ランス再び   作:メケネコ

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決戦 魔人カミーラ

 ランスは家の外に出る。

 そこにはカミーラが空を見上げていた。

「待たせたな」

「フン…今までを考えれば何も問題は無い」

 カミーラはランスを見て微笑を浮かべる。

 そして直ぐに戦いに向けて表情を変える。

「ランス。決着をつけるぞ」

 そこに立っていたのは間違い無く魔人四天王の1人、魔人カミーラだった。

「フン、いい加減お前に追われるのは御免だからな」

 ランスも剣を構える。

「ただし! 負けても言い訳はするなよ」

「言い訳? このカミーラがそんなものをするとでも思ったか? 見くびるなよ」

 カミーラからの圧力が大きくなるが、ランスはそんなのも構わずに唇を吊り上げて笑って見せる。

「このカミーラを前に笑うか…それでこそ、このカミーラが狩るに相応しい!」

 カミーラはそう言ってランスに向かって突っ込んでくる。

 それは何の策も無いただ真っ直ぐに突っ込んでくるだけ。

 だが、カミーラがそれをするのだから普通ではない。

 カミーラはランスとの戦いでは空は飛ばない。

 圧倒的優位な状況から相手を嬲り殺しにするような事はすると言えばするが、ランスに対しては真正面から屈服させるのがカミーラの目的だ。

 翼を使いスピードは出すが、宙には浮かない。

 そしてブレスは使うが魔法は使わない。

 それがカミーラが課した己の矜持だった。

「フン!」

 ランスは剣を構えるとカミーラの爪を真正面から受け止める。

 相変わらず凄まじい衝撃だが、今のランスならばそれに耐える事が出来る。

「ほう」

 完全にランスが自分の攻撃を受け止めたのを見てカミーラは楽しそうに笑う。

「ここまで成ったか」

「がはははは! 今までの俺様だと思うなよ!」

 ランスは力ではなく、技を用いてカミーラの爪を受け流す。

 流石にパワーでは魔人には敵わないが、その分ランスには圧倒的な技量がある。

「ククク…それでこそ、狩り甲斐があるというものだ!」

 カミーラは翼を旋回させ、ランスに対して攻撃を仕掛ける。

 ランスはそれを完全に読んでおり、そのままカミーラの翼を受け流すと返す刃でカミーラに斬りかかる。

 カミーラはランスの剣を爪で受け止め、もう片方の爪をランスに向ける。

 ランスはカミーラの爪が向かってくるにも関わらず、カミーラとの距離を詰める。

 カミーラの爪がランスの頬を掠めるが、同時にカミーラの脇腹に鋭い痛みが走る。

 その痛みにカミーラは一瞬眉を顰めると、そのままランスと距離を取る。

「ほう…あの一瞬でよくもこのカミーラを斬ったものだ」

 カミーラの手には自分の血がついている。

 接近すると同時に刀を抜いてカミーラの脇腹を斬ったのだ。

 あまりに接近し過ぎていたので完全には斬られてはいないが、カミーラはどういう一撃が来たのか分からなかった。

「ちょいと浅かったな」

「そうだな。薄皮一枚を斬っただけ。この程度、魔人の再生能力の前では意味をなさない」

 ランスに斬られたにも関わらず、カミーラの傷はもう塞がっていた。

 魔人には人間よりも遥かに優れた再生能力がある。

 決して万能では無いが、それでも他の生命体にとっては脅威だ。

「だが…より一層楽しめる。今度はこれはどうだ」

 カミーラは力を溜めると、そのままランスに向けてブレスを放つ。

 ランスは剣を構えるとそのままカミーラのブレスを斬る。

 ブレスは真っ二つに割れて霧散するが、そこにカミーラが突っ込んでくる。

 ランスは慌てた様子も無くカミーラを迎え撃つ。

 素早く刀を構えると、カミーラと交差するタイミングで抜刀する。

 まさに神業的なタイミングとしか言えない居合がカミーラを襲う。

 普通ならばその一撃で真っ二つになるだろうが、カミーラはその一撃を爪で防ぐ。

 ドラゴンの爪は非常に硬く、ランスと言えどもそう簡単に斬ることは出来ない。

 ましてや魔人であるカミーラならば尚更だ。

「フン…小賢しい技が増えたか」

 カミーラは己の爪を見て薄く笑う。

 自分の攻撃はランスに完全に読まれており、カウンターまで決められた。

「だが、まだまだだな。これが日光ならば話は変わっていたのだろうがな」

