはランスにとっては手を出したのは不覚だった。
「じゃあペンシルカウまで案内するよ。魔王が変わったからか、魔物の動きが活発になってるからね」
魔王が変わった事で、一部の魔物の中には好き勝手動くものが出てきたのは事実だ。
魔物にも地獄を見せていたジルが消えた事により、ようやくあの地獄から抜けられたとはしゃぐのは無理も無いだろう。
「その前に…カモーンクエルプラン!」
ランスが指を鳴らすと、神々しい光と共にクエルプランが現れる。
「お久しぶりです、ランス」
「おう。やっぱりいつ見てもクエルプランちゃんは美人だな」
久々に会ったが、その神々しさにはランスも畏怖してしまう程だ。
魔王とは別のベクトルで手を出しにくい雰囲気を持っているのが彼女だ。
「…それよりも、色々とあったようですね」
「うむ、色々有ったのだ。それよりもレベルアップだレベルアップ」
「分かりました」
クエルプランはまずは今の自分の責務を果たすべく呪文を唱える。
「おめでとうございます。ランスはレベル…97になりました」
クエルプランはランスのレベルが一気にここまで上がった事に目を見開く。
が、直ぐに気を取り直して他の者へと伝えていく。
「レンはレベル114になりました」
「ありがとうございます、クエルプラン様」
「日光はレベル71になりました」
「…強くなれるのですね、まだ」
「お町はレベル66になりました」
「おお…とうとう我も60を超えたのか」
「ジルはレベル60になりました」
「そこが私のスタートなんですね」
「レベルアップは以上になります。それでは頑張ってください」
「ちょーっと待った、クエルプランちゃん! 俺様はレベル90を超えたぞ!」
ランスはレベルが90を超えたので、新たな褒美にワクワクしている。
そんなランスに対し、クエルプランはただ無表情にランスを見るだけだ。
クエルプランの視線が普段と違う事に気づき、流石のランスも少し慌てる。
「な、なんだクエルプランちゃん」
「いえ…ランス、あなたは一体何時の間にLV90を超えたのですか」
「ああ、その事か。魔王に異世界に飛ばされて、そこで魔王にレベル神の代わりをしてもらった、それだけだ」
「…そうですか」
こんな事は何ともないはずだった。
本来はクエルプランはランスの担当レベル神ではない。
それどころか、レベル神のような下級の神とクエルプランとはまさに天と地ほどの差がある。
だがそれでも―――クエルプランの胸の中には言いようの無い感情が渦巻いていた。
「………保留します」
「…は?」
「ですから、LV90の褒美は保留します」
「な、何だと!? どういう事だ!?」
そして彼女の結論は、ランスに対する褒美を取りやめてしまうというものだった。
「私があなたのレベルを確認した訳ではありません。何らかの不正があったとも考えられます」
「別に不正などしとらんぞ! というか俺様は滅茶苦茶苦労してここまでレベルを上げたのだぞ!」
「私は確認していません。不正をしてないという証拠も在りません」
嘘だった―――クエルプランには分かる。
ランスは不正な手段を使ってレベルなど上げていない。
確認はしていないが、純粋に強敵と戦ってレベルを上げたのは分かる。
それでも、ランスが自分以外の存在を使ってレベルを上げたのが気に入らなかった。
「ですので褒美はLV100…そしてLV110まで引き上げる事としまう」
「うぎゃああああ! ちょっと待て! それは無いだろ!」
褒美レベルの引き上げ―――それはランスにとっては辛い事だ。
いくらレベルが上がりやすくなるアイテムを持っていたとしても流石に厳しい。
ランスはこれまで強敵と戦う事でレベルを上げてきたが、110となると狂王レベルの敵を倒しても中々レベルが上がらないだろう。
(うわあ…ご愁傷様)
愕然とするランスを見て、レンは心の中で同情する。
だが、神とは本来はそういうものなのだ。
