魔軍に襲撃されたカラーだが、意外にも混乱は少なかった。
それもこの場にハンティが居た事、そしてカラーの女王が冷静だった事が大きいだろう。
何よりも、混乱が起きる前にランス達が行動を起こしていた。
「ローザ様。あの人間達本当に強いです…」
「ええ…始祖様が頼って良いと言っている人間ですからね。それにベネットの行動も早かったですから」
「…何であんなに残念なのにあれだけ優秀なんですかね…あの子」
ローザの言葉に秘書のカラーが不服そうに答える。
「残念なのと能力は決して一致しませんから…」
ローザはカラーの同胞だが、やっぱり残念な子であるベネットを思い浮かべて頭が痛くなる。
確かに強いのは間違い無いのだが、あの三下感は何とかならないかと思ってしまう。
その時そのベネットがローザの所へ戻って来る。
「大変でやんすよローザ!」
「どうしましたか、ベネット」
珍しく真面目な顔をしているベネットに対し、ローザは眉を顰める。
この少女は大変だと言いつつも、下らない事を言ってくる悪い癖があった。
「こいつら、あの魔人メディウサの部下でやんすよ!」
「え…魔人メディウサの!?」
ベネットから出た名前にローザも周囲のカラーもざわめく。
魔人メディウサ…その存在はカラーの間でも有名だった―――勿論悪い意味で。
かつて魔王がジルだった時にカラーを誘拐し、暴虐の限りを尽くした存在だ。
「メディウサと言えば確か…」
「そうでやんす。かつてリディア・カラーと当時の女王が呪いをかけ、人間と協力して呪いをかけた…と伝えられている魔人でやんす」
「その魔人メディウサの部下が…もしや」
「その可能性が高いでやんす。呪いを解くためにカラーを狙っていたとしてもおかしくないでやんすよ」
「何てこと…」
ローザはまさかの名前に顔を青くする。
確かに魔人メディウサにカラーが呪いをかけた…という事はカラーの自衛として大きく作用した。
おかげで人間によるカラー狩りが減り、GL期という厳しい状況でもカラーはやっていく事が出来た。
しかし魔王が変わった事…それによる混乱と、魔人ケッセルリンクが行方不明(という事になっている)が重なったのだ。
その結果、呪いに苦しんでいるメディウサがカラーを狙ってもおかしくは無い。
だが、ローザは非常に優秀な女王だった。
「数はそれ程多くないのでしたよね?」
「魔物将軍が指揮するにしては少ないでやんす。魔物隊長を入れても400程でやんすよ」
魔物将軍は魔物隊長200、魔物兵20000を指揮できる存在だ。
それが400程度の魔物兵を率いるとしては明らかに小さい。
恐らくはそれくらいの数しか用意出来なかったのだろう…今でもケッセルリンクの影響は大きいという事だ。
「ベネット。ランスさん達と協力して、魔物兵達を一体たりとも逃さないようにしなさい」
「了解でやんす!」
「そして皆も…戦えるものは戦うのです。これはカラーの存続に関わる事、今ここで退く事は許されません」
「「「はい!!!」」」
女王であるローザの言葉に皆が覚悟を決めた顔をする。
このペンシルカウを放棄する訳にはいかない。
今ここで魔物兵を一体も残さずに倒せば、ペンシルカウの存在は知られる事は無い。
「では行きます。カラーの未来を守るために!」
ローザも自ら弓を取ると、複数のカラーを連れて駆けだした。
「ライトニングレーザー!」
「うぎゃあああああ!」
ジルの強烈な魔法で魔物兵は絶命する。
「な、なんだこのガキ!? 異常に強いぞ!?」
見た目は少女なジルが放つ強烈な魔法の威力に魔物兵達は恐怖する。
それはまさに一般の魔物兵からしたら考えられない程の威力であり、恐れを抱くのは当然だった。