 カミーラはランスと手元の剣を見て薄く笑う。

 聖刀日光―――それこそが魔人に対抗する手段の一つ。

 魔人の持つ無敵結界を斬るだけでなく、魔人に対して非常に大きな効果がある武器だ。

 流石のカミーラも日光で斬られればただでは済まない、それは理解していた。

「別にあいつが居なくても何とかなる」

 ランスはそう言うが、やはり日光が有ると無いとでは大きく違う。

 カミーラの言う通り、今の一撃も日光ならばカミーラでも受けるという手段は取らなかったかもしれない。

 それだけ日光は魔人に対して大きな対抗手段となるのだ。

「それもまた戦いだ。戦いに状況など選べない」

 そう、戦いに綺麗も汚いも無いのだ。

 ましてやこの二人の戦いは只の命のやり取りではなく、己の我を通すための戦いだ。

 ランスの手に日光が無ければそれはそれで運が無かった、それだけの話だ。

「来い、ランス。次はお前に撃たせてやろう」

「余裕のつもりか?」

「お前がどれだけ成長したか…確かめてやる。忘れた訳では無いだろう、以前のお前は私に歯が立たなかった事を」

「フン、どれだけ昔の事言ってやがる」

 余裕のカミーラに対しランスは剣を向ける。

 これが答えだと言わんばかりの態度にカミーラは好戦的な笑みを浮かべる。

 ランスはそんなカミーラを見て斬りかかる。

 その速度にもカミーラは対応して見せる。

 ランスの剣を爪で防ぐだけでなく、的確に反撃をしてくる。

 その戦いには魔人特有の人間を見下している油断は無く、正に戦いを楽しむ存在としてランスに立ちふさがる。

(チッ、やっぱ隙が無いな、こいつは)

 ランスはカミーラと斬り結びながら内心で毒づく。

 魔人でありながら隙が無く、戦いを楽しみながらも的確に攻撃をしてくる。

 何度もカミーラとはやり合ってはいるが、その度にその戦い方が上達している。

 やり難い相手だが、それでもカミーラは飛行と魔法と使わないでもこれなのだ。

 もしカミーラが本気ならば、いくらランスでも勝つ事は不可能だろう。

(が、今のこいつなら何とかなるな)

 それでもランスには秘策があった。

 秘策と言っても前から考えていた訳でも無い、ただの偶然が重なって出来た事。

 だが、それでもランスにとってはカミーラに付け入る一つの手段だ。

「昔の俺様と一緒だと思うなよ!」

 ランスはカミーラに向かって行くが、体を少しずらしてカミーラの右半身を狙う。

 カミーラはそれを避けるが、ランスはそれでも構わずに斬りつけていく。

 ランスの剣は鋭く重い―――カミーラもそれを理解はしているが、魔人として、そしてプラチナドラゴンのプライド、更にはランスに力を見せつけるという思いから決して逃げるような事はしない。

 ランスはそんなカミーラの思惑を見越してか、連続してカミーラの右半身を狙う。

「…!」

 そしてついにカミーラの脇腹をランスの刀が斬り裂く。

 それは決して深くは無いが、浅くも無い。

 だが、カミーラとしてはその攻撃を完全に防げなかった事に目を見開く。

「やっぱりな。お前、右半身が左半身に比べて反応が鈍いな」

「………」

 ランスはニヤリと笑いながらカミーラに斬りかかる。

 カミーラはランスの剣を爪で防ぎ、ランスを睨む。

「いつ気づいた?」

 カミーラはランスの言葉を肯定するに等しい言葉を放つ。

「お前があのドラゴンと戦ってる時だ。魔人にしては随分怪我を引きずってやがるなと思ったが、やっぱり当たりだったか」

「成程…お前が杜撰な男なのは間違い無いが、戦いに関しては抜け目ない男だと改めて思い知った」

 ランスに今の自分の弱点を指摘されてもカミーラは尚も好戦的に笑う。

「だが、それくらいのハンデが無ければお前は私と戦えまい。そして、この状態でも人間を相手にするには十分すぎる…!」

 カミーラは弱点など意にも介さないように力づくでランスの剣を弾く。

 が、同時にそれはカミーラ自身に隙を作る結果になった。

 ランスは弾かれた剣に構わず、そのままカミーラを刀で斬る。

 その鋭い一撃は、先程カミーラを傷つけた所と寸分違わぬ位置を斬りつける。

 カミーラは先程よりも深い一撃に顔を歪める。

(…ランスの言ってた事はこの事か。まさかカミーラにこんな後遺症が残って居たとは)

