魔人カミーラは非常に不愉快だった。
その理由は当然ランスに有り、同時に自分がこうして動いているのもランスのせいだ。
カミーラは今魔人メディウサの城へと乗り込んでいた。
(気に入らぬな…)
カミーラは当然のように気に入らないが、同時に高揚感も感じていた。
それは魔王ジルと魔人ガイの戦いの結果だ。
カミーラは当然のようにガイの事も気に入らなかった。
そのガイがまさかジルに戦いを挑むとは思っていなかった…いや、そもそも戦いを挑むという選択肢すら入っていなかった。
魔王は圧倒的な強さを持っているし、何よりも絶対命令権があって逆らう事は出来ないはずだった。
だが、ガイは魔王ジルに戦いを挑み、その結果ガイが魔王になった。
何故そうなったのかは分からないが、別に興味がある訳でも無かった。
そして何故カミーラがこんな所に居るのかと言うと、それはハウゼルから話を聞いたからだった。
突如としての訪問に正直カミーラも驚いた。
別にハウゼルとは特に親しいという事も無く、正直に言えばカミーラとしては興味が無いと言っても良い。
同時に相手も自分とは関わらないだろうと思っていた。
しかし、事実ハウゼルはカミーラの元へと訪れた。
「殆ど初めましてですね、カミーラ」
突然の訪問にもカミーラは何も答えない。
ハウゼルにも特に興味が無いので、対応は全て使徒の七星に任せるつもりだった。
しかし、それは突然の言葉によって遮られた。
「ケッセルリンクからの伝言が有ります」
その言葉にカミーラの眉が動いた。
「………続けろ」
魔人ケッセルリンクの現状はカミーラも知っている。
使徒達の言葉から察するに、ケッセルリンクは今ランスと行動を共にしている。
その肉体をジルによって封じられ、自由に動く事は出来ないはずなのだが、そのケッセルリンクからの伝言という言葉は見逃せなかった。
「自分が居ない間、カラーをメディウサの手から守って欲しいと」
「………」
ハウゼルの言葉にカミーラは無言になる。
正直カミーラは今の世界にもそれ程興味はない。
目的はあくまでもランスではあるが、今現在はランスを追うという気にはなっていなかった。
それも今のランスの現状を知ったからなのかもしれない。
「そして…ランスさんが必ずメディウサを討つと」
「…そうか」
ハウゼルの言葉にカミーラは察する。
即ち彼女はランスに出会ったという事だ。
そしてその場所は間違いなくカラーの住処だろう。
カミーラにとってはカラーはどうでもいい存在であり、別に殺そうとも思っていない。
それにケッセルリンクの出身種族という事も有り、カミーラにしては珍しく手を出そうとは考えても居なかった。
そのカラーを自分に成り代わり、ランスがメディウサを討つまで守って欲しいと言っているのだ。
「…奴はどうしている」
「それは自分の目で確かめた方が良いですよ。私から言う事では無いはずです」
「よく言う…だがいいだろう。奴の頼みとあれば無下には出来んな…」
「有難うございます。では私はこれで」
ハウゼルはそうとだけ言って、そのままカミーラの前から立ち去っていく。
ハウゼルが完全に立ち去った後で、使徒である七星が主の前に出る。
「カミーラ様。宜しいのですか? 彼女は間違いなくランス殿の居場所を知っているでしょう」
「構わぬ…今はそんな気分ではない…」
「はっ…」
主の言葉に七星は内心でため息をつく。
(やはりカミーラ様は魔王ガイの事を良く思っていない様子…それで今動きたくないという事なのだろう)
「如何なさいます、カミーラ様」
「フッ…奴が私に頼んだ…珍しい事もあるものだ…ならば、それを叶えてやるのも一興だろう…」
カミーラは椅子から立ち上がる。
その目からは既にこれまであった苛立ちが消えており、新たな目的を見つけた獰猛な目に変わっている。
その様子を見て七星は安堵する。
(これならば直ぐにでも普段のカミーラ様に戻られるだろう)
ガイが魔王になってから少々ストレスを抱えていたようだが、新たな展開に少しは前を向いてくれたのだろう。
「でもカミーラ様…メディウサなんてカミーラ様なら一ひねりですよね」
