ランス再び   作:メケネコ

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不安定な魔王

「う……ぐ……」

 魔王スラルは何かに耐えるかのように胸を押さえ、時には頭をかきむしる。

【──せよ、──せよ、──せよ

 破壊せよ──破壊せよ──破壊せよ──

 殺せ──虐殺せよ──凌辱せよ──

 苦しめよ──絶望を与えよ──】

 頭の中に聞こえる声に気が来る狂いそうになるのを必死に抑える。

 ランスに抱かれてから数日がたったが、あの時の声はより大きくなって聞こえてきている。

「黙れ!」

 スラルの怒声が響くと、その頭の中に聞こえていた声が消えてなくなる。

「はぁ……はぁ……」

 スラルは立ち上がると、用意してある水差しから直接水を飲む。

 普段ならばそのような事はしないが、今はそれすらもままならない。

 鏡に写った自分の姿を見てスラルは愕然とする。

 そこには普段の美しい魔王の姿は無い。

 緑と赤が混じったような自分の目──―それが無機質に自分を写していた。

「何が……一体何が起きている……」

 確実に、魔王の血はスラルを蝕んでいた。

 

 

 

「……で、なんだこの連中は」

 ランス、レダ、大まおーの前には魔物隊長をはじめとした無数の魔物達が集結していた。

 以前にカミーラと戦った場所……本来は魔物の闘技場である。

 が、そこにはもう一つの意味を持つ場所でもある……それは人間の処刑場でもある。

 最も後者に関してはスラルがそういった事には興味を示さないため、使われた事はほとんど無い。

 魔物達は殺気だった目でランスを見て、そして好色の目でレダを見ている。

「おいカミーラ。一体何の真似だ」

 ランスは迎賓の席に座っているカミーラを見る。

 カミーラは優雅に足を組むと、笑ってみせる。

「この者達はお前が気に入らないそうだ。人間の分際で魔王スラルに気に入られているとな」

「それが俺に何の関係がある」

「だから貴様を殺したい……そう訴えかけてきた。好きにしろ、と私は言った。それだけだ」

 カミーラの言葉に魔物達は下卑た笑いを浮かべる。

「そういう事だ人間。今からお前を殺して……」

「いきなりランスアターック!」

 魔物隊長が言葉を言い終える前にランスの必殺の一撃が魔物隊長に、そしてその余波が魔物隊長の後ろにいた魔物を巻き込む。

「ギャアアアアアア!」

 魔物達の悲鳴が響くとともに、レダと大まおーも既に行動を開始している。

 レダの剣に首を刎ねられ、大まおーの炎の前に消し炭となる。

「な、なんだコイツ等!」

 魔物隊長の一人が驚愕している間にもランスが迫ってくる。

「がはははは!」

「クッ!」

 高笑いをしながら襲い掛かってくるランスの一撃をその剣で防ぐが、ランスはすぐさま剣の軌道を変え、魔物隊長が両断される。

「ば、化物だ!」

 それを見た魔物兵達は逃げ出そうとするが、

「どこへ行く」

 逃げようとした先には魔人カミーラが立っていた。

「カ、カミーラ様!」

「お前達は人間を前にして逃げるというのか。このカミーラの前で」

「うっ……」

 カミーラの目はどこまでも冷たい。

 もしここで逃げ出せばカミーラに殺されかねないほどの冷たさを放っていた。

「う、うわあああああああ!」

 魔物兵達は自棄になったようにランスに襲い掛かるが、

「フン! 雑魚共が!」

 ランスの一撃は魔物兵達を一撃で両断していく。

 魔物兵達を蹴散らしながら、ランスは今までにない強さを改めて感じていた。

(うむ、流石俺様だな。以前よりも簡単にこいつらを殺せてるぞ)

