ランス再び   作:メケネコ

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穏やかな日々(ランス基準で)

 ランスとシルキィの激しいセックスが終わった後、ランス達は魔法ハウスのリビングに集まっていた。

「とりあえず魔人メディウサを倒した訳だけど…これからどうするの?」

 レンはランスに尋ねる。

 このパーティーのリーダーはランスだし、ランスはこういった判断を誤る事は殆ど無い。

 むしろランスが適当に決めた事が良い方に傾く事も多い―――悪い方に傾く事もあるのだが。

「むー…」

 そして当のランスはというと、どうするべきかを特に決めてる訳では無かった。

 とりあえずあの魔人メディウサは殺す、それだけは決めていたのだが、その後についてはまだ考えてなかった。

 ジルとスラルの事もあるのだが、今は時代が時代なのでやはり自由に動くのは難しいのだ。

 ランスもそれは理解しているので、そう頻繁に動く事は出来ない。

「魔人は倒しましたけど…そうする事でランス様が魔人に狙われる事も…」

 ジルはランスを心配している。

 何しろランスが魔人を倒した所に別の魔人も居たのだ。

 魔人レイはランスと共闘する形で悪魔と戦ったが、その魔人レイから魔王に報告が行くだろう。

 …と、考えるのが普通なのだが、魔人レイはガイの事をあまり良く思っていない。

 だからガイへの直接的な報告はしていない。

 ジルはランスを心配しているが、実際には魔人1人が死んだくらいで他の魔人は動かない。

 魔人というのはそんな情は持ち合わせいない。

 ましてや魔人から嫌われていたメディウサならば尚更だ。

「それは大丈夫でしょ。ランスを積極的に狙ってくるのはカミーラくらいでしょうし」

「…そのカミーラが問題だと思うのですけどね」

 日光はランスとカミーラの深い関係は知らない。

 何故カミーラがランスにここまで執着するのかは分からないが、それでも狙われているのは事実だ。

 そして前回の戦いでは本当に危なかったのだ。

 魔王ジルが乱入しなければ、ランスは本当にカミーラの使徒にされていてもおかしくなかった。

「カミーラは考えてもどうにかなるもんでも無いからな」

 カミーラに関しては本当に運としか言いようが無い。

 ランスが向かう先に良くカミーラと出くわすのはある意味運命なのかもしれない。

 そしてその度にランスがカミーラを撃退する、もしくは何かしらの乱入が起きる…それもまた偶然だけとは片付けられない何かがあるのかもしれない。

「そのカミーラって、あの魔人四天王のカミーラ? ランス君、そんな魔人に狙われてるの?」

「カミーラなんて一人しか居ないだろ。何でか知らんが、あいつは俺様を使徒にしようと狙っている奴だ。そういう奴じゃ無かったと思ったんだがな」

 昔はランスの知るカミーラと、今のカミーラのギャップに驚いていたが、今はもう慣れてしまった。

 今のカミーラこそが、ランスにとってのカミーラの記憶に刻まれてしまった。

「ランス君も大変ね…まあ何かあったらお姉ちゃんに任せなさい」

「………お姉ちゃん?」

 シルキィの言葉にレンが怪訝な顔をする。

 その言葉にランスは憮然として答える。

「こいつが勝手に言ってるだけだ。何でか知らんが俺様の姉を名乗るようになったらしい」

「ええ…」

 ランスの言葉にレンも非常に微妙な顔をする。

「…ランスの姉ですか」

 日光も言葉は短いが、非常に驚いてるようだ。

「ランス様の姉…じゃ、じゃあ私にとってもシルキィさんはお姉さんに?」

「アホか。真に受けるな。言って聞くような奴でも無いから気にするな」

 ランスは少しだけ疲れたような声を出す。

 最初はシルキィの戯言だと思っていたのだが、どうやら本当にランスの姉を名乗る気らしい。

 そしてシルキィの頑固っぷりはこれまでで思い知っているのでランスとしてはもう止めようが無い。

 ランスの事を『お兄ちゃん』と呼んで慕ってくる相手…ウェンリーナーなどが居るが、姉を名乗る奴は初めてだ。

(しかもこいつはどれだけ攻めても絶対に曲げなかったからな)

