「そう言えばランス…何故ハウゼルがここに居るのだ?」
ランスとハウゼルの激しい情事の後、剣の中に戻ったケッセルリンクが尋ねる。
ハウゼルは激しい性交で疲れたのか、ランスに体を預けて眠ってしまっている。
「お前、知らなかったのか?」
「ああ。私が目覚めたのはお前がハウゼルとセックスをしてる最中だ。突如として力が戻って来た。恐らくはこの剣にハウゼルの力が戻った事でその副作用として私にも影響が出たのだろう」
ケッセルリンクとしても眠る事が多いと思っていたのだが、今は力が漲っている。
幽霊なので攻撃は出来ないが、こうして話す分なら問題無いくらいに力が戻っているのだ。
「ハウゼルとサイゼルの力がこの剣に宿って居れば、私もその分長く起きていられるのだろうな」
「そうか。だったら使い道は考えんとな」
ランスとしては無条件で二人の力を使えると思っていたのだが、世の中はそう上手くはいかないようだ。
ランスにとってはこの力よりも、ケッセルリンクが起きている方が重要なのだ。
「で、何か起きたのか?」
「魔物がメディウサの命令でカラーを捕らえに来ただけだ。まあ皆殺しにしたがな」
「…何だと」
何の気も無いランスの言葉にケッセルリンクの言葉が低くなる。
「私の忠告を無視したという事か…これもジル様が魔王で無くなり、そして私がこうなってしまった事が原因という事か…」
ケッセルリンクは自分の無力さ、そしてメディウサへの怒りで言葉が重くなっている。
「今の状況でそんなの気にするな。あいつは俺が殺す」
「ランス…」
ランスの言葉は本当に何の感情も籠っておらず、まるで石でも蹴飛ばすかのような気楽さで言っている。
だが、逆にそれが非常に不気味でもある…感情が表に出やすいランスにしては異質に見える。
「カラーを何度も狙われるのは面倒だからな。それにあの時殺し損ねたしな」
あの時はカミーラ、そして魔王ジルという乱入者が居たので殺し損ねたが、もうあんな時のような不運は起こらないだろう。
「…分かった。お前がそう言うのであればお前に任せよう。だが、問題なのは軍を動かしているという事だな。襲撃は続く可能性も有る」
「だからとっとと殺しに行く。あいつは魔人としては雑魚だからな」
メディウサは確かに魔人ではあるが、ランスにとってはそこまで強いとは思えない魔人だ。
石化能力は確かに厄介だが、それももうタネが割れてしまっている。
剣と魔法で戦っていたが、そのどちらもこれまでランスが戦って来た魔人に比べれば劣っている。
それらの事から導き出された結論は、メディウサは大したこと無い魔人だという事だった。
「魔人を雑魚扱いとは…いや、昔からお前はもっと格上の存在と戦って来たからな」
ランスの言葉にケッセルリンクは苦笑する。
ランスは言うだけ言って眠ってしまったようで、何も喋らない。
「頼むぞランス。あの時から私達が繋いできたカラーの時代…終わらせて欲しくないからな」
そう言ってケッセルリンクもランスの剣の中に姿を消した。
「メディウサをぶっ殺すぞ」
朝起きてからランスは突然言い放つ。
「突然ね。まあ予想はしてたけどさ」
レンは全く驚く事なく水を飲む。
カラーが魔人に襲われたと知った時から、ランスがそう動くのは正直予想はしていた。
ただ、昨日の今日で言うとは思っていなかったというだけだ。
「魔人メディウサでしょ。でもそんな簡単にいかないでしょ」
「何だと」
ランスはレンをじろりと睨む。
レンはそんなランスの視線を意にも介せず言い放つ。
「事情が違うって事よ。ジルの時代と違って今は魔物兵も積極的に動いている。そんな状況だと迂闊には動けないでしょ」
「む…」
その指摘を受けてランスも思わず口ごもる。
魔王ジルの時代は終わり、今は魔王ガイの時代。
ジルは人間の行動力を奪ったが、同時に魔物の行動力も奪った。
あの時代に本当に好きに出来たのはそれこそ一部の魔人、そして魔王くらいのものだ。
