ランス再び   作:メケネコ

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予期せぬ援軍

「うーん…魔人の城ってこんな感じなんすかねえ」

「そうね。私の想像よりも遥かに魔物兵が少ないんだけど…」

 魔人メディウサの城に入ったランス達は順調に―――いや、順調すぎる程に進めていた。

 それもそのはず、魔物兵の数が極端に少なく、巡回する魔物兵を少し見るだけだ。

 城だけあって隠れる所も多く、見つかる気配は今の所無かった。

「ランス君、魔人の城ってこんな感じなの?」

「知らん。そういや俺が魔人の所に乗り込んだのはメディウサだけだったな」

「ランス様、魔人トルーマンの所に乗り込みましたよ」

 ランスは過去の戦いを思い出すが、思えばランスが自ら魔人の所へ乗り込んだのは少なかった。

 リーザスでの戦いは、言葉通りリーザス城で魔人達と戦った。

 サテラだけはハイパービルで戦ったが、それでも魔人の住処と聞かれれば違うだろう。

 ゼスの時も魔軍の陣地という訳では無く、ランス達人類が魔人を迎え撃つという形になった。

 ザビエルに関してはそもそも魔物兵の数自体が少なかった。

 魔人カイトもただゼスの領地をうろついていただけだ。

「トルーマン? そんなのいたか?」

「いやいたでしょ。あの気持ち悪い屋敷の魔人よ」

「…ああ、アレか。大した事無いから忘れてたぞ」

 レンの言葉でようやくランスは思い出した。

 ただ、あの時も魔人とその使徒だけで、魔物兵の姿そのものは無かった。

「魔人には無敵結界がありますしね。そもそも警備というのが必要無いのでしょう」

「…そういやそうよね。魔人が人間を警戒して周囲を固める必要は無いか」

 魔人が周囲に魔物兵を配置していないのも必要無いからなのだろう。

 魔人にもそれぞれ個性があるし、それぞれの性格もある。

 カミーラは本人は魔軍を率いないが、その使徒である七星は魔軍を動かしている。

 ケッセルリンクはその強さからそもそも魔物兵を置く必要は無いし、レイのようにそもそも魔物兵すらも眼中に無い等魔人それぞれだ。

「でもここまで居ないなんて事ある? 前に来た時はもっと居たでしょ」

 レンは前回の事をきちんと覚えている。

 前回はもっと魔物兵の数が多かった。

 魔王がジルの時代だったからかもしれないが、魔物兵の数は確かにもっと居たはずなのだ。

「外に向かう魔物兵も多くいます。それが何か関係あるのかもしれませんね」

「考えるだけ無駄だ。メディウサを殺して終わりだ。魔物なんてそんなもんだ」

 ランスから言わせれば魔物兵の動向などどうでも良かった。

 それこそ魔人メディウサを殺せば全て済む話なのだ。

 そしてそれは間違っていなく、魔物将軍の上の存在である魔人が死ねば魔軍は一気に瓦解する。

 ここに居る魔物兵もメディウサが死ねばそれこそ蜘蛛の子を散らすように逃げていくだろう。

「あの…ベネットさん。地図に間違いは無いんですか?」

「うーん…そうでやんすね。現状は間違ってないでやんすね。あの魔物将軍、本気でメディウサの事嫌いだったんでやんすかね」

 ベネットは魔物将軍ランブハビが残した地図を片手に周囲を見渡す。

 この地図はまさにこの城の見取り図そのもので、巡回の時間や行動パターンまで詳細に記載されている。

 ただ、ここまで魔物兵の数が少ない理由までは分からなかった。

 実際には魔人レイが色々と動いているのだが、そんな事は知る由も無かった。

「それにしても…凄い嫌な空気の城ですね、ここ」

 ベネットは本気で嫌そうな顔をしながらため息をつく。

「分かるの? そういうの」

「まあ…あっしは呪いに関してはからっきしでやんすが、そういう空気は読めるみたいで。ただ、皆あっしをKYB…空気の読めない馬鹿扱いするんでやんすよ」

「それはその通りだろうが。お前程空気の読めない奴は居ないぞ」

