ランス再び   作:メケネコ

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カフェとの再会

 シルキィ・リトルレーズンは怒っていた。

 それは懸命に生きている人間達が魔物によってゴミのように殺される事が許せなかった。

 魔人メディウサに対してはその怒りが頂点に達したが、魔人相手では流石に分が悪すぎた。

 勝てたのはランスが規格外の強さを持っていた事、そしてまさかの魔人が加勢したからに過ぎない。

 そんな自分の不甲斐なさにも怒りを感じており、自分に出来る事を模索していた。

 そんな中で起きた今回の事件…ランスの言っている事は分かるが、それでもシルキィは動いていた。

 そして目の前に起きている悲惨な光景、そこで怒りが頂点に達した。

 無謀と言われようとも、シルキィはそうする事しか出来ない少女だった。

「はあああああああ!」

 シルキィはリトルを身に纏い、その手にある武器を振り回す。

「ぐぎゃあああああ!」

「い、いでえ! いでえよおおおおお!」

 少女とは思えぬほどの腕力で振るわれた武器に当たった魔物達はあっさりと打ち砕かれる。

「こ、こいつ、強いぞ!?」

「囲め! 囲めば何とでもなる!」

 シルキィの暴れっぷりに魔物兵は動揺するが、魔物隊長が指示を飛ばす。

 それを受けた魔物兵達はシルキィを囲むように動く。

(これがランス君が魔物の頭を潰すと言ってた理由か。失敗したわね…ランス君だったら真っ先に魔物隊長を狙ったでしょうね)

 シルキィとしては頭に血が上っていた事でのミスを認めざるを得ない。

 もしランスが居たならば、無計画に突っ込むのではなく確実に魔物隊長を一番最初に倒していただろう。

(私にはランス君みたいな器用な事は出来ない…私に出来るのはこれだけ!)

 魔物達に囲まれたシルキィだが、それでも一直線に魔物隊長に向かって行く。

「な、なんだこいつ!?」

「お、おいもっと壁を作れ! それじゃないと…!」

 囲まれても構わずに一点突破を狙うシルキィに対し魔物兵は再び動揺する。

 まさか人間がここまで凄まじい力を振るってくるなんて想像もしていないからだ。

 今の魔軍にとっての人間とは好きなだけ壊していい玩具という扱いなので、人間に反抗されるという考えも無い。

「どけ!」

 シルキィはリトルを纏ったまま魔物兵に突撃する。

 その衝撃で魔物兵の体はくの字に曲り、そのまま絶命する。

「調子にのるな! 炎の矢!」

 魔物兵はシルキィに対して魔法を放つが、シルキィは全く止まる様子が無い。

「な、なんだこいつは!?」

 魔物兵の驚愕の声を聞きながら、シルキィはリトルを振り回し魔物兵を吹き飛ばしていく。

(ランス君と出会って一番良かったのはこれかもね。カラーと出会えた事で色々とアイテムを貰えたのは大きいわね)

 シルキィの技能は付与だ。

 他にも剣、斧、槍と出来る事は多いが、何よりも彼女が凄まじいのがその付与の力だ。

 魔人メディウサを倒した事でカラーからの信頼を得られたのか、カラー達からは色々なアイテムを貰えた。

 その中で大きかったのはやはりカラーのクリスタルだった。

 カラーのクリスタルの意味を知り、シルキィはそれを受け取るのを拒否したのだが、カラー達からは『あなたに使ってもらった方が彼女も喜ぶと思うから』と言われては断れなかった。

 他にもランスの持っていたミスリルで出来た剣をランスの防具にしていた時、余ったミスリルをちょっと拝借してしまったりしていた。

 そのアイテムの力も有り、シルキィは魔法に対して高い耐久力を得ていた。

「消えろ!」

 斧状の姿に変えたリトルを振り回す事で魔物の包囲をあっさりと崩す。

「ば、バケモノだ!」

「つ、強すぎる!」

 そのシルキィを見て魔物兵達が悲鳴を上げる。

 それを見た魔物隊長は舌打ちすると、その剣をカフェに突き付ける。

「止まれ人間! この女がどうなってもいいのか!」

 魔物隊長の言葉にシルキィの動きが止まる。

 それを見て魔物隊長はニヤリと笑う。

「………」

 シルキィは鋭い視線を魔物隊長に向ける。

 その殺気には魔物隊長ですら背筋が凍る程だが、今の圧倒的な優位な状況を思い出す。

「動くなよ! 動くとこの女を殺すぞ!」

 魔物隊長は剣をカフェの首に当てる。

 それを見て流石のシルキィも密かに舌打ちをする。

(…見通しが甘かったか)