「ラインコック…それでは意味がない。奴が殺すというのならば、そうさせてやる。そうする事で…より奴はこのカミーラが狩るに相応しい相手となる」
「は、はい…カミーラ様」
カミーラが上機嫌になった事でラインコックも熱い目でカミーラを見る。
つい最近まではラインコックでも近づけないくらいに不機嫌だったが、もう元に戻ってくれたようだ。
「七星…情報は常に集めておけ…ガイの周りは得にな」
「はっ…」
カミーラの言ってることは難易度が非常に高いのだが、それでも使徒ならば主の命に応えるのが務めだ。
カミーラはそのまま己の城を抜け、宙へと飛んでいった。
―――そして今現在に至る。
突然のカミーラの登場にメディウサの城の中に居る魔物兵は慌てて跪く。
何しろ相手は魔人四天王の一人、メディウサよりも遥かに格上の魔人だ。
その魔人が何故ここにいるのか、そんな疑問で頭がいっぱいだった。
カミーラはそんな魔物兵を無視し、メディウサの居る部屋へと向かう。
その扉に手をかけた時、この世のものとは思えない絶叫に顔を顰める。
その悲鳴にカミーラは不愉快そうに顔を顰める。
以前のカミーラならばそんな事は微塵も感じなかっただろうが、ドラゴンとしてのプライドを取り戻しその価値観は少し変わった。
カミーラは扉を勢い良く開けると、そこには無残な死体に成り果てている人間の女と、実に楽しそうに笑っているメディウサの姿がった。
「…臭いな、ここは」
「…カミーラかい」
その呟きが聞こえたのか、メディウサがその視線をカミーラに向ける。
「あんたがこんな所に何の用だい、魔人四天王がさ」
「フン…貴様などに用は無いのだがな…本来は」
メディウサの皮肉にもカミーラは全く気にしていないように答える。
「カラーに…手を出したか」
「カラー? ああ、魔王が変わったからね。これで好きに動けるってものさ。まあ…今はそこまで好きにも出来ないけどね」
メディウサの答えにカミーラは目を細める。
「呪いはどうした」
「呪い? ああ、ジルが魔王で無くなるまでは呪いのせいで人間を犯し殺せなかったけどねえ…もうジルは存在しない」
メディウサは股間の蛇を動かすと、まだ息があった一人の人間の腹を食い破る。
人間は悲鳴を上げる事も出来ずにそのまま絶命する。
「呪いも永遠じゃ無かったって事さ。まあ…まだ残ってはいるけどね」
メディウサの呪いは完全には消えていない。
実際、この女を殺した事でメディウサのレベルは下がってしまっている。
だが、その減少は以前よりも緩くなっている。
それを自覚した事で、メディウサは久々に享楽の宴を開始したのだ。
「お前が人間を殺そうともそれはどうでもいい。だが…カラーに手を出すなら私がお前を殺す」
その言葉で部屋の空気が一気に凍り付く。
それを感じ取ったメディウサは、今までの熱気が嘘のように体が震えてしまう。
「…何だってアンタが」
「ケッセルリンクが居ない事で調子に乗ったか…? 生憎と…私は奴に恩を売る事を選択する。貴様如きの命で奴に恩を売れるのならば安いものだろう」
「………」
カミーラの本気の威圧にメディウサは何も言えなくなる。
事実、ケッセルリンクが行方不明と聞いて調子に乗ったのは事実だ。
だがまさか、この怠惰で有名な魔人四天王がまさか出張って来るなんて考えてもいなかった。
「分かったならそうしろ。二度は言わない」
そうとだけ言ってカミーラは部屋から出ていく。
残されたメディウサは忌々し気に舌打ちをする。
だが、力では圧倒的な差が有り、どんなに頑張ろうともメディウサではカミーラにもケッセルリンクにも勝てない。
「ちょっと…誰か来なさいよ。このゴミを片付けなさいよ」
興が削がれたメディウサは渋々と引き下がるしかなった。
魔人であろうとも自分より強い魔人には逆らえない…それもまたこの世界の摂理でもあった。
「という訳で俺様の新しい女のシルキィだ」
「いやあなたの女じゃないから。仲間だから」
ランスは早速シルキィを連れて仲間の元へと戻った。
シルキィはランスの仲間であろう人達を見る。
金色の髪をした女性でも見惚れる程の美しい容姿をした女性。
黒い髪をした美しい剣士。
水色の長い髪をし、右腕に包帯を巻いている少女。
そして額に赤いクリスタルがある女性…彼女はカラーだろう。
