ランス再び   作:メケネコ

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バークスハムの狙い

 魔人バークスハム―――シルキィはその名前を聞いた事は無かった。

 それもそのはず、バークスハムは魔人ではあれど、人間の前に姿を現す事は殆ど無かった。

 それにバークスハムは魔王ガイが魔人とした存在、魔人になってからそれ程年月は経っていない。

 だが―――それでも目の前の存在はシルキィには圧倒的だった。

(強い…メディウサの何倍も強い。私でも分かる)

 その威圧感はあのメディウサを遥かに超えている。

 メディウサと比べるのは失礼なくらい、目の前の魔人は凄まじい強さを持っているとシルキィは感じ取った。

「魔人が…何の用。どうやってここに…」

「カラーの結界…確かにそう簡単にはたどり着けぬだろう。だが、私にとっては意味は無い」

 シルキィの言葉にバークスハムは笑みを浮かべる。

「それに…私の目的はカラーではない。ケッセルリンクと争うつもりも無い。だが…あの魔人メディウサを倒した人間には興味がある」

「!」

 その言葉にシルキィは息をのむ。

 確かにランスはメディウサを倒したが、それをランスの仕業だと確信した物言いに背筋が凍る。

 一緒にいた魔人レイの事をレンに聞いてみたが、レンは『あのレイがランスがメディウサを倒したなんて言いふらす訳無いでしょ。あいつはただランスと戦いたいだけよ』と言っていた。

 それなのに、この魔人は間違い無くランスを知っている。

 シルキィはリトルをバークスハムに向ける。

 それを見てバークスハムは苦笑する。

「敵わぬと分かって尚も武器を向ける…人間の中にも強き者は居る。そう、あの方のように」

 バークスハムが何を言っているかシルキィには分からないが、とにかくバークスハムは獲物を構える。

 それは人間が使っている細身の剣だった。

「相手になろう。そして思い知るがいい。真の魔人の強さを」

 バークスハムはそう言って無造作にシルキィに歩みを向ける。

「無敵結界など必要無い。私とあなたではそれ程の実力差がある」

「…言ってくれるわね!」

 シルキィは恐れずにバークスハムに向かって行く。

(いくら魔人と言っても不死身じゃない。付け入る隙は必ずある)

 魔人メディウサとの戦いでシルキィも感じっていた。

 確かに魔人は強い…その圧倒的な力と魔力、どれも人間などとは大違いだ。

 だが、それでもメディウサはランスに敗れたのだ。

 ランスが圧倒的に強いという事もあるだろうし、メディウサが終始ランスを軽視していたという事もあるだろう。

 剣での戦いはランスはメディウサを圧倒的に上回っていた部分も有った事から、魔人は強くても倒せぬ相手ではないとシルキィも確信した。

(魔人は人間に対してどうしても警戒が甘くなる。そこを突く…!)

 人間が魔人に付け入るにはそこしかない。

 ランス位の実力と日光が有れば違うのだろうが、無い物をねだっている時間は無い。

 シルキィが狙うのはバークスハムの心臓。

 だが、間違い無くバークスハムは自分の攻撃を避けるだろう。

(避けた所に…破壊力のある打撃を入れる。それしかない)

 それしかないならシルキィは迷わない。

 そして迷わないシルキィの速度は凄まじい。

 それこそ一瞬―――そしてシルキィの槍がバークスハムに突き刺さる所でバークスハムは動く。

 シルキィの一撃は早いが、それ故に読みやすかったのだろう。

 だが、シルキィにはそんなのは想定内だ。

(ランス君だったら訳の分からない反撃をしてくるだろうけど…相手はランス君ほどの剣の腕は無いはず。だったら…!)

