ランス再び   作:メケネコ

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変異種との戦い

 ランス達が魔物大将軍の後を追っていると、そこには魔物の部隊が居た。

 少し変わった魔物将軍が魔物大将軍を待っていた―――そう見るのが自然だった。

 しかし、そこからはあり得ない事が起きた。

 魔物将軍が魔物大将軍を殴り、そしてその体を足蹴にしていたのだ。

 そして魔物将軍がランス達に気づくと、その顔に満面の笑みが浮かぶ―――実に好戦的な笑みを。

「よう人間。待ってたぜ」

 そう言って魔物将軍―――ランブハビは痙攣しているムオバクスの頭を蹴りつける。

「何だお前。俺様の経験値を横取りしおって」

「そいつは悪かったな。まあ早い者勝ちってやつだ。俺もこいつを殺したくてたまらなかったからよ」

 悪びれも無く言う魔物将軍に対しジルの中に居るスラルは眉を顰める。

 基本的に魔物には絶対的なヒエラルキーがある。

 魔王をトップにその下に魔人、使徒、そして魔物達…その魔物の中のトップが魔物大将軍だ。

 しかし、目の前の魔物将軍はその魔物大将軍を躊躇いなく殺した。

(この魔物大将軍の後ろに居たのは多分メディウサのはず…こいつはそのメディウサの意向を無視したって事?)

 魔物大将軍の中には魔人に不満を持つ者も存在するのは分かっている。

 同じように魔物将軍の中には魔物大将軍に不満を持つ者も居るだろうが…それにしてもまさか殺すまで行くとは思わなかった。

(こいつはメディウサを恐れていない…いや、恐れない理由が有るって事?)