 ランスは魔物兵とは何度も戦っている。

 最初はゼスのカミーラダークで、次はJAPANでのザビエルとの戦いで。

 その魔物兵を一太刀でランスは切り伏せる。

 ランスの剣の腕は魔物から見れば異常であり、魔物達とて逃げれるのであれば逃げてしまいたい。

「…………」

 しかしその後ろにいるのは魔人カミーラ……彼女はガルティアやメガラスのように助けてはくれない。

「う、うわああああああ!」

 自棄をおこしてランスに突っ込んでいくが、やはり斬り合う事も出来ずに一撃で殺されていく。

 そして最後の一匹がランスの剣で一刀両断にされる。

 僅かな時間で魔物達は全滅した。

「で、どういう事だ?」

 ランスは剣を収めると、改めてカミーラを見る。

 カミーラは今現在ランス達に対して手を出す事は出来ない……それは魔人以外でも同じであり、本来はこの連中もランス達を襲う事など出来ないはずなのだ。

「……やはり、か」

 カミーラは一人納得したように笑う。

 それは決して暖かい笑みではなく、まるで何かを楽しんでいる邪悪な笑いといってよかった。

(むぅ……何かこいつがこんな顔で笑うとロクな事が起きん気がするぞ)

「おいおいおいっ!」

 突如としてガルティアの焦った声が響き渡る。

 ガルティアは事切れている魔物隊長や魔物兵を見て頭を抱える。

「なんだムシ野郎。俺は襲い掛かってきたこいつらを返り討ちにしただけだぞ」

「……まあそうだろうな。カミーラ! どういうつもりだ!」

 ランスが自分の意思でこのうような事を出来るはずが無い。

 だとするとこの状況を作ったのはこの場にいる魔人カミーラしか存在しないはずだ。

「そう怒鳴るな……七星、ランス達を連れて行け」

「はっ」

 何時の間にか控えていた七星と共にランス達はその場を去っていく。

 ガルティアはその間もカミーラを睨んでいる。

 今のこの状況で魔物隊長達が何故こうなったのかを知る必要がある。

「で、何でだ。カミーラ」

 ランス達がこの場を去るまでに少し落ち着いたのか、ガルティアの声はだいぶ落ち着いていた。

 カミーラが意味も無くこのようなするとは……少し思ったが、それでもスラルの命令には大人しく従っていたはずだ。

 それにカミーラがランスを気に入ってる事はガルティアも知っている。

 まさか本気でランスを魔物達に殺させようとした訳は無いのも分かる。

「フッ……こいつらが私に面白い事を言ってきた」

「あん?」

「いつまで人間を生かしておくつもりですか、とな」

「……そいつは」

 ガルティアもその言葉には驚く。

 魔王の命令は絶対であり、魔物達はその命令に逆らう事は出来ない……いや、逆らおうという気さえ起きなくなる。

 それなのにカミーラに対してそのような言葉を言う等、普通では考えられない事だ。

 何しろスラルは魔物達に『ランス達には手を出すな』と命令しているのだ。

「ところでガルティア……お前は最近スラルに会ったか」

「いいや。少しの間放っておいてくれって言われてな……ってまさか」

 ガルティアの言葉にカミーラは意味ありげな笑みを浮かべる。

「そういう事だ……魔王の支配が弱まっている……だから奴等はランス達に手を出したという事だ」

「そいつは分かったが、お前……こいつらを利用しやがったな」

 責めるようなガルティアの視線にもカミーラは笑ってみせる。

「ククク……お前も知っているだろう、ガルティア。私はスラルを好かぬ」

 そう言ってカミーラは宙に羽ばたくとそのまま消えていく。

 後に残されたガルティアは頭をガリガリと掻く。

「マジかよ……どうなってんだ、スラル」

 

 

 

「グゥウウウ……アアアアア!」

 数日後の夜……スラルはその日も頭を押さえて呻いていた。

 相変わらずの声が頭の中で鳴り響き、それを押さえるのに精一杯だった。

 頭が割れそうになり、全てを破壊したくなる衝動にかられる。

「……ま! ……ラルさ……! スラル様!」

「ケ、ケッセルリンク……」

 ケッセルリンクの必死の呼び声にスラルはようやく己を取り戻す。

「どうしましたか! スラル様」

「ケッセルリンク!」

 スラルは思わずケッセルリンクにしがみつく。

 突如として抱きつかれたケッセルリンクは少し驚くが、優しくスラルを抱きしめる。

「大丈夫ですスラル様……」

「うう……」

 ケッセルリンクの腕の中でスラルは体を震わせていた。

 そのスラルの姿は、ケッセルリンクには魔王ではなくただの一人の少女にしか見えない。

 しばらくスラルは震えていたが、少し落ち着いたのかケッセルリンクから離れる。

「無様な姿を見せたな」

「いえ……」

 スラルの姿を見るケッセルリンクの顔は晴れない。

(スラル様……まだ安定されていない)