「旦那には言われたくないでやんすね! 旦那に比べればあっしはハニーでやんすよ」

「そりゃどういう意味だ!」

「旦那はグリーンハニー! あっしは普通のハニー! それくらいの差があるでやんすよ!」

「それって差が無いって言ってるだけじゃない?」

 ランスとベネットの言い合いにレンは呆れた顔をする。

「そんな事よりお客さんよ。変な事言ってる間にね」

 レンは剣を抜くとあっという間に走っていく。

 そしてそのままこちらを見ていた魔物兵2体をあっという間に斬り殺す。

「相変わらず凄いなあ…あっしもああいう風になれたらなあ」

「無理に決まってるだろ」

 レンを羨ましそうに見るベネットに対してランスは冷たく言い放つ。

「旦那! 前から思ってましたけど旦那ってあっしに妙に冷たいでやんすね! 旦那は滅茶苦茶女好きなのになんであっしだけ!」

「…いや、お前に手を出したら負けだ。うむ、改めて分かった」

「何故!? カラーだから容姿はいいはずなのに!」

「そのいい容姿を上回る何かがお前にあるな。うむ、喜べ」

「喜べるかぁ! ファッ〇ンヒューマン! ああもう、こうなったら八つ当たりで奴等をぶっ殺してやる!」

 ベネットはそう言いながら恐ろしいスピードで走って消えていく。

 そして彼女が消えた通路からは魔物兵と思しき悲鳴が聞こえ、直ぐに消えていく。

「…彼女、本当にカラーなんですか?」

 ジルはこれまで見たカラーとのあまりの違いに唖然としている。

「アレでもカラーなんだろ。まあ時にはああいう奴も生まれるんだろ」

 ランスは呆れた様子で答えるが、突如としてベネットが戻って来る。

「た、大変でやんす! 魔物隊長に見つかりました!」

「アホか!」

 ランスはベネットをどつく。

 勝手に切れたと思ったら、魔物隊長に見つかるという凄まじいポンコツ具合を発揮するのだからそれはやむを得ない事だろう。

「チッ! 急ぐぞお前ら。とっととメディウサを殺しに行くぞ。おいベネット、最短経路で走れ」

「は、はい!」

 ランスの指示を受けて、ベネットは走る。

「ジル、きちんとついて来いよ」

「はい!」

 その言葉にジルは嬉しそうに返事をする。

 身体は幼いが、その力は常人を遥かに超えているので何も問題は無いのだが、ランスにそう言ってもらえる事が何よりも嬉しかった。

「やれやれ、やっぱりこうなるのね」

 レンも呆れたような声を出すが、もうこうなってしまったら突っ切るしかない。

「…これって普通に考えたら潜入失敗なのよね」

「カオスが居たら烈火のように怒ったでしょうね」

 シルキィと日光も苦い顔をしてランスについて行く。

「む、人間!?」

「邪魔だ!」

「うぎゃああああああ!」

 ベネットを追って来たであろう、魔物兵を引き連れた魔物隊長が驚きの声を出すが、即座にランスに斬り殺される。

「え? た、隊長!? うぎゃああああ!」

 魔物兵が驚いて茫然としている所に日光の刀が襲う。

「遅い!」

 ランスの一撃で戸惑っている魔物兵に向けてシルキィも襲い掛かる。

 1人でも簡単に魔物兵を倒せるシルキィの強さはやはり本物なのだ。

 そして人類の中でもトップクラスの人間が攻めてくるのだから、一般の魔物兵ではどうしようもなかった。

「こっちでやんすよ!」

 ベネットは地図も見ずに先頭を走る。

「本当にあってるの!?」

「全部頭の中に入れているから大丈夫でやんす! それよりも…来るっすよ!」

 ベネットの視線の先には既に魔物兵が居る。

 魔物兵に見つかった今となってはもう止まる理由は無い。

 ベネットがそのままナイフを片手に走っていると、

「うりゃああああああ!」

「死ねええええええ!」

 通路に何処かに隠れていた魔物兵がベネットに向けてその斧を振るう。

「ベネットさん!」

 ジルの声が響くが、ベネットは既にその場には居なかった。

 斧が振り下ろされる前に飛んだベネットはそのまま斧を振るって来た魔物兵の1体の上に着地すると、その頭に向けてナイフを突き刺す。