 流石のランスも自分の姉を名乗るのは御免だとセックスでシルキィの考えを変えようとしたが、シルキィは全く考えを改めなかった。

 体力も十分すぎるほどあり、ヘロヘロにはなっていたが最後までランスのセックスに耐えきった。

 シルキィは体力も凄いが、何よりも凄いのはその精神力だとランスは思い知った。

(ミラクルみたいに面白いのならいいのだが…シルキィは頑固だからな)

 ランスは勿論楽しんでセックスは出来たが、シルキィもまたランスとのセックスに耐えられるかなりの好き者だったのは意外だった。

「ですがどうしていきなりそんな事に?」

 日光の疑問にシルキィは苦笑する。

「私もなんでかなあって…答えは微妙にでないんだけど、そうする事が一番いいかなって」

「答えになっていないと思いますが…」

「ランス君に必要なのはブレーキだと思ったから。他の人が言っても聞かないけど、家族なら止められるんじゃないかなーって」

「…その結果がランスの姉を名乗る事? 人間の考える事って良く分からないわね…」

 シルキィの答えにレンは首を傾げる。

 もう人間界に居て長いが、未だに人間の事は理解出来ない。

「いいんですか? ランス様」

「良くないに決まってるだろうが。俺様に姉なんぞいない」

「まあまあランス君。別に問題は無いでしょ? それともランス君に何か不利益でもあるの?」

「アホか。勝手に姉を名乗る奴が居るのが問題だろうが」

 ランスは憮然とするが、正直シルキィは止められない…とも感じていた。

 この手のタイプは一度決めたら梃でも動かないだろう。

 まあ別にランスも心の底から嫌という訳でも無いし、ランス本人に実害があるかと言えばまあそんな事は無いだろう。

 なので結局はシルキィの好きにさせる以外に無いのだ。

「まあそれはランスとシルキィの関係だからどうでもいいけどさ。ランス、これからどう動く?」

「フン」

 ランスはレンに話を振られて考える。

 そう、これまでは明確な目的があって行動をして来たし、そうする必要があった。

 今回メディウサを倒した事で取り敢えずの一区切りが出来たのも事実なのだ。

(他の魔人をぶっ殺す…というのも面倒だな。ケッセルリンクをどうにかするためには…やはり魔王の所か。それとスラルちゃんもだな)

 ランスの目的はジルの体の中に居るスラルの新たな肉体を用意する事。

 ただ、スラルは今現在ジルの中に残って居る僅かな魔王の血を押さえるため、ジルの体の中に居る必要がある。

 幸いにも日光からも魔王判定はされていないが、よからぬ事を考える連中というのは何処にでも居るのだ。

 なのでジルの体を安定させたいというのも今の目的の一つだ。

 そしてもう一つがランスの剣の中に居るケッセルリンクの呪いを解く事。

 ただ、これが一番重要でそして一番面倒だ。

(魔王の呪い…シィルがかかったやつだが、結局はヘルマンにあるアイテムで魔王の呪いを解いたんだよな)