この世界のルールであり、神の言う事が全て正しいのだ。
「ではレベルを下げるのとどちらが良いですか」
「うぐ…それは」
クエルプランの指摘にランスは呻く。
流石に異世界で戦った魔物、そして狂王を倒した経験値を失うのは辛すぎる。
それにレベル97という事はもう少しで100に届くという事だ。
それを秤にかければランスでもレベルを下げるという選択肢は出てこない。
これが普段の冒険ならレベルを下げるのも受け入れてたかもしれないが、流石に今のランスの状況でレベルを下げるのはありえなかった。
「むぐぐぐ…」
だからランスは呻くしかない。
これがウィリスなら文句を言って、イチャモンをつけて襲うくらいややったかもしれない。
だが、流石のランスもこのクエルプランを襲おうという気は無かった。
ランスの本能がそれを止めていた。
この神は間違いなくヤバイ、それが分からないランスでは無かった。
何も言えずに呻くランスに対し、クエルプランは内心で複雑な顔をしていた。
(私は…何をやっているのでしょうか)
クエルプランは自分の中にある感情に折り合いをつけれずにいた。
ランスに落ち度は全く無いのだ。
それなのに、自分の気分で一度約束していた事を反故にしようとしているのだ。
(ですが…)
クエルプランも考えていた。
確かに自分の言っている事は横暴なのだろう。
だが、相手は人間…所詮は神のオモチャであり、その心に配慮する必要は無い、と考えるのが神としての普通なのだ。
しかし、クエルプランはその普通が出来ずにいた。
それはランスという人間に出会ってからの事だ。
これまでのランスとの出来事は自身の記憶の中に最重要プロテクトとして記録されている。
それは彼女自身でも消す事が出来ず、今でも残り続けている。
「…ではこのような事はどうでしょうか」
だからこそ、自分でも驚くような言葉が出てきた。
「今回のあなたの出来事に対し、私にバランスブレイカーを提出して下さい。その時は新たなアイテムを授けましょう」
「何?」
「そうする事で今回の不正疑惑は無かった事とします。そして新たな道具を授けましょう」
「ほう」
クエルプランの言葉にランスは目を光らせる。
彼女の言葉ならば間違いなく嘘は無いし、実際にこのアイテムも効果があるのは間違いない。
ただ、バランスブレイカーとは何なのか、ランスは実はあまり詳しく無かった。
「で、バランスブレイカーってどんなのだ」
「………例えば…いえ、何でもありません」
ランスに質問にクエルプランは『あなたのような人と、あなたの持っている剣です』と答えそうになるが、流石に言葉を濁す。
「それに関してはそこにいるエンジェルナイトに聞けば良いでしょう。彼女がバランスブレイカーと認めたなら、私も認めます」
「わ、私の判断で宜しいのですか?」
「任せます。ではランス…神の試練、しかと授けましたよ」
そう言ってクエルプランの姿は消える。
「で、バランスブレイカーって何だ」
ランスは早速レンに尋ねる。
「物であったり人であったり…この世界に影響を及ぼしかねない存在の事よ。程度の差はあるみたいだけど」
「フーン、そんなもんあるんだな」
(気楽に言ってるあんたも十分バランスブレイカーなんだけど…ま、それは言いっこなしか)
気楽そうなランスに対してレンは内心で呟く。
ランスをクエルプランに引き渡せばもしかしたらクリアなんだけど…なんて考えも浮かんだが、それは流石に自分の任務を逸脱してしまっている。
「とにかく色々とあるのよ。そこは私に一任されたみたいだし、アンタの事だから冒険してる間に見つけそうじゃない?」
「まあいい。とにかくカラーの所に行くぞ。ハンティ、案内しろ」
「そうだね。ま、私が居ればカラーから何か言われる事は無いでしょ」
ランス達はまずはケッセルリンクの城を出る。
「あ、待って下さいランス様。加奈代さんに書置きを…」