「へげっ」

 それだけで魔物兵はあっさりと死亡する。

「邪魔です」

「うげ!」

 もう一体の魔物兵は日光にあっさりと両断される。

「エンジェルカッター!」

「ぐわあああああ!」

「ぐげげげ!」

 そしてランス達の待ち構えていた魔物兵達はレンの魔法であっさりと蹴散らされる。

「すごい…」

 それを見てシルキィは思わずつぶやく。

 やはり何度見てもランス達の力は凄まじい。

 自分も強いという自覚はあったが、自分ではまだランス達には及ばない。

「突っ込むぞ!」

 ランス達はそのまま走っていく。

「この辺は…見覚えがあるわね」

「あん? そうか?」

「…まああんたは覚えて無いわよね。前回乗り込んだじゃない」

「知らん。あの時の出来事の方が強烈過ぎたわ」

「それは分かるけどね」

 レンはランスの言葉にため息をつく。

 が、ランスの言っている事も分からんでもない。

 何しろあの時は魔人メディウサと戦ってたと思ったら、魔人カミーラが乱入してきた。

 その挙句、魔王ジルまでもが乗り込んできたのだ。

 その衝撃に比べれば、魔人メディウサの城に乗り込んだことなど些細な事なのだろう。

「旦那! ここですよ!」

「がはははは! 今度こそ魔人をぶっ殺してシルキィとセックスじゃー!」

「とんでもない事言わないでよ!」

 ランスは剣を振るってメディウサの部屋のドアを吹き飛ばす。

 そしてその異常なまでの臭気に思わず顔を顰める。

「何よ。私が楽しんでいる時に」

「ぐばっ!」

 魔人メディウサは面倒くさそうにランス達を見る。

 その直ぐ側には人間の女性が居るのだが、その姿にシルキィは絶句する。

 それは異常なまでの姿となっている女性…それこそ見るに堪えないというのに相応しい姿だ。

「これは…」

 そしてシルキィはこの部屋の異常な臭気の原因に気づく。

 メディウサの近くには何人もの女性の惨たらしい死体が転がっていた。

 何れも恐怖と絶望を味わった顔をしており、まともな姿をしている死体は一つも無い。

 それこそ凄まじい拷問でも受けたかのよな、惨たらしい姿だった。

「あんた…あの時の人間?」

 ランスを見てメディウサは目を細める。

 そこにあるのは明らかな怒りだった。

「フン、あの時にこりてなかったようだな。が、今度は確実にぶっ殺す! 日光!」

「は、はい!」

 ランスの言葉に日光は聖刀日光の姿を取る。

 それ程までに、ランスもまた怒っている事に気づいたからだ。

「それはこっちの言葉ね…あんたのせいでこっちは何百年も楽しみを邪魔されたんだからね…」

 メディウサは憎々し気にランスを睨むと、股間の蛇に貫かせていた女の体を無造作に引き裂く。

 女性は悲鳴すらも上げられずに絶命する。

「死ねーーーーーーっ!」

 それを見てランスは問答無用でメディウサに斬りかかる。

「フン!」

 が、ランスの剣が届く前にランスの体が弾かれる。

「む」

 それには流石のランスも違和感を覚える。

 魔人の無敵結界ではなく、別のものに弾かれたのがわかったからだ。

「少しは落ち着きなさいな。心配しなくてもあんたは念入りに殺してやるから」

 メディウサは服を着ると、その手には二本の剣が握られている。

「さあ…今度こそ殺してあげる。男…特にお前はね!」

 憎しみの籠った目でランスを睨むメディウサ。

 その気迫だけで並の人間ならば委縮してしまうだろう。

 だが―――

「フン、お前はカミーラに比べれば雑魚だ雑魚。カミーラよりも弱いお前が俺様に勝てる訳無いだろうが」

 ランスにはそんな事は関係無かった。

 いかに恐ろしい気迫を持っていようが、これまでランスが戦って相手はそんなものではなかった。

 魔王ジル、魔王ナイチサ、魔王スラル、そして魔王ククルククル…それらに比べれば全く持って小さい。

 ランスに言わせれば雑魚同然だ。