 シルキィはバークスハムが避けた所に合わせて、素早く槍の先を斧の形へと変える。

 そしてそのまま横薙ぎにバークスハムを攻撃する。

 だが、そこでシルキィは大きく目を見開く。

 バークスハムはシルキィの攻撃を避けた。

 別に避けられたくらいではシルキィはこうまで驚かない。

 ランスならば自分の攻撃を避けて反撃すらもしていたかもしれない。

 しかし、目の前の魔人が自分の攻撃を避けたのには違和感があった。

 その違和感を頭の隅に追いやり、シルキィは更にバークスハムに攻撃を仕掛けようとする。

 だが、

「遅い」

 バークスハムの剣がシルキィの喉元に突き付けられる。

 それだけでシルキィは体が硬直し動けなくなる。

 今動けばバークスハムの剣がシルキィの喉を貫くのは明らかだ。

「成程、確かに強い。だが、その程度ではメディウサは倒せない。それでもメディウサは死んだ…ならば別の存在か」

 バークスハムはシルキィの事など眼中に無いかのように、ペンシルカウに視線を向ける。

(この魔人…強い)

 シルキィは自分すらも意にも介さない魔人に対して冷や汗が流れる。

 そしてバークスハムは剣を収める。

「何のつもり」

「フフ…私は魔人。魔人が人間に対して何をしようが魔人の自由。勿論それに抗うのもそちらの自由。だが、人間の抗いなど魔王に対しては無意味」

 バークスハムはシルキィの喉元から剣をどけると、そのままシルキィの胸元に掌底を放つ。

 シルキィはそれをまともに受けて吹き飛ばされる。

「魔王城に来ることです。あなたが来なければ…カラーは皆死ぬことになる」

「!?」

「これはケッセルリンクであろうとも抗えぬ事。全ては魔王様の言葉でこの世界の全てが決まる」

 バークスハムの言葉にシルキィは絶句する。

 だが、この魔人の言っている事は正しいと認めている。

 この世界は結局は魔王をどうにかせねば、人や亜人には安息は無いのだ。

「そしてあの男も」

「…ランス君まで」

「ええ。あの男は魔人をも倒す存在。そんな存在をどうして放置しようか」

 ここでバークスハムは嘘をついた。

 確かに魔人を倒す人間というのは脅威だ―――あくまでも魔王以外の存在にとっては。

 魔王にとっては例えランスであろうとも問題にはならない。

 魔王とはこの世界の支配者…たった一体でこの世界の生命体を絶滅させる事が出来る存在なのだ。

「この後どうしようがあなたの自由。いえ…あなたならば取る行動は一つだろう」

 そう言ってバークスハムは踵を返す。

 それを見届けてシルキィは地面に腰を下ろす。

「…相手にもなっていなかった」

 シルキィは魔人バークスハムの強さに歯噛みする。

「私の動きが完全に読まれていた…」

 まるで自分の行動を予測していたように、バークスハムはこちらの攻撃を完全に見切っていた。

 無敵結界があろうが無かろうが、今の自分では絶対に勝てないと思い知らされた。

 だがそれ以上に気になっている事は、魔人の言っていた事だ。

(私が魔王城に行かなければカラーは全滅する…?)

 何故あの魔人がそう言ったのかは分からない。

 だが…無視出来る言葉では無かった。

 あの魔人はそんな適当な事は言わない、何故かそんな気がしてしまった。

(私も…決断する時が来たんだ。ランス君達のように)

 そう思い、シルキィは歩み始めた。

 

 

 

 シルキィと別れ、バークスハムはカラーの森の外で苦笑を浮かべる。

「そう、これでいい…こうする事でしか、私の視た光景を覆す方法は無いだろう…いや、それも正しい事なのかどうかも分からぬか…」

 バークスハムには予知能力があると噂されている。

 その能力の結果、バークスハムはこの世界の小さな歪を見つけた。

 それを正さねば、この世界はあらぬ方向に進んでしまう。

 それを修正するために、バークスハムは動いた。

 ただ、それが本当に正しいのか、それはバークスハム自身にも分からない。

 未来とはいかようにも変化をするからだ。

「だが…そう簡単にはいかぬだろうな」

 バークスハムはカラーの森を見る。

 そこから感じたのは時代のうねりだ。

 強力な何かがそこにはある…だが、バークスハムは決してそれに触れてはならない。

 何故だかそう感じてしまった結果が、今の自分の行動なのだ。

「そしてもう一つの変化、か」

 バークスハムは一つの未来を感じ取った。

 それはこの世界の理すらも動かしかねない、凄まじい変化だった。

 だが、それが良い事なのか悪い事なのか、それはバークスハム自身にも分からなかった。

 それがどういう未来を作りだすのか、それは本人でも見えない変化だった。

「だが…悪い変化ではない、そうは思う」

 バークスハムは遠くを見て笑みを浮かべる。

(分かっているよ、カミーラ。お前が私の動きを…いや、私の動きを通じ何をしようとしているのかも)