 このスラルの考えは若干間違っており、実際にはランブハビが異端の魔物将軍というだけだ。

 だが、元魔王であるスラルなので、この状況を深読みしてしまうのはある意味仕方が無かった。

「強いな、お前達」

「当然だ。俺様は世界一強いからな」

「クックック…大きく出やがったな。ま、こいつが逃げ帰ってくるんだから相当なもんだ」

 ランブハビは大きくため息をつくと、次の瞬間に大笑いをする。

「ハハハハハ! 俺は実に運が良い! まさかこんな奴が俺の前に現れるなんてな!」

「…ランス、この魔物将軍は一体」

「知らん」

 日光には目の前に居る魔物将軍が非常に不気味なモノに感じられた。

 同族であり自分の上の存在を侮蔑し、そして殺す…人間にもそういう奴は居るが、この魔物将軍はそれを隠そうともしない。

「さて、次は俺と戦ってもらうぜ」

「断る。面倒くさい。俺はこの馬鹿を殺せればそれでいいからな」

「つれねえな…でもよ、俺が魔人メディウサの城の地図と奴の城の中の魔物の動きを知っていると言ったらどうだ」

「何だと」

 その言葉にランスの声色が変わる。

 ランスは魔人メディウサを殺すつもりなのは間違い無いが、何故この魔物将軍がこんな事を言ってくるのか。

 まるでランスの目的を知っているかの言葉にはランスも考えさせられた。

「ああ、俺には別に裏はねえよ。あくまで俺には、な。俺はお前と戦いたいだけだ。俺を倒せばメディウサの情報が手に入る、悪くない条件だと思うぜ」

 そう言うとランブハビの体から凄まじいプレッシャーが溢れてくる。

 その気迫にはシルキィも思わず戦慄してしまう程だ。

「ランス君…この魔物将軍、これまでの魔物将軍とは違うわよ」

「俺様には一緒だ一緒。姿が少し変わっているだけだ」

 ランスも剣を抜く。

「何が条件だ。お前はそんなの関係無しに俺様と戦いたいだけだろうが」

 その言葉にランブハビは笑う。

「ああそうだ。間違っちゃいねえ。そんなの関係無しに俺はお前と戦うだけだぜ!」

 そう言ってランブハビはランスに向かって突進してきた。

 その速度は魔物将軍とは思えないくらいに素早かった。

 ランスも鈍重そうに見える魔物将軍がこれ程のスピードで向かってくる事に虚を突かれる。

 それでもランスは剣を抜くと、ランブハビが抜いた剣を受け止める。

「これくらいは止めるか! それくらいやってくれなくちゃなあ!」

 自分の剣を受け止めた事にランブハビは狂喜する。

「何だお前。生意気にも剣を使いおって! お前等は原始的に鉄球でも振り回してりゃいいんだ!」

 ランスは力任せにランブハビを跳ね飛ばそうとするが、その体は動かない。

 ランブハビの体格が一般の魔物将軍より一回りは巨体である事、そして何よりもランブハビには技術があった。

「お前等! 存分に楽しみやがれ! だがこいつは俺がやる!」

「将軍の声がかかったぞ! 俺達も楽しもうぜ!」

「お供しますよ! 将軍!」

 ランブハビの声にその背後に居た魔物隊長、そして魔物兵が動く。

 魔物兵の数は決して多くは無いが、それでも200は超えている。

 それが一斉に襲って来たとなっては流石のランス達も危ない―――それが普通の考えだろう。

「ちょっと数が多いわね…ジルも今は役に立てないし、ちょっと本気出すか」

 レンは魔物の襲撃にも全く慌てる事無く剣と盾を構える。

「魔物兵は私がやるから、そっちは魔物隊長を倒してよ」

「レン、これほどの数の魔物兵を相手にするのは…」

「いいから。シルキィは魔物隊長を倒しなさいよ。ハッキリ言えば私はあなたが思っているよりも数倍は強いから」

 シルキィはレンの言葉に一瞬眉を顰めたが、襲い掛かって来る魔物隊長に視線を移す。

「俺はケンダル! お前も強そうだな! 俺と戦え!」

 魔物隊長ケンダルが大剣を構えてシルキィに襲い掛かって来る。

 シルキィはリトルでケンダルの帯剣を受け止める。

「クッ…!」

「その細腕で止めるか!」

 ケンダルと名乗った魔物隊長の腕は相当に立つとシルキィは感じ取った。

(この魔物隊長…前に戦った奴よりも強い)

