ランス再び   作:メケネコ

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未来を守る者

「来るぞ! 総員構え!」

 ラートスの言葉に魔物兵達が一斉に構えを取る。

 その構えは全て防御態勢。

 本来であれば魔物が人間にこんな対応を取る事などありえない。

 それこそ魔軍が人間相手に拠点防衛用の装備を整えるなど、人類と魔物の戦争の時―――魔人ザビエルによる藤原石丸に対する侵攻の時くらいだろう。

 そこからは全て魔物の時代、それ以降魔物にとっては人間などあくまでも狩りの対象でしか無かった。

 だがそれでもこの魔物大将軍は拠点防衛の装備と部隊を整えた。

 それもこの魔物大将軍の気質によるものだろう。

 そして部下たちが人間とぶつかり―――ラートスはの目を見開いた。

「「「うぎゃあああああああ!!!」」」

 盾を構え、完全防御態勢の魔物兵達がたったの一撃で崩された。

「ラーンスあたたたたーーーーっく!!!」

 人間の男が放った剣は黒と緑が混じったオーラを放ち、魔物兵達をまるで紙屑のように斬り裂いたのだ。

「バカな!?」

 それにはラートスも驚愕の声をだすしかなかった。

 魔人バークスハムが言っていたのだから手強いとは思っていた。

 思っていたが、それでもやはりラートスも魔物だった。

 いかに強くても、ここまで魔軍が防備を整えたのであれば足止めなど容易いと踏んでいた。

「死になさい! ライトボム!」

「氷雪吹雪!」

 崩れた所に更に魔法が突き刺さる。

 どれ程の力を持っているのか、防御で固めていたはずの魔物兵ですら容易く吹き飛ばし、氷漬けにされる。

「クッ! 各隊下がらせろ! 壱を使う!」

「はっ!」

 魔物大将軍の言葉に合わせて魔物隊長がドラを鳴らす。

 最初はランスの一撃でパニックに陥った魔物兵だったが、その合図を聞くとすぐさま後退を始める。

「む?」

 ランスはそれを見て怪訝な顔をする。

 長い間魔軍と戦って来たランスだからこそ、魔軍とはどんな相手かを知っている。

 基本的に人間を見下し、力押しで物事を進める。

 なのでこうして人間相手、しかもランス達のように僅かな人数しか居ない相手に交代するのも奇妙な光景だった。

 が、当然ランスはそこで調子に乗ってしまう。

「がはははは! 怖気ついたか! とっとと皆殺しだ!」

 そのままランスは魔物兵達を追って向かって行く。

 その時、ランスの足元から嫌な音がし、ランスは思わず足を止める。

「な、なんだ!?」

「危ないわよ!」

 ランスの足場が崩れ始めた時、すんでの所でレンがランスのマント引っ張りその範囲から逃れる。

「放て!」

 魔物大将軍の合図と共に、無数の石が飛んでくる。

「うげ!」

 石と言っても投石機から放たれる巨大な石だ。

 そんなのがまともにあたれば、人間であるランスはひとたまりもない。

「光の壁!」

 レンは魔法を放ちながらランスを抱えて投石の範囲外へと移動する。

「罠ね」

「むむむ…生意気な」

 魔物達に嵌められたのを知り、ランスは一人怒りを見せる。

「ランス様、大丈夫ですか?」

 ジルはランスの側に駆け寄る。

「アホ。大したことない」

 ランスはジルに軽くデコピンをすると、目の前の魔物兵達を見る。

 見れば結構な範囲で落とし穴が用意されていたのが分かる。

「何時の間にあんなもん用意してやがった」

「そうですね…いくらなんでも早すぎます。まるでランスの動きを全て読んでいると言っても過言ではありません。いえ、シルキィに関してもですから、人間の動きを読んでいるとでもいうのでしょうか」

