ランス再び   作:メケネコ

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動く魔人達

 ランスの一撃はランブハビを縦に斬り裂いた。

「グ…おおおおおおおお!」

 ランブハビは怒号を上げながら倒れる。

「フン、手間取らせおって」

 ランスは肩で大きく息をしながら剣を仕舞う。

「ククク…やるじゃねえか…」

 ランブハビは自分が死ぬのを理解していながらも笑う。

「楽しかったぜ…人間」

「フン、そんな事よりとっととメディウサの城の地図をよこせ」

「ヘッ…本当に魔人とやる気かよ…」

 ランスの言葉にランブハビはむしろ嬉しそうに笑う。

 そして残った腕で懐から地図を取り出す。

「やるよ…ま、上手く使いな」

 ランスはランブハビから地図を取る。

 そこには確かに地図が描かれていた。

 尤も、それが本物かどうかはまだランスには分からないが。

「がはははは! これがあればもうお前に用は無い。きちんと止めをさしてやる」

「楽しい戦いだったぜ…」

 ランスはランブハビの頭に剣を突き刺す。

 ランブハビは一度痙攣した後で完全に動かなくなる。

「結構苦戦したみたいね」

 レンがランスに回復魔法をかける。

「アホ。苦労なんぞしとらんわ」

「良く言うわよ。最後の電撃で結構ダメージ受けてたでしょ。あれ、魔法じゃないみたいだからドラゴンの加護が意味無かったでしょ」

 事実、ランスは結構なダメージを受けていた。

 この魔物将軍の強さは本当に大したもので、魔物大将軍ムオバクスよりも遥かに手応えがあった。

 実際のモンスターの強さは魔物大将軍が上だろうが、この魔物将軍には魔人や使徒等の上位の存在にありがちな油断が全く無かった。

 なのでランスとしては珍しく真っ当に戦って勝利をした形になる。

「お疲れさん。まさか本当に何とかなるなんてね」

 ハンティは若干ランス達に呆れた表情を浮かべながら近づいてくる。

「やっぱり旦那って滅茶苦茶でやんすねえ。でも、それでも何とかしちゃうんだから不思議」

「ランス様! 大丈夫ですか!」

 ジルはランスに対して本当に心配そうに駆け寄って来る。

「大した事無いわ。だからお前もそんな顔をするな。辛気臭い」

 ランスはジルの頭に拳骨をする。

「いたっ! えへへ…良かったです」

 何時もの調子のランスを見てジルは安心したように笑う。

「取り敢えず戻りませんか? ランスも少なくないダメージを受けましたし」

「だから大したこと無いと言ってるだろうが」

 日光の言葉に何時もの様に声を荒げるランスだが、突如としてこの場に場違いな程の拍手が聞こえてきた。

「お見事、と言いましょうか。流石は魔人ともやりあった人間…という事でしょうか」

 その言葉に全員が戦闘態勢を取る。

「お久しぶりですね。まさか人間に対してこんな挨拶をするとは思ってもいませんでしたが」

「魔人…!?」

 日光は突然現れた存在に最大限の警戒をする。

 その声の主は間違いなく魔人だった。

 美しいとも言えるまでの美形だが、そこには何処か恐ろしさも感じられる。

「ええ、私はアイゼル。魔人アイゼル。まさかこんな形で再会するとは正直驚いてますよ」

 ランス達の目の前の現れたのは、魔人の一人であるアイゼルだ。

「お前か」

 ランスも流石に魔人アイゼルの事は覚えていた。

 LP期においてヘルマンを利用してリーザスを制圧した魔人の一人。

 そして同じ戦いでランスが倒した魔人でもある。

 更には―――GL期においてランスが一度剣を交えた存在…それもカラー関係で。

「これが…魔人」

 魔人アイゼルの圧倒的な存在感にシルキィは背筋が凍る。

 魔物大将軍も強かったが、目の前に居る本物の魔人からはそれ以上の強さを感じ取ったのだ。

「見事に魔物大将軍を討ち取りましたか。まあメディウサを追い込んだ時点であなた達の強さは理解していましたが」

 アイゼルはそう言って剣を抜く。

「さて…今度は私と戦ってもらいましょう」

 そう言うとアイゼルから凄まじい殺気が放たれる。

「全く…次から次へと!」

 ハンティは唇を噛みしめる。

 まさか魔物大将軍の後に魔人が出てくるなんて考えもしなかった。

(ケッセルリンクがこの状況だからか? でもカラーを狙っていると言うよりもこいつを狙って来たか)

