その夜―――小屋に戻ったランスとカミーラは寝室に向かった。
ただ、その前にランスに少しの変化があった。
「うーむ、何か無性に腹が減るな」
ランスは別に大食いという訳では無い。
食事の量は人並だし、別に美食を求めるという性格でも無い。
だが、その日ランスは普段よりも多くの食事を取り、ランス自身もそれを自覚していた。
勿論これくらい食べる日も無かった訳では無いが、今日はやたらと腹が減ってしまっていた。
そんなランスを見てメイドさんは嬉しそうにニコニコと微笑み、カミーラは何かを感じ取ったようにランスを見ていた。
そんな事があったが、二人は風呂に入って体を清め、これからの情事に向かって行く。
カミーラは躊躇う事無く衣服を脱ぐ。
そこにあるのはやはり極上の裸身だ。
ケイブリスが求めてやまないカミーラの一糸纏わぬ姿が1人の人間の前に晒されている。
ランスはそれを見て何かの違和感を覚えていた。
「どうした。貴様らしくも無いな」
そんなランスを見てカミーラもまた怪訝な顔をしていた。
ランスが好色な男なのは分かっている。
本来ならばカミーラはそんな醜い男は嫌悪するのだが、相手がランスで有り、自分の使徒にするべく求めていた存在なので許容範囲内だ。
しかし、今のランスの態度はこれまで自分が寵愛をくれてやったランスとは少し違った。
「いや…お前、そんなに色っぽかったか?」
「…何?」
「なんか無性にお前が色っぽく感じる。普段のお前と変わらんはずなんだがな…」
カミーラは確かに魅力的なスタイルを持つ女性だ。
だが、それ以上に威圧感が有り、並の男ならばその裸身を見ても委縮してしまうだろう。
勿論ランスは並の男では無いので、そんなカミーラを見てもハイパー兵器に力が入るだけだ。
「何か凄い艶っぽいぞ。今まではお前にあんまりそんな感じを持って無かったが…」
「…それはどういう意味だ」
ランスの言葉にカミーラがギロリと睨む。
言葉によってはこれまでのカミーラに色気が無かったと言われているようで、カミーラとしてもあまり面白い言葉ではない。
むしろ他人にそんな事を言われたら間違い無く嬲り殺しにするのがカミーラだ。
「そう怒るな。前から色っぽいとは思ったが、今のお前からはそれ以上の何かを感じるというか…うーむ、言葉にするのが難しいな」
本気でランスが悩んでいるのを見て、カミーラも訝し気な顔をする。
ランスが自分に向けている下衆な視線は当然カミーラも気づいている。
まあそれは最初だけで、長年の戦いが続くにつれて段々と面倒くさい奴と思われていたのは気づいていた。
そんなランスを叩き潰すのが楽しみだったので、ランスの無礼もカミーラは許していた。
(…アベルの影響か?)