 剣の中でケッセルリンクは感心する。

 ランスはこの世界に戻って来てからもカミーラをきちんと見ていたのだ。

 そしてカミーラの右半身が本調子で無い事に気づいていた。

 だからこそランスは『何とかなる』と言ったのだ。

「クッ…!」

 流れる血が止まらぬ事にカミーラは唇を噛む。

 確かにカミーラは本調子ではない。

 ドラゴン同士の戦いでつけられた傷は中々完治しない。

 魔人になってもドラゴンの特性は失われていないので、アベルからつけられた傷は今でもカミーラを蝕んでいる。

 だがまさか、ランスとの戦いでここまで影響が出るとは思っても居なかった。

「フン、お前から喧嘩を売って来たんだ。まさか卑怯だとか言わないだろうな!」

「いう訳が無いだろう。それくらいで負ける魔人カミーラではない!」

 カミーラは構わずにランスに向かって行く。

「来い!」

 ランスは剣に向かって手を伸ばすと、剣がランスの手に収まる。

 カミーラは左手でランスを攻撃するが、それはランスに避けられる。

 そしてランスは執拗にカミーラの右側から攻撃を仕掛ける。

 それはカミーラの弱点を狙った攻撃だが、無論ランスはそんなのは卑怯だなんて思っていない。

 相手の弱点を突くのは当たりまえ、馬鹿正直に正面から向かうのは本当のバカのやる事だと思っている。

 それしか状況が無いならそうするが、ランスはどんなに鬼畜と言われようが、勝つときには手段は択ばない男だ。

「成程、確かにお前の攻撃を捌くのは今の私には厳しいか」

 カミーラはそんなランスの攻撃にも何の非難の言葉も出さない。

 ランスがそうするのは当然と受け止めており、人間と魔人の戦いならばそれくらいのハンデはくれてやってもいいとさえ思っている。

「だが、今の私には意味は無い…!」

 カミーラはそう言い捨てると、ランスの剣が自分を傷つけるのも厭わずにランスに向かって攻撃を仕掛ける。

「げっ!?」

 ランスの攻撃が効いていないはずが無い。

 その証拠に、ランスが与えた傷口からは血が止まっていない。

 アベルとの戦いで傷ついた部分の傷口が開いたはずなのに、カミーラは全く怯まなかった。

 カミーラの手がランスの腕を掴む。

 そしてランスを引き寄せるように力ずくで引き寄せると、右腕の爪がランスの腹部を狙う。

 ランスは刀を引き抜いて爪を何とか弾く。

「甘いな、ランス」

 カミーラは腕を掴んでいた手を首に延ばす。

 ランスは何とか剣の柄でその手を弾こうとするが、距離が近すぎた。

 カミーラの腕がランスの首を掴みそのままランスを絞め落とそうとするが、ランスはその態勢のままカミーラの右腹部を刀で突き刺した。

「クッ…!」

 その一撃には流石のカミーラも呻き、そのまま乱暴にランスを投げ捨てる。

「ゲホッ! ゲホッ! クソ、思いっきり絞めやがって…!」

 ランスは咳込みながらも立ち上がる。

「本気なら貴様の首を折るくらいは容易だ。だが…まさかあの状況でもこのカミーラを傷つけるか…」

 カミーラはランスに突き刺された部分に触れる。

 そこからは夥しい血が流れている。

 ランスはカミーラに投げ捨てられながら、突き刺した刀を捻りカミーラにダメージを与えたのだ。

「ククク…いいぞ、ランス。並の魔人ではこのカミーラにここまで傷つける事は出来ぬ」

 カミーラは自分の血を見ながら尚も笑って見せる。

 それは好戦的でありながらも、非常に美しい。

 薄く微笑んだまま、カミーラは傷を隠そうともせずに堂々と立っている。

「…お前、本当に変わったな」

 その態度にランスは呆れながらも剣を構える。

 だが、ランスとしては今の状況に焦りを感じていた。

(まずいぞ…思った以上に強いぞ。こんな戦い方をしてきやがるとは…)

