ランス再び   作:メケネコ

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魔王を抱いたが…

「がはははははは!」

 ランスは絶好調だった。

 それもそのはず、ランスの体の下ではこの世界で最強の存在が、涙目になりながら必死で自分にしがみ付いているのだから。

「ラン、ス…」

 自分の体に起こっている初めての感覚にスラルは目を白黒させながら、その快感を逃すまいと必死だった。

「うむうむ、大丈夫だぞスラルちゃん。君の体は立派に女の子をしているぞ」

「うぅ…」

 ランスの言葉にスラルは恥ずかしそうに眼を伏せる。

 そんな彼女に対してランスは容赦なく快楽を与え続ける。

 かつてジルとした時は、ジルの特殊な性癖からあまり好みでは無いセックスをしたが、今回は違う。

(うーむ、セラクロラスには感謝だな。こんな極上の展開を用意してくれるとは)

 自分の目の前で喘いでいる魔王を目の前にすると、ランスのテンションが非常に高まる。

「がははは! いくぞ! と──ーっ!」

「あああ──ーっ!」

 ランスが絶頂すると共にスラルも絶頂を迎える。

(私の声、こんなに大きかったっけ…)

 虚ろな頭で思わずそんな事を考えてしまっている。

 下半身に感じる甘い痺れにスラルは夢見心地となる。

「ランス…」

「可愛いぞ、スラルちゃん」

「あうぅぅ…」

 ランスに抱き上げられ、スラルは思わずランスから顔をそらす。

 が、ランスはそれを許さずにスラルの顎を掴むと、その唇を奪う。

 スラルは最早抵抗も出来ないようで、成すがままとなっている。

「ランス…まだやるの?」

 レダは顔を赤くしながらも実際にはランスとスラルの行為をちらちらと見ている。

 もうすぐ夜が明けるというのに、ランスは一向に止まる気配は無い。

「魔王とやれるなんてそう無いからな! 思う存分味わうのだ!」

 結局スラルの初体験が終わったのはその日の昼にランスがダウンした時だった。

 

 

 その夜──―

「ううう…私の初体験…」

 スラルは勿論その全てを覚えていた。

 自分が何をしたのか、そして何を言ったのかも鮮明に覚えている。

 その側ではケッセルリンクが頭を抱えていた。

「ランス…いや、お前の事だから何かが起きるとは思っていたが、まさかスラル様に手を出すとは…」

「俺だけが悪いみたいな言い方をするな! だいたいスラルちゃんが無理矢理俺を押し倒して魔人にしようとしたのだぞ! それに抵抗して何が悪い」

「お前の抵抗は性行為なのか…」

 ケッセルリンクはため息をつくと、レダに視線を向ける。

 レダもそれに合わせてため息をつくと、

「ランスを擁護する訳じゃないけど、魔王がランスを無理矢理魔人にしようとしてたのは本当。何故セックスで魔王が大人しくなったのかは私も知らない」

 レダの言葉にケッセルリンクは少し疑わしい顔をするが、レダが嘘をつく理由が見当たらないのでより一層肩を落とす。

 自分では中々良い事を主に言えたと思っていたが、その結果がまさかこんな感じになるとは思ってもいなかった。

 まさか魔王が襲われるなどとは考えもしない。

「うぅ…」

 スラルは顔を上げると、僅かに残った涙の跡を拭う。

 そして直ぐに頭を切り替える。

 確かにランスに犯されはしたが、問題はそうなるまでに至った経緯だ。

「すまぬなランス。お前には迷惑をかけたようだ」

「おお…」

 この切替の速さはミラクルを思い出させる。

 スラルはランスの顔を真剣な様子で見て…そして直ぐに赤面したかと思うと顔をそらす。

「おい」

「あ、頭では切り替わっているんだ! だが体が勝手に反応するんだ!」

 スラルは落ち着いて深呼吸をすると、今度は微妙にランスとは視線を合わさないで振り向く。

「………」

「と、とにかく! 何か我に変わった事は無かったか!」

 ランスはため息をつくが、流石に昨日の事は忘れていない。

「変わった事といえばスラルちゃんは意外と大胆なのだと…」

「誰がそんな事を聞いた!?」

 スラルは再び赤面して怒鳴るが、そこには昨日のようなプレッシャーはまるで感じられない。

「そう怒るな。目に見えて分かった事はスラルちゃんの目の色が変わった事だな」

「目…だと?」

「なんか急に赤くなったぞ」

(…そういや美樹ちゃんも確かあんな感じだったぞ)

 JAPANに居た時、一度美樹は暴走状態となり周囲に凄まじい被害を出していた。

 あの時に非常に良く似ていたが、あの時と違うのはヒラミレモンを必要としなかった事くらいだ。

(美樹ちゃんは未覚醒だったが…でもスラルちゃんは完全に魔王みたいだしな)

