ランス再び   作:メケネコ

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勝利のために

「何! カラーの連中の居る所が見つかっただと!」

「はい…間違いありません」

 魔物大将軍は戻って来た魔物兵の報告に唇を喜びに歪める。

「だが…戻って来たのは貴様だけか」

「私以外は…カラーの呪いで全滅しました…」

「カラーの呪いか…やはり恐ろしい力のようだな。かつてメディウサ様を呪ったのも伊達では無いという事か」

 魔物部隊の全滅…これは結構痛手なのだが、この程度でカラーの住処を探せたのならば十分だろう。

 それにカラーの呪いについてもムオバクスは警戒をしていた。

 かつてあの魔人メディウサすらも呪ったという力…あの永遠を生きるメディウサを呪うのだからさぞ強力なものなのだろう。

 それでもカラーが魔物の標的にならないのは単純に魔物の敵が人間で有る事と、魔人ケッセルリンクがカラー出身の魔人という事への配慮のためだった。

 そして懸念の一つであったケッセルリンクは今は行方不明、ならば今しかカラーを蹂躙するチャンスは無いのだ。

 ムオバクスは人間…いや、亜人と言われる種族に対して憎悪を強く向けている。

 虐殺を平気で行うのもその憎悪の表れの一つだった。

「それで場所は何処にある」

「…この辺りだと思います」

 魔物兵が指を刺した場所は―――昇竜山と呼ばれるドラゴンの住む山の麓だった。

 それを見て流石のムオバクスも顔を歪める。

「ドラゴンの住処の近くか…」

「ムオバスク様…流石にドラゴンを相手にするのは…」

「分かっている。面倒くさい所に居るものだな」

 ドラゴン―――それはこの世界の最強の生命体の一つだ。

 今でこそその姿を見せないが、その力は協力無比。

 あの魔人四天王であるカミーラの出身種族と言えばその強さが分かるというのもだ。

 流石のムオバクスもドラゴンに喧嘩を売る気は毛頭無かった。

「まあいい。奴等の場所が分かればやりようはある。それにカラーは一匹残っていればいいからな。後は皆殺しにしてもいいだろう」

 ムオバスクの言葉にその場に居た魔物達が息をのむ。

 この将軍の狂気は既に常軌を逸している。

 戦闘よりも虐殺を好み、その中でも毒ガスを使用するのが何よりも好きだという存在だ。

 しかし魔物兵達はその魔物大将軍には逆らう事は出来ない。

 それはこの世界のルールと言っても良かった。

「少しの間兵に休息を取らせろ。例の奴の準備は出来ているか」

「あ、は、はい。出来ております」

「うむ」

 ムオバクスの合図に一体の飛行魔物兵が入って来る。

「貴様か」

「はい。私がムオバスク様の作ったガスを搭載しております」

「ご苦労。貴様の任務はこのガスをカラー共の住処に撒く事だ」

「はっ!」

「うむ、合図があるまで待て。それまでカラーの連中を森から逃がすなよ」

「「「はっ!!!」」」

 ムオバクスの言葉に皆が一斉に返事をする。

 その様子を一体の魔物将軍が気に入らない様子で見ていたのだが、ムオバクスは当然そんな事には気づかなった。

 

 

