新たな時代―――それは人間にとっての苦難の時代の始まりだった。
「ヒャッハー! 殺せ殺せ!」
魔物兵が人間牧場の人間を殺していく。
人間牧場の人間達は己の意思も持てず、ただただ殺されていくだけだ。
そんな光景がこの世界の至る所で見えていた。
そしてそんな光景を見て顔を青ざめさせている一人のカラーが居た。
「こいつは…とんでもない事になってるね」
人間牧場と魔物牧場の崩壊…それは一方的な殺戮を生み出した。
魔物は意気揚々と人間達を殺していく。
魔王ジルの時は人を殺す事は決して許されなかったが、それがとうとう合法になったのだ。
魔物達の意識は当然のようにハイになり、恐ろしい勢いで人間を殺していった。
「魔王ガイ…これが奴の選択かい」
ハンティ・カラーはこれまでの歴代の魔王を見てきた。
人間と敵対しながらも、別に絶滅させようとは思わなかったスラル。
基本的に人間を放置し、時に思い出したように殺戮を行っていたナイチサ。
人間牧場と魔物牧場を作り、世界を管理していたジル。
そして魔王ガイはこれらの魔王と違い、まさに血と破壊に酔った実に魔王らしい魔王だった。
「やれやれ…これは大変な事になるね」
ハンティはこの事をカラー達に告げるべく、瞬間移動でその場から姿を消した。
「とーーーーーっ! ランスあたたたたーーーーっく!!!」
「「「うぎゃあああああ!!!」」」
ランスの必殺の一撃が魔物達をバラバラにする。
「ひいいいいいい!? な、なんだこいつは!?」
「ば、バケモノだ!」
ランスの恐ろしいまでの剣を見た魔物兵達はそれだけで腰が引けてしまった。
何しろ今の魔物達にとっては人間を殺すなんてボーナスタイムと一緒だった。
だがしかし―――彼等はそのボーナスの中で恐ろしいカードを引いてしまった。
即ち、死神のカードを。
「お、俺は楽に殺しがしたいんだ! 俺は逃げ」
「ライトニングレーザー!」
逃げようとした魔物と、その直線状に居た魔物兵達が強烈な魔法に貫かれて絶命する。
ジルの放った魔法は魔物兵を貫通し、恐ろしいまでの被害を魔軍に出していた。
「逃げたりしないでよ。どうせ皆殺しになるんだから手間をかけさせないでよ」
「ば、バケモノが!」
自分の前に降り立った人間に対して魔物隊長がその剣を振るう。
「はいはい。アンタが死ねばここの連中は終わり。分かりやすくていいわ」
レンは魔物隊長の剣を容易く弾く。
「え…?」
それどころか弾かれた剣が折れ、その切っ先が魔物隊長の頭に突き刺さるくらいだ。
「邪魔」
レンは無慈悲に魔物隊長の頭を剣で刎ねる。
「ほら、アンタ達の上司の死体」
倒れそうになった魔物隊長の体をレンは無造作に蹴りつける。
魔物隊長の死体が魔物達に飛んでくるのを茫然と見ているしかない。
「た、隊長が殺られた!」
「に、逃げろ」
全てを言い切る前に魔物達に強烈な雷が落ち、その体を黒焦げにする。
「逃がす訳が無いじゃろう。お前達はここで死ぬ。お前達の死は誰にも知られない」
お町は殺意を隠さずに魔物兵達を嘲笑する。
魔物達はそれでも逃げようとするが、全ての行動は遅かった。
「はっ!」
日光が富嶽を振るい、魔物兵達の体を斬り裂く。
魔物隊長を失い、指揮系統が滅茶苦茶になった魔物達は何も出来ずに全滅する事となった。
「魔物兵がここまで外に出てくるって事は…やっぱりベネットの言う通り魔物牧場も人間牧場も無くなったって事なのかしらね」
「そうですね。ジルが魔王の時にはこれ程の数の魔物兵が我が物顔で歩くという事はありませんでしたから」
レンの言葉に日光が肯定する。
日光が見た魔物兵は何処か余裕がなく、常にピリピリしていた。
目に見えない何かに怯えているように見えたが、魔物兵達は魔王ジルを恐れていたのだと今なら分かる。
その魔王ジルの枷が解かれた瞬間、魔物達もまた解放されたのだろう。
それが今の魔軍の姿なのだろう。
「いやー、皆さん強いでやんすねえ。あっしも自信はある方ですが、流石にレベルが違いますわ」
ランス達の元にベネットが現れる。
「…お前、本当にカラーか」
ランスはその姿を見て呆れた顔をする。
ベネットが持っていたのは一般的なカラーが持つ弓、そして得意とする魔法や呪いでは無かった。
「カラーだって色々あるでやんすよ」