カミーラとしてはその影響をまず考えてしまう。
何しろ自分はドラゴンの王冠―――と言えば聞こえはいいが、要は子孫を残すための景品のようなものだった。
ドラゴンが腑抜ける前にはドラゴンの目標とされ、それこそアベルのように自分を独占しようと企む者は多かっただろう。
「まあいいか。とにかくお前とやれるなら何でもいいからな。それにお前がエロく見えるならそんな事はどうでもいい」
ランスも全裸になると、そこには硬くそそり立ったハイパー兵器がある。
カミーラはそんなランスに少し呆れながらも、ベッドに横たわった。
「褒美だ。この体を好きにしても良い。久々に…戦いで満足した」
「ほう」
その言葉にランスは歓喜する。
何しろカミーラは根っからの女王様…これまで何度か体を重ねてはいるが、何時もカミーラが主導権を握っていた。
性格的に相手にされるがままなのは気に入らないのは分かっていたし、ランスとしてもやれるなら取り敢えずはそれで良かった。
そのカミーラがこんな事を言うとは、流石のランスも驚いた。
「うむうむ、だったら好きにするぞ。あ、後から無しとかは許さんぞ」
「フ…そんな事はしない。言ったはずだ…満足したと」
カミーラは嘘偽りなく、本当に満足していた。
あのアベルをどついたのもそうだが、一切の邪魔なくランスと戦えた。
勿論カミーラが勝とうと思えば勝てた戦いなのだが、そんな戦い方は己のプライドが許さなかった。
結果的には相打ちだったが、それでもカミーラにあったのは満足感だった。
(全力で戦う…あのノスとでも無かった感覚か)
魔人ノスとは同じドラゴン同士であり、互いに嫌悪する仲だ。
ノスからはドラゴンを堕落させた存在として、カミーラからは旧時代のドラゴンの生き残りとして。
何度かノスとは戦ったが、ノスは決して本気になる事はせず、カミーラもそれを理解しているのか戦いになっても小競り合いだ。
魔人になりたてのノスとは一度互いにかなりの手傷を負うまで戦ったが、それでもカミーラは満足しなかった。
しかし、今回はカミーラは制限がある中でも全力だった。
自分がアベルとの戦いで手負いだったとか、飛行も魔法も封印していたとかそんな事は言い訳にしない。
とにかく、ランスに対しドラゴンとして戦い、屈服させたかった。
それが叶っていないというのに、カミーラはそれでも良いと感じたのは自分でも不思議だった。
だからこそ、ドラゴンの力の引き出し方をランスに教えるなどと言う戯れをしたのかもしれない。
「来るがいい、このカミーラが寵愛を与えてやる」
ランスを誘うように手招きをするカミーラだが、そこには完璧な肉体がある。
何度見ても素晴らしい体にはランスも感心するしかない。
ランスの周りには美女が多いが、その中でもカミーラの体には恐ろしいくらいの美しさがある。
並の男なら委縮してしまう程の圧倒的なオーラが有るが、ランスにはそんな事は関係無い。
関係なのだが、今のランスにはカミーラの肉体がこの上なく極上の体に見える。
ランスは溜まらずにカミーラを押し倒す。
そして貪るようにその唇を奪う。
そんなランスに苦笑するようにカミーラは一度唇を動かしたが、直ぐにランスの口を受け入れる。
ランスはカミーラと舌を絡ませ、互いに唾液を交換する。
(…私は何をやっている)
カミーラは躊躇う事無くそれを受け入れた事に困惑していた。
彼女にとってセックスとは己の性欲を発散させるための行為でしかなく、本来であれば屈辱的な行為だ。
ドラゴン達に望まぬ性交を強いられ、子供を産み続ける為だけに存在していたドラゴンの王冠。
だが、それはカミーラの精神を歪ませ、魔王アベルがカミーラを魔人にした事で決定的になった。
セックスは使徒やランスに褒美を与えるだけの行為のはずだったのだ。
「む…」
ランスの手が己の胸を掴んだことにカミーラは眉を顰める。
カミーラからすれば無礼な行為なのだが、自分から良いと言った以上はまあ仕方ないと思った。
だが、同時にカミーラは自分の体の変化に驚く。
(…何故、私はここまで反応している?)
既に硬くなっている先端を刺激され、そこから痺れるような快感が走る。
まるで自分の体では無いかのような感覚にカミーラは戸惑うしかない。
そう、カミーラにとっては本来は性行為とは苦痛であり、ドラゴンに子供を産むための存在として見られていた行為でしかないのだ。
それなのに、今の自分はそんな軽い刺激だけで体が火照ってしまっている。
ランスは遠慮なくカミーラの胸を揉みしだいている。
その大きな胸がランスの指の中で形を変え、その先端を時にはひっかくように刺激が与えられる。
「…! 待て、ランス」
カミーラはその刺激から逃れるようにランスから唇を離す。
「あん? 何でだ」
「…いや」
ランスから咎められ、カミーラは何かを発しようとした言葉を飲み込む。
好きにしてよいと言ったのに自分はそうさせるのが怖くなった。
魔人四天王であるはずの自分がまさかこんな逃げを打つような行為に走るなど、そのプライドが許さない。
許さないのだが…それでも今は自分の感情が思うように働かない事にカミーラ自身が困惑しているのだ。
「貴様…私に何をした?」
「それは俺様のセリフだ。お前こそ何かしたんじゃないだろうな」
互いに少々の困惑をしながらも、それでもランスは構わずにカミーラを求めた。
カミーラも不思議とそれを容易に受け入れている。
そのままカミーラの豊かな胸に吸い付き、思う存分にその先端を舌で転がす。
(何故…私は抵抗しない?)