その4人が待っていた。
「彼女達があなたの仲間なの?」
「そうだ。俺様の女だ。あ、だがあそこのカラーは違うぞ」
「…そういう人なんだ」
シルキィのランスを見る目が非常に複雑なものに変わる。
第一印象でちょっとエッチそうな人だとは思ったが、どうやらそのまんまのようだ。
しかし、その実力は本物なのは間違いない。
「初めまして。私は日光と申します」
黒髪の女性が一礼する。
その仕草は非常に様になっており、同じ女性であるシルキィですら見惚れる程の美しさを持っている。
「私はレン」
金髪の非常に美しい女性が短く言ってくる。
彼女はどちらかと言うとこちらにあまり興味が無いように見える。
そこに少し引っかかってはいるが、とにかく彼女も強いのは間違い無かった。
「私はジルです。よろしくお願いします」
ジルと名乗った少女が頭を下げる。
本当に見た目通りの少女であり、まだ戦うにしては幼過ぎるとも思えるくらいだ。
「…ねえ、本当に彼女があなたの仲間なの?」
「これは俺様の奴隷だ」
ランスの言葉にシルキィの目が細くなる。
「…こんな少女を奴隷扱いしているの?」
「あ、あの! いいんです。私は本当にランス様の奴隷なんです!」
シルキィの空気を察したジルが慌てて声を出す。
「…まあ私が口を出す事じゃないかもしれないけど」
ジル本人が言った事により、シルキィは完全に納得はしていないだろうが、とりあえず矛を収める。
「あっしはベネット、ベネット・カラーでやんす」
「カラーは初めて見るけど…どうしてカラーとも一緒なの?」
「それには色々と理由があるでやんすよ。それよりも旦那、これからどうするでやんすか」
ベネットがランスに尋ねる。
「こんな辛気臭い所に用はない。まずはカラーの所に向かうぞ」
ここはLP時代でいう所の自由都市付近に当たる。
昇竜山の近くにあるカラーの里であるペンシルカウには遠いが、それでも行く必要がある。
お町をそこに残しているし、何よりもアレからのカラーの様子が気になっている。
もしかしたらメディウサが動いているかもしれない、と警戒するのは当然だった。
「カラーの所? 魔王の所に向かうんじゃないの?」
「アホか。何の備えも無しに乗り込むバカが何処に居る」
「………」
ランスにそう言い切られてシルキィは思わず黙り込む。
「まさかその気だったのか」
呆れたようなランスにシルキィは言葉を返せなかった。
「まあいい。とにかく君も俺様の指示には従う事だな。そうすれば全部上手く行く」
「…そういう事に関してはそっちの方が詳しそうだしね。分かったわな、任せるわ」
シルキィはまだ外の世界を知らない。
だからこそ、その世界を知ってそうなランスに任せる事にする。
そしてその結果は正しいものだった。
まずは住処―――魔法ハウスを見た時シルキィは思わず茫然とその家を見上げてしまった。
「…凄い」
レンが持っていたミニチュアの模型の家が巨大な家へと変化したのだ。
「これが俺様の家だ」
家の中はこれまたシルキィが見た事も無いような光景だった。
煌々と輝く明かりにふかふかの布団。
そして水も豊富に存在し、凡その生活の基盤となる物が全て揃っている。
まさに夢のような光景…それがあんな小さな模型の家から齎されているのだ。
「うわあ…こんなのがあるだなんて…」
「がははは! 凄いだろう!」
ランスは得意気な顔をするが、シルキィの顔は曇っている。
「む、どうした」
「うーん…いや、こんな贅沢していいのかなあって。これがあればもっと沢山の人を救えるんじゃないかって」
シルキィの言葉にランスは呆れた顔をする。
「アホか。こんなのが救えるわけが無いだろ」
「…そうかしら」
「当たり前だ。だいたい救えるとは言うがお前は一体何人救う気だ」
「それは…」
ランスの言葉にシルキィは答えられない。
具体的に何人救う気だと言われても、漠然としすぎてて答えられない。
「これは俺様が手に入れたアイテムだ。欲しければ探せばいい」
「それがあなたの考え方って事?」
「そんなの常識だ常識。何もしてないくせいに甘い汁を吸おうとしてくる奴などロクな奴は居ないぞ」
「私はそこまで割り切れないかな…」