 あの時ランスが言っていたように、スラルの目の一部が赤く染まっている。

「……ランスを、ランスを呼んでくれ」

「ランスをですか」

 ケッセルリンクは少し悩む。

 今ランスをスラルに会わせれば、もしかしたらランスの意思を無視して魔人となってしまうのでは無いかと危惧していた。

 が、同時にスラルの苦しみを考えればランスが魔人となればスラルも安定するのでは無いかという葛藤がある。

「わかりました」

 だからこそスラルは後者を選んだ。

 ランスならば上手くやってくれるという期待、そしてランスも魔人になってくれれば……という希望からだ。

(……すまない、ランス)

 ケッセルリンクは心の中で謝罪しながら、ランスをスラルに会わせるべく走り出した。

 

 

「で、こんな時間に何の用だ」

 ランスは夜中に起こされて若干不機嫌のようだった。

 本日は珍しくレダを抱かずに大人しく寝ていたのだ。

「ランス……我を抱け」

「何?」

 スラルの目はこの前にランスが見た通り、緑と赤が混じった色をしている。

 血走った目でランスを見ており、明らかに様子がおかしいのが見て取れる。

 しかしランスにはそのような事はどうでも良かった。

「がはははは! スラルちゃんも俺様の事が忘れられなかった! オーケオーケ! 俺様がスラルちゃんを思う存分……」

「早く……! ランス……!」

「お、おう」

 切羽詰まったようなスラルの言葉にはランスも驚く。

 しかし驚きは一瞬、直ぐにスラルのベッドに向かうと一瞬で全裸になる。

 そして同じようにスラルを全裸にすると、その小さな体に覆いかぶさる。

「がはははは! 今日も思う存分に可愛がってやるぞ!」

「ランス……むぐぅ」

 ランスはスラルの唇を自分の唇で塞ぐと、小柄ながらも出る所は出ている体を思う存分に味わう。

 前回の時にはスラルは若干正気を失っていたが、今回は違う。

 ランスの大きな手が自分の体に触れるたびにスラルは頭に火花が散るような衝撃に襲われる。

(やっぱりだ……ランスに触れられているとあの声が聞こえない)

 先程までスラルの頭に響いていた声が聞こえなくなる。

 代わりに聞こえるのはランスの笑い声と、自分の喘ぎ声だけだ。

(……いや、待て。我は今とんでもない事をしているのでは)

 理性ではやめようと思っても、それを声に出す事は出来ない。

 またあの自分が自分で無くなっていくような恐怖から逃れるため……と自分を誤魔化しながらランスを受け入れている。

「うーむ、しかし魔王というのはやっぱり体も極上なのか? スラルちゃんも凄くいい具合だな」

「何の……話をしている?」

「こっちの事だ。気にしなくていいぞ」

「んっ……」

 過去にジルとした時もあの体の感触はまさに極上の女という感じだった。

 ジルの性癖はランスには合わなかったが、やはりその時の感触は人とは全く違うものだった。

 ジルが性行為に慣れた魔王ならば、スラルは非常に初心な魔王だ。

 ランスとしてはどちらも楽しめるが、あの時より色々な経験をしている身としてはやはり感触が全然違う。

 もっともっと魔王の体を愉しみたいという気持ちに溢れてくる。

「ではいくぞスラルちゃん! と────ーっ!」

「ああっ!」

 その夜もスラルはランスに良いようにされてしまった。

 

 

 