だがそれでもジルの姿は少女、魔物兵がそんな少女に恐怖だけを抱く訳がないのだ。
「相手は魔法使いだ! 近づけば何も出来ねえ!」
「おう! そのまま手足を捥いで犯してやれ!」
物騒な事を言いながら襲い掛かる魔物兵達。
「これだから魔物兵って嫌なのよね。品性が下劣過ぎて。ま、人間も大概だけど」
だが、ジルの側にはレンが居る。
レンは目にも止まらぬ速さで魔物兵を斬り裂く。
たったの一振りで魔物兵は倒され、そこには屍が横たわるのみだ。
「じゃあ死になさい。エンジェルカッター」
そしてジルに勝るとも劣らない威力の強烈な魔法が魔物兵を一斉に斬り裂く。
魔物兵は絶叫する事も出来ずに体がバラバラになる。
「氷雪吹雪!」
そして怯んだ魔物兵に向けて再びジルの魔法が襲い掛かる。
それだけで30はいた魔物兵は全滅する。
その程度の数ではランスとその仲間を止める事は出来ないのだ。
「ランス様は大丈夫でしょうか」
「魔人でも無ければ問題あるまい。お主は心配性じゃな。まあ知らなければ当然の事か」
何処までもランスを心配するジルに対してお町は苦笑する。
ジルは魔王の時だった頃の記憶が無いので、ランスが魔王ナイチサと戦った時で記憶が止まっている。
お町もランスと出会ったのはGL中期だが、それからはランスの活躍を長く見てきた。
それこそ魔人に勝るとも劣らぬ強敵ばかり、そんな連中と戦ってきたのだから、今のランスの強さはまさに破格だ。
それにランスには2本の剣が有り、それらを使う事で空間すらも斬り裂く一撃となっている。
副作用の関係で連発は出来ないが、それこそ魔人すらも倒せるであろうまさに切り札だ。
「それよりも…カラーの動きも活発じゃな」
「そうね。積極的に魔物と戦ってるみたいだけど…何かあったのかしら?」
お町はこの場の空気を感じ取り眉を顰める。
確かにカラーが自分達の村を守るために戦うのは分かるが、それでもこの空気は少し異質だ。
まるで魔物達全てを殲滅しかねない勢いには驚いている。
「大変でやんすよ、皆様方」
その時ベネットが正に音もなく現れる。
「…あんた、何時のまに来た訳?」
突如として現れたベネットにレンは目を細める。
自分にも悟られない程の動きを見せたベネットに対して驚いたのと、まさかこんな三下の動きに自分が気づかなかった苛立ちが混じっている。
「いや、それよりもこの魔物兵達の親玉が分かりやしたよ」
「親玉? そんなの今の魔物兵に居るの?」
「それがいるでやんすよ。こいつらあの魔人メディウサの部下なんすよ」
「メディウサ…あいつか」
魔人メディウサの名前が出た事にレンは不愉快な顔をする。
あの惨劇は人にも魔物にも興味が無いはずだったエンジェルナイトでも不愉快なものだった。
そして何よりもあの時のランスの怒りは凄まじかった。
「あの…メディウサとは?」
「魔王だったジルが作った魔人。まあ魔人らしい魔人で…ランスが一番嫌いなタイプ。女だけど問答無用で殺しにかかるくらいのね」
「…あのランスがか」
レンの言葉にジルとお町が驚く。
何しろランスという男は無類の女好きで、相手が女なら殺さないでオシオキと称して襲ってしまうのが当たり前だ。
だが、そんなランスがあっさりと斬り捨てようとする女が居るとは信じられなかった。
「とにかく、そんな奴の配下がカラーを襲ったなんてランスが怒り狂うのは間違い無いわね。それと…」
レンの目を細くなり、そこからゾッとするような殺気が溢れる。
「一匹残さず駆除しないとね」
レンとしては地上の生物がどうなると知った事では無い…はずだった。