 日光も怪訝な表情を浮かべる。

 いくらなんでも用意周到過ぎるし、このような簡易的なものとはいえ砦を、そして罠すらも用意する。

 魔軍が人間を相手にするにしては慎重過ぎると言ってもいい。

 日光はそこに違和感を感じていた。

「どうしますか、ランス様」

「ちょっと待て」

 ジルの言葉にランスは考える。

 砦と言っても流石にリーザスとゼスの間にある、パラパラ砦のように広範囲でもなく、魔物の数もそれ程多く無いように見える。

 そもそもランス達を迎撃に来た魔物達も100に満たない数だった。

 だが、それでも魔軍は人間相手に慎重すぎる態度を取って来た。

「もう一度突っ込むぞ。ジル、レン、お前等はあの投石機を魔法でぶっ壊せ」

「無理ですよ、ランス様。流石にあれ程の距離があったら魔法は届きません…」

「そうね。相手は完全防備の態勢よ。流石にこの人数で罠を用意している相手に向かって行くのは無謀よ」

「うーむ…」

 レンとジルにそう言われてはランスも流石に『やれ』とは言えない。

 これが男ならその男を捨て駒にしてでも突っ切るのだが、自分の女にそんな事はさせられないのがランスだ。

 しかし、それでもシルキィの事を考えればここで時間を潰される訳にはいかない。

 何とかバイクで突っ切れないかとも考えてはいるが、相手がここまで用意周到に備えていた事を考えると、先程のような落とし穴が他に無いとも限らない。

 そしてバイクの弱点は、そういった障害物に弱いという事だ。

 だからこそ、ランスとしても非常に困る。

「相手は砦に籠る気かしらね…そうだとしたら厄介ね」

 レンも周囲を見渡し苦い顔をしている。

「数が有れば色々と出来るのですけどね…」

 日光も厳しい顔をする。

「ランス様…どうしますか?」

「ちょっと待て。今考えてる」

 ランスとしても何とかしたいが、正直厳しいのは事実だ。

「…スラルちゃんは起きてるか」

「スラルさんですか? いえ、今は眠っているみたいで…」

「全く…肝心な時にスラルちゃんは」

 もしスラルが起きていれば、彼女との合体技であの砦に大ダメージを与えられただろう。

 だが、居ない彼女に頼る訳にはいかない。

 だからこそ、ランスもかなり手詰まり感が漂っていた。

 

 

 

 一方の魔軍陣営もまた微妙な表情を浮かべていた。

「チィ、ここまで早く手札を一つ切らされるとはな…」

 ラートスは忌々しそうに呟く。

「もう少し数を用意するべきでしたか」

 部下の言葉にラートスは首を振る。

「今回の我々の任務は足止めであり、撃破ではない。最終的に我々は奴等を通す必要がある。それがバークスハム様の意向だ」

「そうでした。しかしあの男…本当に人間ですか? まるで魔人様の攻撃を見ているようでした」

「ああ…それは思った。だからこそ、バークスハム様は足止めなどという事を我等に命じたのだろう。しかし…惜しいな。これが足止めで無ければ、さぞや楽しい戦いになっただろう」

 ラートスは少し残念そうな顔をする。

 魔物大将軍は世界に7体しか居ない、魔物将軍を纏められる存在だ。

 だが、その魔物大将軍も戦争が無ければただの名前だけの役職に過ぎない。

 そして今の時代、ラートスが望む様な大きな戦争は起きないだろうと思っていた。

 それは仕方の無い事であり、魔王の治世であるのだからどうしようもない事だった。

「だからこそ…今の戦いを楽しむだけだ。しかし、完全防備の兵が足止めにもならんか…」

 ラートスの予想としては、前線を入れ替えながら相手の消耗を待つという計算だった。

 だが、その計算は最初の一撃で脆くも崩れ去った。

 あの攻撃力の前では前線の入れ替えなど無いに等しく、結局は消耗戦でしか相手を足止め出来ない。

 しかし、そんな戦いはラートスとしては望まない。

「いかがしますか? もう一度部隊を出しますか? 数はこちらが有利でしょう」

「いや…有利だからこそ、動かぬ。これはあくまでも足止めなのだ。これもまた戦争の一部、これを乗り切るのもまた楽しみよ」

 ラートスの言葉に部下の魔物隊長は苦笑する。

「でしたら楽しみましょう。我々が出来る最初で最後かもしれない戦争を」

 

 

 

