魔物の領域―――それは魔王が人間を解放し、新たな魔物達の土地となった場所。
そこは過酷な領域であり、人間達に与えられた地とは雲泥の差だ。
勿論魔物達には不満は有るが、魔王に対しては誰も何も言う事は出来ない。
それこそが魔王という絶対的な権力者の力だ。
そしてその魔王が血を与えた存在が魔人…魔人もまた人間達へと手が出せずにいた。
魔王ジルの時代からそうだったが、一時期ガイは人間を殺すのを許可していたため、一部の魔人は喜々として人間を殺していた。
ただ、その中でも人間に対して興味を示さない魔人も複数居た。
その内の1人である魔人レイは、今目の前の相手と戦っていた。
「オラァ!!」
「っ! 凄い衝撃…!」
レイは目の前の巨人に拳を打ち込む。
巨人はその衝撃に体をふらつかせるが、それでも倒れる事は無い。
それこどころか、その体から無数の武器が放たれ、レイの体を傷つける。
「やるじゃねえか! 魔人になったばかりとは思えねえな!」
「私だって自分を伸ばしていた。若輩でも力で劣っているつもりは無い!」
「言うじゃねえか! シルキィ!」
レイは好戦的な笑みを浮かべると、新たな魔人となったシルキィと激しくぶつかるのだった。
どれ程の時が流れたか、レイの逆立っていた髪の毛が降りる。
「この辺でいいか」
「相変わらず勝手ね。まあ私はそれでもいいけど」
レイが戦闘態勢を解いた事で、巨躯の巨人―――シルキィがその鎧を脱ぐ。
「便利なもんだな。ま、それがお前の力ってやつか」
「そうよ。あなたが雷を使えるのと同じ。私にはそれしかないから」
シルキィは鎧―――リトルに触れると結構な損傷があった事に唇を歪める。
「乱暴ね。直すのもタダじゃないんだけど」
「そんなのは知らねえ。ま、次にやる時はもっと強くなってんだろ」
レイはタハコを吹かすと、そのまま木の根に腰を下ろす。
「そんなにランス君と戦えなかったのが不満なの?」
「大いにな。ま、あの時は余計な邪魔を入れやがったアイツが気に入らなかったからな」
呆れたようなシルキィの言葉にレイは少しつまらなそうな顔をする。
「その後はカミーラと一緒に行方不明ときやがった。ま、あいつが百年単位で行方不明になるなんて珍しい事じゃねえしな」
「…その様子じゃ隠れて人間の所に行ってるみたいね。人間への干渉は禁止されてるでしょ」
「別に喧嘩を売ってる訳じゃねえ。ま、今の状況はここよりは人間界の方が面白れえってのもあるけどな」
魔人レイは魔王の命令通り、人間に手を出していない。
ただ、時折人間界にふらりと行くと、少しの間返ってこないという生活をしていた。
「酒は人間界の方が美味いしな」
「私が人間だったら体に悪いって言う所だけどね…まあ魔人に言っても仕方ないか」
レイの言葉にシルキィは苦笑する。
レイは本来一匹狼で、話しかけられても無視する―――と言われている。
が、少し様子が違い、こうしてある程度付き合いのある魔人も存在する。
それがシルキィがまだ人間だった頃に一度顔を合わせた事から、意外な縁が出来上がっていた。
「で、ランスの野郎はまだ戻って来てないのか?」
「私が教えると思う?」
「…思わねえな。ま、楽しみは後に取っておくってのもいいかって話だ」
「まあいいけどね」
シルキィはレイの態度に呆れながらも、その顔は笑っていた。
「それにしてもカミーラの奴も行方不明か。ケッセルリンクと同じような状況になってんだな」
「…まあそうね」
レイの言葉にシルキィは複雑な表情を浮かべる。
カミーラが行方不明になった原因は当然シルキィも知っている。
が、魔王であるガイがそれを言わないのだから、魔人である自分がそれを話すのも変だと思い誰にも話していない。
なので今現在はカミーラは行方不明という事になっている。
なっているが、魔人の中ではそれを心配している者は一人しか居ない。
それがカミーラに思いを寄せているケイブリスだ。
ただ、ケイブリスはそれを魔王に質す勇気は無く、シルキィも誰にも話さないので結局カミーラの行方を知る者は誰も居ない。
ただ、魔人四天王の二人であるカミーラとケッセルリンクが行方不明だというのは魔物達に影響を与えてはいる。