「そうだね。今は魔物兵が堂々と外を歩いているからね。昔のようにはいかないだろうね」
ハンティには瞬間移動があるので今の情勢が良く分かる。
魔物兵が当たり前のように外を出て人間を殺している。
そんな状況で外で動くのは無謀だろう。
「しかし…魔人をどうにかしなければ、またカラーが狙われる可能性が有ります」
「…それなんだよね」
日光の言葉にハンティは難しい顔をする。
今回あの魔物兵が来たのは偶然の可能性が高い。
恐らくあの程度の魔物達が行方不明になっても気に留める者は居ないだろう。
命令を出したメディウサですら、あの程度の数の魔物など眼中に無いだろう。
「昔のようにはいかないんですよね…ランス様」
ジルも不安そうな顔でランスを見る。
ジルも昔はランスと共に魔人と戦ったが、あの時は魔物兵の数は少なかった。
基本的にナイチサは人間を放置していたので、あの時代は人間もある程度自由に動けた。
しかし、今はそうはいかないのは明白だ。
「おいハウゼル、何とかならんのか」
「…正直難しいです。今は魔人だけでなく魔物兵も好きにしていますから。ガイ様は魔物に自由を与えましたので」
「うーむ…」
ハウゼルがそう言うのだから、本当に今動くのは難しいのだろう。
だが、ランスとしてはカラーを襲う奴は基本的に生かしてはおかない。
それがあの魔人メディウサならば尚の事だ。
何とかしてメディウサは殺しておきたいのだが、その魔人に辿り着くまでが上手く行かないのだ。
もしきちんとた国家なりがあれば陽動作戦なりなんなりも有るのだが、生憎と今は人間の国家など存在しない時代。
本当にここに居る者達だけで何とかしなければならないのだ。
確かにランスは強いが、一人の人間でしか無いのだ。
「…まずは動くぞ。そうで無ければ何にも出来ん」
結局ランスはまずは動く事にする。
そうしなければ始まらないし、何事も自分の目で見るのが一番だとランスは判断した。
「別にいいけど…突っ込みすぎるんじゃないわよ」
こうしてランス達はカラーの森を出て改めて事態を確認しようとしたのだが…
「ダメだな」
ランスはあっさりとそう言い放った。
「ランス様…」
ジルはいきなりそう言い放つランスを見て不安そうな顔をする。
今にも泣き出してしまいそうな顔に、ランスは軽く拳骨を入れる。
「あうっ」
「そんな顔をするな。今はダメだと言ってるだけだ」
「流石にキツイですね…ジルの時代よりも魔物の動きが活発ですから」
ランスの言葉に日光も同意する。
ジルの時代よりも遥かに魔物が多く、更には魔物隊長や魔物将軍の指揮の元魔物兵達が組織立って動く。
その脅威を日光は改めて思い知った。
「だからと言って魔物将軍にカチコミかけて本当にぶっ殺すんですから旦那達はやっぱりおかしいですよ」
ベネットは滅茶苦茶な事をやってのけたランスにむしろ感心してしまう。
カラーの森を出て少し移動した所でいきなり飛行魔物兵に見つかり、そこから芋づる式に魔物隊長、そして魔物将軍にまで動かれてしまった。
が、ランスはその襲撃を切り抜け、相手の頭である魔物将軍を不意打ちであっさりと殺してしまった。
魔物将軍が死んだ魔物兵の士気は一気に瓦解し、後はただただ蜘蛛の子を散らしたように逃げるだけだった。
「ペンシルカウに戻って来たはいいが、この分だとJAPANに行くのも難儀じゃな…」
JAPANに一度戻りたいと思っていたお町だが、流石にこの状況でJAPANに向かうのは厳し過ぎる。
遠いのもあるが、万が一黒部の牙を無くしてしまったらそれこそ死んでしまう。
「…やっぱり無理でしたか?」
ペンシルカウで待機していたハウゼルも『やっぱり』と言うような複雑な顔をしている。
「他の手を考える」
ランスはそう言うが、実際には身動きが取れない状況だった。
何しろ魔軍は数が多すぎる上に、魔物将軍が居ると軍隊として行動できる。