「我の目が…か」

 スラルは昨日のランスの意思を無視して魔人にしようとした時の事を思い出す。

 あの時は…爽快だった。

 初めて自分を露にした…そんな感覚がスラルにはあった。

 全てを奪い、壊し、殺したいという欲求が一瞬にして爆発したような感じだった。

 それを思い出し、スラルは思わず身震いする。

 全てを壊そうとする自分こそが本当の自分だと言われたような気がしたからだ。

(これが魔王の血なのか)

 スラルは初めて己の魔王の血に恐怖した。

 自身が意識を持った時からついて回った魔王の血…それが初めて自分に牙を剥いた。

「で、ランス。お前は何故その状態の我を犯そうと考えた」

 スラルはじと目でランスを見る。

 確かに自分は普通では無い状態ではあったが、その状態で魔王から逃げずに挑む…それも性的な意味で襲うなどとは普通では無い。

「ショック療法だショック療法。実際にスラルちゃんは元に戻っただろうが。俺様に感謝しろ」

「確かにそうだがな…犯されて感謝するのは絶対に間違っているからな」

「ランス、お前のそういう所を改めるべきだと私は真剣に思う」

「でもランスだし…反省も後悔もしないんでしょうね」

 女性三人の呆れたような目には流石のランスもたじろぐ。

 その目はシィルやかなみやマリアといった、ランスと長い付き合いを持つ者から向けられる視線にそっくりだと感じたからだ。

「何故自分の身を守った俺が責められなければならんのだ…」

「まーおー」

 ランスは不貞腐れたように唇を歪め、大まおーが慰めるようにランスの頭を撫でる。

「何故俺様がこんな妙な物体に慰められなきゃならんのだ!」

 ランスは大まおーを引きはがすと、そのままベッドに大まおーを投げつける。

 大まおーは空中でふわりと浮きあがると、そのままベッドにポスンと収まる。

「とにかく! 今回の件でランスを責める気はあまり無い。…いや、むしろ我が悪い」

 スラルは素直にランスに謝る。

 今回の事は完全に自分が原因だからだ。

「我は休む…ケッセルリンク、今日はお前がランスを見ていてくれ」

 スラルは服を着なおすと、少しふらつきながら部屋を出ていく。

 内股を庇いながら歩く姿に、レダは思わず『魔王でも処女を失ったら痛いんだー』とそんな事を考えていた。

 スラルが消えてから、ケッセルリンクはしばらくの間ランスを睨む。

「そんな目で見るな。それ以外に俺様にどうしろというのだ」

 ランスの言葉にケッセルリンクはため息をつく。

「分かってはいるのだがな…私がスラル様にした助言は何だったのかと思うとな」

「その結果無理矢理魔人にされそうになったら意味無いでしょ」

 レダは少し不満そうにケッセルリンクを見る。

 今回はレダにとっても非常に危なかった。

 確かに魔王には勝てないのは分かってはいるが、下手をすれば殺されていてもおかしくは無かったのだ。

 改めて自分の任務の厳しさを思い知る。

(人間をただ守るだけなら楽なんだけど…ランスはどう考えても普通じゃないし)

 セラクロラスに巻き込まれた事といい、悪魔と出会った事といい、魔人に勧誘された事といい、使徒に勧誘された事…ランスの波乱を考えればきりがない。

 だからこそ1級神もエンジェルナイトを動かしたと納得するが、

(せめてあと2人は欲しかったわね…)

 しかしいないものを考えても仕方がないし、そもそも天使が人間に直接干渉するのが異例中の異例だ。

「そうだな…しかし一体何が起きているのか分からんな。ランス、お前が何か言ったのか?」

「大したことは言ってないぞ。スラルちゃんが相手に信じられないのが怖いと言っていたから、俺様がアドバイスをしてやっただけだぞ」

「ランスにとってはアレがアドバイスなの…?」

 レダがランスの言葉にため息をつく。

 昨日のスラルの件は完全にランスの言葉に触発されたものだとレダは思っている。

「ランスは一体何を言ったのだ?」

 ケッセルリンクに問われ、レダは昨日のランスの言葉を伝える。

 少しマイルドに言ったつもりだが、ケッセルリンクは目を伏せて何かを痛感しているようだった。

「そう…か。そんな事が…」

「俺は特別な事を言ったつもりは無いぞ」

「ランス…お前にとっては特別では無い事なのかもしれない。だが、全ての存在がお前のように強い訳では無い」

「そんな事までは知らん。弱いなら弱いなりのやり方があるだろ。ましてやスラルちゃんは魔王だ。俺様はもっと必死で耐えている奴を知ってるぞ」

 ランスが思い浮かんだのはやはりリトルプリンセス…美樹の事だ。

 その内には強い不安を感じているのはランスにも分かる。

 シリアスが続かないのはあの二人の性分だとしても、相当に辛そうだとシィルも言っていた。

「大体他の奴に認められようが認められなかろうが、そんなのは俺にはどうでもいい事だしな。そんなに他人の目を気にして生きても疲れるだけだろ」

「ランス…」

 ケッセルリンクはランスの言葉に痛ましい表情を浮かべる。

(…そうか、これがランスの生き方だったという事か)