彼女が持っていたのは短剣だった。
その短剣は血に塗れており、ベネット自身も魔物の返り血がいたるところについている。
「あっしは罠とコイツで戦うカラーでやんすよ」
「変な奴だな。まあ足手纏いにならないなら構わん」
「…女に対して随分と辛辣な評価ね。女だったら多少弱くても許容するのに」
レンはランスの言葉に目を丸くする。
ベネットは間違いなく人間だった頃のシャロン達より強い。
それでもランスはベネットに対しては妙に厳しかった。
「…そんなにエッチしたくないの? 彼女と」
「あいつとやったら負けなような気がする…俺様の本能があいつとやるなと言っとるんだ」
ランスは不思議とベネットに対してそういう感情を持てなかった。
ハンティに言われているという事も有るが、そもそもランスはベネットに対しては手を出そうと思わなかった。
「酷いでやんす…旦那は凄い女好きなのに。カラーの間でも有名でやんすよ」
「有名って…どうして?」
「旦那ってローザの用意した家を利用してるじゃないですか」
ランス達は魔法ハウスを使っていない。
理由は魔法ハウスの中にケッセルリンクが眠っている事だ。
彼女はなるべくならばカラーの間で見せるべきではない。
それを理解しているので、ローザはランス達にカラーが用意した家を用意したのだ。
「そこで毎日毎日エッチしてれば嫌でも有名になりやすよ。旦那達の情事の後を清掃しているカラーが居るでやんすよ。そのカラー達がきゃあきゃあ言っているでやんすよ」
カラーは別に性に対して興味が無い訳では無い。
それぞれ個性があるように、カラーにも当然人間の男…性行為に興味がある者も多い。
なんだかんだ言ってもカラーだって女性なのだ。
「旦那とみなさんのエッチはカラーの間でも噂になってやしてねえ…何だかんだ言って皆興味深々」
「ほう。今のカラーはそんな感じなのか」
ランスの知るカラーはそもそも人間の男とはセックスをしない。
その事もあり、ランスはパステルに呪われたのだ。
…まあランスがパステルを襲ったのが一番悪いのだが。
「ちなみに一番人気は日光の姉さんです。姉さんみたいな落ち着いた女性がエッチの時に素直になるというギャップが人気で…フンギャロ!」
ベネットに日光の拳が突き刺さる。
「な、何するんですか!」
「………」
「へ、へへえー! お代官様何とぞお情けを!」
日光の無言の圧力にベネットは思わず土下座をする。
「余計な事は言わないように」
「ゆ、許された…」
ベネットは安堵のため息をつく。
「いやー、流石姉さん心が広い! 昨夜おもちゃを後ろに入れながら旦那に貫かれていい声でないてたのに…あべし!」
日光が鞘でベネットの頭をどつく。
今度はベネットも起き上がれずに気絶してしまったようだ。
「に、日光さん…ランス様とそんなプレイを…」
ジルは顔を真っ赤にして日光を見る。
「何もしていません。私は普通にランスと肌を重ねていただけです。いいですね」
「あ、ハイ…」
日光の圧力を受けてジルも思わず顔を赤から青に変える。
それほど今の日光には意見出来ない空気が有った。
(…はあ。私は何故かランスの頼みを断り切れない)
内心で日光はどうしてこうなっているのかと頭を悩ませていた。
いや、その理由は明白なのだが、日光はそれを認めるべきか認めないべきかを悩んでいた。
簡単に言えばランスと日光の体の相性は抜群だからだ。
それに加えて聖刀日光としての相性も良く、ランスが持っていれば自分は最高のポテンシャルを引き出せた。
ジルと戦った時の勇者も自分を持てたが、自分の力を引き出しているとは言い難かった。
恐らくはランスの半分の力も発揮できていなかっただろう。
ランスにそこを突かれたという事もあるが、ただ普通に肌を重ねれば良いだけなのに、ランスにいいようにされてしまっている。
卑猥な下着を着せられ、本来使うべきではない所を使われ、何度も何度も求めてしまう。
それを断れない自分にもちょっとだけ嫌になってしまう。
(でも…)
それでもやっぱりランスとエッチするのは気持ちいいし、心も充実する。
これはもう惚れた弱味としか言えないのだろう。
(言動や行動はお世辞でも良いとは言えない人ですが…人を惹きつける力がある)
自分もそれに当てられたのかもしれない、そう思って納得する事にする。