「将軍、どうですか?」

「どうもこうも無いな。俺から言わせれば下らん作戦だ」

 ランブハビは気に入らないと様子を隠そうともせずに答える。

 彼にとっては戦いとは己の力量をかけて相手を倒す場であり、虐殺などは面白くも何とも無い事だった。

 特に人間に対しても敵意はもたず、シンプルな戦いこそが彼の全て…それが魔物将軍の突然変異である彼の考え方だった。

 それ故に一般の魔物兵達からは評判は良く無いが、それでも彼を慕う者達は存在していた。

 ここに居る魔物隊長を含め、彼の直属の部下達はランブハビという存在に忠誠を誓う者達だった。

「で、どうなってるの? サファイアは上手くやったんでしょ」

「そりゃもうね。流石は使徒様の力だ。ムオバスクの野郎も何の疑いも無く信じたよ」

 そしてそこに居る過激な服装の少女―――魔人アイゼルの使徒であるガーネットが笑う。

「そう。じゃあ私は次の行動に移るかな。そっちはそっちで好きにしなよ」

 そう言ってガーネットは素早くテントから出ていく。

「将軍、アイゼル様は何を考えているのでしょうね」

「はっ! 何を考えてようが俺には関係無いな。だが本気でやりあえる連中がいるってのも事実だからな…」

 ランブハビはあの時の戦いを思い出し笑みを浮かべる。

 遠目から見ていただけだが、恐ろしい程強い者達だった。

 魔物兵を一匹も残さないようにする見事な不意打ち、そしてそれをやり遂げる力。

 それこそランブハビが望む闘争そのものだった。

 むしろ彼等が魔物兵を一匹逃した事はランブハビにとっては理想の展開だった。

 その魔物兵はサファイアの力で洗脳され、あらぬ所をカラーの住処として示したのだから。

「ですが空から投下するとはムオバスクも考えましたね。それに関してはどうしますか?」

「そんなの単純だ。カラーの連中にその事を教えてやればいい。そうすりゃあの連中なら何か考え付くだろ。それくらいしてくれなきゃ面白くねえ」

「成程…それは私が担当しましょう」

「任せるぞ。で、連中はどうしてる」

「ハッ!」

 ランブハビの言葉に赤魔物兵が一歩前に出る。

「カラー達には動きは有りません。脱出を試みている様子も見受けられません」

「まあ連中の立場からしたらそうだろうな。そう簡単に住処を捨てるなんて出来ないもんだ。それに逃げるためにはあいつを始末しないといかんだろうしな」

「ですので情報の伝達は少々難しいかもしれませんが…ケンダル隊長なら上手くやってくれるでしょう」

「間違いないだろうさ。連中がそれを罠と思うかもしれんが…まあそれは連中次第だ」

 実際には上手く行くかどうかは賭けの部分が多い。

 が、ランブハビは不思議とあの連中なら切り抜けられると確信していた。

(ムオバクスには死んでもらうが…ま、構わんだろうな。魔物大将軍だろうが所詮は駒の一つにしか過ぎん)

 ランブハビは内心で愉悦から来る笑みを浮かべる。

 己の目的の為ならば、自分の上司ですらも始末する事も厭わない…そんな冷酷な一面があった。

(さて…上手くやってくれよ。俺はお前達と全力でやりあいたいんだからな)

 

 

 

「…なんかとんでもないモノが送られてきたんだけど」

 ハンティは困惑しながら女王の家に入って来る。

 そこにはランス達も集合しているが、やはり皆の顔色は非常に暗い。

 そんな中でカラーの英雄が困惑しながら入って来たのだ、皆が一斉にハンティを見る。

「何かありましたか? 始祖様」

「うーん…どう判断していいか迷ってね」

 ハンティは手にした紙を広げる。

「なんだこりゃ」

「いや…魔軍の次の作戦行動が書かれてるんだよ」

「はあ?」

 ランスはハンティの言葉に思わず間の抜けた声を出す。

 それくらいに信じられない言葉だった。

「どういう事よ」

「そのまんま。次の魔軍の標的と攻撃目標が書かれているのよ」

 その言葉に誰もがその紙に集まる。

「…何これ。確かに魔軍の行動みたいなんだけど」

 レンはそれを見て眉を顰める。

「おいレン。どういう事なのか説明しろ」

「うーん…まあ要約すると、魔軍の目的は空から毒ガスを散布してカラーを全滅させるって事」

「何だと!」

 ランスはその言葉に目を見開く。

 そこにあるのは明らかな怒りだ。

「でもね。その場所が明らかにペンシルカウじゃ無いのよね」

「はあ?」

「疑問は分かる。でも攻撃目標が明らかに場違いなのよね」

 レンは用紙をランスに見せる。

 そこには確かに作戦図が書いており、それは確かに毒ガスでカラーを皆殺しにするという事が書かれている。

 だが、ペンシルカウの位置が明らかに間違っており、翔竜山の麓にペンシルカウがある事になっている。

「なんだこりゃ。ペンシルカウの位置が滅茶苦茶だぞ」

「そうなんだよね。だから私もどう判断していいか迷ってね」

 ランスの疑問にハンティも苦笑するしかない。

「だからここはアンタに任せるのが良いと思ってね。そっちの方が魔軍との戦いの経験は多そうだしね」

「当然だな。だがこれが本物なのかどうかだな」

 もしこれが本当ならば非常に重要な情報となる。

「ランス様、もし罠だったら…」

「罠は無いと思うけどね。罠だとしたらいくらなんでも回りくどすぎる。そもそもカラー相手にこんな罠を仕掛ける理由が分からないしね」

 ジルの不安をハンティが否定する。

「フン、連中にそんな事をする頭なんて無いからな」

「でも…実際どうするの、ランス君。そのガスが撒かれた後で魔軍は絶対にカラーの死を確認しに来るでしょ」

「そうですね…シルキィの言う通り、結局は魔軍をどうにかしないといけません」

「そんな事は分かっとるわ」

 シルキィと日光の指摘にランスは考える。

(うーむ…どうする。シルキィの言う通り結局は魔物共を全滅させなければいかん。だがなあ…)