何しろ魔人は無敵の存在、その魔人が長い間姿が見えないとなれば気にするのは当たり前だろう。
それが例え何世代も交代したとなってもだ。
「久しぶりに酒でも飲みに行くか」
「あなたも好きね。ま、人間に迷惑をかけないなら私は止めないけど…」
「雑魚に興味はねえ。今更人間共に喧嘩を吹っ掛けてもつまらんだけだ」
レイはそう言うと、タハコを吹かしながら人間界の方に歩いて行く。
それを見届けてシルキィはため息をついてリトルに寄りかかる。
「全く…一体いつ戻って来るのかな、ランス君は。お姉さんにあんまり心配かけないでよね」
魔人になって数百年経っているが、シルキィの自称姉は今でも止まる事は無かった。
ランスとカミーラは激しいセックスを毎日繰り広げていた。
ランスとしては珍しく自分を強くするための特訓を嫌がらず、割と素直にカミーラの言葉を聞いていた。
勿論ランスとしてはカミーラと親しくなるという下心、そしてこうしてカミーラとセックスが出来るというメリットが大きい。
これまでカミーラに強い敵意を向けられ、尚且つ何度も戦いを挑まれていたため、ランスとしても正直カミーラとの関係を結構悩んでいた。
これが大したことの無い相手ならばランスも気にもならないだろうが、流石に自分を上回る魔人に狙われるとなれば話は別だった。
なので、こうしてカミーラと普通に話せて、普通にセックスが出来る現在の環境はランスには都合が良かった。
そしてランスは割と出鱈目に『カミーラとセックスすればドラゴンの力が安定する』と言ったが、瓢箪から駒とでも言うべきか、それが事実となっていた。
こうしてカミーラとセックスをすればするほど、ランスに渡されたアベルの雷竜としての力は安定していった。
勿論まだまだ使いこなせている訳では無いだろうが、それでも大きな進歩だった。
「あー、えがった…」
その日も濃厚な一夜を終え、ランスは非常に満足そうにしている。
隣にはランスと同じように汗を流しながらも、ランスを睨んでいるカミーラの姿が在る。
「…貴様、本当に訳が分からぬ奴だな」
「何だ急に」
「お前の魂胆は分かっていた…だが、お前は私を楽しませた故、お前に付き合ってやった。だが…何故お前は本当にその力を引き出せる?」
カミーラの立場からすれば納得がいかない事だ。
ランスの魂胆はカミーラも分かってはいたが、ランスに対する褒美と思い好きにさせてやった。
ランスの戯言に付き合ったのも本の戯れのつもりだった。
「日に日にお前はアベルの力を使いこなせている…理解出来ん。アベルに踊らされているようで気に入らん」
カミーラとしては、これもアベルの狙いかと思うと本当に腹が立つ。
もう一回殴ってやらないと気が済まないが、恐らくはもう二度とアベルと出会う事は無いだろう。
それ故に、自分の痕跡を残すためにランスに己の雷竜としての力を渡したのは間違いない。
ただ、ランスとアベルは本当に力の相性が良かったようで、ランスはアベルから受け取った力を着実に身に着けていた。
しかも、自分とセックスをすると本当にドラゴンとしての力が増していく…それもまたカミーラには気に入らない事だ。
「あいつはあいつ、俺様は俺様だ。お前だってあいつとセックスしてる訳じゃ無いだろ」
「フン、奴の相手など虫唾が走る…奴は私を魔人にして満足していたような奴だ」
カミーラは苛立ちを隠そうともせずに怒りを見せる。
「お前もこじれてるな。前にも言ったが忘れろ。どうせお前ともう関係の無い奴だろ」
「人間である貴様に言われる筋合いは無い…が、それも事実だ」
セックスの後の心地よい気怠さにため息をつきながらカミーラはベッドから体を起こす。
「だが…少々長居し過ぎたか…」
「あん?」
「魔王の影響力が出てきた…奴は本気で人類を解放したようだ。魔王の元へと戻る必要もある。忌々しいがな」
「ふーん、そっか。魔人ってのも完全に自由じゃ無いんだな」
「忌々しいがな…」
カミーラとしてはドラゴンという籠の中から今度は魔王という籠の中に閉じ込められた。