「魔物の動きが活発ね。やっぱり魔王の交代の影響よね」
「魔王ガイ…その動向はまだ分からぬからな」
レンもお町も今の魔王へと変わった事に嘆息する。
ジルの時代はここまで魔物…いや、魔軍の動きは活発では無かった。
レイを追って組織だった魔物達が来たことはあったが、それでもここまで活動的では無かった。
ただただ粛々と命令に従っていただけのGL期と、喜々として襲ってくる今の時代は正に雲泥の差だ。
「こんな所にも魔物…いや、魔軍が来てたんだね」
その時ハンティが突如として現れる。
「お、ハンティ。早いな」
「瞬間移動ってのはそういう力だからね。それにしてもあんた達もこんな所にまで出てきてたのかい」
ハンティはランス達の行動力に呆れてしまう。
ここはカラーの森からそんなに離れてはいないが、近くも無い。
そんな状況でも我が物顔で動けるランス達はやはり常識から外れた存在だ。
「まあいいさ。それよりもアンタ達にも話がある。今の世界に関してね」
そう言うハンティの顔は何処までも真剣だった。
「人間狩りだと!?」
「そう、それが新しい魔王の方針。人間牧場は解体され、そこでは日夜殺しが行われている…それが今の時代の現実さ」
ハンティの放った言葉は恐ろしい言葉だった。
そう、今の時代は魔物が一方的に人間を狩る時代へと変貌してしまっていた。
人間を増やすための人間牧場、魔物を処刑するための魔物牧場は廃止された。
今では人間屠殺場として利用され、そこでは毎日人間が惨い目にあって死んでいく。
それはまさに地獄の光景、あの魔王ナイチサが人類の50%を殺した死滅戦争の再来を思わせる程だった。
「とにかく危険な状態さ。魔物達が当たり前のように動き、そして人間を殺していく…それが世界の常識になったのだ」
「あのガイが…そんな事に」
日光はガイの変貌に胸を痛める。
日光はかつてガイと共に協力し、ジルを倒すべく行動を共にした。
ガイが探してきた勇者という青年の刀となり、ブリティシュ、カオスと共に戦った。
ただ、ランスという完全なイレギュラーの介入もあり、日光は最終的にガイと敵対してしまった。
それを抜きにしても、あの理性的なガイが人間の虐殺を行うとはとても信じられない事だった。
「魔王の血だろうな。ガイといえども魔王の血には逆らえなかったのだろう」
ランスの剣からケッセルリンクの声が響く。
普段は眠っているのであまり喋る事は無いが、今は起きているようだ。
「スラル様もナイチサも思い出したように人間を殺していた。唯一ジル様だけが人間に手を出す事を禁じていたが…それでも人間から見れば絶望的な状況だっただろう。いや、そもそも絶望という物を理解していたかどうかもな…」
ケッセルリンクは3代目魔王スラルから魔王に仕えてきた魔人だ。
なので魔王の事は嫌でも知っている。
自分も魔王から血を与えられ魔人となったのだから、その血の事は知っている。
幸いにもケッセルリンクには強烈な破壊衝動は無いが、魔人の殆どは人間を殺したいと願っている者が多い。
「魔王ガイね…」
ランスはその名前には全く心当たりは無い。
実際にはランスはGI期生まれなのだが、ランスにとってはあのカミーラによるゼス侵攻までは魔軍という存在は全く知らなかった存在だ。
ガイは人間界と魔物界を分け、人間に自由を与えた。
その結果、人間は国を作り歴史を作った。
そして本来の歴史において、第二次魔人戦争を勝ち抜き人類が魔軍に勝利するという結果を齎す。
ランスにとっては魔王とはジルと美樹の事であり、ガイなんて魔王は全く関わり合いの無い存在だ。
しかし、魔王の歴史を紐解いていくと、そのガイこそが有る意味ランスが居た時代の魔王の一人でもあるのだ。
「とにかく出歩くのは危険さ。いや、ペンシルカウだって無事に済むかどうか…今はもうそういう時代になったのさ」
ハンティは苦々しい顔をする。
これまで何とかカラーの存続を考えてきたが、もし魔王が本気になればそれも全ては水泡と帰す。
魔王の前には生物力など無力に等しいのだから。
「で、カラーはどうするつもりだ」
ランスの言葉にハンティはため息をつく。
「何とかするしかないさ。大変だと思うけどね」
「ふーん、そっか。まあ頑張れ」