「…フン、あのカミーラがね。でもお前を殺せばカミーラも悔しがると思えば、それだけでも十分か」

 メディウサはその口から蛇のような舌を出し、舌なめずりをする。

「じゃあ死になさい。女は全員私が壊れるまで可愛がってあげるよ!」

 そう言ってメディウサはランス達に襲い掛かってくる。

「がはははは! お前が死ねーーーーーーっ!!!」

 ランスは日光を片手にメディウサを迎え撃つ。

 そして日光でメディウサの無敵結界を斬る。

 メディウサも前回無敵結界を斬られた事があるからか、その事に対する動揺は全く無い。

 そしてその二本の剣でランスに襲い掛かる。

「させる訳無いでしょ!」

 その剣を防ぐのは当然レンだ。

 レンは盾を構えてメディウサの二本の剣を弾く。

「フン、うるさいやつね」

 メディウサはレンを睨む。

「氷の矢!」

 ジルが魔法を放つが、メディウサはそれにはびくともしない。

「あら、そっちのは…子供じゃない」

 メディウサは魔法を放って来たジルを見る。

 その幼い体を見て目を細めるが、直ぐに舌なめずりをする。

「でも楽しめそうだね」

 その目を見てジルは言いようの無い不快感に襲われる。

 普通魔人にそんな目で見られれば恐怖が先に来るかもしれないが、ジルが感じたのは言いようの無い嫌悪感だった。

「フン、貴様如きが俺様の奴隷に手を出すなど100年…いや、10000年早いわ!」

 ランスはメディウサに斬りかかる。

 その凄まじい剣にメディウサは思わず目を見開く。

 メディウサがランスと戦ったのはもう遥か昔の話…生まれてから1000年も経っていないメディウサからしても、かなり前の話だ。

 だからこそ忘れていた―――この人間がどんな人間だったのかを。

 ランスの剣を受けるメディウサの手が軋む。

「…! この、人間が!」

「その人間に呪われたお前が凄んでも怖くも何とも無いわ! とっとと死ね!」

 ランスの剣は魔人から感じても十分に重く、鋭い。

 ましてやメディウサは別に特別な技能を持っている魔人ではない。

 剣戦闘LV1、魔法LV1とその能力はある意味では平凡であった。

 そう、彼女の本当の恐ろしさは彼女に有るのではなく、今はこの場には存在しない使徒にあったのだから。

 ランスは剣を片手にメディウサを追い詰める。

 二人の剣が激しくぶつかり合い火花を散らす。

 それを見てシルキィは唾を飲み込む。

(あれが…本気のランス君)

 ランスが強いのは十分すぎる程に分かっている。

 分かってはいるが、それを理解した上で尚自分はランスという人間をまだ本当の意味で理解していなかったと思い知らされる。

 シルキィの目から見てもランスの剣はお世辞にも美しい剣とは言えなかった。

 だが―――こうして本気のランスの剣を見て背筋が震える程の衝撃を受けていた。

 ランスの剣には無駄が沢山あるように見えるが、それでも押されているのはメディウサだった。

 剣と刀を交互に持ち替えるというある意味無駄と言える行動に見えるが、それでもメディウサに確実にダメージを与えている。

(あの魔人は…ランス君の刀、日光を最大限に警戒している?)

 二人の戦いを客観的に見る事によって、メディウサの戦い方が何となく分かって来た。

 確かに魔人というだけあり、その体力は人間とは比較にならないだろう。

 その耐久力、攻撃力、魔力も人間を大きく上回るはずなのだ。

 それでもメディウサはランスの持つ日光による攻撃だけは避けていた。

(魔人の無敵結界を斬る力…それだけじゃないのね。ランス君の言う通り、日光には魔人に対する絶対的なアドバンテージが有る)

 ランスの剣、ロングソードはメディウサにダメージを与えているが、その傷は瞬く間に再生していく。

 だが、日光によって傷つけられた傷の治りは遅い。

 つまりはそういう事なのだろう。

(だったら私のやる事は一つ。ランス君がメディウサに対して致命の一撃を与えられるように援護する事)