 シルキィはケンダルの剣を受けて顔を歪めた。

 これまでにシルキィは何度も魔物…モンスターではなく魔物兵とも戦って来た。

 確かに魔物兵は普通のモンスターよりも強かったが、強さは画一だった。

 デカントのような巨体も無ければ、ハニーの厄介なハニーフラッシュも無かった。

 確かに魔物隊長は魔物兵よりも強かったが、それでもシルキィ…後の魔人四天王の地位まで上り詰めた彼女にとっては、人間の時でもそれ程強いとは思わなかった。

 この程度に苦戦をしていられない、という思いもあったかもしれないがとにかくシルキィは人の頃から強かった。

 だが、目の前の魔物隊長はそのシルキィを持ってして強いと思わせる力があった。

「でも…私はその程度で負けてられない!」

 シルキィはリトルを振り回しケンダルの大剣を弾く。

 ケンダルはそれを感じ取って驚くのではなく、その顔に喜びを浮かべる。

「ハハハハハ! 将軍の言う通りだ! 強い奴の周りには強い奴が集まる!」

 ケンダルは並の魔物隊長を上回る力でシルキィに襲い掛かった。

 そして日光ももう一体の魔物隊長であるムラサスと刃を交えていた。

「JAPANの侍という奴か! 本物を見るのは初めてだな!」

 魔物隊長ムラサスもまた日光の強さに気色を浮かべていた。

 ムラサスは大剣ではなく普通の大きさのロングソードの二刀流という、魔物兵としては珍しいスタイルだった。

「この動き…ソードマスターですか」

「分かるか!? スーツを着ようとも戦い方は変わらない。俺は異端のモンスターって事だ!」

「成程…この剣筋、道理で」

 日光はムラサスの二本の剣を刀一本で捌く。

「ハハハ! 行くぞ、侍!」

 ムラサスは二本の剣を振り回し日光に猛攻をかける。

 その速さと重さはモンスターのソードマスターとは比較にならない程に重い。

 だが、日光はその剣を1本の刀で防ぐ。

「確かに速い。ですが、私は貴方よりももっと強い剣士を知っている」

「それは結構! だが、戦いは終わるまでは分からんさ!」

 日光とムラサスは互いに何度も剣を打ち合わせる。

 そしてランスと相対するランブハビは、

「ハハハハハ! やっぱりやるじゃねえか! お前を選んだのは間違って無かったぜ!」

「何を訳の分からん事を!」

 喜々としてランスに剣を振り回していた。

 一見腕力に任せて無造作に振っているように見えるが、その実は基本は出来ている。

 ランスから見ても結構な技量ではあるが、それでもリックやロレックスには及ばない。

 だが、この魔物将軍はそれらのランスが知る剣士とは違って厄介な所がある。

「こいつはどうだ! 電磁結界!」

 それは魔法が使えるという事だ。

「うぐ」

 魔人に比べれば大したことは無いのだが、それでも並の魔法使いよりも遥かに上だ。

 いくらランスが魔法防御力の高いアイテムを持っていると言っても、それはリズナのような完璧な防御ではない。

「隙ありだぜ!」

 ランスの態勢が若干崩れた所にランブハビは斬りかかってくる。

 バランスは崩す事はあっても、それでランスが斬られるという事は無い。

 だが、ランスからすれば鬱陶しい事この上ない。

「いい加減に死ね!」

「そう簡単に死んでやれねえな!」

 あからさまに不機嫌なランスに対し、ランブハビは笑いながら剣を振るう。

 直情的な剣だが、その分早く重い。

 おかげでランスも若干ではあるがやりにくい。

 単純な腕力とスタミナに関して言えば完全にランブハビに分がある。

 相手もそれを理解した上でランスを攻撃しているのだ。

「どうした! 早く俺を倒さないとお前のお仲間さんがピンチになるぜ!? 俺はこいつらを止める気はねえからな!」

 ランブハビの言葉に合わせるように魔物兵達の怒号が響く。

 魔物兵そのものの数は多くは無いが、それと反比例するように士気が高い。

 そうなると厄介な事にはなるのだが、ランスはそれを鼻で笑う。

「フン、こんな雑魚共が群れた所で結果は変わらんわ! 死ぬのはお前だ!」

 その言葉と共に今度はランスから踏み込む。

 今のランスの動きは常人で捕らえる事は不可能な程に速い。

 それ以上に、伝説の技能であるLV3技能を身に着けたランスの動き、そして剣捌きはそれ以上に相手にとって不可解な腕前なのだ。

「おっ!?」

 ランスからの攻勢にランブハビは思わず後退する。

 あまりのランスの剣の鋭さに背筋が凍ったのだ。

 膂力で勝るはずの自分がランスの剣を受けて思わず下がってしまった。

 だが、ランブハビはそれを恥とは思わない。

 逆にニヤリと笑うとそのままランスに向かって逆に踏み込む。

