ランス再び   作:メケネコ

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一方的な蹂躙

 その日もまたドラゴンたちは全く変わらない日々を過ごしていた。

 魔王がジルからガイに変わったが、ドラゴンにとっては全く関係の無い事だった。

 魔王もドラゴンに対して何もアクションを起こすことなく、変化が無い時間だけが経過していた―――一体のドラゴンを除いて。

「あああ…暇だぜ」

 黒鱗を持った黒竜カインは今日も退屈していた。

「相変わらずだね…カイン」

「そうは言ってもよ。退屈なのは退屈なんだよ。俺はお前達と違って本能が消えてないからな、キャンテル」

「そうだね…君はドラゴンの中でも特別だよ。だからKDも君になるべく下界に関わらないようにと言ったのだろう」

 カインは自分と親交のあるドラゴンであるキャンテルと共に暇を持て余してた。

「それにしても…まさか君の口からまたククルククルの名前を聞いた時は本当に驚いたよ」

「またその話か。まあ確かに大変ではあったぜ…ククルククルっつっても触手一本だったけどよ」

 カインは自分が体験した事をKDには隠さずに話した。

 するとあの常にふざけた態度を取っているKDが珍しく真剣な声を出した。

 それが『あんまり下界には関わらないように』という事だった。

 カインとしてもアベルの件もあるので、KDの言葉に大人しく従っていた。

 従っていたが…流石にここまで長い時間が経てば愚痴の一つも出てくるというものだ。

「そしてカミーラの事もね…彼女に関しては本当に複雑だけどね。特に君の場合はね」

「ったく…アベルの奴ももういねえ、魔人には無敵結界なんてものがある…詰まらねえ世の中になってるぜ、俺にはよ」

「ハハハ…君は今でもドラゴンの本能が強く残っているからね。そう思うのも無理はないね」

 そう言われながらもカインは苦笑するしかなかった。

(何だかんだ言って俺も丸くなったのかねえ…それもカミーラが子供を産めなくなったって事が関係あるのかね)