 シルキィはそう思うのだが、今のランスの戦いには中々手を出せずにいた。

 それ程までにランスの剣は異常だった。

「この…うるさいわね!」

 しかし、それでも魔人という存在はやはりバケモノだ。

 メディウサの股間から生えている蛇がうねったかと思うと、そのまま力づくでランスを弾き飛ばす。

 ランスは剣を構えてガードするが、やはり衝撃を完全に逃す事が出来ずに吹き飛ばされてしまう。

「フン、この程度か」

「…言ってくれるじゃない」

 だが、ランスは直ぐに立ち上がる。

 確かにメディウサの攻撃は非常に重い。

 が、それでもクリーンヒットしなければ今のランスにはほとんどダメージにはならない。

 剣戦闘LV3という伝説の技能を身に着けた事により、今のランスは攻撃だけでなく防御に関しても凄まじい力を得ている。

 ランスは意識していないが、その恐ろしいまでの技能でメディウサの攻撃を受け流していたのだ。

 吹き飛びはしたものの、それは自分から飛んで衝撃を逃がしたに過ぎない。

「がはははは! やっぱりお前は魔人の中ではザコだな! カミーラに比べれば全然大したこと無いぞ!」

「いや、それは比較対象が悪いんじゃない?」

 ランスの言葉にレンは思わず突っ込んでしまう。

 魔人カミーラに比べれば、それは他の魔人はどうしてもレベルが落ちるのは間違い無いし、それは事実なのだ。

 実際、魔人カミーラは魔人四天王の1人だけあって異常なまでに強い。

 ましてや今のランスが知るカミーラの強さを遥かに上回る、まさに全盛期を更新し続けている存在なのだ。

 そんな魔人と何度も戦っていれば、他の魔人を弱く感じるのは仕方ない事なのかもしれない。

「うるさいわね…いいから死になさい!」

 明らかにイラついているメディウサの目がギラリと光る。

「おっと」

 ランスはその視線を体を捻る事で避ける。

 メディウサの目は相手を石にしてしまう力が有る。

 それが決まればランスがどんなに強くても意味はない。

 だが、以前にそれを見ているランスは当然ながらそれを避ける。

「甘いわよ! ファイヤーレーザー!」

 しかし、メディウサもそれを予想していたのか、魔法を放ってくる。

「甘いのはそっちよ!」

 だが、レンがランスの前に立つとその盾でメディウサの魔法を防ぐ。

 完全には威力を抑えきれはしないが、それでもレンの強力な魔法防御力は並ではない。

 メディウサのファイヤーレーザーでは、レンの持つ強力な防御力を無効にすることは出来ないのだ。

「スノーレーザー!」

 そしてお返しとばかりにジルの魔法がメディウサに突き刺さる。

「く…この! なんて魔力…!」

 メディウサはそれを受けて歯噛みする。

 普通の人間の魔法では強力な防御力、そして再生能力を持つメディウサの防御力を突破できない。

 だが、目の前の少女の放つ魔法はまさに異常だった。

 まだ年端もいかない人間の子供がこれ程の魔力を持つなど想像も出来ない。

「はあああああ!」

 そしてそこをシルキィが追撃する。

「チッ!」

 メディウサは剣でシルキィの一撃を防ぐ。

(こいつはあの男に比べれば大したことは無い)

 その一撃でメディウサはシルキィの実力を把握する。

 無視出来るほどでは無いが、ランスに比べれば大した事は無い。

「うるさいわね!」

 メディウサの蛇がシルキィを襲う。

 シルキィはリトルを使ってそれを防ごうとする。

 が、その凄まじい威力にシルキィの体が負けてしまう。

「うあっ!」

 リトルの一部が砕け、シルキィは地面に叩きつけられる。

「調子に乗るんじゃねえ!」

 シルキィが吹き飛ばされたのを見て、ランスが激昂してメディウサに襲い掛かる。

 流石にランスの攻撃はまともにうけるのはまずいので、メディウサはランスの攻撃を防ぐ。

 ランスの剣をメディウサは防ぐが、ランスの右手に有るのはロングソードだった。

 それを見てメディウサはその顔を歪ませる。

「死ねーーーーーーっ!」

 ランスの左手にあるのは当然の事ながら日光だ。

(この剣はまずい…!)