ドラゴンの所に居た時よりも自由だが、本当の意味での自由は無い…それが永遠の命と無敵であるという特権を持つ者の宿命でもあった。
「さて…これが最後だ」
カミーラは起き上がると、自ら服を着る。
「来るがいい」
有無を言わさずにカミーラは外へと出ていく。
ランスとしてもセックスの後なので少々気怠いが、カミーラの放つ空気がそれを許さなかった。
それ程までにカミーラからは凄まじい気迫が放たれていた。
なのでランスも文句も言わずに着替えて外に出る。
「なんだいきなり」
「言っただろう。もう時間だと。今体が無いケッセルリンクと違い、私には魔人としての制約が作用する」
「突然だな」
「来るがいい。今の力を私に向けてみろ」
「フン」
ランスは剣を抜くと、これまで培ってきた力を使う。
カミーラとセックスをするようになってから格段に安定し、今では当たり前のようにアベルから渡された力を使える。
ただ、一度使うと充電時間を必要とするのは仕方の無い事だろう。
人間の身でありながら、このような力を授かる事は誰も想定していないのだから仕方が無い。
ランスがドラゴンの力を解放すると、ランスの周囲に雷がまとわりつく。
今のランスの背後にはハッキリとドラゴンの頭部が浮かび上がっている。
「フン…アベル、貴様はそうやってこのカミーラの前に居ようとするか」
そのドラゴンの頭部はきっちりとアベルの形を模っている事にカミーラは苛立ち気に吐き捨てる。
これがアベルの目的なのは分かっているが、それでも腹立たしいのには変わらない。
「来るがいい」
「がはははは! 行くぞ!」
ランスの姿が消えたかのような錯覚が陥るほどその動きは速い。
それはランスがその力を使いこなしてきている証拠であり、カミーラとしては狩り甲斐が出てきたという事でも有る。
そしてランスの剣はカミーラの無敵結界にぶつかり、ランスはそのまま吹き飛ばされる。
「あ、無敵結界使いやがったな!」
「使わないとは言っていない。今お前と戦うつもりは無いからな…が、お前はアベルの力を問題無く使えているようだな。余程親和性があったらしい。全く違う性格なのだがな…」
カミーラは本当に信じられないくらいに、ランスに対してドラゴンの力を発揮させるために教えてきた。
その甲斐が有り、ランスもまた強力な力を得た…それはカミーラにとっては非常に楽しい事だ。
やはり強い奴を狩る事こそが、カミーラにとっての戦いの意義だ。
弱い奴をすり潰すのも別に悪くは無いが、やはりドラゴンとしては強き者と戦う事もまた楽しみでもある。
それは魔人になっても変わらない…いや、カミーラが取り戻したものだ。
「だが…使えば弱まるか。そこはどうしようもないな」
「フン、使って倒せるならば問題無いだろうが」
「何処までも不敵な男だ…が、それでこそこのカミーラのモノになる価値がある」
カミーラは吹き飛ばされたランスを起こすと、そのままその唇を奪う。
「貴様の剣…やはり異質なものだな」
そしてランスの剣に触れる。
「これか? ころころ形が変わるから使いにくい。ま、どんな形でも手に馴染むから構わんが」
「ふむ…最初に感じたドラゴンへの強烈な殺意が消えている…」
カミーラがランスと最初に戦った時、この剣から感じたのは強烈な殺意だった。
事実、カミーラが戯れで無敵結界を解除してランスと戦った時、この剣で斬られた傷は中々治らなかった。
だが、ある日を境にその強烈な殺意を感じなくなった。
「お前がバスワルドを斬った後か…この剣が変わったのは」
「あのククルククルとかいう奴と戦った後だな。こんな形になったのは。その後はコロコロ形を変えてるぞ。しかも最近は自己主張が異常に強くなってきたからな」
ランスが剣の柄を見せると、そこには確かにククルククルの触手の先端についていた、人間の女性を模したかのような部分の顔が浮かび上がっている。
「…成程、確かにな」
「こいつとバスワルドが争ってるせいで形が一定せんからな。まあ俺様程の天才ならば剣の形が変わろうが問題は無いがな」
「ふむ…」
カミーラはランスの剣に触れる。
するとランスの剣が震える。
「な、何だ!?」