 今の自分ならば魔物隊長に届くと思っていたが、少々見通しが甘かったようだ。

「よーし、お前達! その人間を捕らえろ!」

「は、はい!」

「手間かけさせやがって!」

 魔物兵達は安堵の声を出しながらシルキィに近づき―――シルキィが振り回したリトルに体を引き裂かれる。

「な、お、お前!?」

「どうせ私を殺した後でその人を殺す気でしょう。だったら…私はあなたを殺す方を選ぶ」

「き、貴様!?」

 シルキィの言葉に魔物隊長は口を引きつらせる。

 同時にこの人質に価値が無くなったことを知り、その剣を振るおうとした時―――その頭に一本の剣が突き刺さる。

「ぐべっ」

 魔物隊長はそのまま倒れて絶命する。

「え? た、隊長?」

「い、一体何が?」

 魔物兵達は突如として死んだ魔物隊長に困惑するしかない。

 そして魔物隊長に突き刺さった剣を見て、シルキィは目を見開いた後で嬉しそうに笑う。

「来てくれたんだ、ランス君!」

「やかましい! 俺様が来なかったらどうするつもりだ! このバカ!」

 そして何時もの怒鳴り声を共に、魔物兵の悲鳴が聞こえてくる。

 ランスは刀を振るって魔物兵を斬り裂いている。

「…ごめんなさい。先走っちゃった」

「思った通り全滅してただろうが! お前の行動で今までの俺様のやってきた事がパーになるかもしれんのだぞ!」

「そこまで考えてなかったなあ…本当にゴメン」

「フン、戻ったらオシオキだオシオキ。こい!」

 ランスが言葉を放つと、魔物隊長に突き刺さっていた剣がランスの手元に戻る。

 そんなランスを見て大きく目を見開いていたのはカフェだ。

(…え? あれ…もしかしてあの時の? ううん、そんなはずない。だってアレから何百年も経っているのに…)

 カフェは一度だけだがランスに出会った事がある。

 その時は敵対していたのだが、同時に一時的にだが共闘した仲でもある。

「とっとと潰して早く行きましょ。魔物将軍が居たら面倒だし」

 ランスの側に金髪の人並外れた美しさを持つ女性が面倒くさそうに言う。

(あれは…確かレンって人だよね。じゃあやっぱり…本当にあの時)

 もう何百年と経っていたが、カフェはランスの事を覚えていた。

 いや、アレほどの強烈な人間はそう忘れられるものでは無いだろう。

 そしてその隣にいた金色の髪をした美しい女性も。

 だが…何よりも彼女を驚かせた存在が居た。

「魔物は…斬ります!」

 そこには刀で魔物を斬る美しい女性が居た。

(…ウソ)

 それはカフェが尤も羨望を抱いた相手。

 彼女への僅かな嫉妬心から、自分はあんな願いを口にしてしまっていた。

 何度も何度も心の中で日光のようになれたらいいのにと思っていた女性。

 そして…何よりも大切な仲間。

 その女性が今目の前で魔軍と戦っている…以前と変わらぬ姿で。

「だ、だめだ! に、逃げろ!」

 魔物隊長が死んだ事で完全に士気が崩壊した魔物兵には、この状況はもうどうしようもなかった。

 一斉に逃げようとするが、

「電磁結界!」

「ライトボム!」

「ぐわあああああ!」

 レンともう一人の女性…いや、少女が放った魔法で一斉に倒れる。

 そして止めには、

「ラーンス…あたたたたーーーーーーっく!!」

 ランスの放った必殺の一撃が無数の魔物兵をバラバラにする。

 その凄まじい力は以前カフェが見た光景よりも遥かに凄い。

(また強くなってる…でもどうして…)