 あれ程強く求めていたはずのカミーラも、最早ドラゴンの王冠としての価値は無くなってしまっていた。

 カインもそれを知ってからはちょっとだけ気持ちが落ち込んでいた。

「…あん? なんだありゃ」

 その時、カインはこちらに向かってくる存在を見て首を傾げる。

「どうしたんだい」

「いや、アレを見ろよ。こんな所にまで魔物が来るなんて珍しいと思ってよ」

「…おや、本当だ」

 カインとキャンテルは目を丸くする。

 自分達が魔物や人間にも干渉しないのと同じように、魔物もこちらに干渉しようとはしない。

 無用な争いを嫌っているのかどうかは知らないが、とにかく魔物達と争う事も特になかった。

 飛行型のモンスターというならば話は分かるが、あの姿はどう見ても魔物の正規兵…つまりは魔物の軍隊の一員だった。

 その飛行魔物兵は真っすぐにこちらに向かって来ている。

「…ぶっ飛ばすか」

「いやいや…そんなに気にしなくてもいいんじゃないかな。魔軍がまさかドラゴンにちょっかいをかけるなんて…」

 そういうキャンテルの言葉は魔物兵の言葉によって完全に途切れる。

「死ねーーーーー! 皆殺しだ!」

 そう言って魔物兵はその体から白い気体を吐き出す。

「うお!?」

 カインとキャンテルは思わず空に浮かぶ。

 その気体はドラゴンには毒だという事が丸分かりだ。

「ふははははは! 苦しめ! 死ね! 一匹残らず死に絶えるがいい!」

 魔物兵は笑いながら辺りに毒ガスを散布している。

 それをカインは―――当然の事ながら切れた。

「死ぬのはてめえだ!」

「え…うぎゃああああああ!」

 カインのブレスが魔物兵を飲み込むと、飛行魔物兵スマシオンはあっという間に消し炭になる。

 キャンテルはそんなカインを見てため息をつく。

 何故ならカインは笑っていたからだ。

「カイン…」

「喧嘩を売って来たのは連中の方だぜ! だったら俺達にはやり返す権利があるよなあ!」

 そう言ってカインは翼を羽ばたかせて飛んで行ってしまった。

「はあ…まあ先に手を出してきたのは向こうか。やり過ぎないように見ておくか」

 実際に魔軍はドラゴンを攻撃してきたのは間違いない。

 だったらやり返すのは至極当然だし、KDもこれに関しては何も言わないだろう。

 ただ、カインの事だからやり過ぎるのは間違いない、なのでキャンテルはカインのやり過ぎを止めるべく、カインの後を追って翼を羽ばたかせた。

 

 

 魔軍陣地の後方―――

「ハハハハハハハ! やりやがった! あいつら、まさかこんな手段を使いやがるとはなあ!」

 ドラゴンが飛んで来た事にランブハビは狂喜していた。

「ククククク…こいつは言い訳のしようがねえ。何しろ手を出したのはこっちなんだからな」

「まさかあんな手段に出るとは…」

「おもしれえじゃねえか。これであいつもおしまいだ。だったら俺達のやる事は一つしかねえだろ」

 ランブハビは獰猛に笑う。

「という事は?」

「決まってるだろ。責任取らせてムオバクスをぶっ殺すんだよ」

「なるほど、そいつはいいですな!」

 とんでもない事を言っているランブハビだが、周囲の者達は本当に楽しそうに笑う。

「ま、少しの間は高みの見物と行こうや。それとあの人間共の動きは注視しておけよ」

「ハッ!」

 部下の言葉にランブハビは懐から一枚の地図を取り出す。

「メディウサの奴はとことん人望がねえな。ま、あの性格なら当然だな」

 これは魔人アイゼルから渡された地図。

 もし人間が自分を倒せたら、これを渡す様にと厳命されていた。

「ククク…俺すらも魔人からすれば捨て駒って事か? ま、それはそれで構わねえ…俺は戦う事が出来ればそれでいいんだからよ」

 ランブハビはドラゴンに蹂躙される者達を見ても尚笑っていた。

 

 

 