 メディウサは日光による攻撃を防ごうとするが、位置が悪い。

 ランスの手の日光はメディウサの胸元に吸い込まれようとした時、突如としてランスの体が吹き飛ばされる。

「ぐおっ!?」

「ランス!」

 思わぬ攻撃を受けたランスはまともに吹き飛ばされる。

 レンはランスに近寄ると、その体を抱き起して回復魔法をかける。

「あだだだ…! 一体何だ!?」

「…厄介な奴が居るものね」

 レンは感じた気配に目を細くする。

「あらあら、人間相手にやられてるじゃない」

 その女は何時の間にかメディウサの隣に居た。

 突然現れた女を見て、他の魔物達が来ないか入り口を見張っていたベネットが目を見開く。

 確かに誰も通して無いはずなのだが、その女は当然のようにここに入って来たのだ。

「フン、居たなら早く手伝ってくれればいいのに。こいつらの相手、思った以上に面倒くさいし」

「私にそこまでする義務は無いもの。ま、今あんたが死ぬのは困るからちょっと手伝ってあげようと思っただけだし」

 そう言って女は笑うが、その笑みは非常に悪意に満ちた笑みだった。

「…カラー!? どうして!?」

 その女の額にある青いクリスタルを見てシルキィが驚きの声を上げる。

 目の前に突如として現れたのは、間違いなくカラーの女性だったからだ。

「カラーじゃ無いからよ。いい加減正体を見せなさい。薄汚い悪魔が」

 レンが目を細めてカラーを睨む。

 そこにあるのは100%殺意の籠った視線だった。

「あら…バレてるのね。ま、いいけどね。どうせあんた達はここで死ぬんだし」

 そう言うと女の姿が歪んだかと思うと、その姿が変わる。

「…悪魔!? これが!」

 シルキィは初めて見る存在に目を目を見開く。

 その存在は知っていたが、見た事は無い。

 ただ、人間にとって悪意のある相手、それくらいの認識はあった。

「魔人が悪魔とつるんでやがるのか」

 まさか悪魔が現れた事にはランスも驚く。

 あの魔人が悪魔と手を組む、という事は流石のランスでも考えてなかった。

「ギブアンドテイク。悪魔はそういうものでしょ? 手伝う代わりにこの人間達の魂は貰う。そういう事でいいわね」

 悪魔の言葉にメディウサは不快そうに眉を顰めたが、選り好み出来る状況では無いのも事実だ。

 これ程の騒ぎになっているのに、部下の魔物兵も来ないのも少々気になっていたという事もあった。

「…ま、いいわ。楽しみはこれからずっと続く訳だしね」

 メディウサは悪魔の言葉を呑み、ランス達にその視線を向ける。

「ランス様。流石に悪魔が一緒だと…」

「ぐぬぬ…」

 ジルの言葉にランスは呻く。

 悪魔というのは厄介な存在で、その強さも折り紙付きだ。

 実際、ランスは悪魔と戦った事があるのでその厄介さは身に染みている。

 この悪魔がどれくらいの強さかは分からないが、高い魔法防御力を持つランスにダメージを与えた事からも、相当な強さを持っていてもおかしくはない。

 ランス達に緊張が走ると同時に、悪魔がランス達に向かって突っ込んでくる。

 その手には鎌が握られており、それで斬られればただでは済まないだろう。

 ランスが迎え撃とうとした時、突如として雷撃が悪魔に突き刺さる。

「なに!?」

 悪魔のその衝撃には流石に驚き、ランス達から距離を取る。

 同時に、もう一つ強大なプレッシャーを放つ存在が増える。

「随分と…くだらねえ真似してるじゃねえか」

 それはメディウサの部屋の入口から聞こえてきた非常に不愉快そうな声だった。

 その声を聞き、メディウサもまた不愉快そうな顔で男を睨む。

「何の用よ。レイ」

「ケッ!」

 メディウサの言葉にも、レイは苛立ちを隠そうともせずに手にしたタハコを投げ捨てるのだった。




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