 カミーラは本気の本気だという事を思い知らされた。

 覚悟とでも言えば良いのか、ここで本気でランスを倒す気なのは間違い無かった。

「さあ…もっとお前の力を見せるがいい。お前の全てを叩き潰してこそ、お前は私に屈服する。その時こそ、お前は永遠に私のモノになる」

 カミーラは自分の血をランスに向ける。

 その血が与えられれば、使徒にされる。

 使徒と魔人の関係は魔人と魔王の関係と同じ。

 即ち魔人の奴隷となるのも同義だ。

 ランスは当然そんなのは認められない。

 自分は誰のものでも無く、誰が何を言おうとも好きにするのがランスという人間なのだから。

「今度はこちらから行くか」

 カミーラは翼を羽ばたかせると、その口から凄まじい力が集まる。

「死んでくれるなよ」

 それはカミーラの得意とするブレス攻撃なのは間違いない。

 それも尤も威力がある破壊力を宿したブレスだ。

 ゼスで何度も味わった攻撃で、その一撃はランスのパーティーに多大なダメージを与えた攻撃だ。

 あの時はリックやパットン、志津香やシィルといったメンバーが居たが、今はランス一人だ。

 だから自分一人で何とかしなければならない。

「チッ!」

 ランスは剣を構えるとカミーラのブレスに向けて剣を放つ。

「ランスアターーーーーック!」

 破壊力のあるブレスに向けてランスは必殺技を放つ。

 空間すらも断ち切るランスの技だが、流石に広範囲に影響のあるブレスを完全に斬る事は出来ない。

 しかもその一撃はカミーラの必殺とも言える攻撃なのだ。

 凄まじい痛みがランスの体を襲うが、それでもブレスが直撃するよりも遥かにマシだ。

 そしてカミーラはそんなランスの行動を予測していたかのように、翼を使いランスの背後に回り込んでいた。

 その爪をランスの首元に延ばすが、ランスは背後も見ずにカミーラに向けてカミーラに刀を向けていた。

 刀はカミーラの爪を弾く。

 カミーラもランスの反応速度には流石に目を丸くする。

 ランスは素早く振り向くと、剣をカミーラの右脇腹を狙い横薙ぎに斬りかかる。

 カミーラはそれを爪で防ぐが、思った以上の力、そしてカミーラ自身を襲う痛みでその動きが止まる。

 その隙を逃さずにランスは刀を構える。

「新ランスアターーーック!」

 カミーラの体を通過するように動いたランスが凄まじい速度でカミーラを斬る―――はずだった。

 が、その技を本能で察したのか、カミーラは逆にランスに向かって突っ込んで行った。

 そうした事でカミーラはランスの技の威力を殺す事に成功する。

 だが、カミーラも完全に無事とはいかず、その右腕から大きく出血する。

 アベルによってつけられた傷がまた開いたのだ。

 それでもカミーラは攻撃の手を緩めない。

「さあ…終わりだ」

 カミーラは再びブレスを吐くための準備をする。

「やらせるか!」

 ランスもそれを察知し、カミーラとの距離を詰めようとする。

 が、カミーラは翼を使って凄いスピードで背後に跳ぶ。

「あ、こら! ずるいぞ!」

「知らんな」

 ランスの言葉にカミーラは薄く笑うと、そのままブレスを放ってくる。

 再びまともに受ける訳にはいかず、ランスはブレスを斬ろうとする。

「ぐ!」

 だが、今回カミーラが放ったブレスは威力は破壊力のあるブレス程では無いが、ランスの体を痺れさせるブレスだった。

 ゼスでカミーラが使って来たブレスだが、ランスはその存在をすっかり忘れていた。

「貰ったぞ、ランス!」

 ランスが自分の術中に嵌ったのを確信し、カミーラはそのままランスに向かって突っ込んでいく。

 カミーラはランスを殺すつもりは無いが、腕の一本くらいはへし折られてもおかしくは無い。

(いかん、ヤバいぞ!?)