性行為はカミーラにとってトラウマであり、魔人となった後は只の処理のはずだった。
それなのに今は何故かそれを当然のように受け入れている。
相手は自分が見下している人間のはずなのに、それを拒否しない自分が居る。
確かにランスは自分の使徒とする人間であり、カミーラとしては主として寵愛を与えてやるのはいいくらいには思っていた。
事実、これまで何度かランスを寵愛を与えてきたのだ。
それなのに、今は自分が当然のように男に抱かれようとしている…それがカミーラには分からない事だった。
そしてランスの行動はとうとうカミーラも想像もしなかった行為に及ぶ。
もう下半身が濡れてしまっているカミーラだが、なんとランスがそこに舌を這わせたのだ。
「な…」
こんな事はカミーラには屈辱以外の何物でもない。
自分から伸し掛かって奉仕させるのならばともかく、こうして押し倒されて舐められるなど許されざる行為だ。
それなのに、カミーラはランスを払いのける気にはならなかった。
抵抗もせずにその舌を受け入れてしまっている。
(今日の私は…何かおかしい)
頭がどうにかなりそうだったが、それでもカミーラは体が動かなかった。
どれくらい刺激を受けていたか分からなかったが、ランスの舌が離れると、別の物が押し当てられる。
そして一切の抵抗なくカミーラはハイパー兵器を受け入れた。
「おっ…」
その刺激にランスは思わず声を出す。
魔人でありドラゴンであるカミーラの体は勿論極上で、アソコの締め付けも極上だ。
今までも気持ち良かったが、今回は優しく、温かくハイパー兵器を受け入れていた。
それでも締め付けは極上で、その刺激にランスは思わず動きを止める。
そんなランスを見てカミーラは笑う。
「どうした? このカミーラを好きにするのでは無かったのか?」
「やかましい。ひんひん言わせてやる」
カミーラに挑発されたランスは最初からガンガンと飛ばしていく。
その度にハイパー兵器が刺激され、それだけランスは達しそうになる。
一方のカミーラも自分の感覚に戸惑っていた。
自分に何が起きているのかも分からず、脳が焼ききれそうになる。
それだけの刺激を与えられた―――たかが人間にだ。
そこからは正に獣の交わりと言っても良かった。
二人は何も言わずに絡み合い、互いに肉欲を貪る。
カミーラは決して人間にしないであろう口淫や、胸を使ってハイパー兵器を刺激する。
ランスはランスで何回達したのか記憶が曖昧になるくらい、それだけ夢中でカミーラを抱き続けた。
その宴は翌日まで続き、二人は精根尽き果てたように眠っていた。
ベッドメイクに来たメイドさんはむせ返るような匂いにも眉一つ顰める事無く、ランスとカミーラの体を綺麗にした後、ベッドに新しいシーツをかぶせ、二人をその上に寝せて退場する。
そのすぐ後で魔人であり、体力が人間よりもあるカミーラが先に目を覚ます。
カミーラは自分の隣で眠るランスを見て唇を歪める。
「何と言う醜態だ…このカミーラが…」
生憎とカミーラはここまで何が起きたか完全に覚えていた。
あれほど嫌悪しており、性欲の処理に過ぎなかったセックスに夢中になり、ありえない事までさせられた。
本来であればそんな屈辱を与えたランスを殺してやらなければ済まない所だが、それを何とか抑え込む。
「…起きたか、カミーラ」
「…ケッセルリンク」
そんなカミーラにランスの剣の中からケッセルリンクが声をかけてくる。
「…貴様、見ていたのか」
「生憎と私はここから離れられない。嫌でも見せられる、という方が正しいな。かつてのスラル様と同じ事を味わっているとなれば我慢出来るが…いや、そんな事も無いな」