だが、長く地上に居過ぎたせいか、どうも地上の存在に少し肩入れするようになったようだ。
「全滅させるという事か」
「ええ。魔人なんて自分の配下に無頓着なものよ。だからこいつ等が全滅したところで気にも留めない。だからここで殲滅する」
「まあそれがいいな。魔軍には我も含む所が有るからな」
「頼もしいでやんすね。じゃああっしはランスさんに伝えてきますよ。あの人は目立つでやんすからね」
ベネットはある方向を見る。
そこからは恐ろしい悲鳴と共に爆発音のような音が聞こえてくる。
そこでは間違いなくランスが暴れているだろう。
「任せるわ。さて…魔軍を全滅させるわよ」
「はい!」
「うむ、任せるがいい」
こうしてレン達は魔軍を全滅させるべく動き出した。
そして一方のランスはと言うと―――
「がはははは! 死ねーーーーーーっ!!!」
「ぐぎゃあああああああああ!!!」
ランスの一撃を受けて魔物兵がバラバラになる。
「ば、バケモノか!?」
「な、なんでこんな人間がこんな所に居るんだ!?」
「フン、雑魚共が! 俺様の経験値になれる事を喜びながら死ね!」
剣が魔物兵に突き刺さり、魔物兵が悲鳴もあげられずに絶命する。
日光も聖刀日光では無く、ランスと共に手に入れた富嶽を持ってモンスターを斬る。
モンスターはあっさりと両断され絶命する。
(…悔しいですが、私自身が手にするならこの刀の方が切味は上という事ですね)
日光は手にある刀を見て複雑な顔をする。
魔人を相手にするなら聖刀の方が良いが、それ以外ならば富嶽の方が強い。
それもそのはず、日光は知らないがこの刀はあの月餅が手にする事を諦めた程の名刀だからだ。
その威力だけでもバランスブレイカー扱いされてもおかしくない程の力を持っているのだ。
それだけ技量も求められるが、日光には富嶽の力を発揮する力が存在していた。
「魔法部隊! 魔法部隊で攻撃しろ!」
魔物将軍が声を上げると、灰色の魔物スーツを纏った魔物兵が魔法の詠唱を始める。
「くらえ! 炎の…うわあああああ!」
魔物兵の一体が魔法を放とうとした時、突如としてその体が浮き上がる。
見ればその足にはロープが巻き付いており、そのロープは一本の木に繋がっている。
「ふははははは! どうでやんすか! これがあっしの力、ブービートラップでやんすよ!」
その木の側には一人のカラーが得意気に高笑いをしている。
「なんだあいつは!?」
「カラーだ! 捕らえろ!」
高笑いしているベネットを見て魔物隊長が指示を出す。
「…え? あいつをですか?」
それを聞いて魔物兵がこんな状況にも関わらず微妙な声を出す。
「…そ、そうだ、あいつをだ。う、うむ…いや、いいんだよな…」
魔物隊長は改めて高笑いしているベネットを見てやっぱり微妙な声を出す。
確かにカラーなので美少女なのは間違い無いが、何となくではあるが手を出すと負けな様な気がして来たのだ。
「と、とにかく行け!」
「は、はい…」
魔物隊長の指示を受けて魔物兵2体が嫌そうにベネットに向かって行く。
「おい! 痛い目にあいたく無ければとっとと降りて来い! さもないと犯し…いや、なんかやだな…そうだ! こいつがお前を犯すぞ!」
「え!? 俺は嫌だぞ!? 手を出したら負けなような気がするぞ!?」
魔物兵の声にベネットの額に青筋が浮かぶ。
「………この前の魔物将軍といい、なにゆえあっしを微妙な扱いにするのか。旦那も手を出す気配は無いし…あああ! もう怒ったでやんすよ!」
カラーの中で生きてきたベネットは仲間からも何となく扱いは微妙だった。
確かにベネットは強いし頼りになる…のだが、そのどうしようもないくらいの三下臭がその評価を相対的に落としていた。