そうなるとランスでも自由には動けないし、下手をすると魔人が直接出張って来る可能性がある。
並の魔人ならばなんとかなるかもしれないが、カミーラや万が一ノス辺りが来ると流石に面倒だ。
いや、下手をしたらカミーラはランスの居所に見当をつけているかもしれない。
ケッセルリンクと仲の良いカミーラならばカラーを襲う事は無いだろうが、だからと言って助ける事も無いだろう。
カミーラの行動を知った連中がカラーを襲いに来る可能性は十分に存在していた。
「私が健在ならこうはならなかったのだがな…すまない、ランス」
「お前が悪い訳じゃ無いだろ。それよりも魔物は本当に数が多くて面倒くさいぞ」
魔物スーツを着た魔物兵はそれぞれ一定の強さを得る。
同時に個性を殺してしまうのだが、それでも数は力でもある。
数で来られれば人間は必ず疲弊し、最後には負けてしまうだろう。
「ここで大人しくしておきな。ま、あんたには難しいかもしれないけどね」
ランスの行動は有難いが、ハンティとしても今はランスを止めなければいけない。
今の状況はとにかく生き延びる事が先決なのだ。
「つまらん」
ランスはそう吐き捨てると自分の部屋に戻っていく。
「ランス様…大丈夫ですよね」
「大丈夫よ。あいつは無茶はするけど無理はしない。今の状況を一番分かってるのランスでしょうし」
ジルの言葉にレンは全く気にしていないような口ぶりをする。
「ジル。ランスの様子を見に行ってくれますか? 万が一の事があってはいけないので」
「あ…はい!」
「少し話してくればいいでしょう。あなたも言いたい事を言っても良いと思いますよ」
日光の言葉にジルは勢いよく頷くと、そのままランスの部屋へと走っていった。
それを見てレンは苦笑する。
「甘くなったわね。魔王はあれだけ許さないと言ってたあんたが」
「彼女はもう魔王ではありません。それに…」
「それに?」
「彼女の精神は立派な大人なのでしょう。ならば一度ランスと話し合っても良いと思うんです」
日光はジルがランスに想いを寄せている事を知っている。
あの時に見たジルの日記、そして今の少女となってしまっているが、彼女は間違いなく女性なのだ。
体は少女だが心は大人なのだ。
「ランスは少々ジルに遠慮があるようじゃからな…あの男らしくないと言えばらしく無いが」
「そんな理由は一つでしょ」
お町の言葉にレンは嘆息する。
「手が出せないからでしょ。あいつ、女好きではあるけどそういうゲスな趣味は無いからね」
ランスともいい加減付き合いも長いので、理解している。
ランスは女好きだが性癖は基本的ノーマルだし、確かに鬼畜的な所も有るが、基本的に女には優しい。
「自分の奴隷でセックスしてた相手に手を出せなくなったんだから、あいつも付き合い方に悩んでるんじゃない?」
「…確かに納得はしますね」
ランスがジルに対して遠慮があるのは分かっていた。
それは間違いなく、ジルの体が幼いからだろう。
ロリコンで無いランスだが、ジルは確かにランスの奴隷であり、大人の肉体の時はランスとはセックスをしていた。
それが突如としてああなったのだから、ランスとしても距離感が掴めていないのだろう。
「それよりも…本当にどうなるのでしょうか…」
日光は現状に頭が痛い。
ガイに手を貸したのは魔王を倒すためだったが、まさかこんな状況になるとは考えても居なかった。
こういう時にはブリティシュのリーダーシップや、ホ・ラガの知識が生きるのだが生憎と二人は居ない。
(ブリティシュを探しに行きたいですが…まあランスが認める訳無いですよね…)
日光としてはジルによって何処かへ飛ばされたブリティシュを探したいが、ランスは間違いなくいい顔をしないだろう。
だが、一人で探すには流石に手掛かりが無さ過ぎる。
日光もまた今の世界に困惑するしかないのだった。
(深刻な顔してるけど…ま、大丈夫だと思うけどね)
レンだけは実は今の状況に全く動揺していない。