「…随分と気楽に言ってくれるね。こちらは人間が居ないと数が増えないんだから」
ハンティはじろりとランスを睨む。
「まあお前なら大丈夫だろ」
ランスはそんなハンティの視線にも全く動じない。
何故ならランスはLP期までカラーが生き残る事を知っている。
そして自分とどう関わっていくのかも。
「ランス様…でもどうしますか? ケッセルリンクさんもそうですが、私達も…」
「そんなに焦るな」
ジルの言葉にもランスは焦らない。
「すこし大人しくしてればいいだろ」
「そういう訳にもいかないんだけどね…こっちとしては。まあそっちにはあんまり関係無いだろうけどさ」
ハンティはこれからの事を思うと憂鬱になってしまう。
だが、まあそれはカラーの問題なのでランス達に何かを言うのはお門違いだ。
(ある意味この男が居ればカラーは増えるんだろうけどさ…)
この男は不思議とカラー受けが良い。
人間に対して恨みを持っていたり不信感を持つ者は多い。
そんな中でもこの男は不思議とカラーに好かれている。
明らかな女好きではあるのだが、確かに不思議な魅力が有るのは間違いない。
「とにかく少し待つぞ」
ランスの決定ならば誰も口を挟めない。
ただ、ランスの言う通り何も出来ないという事も事実だ。
そして何よりも魔軍が今は積極的に動いているのなら、人間である自分達が動ける訳が無いのだ。
現在の魔軍の動きはカラーにも大きく影響した。
カラーにとっては人間との関係はまさに生命線、決して欠かす事の出来ない存在なのである。
どんなに人間がカラーに悪意を持ち、クリスタルを狙っていたとしてもその事実は変えられないのである。
当然のようにカラーの間では動揺が広がるが、それは無理も無い事だろう。
ただ、幸いにも魔軍がカラーを直接狙うという事は無い―――例外を除いて。
「ハハハハハ! まさかこんな所にカラーの住処があったとはな!」
魔物将軍率いる1部隊がたまたま迷った道でたまたまペンシルカウを襲った、ただそれだけ。
本来はあり得ない事なのだが、ジルの圧政によるストレスからか暴れる魔物兵が増えた。
そしてもう一つの点がある。
「カラーを探せ! 呪いの力に長けた奴は殺すな! 生かしてメディウサ様の所に連れて行くのだ!」
それはこの魔物将軍がメディウサの部下だという事だろう。
魔人メディウサは今でもカラーの呪いに苦しんでいる。
ジルにも見放されたが、ガイが魔王となった事でメディウサのタガが外れたのだ。
そしてケッセルリンクが姿を見せていない事も有り、それを好機ととらえて部隊を動かしたのだ。
尤も、それは運任せの行動であり、魔物将軍がここにこれたのもひとえに運があったからだ。
そう、彼等には確かに運があった―――ここまでは。
「へっへっへ! カラーも人間と同じく穴があるからな! せいぜい楽しませて貰うぜ!」
魔物兵達はこれから起こる殺戮と凌辱に目を輝かせながらカラー達に襲い掛かり―――
「邪魔だ。死ね」
「え? うぎゃああああああ!」
ランスが無造作に魔物兵を斬り捨てた。
「おい、何で魔物がここに来てるんだ」
「結界だって万能じゃない。運が有ればここにも来れるさ」
ランスの疑問にハンティが答える。
「フン。だったら皆殺しだな。一匹残らずぶっ殺す」
「あんた達が居て本当に良かったと思うよ。私も手伝うよ」
ハンティとしてもここで魔物兵達から逃げる選択肢は無い。
今の時代、カラーが外に生きるのには流石に辛すぎる。
それにランス達が居るのならば、ここに居る魔物兵を全滅させる事も決して無理な事では無いのだ。
「レン、ジル、お町、お前達はカラーを守ってろ。日光は俺についてこい」
「分かったわ。任せるわよ」
「ランス様…気を付けて下さいね」
「お主ならば後れを取らぬとは思うが…こんな所で死ぬなよ」
レン達はランスの指示に従いカラー達を守るべく動き始める。
幸いにも魔軍はまだ本格的に動けてはおらず、ペンシルカウにただ入って来ただけだ。
「がはははは! 皆殺しだ!」
ランスは剣を魔軍に突き付けると、勢いよく走り出した。
「サズ将軍、カラー達の抵抗があるようです」
「下らんな。カラーは呪いに長けた奴が一匹いればいい。後は連れ去って牧場で数を増やせばいい」
「おお、それは良い考えですな!」
魔物将軍の言葉に魔物隊長も楽しそうに笑う。