 シィルは魔王リトルプリンセスの呪いから解放され、ランスと共に冒険をしていた。

 つまりは魔王の呪いを解放するためにはそれなりのアイテムが必要となる。

 実際には―――シィルの呪いはまだ解けていないのだが、それを知っているのはIPボディを使ってシィルを一時的にランスの元に戻したクルックーだけだ。

 なのでランスは特殊なアイテムで魔王の呪いを解いたと思い込んでいた。

「うーむ…」

 ランスは唸る。

 この二つは一朝一夕でどうにかなる問題ではない。

 それこそ大きな冒険が必要な事態なのは間違いない。

 これがLP期…人類の時代ならランスも好き勝手に動けるし、リーザス、ヘルマン、ゼスの協力も得る事も出来るのだが、生憎は今はGI期の初期だ。

 人類の王国なんて存在しないし、人類は今も魔物によって蹂躙されている。

「悩んでるようだね」

「おはようございまーす! 皆さん!」

 ランスが頭を捻っていると、そこにハンティとベネットが入って来る。

「話は聞いてたけど、アンタでも悩むことがあるんだね」

「そりゃどういう意味だ」

「昔の出来事を知ってれば色々と察する事も出来るさ。ま、私に何が出来るって訳でも無いけどね」

 ハンティとベネットが使っていない椅子に座る。

「で、私から依頼って形があるんだけど…聞いてくれるかい?」

「お前がか?」

 ハンティの言葉にランスはちょっと驚く。

 ヘルマン革命でもハンティが参戦したのは本当に最後の最後なので、ランスはハンティとはあまり絡みが無い。

 ただ、今のこの時代ではそれなりの付き合いは有るが、それでもハンティはランス達からは一歩引いていた感じが有る。

 それはカラーに対しても同じではあるが、ハンティはなるべくランス達には干渉しないようにしているのはランスも分かっていた。

 そのハンティの頼み事というはランスも少し気になった。

「何、簡単な話さ。ちょっとの間ここに留まって魔物の動きを見て欲しいってだけさ」

「そんな事か。別に構わんぞ。特にやる事も無いしな」

「そりゃありがたいね。で、退屈凌ぎになるかは分からないけど、ベネットが新しいダンジョンを見つけて来たみたいだよ」

「いやー、あっしはやっぱりそういう才能が有るんでやんすね。結構色々なダンジョンがあってびっくりでやんすよ」

「ほう」

 ベネットの言葉にランスは俄然興味が出てくる。

 ダンジョンと聞いて、ランスの体の中にある冒険LV2の血が騒いだのだ。

 ランスは何よりも冒険が好きで、新しいダンジョンに挑戦したり、未知の発見をするのが大好きなのだ。

「そういやクエルプランちゃんの件もあったな。だったらバランスなんちゃらとやらも探してみるか」

「バランスブレイカーでしょ。でもそんな簡単にみつかる物でも無いわよ」

「それならそれでやり甲斐があるというものだ。まあ俺様ならば余裕だ余裕」

「ランスなら本当にやりかねないのよね…普通、バランスブレイカーなんてそう簡単に見つからないんだけどね…」

「よーし、暫くの間はバランスブレイカーとやらを探すか。ついでにモンスターもぶっ殺すぞ」

 こうしてランスの次なる行動が決まり、暫くの間は穏やかな日々が続く事になる。

 

 

 