 ハンティはランスを見る。

 ランスは不運か幸運か…魔人と縁がある。

 一方では魔人に命を狙われ、一方では魔人から愛される存在だ。

 そしてアイゼルは前者なのは間違い無いだろう。

「あなたが魔人の無敵結界を破れる事は知っています。その力…見せてもらいましょう」

 アイゼルは魔剣カオスとそれの持ち主であるガイの事はよく知っている。

 自分と同じ魔王から魔人となった事、そして同じ人間出身という事もあるが、過去に人間だった頃のガイとも戦った事がある。

 その時に、魔剣カオスによって無敵結界を斬られており、魔人の無敵結界も万能では無い事を知っていた。

 そして同時期に魔人メディウサも呪いを受けた…という事は、メディウサの無敵結界も破られたという事。

 ならばその相手は…この人間しかいないのだ。

「ライトボム!」

 突然の魔法がアイゼルに炸裂する。

 それはアイゼルに当たる前に無敵結界に阻まれるのだが、当然レンにはその事は織り込み済みだ。

 その上で敢えてはなって見せた。

 その理由は唯一つ―――ランスがアイゼルを攻撃するチャンスを作るためだ。

 レンの魔法に合わせてランスはアイゼルへと向かって行った。

 その手に聖刀日光を手に取って。

 アイゼルは膨大な光に目を細めていたが、当然ランスの気配は感じ取っていた。

 その研ぎ澄まされた強力な殺気はアイゼルをしてその体を強張らせた。

 人間の殺意ともう一つ別の強い殺意…それを強烈に感じ取ったからだ。

(これは…あのカオスにも似た殺意。ならば…!)

 アイゼルはランスの放った刀を避けた。

 本来ならばしなくてもいい行動だが、アイゼルは本能からその行動を取った。

 同時にパリンという音がして自分の無敵結界が破られた事も理解した。

「成程…それこそが無敵結界を無効にする…いえ、斬る事が出来る力という事ですか。カオスと同じ、という事ですね」

「カオスを知っていますか」

「ええ。私もかつて現魔王ガイと剣を交えた身…その力もね」

 アイゼルはランスの手の中にある刀を見て薄く笑う。

 この感じ…カオスのような濃厚な殺意は無いが、代わりに鋭利な殺意を感じる。

「これでメディウサを呪ったという訳ですか…」

「そうだ。次はお前もこいつでぶっ殺すだけだ」

「あなたが言うと冗談には聞こえないのが面白い所ですね…レイがあなたを狙う訳です」

「あいつ…まだランスを狙ってるんだ」

 懐かしい名前が出た事にレンは呆れた声を出す。

 あの男もまたランスに影響を受けた存在の一人なのだろう。

「だが…それだけで魔人を倒せるとは思わない事です」

 魔人アイゼルの魔人としての気配が濃厚になる。

 つまり、アイゼルが本気を出してきたという事だ。

「ランス…どうやら本気のようです」

「フン、カミーラに比べれば雑魚だ雑魚。大したことない」

「まあ…あの魔人カミーラに比べればそうでしょうけど」

 日光はランスの言葉に呆れたような声を出す。

「事実だ事実」

 ランスはこれまで何体もの魔人を倒してきている。

 その中には魔人四天王のカミーラ、元四天王のノスとザビエルも居る。

 それらに比べればアイゼルが実力で劣るというのは事実ではある。

 しかしそれでも、魔人というだけで人間よりも遥かに強い。

「フッ…言ってくれますね。ですが、その口がいつまで続きますかね。業火炎破」

 アイゼルは唇を吊り上げて笑うとランス達に向けて魔法を放つ。

 その威力は確かに普通の人間に比べれば遥かに強力だ。

「フン!」

「む」

 だが、その炎はランスが剣を振るうとその剣に食われるように消えてしまう。

 炎の範囲が広いので完全に防げる訳では無いが、それでもランスに対しては致命傷には程遠い。

 ランスはそのままアイゼルに斬りかかる。

 そして日光とアイゼルの持つ剣が火花を散らす。

「これが…あなたの剣という訳ですか」

 アイゼルはランスの剣を受けて素直に称賛する。

 その剣はそれ程までに重かった。

 魔人故に手が痺れるという事は無いが、その重さには驚かされる。

(剣だけならばガイをも上回るか)