今回連れてきたのは魔物隊長2体と魔物兵400程と少ないが、それでもカラーを蹂躙するのには十分だと思っていた。
だが―――そんな魔物将軍の考えはその後の報告によって砕かれた。
「た、大変です! なんか異常に強い奴が…うぎゃあああああ!!!」
魔物将軍に報告に来た魔物兵の頭に棘付きのボールが突き刺さる。
どれ程の勢いで飛んできたのか、魔物兵はそのまま動かなくなってしまった。
「な、何だ!?」
「狼狽えるな! 所詮は非力なカラー! 最終的に押しつぶせばいい!」
魔物将軍は特に慌てる事無く指示をする。
それが出来るのがやはり将軍のという名前の通りなのだろう。
しかし…それでもこの将軍の運は無かったのだろう。
「将軍! やけに強い奴等が居て…第一小隊は全滅しました!」
「だ、第二小隊全滅です! あ…第三小隊も…」
立て続けに入る全滅の報告に魔物将軍も流石に狼狽える。
「ば、馬鹿な…カラーは直接的な戦闘は不得手のはず…呪いに対する警戒に決して犯すなと命じてあるのだぞ!?」
カラーが怖いのはやはりその呪いだ。
下手にカラーを犯したりすると、その者が呪われるだけでなく、もっと高度な呪い…それこそ大規模モルルンのような超広範囲の呪いが飛んでくる可能性がある。
それを少しは理解していた魔物将軍だったが、何しろ相手が悪すぎた。
「がはははは! とっとと死ねーーーーーーっ!!!」
非常に楽しそうな笑いと共に、凄まじい衝撃波が聞こえてくる。
その一撃と共に魔物兵達の悲鳴が響く。
そしてそれはあちこちから聞こえてきた。
「な、何が起きて…」
流石の魔物将軍もこの異常な事態に動揺を深めていくしかなかった。
「はいはい、ライトボム」
「電磁結界!」
「我の雷、その身で味わえ」
レン、ジル、お町の強力な一撃が魔物兵を蹴散らす。
「な、なんだこいつらは!?」
赤魔物兵が驚愕するが、そんな魔物兵にレンの容赦の無い剣が突き刺さる。
魔物兵は何も言えずに絶命し倒れる。
「思った以上に混乱が無いわね」
レンは特に恐慌状態にもなってないカラーに感心する。
「そういう風に教育したのさ。長い時間をかけてね。ま、時代が魔王ジルの時代だったからね。その辺りはすんなりと受け入れてくれたよ」
ハンティが瞬間移動で出現する。
「犠牲になった方は…」
ジルの不安そうな顔にハンティはニカッと笑って答える。
「ゼロ。やっぱりベネットが居てくれて助かったよ。魔軍の襲撃も事前に察知出来たし」
「…あの残念カラー、本当に強いのだな。いや、分かってはいたが納得はいかぬ」
ベネットの活躍にお町は複雑な顔をする。
「そう言わないでよ。私は移動しながら魔物達を分散させる。そっちは各個撃破で…って言いたいけど、あの程度じゃあんた達は止まらないか」
ハンティはレン達の強さに最早苦笑いするしかない。
ランス達ならば真正面から戦っても、あの程度の魔物兵ならば蹴散らしてしまえるだろう。
リーダーであるランスがそんな面倒くさい事をせず、効率よく相手を倒す事を選んでいるだけだ。
そしてそれが尤も相手にとっては嫌な攻撃になっているのだ。
「じゃあ私は行くよ。そっちは頼むよ」
ハンティはそう言って姿を消す。
「瞬間移動…便利じゃな」
お町はハンティを見て羨ましそうな顔をする。
「出来ない事を望んでも仕方ないでしょ。それよりもとっとと魔軍を蹴散らしましょ。ま、ランスが圧倒的だから直ぐに終わるでしょ」
レンの言う通り、ランスが居るであろう方向から凄まじい爆音と魔物兵達の悲鳴が響く。
カラーの森の中とは言え、流石アレは目立つ。
「あの…ランス様は大丈夫ですか?」
ジルの心配そうな言葉にレンは苦笑する。
「今更魔物兵や魔物将軍に後れを取るような奴じゃ無いわよ。あいつがどれだけの修羅場を潜ってると思ってるのよ」
「そうじゃな。今の奴ならば魔人にすら後れを取らぬだろう。それこそ魔物兵などに負けるはずは無い。我等は我等のやる事をとっとと終わらるとしよう」
「そうね。今回は全滅させた方が良いでしょうしね。さ、行くわよ」
レンはそう言ってその端正な顔に酷薄な笑みを浮かべていた。
熱さでダウンしたりと本当に色々と忙しくて更新遅れました
何とか速度を戻したいとは思いますが、もうちょっと時間が必要かもしれません