「ん……」

 スラルは久々に快適に目を覚ます事が出来た。

「ふぁ~……」

 一体いつ以来になるだろうか、魔人達には見せられないような顔をして欠伸をする。

 毎朝聞こえていた耳障りな声が今日は全く聞こえない。

「えーと、昨日は……」

「むぐ……」

 昨日の事を思い出そうとしている時、聞こえてきた声に恐る恐る振り向く。

 そこには一人の人間が眠っていた。

 細身に見えるが、素晴らしい肉体を持っている人間が魔王のベッドに眠っていた。

 その人間は幸せそうに眠っており、時折何かを思い出すように笑っている。

「ラ、ランス……」

 そこに眠っているのは自分もよく知っている人間……ランスだ。

「そ、そうだ。我は昨日……」

 スラルは昨日の事を思い出す。

 あの声に耐えきれず、ケッセルリンクにランスを呼び出してもらった。

「そして我から……」

 自分からランスに『抱け』と言い放った。

 その結果、この男は本当に躊躇う事無く……魔王である自分に対して容赦なく欲望をぶつけられた。

 いや、ただ欲望をぶつけられたならば、最初にランスに抱かれた時と同じだ。

 しかし昨日は違う……昨日は自分からとんでもない事をした事を今になって思い出してた。

「わ、わ、わ……我は何て事を……」

 スラルは真っ青になった後に真っ赤になるという器用な事をしながら何とかベッドから這い出る。

「……!」

 そして大鏡に映った自分の姿を見て愕然とする。

 自分の体に無数にある虫に刺されたような後……勿論これは全てランスによりつけられたキスマークだ。

 中でも胸につけられたキスマークに関しては、普段に着ている服では隠す事は出来ない範囲だ。

「んっ……」

 そして自分の内股に伝う感触に思わず腰がくだけそうになる。

「……どれだけ好きに出してるのよ」

 スラルは未だに眠っているランスを睨みながら、汚れと汗を流すべく浴室へ入っていった。

 

 

 

 魔王の間──ー

「やはり作業は進まぬか……まあ仕方あるまい」

 スラルはガルティアとケイブリスの報告を聞き、仕方ないといった風にため息をつく。

 作業が遅いのはやはり魔物達を纏める能力を持つ魔物将軍が多数失われたせいであり、元はといえば自分があの壷を放置していた故に起きた事だと思っている。

 それに何年かかろうが別に構わないとも考えているからだ。

 少々年月はかかるだろうが、今まで過ごしてきた時間を考えれば別に問題は無い、と。

「それで、これからはどうすればいいですか」

「今までどおりで構わぬ。作業を続けろ」

 ケイブリスは未だに自分に恐怖を抱いており、媚びる様な態度を取り続けているのが少々引っかかるが、スラルとしても特に何か言うつもりは無い。

 ケイブリスはあからさまにホッとした様にため息をつくとこの場から立ち去る。

「で、ガルティア。他に何かあるのか?」

「いや……もう大丈夫なのかと思ってな」

「ああ、問題無い。だからお前も作業に戻れ」

 ガルティアはスラルの普段と変わらない笑みを見て、自分も笑みを浮かべる。

「おう、分かった……って言いたいけどな。カミーラはどうするんだ?」

「ふむ……」

 魔王の城の現状以外にも、カミーラがした事は既にガルティアから聞いている。

 一部の魔物がランスの待遇に不満を抱き、カミーラの所に向かったところ、全ての魔物がランス達に蹴散らされた。

 ランスもランスで、自分に向かってきた存在を全て斬り殺した。

 人間が複数の魔物隊長や魔物兵をあっさりと退けるなど凄まじい事で有り、そこはランスを見込んだ自分を褒めてやりたいが、まさかそれがカミーラを動かすとは思っていなかった。