ケッセルリンクの声があからさまに不機嫌なのを感じ取り、カミーラは目を見開く。
常に余裕を持ち、冷静である彼女らしくない言葉にカミーラは興味をそそられる。
「何が…気に入らぬ」
「…何が、か。まあ色々とあるが…昨夜のお前だな。実にお前らしくない…いや、私は夜のお前を知っている訳では無いから何も言えないというのが正しいのかもしれないが…まあ、とにかく面白くは無いな」
「お前が…そう言うのは珍しいな」
カミーラの声にケッセルリンクはやはり面白く無さそうに不機嫌な声を出す。
「これがスラル様やジル…レンや普通の人間ならば私も何も感じない。だが、相手がお前となると…これ程面白くないものだとは思わなかった」
その言葉にカミーラは目を見開き、そして薄く笑う。
「フッ…貴様ともあろう者が嫉妬か。しかもこの私に」
カミーラの嘲笑にケッセルリンクは無言になる。
が、カミーラにはケッセルリンクがこちらを強く睨んでいるのが分かる。
「だが、何故お前がそんな感情を抱く」
「フン、昨夜のお前を見ていれば誰だって信じられぬだろうな。お前の心境に何の変化があったか…私には分からないが、そういう目でランスを見るとは思わなかった」
「何…?」
「お前がランスを見る目は一人の女の目だった。しかもお前からは信じられない程の穏やかな目だった」
「…何をふざけた事を」
ケッセルリンクの言葉に今度はカミーラが明らかに不機嫌になる。
「自分では分からないものだ。それに私はお前の親友のつもりだ。どれ程の付き合いがあると思っている。お前のそういう変化くらい感じ取れない訳が無いだろう」
「………」
カミーラはケッセルリンクの入っている剣を睨むが、同じようにケッセルリンクが自分を睨んでいるのが容易に感じられる。
「別に私が口を出す事では無いのは分かってはいるが…それでも相手がお前だとこうも微妙な気持ちになる。無論、唯の八つ当たりのような事だとは分かってはいるがな」
「フン…」
カミーラは隣で眠っているランスを見る。
昨夜の事は…カミーラにとってはありえない一夜だと思う事にしていた。
だが、ケッセルリンクがそういう感情を自分に向けている事は…何故か面白かった。
ランスとケッセルリンクの事は勿論知っているし、ケッセルリンクがどういう感情を向けているかも知っている。
「ケッセルリンク…一つ聞こう」
「何だ」
「もし私とランスが完全に殺し合うとしたら…お前はどちらにつく」
「何を馬鹿げた事を…」
カミーラの戯れとも思える言葉をケッセルリンクは鼻で笑う。
「ランスにつくに決まっているだろう」
「…だろうな。お前はそういう奴だ」
カミーラも自分の問いがバカバカしいとでも言うように自嘲する。
「カミーラ」
「何か…」
「昔の事は吹っ切れたか?」
少し荒々しかったケッセルリンクが落ち着いて聞いてくる。
「…過去か。忌々しい記憶でしかない」
ケッセルリンクには自分の過去を話した事はあった。
それだけ親しい間柄だったし、何よりも共にカインと出会い、そしてククルククルと戦った仲だ。
だからこそ、ドラゴンと自分の因縁を話してやった。
ケッセルリンクはそれに何も言わなかったのがカミーラには有難かった。
「昨夜のお前は本当に楽しそうだった。ランスとの戦いもそうだが、セックスもだ。私も女だ…それくらいの機微は分かるよ」
「楽しめた…か。フン…」
カミーラはランスの頭を掴むと、そのまま自分の膝の上に乗せる。
「そうだな…楽しめた。まさか楽しむとは…思わなかった。屈辱でもあるがな」
「どこまでもプライドが高いな。それがお前だ、今更何も言うまい。お前がそう感じたならそれで良い」