 魔人の中には剣を使う者も多い。

 実際ガルティアの剣技は見事なものだし、あの新たに魔人四天王となったケイブリスも剣を使うと聞いている。

 アイゼルは見た事は無いが、あの魔人ケッセルリンクも魔法だけではなく剣を使うと聞いている。

 だが、その中でもアイゼルが知っている中でも凄まじい技を持っていたのがガイだ。

 ガイは魔法だけでなく、剣の腕も素晴らしい魔人だった。

 しかし、目の前の人間はそのガイをも上回っている。

「以前に会った時はあなたの剣の技を味わえませんでしたが…なるほど、レイが執着する訳です」

「知るか。とっとと俺様の経験値になれ!」

 ランスは日光を滑らせ、アイゼルに向けて一撃を放つ。

 アイゼルはその剣を避け、ランスに反撃をしようとする。

「はあああああ!」

 その二人の戦いにシルキィが突っ込んでいく。

 リトルを手にアイゼルに向かってその斧を振るう。

 その斧はアイゼルの体に当たるが、アイゼルは全く応えた様子は無かった。

「成程…あなたも強い。ですが、彼には及ばない」

 アイゼルが剣を振るうと、シルキィの鎧を形成していたリトルが砕ける。

「クッ!」

 その衝撃にシルキィは膝をつくが、それでも諦める様子は全く無い。

 そのままアイゼルに向かって突っ込んでいく。

「無理するんじゃないわよ! グレイトライト!」

 レンの魔法がアイゼルに炸裂する。

「! これは」

 アイゼルはその魔法の威力に驚く。

(まるで使徒…いや、魔人級の魔力と言ってもいい。無敵結界がある時は感じませんでしたが…)

「死ねーーーーーーーっ!」

 そしてランスがアイゼルに突っ込んでいく。

「フッ」

 アイゼルはランスの刀を受け止める。

 が、次の瞬間ランスの右手に握られた剣がアイゼルの脇腹を斬り裂く。

 アイゼルはランスから距離を取ると、ランスに斬られた脇腹に触れる。

 傷は浅いが、無敵結界を斬られたという事を改めて自覚する。

「なるほど…久しぶりの感覚ですね…斬られるというのも。だが、それだけでは魔人は倒せない」

 アイゼルが手を離すと、その傷は既に消えていた。

「ランス。やはり私で魔人の再生能力を殺さなければいけません」

「分かっとるわ。面倒だな」

 日光の言葉にランスは日光を構える。

 アイゼルの脇腹を傷つけたのはランスの持つ剣だ。

 これは切味や使いやすさはカオスや日光を上回る。

 だが、相手が魔人ならばやはり特効の効果があるカオスと日光の方が効率が良い。

 それに魔人には強力な再生能力がある。

 カオスと日光ならばその再生能力を阻害する力があるので、やはり魔人が相手ならばこの二つの剣の方が有効打。

「フ…まるで無敵結界と再生能力が無ければ魔人に勝てるという口ぶりですね。ですが…このアイゼルをそう簡単に倒せるとは思わない事です」

 アイゼルは剣を振るいランスを攻撃する。

 それだけだなく、魔法も使う事でランス達を苦戦させる。

(コイツ、普通に戦えたのか)