 ランス達が魔物兵達と睨み合っている中、それを見ている1人の存在が居た。

 そしてその側に恭しく佇む二人の存在。

「カミーラ様、やはりランス殿は来たようです」

「…ああ」

 使徒七星の言葉にカミーラは頷く。

 バークスハムの動きを見張っていた七星だったが、本当に動きがあった。

 カラーの里から一人の人間がうし車に乗って飛び出していった。

 七星もそれを追おうとしたのだが、一つの部隊を見つけた。

 それは突如として簡易的な砦をつくり、まるで何者かを待ち構えるかのように色々と作業をしていた。

 それを見た七星は当然のように主に報告した。

 すると主はここまで来た…己の目的を果たすために。

「ですが…バークスハムは一体何をして来たのでしょうか。しかも魔物大将軍まで動かしています」

「………」

 七星の言葉にカミーラは答えなかった。

 だが、カミーラはバークスハムの実力を見切っていた。

 これが怠惰なカミーラならばバークスハムのやる事などに興味すら持たなかっただろう。

 だが、ドラゴンのプライドを完全に取り戻したカミーラは、バークスハムの得体の知れない力に警戒を強めていた。

 魔王ガイの忠臣という言葉が相応しいだろう。

 ガイは正直に言えば魔人からの忠誠は厚くは無いだろう。

 何しろ魔人から魔王へとなった存在、魔王ジルに忠誠を誓っていた者からすればまさに簒奪者だ。

 だが、その圧倒的な力と魔王と魔人の完全な主従関係故に誰も何も言う事も出来ないのだ。

「カミーラ様、あいつら何をしてるんでしょう?」

「恐らくは足止め…なのだろう。魔物大将軍を動かしているのに、配下には魔物将軍は1体も存在しない。ならば本気で倒す気は無いという事だ」

「そうなの? 七星」

「間違い無く。そうでなければもっと多くの兵を動かしている。いくらあの者が強くとも、数の暴力の前には無力だ。尤も、それを許すカミーラ様では無い」

 ラインコックの言葉に七星が答える。

「…奴が何をしようとしているか…それを見極める必要があったのだがな。だが、それをするためにもランスを魔王城へ行かせねばならぬか」

 カミーラとしては魔王とランスを会わせるのは正直避けたい。

 ガイとランスの因縁を知っているが故に、なるべく衝突させるのは避けたいのだ。

 魔王には絶対に勝てない、それでもランスという男は必ず動く。

 カミーラが己のモノにしようとする人間はそういう人間なのだ。

 だからこそ、カミーラは自分の力でランスを跪かせ、使徒にする事で完全な勝利と手にする事が出来るのだ。

(だが、決着をつけようとすると必ず邪魔が入る…いや、それもあの男の運か。そう、運と言うのは必ずあるのだ…あいつがあの魔王を倒した時のように)

 そして今こうして自分がここにいるのもランスの天運なのだろう。

 カミーラは薄く笑うと、翼を広げる。

「カミーラ様?」

「フ…バークスハムの良いようにさせるのも癪だ…それにこの程度の奴に苦戦されては困る」

 そう言うとカミーラは翼を羽ばたかせて飛んでいく。

 それを見て七星もため息をつく。

「七星。カミーラ様行っちゃったよ」

「我々も動かなければならぬだろうな。ラインコック、強行軍になるかもしれぬ。ついてこれるか?」

「ボクだってカミーラ様の使徒なんだから! それくらいは大丈夫!…多分」

「ついてこれねば置いて行く。此度の出来事はそれ程の事だ。いいな」

 真面目な七星の顔に、ラインコックもまた力強く頷く。

 こうしてカミーラ達一行もまた動くのだった。

 

 