 カフェは目を丸くしているが、ランス達はそんなの気にならないようだ。

 そして逃げようとしていた魔物兵は、結局逃げる事も出来ずに全滅させられた。

「がはははは! 楽勝だな!」

 ランスは高笑いしながらカフェの元へと向かう。

 そしてその顔を見て顔を綻ばせる。

「おお! こいつは超当たりだぞ! こいつみたいな女は…」

 ランスはカフェの顔を見て歓喜する。

 が、その顔が突如として歪む。

「…なんかコイツ、何処かで見た事あるぞ」

 ランスはその顔をじーっと見る。

 カフェとしてはランスの視線に正直戸惑いを感じていた。

 日光からランスという人間はとんでもない人間だと聞かされていた。

 強さは尊敬するし、決断力も凄いが、男に厳しく女にだけ優しい、と。

 前に会った時からとんでもない男だとは思っていたが、今自分に向けている視線はこれまでの男のような好色な視線では無かった。

 ランスはカフェの体の鎖を全部外し、猿轡も外す。

 そこにあったのは凄い綺麗で美しい顔だ。

 それこそ絶世の美女、ランスならば速襲う事は間違いなしの女だ。

 黒と青みのかかった美しい髪に、サファイアのような瞳。

「………カフェ、お前何やっとるんだ」

「…え?」

 ランスが自分の名前を呼んだことにカフェは驚く。

「おい日光。こいつ、カフェだぞ」

「…は?」

 ランスの言葉に日光がその絶世の美女を見る。

 そこに居たのは間違いなく自分の知っているカフェではない。

 だが、それなのにランスはこの美女の事をカフェだと言う。

「日光さん…」

「…ま、まさかあなた…本当にカフェなのですか?」

「うん…皆と一緒に遺跡に行った時に…バカな願いを言っちゃった。カオスも…日光さんも魔人を倒せる力を願ったのに」

 その言葉を聞いて日光はカフェを抱きしめる。

「生きて…生きていたんですね、カフェ!」

「一応ね…散々だったけど」

 こうして日光とカフェは数百年ぶりの再会を果たす事になった…本来の歴史とは違い、このGI期の初期に。

 

 

 