「止めとけ。もし変に勘繰られても面倒だ。それにこいつらがここに居るのは分かっとるんだ。用が有ったらこっちから行けばいい」
「は、はい」
ジルは書置きを残そうとするが、ランスはそれを止める。
万が一にもあの魔人…いや、今は魔王であるガイに自分を行方を探させられるのは面倒だ。
流石のランスも魔王には勝てないのだ。
なのでメイド達にも自分達がこれから向かう所を教える訳にはいかない。
彼女達もそれを承知の上で、自分達にこれからの向かう先を伝えないで欲しいと言ったのだ。
「それよりもペンシルカウに向かうぞ。まずはケッセルリンクをどうにかしなければならん。それとスラルちゃんもな」
ランスはジルを見る。
ジルの中にはスラルが入っており、彼女がジルの中にまだ残っている微量の魔王の血を押さえているらしい。
彼女の事もどうにかしなければならない―――ランスにはやる事が沢山ある。
が、やる事が沢山有るという事はランスにとっては退屈しない日が続くという事だ。
それに自分の女の為ならばどんな苦労も厭わないのがランスだ。
「よーし行くぞ」
ランスは早速GI期の世界を歩くべく、ケッセルリンクの城から出る。
相変わらずの気候で少々嫌になるが、まあこれがヘルマンの地と思えば特に気にもならない。
ハンティの案内でランス達はペンシルカウに向かって行く。
道中にはモンスターもおらず、特に問題は無いと思われた。
ハンティが瞬間移動で辺りを偵察しながら、ランス達は確実に進んで行く。
「待った」
何度目かの瞬間移動の後、ハンティが突如としてランス達を制止する。
「どうしたの、ハンティ」
「魔物の部隊だ。魔物将軍を中心にした200くらいの部隊が動いてる。多分魔王城に向かうんじゃないかな」
「200…魔物将軍が率いるにしては随分と少ないですね」
ハンティの報告に日光も目を細める。
魔物将軍は200の魔物隊長を率いる事の出来る魔物だ。
それが200程の魔物を引き連れて移動しているのは珍しい光景だ。
(皆が居れば…)
200程度ならば奇襲と不意打ちで何とか出来ない数ではない。
ホ・ラガが居ればそれくらいは何とかなる数だ。
「ここは連中が通り過ぎるまで待った方がいいんじゃない」
それはハンティにとっては当然の選択だった。
「近くに他の連中は居るのか」
「いや、居ないよ。あの連中だけみたい」
「ふーん…」
ハンティの言葉にランスはニヤリと笑う。
「よし、じゃあ連中をぶっ殺すぞ」
「は?」
「は? じゃないだろ。200程度なら今の俺様ならば十分に蹴散らせる数だ。ジル、お前もやれるな」
「あ…も、勿論です、ランス様!」
ランスの言葉にジルは勢いよく返事をする。
体格は小さくなったが、魔力に関しては前よりも上がっている。
それに余分な力はスラルが制御してくれているので、何も問題は無い。
「ま、200くらいなら余裕でしょ」
レンもあっさりと言い放つ。
そう、今の自分達ならば200程度物の数ではない。
「ジル、お前どれくらい魔法が使える」
そしてランスにとっても重要な事。
それはスラルが居なくなった今、魔法使いはジルだけだ。
ランスとしてもジルがどれくらい強いかを把握しておく必要があった。
「大丈夫です、行けます」
ジルは拳を握って答える。
「そうか。じゃあまずはお前がぶっ放せ。その混乱の後で突っ込むぞ」
「はい」
「任せておけ」
「分かった」
ランスの言葉に日光、お町、レンも臨戦態勢に入る。
「はぁ…本当に規格外の奴だね。ま、私も付き合うよ」
ハンティもランス達の実力は知っている。
魔人ハウゼルと戦い、メディウサにも呪いをかけた。
ならばあの程度の魔物など物の数では無いだろう。
「ジル、準備はいいな」
「はい! 行きます…白色破壊光線!」
ジルの放った魔法と共に、ランス達は一斉に駆けだす。
そしてGI期初の戦いが始まる。
話を書き留めてたUSBが壊れる、データ復元出来ない…
まあ自分が悪いです