 ランスは完全に攻めあぐねて居た。

 力押しで通るには単純に戦力が足りないのだ。

 だが、今ある戦力はこれが限界、これ以上は引っ張って来ることが出来ない。

「固いわね…というか完全防備でこっちを完全に足止めに来ているわよ」

「わかっとるわ。魔物のくせに完全防備とからしくない事をしおって」

 レンの言葉にランスは文句を言うしかない。

 魔物達はあれからこちらに打って出ようとはせず、完全に時間稼ぎのための行動を取っていた。

 投石機による攻撃や魔法、飛び道具といった遠隔攻撃に徹している。

 しかも砦の前には落とし穴や柵も用意されており、ランスと言えども辿り着くのも容易では無かった。

 魔物兵は決して砦から出てこようとせず、完全に防備に徹してしまっている。

 そうなるとこの少人数ではランスといえども攻め手に欠けるのは仕方ないだろう。

「ランス、日が落ちそうです。もしこのまま戦い続ければ、他の魔物兵が来る可能性が高いです。とういうよりも、他の魔物兵が来ないのが不思議ではありますが…」

 日光は疑問を口にする。

 こうして戦って数時間が経過したが、他の魔物兵の応援が来る気配が無かった。

 普通ならこれだけの戦いを繰り広げれば、他の魔物兵が気づいて応援に来てもいいはずだ。

 そもそも、魔物兵があんな少ない数でこちらを待ち構えているというのが変なのだ。

 それこそ何かの作為を感じるのは当然だろう。

「ランス様…流石に今日はもう…」

「…そうも言ってられんだろうが。下手すればシルキィは魔王城についていてもおかしくないぞ」

「流石にまだだと信じたいけどね…でもここを無理に超えるのは難しいわよ」

「ぐぐぐ…」

 レンとジルの言葉にランスは唸るしかない。

 流石のランスも数だけは覆す事は出来ない。

 何しろこれが今のランスが導入できる戦力なのだからもうどうしようもない。

 そして日光の言う通り、日が落ちてきたという事もある。

 流石のランスも少々疲れが出てきた。

 しかし、ここで退いては間違い無くシルキィに追いつけない。

 そしてシルキィの性格からして、一直線に魔王の元へと向かうだろう。

 その場合、待っているのは間違い無く死だ。

 ランスでも正直打つ手がない、そう思った時だった。

「…ん?」

 突如として魔物達の砦から火が上がる。

「何だ?」

「んー…向こうの攻撃…じゃ無いわね。何やら慌てているみたいだけど」

 レンはこの距離でもある程度見る事が出来る。

 そしてランスはそれを聞いて直ぐに判断する。

「バイクで突っ込むぞ!」

「本気ですか、ランス!?」

 ランスの言葉に日光は慌てた声を出す。

「何やら知らんが今混乱しているのならバイクで一気に突っ込む!」

 ランスはバイクの所に駆け寄ると、すぐさまエンジンを動かす。

「レン、ジル、乗れ! 日光は刀になれ!」

「ああもう! 罠があっても知らないわよ!」

 レンは文句を言いながらもバイクに乗る。

「分かりました! ランス様!」

 ジルも躊躇う事無くランスの背後に座り、その体を強く掴む。

 日光も刀になるとランスの腰に収まる。

「行くぞ!」

 そしてランスはバイクを猛スピードで走らせ、炎に包まれている砦目掛けて突っ込んで行った。

 

 

 