 ランス達は取り敢えず形を残している民家に入る。

「それにしても…日光さんと再会出来るなんて思わなかった。それに姿が全然変わって無いし」

 カフェは何処か疲れたような顔をして日光に向かって微笑む。

 その笑みは非常に魅力的で、誰もがその笑みを見れば彼女をどうにかしてやりたいと思うだろう。

「ええ…まさかあなたがカフェだとは思いませんでした。ですが…生きていてくれて良かったです」

 日光は久々の仲間との再会に笑みを浮かべる。

「ねえ日光さん。他の皆は?」

「カオスは…今はどうなっているかは分かりません。ですが、私同様に魔人を倒す力を得ました」

「そうなんだ。それで、魔人を倒す力って?」

 カフェの問いに日光の姿が変わる。

 日光が刀に変わった事にカフェは目を丸くする。

「日光さんが…刀に変わった」

「今の私を振るえば、魔人の無敵結界を破る事が出来ます」

「そうなんだ…日光さんとカオスはきちんと願いを叶えたんだ」

 日光の姿が人の姿に戻った事で、カフェの目に涙が浮かぶ。

「ごめんなさい…私だけ…こんな願いを…カオスもホ・ラガも日光さんも…魔王と魔人を倒す願いを願ったのに」

「カフェ…」

 カフェの涙に日光は何も言えなくなる。

 確かにあの時カフェが願った願いには皆が驚いた。

 ただ、その後はカフェならば幸せに過ごしてくれていると思っていたのだ。

「ごめんなさい、ごめんなさい…」

 カフェは泣きじゃくりながら日光に謝る。

 そんなカフェを日光は優しく抱きしめる。

「いいんです。もう昔の事です。それに…あなたがこんな辛い目にあっていたなんて…」

「それは…私が悪いの。あんな馬鹿な事言ったからこうなってるだけだから…」

 カフェが今まで悲惨な目にあっていた事は彼女の姿を見れば分かる。

 確かに彼女は美しいが、それ故に色々と辛い事を経験してきたのだろう。

「フン、アホだアホ。別にそんな願いなんぞ無くてもお前は可愛いだろうが」

「ランスさん…」

「全く」

 ランスは呆れた声を出しながら、カフェを押し倒した。

「え、ランスさん!?」

「ランス!? いきなり何を!?」

 日光は慌ててランスをカフェから引き離す。

「…ありゃ? 俺様何をした?」

 カフェから引きはがされたランスは自分のやった事が理解出来なかったように首を傾げる。

「…まさかこれが今のカフェの?」

「うん…男の人は皆私に対してこんな感じになっちゃって…女の人からの視線も凄い怖くて…」

「これではまるで呪いでやんすね。どうりであっしも彼女に対して変な感情が沸き上がってきてるでやんすよ」

「ベネット…呪いってどういう事? 私は特に何も感じないけど」

 ベネットの言葉にシルキィは不思議そうな顔をする。

「ジル、あなたは?」

「私も特には…レンさんは?」

「私は人間に対してはそういう感情持たないしね。でも、確かに何かの力みたいのは感じるけど…」

 レンは下級の神でしか無いので事は分からないが、願いを叶えたをいう事は何かしらの力が作用した事は分かる。

 ただ、自分は人間に対してはそういう感情…嫉妬のような感情を抱かないというだけだ。

「シルキィは精神力が強いし、ジルは今はこの体だからかしらね…」

 レンは仮定を延べるしか無いが、恐らくは正しいと思う。

「問題はランスね…美女には弱いから影響を強く受けるのよ」

「そんなの俺様のせいじゃ無いだろうが!」

「はいはい、とりあえずそっちを何とかしないとね」

 レンはランスを羽交い絞めにしてカフェに近づけないようにする。

 そうしないとランスがカフェを襲ってしまいかねないからだ。

「日光さん…ホ・ラガは? それと…ブリティシュは…」

「ホ・ラガの事は分かりません。生きているのかも…」

 日光も未だにホ・ラガに会っていない。

 彼も神に願いを叶えて貰ったのだから、自分と同じように生きている可能性は高い。

 だが、そのホ・ラガが未だに動いた気配すら無いのは日光も疑問だった。

 もしかしたら死んでしまったのかもしれない…そう思い始めてもいた。

「ブリティシュは行方不明です。なので今探しています」

「行方不明って…ブリティシュは生きてるの!?」

「はい。私はカオスとブリティシュと共に魔王ジルに挑みました。結果…魔王ジルは魔王で無くなりました」

「ジルに…魔王が変わったからもしかしたらジルを倒したのかなと思ってたんだけど…」

 カフェも新たな魔王ガイの事は知っている。

 そして魔王が変わっても、人間の生活は変わらなかった事に落胆もした。

 それどころか、新たな魔王は人間の虐殺をしているのだ。

 魔王を倒し、人間を魔物の手から解放するために戦って来たカフェにとってはそれは辛い現実だった。

「そこは色々な事情がありまして…とにかく、ブリティシュは魔王ジルとの戦いで異世界に飛ばされたようなのです」

「異世界? そんな事があるの?」

「有ります。世界と言うのは広い…それを思い知りましたから」

「そうなんだ…じゃあブリティシュはまだ…」

「生きていると思いますよ。彼がそんな簡単に死ぬと思いますか?」

 日光の言葉にカフェは笑う。

「そうだね…私達のリーダーだもんね」

 カフェが憧れ、淡い思いを抱いていた男、それがブリティシュだ。

 その彼がそんな簡単に死ぬはずが無い、カフェはそれは確信していた。