 ランスは周囲を見渡す。

 カラーはまずは総人口が多くない。

 昔にあったカラー狩りの影響は今でも残っており、今居るカラーだけで犠牲を出さずに魔軍を全滅させるなど不可能だ。

 だからといって人間の協力など不可能であり、結局は今ある戦力でどうにかしなければならない。

 しかしそれでは1万は居るという魔軍を相手にするには力不足だ。

(どこからか横槍が入れば…)

 ランスは一瞬カミーラの事が思い浮かんだが、それこそ論外だ。

 もしカミーラが来ればそれこそランスとの勝負になるのは間違いない。

 そしてカミーラの相手をするのは流石に厳しい状態となっている。

(カミーラ…うん、カミーラだと?)

 ランスはカミーラの事を考えて思い出す。

 そして窓から外を見ると、そこには遠くに巨大な山がある。

 そう―――カミーラの出身種族であるドラゴンが住まう唯一の山が。

「おい、カラーの中に催眠術みたいなそんな魔法を使える奴は居るか」

「は? 催眠術?」

「そうだ。別に長時間とは言わん。少しの時間があれば十分だ」

「それくらいなら居るけど…」

 ランスの言葉にハンティは首を傾げる。

「フフフフフ…俺様に秘策有りだ」

 ランスは不敵い笑うが、その顔を見てレンは呆れた顔をする。

「どうせまた卑怯な作戦でも考え付いたんでしょ」

「がはははは! 勝てばいいんだ勝てば。卑怯なんてのは所詮は負け犬の遠吠えだ」

 奇妙な自信を見せるランスにはカラー達は困惑するしか無かった。

 

 

 

「おおお…とうとう完成したか」

「はい、ムオバクス将軍。これこそがムオバクス将軍の理想の飛行型魔物兵となります」

 ムオバクスは目の前に居る飛行型魔物兵を見て感嘆の声を出す。

「うむ…素晴らしい。お前の名は今からスマシオンだ」

「ハハッ!」

 スマシオンと呼ばれた魔物兵が宙に浮かぶ。

「貴様の任務は分かっているな」

「ハッ! カラー共の隠れ家にムオバクス将軍の特性ガスを散布する事です!」

「その通りだ。では行くのだ!」

「ハッ!」

 飛行魔物兵はそのまま宙に消えていく。

 それを見てムオバクスは満足そうに頷くと、

「よし、全軍を前進させろ」

 部隊を動かす様に指示を出す。

 結果は直ぐにでも把握しなければならない、それが楽しみでムオバクスは虐殺を繰り返しているのだ。

「了解しましたが…ランブハビはどうしますか」

「奴か…後方に下げておけ。奴が動くと面倒な事になる」

 ムオバクスは苦々しい声を出す。

 ランブハビは気に入らないが、非常に優秀かつ勇猛な魔物将軍だ。

 その名前は魔物達の間でも有名で、突然変異の魔物にも関わらず奇妙な人気がある。

 ハッキリと言えばムオバクスはランブハビが気に入らないので、この作戦からは外す事を決めていた。

 この部隊から追い出しても良いのだが、別にそこまでする必要も感じられなかった。

「カラー共が逃げ出したらどうしますか?」

「それは別に構わん。生き残ったなら生き残ったで使い道があるだろう。それにメディウサ様に対して1匹は生き残っていればいいからな」

 ムオバクスとしてはカラーは全滅しても構わないのだが、それでも魔人に恩を売るのは重要だ。

 今はさしてカラーを狙っている様子は無いが、それはそれで構わなかった。

 とにかく自分が魔人の命令でこうしているという建前が重要なのだ。

(魔人ケッセルリンクに睨まれるのは御免だからな…)