「がはははは! 見たか連中の動揺を! この隙に一気に叩くぞ!」

 ランスは自分の策が完全に嵌った事にいつもの様に馬鹿笑いをする。

「叩くのはいいけど…ドラゴンに任せないの? 私達が行っても危険じゃない?」

 シルキィはドラゴンの暴れっぷりを見て若干引いていた。

 ドラゴンという存在を見るのは初めてだが、まさかあれ程の強さを持っているとは考えてもいなかった。

 まさに強すぎる存在で、あの魔軍が成す術も無く蹂躙されているのだ。

「ドラゴンにばっかりやらせてたら経験値が入らんだろうが」

「レベルの問題ね…ちなみにランス君ってレベルどれくらいあるの?」

「俺様か? えーと確か…」

 ランスは考えるが、結構前の話なので忘れてしまっていた。

「97よ。97。自分のレベルくらい覚えておきなさいよ」

 レンが呆れた声で言う。

「きゅ、97!?」

 シルキィはランスのレベルを聞いて目を見開く。

 この世界には限界レベルというものがあり、誰であろうともその限界を超える事は基本的には無い。

 色々と裏技はあるのだが、基本的にそれにありつける者は少ない。

 それに高い限界レベルがあっても、その限界に辿り着くのも難しいのだ。

 それを考えればランスのレベルはまさに破格だった。

「うむ、100までもう少しだからな。100まで上げればクエルプランちゃんから褒美が貰えるからな」

「…とんでもない話ね」

 ランスの言葉にシルキィは呆れ半分に感心する。

「あ、そうだ。シルキィ、魔物大将軍をぶっ殺したらやらせろ!」

「はあ!? いきなり何言ってるの?」

「俺様は本気だぞ。俺様はお前とやりたい。そのためなら何だってするぞ」

 その言葉にシルキィは大きなため息をつく。

「私にそんな価値なんて無いわよ。ランス君の周りには素敵な女性がいるじゃない」

 シルキィはレンと日光、そしてジルを見る。

 幼い体をしているジルはともかく、レンと日光はシルキィから見ても非常に魅力的かつ、羨ましいくらいの美貌を持っている。

 そしてその二人がランスと肉体関係を持っている事も知っている。

 そんな二人に対して、自分の起伏が少なく女性的な魅力が無いと感じてしまっている。

 勿論シルキィはそんな事は気にしてはいないが、そんな自分に対してランスが欲情するとは思えなかったのだ。

 だが、そんなシルキィの考えはランスには通用しない。

「自分の価値を自分で決めるな。俺様はシルキィだから抱きたいだけだ」

「…そ、そう」

 真顔でそう言われてシルキィは思わず赤面する。

 まさかこんなストレートに言ってくるとは思わなかった。

 勿論ストレートだから良いという事では無いのだが…しかも事情が事情なのだ。

「ランス。それよりも早く行きませんか? このままだとドラゴンに全滅させられますよ。もう一体ドラゴンが来ましたし」

 ランスがシルキィを抱きたいと言っている途中でドラゴンがもう一体飛んできた。

 2体のドラゴンの前には流石の魔軍も太刀打ちなど不可能だろう。

「む、そうか。だったらとっとと行くか。あ、だが答えをきちんと聞かせろ。今すぐにだ!」

「い、今すぐにって…」

 ランスの言葉にシルキィは考える。

 どうして自分がそんな事を考えているのかと思わなくも無いが、こんな状況にも拘らず臆面もなくそんな言葉を放つランスに対して困惑していた。

 だからこそ、自分もとんでもない事を言っていると思い知らされるのは、そう遠くない未来で有る事に気づきもしない。

「魔人! 魔人を倒したらね!」

 その言葉にランスはニヤリと笑った。

 その笑みを見てシルキィは自分の背筋が凍るのが分かる。

「がはははは! 言質を取ったぞ! よーし、とっとと奴等をぶっ殺して魔人もぶっ殺すぞ!」

 ランスは大笑いをしながら魔軍に向かって突っ込んで行った。

 

 

「ククククク…ハハハハハ! どうしたどうした! 俺に喧嘩を売ったんだからもっと楽しませやがれ!」

 黒竜カインの体から凄まじい電撃が放たれ、その余波だけで魔物兵が消し炭になる。

「く…これ以上奴を調子に乗らせるな!」

 ムオバクスはもう覚悟を決める以外に無かった。

 逃げるにしてもやはりこのドラゴンを足を止める必要があった。

 そのためにはドラゴンに対して立ち向かう以外に無かった。

(おのれ…何故こうなった…!?)