そして人間にも、そしてあろう事か魔物にすら手を出したら負けと言われる始末。
その日、ベネットはキレた。
「野郎ぶっ殺してやる!」
「な、何だこいつ!? うぎゃああああ!」
ベネットはナイフでロープを切ると、何処からか巨大な丸太が飛んできて魔物兵に直撃する。
直撃を受けた魔物兵はそのまま動かなくなる。
「あ、おい!?」
魔物兵は突然の事に驚くが、その魔物兵の肩にベネットが立っていた。
「あ…何時の間に!?」
「残念だったな、トリックだよ」
そしてそのまま魔物兵の頭にベネットの持つナイフが突き刺さる。
「ぎゃあああああ!!」
どれ程の力で突き刺さったのか、ナイフは奥深くまで魔物兵に突き刺さる。
魔物兵が絶命すると、ベネットは魔物兵に突き刺していたナイフを引き抜く。
「さーて…カラーのために全滅させますか」
ベネットはそのまま戦っているランスの元へと行く。
「旦那旦那! 大変ですぜ旦那!」
「あん? 残念なカラーではないか。何か起きたか」
魔物兵に攻め入られているというのにランスは全く慌てた様子は無い。
一大事ではあるのだが、今のランスにはそれだけの余裕が有るのだ。
事実、カラーの被害は無いのでランスはある意味気楽だ。
それにレンとジル、そして日光とお町も居るので問題は何も無いはずだった。
「それがですね! こいつら、あの魔人メディウサの部下なんですよ!」
「…何」
メディウサの名前が出た事でランスの顔が明らかに不機嫌になる。
「そしてこいつらの目的はカラーを捕らえて拷問して凌辱してメディウサの呪いを解かせるようにする事でやんすよ!」
「何だと!?」
「その後でカラーを奴隷にしてあんな事やそんな事も…」
「え…そんな事言ってない…」
色々と悪しきざまに語るベネットに対して魔物兵は思わず声を出す。
しかし、その声はランスには全く関係無かった。
「………ぶっ殺す! 皆殺しじゃー!!」
そして当然のようにランスは激怒した。
ランスはカラーに対しては非常に甘い。
それも娘であるリセットが居る事が大きいのだが、それ以外にもカラーという種族と付き合いが長いのもある。
ハンティにセックスこそ止められているが、それでもランスにとってはカラーは大切な種族だ。
それをあのメディウサが狙い始めたとあってはランスにとっては明らかな敵対行為だ。
「ちょ、ちょっと待って!? 俺達は別にそんな事は…ばわ!」
ランスの強烈な一撃で魔物兵がバラバラに飛び散る。
「え…」
剣で斬られたはずなのに、魔物兵の体はバラバラの肉塊になって飛び散ったのだ。
「………」
周囲を沈黙が包む。
魔法の詠唱をしていたはずの魔物兵ですらその凄惨な光景に茫然としていた。
魔人を彷彿とさせるとさせるその一撃は魔物兵の恐怖を煽るのに十分だった。
「お前等皆殺しじゃー!」
ランスの本気の殺意を向けられとうとう魔物兵の士気が崩れる。
それほどまでにランスの威圧感は凄まじいものだった。
「ランスが本気で怒っている…無理も無いですね」
魔人メディウサは本当に酷い魔人で、日光にとっても許せない魔人の一人だ。
ランスと共に戦い呪いをかけたのは知っているが、その時は魔人カミーラ、そして魔王ジルの乱入がありメディウサに止めを刺せなかった。
ただ、その後もメディウサは呪いに苦しんでいるのは間違いない様だ。
「ですが…魔軍を許せないのは私も同じです」
日光は刀を振るい魔物兵を斬る。
それでも魔物兵は動けないくらいに震えていた。
「な、何をやっている! たかが人間相手に…殺せ! 殺すんだ!」
魔物将軍の言葉に魔物兵は動く。
「うおおおおおお!」
「し、死ねえええええええ!」