 快楽を求める事、退屈を非常に嫌う事、人の目など全く気にしない事。

 少し刹那的な生き方をしていると感じてはいたが、それがランスの死生観という事なのだろう。

 だから永遠の命にも全く興味を示さない。

 誰でもいつかは死ぬもの…それは自分も例外ではないと考えている。

(ランスは己の生き方を変えれぬのだろうな…)

 思わずケッセルリンクはランスを抱きしめる。

「む、何だ急に」

「いや…何故かこうしなければいけない気がしてな」

「まあ俺様は役得だからかまわんがな」

 ケッセルリンクはしばらくの間、ランスを抱きしめ続けた。

 

 

 

「我の目が赤い…か」

 スラルは自室の鏡で己の顔を見る。

 そこには何時ものようにエメラルドグリーンの目をした自分が映っている。

 勿論ランスとレダ嘘を言っているとは思っていない。

 それに確かに自分はランスを押し倒し、無理矢理魔人にしようとした。

 その時には言いようのない幸福感に満ちていたのも事実だ。

「あれも我だったのか…」

 直前になりなんとか意識を戻す事は出来たが、問題はその後だ。

「うぅ…でもあんな事になるなんて…」

 ランスに逃げるように促したが、まさかランスが自分を抱くとは考えてもいなかった。

 だがその結果、自分は見事なまでに安定している。

「それに…まったく抵抗できなかった…いや、違う。抵抗しなかった…」

 本来であれば人間が魔王を襲うなど不可能だ。

 それでもランスが事を成就出来たのはやはり自分がランスを受け入れたからだ。

「…やっぱり原因はアレだな」

 思えば自分は意図せずしてランスがセックスしている所を見てしまっている。

 レダといいケッセルリンクといい…そして最後にはカミーラだ。

 そして今思えば、カミーラは笑っていた。

『自分はもうランスとここまで進んでいる。お前にここまで出来るか』と言われたような気がした。

 その結果、自分はランスを受け入れた挙句、途中からは自分もその快楽に身を委ねていた。

「別に処女だからどうだとかそんな事は無いし、ようやく重荷を外せたーとかも思っていないし」

 自分を誤魔化すかのように鏡に向かって言うが、空しくなってしまいため息をつく。

 そのまま魔王特製のベッドに横になると、そのベッドの柔らかさが嫌でも昨日の情事の事を思い出させる。

「ううう…」

 思わずシーツを掴みながらゴロゴロとその場で転がる。

 今でも覚えている自分の体を隅から隅まで弄り回した大きな手、自分の体を色々な部分を舐めまわした舌、そして自分を女にした部分…その感触が今でも思い出される。

 そして何よりも自分のお腹の中に放たれる熱いモノ…それを思い出しただけで体が火照ってくる。

「んっ…」

 それを意識すると、下半身に熱を感じ、何か熱いモノが自分の中から出てくる。

「えっ…」

 思わずスラルはその出たものを手で触れる。

「これってランスの…」

 その言葉を口にしただけで爆発しそうになる。

 一体あの男は自分にどれだけ欲望をぶつけたというのか。

「…!」

 急いでシーツを洗うようにメイドさんを呼ぼうとするが、非常に躊躇われる。

「…どうしろっていうのよ」

 スラルはそのまま眠れぬ夜を過ごした。

 

 

 

 例え魔王が眠れずとも、嫌でも朝は来る。

 無論一日程度寝れずとも魔王には関係ないが、何しろ昨日が昨日だ。

 ある事をしていたため、体力の消耗も激しい。

(うう…ランスの馬鹿)

「大丈夫か? スラル」

「ああ、問題無い」

 ガルティアの気遣う様な声にスラルはいつもの様に応える。

(まさかあんな事をしていて疲れているなんて言えない…)

「それでガルティア。あれからどうなっている?」

「大して変わってねぇな。魔物将軍が少ないから作業も捗らないしな。デカント達で撤去作業がほとんどさ」

「そうか」

 ガルティアの報告はスラルの予想の範疇だ。

 これだけの被害がそう簡単にどうにかなる訳はないし、人材の補充がそんな簡単にいくわけが無いのだ。

 スラルとしても10年から20年ほどかけなければ、以前のようには戻らないと理解している。

(こういう時に魔人のまとめ役がいればいいのだがな)