彼女は魔王ガイの治世を一応は知っていた。
歴史は大分変ってはいるが、大筋が変わっているという事は無い。
(私の任務はランスを守る事、それは変わらないし)
ランスは好き勝手動くが、それでも何とかなっている。
奇跡に近いとも思うが、それこそがこの男の持つ強運の力なのだと思う事にするのだった。
「むぅ…」
「そう悩むな。いや、私も正直頭が痛いが、メディウサが直ぐにカラーを襲うということは無いと思うぞ」
ベッドに座り唸っているランスを見て、ケッセルリンクが声をかける。
「あのクソ蛇がか。あいつは執念深いぞ、絶対に」
「それについては同意だが…ハウゼルがこの事実を知った。ならばカミーラにも話が行く可能性が高い」
「カミーラがカラーを助けるために動く訳が無いだろ」
ランスの言葉にケッセルリンクは苦笑する。
「ああ、あいつはカラーを助けるためには動かない。だが、メディウサの事を嫌っている。ならば私との関係も考えて動く可能性は高い」
「あいつがか…」
「私も色々と悩みはしたがな…お前とカミーラを直接会わせる訳にはいかなったからな。だが、こうしてハウゼルが来てくれたのなら話は別だ」
ケッセルリンクはカミーラとの付き合いは長い。
自分で言うのも何だが、割と対等に付き合えている友人といった関係だ。
「あいつなら私に恩を売る目的でメディウサを牽制する可能性が高い」
「そんなもんか」
「まあ…私がお前よりなのはカミーラも分かっているからな。私に恩を売るという事は、それだけお前を狙うタイミングも増えるだろうからな」
「うげ…結局俺様が狙われるんだろうが」
「それは…まあ本当に済まない。だが、必ずこの埋め合わせはさせて貰うさ」
「フン、じゃあお前の体を何とかしたら利子をつけて返してもらうからな」
「ああ、構わないさ」
ケッセルリンクがそう言った事で、ランスは少し気が楽になる。
彼女の言う通り、確かにカミーラならそういう利点を考えて動く可能性はあるだろう。
あの時カミーラの乱入があった時、カミーラは露骨にメディウサを見下していた。
それだけの力関係があるのは間違い無いだろう。
それならケッセルリンクの言葉にも説得力があった。
ランスが少し気を落ち着かせていると、扉が叩かれる。
「何だ」
「失礼します、ランス様」
「ジルか」
部屋に入って来たのはジルだった。
今の姿はやはり幼く、ランスも手を出す事は無いと断言できる姿なのが惜しかった。
ジルはランスの近くに来るが、座って良いかどうか迷っているようだった。
「お前は確かに奴隷だが今はガキンチョだろ。遠慮するな」
ランスはジルを掴むとそのまま自分の隣に座らせる。
「あ…ご、ごめんなさいランス様」
「一々謝るな。で、どうした」
「その…ランス様、本当に魔人を倒しに行くんですか?」
「当たり前の事を聞くな。あいつはぶっ殺す」
魔人メディウサはランスにとっては間違いなく敵だ。
そもそもあの惨劇を見た時点で、メディウサはランスにとっての敵になった。
オシオキなどという生易しい事では無く、完全に殺すつもりなのだ。
それだけメディウサはランスの怒りを買ってしまったのだ。
「でも…危険です」
ジルは本当に心配そうな顔をしてランスを見ている。
「何だお前。昔は魔人の所に一緒に行っただろうが」
「い、今はあの時とは状況が違います。昔は今ほど魔物は動いていませんでしたし…」
「フン」
ランスはジルの頭をポンポンと触れる。
「そんな顔をするな。俺様がそんな無謀な事をすると思っているのか」
「ランス様は女性のためならどんな無茶な事でもやりそうですし…」
「アホ。無茶と無謀は違うだろ。それに今はそんなに動く必要は無いからな」
「え…?」
ランスの言葉にジルは目を見開く。
先程までのランスは明らかに不機嫌だったが、確かに今は落ち着いている。
「少し待つ。それからでも遅く無いからな」