 ランスを遥かに上回る体格を用いてランスを弾き飛ばすつもりなのだ。

 ランスはそれを見抜き、そのままカウンターの形でランブハビの腹を刀で斬ろうとした時、

「そいつはまだまだ甘いな!」

 ランスの刀は確かにランブハビの体を斬った。

 魔物将軍の腹の中には頭脳となる人間が入っており、腹が割れれば魔物将軍でも倒れるはずだった。

 だが、ランブハビの腹に刀が入ったにも関わらず、ランブハビはまるでこたえた様子が無かった。

「何だと!?」

「生憎俺は特殊な魔物将軍のようでなあ。この頭脳は他の奴の脳を必要としていねえ。この俺の腹の中はがらんどうなのよ」

 ニヤリと笑ってランブハビはランスの顔に向けて拳を放つ。

 ランスはそれを剣の腹で受け止めるが、その威力に体が弾き飛ばされる。

「だからこの腹は俺の弱点じゃねえ。俺を殺したけりゃココを狙いな」

 そう言ってランブハビは自分の頭を指さす。

 それを見てランスは詰まらなそうな顔をする。

「なんだ、褒美は無いのか。じゃあお前なんぞに用は無い。さっさと死ね!」

「ハハハハハ! 魔物将軍を褒美と言いやがるか! おもしれえ奴だぜお前は!」

 ランスとランブハビが激しい打ち合いをしている中、レンは一人大量の魔物に囲まれていた。

 囲まれていたのだが―――追い詰められたような顔をしているのは魔物兵の方だった。

「ほらほら、そんな動きじゃ死ぬわよ。あ、もう死んでるか」

 レンの剣が魔物兵を両断し、その盾で打ち付けれた魔物兵の頭が砕け散る。

「こ、こいつ…滅茶苦茶強いぞ!?」

「流石はランブハビ将軍が獲物と認めた奴だぜ…!」

 追い詰められた顔をしている魔物兵だが、その顔には隠しきれない喜色が浮かんでいる。

「面倒くさいわね。こういう戦闘行為そのものを楽しむ奴って本当に嫌よね」

 レンは次々に向かってくる魔物兵を捌きながら呆れたように声を出す。

「ま、ジルを狙ってこないのは楽でいいけどね」

「はっ! あんな戦えないガキなんぞ戦う価値もねえ! 俺達は強い奴と戦いたいんだよ!」

 赤魔物兵がレンの言葉を鼻で笑って巨大な斧を構えて襲い掛かって来る。

 普通の魔物兵よりも巨大な斧は普通のガードで有ってもあっさりと砕くであろう。

 だが―――

「はい残念」

 レンは斧を盾で防ぐ。

「ば、馬鹿な!? 俺の斧が!?」

 防ぐだけでなく、魔物兵の斧が逆に傷つきヒビが入る。

「武器壊し、私が使えばこんなものよ。エンジェルカッター!」

「うおおおおおおおお!」

 レンは魔物兵を弾き飛ばすと、そのまま魔法を放って魔物兵を絶命させる。

「次は俺だ!」

「いいや俺だね!」

 そんな魔物兵の死に興奮したように魔物兵達がレンに群がる。

 レンはそんな魔物兵達にうんざりした顔をするが、それでもその力は全く衰えない。

「全部死になさい!」

 レンの強烈なプレッシャーに魔物兵は一瞬足を止めざるを得なくなる。

 そこにレンの剣が魔物兵を両断し、盾で魔物兵を撲殺する。

「ライトニングレーザー!」

「スノーレーザー!」

 灰色魔物兵が魔法を放ってくるが、レンは慌てずに魔法を唱える。

 それは強力な魔法バリアとなってレンの体を包む。

 流石にレーザー級の魔法、それも複数の魔法を防ぐのは難しいが、それでもレンの体を直接傷つけるには至らない。

「いやー、あねさん本当に強いっすねー。楽でいいわ」

「…ベネットさん本当にリラックスしなくても」

 レンが魔物兵と戦っている間、ジルとベネットは蚊帳の外になってしまっている。

 人質にならないのは有難いが、こうして何も出来ないのはジルとしてはもどかしい。

 そんな二人を見て魔物兵がヒソヒソと話している。

「お前、あっちは行かないのか?」

「いやー…なんかあっちに行ったら負けなような気がしないか?」

 魔物兵は欠伸をしているベネットを見る。

「…そうだな。得体の知れない奴ってのもあるんだが、確かにあっちに行ったら負けなような気がする」

「誰もあっちに行かないのがその証拠だろ」

「そうだな。見なかった事にするか」

 そう言ってベネットから視線を外す。

「…うーん、どうしてあっしは魔物兵からも無視されるんでしょ」

「まあ…ベネットさんの特技としか言えないかなあ」

 憮然とするベネットに対し、ジルは曖昧に笑うしか無かった。

 その時、ジルの背後に人が現れる。

「…どうなってるのこの状況」

「あ、始祖様」

 ジルの背後に現れたのはハンティだった。

「向こうはドラゴンが暴れてたのは分かったけど、こっちはどういう状況?」

「説明しますね」

 ジルはハンティに説明をする。