 ブレスを斬ったおかげか完全に体が痺れる事は無い。

 だが、それでも動きが一瞬遅れるのは間違いない。

 ランスは何とか動こうとするが、思うように体が動かない。

「ちょ、ちょっと待て!」

「断る!」

 ランスはカミーラを静止しようと無駄な声を出すが、当然カミーラはその言葉を斬り捨てる。

 カミーラの腕がランスの首を掴む―――ランスもそう覚悟した時だった。

 突如としてランスの体からしびれが抜ける。

 同時にランスはカミーラの手から逃れようとして体を動かす。

「!?」

 そのランスの動きにカミーラは驚く。

 カミーラは確実に捕らえたと思っていた。

 だが、カミーラの手は空を掴むだけだった。

「な、何だ!?」

 ランスとしては軽く動いたつもりだったが、思った以上に体が動いた。

 異常なまでに体が軽く感じる上に、凄まじい力を感じる。

 突然の事にランスは訳が分からないが、カミーラが凄まじい目で睨んでいるのを見て剣を構える。

「………そう言う事か。余計な置き土産をしていったな」

 カミーラはランスを睨んでいるのではなく、その後ろに居る何かを見ていた。

「何だ?」

 カミーラの視線を追ってランスも背後を見る。

「な、何だこりゃ!?」

 そしてランスも驚きの声を上げる。

 ランスの体を覆うように黒い雷が何かの形を取る。

「ククク…あいつはお前と相性が良さそうだと言っていた。何をふざけた事をと思ったが…フン、相性が良いとはそういう事か」

 カミーラは納得がいったように、そして楽しそうに笑う。

「おい、勝手に納得してないで何があったか教えろ! お前なら分かってんだろ、カミーラ!」

 ランスは一人で納得しているカミーラに対して怒鳴る。

 今まで以上に体が軽いが、自分に何が起きているのかさっぱり分からない。

 カミーラは笑うのを止めると、真剣な顔でランスを見る。

「ランス、貴様はアベルの血を浴びたな」

「ん? ああ、そういや最後に滅茶苦茶浴びせられたな。寒くてかなわなかったぞ」

「奴は貴様に己の力を渡した。魔王の力ではなく、ドラゴンとしての力をな」

「はあ? そんな事が出来るのか?」

「出来るのだろうな。奴はドラゴンとしては大した力を持っていない。種族としては七星にも劣る…あの臆病者の考えそうな事だな。お前と戦っていた時、己を残そうとしたのだろう。このカミーラとお前の因縁を利用してな」

 カミーラは忌々しそうに吐き捨てる。

 アベルは『ランスを見てやれ』と言っていたが、実際には自分を見ろとも言っていたのだ。

 あの臆病者の考えそうな事で、カミーラは非常に腹が立った。

 アベルは自分の事をカミーラに残すため、ランスという人間にドラゴンとしての力を継承させたのだ。

「アベルは一応雷竜…そこはカインと同じか。アベルとカインのドラゴンとしての力の差は大きいが…だが、その分力を渡しやすかったのかもしれんな。暗い世界で何を考えていると思ったが…思った以上にくだらない。くだらないが…同時によくやってくれたと言ってやろう。このカミーラが初めて貴様を褒めてやる、アベル」

「一人で納得するな! 一体何が言いたい!」

「ランス…お前を倒す事で、私はあの忌まわしいドラゴンをも倒す事になる。言わばお前とアベルの両方を屈服させる事となる…その事が何よりも嬉しい」

 カミーラは本当に嬉しそうに好戦的な笑みを浮かべる。

 腹部に負った傷は決して浅く無いのだが、そんな事は関係無いと言わんばかりに魔人の気配が濃厚になる。

「フン、相変わらず勝手に納得して勝手にやる気になりおって。俺様には関係無い事だ」

 よりやる気になったカミーラにランスは呆れたように吐き捨てる。

 が、ランスも今の体は本調子を遥かに上回る状態だ。

「ドラゴンと言っても人間であるお前がドラゴンの力を振るえる訳では無い。だが、お前がどんな事をするか…興味深くも有る」

 カミーラは軽く浮き上がると、真っ直ぐにランスを見る。

「来るがいい、ランス」

「おう、行ってやる。だが、勝つのは俺様だ。そしてその後はおしおきセックスじゃー!」

 ランスは剣を構えてカミーラに向かって行く。

 同時にカミーラもランスに向かって行く。

 二人の戦いはより一層激しさを増していった。




アベルの力がこうなったのは、ランスが5Dでは雷の魔法を使っていたからです
しかもおあつらえ向きにアベルも雷属性無効でしたし
イメージとしてはDMC4のネロのデビルトリガーのような感じ
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