「で、今日光さんがランスさん達と居るのは…というか、ランスさん達が生きてる事に私は驚いてるんだけど」

「それは…まあ複雑な事情が有ります。正直私からは話せる事では無いので…」

「それとランスさん…どうして私が分かったの?」

「む、それは…」

 突然話を振られてランスは考える。

 ランスがカフェの事を知ったのはLPの時代…拷問器具に捕らわれていた彼女を救ったからだ。

 その時に拷問器具に写っていた女性こそが、クルックーが『レディ』と呼んでいた彼女だった。

 だが、その後でカオスがカフェの正体を言い当て、彼女は拷問器具から解放されると当時に、神から貰った美貌も失った。

「それは俺様が特別だからだ。うむ、感謝しろよ」

「…言ってる事全然分からない。でも、助けてくれてありがとうございます」

 何故か偉そうにしているランスに対してカフェは素直に頭を下げる。

 あの状況ならば何十年も魔物の慰み者になるか、最悪は殺されていたのは間違いない。

 ランスが命の恩人なのは紛れも無い事実だ。

「で、レンさん…もあの時のレンさんでいいんだよね?」

「そうよ」

「で…スラルさんは?」

 カフェはスラルの姿を探す。

 あの凄い魔法使いの事は今でも覚えている。

 何しろあのホ・ラガと渡り合った凄腕の魔法使いなのだから。

「スラルちゃんは今はこいつの中だ」

 ランスはポンポンとジルの頭を叩く。

「…は?」

「起きたら話せるだろ。とにかく今はスラルちゃんとは話せないだけだ」

「は、はぁ…それであなたは?」

「私は…ジル、です」

 ジルの名前を聞いてカフェの顔が歪む。

 同じ名前の人間がこの世界に居ても何も不思議ではない。

 ただ、あの魔王と同じ名前をつける親がいるのは正直あまり気分の良いものでは無い。

「前の魔王と同じ名前…なんか複雑」

 カフェは困惑するが、それを目の前の少女に言っても仕方の無い事だ。

 彼女に罪は無いのだから。

「魔王ジル本人だ。正確には人と魔に分かれたジルの人の部分だがな」

 その言葉はジルの口から聞こえてきた。

「え?」

「久しぶりだな、カフェ。あの洞窟で出会って以来か」

 目の前の少女と同じ声だが口調が全く違う。

 この少し偉そうな口調は確かにあの時の女性…スラルに似ていた。

「ランスが言ってただろう。たまたま目が覚めてな…話はジルの中で聞いていた」

「なんだ、起きてたのか。スラルちゃん」

「ジルの中の血を押さえるのは一苦労なのだ。そう言ってくれるな」

 ランスの言葉にスラルは苦笑する。

「…どういうことなのか全然分からない」

 カフェは理解が出来ず混乱するしかない。

「ランス、話していいか?」

「構わんぞ。カフェなら問題無い」

「…ふむ」

 ランスはジルの事を話す事を好まない。

 そのランスがカフェにならば話していいと言った事にジルは少し驚いた。

(…我の知らないランスの知り合いという事か?)

「では我が話そう。魔王ジルの事をな」

 そしてスラルはジルの真実を話す。

 それを聞いてカフェの顔がどんどんと歪んでいく。

 カフェにとってはジルは絶対的な敵であり、GL期は間違いなく地獄であったのだ。

「…凄い信じられない。でも…日光さんは魔王ジルと戦ったんだよね?」

「ええ。私は…魔人ガイ…そしてガイの剣であったカオスと共に魔王ジルと戦いました。結果は…今の状況の通りですが」

「魔王じゃなくて人間…なのよね?」

「魔王の血が僅かに残って居るが、魔王や魔人のような特性は持っていない。絶大な魔力を持っているが故に、この小さな体では暴走する危険性があるから、我がその血を押さえているだけだ」

「そっか…カオスも日光さんも…魔王と戦ってたんだ。それに比べて私は…」

 魔王ジルとカオス達の戦いを聞いてカフェの目から涙が流れる。

 二人は真っすぐに目的に向かって進んでいたのに、自分はこんな事になっている。

 カフェはそれが情けなかった。

「カフェ…」

 日光がカフェに声をかけようとした時、日光は凄まじい気配を感じる。

「カフェ! 危ない!」

 日光はカフェを抱き寄せると、カフェの居た所の壁が破壊される。

 カフェには影響が出ない崩れ方をしたが、壁をあっさりと破壊するなど勿論ただの魔物兵の出来る事では無い。

「人間か。どうやらここにいる奴等はお前達が倒したようだな」

 それは青い肌をした体の大きな男だった。

 そしてもう一つの特徴として、その体の頭には大きな角が生えている。

「これは…鬼?」

「おう、そうだ。俺は鬼だ。それを間違わない所を見ると…中々に面白そうな奴等だ」

 ランス達は急いで民家から出る。

 幸い魔物兵は存在していないが、問題なのは目の前の巨漢の鬼だ。

「日光さん!」

「間違いありません。魔人です」

「魔人だと!?」

 日光の言葉にランスは驚く。

 ランスは色々な魔人を知っているが、目の前の魔人は見た事が無かった。

「おう、そうだ。俺は魔人、魔人バボラだ」

 青い肌をした巨漢の鬼はそう言って剛毅な笑みを浮かべた。




まともに戦闘になるバボラを登場させようと思ったらもうここしかないと思いました
気の良い漢気溢れる魔人がなんであんな事に…
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