シルキィは苦い顔をするしかない。
自分に対して意見をしてくる人間はこれまで居なかった。
それはシルキィが常軌を逸した強さを持っているのと、シルキィに頼る以外で自分達が生き残る手段が無いと分かっているからだ。
ランスから言わせれば甘いの一言だが、シルキィは別にそれでも良かった。
「そんなんじゃ外ではやっていけんぞ。お前は日光よりも甘いな」
「………」
その言葉を聞いて日光もまた苦い顔をする。
ランスの言う事は本当の事で耳が痛い話だ。
ランスはランスで死生観が極端で、基本的には自分が良ければそれでいいと考えているのはそうだろう。
ただ、それでも自分がやると決めた事はどんな事でもやり遂げるし、ランスの仲間も内心でも思っている通り普通にしてれは優しい人間ではあるのだ。
その優しさが全て女に向いているというのが問題ではあるのだが。
ランスは極端ではあるが、言っている事は決して間違っても居ないだろう。
「それが私の性分だもの。そこは変えられそうにないわね」
そんなランスの言葉にもシルキィは笑って答える。
「ま、いいんじゃないか」
ランスも別にシルキィの生き方までに口を出す気はない。
(うむ、これでピンチになったら助けてズバッとやるとしよう)
シルキィの体は発育という点では小柄だが、ランスにとっては十分に射程範囲内だ。
ハイパー兵器も問題無く反応するし、何れはベッドに連れ込む気が満々だった。
(うーん…この人、露骨にエッチね。ま、でもこんなに綺麗な人達がいるし、私なんて興味無くなるでしょ)
だが、そんなランスの思惑は当然シルキィにはバレバレだった。
ただ、これほど魅力的な女性が沢山居て、まさか自分にまでそんな目を向ける訳が無いか、という思いも抱いてた。
それをとんでもないくらい甘い考えだと思い知るのは―――少し先の事だった。
皆はそれぞれ魔法ハウスの椅子に座る。
こんな上質な椅子に座るのはシルキィは初めてだった。
「改めて紹介するけど、私はシルキィ。こう見えても付与師よ」
「付与師?」
「うん。これが私の魔法具」
シルキィは手に持っていた武器を構える。
するとリトルが姿を変え、その右手が鎧のように覆われると同時に、まるで槍と斧を合わせたようば武器へと変わる。
同時にシルキィの急所の部分をどんどんと鎧が覆っていく。
「…なんかどっかで見たモンスターそっくりだな」
その変化にランスは微妙な顔をする。
ランスは殆ど覚えていないのだが、まだこの時代には存在していない野良モンスターの課金戦士にそっくりだと失礼な事を考えていた。
しかし、武器が鎧になるプロセスはランスとしても中々面白かった。
「私はこの魔法具を纏う事で戦う事が出来るの」
「付与の力…スラルさんの魔法の付与とは違うタイプですね」
「付与といっても色々あるんでしょうね」
ジルは興味深そうにシルキィを見る。
スラルの付与の力…ランスの剣に魔法を宿らせる力とはまた違う力に目を輝かせていた。
「スラル? まだあなたの仲間が居るの?」
「スラルちゃんは…まあいい、どうせその内出てくるだろ。だから気にするな」
「そう言われて気にならないなんて事は無いんだけど…まあいいわ」
とりあえず聞いても答えてくれそうに無いので、シルキィは話を打ち切る事にする。
「で、皆はどんな事が出来るのかな? ランス君は見たまんま剣士なんでしょうけど」
「がはははは! 俺様以上に強い人間はこの世界には存在しない。何故なら俺様が人類最強だからだ」
「随分と大きく出たわね。まあ強いのは間違い無いでしょうけど」
シルキィは戦士としてランスの才能を見抜いている。
ただ、どこまで強いのかまではまだ分からない。
だが、恐ろしく強いという事だけは分かっている。
「私もランス同様剣を使いますが…侍、と言って分かりますか?」
「侍…JAPANの戦士の事よね。あんまり詳しくは無くて…」
日光の持つ剣…いや、刀を見てシルキィは少し曖昧な表情をする。
JAPANという国の存在は知っているし、侍という戦士の名前は聞いた事がある。
だが、流石に今の時代では見た事は無かった。
「私はガード。他にも神魔法も攻撃魔法も使えるけどね」
「魔法使い…には確かに見えないわね」