 ランスはリーザス城でアイゼルを倒したが、それは完全に不意打ちが成功したからだ。

 志津香を前に油断したアイゼルを背後から強襲し、カオスを使って致命の一撃となるダメージを与えたからだ。

 つまりはランスはアイゼルとはまともに戦った事が無かったのだ。

 ただ、それでもやはりカミーラやケッセルリンクのような圧倒的な力は感じない。

「くっ…これが魔人…」

 だが、シルキィは魔人の圧倒的な力に唇を噛む。

 シルキィは魔人と戦うのは初めてだが、無敵結界が無い状態でもこれほどの強さを持っているとは想像していなかった。

 今ようやく彼女は魔人の強さを味わっていたのだ。

「そう、これが魔人。まあ…あなたにはどうでも良い事のようですがね」

 アイゼルはシルキィを無視してランス、そしてレンを相手に攻撃を仕掛ける。

 魔法を織り交ぜた戦いはランスとレンをも防御に回させる程だ。

「ランス様!」

「ジル! 魔法も使えない奴は下がってろ!」

 心配そうな声を出すジルに対しランスが怒鳴る。

 流石に今の状態ではジルは戦いには使えないからだ。

 だが、その言葉は相手に対して意外な反応を引き出していた。

「ジル…? …!」

 アイゼルはようやくジルの顔をまともに見る。

「まさか…!?」

 ジルとはアイゼルを魔人にした主にして、絶対的な恐怖の象徴だった。

 確かにジルによって永遠の命を授かったが、アイゼルはジルの事を心から恐れていた。

 それだけの恐怖があの魔王から感じられたからだ。

 そしてランスがジルと呼んだ少女は、あの恐ろしい魔王とは思えぬ気配を持っていたが、その容姿はあのジルと似ていた。

 その一瞬の隙をランスは見逃さなかった。

「死ねーーーーーーーっ!」

「!」

 ランスの手の日光がアイゼルの右肩に突き刺さる。

 その一撃は容易にアイゼルの体を貫き、血を噴出させる。

 ランスは傷口を広げるように日光を捻ると、更に勢いよく血が噴き出る。

「クッ!」

 だが、アイゼルもやはり魔人と言うべき存在だった。

 自分が傷つく事を厭わずにランスに向けて至近距離から魔法を放つ。

「うおっ!?」

 アイゼルの放ったデビルビームが直撃し、流石のランスも吹き飛ばされる。

「ランス!」

 レンはランスを受け止め、回復魔法をかける。

「ライトニングレーザー!」

 ランスの一撃を受けてよろめくアイゼルに対し、強力な魔法が放たれる。

 それはアイゼルの背後に回り込んだハンティの魔法だった。

 流石に魔法レベル3を持つハンティの魔法をまともに受け、アイゼルも顔を歪ませる。

「がはははは! これで終わりだ! ランスアタタターーーーーック!」

「…そうですかね」

 ランスが攻撃を仕掛けようとした時、アイゼルの目が妖しく光る。

「ランス様!」

 それに対して何かを感じ取ったのか、ジルがランスの盾になるようにランスの前に出る。

 その行動にアイゼルは驚いたが、一度放った術を止める事はもう出来なかった。

(仕方ありませんか…!)