 魔人カミーラ…あの魔人の事はバークスハムも良くは知らない。

 そもそもカミーラは全く社交的ではなく、他の魔人にも興味を抱かない。

 唯一親交があるのが、バークスハムも会った事の無い魔人ケッセルリンクだけだと聞いている。

 そのカミーラが自分の動きを見張って居る事は当然気づいていたが、バークスハムにとってはそれはどうでも良い事だった。

 別に自分の動きを知られようが、結局はカミーラにはどうする事も出来ない。

 カミーラも無暗に自分と争うような事をしないというのも分かっている。

(だがそれでも…お前もまたこの時代の流れに飲み込まれるだろう。それがどうお前に変化を及ぼすか…ガイ様はどう動くか…それもまだ分からぬ事か)

 バークスハムは内心でほくそ笑むと、何れ現れるであろう来訪者を出迎えるために主の城に向かって行くのだった。

 

 

 

 シルキィが魔人バークスハムと出会った翌日―――幸いにも魔人が来ていた事は誰も知らないようだった。

 それが良い事なのか悪い事なのかは分からないが、皆が不安にならない事は良い事だとシルキィは思った。

(…私はどうするべきなのか)

 正直ランスに魔人と出会った事を話すべきか…だが、問題なのはあの魔人の目的だ。

 あの魔人は明らかに自分を魔王城へと誘っていた。

 そしてそれをしなければカラーは皆殺しになると。

「どうしたシルキィ。辛気臭い顔をしおって」

「…そんなに顔に出てる?」

「お前は分かりやすいからな。悩んでいる時は直ぐに分かるぞ」

「そっか。そんなの言われた事無かったから分からなかったな」

 シルキィはランスの指摘にちょっとだけ落ち込む。

 同時に、自分の事をきちんと見ているランスに嬉しくなる。

「で、何があった」

「うーん…」

 シルキィはランスの言葉に考える。

 そして考えた末、

「内緒」

「なんだそりゃ」

 その悩みを決して口にしない。

「これは私が乗り越えないといけない事だからね。だからランス君の手も借りれない」

「なんだそりゃ。普段は散々俺様の姉だの何だのと言ってるくせに」

「姉だからよ。それにランス君には助けなきゃいけない人が何人もいるでしょ? だったら私よりそっちを助けてあげて」

「フン」

 シルキィの言葉にランスは少しつまらなそうにしている。

(そう、ランス君はジルを助ける役目がある。そして私はランス君を、そしてランス君を助けてくれているカラーを守らないといけない)

 魔人バークスハムの言葉は彼女の頭から離れない。

 この世界の主は魔王であり、それはどうあっても変わらない事実。

 ならば、カラーの滅亡を阻止するためには魔王を倒さねばならない。

 これが無謀なのは分かっているが、シルキィにはそうするしかないのだ。

 何故なら、それがシルキィ・リトルレーズンという人間なのだから。

「ねえランス君。この後時間ある?」

「別に構わんぞ。何かあるのか」

「ちょっとね…真面目な話」

「ここですればいいだろ」

「誰にも聞かれたくないかな。そういう話ってあるもんでしょ」

「…フン、まあいいだろ」

 シルキィの言葉にランスは少し怪訝な顔をしながらも頷いてくれた。

 