シルキィはレンを見る。
どう見ても軽装の戦士にしか見えないのだが、本人が言うのだから本当にそうなのだろう。
ランス同様、レンもまた非常に優れた戦士で有る事は分かっている。
「私は魔法使いです。白色破壊光線とかも使えます」
ジルはちょっとだけ得意気に胸を張る。
「…こんな子供なのに凄いわね。でも、ランス君…彼女を旅に連れてくのは危険じゃない?」
「こいつは俺様の奴隷だからな。奴隷が主人の側に居るのは当然だ」
「私は感心しないけどね…」
明らかに子供で有るジルが戦えるという言葉を聞き、やっぱりシルキィは複雑な顔をする。
「あっしはベネット、ベネット・カラーでやんす。見ての通りのカラーでやんす。得意なのは短剣と罠でやんすよ」
「…カラーなのよね? カラーって弓と魔法とあと呪いが得意って聞いてたけど」
「間違ってないでやんすよ。あっし以外のカラーは大体魔法と弓、あと呪いが得意でやんす」
「そうなんだ…ま、人にも色々あるし、カラーにも色々あってもおかしく無いわね」
シルキィはベネットの言葉にも納得する。
そういう所は純粋な少女だった。
「よーし、まずは親交を温めるために一発…」
「あ、旦那。魔物の気配がしやす」
ランスが早速シルキィをベッドに連れ込もうと画策した時、ベネットの耳がピクリと動く。
「あん?」
自分の目論見を潰された事にランスが露骨に不機嫌になる。
「魔物兵が? そんなのも分かるの?」
「だいたいでやんすけどね。あっしはそういう感覚が優れてるでやんすよ。で、どうしやすか?」
「チッ、俺様の邪魔をしおって。数はどれくらいだ」
「それは行ってみないと分からないでやんすね」
「そうか。おいレン、一緒に行ってこい」
「はいはい。万が一の事を考えて逃げる準備くらいしといてよ」
「じゃあ行ってくるでやんす」
ランスの指示でレンとベネットが魔物の偵察に行く。
ジルは魔法ハウスを元のミニチュアのハウスに戻し、それを袋に仕舞う。
「ランス君…大丈夫なの? 二人で」
「奴等なら問題無い」
シルキィの言葉にもランスは全く気にする事無く答える。
その言葉を信じ、シルキィも二人を待つ。
少しの間待っていると、二人が戻って来る。
「うーん…結構大変な事になりそうでやんす…」
ベネットは複雑な顔を、レンは普段と変わらない顔をしている。
「なんだ。魔人でもいたか」
「いや、魔人は居なかったでやんすが…魔物将軍が居るでやんす。数は500とそこまで多くないのでやんすが…」
「500も…」
ベネットの言葉にシルキィは驚愕する。
500という魔物兵は流石に数が多い…シルキィにはそういう認識だった。
しかし、ランス達は違った。
「500か大した数じゃ無いな」
「そうですね…それくらいなら何とでもなると思います」
「え?」
全く問題無いという態度を崩さないランス達にシルキィは驚く。
「で、問題ってなんだ」
ランスの言葉にベネットは頭を掻きながら答える。
「いや…この魔物兵達、シルキィさん達の隠れ里を見つけたみたいでしてね。そっちに向かってるんで」
「え!?」
ベネットの言葉にシルキィは目を見開く。
「ふーん。ま、無視でいいか。そんな連中を潰したところで意味無いしな」
ランスにとってはその情報は本当にどうでもいい事だった。
自分の女が関わらない限りはランスは冷淡なのだ。
こればっかりは性格なのでもうどうしようもない。
「そんな! 私は見捨てられない! 私だけでも行くわ!」
ただ、シルキィは当然助けようとする。
そしてそのまま走りだそうとしたのをランスに止められる。
「おいまてシルキィちゃん。お前1人で行ってもやられるだけだぞ」
「それでも私は見捨てるなんてできない」
シルキィの目を見てランスはため息をつく。
「分かった分かった。俺様も行ってやる。だからそう焦るな」
こういう人間にはもう何を言っても無駄だ。
まだセックスもしていないのに、ここで見捨てるような事が出来るランスでも無いのだ。
「俺様に任せておけ。あっさりと連中をぶっ殺してやる」
ランスは普段のようにがはははと笑うのだった。
シルキィってフルスペックなら本当に強いんだろうな…
でもそのフルスペックシルキィより強いメガラスは一体…