 スマシオンが何故かドラゴンの住処に向かい、そこでドラゴンに攻撃を仕掛けたようだ。

 その事でこのドラゴンが攻撃を仕掛けてきたのは間違いない。

 いや、まだこのドラゴンだけで良かったというべきかもしれない。

 いくらドラゴンが強くても、この数の兵士が居れば倒すのは難しくても逃げるくらいの時間はつくれる―――そう思っていた。

「カイン…やり過ぎはよくないよ」

「な…もう一体!?」

 だが、そこにもう一体のドラゴンが現れた。

 黒い竜とは対照的な白い竜―――キャンテルも現れたのだ。

「ば、馬鹿な…!?」

 驚愕するムオバクスを尻目に二体のドラゴンは何かを話している。

「やり過ぎだあ!? 相手は魔軍だぞ!? 俺達の敵だぜ!」

「それは昔の話さ。ククルククルもアベルももう居ないんだ。まあ君に言っても仕方の無い事だけどね…」

「ハッ! とにかく俺には関係ねえ! 喧嘩を売られたんならぶっ殺す! それだけだ!」

 カインは非常い楽しそうに笑うと、その体から凄まじい電気が放たれる。

「い、いかん! 防御しろ!」

「死にやがれ!」

 ムオバクスの指令に魔物兵た盾を構えるが、それを嘲笑う様にカインのブレスが魔物兵を消し炭にする。

 その威力は凄まじく、それこそあの魔人カミーラにも匹敵する…いや、それ以上なのかもしれない。

 それほどまでにドラゴンという存在は強く、そして恐ろしいものだった。

 そしてその時、信じられない報告が部下から届く。

「た、大変です! 人間です! 人間が攻め込んできました!」

「ば、馬鹿な! 人間が何故攻めてくる!? 人間が組織立って動く事など出来ないはずだ!」

 ムオバクスの言葉はおかしくは無い。

 事実、今の時代で人間が組織で魔軍と対抗するなど不可能だ。

 それ程までに人間は魔物によって抑圧されているのだから。

「い、いえ…そ、それがたったの6人のようで…」

「何をふざけた事を言っている! 人間がそんな数で我等に挑んでくる訳が…」

「がははははは! 邪魔だ! 死ねーーーーーーっ!!!」

「う、うぎゃああああああ!」

 その時、場違いな程の高笑いと共に部下の悲鳴が響き渡る。

「白色…破壊光線!」

 同時に強力な魔法が魔軍を包む。

「ク…人間が!」

 ムオバクスはドラゴンだけでなく人間も来た事に苛立ちを隠せない。

 魔物にとっては人間など殺すための木偶であり、自分達に逆らうなど許されない事なのだ。

 そんな人間が襲ってくるなど、ムオバクスには許し難い事だった。

「見つけたぞ! とっとと経験値になれ!」

 そしてその人間はとうとう自分達の前に現れたのだった。

 

 

「がはははは! 突っ込むぞ!」

「了解」

「分かりました」

「はい!」

「いやー、旦那達は本当に無茶苦茶ですねー」

 ランスを先頭に魔軍へと突っ込んでいく。

「な、なんだ!?」

「に、人間!?」

 ドラゴンへの対応で手一杯だった魔軍は、突然攻めてきたランス達に対して対応が出来なかった。

「がはははは! 死ねーーーーーーっ!!」

 ランスの強烈な一撃が魔物兵の一体を打ち砕く。

 その一撃を見て魔軍の中に更に動揺が広がる。

 ドラゴンにやられるのならば理解は出来る、だが、人間にやられるなどありえない―――それが今の魔軍の世界の常識だった。

 しかしランスにはそんな常識など通用しない。

 自分の邪魔をする奴ならば誰であろうと許さない、それが魔人であってもだ。

「エンジェルカッター!」

「業火炎破!」

 そしてレンとジルの放った魔法が更に魔軍へとダメージを与えていく。

「ハッ!」

 日光もランスと共に魔軍へと突撃し魔物兵を斬り捨てていく。

 突然の襲撃に魔軍は対応できなかった。

「う、うわああああああ!?」

「な、なんだこの人間は!?」

「お、俺は将軍に知らせてくる! お、お前達はこいつらを何とかしろ!」

「あ、お前だけ逃げるんじゃねえ!」

 一度パニックになった魔軍は既に士気が崩壊してしまっていた。

 これは魔軍にとっては勝ち戦…いや、戦いでも無いもののはずだった。

 気軽に人間を犯し、飽きたら殺す、それが当たり前のはずだった。

 だが、現実はドラゴンが突然襲って来る事になった。

 その上、人間が襲ってきた。

 これがただ人間が襲って来ただけなら何も問題は無かっただろう。

 しかし、より強大な存在であるドラゴンの方で手一杯で、ランス達に対する対応はおざなりどころかどうしようも無くなってしまった。

 そしてとうとうランス達はドラゴンが襲っている場所の中心地へと進んで行った。

「見つけたぞ! とっとと経験値になれ!」

 ランスは真っ直ぐに、そして最短距離で魔物大将軍に向かって行った。

(信じられない…いくらドラゴンの襲撃に便乗したからってこんな簡単にいくなんて)