「カミーラに関しては我が何とかしよう。ガルティア、お前も戻れ……今度、お前の望むものを与えてやろう」

「おっ! そいつは嬉しいね」

 ガルティアは笑いながら足取りも軽やかに立ち去る。

「しかしカミーラか……どうするべきか」

 自分を嫌っているのは知ってはいるが、まさかランスと……人間とあのような関係になるなど完全に予想外だ。

 そして何よりも……

「カミーラ……あの時の顔は明らかに我を笑っていた」

 カミーラのあの時の顔は勝ち誇ったような笑いだった。

『お前のような小娘にこのような事が出来るか』

 という余裕の笑い。

 同じ土俵に立つ事は出来たが、それだけだ。

 相変わらずランスを説得できる目処は立っていない。

 カミーラもそれは変わらぬだろうが、今のカミーラには精神的にも余裕が感じられた。

 それに対して自分はあの『声』から精神的に追い詰められていた。

「しかし何故だ……何故ランスに抱かれるとあの声が聞こえなくなる」

 最初にした時も、昨日自らがランスを望みした時も、その後であの声は聞こえなくなった。

 まさかセックスするだけであの声が聞こえなくなる……そんな馬鹿な事がある訳が無い。

「だが……試してみる価値はあるな、うん」

 スラルは自分を誤魔化すかのように頷く。

 その顔は普通の少女のように赤く染まっていた。

 

 

 

「カミーラ様、スラル様が公の場に現れました」

 七星の言葉にカミーラは何も答えない。

 その程度の事で七星が自分に報告を上げる訳が無いのをよく分かっているからだ。

「そしてその前に……ランスがスラル様の寝所に呼ばれたようです」

 その報告には流石にカミーラも唇を歪める。

 先に自分とランスの行為を一瞬とはいえスラルに見られていたのは分かっていた。

 だからこそ性というものに疎いスラルが……いや、臆病なスラルに対してカミーラは意図的に笑って見せた。

 それこそ『お前にここまで出来るか』という思いがカミーラにもあったのかもしれない。

 そのスラルがランスを寝所に呼んだ……その意味を理解できぬカミーラではない。

 間違いなくランスはスラルを抱いたであろう。

(あのスラルがそこまで動くか……?)

 だからといって、スラルがそこまで短絡的な行動をとるとは思ってはいなかった。

 あの魔王は自分の身の安全のため、無敵結界を授かった。

 カミーラから言わせれば、まさに慎重を通り越して臆病だとも感じられるほどに。

「スラルの様子はどうだった」

「私が知るスラル様と変わりませんでした。他の者達も不満は無いように感じられます」

「そうか……」

 昨日ランス達の待遇に不満を持つ者達がカミーラに対して働きかけてきた。

 カミーラもランス達ならば負けることは無いという確信から、その行動をあえて認めた。

 ここ最近に感じられぬ魔王の力を試すために、魔物隊長達を利用したと言ってもいい。

 その結果、確かに魔王の力は弱まっていたのが分かった。

 それはカミーラにとっては愉快な事であったが、それはランスがスラルを抱いた事で終わってしまった。

 あのランスならばそう簡単に魔人にはならないという確信はあるが、カミーラの言葉通りそれが何時まで続くかは分からない。

「少々スラルを侮ったか……それとも私の行動が遅かったか……」

「いかがいたしますか。カミーラ様」

 そう言う七星の口には笑みが浮かんでいた。

(今のカミーラ様は十分に楽しんでおられる)

 少し前のカミーラならば魔王が何をしようが興味を示さないだろう。

 しかし今のカミーラは自分を動かし、魔王城での情報を得ようとしている。

 使徒にとっては主の喜びこそが全て……そのためにはどんな事でもするつもりだ。

「……引き続き情報を集めよ。私はしばらく魔王城にいるとしよう」

「ハッ!」

 そう言って堂々とした佇まいで席を立つカミーラに対し、七星はどこまでも至福の喜びを感じていた。

 

 

 