 そしてその夜―――

「で、話ってなんだ」

 ランスは自分の部屋でシルキィを迎えていた。

 シルキィは真剣な表情でランスを見ている。

「ランス君…真剣に答えて。ランス君が今成すべき事って何?」

「あん? そんなの言ってるだろうが。まずは聖遺物とかいうヤツをだな」

「そういう話じゃない。ランス君が本当にしたい事を聞いてるの」

「何だ急に」

 ランスは訝し気な顔をシルキィに向ける。

 ただ、シルキィは真剣な表情で有り、誤魔化しが通用するような状態じゃない。

 それくらいはランスにも分かった。

「俺様は俺様の好きにするだけだ。何か文句があるのか」

「…はぁ」

 ランスの言葉にシルキィはため息をつく。

(そういえばランス君はそういう人だったわね。でもそれが良い方向に進んでいる…不思議な人)

「ねえランス君。ランス君って人類の未来とかは…」

「知らん。興味無い」

「うーん…まあそうだよね」

 ランスはそういう人間なのだ。

 戦うのは全て女の為、又は女の人とエッチをするため。

 自分に対してもそうだったのだろうが、ランスはそのためならば何でもする。

「で、お前は何が言いたい」

「ああ…そうね。じゃあハッキリ言うわ。私、魔王の城に行く」

「…は?」

 シルキィの言葉に今度はランスが目を丸くする。

「何を言ってるんだお前は」

「言葉通り。私は人類を魔王の手から解放するために魔王城へ行くの」

「バカかお前は。お前が魔王に勝てると思っているのか。魔人にも勝てない奴が」

「それでも私は行かないといけない」

 本気で言っているシルキィにランスは嘆息する。

 前々からそういう奴だとは思っていたが、まさかこれほどとは思わなかった。

「無謀だぞ」

「分かってる。でもやらなきゃならない」

 ランスの言葉にもシルキィは一歩も退かない。

 それを見てランスはどうするべきか考える。

 これが男なら見捨てるが、シルキィは自分の女だ。

 自分の女は絶対に守るし見捨てないのがランスという男だ。

「いいか。やるにしてもだな…」

 そう言いかけた時、ランスは自分の足元がぐらつくのを感じる。

「あ、ありゃ?」

「…ごめんね、ランス君。こんな事しか出来なくて」

 ランスはベッドに突っ伏すと、そのまま体が動かなくなってしまう。

「お、お前…何をした?」

「…カラーお手製の男に効く眠りの香。ランス君、絶対私が行くのを止めたでしょ」

「シ、シルキィ…」

「ごめんねランス君。でもね、私が行かないと皆死んじゃうかもしれない。そして私はね…ランス君を守るって決めてたの。ランス君の居場所もね。だって…私、ランス君の姉だから」