 ムオバクスはこの点では見誤っていたと言っても良いだろう。

 この男は知らないのだ…魔人ケッセルリンクと魔人メディウサ、この二人を秤にかけてどちらを取るかという事を。

 分かりやすいメディウサと違い、魔物に対しても関心が無いケッセルリンクはまさに未知の存在だった。

 なのでケッセルリンクも一般的な魔人と同じく、人間や亜人を見下していると思っている。

 だからこそ、カラーの虐殺という事を平気でやってしまうのだ。

「よし、スマシオン…行くがいい。カラーを皆殺しにしろ!」

「ハハッ!」

 飛行魔物兵スマシオンはカラーの集落へと向けて飛び始めた。

 そこには何も無いという事も知らずに。

 

 

 

「旦那! 来やしたぜ! 空を飛ぶ魔物兵が一匹飛んで来てやすよ!」

「そうか。お前等、準備は出来ているな」

「「「はい!」」」

 ランスの言葉にカラー達が返事をする。

 この場所は魔軍の作戦エリアで有り、この辺りに例の毒ガスを散布すると聞いている。

 そして本当に飛んできたのならば、あの情報は正しかったという事だろう。

「ジル、きちんと手加減しろよ」

「はい、大丈夫です」

 ジルは何時でも魔法を放つ準備をしている。

「ランス君、本当にやるの?」

 シルキィだけは微妙な表情でランスを見る。

 ランスの作戦を聞いた時、誰もがその作戦に唖然とした。

「当たり前だ。それともお前はこれ以外に魔軍の連中をどうにかする手段を思いついたのか」

「それは…無いけど」

 シルキィはランスの言葉に黙ってしまう。

 ランスの作戦はとんでもない事だが、確かにそれ以外に方法は思いつかなかった。

「ランスのやる事は確かに非常識ですが…それでも結果を出すから誰も何も言えなくなるのですよね…」

 日光も正直ランスの作戦を聞いた時は開いた口が塞がらなかった。

 周囲の被害を一切考えない、まさに自分とその守る者達が助かる手段。

 もし思いついたとしても普通は実行はしないだろうし、そもそもそんな事を思いつく方がどうかしていると思った。

 ホ・ラガでもここまで悪辣な考えは思い浮かばないだろう。

「それよりもお前達も何時でも動ける準備はしろよ」

「分かってるわ」

「了解です」

 シルキィと日光は一瞬で戦士の顔に戻る。

 互いに獲物を手にし、何時でも動けるようにしている。

「ひゃっ!?」

 そんなシルキィを見てランスはその尻に触れる。

「な、何するのよ!」

「あだだ!」

 シルキィは顔を真っ赤にしてランスにビンタをする。

「何しやがる!」

「それはこっちのセリフよ! ランス君、いくらなんでも緊張感無さ過ぎよ!」

「俺様はお前の緊張を解すためにな…」

「嘘言わないでよ」

 シルキィはジト目でランスを睨む。

「はいはい、バカをやるのはそこまで。来るわよ」

 そんな二人の間にレンが入って来る。

 その目は既に飛行魔物兵を捉えていた。

「よーし、ジル。あいつを打ち落とせ。だが殺すなよ」

「大丈夫です、直撃はさせません」

 ランスの言葉にジルも魔法の詠唱を始める。

 そして魔物兵が自分の上空に差し掛かった時、

「ライトニングレーザー!」

 ジルの放った魔法が飛行魔物兵に当たる。

「な、なんだ!?」

 飛行魔物兵スマシオンは驚くが、急な一撃でどんどんと高度が下がっていく。

 自分の任務はカラーの住処に毒ガスを撒く事と、周囲に魔物大将軍率いる魔軍が居る事から全く警戒していなかった。

 スマシオンが森の中に不時着しようとした時、

「確保―!」

「皆、捕らえるのよ!」

「う、うわあああああ!?」

 突如として放たれた網がスマシオンの体を包む。

 突然の事にスマシオンは何も出来ずにそのまま地面に縫い付けられる。

「ランスさん! 魔物兵の確保をしました!」

「良くやった! よーし、次は君の出番だ」

「は、はい!」

 カラーの言葉にランス達はすぐさま集まる。

「な、に、人間!?」

 スマシオンは突如として現れた人間に驚くが、直ぐにその目がカラーの一人に覗き込まれる。

「あなたは今から私の言葉に従います、いいですね」

「な、何を…」

 勢いよく言葉を返そうとしたスマシオンの言葉が小さくなっていく。

 そのカラーの目を覗き込むうちに、その目がどんどんと虚ろになっていく。

「ランスさん、成功です!」