「うむ、しかしケッセルリンクに感謝せねばなるまいな」

 その夜、スラルはケッセルリンクに割り当てられた部屋に自ら向かっていた。

 本来であれば魔王がそのような事をする必要はないのだが、ケッセルリンクには自分の言葉を自分の口で直接伝えたかった。

 そのためには呼びつけるのではなく、直接自分が出向くのが一番良いと考えた。

 色々と不安があったが、ケッセルリンクに相談をしたのはやはり間違っていなかった……と思う。

 若干……いや、大分自分の想像と違う方向に突っ走ってしまった気がするが、結果的には良かったのではないかと思うことにした。

 実際ランスという人間の事、そして自分の本当の姿が分かったような気がした。

「ここか……」

 魔人には内装等は好きにして良いと伝えている。

 元がカラーであるケッセルリンクではあるが、今は大分その体質が変わってしまっている。

 何しろ夜になればその力は増すが、代償として昼にはほとんど動けないという事になってしまっている。

 こればかりは魔王の力を持ってしてもどうしようもないため、その事も兼ねてケッセルリンクと話をしようと思っていた。

(何をしているだろうかな……)

 普段ケッセルリンクが何をしているのかは同じ女として少し興味があった。

 だから少し驚かせてみよう……そんな気持ちで部屋を進んでいったとき、誰かと話しているような声が聞こえた。

(いや、そうじゃない……)

 スラルは嫌な予感がして、部屋の中をそっと覗き見る。

 そしてそこに映っていたのは……

「ランス……お前という奴は本当に」

 ケッセルリンクが文句を言いながらも、寝そべっているランスのハイパー兵器を胸で包み込んでいる姿だった。

(いや、何でランスがケッセルリンクの部屋にいるのよ!)

 ──ーそれはランスが『スラルちゃんを大人しくさせたのだが、お前の部屋でやらせろ』とケッセルリンクに言ったからだった。

 スラルはその光景から目を離すことが出来なくなっていった。

 ケッセルリンクがランスと深い関係なのは以前もこんな事があったから知っている。

 が、スラルが目を離すことが出来なくなったのは、自分が処女では無くなった事からくる性への興味。

 そして、改めてよく見ると分かるケッセルリンクの顔だ。

 自分へ向ける目とはまったく違う眼差し……色恋等した事の無いスラルにも、ケッセルリンクがランスに向けている感情を理解できる。

「気持ち良いか……ランス」

「うむ、グッドだ。上手くなってきたではないか」

「……そういう言葉は女性に言うものでは無いと思うぞ」

 ケッセルリンクは小言を言いながらも、嬉しそうに手と胸を動かしていた。

(……あのケッセルリンクが)

 自分に対して慈愛の眼差しを向けていたケッセルリンクが……ランスに対しては惜しみない愛情を向けている。

「うむ、グッドだ! いくぞ!」

「ん……遠慮する必要は無い。思う存分に出せ」

 ランスが気持ちよさそうな顔をして、ケッセルリンクも目を閉じてランスの精を受け止める。

(あ……)

 その行為にスラルは昨日のランスとの行為を思い出す。

 自分も何度か口に含んだあの感覚……スラルはたまらずに咳き込んでいたが、ケッセルリンクは当然のようにそれを飲み干していた。

【奪え──ー全てを奪いつくせ──ー】

「あっ……!」

 再び聞こえてくる声にスラルは思わず悲鳴を上げる。

「あん、誰だ?」

「誰かいるのか」

「あっ……」

 ランスとケッセルリンクが声の方向を見ると、そこには魔王スラルがへたり込んでいた。

 そのスラルを見てランスが邪悪な笑みを浮かべる。

「ははーん、俺とケッセルリンクのセックスを覗いていたな」

「ち、ちが……」

「ふん、だったらその下半身はなんだ」

「え、あ……」

 ランスはスラルを立たせると、スラルが座っていた場所には小さなシミが出来ていた。

 そのままスラルを抱き上げ、ケッセルリンクと共に使っていたベッドに押し倒す。

「ス、スラル様……」

「ケッセルリンク……」

 ケッセルリンクも流石に自分の主に見られるのは恥ずかしいようで、その手で己の体を隠す。

「がはははは! 今日は魔王と魔人の3Pだ!」

「ランス!」

「そ、そんな……」

 この日、魔王と魔人は一人の人間の冒険者によって美味しく頂かれた。




色々と都合があり少し遅くなりました
もう少しでSS期が終わる予定では有ります
本当にアウトとセウトの境目って難しいです…
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