 シルキィはランスの頭を撫でる。

「私、ランス君と会えて嬉しかったし感謝もしてる。それを…こんな形でしか返せなくてゴメン」

「ば、バカ者…誰がそんな事をしろと…ぐぅ」

 ランスは何かを言おうとするが、強制的に眠りに落ちる。

 そのランスの額にキスをして、シルキィは立ち上がる。

「大丈夫、私が絶対に皆を守る。この命に代えてもね」

 シルキィはもう一度ランスを見る。

「だからランス君はジルを守ってあげて。それと…大好きだよ、ランス君」

 シルキィは優しく微笑むと、次には戦士の顔に変わる。

「カラーも皆も…私が守る」

 そう言ってシルキィはランスの部屋を出る。

 他の皆も自分がランスの部屋に行ったことで、ランスとセックスをしていると思っているだろう。

 今はそれが有難い。

 シルキィは音を立てずに魔法ハウスを出る。

 もしかしたらレンは気づいているかもしれないが、彼女は自分を止めるような事は無いだろう。

 シルキィが歩みだそうとした時、

「待て」

 背後から呼び止められる。

「ジル…」

 そこに立っていたのはジルだった。

 が、少し様子が違う。

「ジル…じゃなくてスラルさん」

「ああ、今起きているのは我だ。ジルはもう眠ってしまっている」

 そう言ってスラルはシルキィを見上げる。

「行くのか?」

「…うん。気づいてたの?」

「お前の様子がおかしいのは気づいていた。しかし、お前がそうする理由が分からなかった。だが…どうやらかなり深刻なようだな」

 スラルは全てが分かっていると言わんばかりの表情を浮かべる。

「私が行かないと…駄目なんだ。そうしないと皆を守れない」

「そうか。理由は聞かない。だが、我はランスには話す。我はランスの味方だからな。今お前を止めないのは、物理的な行為でお前を止める事が出来ないからだ」

「ごめんね…本当は皆に相談するべきかもしれない。でも、時間が無いかもしれない。私は最悪を考えて動かないといけないから」

「最悪、か。なんとなく想像はつく。しかし…残念だ。お前なら、ランスと共に横に並び立てると思っていた。お前ならば、ランスと共に素晴らしいアイテムを手に入れられると思ったのだが…」

「素晴らしいアイテム?」

「ああ…ジルもそれがあったからこそ、魔王と人に分かれる事が出来た。我は知らないが、夢の中に黄色いトリが出てくるらしい。そこでお告げが有り、その迷宮に行くとその者にあったアイテムが手に入りるようだ」

 スラルの言葉を聞いてシルキィがあんぐりと口を開ける。

 そしてどんどんとその顔が青ざめていく。

 それを見てスラルもあんぐりと口を開ける。

「まさかお前…」

「え? アレだってただの夢じゃなかったの?」

「ば、馬鹿かお前は!? い、いや、我もそんな夢がどんなものかは知らないから偉そうな事は言えないが…それにしても相談くらいはあってもいいだろう!?」

「だ、だってただの変な夢だと思って…そ、そんな話誰もしてなかったし!?」

「だったらさっさと取りに行け! それが有ればお前の力になるんだぞ!」

「う…ご、ごめんなさい…でも、時間が無い」

 しょんぼりとした顔を直ぐに改めると、シルキィは真剣な顔になる。

「あなただから言うけど…魔人が来た」

 シルキィの言葉を聞いて、スラルはやはりと言わんばかりに顔を歪める。

 彼女がこうも思い切った行動をしたのだから、それくらいしか理由は考えられなかった。

「私が行かないとカラーが絶滅するかもしれない。あの魔人はそうほのめかした。なら私は行かないといけない。皆を守るために」

「…成程な。だが、何故その魔人はそんな事をお前に言う? その魔人とは何者だ?」

「魔人バークスハム。知ってる?」

 シルキィの言葉にスラルは首を振る。

「いや、知らないな。恐らくは魔王ガイが魔人にした存在だろう。ランスなら知っているかもしれないが…ちなみに男か? 女か?」

「男。真っ白い肌と髪をした剣士風の姿をしてた」

「ならランスは知らないか…だが、何故そのバークスハムという魔人はお前にそんな事を言う?」

「分からない。でも、私はそれでもいかないといけない。だから…ゴメン!」

「あ! ちょっと!」

 シルキィは顔を真っ赤にしてそそくさと走り出していく。

 それを見届けてスラルは苦い顔をする。

「魔人の横やり…だが、何故シルキィを狙う? ランスを狙っているのではないのか?」

 スラルは不可解な魔人の行動に頭を捻る。

 カラーが危ないと言っていたが、もし本当にカラーが狙われるのならばケッセルリンクが黙っていない。

 ただ、それはあくまでも魔人同士の話であり、魔王が絡んでいるのならば話は別だ。

(だが…魔王がカラーを狙う…根絶やしにするような理由は見当たらない)

 スラルも元魔王故に亜人と呼ばれる存在は把握している。

 カラー、ホピンズが居るが、別にそれらを滅ぼそうと思った事は無い。

 それは歴代魔王であるナイチサ、ジルも同じだった。

「…シルキィを誘い出す? だが何のために?」

 スラルは頭を捻るが、答えは出てこない。

「ランスは無茶をするだろうな…だが、それがランスという男だ。シルキィ、お前はまだランスという男を完全に理解していないようだな」

 ランスは間違い無くシルキィを追うだろう。

 それがどんなに危険な事だったとしても、それがランスなのだから仕方が無い。

「だが…今の時代、魔王の周囲はどうなるか…それを考えると厳しいな」

 スラルはここから先の展開を想像し、唇を歪めるしか無かった。

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