そう言ってケッセルリンクは黙ってしまう。
もう何も言う事は無いという意思表示だろう。
カミーラはまだ眠っているランスを見る。
そして皇帝液を大量に流し込まれた自分の腹に触れる。
「フン…貴様は訳の分からぬ人間だ」
そう言いながらもカミーラはランスの事をじっと見続けていた。
昼間―――
「がはははは! こんな感じか!」
ランスは雷光を纏い体を動かしていた。
そんなランスをカミーラは複雑な顔で見ていた。
ランスの体から放たれる雷光は昨日よりも確実にドラゴンの姿を模っている。
そして目に見えてランスの動きが素早く、そして鋭くなっていた。
「うーむ、何となく分かったな」
「………」
「む、何だカミーラ。何か言いたい事でもあるのか」
「有ると言えば有る。だが、お前にではなくアベルにだがな」
「なんのこっちゃ」
カミーラの言葉にランスは訳が分からないと言った顔をする。
「フン…アベルの奴、余計な事をしてくれたな…」
もう会う事は無いであろうアベルに悪態をつきながら、カミーラはランスの側へとやって来る。
それだけでランスの雷光が光を強くする。
「お前が近くに居るとめっちゃ反応するな、こいつ」
「フン…アベルがそれだけしつこいという事だろう。このカミーラをドラゴンから奪っておいて、尚もこのカミーラに執着するか…」
「お前をドラゴンの連中から奪ったって言ってたな。ストーカーみたいな奴だな」
「まあいい…今の私には関係無い事だ。それよりもランス…このカミーラに打ち込んで来い」
「あん? またお前と戦うのはごめんだぞ」
「戦う訳では無い…今の貴様の力、そしてそのドラゴンの気配を感じ取るだけだ。無敵結界も使う。遠慮なく撃ち込んで来い」
「ふーん。まあいいか」
カミーラの言葉にランスは剣を構える。
そして凄まじい速度でランスがカミーラに剣を打ち込む。
それは無敵結界に阻まれるが、カミーラは確かに無敵結界の上から衝撃を感じる。
「ふむ…やはり以前よりも上がっているようだな」
「当たり前だ。って言うかお前が俺様相手に無敵結界を使って無いだろうが」
「それでも分かる事はある」
カミーラはランスの手に触れる。
それだけでランスの体の雷光が強くなり、力が増してくるのが感じられる。
「お前が居るとやたらと調子が良くなるな」
「上にほぼ同じ文章あり。気に入らぬが、このカミーラが寵愛を与えるとその力が増すようだな。全く持って忌々しい…」
ランスの体から姿を形どるドラゴンを見て、カミーラは本当に忌々しそうに舌打ちする。
何処までもカミーラに関わって来ると言わんばかりのアベルの態度には、流石のカミーラも辟易してしまう。
「つまりはもっとお前とやれば強くなるという事か」
「お前が使いこなす事が前提だ。どんな力を持とうが、制御できなければ意味は無い。それは貴様も分かっているはずだ」
「むっ…」
カミーラの言っている事はランスも分かる。
ランスは自分自身の力を制御出来なかったので、かつて新必殺技を開発した時も経験値が下がった事があった。
今はそんな事は無いが、同じような事は経験している。
バスワルドの力はランスにも反動が大きく、経験値が減少したり、ランス自身に大きな負担をかけるという事があった。
今でこそその頻度も少なくはなっているが、依然として副作用があるのは変わらない。
「まあこいつはそんなリスクは無いがな」
この力は外側からの力とは無関係なのかどうかは分からないが、ランスの体にもレベルにも影響は無い。
これはランスにとっては幸いで、レベルに影響が無いのは何よりも有難い。