「た、たかが人間だ! こ、殺してやる!」
魔物兵は半ば悲鳴を上げながらランスに襲い掛かる。
「フン…雑魚共が! さっさと死ね!」
襲い掛かる魔物兵をランスは目にも止まらぬ速さで叩き斬る。
ランスの剣で斬られた魔物は何かに砕かれたようにバラバラになる。
そして一方では刀によって斬られた魔物は恐ろしい程の切味だ。
「あ…あ…あ…」
刀で斬られた魔物兵は即死する事が出来ていないのか、震える声を上げるしかない。
そしてそのまま恐怖と絶望の中で絶命するしかないのだ。
「お、おのれ…人間め…いや、こいつら本当に人間なのか…」
魔物将軍は恐怖で膝が震えるのを止められなかった。
カラーなど早く制圧出来ると思っていた。
そして魔人メディウサに恩を売り、そしてゆくゆくは使徒になれれば…と思っていも居た。
だが、現実にはカラーと少数の人間によって完全に押されている。
完全に作戦の失敗を悟り、魔物将軍は歯を食いしばって指示を出すしかない。
「…撤退するぞ」
「将軍!」
「撤退だ! カラーの住処を見つけた事をメディウサ様に報告すればいい! 兵を再編してもう一度襲えばいい!」
魔物将軍は撤退をする事を選ぶしかなかった。
予想外の存在の前にはもうどうしようもなかった。
しかし、その撤退の言葉は既に遅かった。
「に、逃げろ! 化物だ!」
魔物将軍が撤退を指示する前に、魔物兵の士気は総崩れになってしまった。
それもそのはず、魔物兵にとっては今の時代はまさにようやく自分達の時代が来たという認識だった。
つまり、人間を殺すのは当たり前で有り、人間に殺されるなんてありえない事なのだ。
だが、そのありえない事が目の前で起こっている。
ここにいる魔物兵の思いは一つ、ようやく来た自分達の時代なのに死にたくないという事だけだった。
「ま、待てお前達! 隊列を崩すな!」
「うるせえ! 今更そんな事言ってられるかよ!」
「こ、こんな所で死んでたまるか!」
完全に士気が崩壊した軍は最早壊滅するしかない。
魔物将軍の命令すらも無視し、逃げ出す魔物兵が出てくる。
「き、貴様等…!」
魔物将軍はそれに激高するが、自分の背後から感じる恐ろしい気配に思わず振り向く。
「死ね」
「に、人間如きが! お前が死ぬがいい!」
魔物将軍は鉄球を振り回した―――そう思った時、何かが地面に落ちる音がする。
「―――え?」
魔物将軍はその方向を向いて茫然とする。
そこにあったのは鉄球を振り回していたはずの自分の腕だったのだ。
そして一瞬の遅れで凄まじい痛みがやって来る。
「うがあああああ!? な、何が起きて…い、痛い…冷たい…!」
飛ばされた傷口からは不自然なくらい出血が少ない。
そしてやってくる鋭い痛みと共に、腕が凍り付いたと思うくらいに傷口から冷気が伝わって来る。
「うるさい。さっさと死ね」
「うぎゃああああああ!」
ランスはそんな魔物将軍を気にもとめず、その頭を剣で叩き潰した。
そのまま魔物将軍は痙攣しながら絶命する。
「ランス殿! 魔物兵達が逃げていきます!」
「旦那! 奴等を一匹でも逃すと面倒ですぜ!」
「そうだな。一匹残らず殺さんといかんな。よし、行くぞ!」
「待ちなさいよ! 私達も行くわよ!」
ランスが逃げていった魔物兵を始末しに行こうとした時、その背後から声をかけられる。
「終わったのか?」
「こっちは全滅させたわ。カラーの人的被害は無し。ちょっと家が焼けたりしたけど、魔物兵に襲われた事を考えれば被害は軽微でしょ」
「ランス様、魔物兵を倒さないとカラーの皆が…」
「分かっとるわ。よし、お前等、一匹も残すなよ! 行くぞ!」