 シルキィはこの結果に信じられなかった。

 確かにランスは強いとは思っていた。

 しかし、まさかこれ程までに策略がぴったりと嵌るなんて考えても居なかった。

(この人…本当に普通の人と違うのかも)

 シルキィはランスを見るが、その顔には何とも楽しそうな笑みが浮かんでいる。

 この窮地を何処か楽しんでいるかのような、そんな感じさえ思えてしまう。

「…人間め。調子に乗るなよ」

 ムオバクスは生意気にも人間が自分の前に立った事に怒りを覚える。

 が、その怒りは次の瞬間に霧散する。

「オラァ! よそ見してんじゃねえぞ!」

 カインの強烈な尻尾の一撃が魔軍を吹き飛ばす。

「クッ…ドラゴンが!」

 ムオバクスは苛立ちを隠さずに怒鳴る。

 人間とドラゴン、どちらが厄介なのか直ぐにでも理解する。

 ムオバクスはドラゴンを何とかしようと考えた時、そのドラゴンの動きが止まる。

「…あん? 誰かと思ったらランスじゃねえか! 久しぶりだなおい!」

 そのドラゴンは何処か楽しそうに言葉を放つ。

「む、俺様の名前はドラゴンにも知れ渡っているのか。がはははは!」

「何言ってるのよ。こいつカインじゃない。ほら、ガイズでの時の」

「ガイズ…ああ、ククルククルの時の奴か」

 流石のランスもククルククルの事は覚えており、そこに居たドラゴンの事も覚えてはいた。

 ただ、名前までは憶えては無かったのだが。

「まさか再び会えるなんてな! クックック…カミーラの奴が拘る訳だぜ」

「男が嬉しそうにするな。それにしても何でお前がこんな所にいやがる」

「そんなの一つしかねえだろ。こいつらがドラゴンに喧嘩を売りやがったからな…その喧嘩を買ってやってるんだよ」

「ほー。随分と舐められてるんだな、ドラゴンってやつは」

 ランスの言葉にカインは唇を吊り上げて笑う。

「ああ、そうだな。だから思い知らされてやってるんだよ」

 ランスとカインの会話を聞いてシルキィは複雑な気持ちになる。

(ねえ…これってランス君がやった事よね? ランス君、さも当然のように魔物達がやったという話に持って行ったんだけど…)

(ランス様ですから…こういう事は本当に得意なんです)

(うーん…まあカラーを助けるためだから仕方ないとは思うんだけどね…)

(あはは…)

 シルキィとジルは小声で話し合う。

 まあこれもカラーを助けるためだと割り切れば仕方ないと思うしかない。

 事実、シルキィにもどうすればカラーを助けられたのか、それは全くもって分からない。

「じゃあお前もこいつらを殺しに来たって訳か?」

「当たり前だ。邪魔するなよ。魔物大将軍は経験値を沢山持ってるからな」

 ランスの言葉にカインは唇を吊り上げて笑う。

「そういう訳にはいかねえな。こいつは早い者勝ちだぜ」

「フン、だったら俺様が勝つに決まってるな」

「言うじゃねえか。じゃあどっちがぶっ殺すか…勝負だな!」

「がはははは! 俺様に勝てると思っているのか!」

 そしてランスとカインは同時に魔物大将軍を見る。

「「ぶっ殺す!!」

 その男とドラゴンの声が同時に響き、その剣と爪が向けられる。

 それは魔物大将軍をもってして、死を予感させる程の恐ろしい重圧だった。

 

 

 