「というかお前とやったら安定したという事は、お前ともっとやればもっと強くなるという事か?」
ランスはニヤニヤしてカミーラを見る。
カミーラはそんなランスの頭を殴る。
「あだっ! 何しやがる!」
「このカミーラに向け愚かな事を言うからだ。それよりも来るがいい。このカミーラの教え、無駄にすることは許さぬ。その力をもって全力で抵抗するがいい」
「お前も変な奴だな。まあ今更過ぎるな。じゃあ行くぞ」
ランスとしては珍しく、そしてカミーラとしてはあり得ない事をしていると自覚しながらも、ランスは己の新たな力を使いこなすべく、特訓をするのだった。
???―――
「ぐっ…はぁ…」
ランスの剣の中でケッセルリンクは荒い息を突きながら膝を突いている。
目の前に居るのは魔王ククルククルの一部。
そのククルククルと対峙しながら、ケッセルリンクは己の力不足を改めて突き付けられていた。
勿論ケッセルリンクは魔人の中でも上から数えた方が早い使い手だ。
だが、そのケッセルリンクでもククルククルには手も足も出ない、それが現実だ。
「やはり…地力を上げる以外に道は無いとはいえ辛いな。私自身、レベルが上がりにくくなっている…当然の事なのだがな」
ケッセルリンクは強くなるためにククルククルに挑んでいた。
そのためには何よりもレベルを上げるしかない。
「やれやれ…ケイブリスは何千年もこの地道な事を続けていたというだから驚きだ。奴は…努力家でもあった訳だな」
自分が魔人になった時は圧倒的な弱さだったケイブリスも、今や自分と同じ地位の魔人四天王へとなった。
それは正に地道な努力、数千年の努力の結果だ。
そしてリスという種族の特性から体を進化させ続け、今では獰猛な獣の姿へと変わっている。
カラーであるケッセルリンクにはそんな事は出来ないので、地力を上げるしか無いのだ。
そんなケッセルリンクの顔をククルククルは覗き込む。
すると、ケッセルリンクの背後に突如として強大な力を感じる。
「…! バスワルド」
そこに立っていたのはラ・バスワルドだ。
普段はククルククルと共にランスの剣の影響力を争うように戦いを続けていた。
が、今はそんな気はない様で、争う気配は無い。
するとククルククルが突然姿を消す。
まるでケッセルリンクとバスワルドを二人きりにするかのように、忽然と姿を消したのだ。
「力を求むか」
「…何?」
「お前もまた力を求めるのか」
バスワルドの言葉にケッセルリンクは立ち上がると、真っ直ぐにバスワルドを見る。
「求めるさ。もう二度とあんな思いはしたくはない…」
ケッセルリンクには強い後悔がある。
それこそが、今の自分が強くならんとする原因だ。
「お前は何を払う」
「何?」
「あの人間は己の宝を私に差し出した。お前は私に何を差し出す」
バスワルドは真っすぐにケッセルリンクを見ている。
それを見てケッセルリンクは笑う。
「私の宝をお前に差し出す訳にはいかない。それは私にとっての全てだ。だからこそ、私は私自身で何とかする」
「そうか」
バスワルドはそんなケッセルリンクを見て相変わらずの無表情だ。
だが、バスワルドが突如としてケッセルリンクに触れる。
「お前はカラー。そして私は神。お前に切っ掛けを与えよう」
「何だと?」
「どう使うかはお前次第」
「何故私にそんな事を…?」
ケッセルリンクの言葉にバスワルドはやはり無表情に答える。
「面白そうだから」
その言葉にケッセルリンクは愕然とするしか無かった。
再び事故にあう
しかも今回は当たり所が悪かったのかかなり痛みました
ようやく落ち着いたので、何とか再開しようと思います
立ってられない程の痛みって本当にキツイです