 魔王は確かに魔人を含めた全ての魔物の頂点だが、だからといって全ての事を魔王だけで出来るものでもない。

 魔王が不在の時には代わって指揮を取れる存在がいれば非常に助かる。

(が、所詮は机上の空論だな。実力だけならカミーラだが…カミーラが誰かを束ねて指示をするという事は考えられない。ガルティアにもその気は無いようだし、メガラスは論外だ。ケイブリスだと誰も従わないだろうし、昼間は動けないケッセルリンクも難しい)

 今存在する魔人の中でも割とスラルに近しい存在を思い浮かべるが、やはり誰一人としてまとめ役には程遠い。

 この場にいない魔人の事を考えるが、やはりそれらも魔人を束ねる者としての素質は薄い。

(やはりランスが一番なのだと思うのだがな…)

「はぁ…」

 それが出来ないから困っているのだと嫌でも思い知らされる。

「ああ…悪いな、スラル」

「いや、気にするな。今のは私事で出たため息だ。現状はガルティアとケイブリスに任せる」

「おう。じゃあ行って来るぜ」

 ガルティアは何時ものように軽い足取りで作業に戻る。

「ガルティア!」

「おう」

「…いや、何時もすまないな」

 スラルの言葉にガルティアは一瞬驚くが、直ぐに嬉しそうな顔をして、

「また料理をつくってくれや。俺はそれだけで満足さ」

 それだけ言って今度こそ魔王の間から消える。

「他の魔人もあれほど素直なら助かるのだがな」

 魔人にそれを求めるのが間違っているのかと思っていたが、その一方で自分に尽くしてくれるガルティアやケッセルリンクの存在を考えるとやはり悩ましい。

「ランスは…間違いなく言う事を聞かないタイプだな」

 ランスは間違いなく魔王の命令だろうと従わないタイプだが、それと同時に何か惹きつけられる魅力をも兼ね備える男だ。

 あの男が魔人となれば、間違いなく魔人のトップになろうとするだろう。

 そしてそれらを纏められる器があるのだろうが、面倒くさいという理由で投げ出す光景が目に浮かぶ。

 だがそれでもあの男が欲しい…その欲求だけが膨れ上がる。

 カミーラもあの男を欲しているようだが、渡す訳にはいかない。

「お前には渡さぬぞ…カミーラ」

 そう言うスラルの目は普段よりも鈍く輝く。

 その目の一部が赤く染まっている事にスラルは気づいてはいなかった。

 

 

 

 ──―天界──―

 

「これで終わりですか」

 クエルプランは一仕事を終えると再び別の書類を取り出し作業に入る。

 人間が死ぬのは珍しくないが、魔物がこれほど死ぬのはクエルプランとしても予想外だった。

 その処理が終わったところだが、やはりそれ以上に人間は早く死に、そして生まれる。

「しかし…どうしましょうか」

 クエルプランは先にあった事をどうしたら良いのか決めかねていた。

 本来は1級神である女神ALICEの管轄だと思うのだが、まさか自分に対応を丸投げしてくるとは思ってもいなかった。

 確かに不明な魂ならばクエルプランの管轄でもあるが…だからといってどうすればいいのか上手い考えが浮かばない。

 エンジェルナイトを複数送れば消滅させるのは簡単だろうが、問題は共にいるのが魔王だということだ。

 魔王は1級神、2級神には及ばないが、それでもそんな簡単に手を出していい存在ではない。

 仮に魔王がその人間を守れば、エンジェルナイトの大群を送り込まなければならなくなる。

 しかしクエルプランとしてはそれは避けたい…今の世界が動き出してまだ420年、それなのに再びエンジェルナイトが関わるのはあまり好ましくない。

「ですが放置していい問題とも思えませんし」

 イレギュラーは放置するのはクエルプランとしては好ましくは無い。

 しかし自分よりも上の神はそのイレギュラーを取除くのは好しとはしないだろう。

 だとすると、やはり三超神に判断を仰ぐべきだが、そんな簡単には会えない存在だ。

 人間なので80年ほどすれば寿命で死ぬだろうが、判断が難しい。

「…少し様子を見ましょうか」

 結論は様子を見るという消極的なものになった。

 80年は神にとっては一瞬であるし、もしかしたら人間が魔王の元から離れる可能性もある。

 何かあればその時に改めて対処すればよいと考える。

「それに…どうしてでしょうか、殺してはならないという感じがします」

 クエルプランは本来の己の仕事に戻る。

 あっさりと人が死に、そして生まれ、魂の番号が割り振られる。

 それがクエルプランの日常なのだ。




ランスが居ると世界が巻き込まれるのは常識
完全なイレギュラーだから仕方ないんです!
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