「フ…成程、まさかあんな手を使うとは。これはレイが拘る訳です」

 そして遠くからこの戦いを静観している男が居た。

「アイゼル様。本当に良かったんですか? ケッセルリンクの事は兎も角、どうして人間なんて…」

 男―――魔人アイゼルに対して使徒であるガーネットが不思議そうに聞く。

「お前達には話していませんでしたが…私はあの人間を知っています」

「え? アイゼル様が? でもあれはヒューマンで…」

「…アイゼル様が嘘を言う訳ない」

 主の言葉に疑問を投げかけるサファイアをトパーズが笑う。

「トパーズ!」

「まあそれは当然の疑問。だが…やはり何かがあるという事か」

 アイゼルはあの人間に興味を持っていた。

 同じ時期に同じ魔王によって魔人となったレイから話を聞いた時はただ笑っただけだった。

 アイゼルは人間牧場出身という出自のためか、己の弱さを認めたくは無かった傾向がある。

 そのためか、何時しかアイゼルには強い人間を試すという事もしていた。

 あの時にランスと戦ったのも、その延長のつもりだった。

「フフ…ならば見届けるとしましょう。そして…次はその精神力をね」

 アイゼルは実に楽しそうに笑っていた。

 

 

 魔王城―――それはこの世界の絶対的な主の城。

 前魔王ジルと、現魔王ガイの戦いの中でボロボロになったが、魔物を動員して新たな魔王城となった。

 その魔王の城の中で一番危険な場所…即ち、魔王の間という言うべき場所でガイは何も言わずに座っていた。

 ガイは人間を殺す事を認めていたが、同時に殺し過ぎるのも避けていた。

 それはガイの優しさ等ではなく、人間の数をあまりに減らし過ぎる事を止められていたからだ。

「ガイ様」

「バークスハムか」

 魔王の前に現れたのはレーモン・C・バークスハム。

 魔王ガイの側近にして、予知能力を持っていると噂される程に先を見通している魔人だ。

 その経緯からかガイからも信頼されており、他の魔人に嫌われているガイにとっては関係が良好な数少ない魔人だ。

 そのバークスハムが、人間を殺し過ぎるのはガイのためにならない、その言葉をガイは聞き入れた。

 だからこそ、ガイが魔王になった直後よりは人間の殺される数は少なくなっていた。

「どうした」

「いえ…少々お話ししたい事がありまして」

「ほう…」

 ガイは何処か楽しそうな声を出す。

 この魔人の言う事は気味が悪い程に良く当たる。

 そのバークスハムが話があるという事は、それ程までに重要であるという事だ。

「一つの命が落ちると。ですが…それは良き未来になると」

「フッ…面白いな。誰が死ぬか賭けるか?」

「御冗談を」

 ガイの言葉にバークスハムは苦笑する。

(フッ…あの人間、再び私の元へと現れるか…)

 ガイは今でもあの人間の事は覚えていた。

 人間でありながらジルに味方をした者であり、ジルもまたその人間を助けた。

 ガイはその人間…ランスを利用してジルを封印する事に成功した。

 その事でランスによって強い敵意を向けられているが、ガイはそれを楽しんでいるようだった。

 同時に、自分の前に再び現れる事になると確信もしていた。

(退屈させてくれるなよ…人間)

 ガイは珍しく本当に楽しそうに笑っていたのだった。




期間が長くなって申し訳ないです
ちょっとランス10をもう一度プレイしたり、03で丁度良いシーンを探してたりと色々とやってました

そしてプレイしてて思った事…それは魔物大将軍の強さ
ヘルマン解放戦でカオスがランス一人じゃキツイと言ってたのに、
自動解放戦では結構あっさりやられる魔物大将軍
特にウルザにあっさり負けたツォトンとか…
無敵結界の無い魔人級の強さを持つみたいですけど、割とあっさりと倒されてるんですよね
なので強さの基準にちょっと迷いが出まして…今更ではあるんですけどね

ワーグが何時魔人になったのかが分からない…分からないので独自設定で行きます
サテラが一番若い魔人なのでその前に
確か織音さん設定で第一次魔人戦争で人間が魔法使いに反旗を翻した原因に、
ジークやワーグ辺りという言葉を見た記憶が有るのでその辺りには居た事にします
というかそのつもりでプロット組んでたよ…
もし間違いがあったら申し訳ありません
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