「そ、そうなんですね…ごめんなさい、私ランス様の奴隷なのに生意気な事を…」
「そうだ。お前は俺様の奴隷だ。俺様の奴隷なのだが…」
ランスはジルの体を見る。
そこには凹凸の無い平坦な体がある。
確かに容姿は可愛いが、女性的な魅力を感じるかと言えばNOだ。
これに興奮するのはよーいちろー並にヤバイ奴という事だ。
「もっと育て。このままじゃやれんだろうが」
「ご、ごめんなさい…で、でもこれは私だけで何とか出来る事では…」
「フン、冗談だ」
ランスはジルの頭をぐりぐりとする。
「で、手足は問題無いのか」
「あ…は、はい。むしろ絶好調と言いますか…こんな体なのにあまり疲れなくて…」
ジルの右の手足は異形の姿となっている。
手足は黒く染まっているが、それ以外は普通…ではあるが、それでもそれを晒すのには抵抗がある。
「ふーん、便利だな」
「そう…なんでしょうか」
「強いなら便利だろうが。それとも人間を殺したいとかそういう欲求でもあるのか」
ランスの言葉にジルは首を横に振る。
「そういうのは無いです」
「なら便利な体だと思っておけ」
異形の手足はランスにとってはさして重要な事ではない。
容姿が整っていればランスにとっては全ては等しく女なのだから。
「しばらく大人しくしてるぞ。別に今急ぐ理由は無いからな」
ランスはその言葉通り、本当に大人しくしていた。
思い出したようにダンジョンに行ったりするが、基本的にはペンシルカウから遠出をする事は無い。
ハウゼルも『用事が出来た』と言って既に去ってしまっており、ランスは何時ものような生活に戻っていた。
「結局魔軍は来ないね」
「それならそれで良いだろ」
ハンティの言葉にランスが答える。
あれから2週間経過したが、カラーの里は平和そのものだった。
あの襲撃から魔軍はこちらに近づいても居ない。
森の外で移動している姿は見るが、森に入って来るような魔物兵は存在しなかった。
「まああいつが役に立ったということだな」
「あいつ? アンタ、また何かしたわけ?」
ランスの言葉にハンティが訝し気な顔をする。
「気にするな。こっちの事だ」
「…まあ深くは聞かないよ。聞いても厄介ごとを背負うだけだしね」
ハンティは結局は追及はしない。
してもこの男は適当に答えるだけだろう。
「それにしても碌なアイテムが無いな。バランスブレイカーとやらが全然見つからんな」
「それはそうよ。滅多に見つからないからバランスブレイカーなんだし」
不満を漏らすランスに対してレンは呆れた声を出す。
「そんな簡単に見つかったんじゃクエルプラン様の試練にならないでしょ」
「フン。しかし退屈になってきたな」
「退屈なのはいいだと思う事にしろ。お前が慌ただし過ぎるんじゃ」
ランスの言葉にお町も呆れている。
「退屈が嫌いなのはお前の性分だろうが、時には休息も必要という事だと思っておけ。それに夜な夜な好き勝手やってる奴がよくもそんな事が言えるな」
「がはははは! セックスは楽しいからいいんだ」
カラーの里に居る間、ランスはレン、日光、お町と濃厚な夜を過ごしている。
「今ならミリにも勝てる…いや、あいつは別次元か…」
ランスはもうこの世に居ない女性の事を思い出す。
結局死ぬまでセックスでは勝てなかったが、満足して死んだのならそれで良いのだろう。
「…ランス、でしたらブリティシュを探しに行きたいのですが」
「またか。当てもないのに却下だ却下。大体お前だってそんな簡単に見つかるなんて思って無いだろ」
「それはそうなんですが…」
日光はランスにブリティシュの捜索を訴えているが、ランスはそれを悉く退けている。
男を探すなんて面倒くさいし、何よりも何処の異世界に飛ばされたかも分からない人間を探すなんて不可能だ。
「いやー、旦那のおかげであっしはレベルが爆上がりですよ。今のあっしはNEWベネットでやんすよ」
「…あんたがそこまで強かったことに私は本気で驚いてるよ」