ランスの言葉に皆が頷き、逃げていった魔物兵を追ってペンシルカウを飛び出した。
「クソッ! 楽に犯せ殺せると思ったのによ!」
「あんな連中が居るなんて聞いて無いぞ!」
魔物兵は森の中を必死で逃げていた。
「それにしてもここは何処だよ!」
そして魔物兵は迷っていた。
ここはカラーの森、カラーが侵入を拒むための結界が貼られている。
そんな中偶然カラーの里へと侵入できた魔物兵だが、同時にどうやってここに来たかも把握していない。
ましてや雑兵ならば尚更だ。
目印はつけてきたが、逃げるのに必死でそんな所までは見ていない。
魔物兵は必死に逃げるが、その背後から危機が迫っているなど想像もしていなかった。
「ぐわっ!」
魔物兵の頭部に矢が直撃して魔物兵が倒れる。
「な…」
「まさか…追って来たのか!?」
まさかカラーが自分達を追ってくるとまでは思っていなかった魔物兵は慌てふためく。
この矢がどこから飛んできたのか全く分からないのだ。
周囲を見渡しても木があるだけで何処に誰が居るかなんて全く分からない。
そうしてオロオロしている内に、次々と矢が射られる。
それだけでなく、光の矢等の魔法も飛んでくるので、魔物兵はどうする事も出来なかった。
「「ぎゃああああ!!」」
魔物兵が悲鳴を上げて絶命する。
「やりましたねローザ様! それにしてもカラー1の弓使いはまだまだ衰えていませんね!」
「無駄話は後です。それよりも今は魔物兵を殲滅しないといけません」
ローザは女王でありながら、カラーの中でも1の弓の腕前を誇っている。
それでいて魔法にも長けているのだから、女王としては当然の強さと言えた。
「ベネットの方は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫でしょう。あの子にはランスさんが付いていますから」
「あ、そうそうあの人凄い強いよね」
「うん! 魔物兵も簡単に倒したりして…格好良かったなあ」
ランスの話題が出た事にカラー達はこんな状況にも関わらず黄色い声を出す。
「無駄話は後ですよ。それよりも今はカラーの未来を守らなければなりません」
「「「ハイッ!」」」
ローザの言葉にカラー達は表情を引き締めると、逃げていった魔物兵を追って動き始めた。
「はっはっは…」
魔物隊長は息を切らせながら走っていた。
「ふふふ…ははははは! ようやく抜けたぞ!」
ようやく森を抜ける事ができ、魔物隊長は歓喜の声を上げた。
自分が逃げのびてメディウサに報告すれば、自分が使徒にしてもらえるかもしれない。
そのためにあの人間が現れた時から既に逃げ出していたのだ。
きちんと道筋も覚えていたので、何も問題無かった。
そう、自分は魔物将軍すらも出し抜いたのだ。
「よし、このままメディウサ様の元に…」
そう言った時、魔物隊長の頭部に何かが当たる。
「ぐがっ!」
魔物隊長は悲鳴を上げて頭を押さえる。
そこに転がっていたのはやたらと鋭いスパイクがついた球体だった。
「ぐ…何が起きて…」
魔物隊長が立ち上がった時、
「光の矢!」
「ぐわあああああ!」
魔法が直撃し、魔物隊長が倒れる。
ただそれでも魔物隊長は死ななかった。
「フン、逃げれると思ったか」
そして目の前に現れたのはあの恐ろしい力を持った人間。
その人間が自分に向けて剣を突き付けていた。
「死ね」
男が剣を振りかざした時―――天から何かが降りてくる。
その人物を見て魔物隊長は喜色を浮かべる。
「ハウゼル様!」
天から降りてきたのは魔人ラ・ハウゼルだった。
大分遅れました…
もう大変としか言えない状態で申し訳ないです
何とかしたいですが、本当に忙しくて…何とかペース上げていきたいです