「うーむ、このダンジョンは外れだったな。モンスターも雑魚だし大したアイテムも無かったな」

「そういう事もありますよ、ランス様」

 ベネットが見つけてきたダンジョンだったが、全く実入りの無い結果になった。

 まあそういう事も多々ある事なので、ランスは別にそれに腹を立てたりはしない。

「冒険ってそういう面もあるのね。私、冒険なんてしてこなかったし…今はそれを楽しむ事が出来るくらい余裕が出来て来たって事かな」

「冒険は楽しいでやんすよ。まあこれも旦那と一緒に行動してから気づいたんでやんすけど」

 ランス、ジル、シルキィ、ベネットの4人でダンジョンに攻略に来ていた。

 日光とレンはペンシルカウで留守番をしている。

 彼女達が居れば魔物兵でも後れを取らないのは間違い無かった。

「それにしても罠って怖いのね。電撃罠とか地雷とか…こういうのって誰が作ってるのかしら」

「お前が罠に警戒しなさすぎなんだ」

 シルキィの言葉にランスは呆れた声を出す。

 ここまで無頓着だとむしろ清々しいが、ランスからすれば迷惑な事だった。

「ランス様、水です」

「うむ」

 ランスはジルから渡された水を飲み干す。

「皆さんも」

「ありがと」

「助かるでやんすよ」

 シルキィとベネットも同じくジルから水を受け取り飲み干す。

 ジルもそれを見てから水を飲む。

「それにしてもジルって結構手馴れてるのね。その姿からは想像も出来ないけど…」

「私はランス様と色々と世界を回り、色々なダンジョンも見てきましたから。その経験があります」

「そういえばそうなのよね…正直理解に苦しむ事ではあるんだけど」

 ジルの事情を知っているとはいえ、シルキィにはやっぱり理解出来ない所も有る。

 彼女の姿が少女なのもあり、ギャップが激しいのだ。

「それにしても…旦那の周りには強い女性が集まるんでやんすね。あっしも楽が出来て本当に嬉しいでやんすよ」

「…私から見たらあなたも十分強いと思うんだけど」

 ベネットの言葉にシルキィは苦笑する。

 実際ベネットは本当に凄く強い。

 何しろ一人で魔物兵をナイフで倒せる当たり、相当な腕前なのは間違いない。

「いやいや、あっしはカラーの異端児でやんすしね。魔法は使えない、弓も使えない、有るのはこの腕だけでやんすよ」

「十分強いから問題無いと思うけど。カラーの社会が分からないから何とも言えない所よね」

「弓も呪いも使えないというのは私も同じだ。気にする必要は無いだろう。ベネットは十分すぎる程の能力を持っていると私は思う」

「あん? ケッセルリンク、お前起きてたのか」

 突如として聞こえてきた声にランスは少し驚く。

「ああ。私だって常に眠っている訳では無いからな」

 ケッセルリンクは姿は見せないが、話す事は出来るようだ。

「ケッセルリンク様にそう言われるのは嬉しいでやんすね…何しろケッセルリンク様はカラーの英雄でやんすからねえ」

 ケッセルリンクに褒められたのが嬉しいのか、ベネットは少し気恥ずかしそうに頬をかく。

「…疑問なんだけど、ケッセルリンクって魔人なのよね。それでもカラーにとっては英雄なの?」

 シルキィは以前から思っていた疑問をあえてぶつける。

 流石にペンシルカウでは口には出せないが、今はベネットだけなので聞いてみても良いと思ったからだ。

「まあ人間から見たらカラーは魔人を崇拝してると思われても仕方ないでやんすね。ケッセルリンク様は言葉通りカラーの英雄…何しろ魔人を討った偉大なる方でやんすから」

「だからそれは嘘だと言ってるだろうに。全く…全てを正確に残すのは憚られるのは分かるが、そうした間違った歴史がカラーを苦境に立たせているという事も忘れないで欲しいな」

「耳が痛いでやんすね…」

 ケッセルリンクの言葉にベネットの耳が垂れる。

 カラーの現在の苦境はカラー自身が招いた事であり、それは最早どうしようもない。

 カラーのクリスタルが強力な武器になる事は既に人間達に広まってしまっている。

 だからこそ今でもカラーのクリスタルを狙う人間が後を絶たない。

「魔人を倒したって…本当?」

「嘘ではない。嘘では無いが、私が倒した事になっているのが問題だった。あの時魔人を倒したのは私だけでなく、ランスやレン、そしてカラーの皆が一丸となって戦ったからだ」

「うーん…それって遥か昔の話のはずなのよね。やっぱり私には理解出来ない話だわ」

「する必要は無いさ。ただ、ランスに関わるならば嫌でもこういう事は起きると覚悟した方が良い」

 ケッセルリンクの忠告にもシルキィは朗らかに笑うだけだ。

「まあ私はランス君の姉だから。覚悟なんてとうに出来てるわよ」

「…お前は本当にそれを貫き通すつもりか」

 シルキィの言葉にランスは呆れた声を出す。

 ケッセルリンクも剣の中で驚いているらしく、少しの間無言だった。

「…ランス、お前には姉が居たのか」

「お前も何を言っている。シルキィが勝手に俺の姉を自称しているだけだ」

「冗談だ。それにしても…お前の姉か…」

 ケッセルリンクは剣の中で勝手に悩んでいる。

 それだけ彼女にとってもシルキィの言葉は強烈だった。

「あ、所で聞きたいんだけど…ランス君と魔人ケッセルリンクは…親しいんだよね」

「うむ、俺様の女だな」

「私が魔人になる前からの付き合いだ。そして魔人になってからも共に戦い抜いた戦友であり…恋人…だと私は思っている」

「こ、恋人…魔人相手に…いや、魔人になる前からの付き合いならおかしく無いのかな?」

 シルキィは流石にケッセルリンクの言葉を聞いて絶句する。

 魔人と恋仲なんて正直信じられないが…だからと言って、それを否定できる要素も無い。

「そういえばケッセルリンク様と旦那の出会いってどんな感じだったんでやんす? カラーの歴史には人間と協力して魔人を倒した、としか伝えられてないでやんすから」

「…ああ、そうか。今はきちんと伝えられているんだな。だが、私とランスの出会いは別に特別な事があった訳では無い。ランスが突如としてカラーの森の近くに現れた、それを私が保護した。その時代はまだ人間はカラーを狙っていた訳では無いからな」

「ああ…人間がカラーを狙い始めたのはカラー王国の時代の後でやんすからね…その時はまだ平和だったんでやんすね」

「平和…というのは難しいがな。その時代には強力なムシが居た。それこそ今の魔物兵など相手にならない程に強力な存在がな。今は生存競争に負けたのか、全く見なくなったがな」