「よーし、よくやった。次は指示通りにしろ」

「はい。えーと、あなたの目的はカラーの住処です」

「カラーの住処が俺の目標…」

 カラーの言葉をスマシオンが復唱する。

 だが、その言葉には意思が全く感じられない。

「そしてカラーの住処はあの山の頂上付近です」

「カラーの住処はあの山の頂上付近…」

「そこであなたは毒ガスを撒くんです。魔軍の名のもとに」

「…そうだ、俺の目的はカラーの住処にガスを撒く事だ」

「では行きなさい。必ず任務を実行するように」

「了解…カラーを皆殺しにします」

 スマシオンがそう言うと、カラー達は彼を自由にする。

 レンが回復魔法を唱えると、スマシオンは山…翔竜山目掛けて飛んでいった。

「…上手く行きました」

 魔物の目を覗き込んでたカラーが安心したようにため息をつく。

「まさかあの魔軍を何とかするためにドラゴンを巻き込もうなんてね…アンタしか思いつかないよそんな作戦」

 ハンティは苦笑しながら現れる。

「ドラゴンは昔は魔物と戦ってたんだろ。カミーラがそう言ってたからな」

「そうだけどね…でも、ドラゴンはアレから全く戦闘の意思を無くしてしまったけど」

 ハンティは一度ため息をつく。

「流石に自分達のテリトリーが侵害されれば話は別さ」

 ランス達は黙って翔竜山の方向を見る。

 どれだけの時間が経過したか、突如として凄まじい雄叫びと共に何かが翔竜山から飛んできた。

 それは黒い鱗をしたドラゴンと、真っ白い鱗を持ったドラゴンのように見えた。

「がはははは! 上手く行ったぞ!」

「…上手く行っちゃったわね」

 ランスの言葉にシルキィは呆れるしかない。

 ランスがとった作戦…それはドラゴンをこの戦いに巻き込む事だった。

 相手の作戦を逆手に取り、魔軍にドラゴンを攻撃させる…そんな無茶苦茶な事をランスはやってのけたのだ。

「よーし、連中の混乱に乗じて魔物大将軍をぶっ殺すぞ」

「了解です」

 ランスの言葉に日光は刀を構える。

「私は皆をペンシルカウに戻したら応援に行くよ」

「おう。今は戦力が必要だからな。まあお前なら足手纏いにはならんだろ」

「言ってくれるね。じゃあ皆、撤退するよ!」

 ハンティの言葉にカラー達は一斉に行動を開始する。

 万が一魔軍がペンシルカウに矛を向けないとも限らない…そのための備えは必要だった。

「がはははは! 魔軍をぶっ殺しに行くぞ!」

 ランスはそれはもう楽しそうに笑っていた。

 

 

 

「な、な、な…何が起きた…?」

 そして魔軍の陣地ではムオバクスは茫然としていた。

 魔物兵スマシオンが落ちたかと思うと、突如として山へと向かい始めたのだ。

 遠目でしか見えなかったが、アレは間違いなく自分が送り出した自慢の毒ガスを積んだ魔物兵だったはずだ。

 それなのに毒ガスを散布することなく、突然あらぬ方向へ向かい始めた。

「しょ、将軍…どうしますか」

「どうもこうもあるか! あの役立たずめ…次の奴を用意しろ!」

「は、はい!」

「全く…」

 ムオバクスは何とか気を落ち着けようとした時だった。

 突如として凄まじい光が自軍の陣地へと降り注いだ。

「な、何だ!?」

「そ、空から…空からです!」

「そ、そんな…あ、アレはドラゴン!?」

 上空を見上げていた魔物兵が恐怖で引きつった声をだす。

「な、何だとぉ!?」

 ムオバクスも驚愕の声を上げるが、その巨大な生命体はムオバクスの近くへと降り立った。

 青みのかかった黒い鱗を持った凶悪な顔立ちのドラゴンがそこに居た。

 その体からは凄まじい雷光が噴出しており、明らかに怒っているのが見て取れる。

「ドラゴンに喧嘩を売るとは良い度胸だ! その喧嘩、喜んで買ってやるぜ! 魔軍よぉ!!」

 そのドラゴンは本当に嬉しそうに天に向かって咆哮を上げる。

 すると天から凄まじい稲妻が降ってきて、数体の魔物兵を消し炭にする。

「せいぜい抵抗しやがれ! 誰であろうと消し炭にしてやるよ! このカイン様がな!」

 未だドラゴンの本能を失わぬ存在であるカイン。

 その目は怒りと興奮で彩られていた。




飛行魔物兵の名前のスマシオンは一応ガ〇ダムネタです
まあ結構マニアックな方ですけどね…
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