 魔物大将軍との戦い、そして魔物大将軍の最期。

 そして新たな戦いを。

「ふーん。変わった魔物だね。ま、でも私には関係無いかな」

 ハンティはその顔に獰猛な笑みを浮かべる。

「うわ出た始祖様のその悪い顔」

「うっさいね。とにかく、私にはやる事があるからやるだけ。まあ私に注意を払わなかった奴が悪いのさ」

 そう言ってハンティは魔法の詠唱を始める。

 ハンティは魔法LV3の持ち主で、その技量にあった魔法を使える。

 これはそのレベル3の魔法では無いが、それでも彼女が使えば恐ろしい威力となる。

「雷神雷光!!」

 凄まじい電撃が魔物達に襲い掛かる。

「え、ぎゃあああああ!」

「な、なにが起きて…うがああああああ!」

 雷神雷光の威力と範囲は凄まじく、一般の魔物兵などひとたまりも無かった。

「あらハンティ。こっちに来たんだ」

 ハンティの魔法は敵味方をきちんと識別して魔物だけを襲う。

「ああ…あんた一人で抑えてたんだ。ま、アンタなら出来るか」

 魔物の死体の中心に立っていたレンを見てハンティは肩をすくめる。

「で、他は?」

「見てれば分かるでしょ。ま、今更魔物隊長や魔物将軍に負けるような事は無いでしょ」

 レンも少し唇を吊り上げて笑う。

 そしてその言葉が正しいという事をハンティはしっかりと理解する事になる。

 

 

「雷神雷光!」

 その言葉と共に凄まじい雷光が魔物兵を襲う。

 それはシルキィと打ち合っているケンダルも例外では無かった。

「ぐっ!?」

 突然の強烈な電撃にケンダルの動きが止まる。

 それは魔物隊長であるケンダルにも明確にダメージを与えられるほどの一撃だったからだ。

「貰う!」

 そしてシルキィはその瞬間を見逃さない。

 確かにシルキィは卑劣な手段を嫌い、無用な犠牲を嫌う心優しい性格だ。

 だが、魔物に対しては遠慮が無いのも事実だ。

 突然の魔法にシルキィは慌てる事無くケンダルへと攻撃を加えた。

「はあああああ!」

「な、ぐ!」

 シルキィの武器であるリトルが斧のような姿へと変わり、その一撃がケンダルの肩を捉えた。

 その体格からは信じられない程の威力にケンダルは驚愕する。

 が、ケンダルもまた並の魔物隊長では無かった。

「この!」

 ケンダルは肩に斧が突き刺さったままシルキィに向かって体当たりをしようとする。

 魔物の膂力と体格に任せてシルキィに向かって行くが、

「甘い!」

「何だと!」

 ケンダルの予想に反し、シルキィはその体を受け止めた。

 それどころか強烈な力でケンダルを押し返す程だ。

「ば、馬鹿な!?」

「生憎…私はこんな所で止まっている訳にはいかない」

 シルキィはそのままケンダルの体を弾き飛ばす。

 そしてシルキィの武器の形が変わり、鋭い槍へと姿を変える。

「フ、ハハハハハ! これこそ…戦い…!」

 自分の最期を悟ったケンダルは、その鋭い槍に自ら突っ込んでいく。

 その槍はケンダルの胸を貫くが、同時に両手で構えた剣でシルキィを突き刺そうとする。

 シルキィは慌てる事無くその剣を避け、ケンダルに止めを刺す。

 ケンダルは一瞬痙攣するが、直ぐにその力が抜けていく。

「あの魔法が無かったらもっと苦戦していたわね。でもこれが戦いだもの」

 シルキィはこれも戦いだと認識している。

 そして自分は負ける訳にはいかないのだ…この世界を魔王の手から守るためにも。

 

 日光とムラサスの戦いにも変化が現れる。

「雷神雷光!」

 ハンティの放った魔法はムラサスにも影響する。

「くっ!?」

 突如として襲って来た雷にムラサスも思わず足が止まる。

 そして目の前に居る侍に対し、その隙は命とりだった。

 何よりも、日光にはかつての仲間にはホ・ラガという凄まじい魔法使いがいた。

 彼と共に長い間を戦って来た流れは日光の体の中に根付いていた。

「ハッ!」

 日光の刀がムラサスの持つ剣の一本を断ち切る。

 ムラサスはハンティの魔法のダメージで踏ん張る事が出来なかった。

 そのせいで日光の刀…富嶽の切味にムラサスの持つ剣が持たなかった。

「終わりです」

「…そのようだ」

 ムラサスは日光の手に刀を見て笑みを浮かべる。

 もう自分の手では日光の刀を止められないのは分かっていた。

 だが、それでもムラサスは構わなかった。

 そして日光の刀がムラサスの胸を斬り裂く。

「み、見事…」

 ムラサスはそのまま笑みを浮かべながら地面に倒れる。

「1対1でも負けるつもりはありませんが…これが戦いですから」

 日光は刀を収めると、残ったランスの戦いを見る。

 