「将軍! 連中は中々動けぬようです!」

「そのようだ。やはり連中も色々と警戒しているようだな。尤も、こちらの大掛かりな仕掛けはもう無いのだがな」

「まあ時間が足りませんでしたからね…」

 ラートスの言葉に部下の魔物隊長が苦笑する。

 簡易的な砦に加え、罠まで作るとなるとどうしても時間が足りない。

 数も足りないので、柵の数も少なければ何もかもが足りない。

 その状況でも守りを固めさえすれば、あの数の人間など防ぐのは容易かった。

「どれほど時間を稼げばよいのでしょうか」

「最低でも一日稼げば十分だろう。それまでには既に終わっているとバークスハム様は言っていたからな」

「そうですか…しかし、あのバークスハム様には何が見えているのでしょう。魔王様ですら、バークスハム様の言葉を聞き入れていると聞きます」

「さあな…あの方は未来を見えると噂されている方だ。もしかしたらそれが本当なのかもしれんな」

 ラートスがそう苦笑した時だった。

 凄まじい衝撃と共に砦に炎が上がる。

「な、何だ!? 人間の攻撃か!?」

「ち、違います! 背後からです!」

「何だと!?」

 ラートスは起き上がり、急ぎ状況を確認する。

 部下の言う通り、確かに炎は背後から襲って来ていた。

「人間共か!? いや、違う! そんな気配は無い…」

 ラートスが必死に状況を整理しようとした時だった。

「ラートス将軍! 人間共が来ます!」

「何!?」

 部下の言葉にラートスは前方を見る。

 すると確かに何かに乗った人間達がこちらに猛スピードで突っ込んでくる。

 それが何なのかはラートスには分からないので、人間が何をしようとしているのかどうしても分からない。

 無理も無い、ランスが乗っているのはあの魔人パイアールが作ったもので、本来の歴史においてソレが表に出る事は決して無かったのだから。

 そして人間の行動にラートスは目を見開いた。

「ば、馬鹿な!?」

 人間達が宙に浮いたのだ。

 そしてその勢いのまま、炎上する砦をも飛び越していく。

「こ、こんな事が…!?」

 その行動には流石の魔物大将軍も愕然とするしかない。

 同時に、自分の任務が失敗に終わった事も悟る。

「…チィ! 総員退却だ! この砦を維持する必要は無い!」

「ハッ!」

 ラートスの指示に従い魔物隊長が部下を纏める。

 それを見てラートスは深くため息をつく。

「…何が起きたかは知らんが、任務は失敗か…だが」

 ラートスは部下と共に燃える砦から脱出しながらバークスハムの言葉を思い出す。

『一日時間を稼げばいいです。いえ、半日でも構いません』

『…それは何故でしょうか』

『フフ…真の足止めが有るからです。ですが、あなたが止めれるのであればそれで構いません』

 バークスハムの言葉はラートスのやる気を刺激した。

 普通の魔物大将軍であればバークスハムの言葉に良い思いはしないだろう。

 だが、純粋に戦を楽しみたかたラートスにはそれで十分だった。

 防衛線、時間稼ぎもまた戦の一つ、ラートスはそれを楽しむ事が出来る魔物大将軍だった。

「しかし、真の足止めとは一体何なのか…いや、あの方の事だ、私には思いもよらぬ方法があるのだろう」

 そこでラートスは忌々し気に荒い息を放つ。

「だが、一体誰が邪魔をした? 間違い無く我等を攻撃してきた…そんな事をする奴が何処に居る?」

 今回の炎は間違い無く身内…即ち魔軍の仕業だ。

 恐らくは何体もの部下が巻き込まれただろう、それ程の威力の炎だった。

「まあいい。恐らくはそれすらもバークスハム様の手の内。私は己の任務を果たした…とは言えぬが、少しは楽しめた」

 直ぐに頭を切り替え、ラートスは生き残った部下を纏めるために行動をするのだった。

 

 

 

 炎上する砦を抜ける一つの存在を上空から見ている者が居た。

 上空から見ている…そんな事が出来る存在は魔人しかいない。

「…抜けたか」

 砦を炎上させた魔人カミーラはランスの存在を確認するとその唇に弧を描く。

 当然の事ながら、突如として砦が炎上したのはカミーラがブレスを放ったからだ。

 ただ、そこまで威力は大きく無く、連中から気を逸らす程度と思っていたのだが…ランスは予想以上に上手くやったようだった。

 まあカミーラからすれば、何やら小うるさいハエが居たので、それを叩き潰した…ただそれだけだった。

「だが…あの男はこれも見抜いているのか…?」

 カミーラはランスを追って宙を舞う。

 気になるのはあの魔人バークスハムの存在だ。

 未来が視えるとも言われるあの男が、自分の存在を読んでいるかいないのかは分からない。

 ただ、あの得体の知れない魔人ならば何かしらの手を打っていてもおかしくは無い。

 それだけの不気味さをカミーラは感じ取っていた。

「まあいい…ガイ、お前に好きにはさせぬさ。ランスは私が貰う…ジル、貴様にも渡さぬ」

 カミーラはそう言って笑うと、ランスを追うのだった。

 

 

 

「ついたか」

「もう、無茶し過ぎよ。それを抜きにしてもまあ凄い技術だとは思ったけどね」

 レンは呆れながら呟く。

 あれからランスはぶっ通しでバイクを動かし続け、あっというまに魔王城へとたどり着いた。

「はひぃ…ついたんですか…」

 ジルはランスに必死にしがみ付いていたせいか、もう息もたえたえだった。

「ついたのはいいですが…シルキィはもう魔王城へと入っているようですね」

「チ…追いつけなかったか」

 魔王城への道の間、結局シルキィは捕まらなかった。

 恐らくはシルキィは大した抵抗も無く魔王城へと入っていたのだろう。

「まあいい、行くぞ」

「行くって…まさか無策のまま魔王城に乗り込む気?」

「フン、シルキィを捕まえたらとっとと逃げるぞ。まあ余裕があれば色々とお宝を探すのも良いがな」

 ランス達はバイクから降りる。

 レンは一度魔法ハウスを起動した後で、バイクをその中に仕舞う。

 そうする事で持ち運びも出来るのだから、魔法ハウスというのは本当に便利だと思う。

「行くぞ」

 ランス達は魔王城へと入る。

 ランスからすれば勝手知ったるリーザス城なのだが、流石にその中身はランスの知るリーザス城とは全く違う。

 まさに魔王の城というだけあり、リーザス城のような豪華さは感じられない。

 むしろどこか禍々しい空気に満ちている。

 ランスはそんな気配を感じながらも、不自然な程に誰も居ない魔王城の中へと入っていく。

「…気に入らんな」

「まあそうよね。明らかに入って下さいって感じだものね」

 ランスの言葉にレンが同意する。

 間違い無くランスが来るのを知っている、そう言わんばかりの静けさだ。

 そしてその静けさの中で、強大な圧力だけが感じられる。

 魔王かと思ったが、その気配は近い…ランスはそれを感じ取っていた。

 それを分かりながらもランスは魔王城を歩く―――そしてそれは居た。

「やはり来ましたか」

 もうその存在感を隠そうともしないその男はランスを見て笑う。

「ここを通りたくば、この私を倒す事です。この魔人バークスハムを」




最初はハム殿じゃなくてレキシントンを出そうと思ったけど、やっぱりここはハム殿しか無いと思って書き直しました
レキシントンは次で出番多いですし

事故の結果実は半月板にヒビが…どうしてくれんのホント
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