 アイゼルとしても不本意だが、それでもそうする以外に方法は無かった。

「なんだと!?」

 突如としてジルがランスの方を向くと、そのままアイゼルを庇う様にランスの前に立つ。

 それにはランスも驚き必殺の一撃を止めざるを得なかった。

「おいジル! 何のつもりだ!」

 ランスは怒鳴るが、ジルはそれが聞こえないようにそのままランスの動きを止めるかのようにランスに抱き着いた。

「あだだだだだ! おいレン! ジルを引きはがせ!」

「ちょっとジル! どうしたっていうのよ!」

 ジルの体には魔王の血がほんの少しだが残っており、その力はすさまじい。

 しかも手加減無しでランスに抱き着いたのだから、ランスとしても非常に痛いのだ。

 レンがジルを力づくで引きはがすが、凄い力でランスに向かってこようとする。

 レンはそれを止めるため、全力でジルを押さえるしか無かった。

「おい貴様! 俺様の奴隷に何をしやがった!」

「…予想外でしたが…これもまた良しという事にしますか」

 ランスの言葉にアイゼルは不本意そうな顔をするが、次の瞬間には真面目な顔になる。

「これが私の術です。私の力を使う事に何も不思議な事は無いでしょう」

「術? あっ…」

 アイゼルが術という言葉を使った事で、ようやくランスはアイゼルがどういう魔人なのかを思い出した。

 直接戦闘では使わなかったので中々思い出せなかったが、この魔人はレイラを洗脳してランスにぶつけてきた魔人だった。

「本来の使いどころではありませんでしたが…これはこれで良いでしょう」

 アイゼルはそう言うとランス達に背を向ける。

「今回はここまでです」

「あ、コラ! ジルを元に戻せ!」

「戻す手段は有ります。ですが、それはあなたが探すべきでしょう」

 ランスの文句にアイゼルは唇を吊り上げて笑うと、そのまま姿を消していった。

「ランス手伝ってよ! この子…凄い力なんだから!」

「だああああ! お前もいい加減大人しくしろ!」

 アイゼルが去っても暴れようとするジルに対し、ランスも彼女を押さえるべく動こうとする。

 が、突如としてジルの動きが止まる。

「む、治ったか」

「生憎だが治っていない。我とジルは意識が独立しているから、我にはあの魔人の力の影響が無かっただけだ」

「この言葉…スラルね」

「そうだ。ジルの意識を何とか封じ込めた。我ならばあの魔人の術の影響は受けない。だから離してくれ」

「そうなの」

 スラルの言葉を受けてレンがジルから体を離す。

 スラルは立ち上がるが、確かにランスに対して行動を起こすという事は無かった。

「と言ってもこの体の持ち主はジルだからな…我の意識が無くなればあの魔人に操られた状態のジルが出てくるだろうがな」

「そんな…じゃあどうすれば」

 シルキィは顔を青くしてジルを見る。

 彼女を助けたいと思うが、どうすればいいのかシルキィには全く分からなかった。

 その時、大きな影がランス達を覆う。

「おう! 久しぶりだなランス! それとレン!」

「久しぶりね、カイン」

「ヘッ! まさか本当にまた会えるなんてな!」

 カインはランス達を見て嬉しそうな声を出す。

「…ドラゴンと知り合いだったのかい、アンタ達」

 ハンティはドラゴンと話してるランス達を見てため息をつく。

「あん? お前はカラー…いや、カラーなのか?」

 ハンティを見てカインは首を傾げる。

 彼女からは同族の匂いを感じ取ったのだが、どこかが違う…その違和感が強く浮き出ていた。

「今の私はカラー、それでいいんだよ。それよりも一度戻る事をお勧めするよ」

「そうですぜ旦那。いやー、流石に魔人相手だとあっしは役立たずですわ」

 ハンティとベネットの言葉にランスも頷かざるを得なかった。

「ランス、大丈夫ですか」

 人間の姿に戻った日光がランスの体を支える。

 何だかんだ言ってもランスもダメージを負っているのだ。

 いくらレアアイテムを持っていたとしても、それでも魔人の攻撃はやはり強烈なのだ。

「カイン、これ以上は行けないよ。KDから何を言われるか分からないよ」

「詰まんねえこと言うなよキャンテル。大体今回は奴等から仕掛けてきたんだぜ」

「それでもだよ。もう終わったのさ」

 キャンテルの言葉にカインは舌打ちをする。

 確かにもう終わったのだから、ドラゴンが下界で何かをするのはおかしいこと…らしい。

 カインは今のドラゴンの中でも闘争本能が激しいドラゴンだ。

 他のドラゴンと違い、今でも魔物や魔人は倒すべき敵なのだ。

 ただそれでも、自分達の王であるKDの言葉は無視できない。

「まあいいさ。おいランス、縁があったらまた会おうぜ」

 カインはそう言って笑うと、キャンテルと共に飛び去って行く。

「それにしても…魔人アイゼル、厄介な能力を持っているな」

 スラルは顔を歪める。

「無理矢理ジルの意識を押し込めた反動か…上手く体が動かせない。レン、万が一の時を考えて今のうちに我の体を縛っておけ」

「おいスラルちゃん。どういう事だ」

「これはジルの体だ。お前も知っているだろう、ジルの体は幼く見えてもその力は人間よりも遥かに高い。その力で暴れられたらお前だってただではすまんぞ」

「む…」

 スラルの指摘にランスも言葉に詰まる。

 スラルの言う通り、ジルがランスを襲ってきたら…ランスならば取り押さえる事は出来るだろう。

 だが、そのためには剣を使わないと厳しいかもしれない。

 そして当然ランスがジルに剣を向けるはずが無いので、縛るのは当然の反応だろう。

「取り敢えず戻るかい。カラーは皆を歓迎するだろうからね」

 ハンティの言葉に取り敢えずランスは頷くしか無かった。

 

 

 