ベネットはランスと付き合って行動している内にレベルがどんどんと上がっていった。
それでいてまだ才能の限界に達していないのだから、相当な強さだろう。
非常に残念なくせにやたらと強い…世の中の不条理を現す女だった。
「まあいい。今夜は久々にハーレムプレイを…」
ランスがそう考えていた時、突如としてランスの横に少女が現れる。
「やっほー、ランス」
「あ、セラクロラス。ってまさか…」
「うん、今回はちょっとだけだから。てやぷー」
気の無いセラクロラスの言葉と共に、ランス達の姿が消える。
「…これはまた随分と急だね」
ハンティはランス達が消えた事に驚かない。
そろそろ来るんじゃないかと思っていたし、何なら今回は長いなくらいに感じていたくらいだ。
「…それよりもあのカラーが巻き込まれたんじゃが良いのか?」
「え?」
ハンティに声をかけてきたのはお町だった。
「…何で残ってるの?」
「いや…我も巻き込まれると思っていたのじゃが、我の代わりにあのカラーが巻き込まれた」
「ベネットが?」
「ベネットが」
ハンティは少し間考えていたが、
「ま、いいか。あいつなら殺しても死なないでしょうし」
「…カラーの始祖がそれでいいのか」
「それよりもそっちはどうするの? JAPANに戻るかい?」
「まだ戻れんよ。だから少しの間置いてくれれば助かる。まあランスも戻って来るじゃろ」
「…ま、そうだね。だったらカラーは妖怪王を歓迎するよ」
「うむ…しばらく世話になろう」
こうしてお町はペンシルカウに残る事になった。
そう、この先でJAPANで起きる事…それを目の当たりにする事は無かった。
ある魔人の復活、そして封印を。
ある隠れ里―――そこには一人の少女が居た。
小柄でありながら、その特殊な力を使って魔物の脅威から人々を守っていた。
付与の力を使い、魔物兵を退ける事に成功していた。
だが、少女はそれだけでは意味がない事に気づいていた。
全ての原因である魔王を何とかしない限り、人々に安心は訪れないのだ。
「私は魔王を倒す」
少女はそう宣言し、仲間を募った。
だが、今の世界は人々には諦めと絶望が蔓延し、ただ生きているだけという生活を強いられていた。
なので少女の言葉に賛同する者は居なかった。
しかし、少女はそれでも良かった。
自分が何とかして、人間を解放したかった。
「ほう。魔王を倒すのか。面白い事を言うな」
「…そうかしら?」
少女の言葉に一人の男が面白そうに笑っていた。
「いや、そういう奴は大抵何にも出来ん口だけの奴だが、君は違う感じがするな」
「買い被りよ。私は私に出来る事をやるだけ」
「がはははは! まあいい、俺様も魔王には用があったんだ。お前も俺についてくれば間違い無いぞ」
男の言葉に少女は目を丸くする。
まるで自分がこの男について行くのが当然とでも言っているような態度だ。
だが、この男が只者で無いのは少女も理解出来た。
なので少女は男に不意打ちで槍を喉元目掛けて突き刺そうとするが、男は微動だにしなかった。
「…避けないの?」
「アホか。殺気の無い攻撃なんて怖くも何とも無いわ」
その言葉に少女は槍を引っ込めて笑う。
「試すような真似をしてごめんなさい」
「気にするな。で、どうする」
男の言葉に少女は笑う。
「いいわ。あなたの方が外の世界に詳しそうだし…それにあなたは私よりも強いもの」
少女は男に向かって手を出しだす。
その意味を察した男は差し出された少女の手を握る。
「私はシルキィ。シルキィ・リトルレーズン。あなたは」
「がはははは! 俺様こそがこの世界の最大の英雄のランス様だ!」
こうして魔王から人類を解放した英雄と、魔王というシステムを破壊した英雄…本来は会うはずの無かった二人の英雄はここに出会った。
本当はもっと魔軍と戦う予定だったけどカット
間延びしちゃうだけですので…
なのでお待ちかね(?)のあのキャラの登場です