「雷神雷光!」

 その言葉と共にランブハビにも確かに電撃が放たれた。

「がはははは! 死ねーーーーーーっ!!」

 ランスもこれを好機とみなし、畳みかけるようにランブハビへと攻撃を仕掛けた。

「甘いな!」

 だが、ランブハビはニヤリと笑うと、ランスの攻撃を受け止めた。

「む」

「ハハハハハ! 生憎と俺は魔法防御力も高くてなあ! それくらいじゃ死んでやれねえな!」

 笑いながらランブハビはランスをその膂力で弾き飛ばした。

「貰ったぜ!」

 そう言ってランブハビは背中から何かを取り出す。

 ランスにはそれが何か分からなかったが、それは鞭のようにしなりランスの腕に巻き付く。

「あだだだだ!?」

 そしてそのままランスの体に電流が流れる。

「ハイパーボイルを喰らえ!」

 尚もランスに強力な電流が流れるが、ランスは自分に巻き付いている糸のようなものを何とか斬る。

「これくらいじゃ死なねえか! それでこそやりがいがあるってもんだぜ!」

「調子に乗るな!」

 電撃を受けて体が痺れたランスではあったが、それでもランスの持つ耐久力、そして装備している防具のおかげで致命傷には至っていない。

「行くぜ! ライトニングレーザー!」

 ランブハビは畳みかけるようにランスに向かって魔法を放つ。

 それはランスに当たるが、それでもやはりランスには致命傷にはならない。

(魔法は効果が薄いか…ならよ!)

 ランスに対して魔法は効果が薄いと判断すると、ランブハビは再び武器を構える。

 そしてランスに向けて細い糸が放たれる。

 ランスはそれを剣で斬ろうとするが、ランブハビはそれを予期していたかのように剣に糸が巻き付く。

 ランブハビはそれを見てニヤリと笑う。

「止めだ!」

 ランブハビが電流を流そうとした時、ランスは剣から手を離した。

「何!?」

 ランブハビは自分の獲物を躊躇いなく手放したランスに驚くが、それも想定の範囲内ではあった。

(このまま獲物を奪えば良いだけよ!)

 ランスの剣が恐ろしい切れ味なのは分かっていた。

 その驚異の一つが無くなるならそれはそれで好都合、そう思いランブハビはランスの剣を引き寄せようとした。

 だが―――その剣は動かなかった。

「何だと!?」

 その重さに逆に自分の体が引き寄せられる形になり、バランスを崩してしまった。

「死ねーーーーーっ! ランスアターーーーック!」

 そしてランスはそれを見て刀を抜き放つとそのままランスアタックを放つ。

「チッ!」

 ランブハビは躊躇いなく自分の武器から手を離し、それを避ける。

 衝撃波がランブハビを襲うが、それはランブハビの体に当たらない。

 ランブハビが何とか態勢を立て直そうとした時、その足が突然と滑ってしまう。

「何だ!?」

 思わずランブハビは足元を見てしまう。

 それくらいにランブハビの足元に不気味な感触があったからだ。

 そしてランブハビの足元にあったのは―――不気味なゴーグルをかけた一つの顔だった。

「ムオバクス…!?」

 それは魔物大将軍ムオバクスの腹の中にある、ムオバクスの本体とも言うべき顔だった。

(あいつ…最初からこれを狙ってやがったのか!?)

 ランスの放った衝撃波はムオバクスの腹を斬り、その中身がランブハビの足元に流れていたのだ。

 ランブハビがそれを認識した時には、ランスは既に自分に肉薄していた。

「こいつで止めだ」

 ランスはニヤリと笑うと、いつ拾ったのかその手にはロングソードが握られている。

「ランスアターーーーーーック!」

 そしてランスの必殺の一撃がランブハビの上半身を通り、下半身にまで達した。




本当に遅くなってまして申し訳ないです
インフルが来るとか厳し過ぎますよ…
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