 ケッセルリンクは昔を思い出す。

 昔は人間からの脅威はそうでも無かったが、代わりにヴェロキラプトルといった強力なムシがはびこっていた。

 あの存在は魔物兵よりも遥かに強い上に、集団で連携して襲い掛かってくるのだからたまったものではなかった。

「ムシに襲撃を受けた時、ランスとレンは私達に力を貸してくれた。それからの付き合いだな」

「へー…そんな事があったんだ」

 ケッセルリンクの言葉にシルキィは感心している。

「そういやそんな事もあったな」

 一方のランスはそんな事は言われるまで忘れていた。

「それからランスと共に魔人を撃退した後で…私は死にかけている所をスラル様によって魔人にされた」

「え? ケッセルリンク様ってあっし達を守るために魔人になったんじゃなかったでやんすか?」

「そこは間違っているのだな…まあその一面は否定はしない。だが、実際には私はスラル様に命を救われる形で魔人になった。そこからが魔人としての私とランスの付き合いだ」

「…思った以上に複雑な事情なんですね」

 ジルもケッセルリンクの言葉を聞いて複雑な顔をする。

「それから長い年月が過ぎたが…私は時にはランスと協力して来た。だが…魔王の命令があれば私は嫌でもランスと戦わなければならない」

「え?」

「魔王の命令に魔人は逆らう事は出来ない。ガイだけが唯一の例外だったのだろうな…いや、ある意味ますぞえの奴もそうか」

「それはどういう意味?」

「言葉通りだ。魔人は魔王の命令には逆らえない。それがどんな理不尽な命令であってもだ。だからこそ…私は彼女に対して償いきれない程の事をしてしまった…」

 ケッセルリンクの言葉の意味はジルに向けられたものだ。

 あの時の事は決して忘れられないし、忘れてはならない事だ。

 例え本人たちがどれだけ気にして居なくともだ。

「そんな事があるのね…魔人は好き勝手して人間を殺してるってイメージなんだけど」

「それは間違っていない。大半の魔人が好き勝手にして人間を殺しているのは事実だ。ただ、魔人の中でもそうした事をしない奴も居る、というだけだ」

「…魔人も色々複雑なのね」

 その言葉を聞いてシルキィは複雑な顔をする。

 魔人メディウサはこれまで人間を苦しめて来た恐ろしい魔人だ。

 それは倒さなくてはならない敵であり、決して許してはならない存在だった。

 だが、今自分と話している魔人からはそんな気配は感じられない。

(…全ての魔人は人類の敵だと思ってた。でも…そうでも無いのかもしれない。いや、ダメね。彼女が助けてるのはあくまでランス君という個人だからね)

 シルキィは色々と考えてしまうが、それとこれとは話は別だ。

「私自身…正直人間に対して思う事もあるのも事実だ。まあカラーの方に原因も有るのでその辺りは複雑な所なのだが…」

 ケッセルリンクとしてもカラー王国に対しては今でも複雑な感情が有る。

 ただ、それでもカラーを狙う人間に対して良い感情を持っていないのもまた事実だ。

「でも…ケッセルリンクさんはランス様をずっと助けてくれてるんですよね?」

「ああ。ランスが色々とトラブルに巻き込まれているという事も有るが…私としても、スラル様の事も君の事も何とかしたいと思っている」

「その前にお前の呪いをどうにかせんとな」

 ランスとしてはケッセルリンクの呪いをどうにかしたい。

 同じ魔王であるガイに解除させるのが一番早いのかもしれないが、ケッセルリンクは前魔王ジルの命令があったとはいえ、明確に現魔王であるガイに逆らっている。

 ガイがどういう男なのかは知らないが、逆らった事を理由にケッセルリンクを処罰する可能性はランスの中では十分にあった。

 ―――実際にはそれは杞憂なのだが、ランスはガイの事を全く知らないので無理も無いだろう。

「でも魔王の呪いだなんて…どうすればいいでやんすかね。正直歴代のカラーの女王でも魔王の呪いなんて解けないでやんすよ」

「そんなんは分かっとる。パステルでも完全には無理だったしな。まあ方法は有るから問題無い」

 ランスにはシィルをリトルプリンセスの呪いから解放した実績があるので、それほど重大だとは考えていない。

「それはともかくとっとと行くぞ。外にもダンジョンはあるだろ」

「そうね。私も早くダンジョンの攻略になれなくちゃね」

 こうしてランス達は今は地獄のGI期でも割と好き勝手にしているのだった。

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