「クッ…なんて事だ!」

 魔物将軍カジャイマンは残った部下を連れて逃げていた。

 ドラゴンが攻めてきた時、カジャイマンは自分の子飼いの部下と共に直ぐにその場から離れた。

 幸いにもドラゴンは自分達を無視し、魔物大将軍へと向かって行った。

「カジャイマン将軍…これからどうしますか」

「どうもこうも無いな。俺達は何も見なかった、そうだろう」

「それは…はい、そうですね」

 カジャイマンの言葉に部下の魔物隊長は頷くしかない。

 自分達のやった事は敵前逃亡に等しく、これがムオバクスに知られれば間違いなく粛清されるだろう。

 勿論ムオバクスが生きていればの話だが。

「まさかドラゴンに喧嘩を売るとは…」

「フン、もう放っておけ。それよりも俺達はこのまま魔王の城に…」

 カジャイマンが魔王城に向かおうと思った時、凄まじい気配を感じ取りその方向を見る。

 その方向から歩いてきたのは一人の人間―――の姿をした存在だった。

 だが、その場に居る魔物達は分かる…その存在が人間では無い事を。

 紫色の髪をして、その口にはタハコが咥えられている。

 そのような存在はたった一人しかいない―――魔人レイしか。

「何やってんだお前等」

「レ、レイ様!」

 魔人レイの言葉に魔物兵達の声色が震える。

 魔人は自分達と同じ陣営の存在ではあるが、魔人レイに関してはそれが通用しない存在だった。

 短気で粗暴で常にイライラしている…そんな噂が絶えない存在だ。

 そして気に入らなければ直ぐにその雷を放ってくると。

 ただ、短気で粗暴なのは事実だが、常にイライラしているかと言われればそんな事は無い。

 何故なら今の彼には生きる目的があるのだから。

「わ、我々は…」

「お前の所属が何処とかは興味ねえ。何をしていたのか言え」

 レイの言葉にカジャイマンは言葉に詰まる。

 果たして自分達がやって来た事を言っても良いのか…だが、言わなければどうなるか分からない。

 だからこそ、カジャイマンは自分達の状況を話すしか無かった。

 殺されないためにも。

「フン…くだらねえことしてるな。お前等、ケッセルリンクにバレたら殺されるってのによ」

「ケ、ケッセルリンク様はおられませんから…」

 もし自分達のやってきた事を知られればケッセルリンクに殺されるのは分かっている。

 ただ、それでも彼等がカラーを襲うという事をしたのは、魔人メディウサの意思があった事、そしてケッセルリンクが不在だからだ。

 どうせ自分達は寿命で死ぬのだから、ケッセルリンクが現れる前に自分達は死んでいる、そんな楽観的な考えもあったのも事実だ。

「それでドラゴンに喧嘩売って…人間とカラーにやられたってのか」

 魔人レイは魔物にあるまじき醜態を晒している自分達に怒ると思っていたが…その態度は想像もしていない事だった。

 レイは笑ったのだ―――それも何処か楽しそうに。

「そのドラゴンは何色だった」

「え…ど、ドラゴンの色は…おい、お前! 何色だった」

「は、はい! た、確か黒…いや、黒に近い青で凄まじい電撃のブレスを放ってきました!」

 それを聞いてレイはいよいよろ髪の奥でその目を輝かせた。

「クックック…そうか、あいつが居やがるか。そんな手段を取る奴はあいつしかいねえ」

「レ、レイ様…?」

 嬉しそうに笑うレイに対し、カジャイマンはどうしていいか分からなくなる。

(だが…助かったか)

 ただ、レイの機嫌が良さそうなので自分達は助かった―――そう思っていた。

 次の言葉を聞くまでは。

「まあいい。じゃあお前達に消えて貰うか」

「え…?」

 間の抜けた声を出した魔物隊長がレイから放たれた電撃で消し炭になる。

「レ、レイ様!? な、何を!?」

「ああ。お前達がカラーを襲ったなら…お前達をぶっ飛ばせばケッセルリンクに貸しを作れるかもしれねえからな」

「な…!?」

 あまりの理由にカジャイマンは驚愕するが、レイがベルトのバックルから櫛を取り出し、自分の髪をかき上げた事でその顔が恐怖に染まる。

 怒れる王―――それが魔人レイの綽名だからだ。

「あいつとやりあうのにもお前達は邪魔だ。ガイの野郎の耳に入っても面倒だからな」

「レ、レイ様!?」

「じゃあな。消えろ」

 レイの体から凄まじい雷光が溢れ…生き残った魔物兵達はレイの手によって全滅した。




アイゼルにはやはり能力使わせないとね…原作だとレイラに使っただけだったし
だから解除はほぼギャグになっちゃいますよね
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