ランスが驚いていると、ランスの剣の形が再び変わっていく。
「…またか!」
その姿はバスタードソードのような大きさだったククルククルの自己主張が激しい剣でも、ラ・バスワルドの力が大きく表れていたロングソードとも違う。
バスタードソードとロングソードの中間の大きさとなり、その剣にはまるでドラゴンの鱗のような紋様が現れる。
そしてククルククルの顔が浮き出ていた柄の部分からその顔が消え、普通の剣の柄へと変わる。
ランスはその剣を見ると、
「…なんつーか、これまで俺様が斬って来た奴が合わさったような形をしてるな。どんだけ自己主張が強いんだ、こいつら」
「ククク…まさか歴代魔王に目を付けられるとはな…お前は魔王と縁があるようだ」
「やかましい。俺様は魔王なんぞと縁など…」
そう言いかけ、ランスは思わず口を紡ぐ。
初代魔王ククルククル、二代目魔王アベル、三代目魔王スラル、四代目魔王ナイチサ、五代目魔王ジル、六代目魔王ガイ、そしてその次の魔王である美樹とも会っている。
つまりは歴代魔王をコンプリートした事になる。
そしてランスはその魔王と出会って生き残っているのだから、運というものでは片づけられない何かがあると誰もが考えるだろう。
「まあいい…今回はここまでだ。強くなるのだ…このカミーラの全力と戦える程にな」
そのままカミーラは浮き上がる。
「ケッセルリンク…貴様も早く戻って来い」
「…フン、言われるまでも無い」
カミーラの言葉にケッセルリンクは不機嫌そうに返事をする。
その返事を聞いて、カミーラは逆に楽しそうに笑みを浮かべる。
「さらばだ。ランス、もっと強くなれ。そうすればお前は自由でいられる」
そう言ってカミーラはそのまま飛んでいく。
その姿を見届けて、ランスは周囲を見渡す。
「いや、俺様も連れてけよ!たく、ここはいったい何処だ」
ランスは確かにここと似た光景を知っている。
リーザスからヘルマンに行こうとした時と同じ光景だが、同じ光景故にここが何処なのか全く分からない。
このまま迂闊に動けば遭難する事間違いなしだ。
「おいケッセルリンク。何とかならんか」
「身動きが出来ない私に無理を言う。あのメイドに話を聞くしか無いだろう」
「そういやそうだな。レンとジルも探さんといかんしな」
「この時代に居るのか? お前と離れ離れになったんだ、同じ時代に居ない可能性もあるぞ」
「そんな事は無いだろ…うむ、無いに決まってる」
ランスはちょっと自信なさげに言うが、とにかくこの山を下りようと思った時だった。
「全く…カミーラと何をやってたかと思ったら特訓なんて似合わない事してたもんだね」
「うお!? ってハンティか!?」
ランスの背後から突如として黒髪のカラーが姿を現す。
「始祖様」
「久しぶり、ケッセルリンク。にしてもこんな所で何をしてるのかと思ったら…ちょっと前に見つけてたけど、流石にカミーラが居たから接触は避けてたんだけど…まさかね」
ハンティは少し疲れた声を出す。
「本当はもっと早く話したかったんだけどね。流石にカミーラとは敵対したくは無いしね。ま、そっちも楽しんでたみたいだからよかったんじゃない?」
「そんな事よりジル達はどうした」
「ジル達なら人間の町に居るよ」
「人間の所だと?」
「その様子じゃやっぱり知らなかったみたいだね。現在の人類の状況」
そう言うとハンティは自分が知っている事をランスに話しだした。
現在は魔王が人類を解放し、ようやく人類は自由になった事。
魔物達は魔物領と言われる場所に移動し、人間達の所に出てこない事。
そしてジル達が今何処に居るのかについても。
「まさか俺様とあいつらが過ごした時間が違うとは…」
「そんなに…って訳でも無いね。あんたは人間だしね」
ハンティはランスに何を言って良いか分からない。
「で、人間の所で暮らしていると…」
「私の紹介でね。アンタといつ合流できるか分からなかったしね」
「…むぅ、まさか新しく男と作ったとか無いだろうな」
ランスの言葉にハンティは目を丸くする。
「ぷ…あははははは!」
そして珍しく大笑いをする。
「ないない! あの子に限ってそれは無いって。どっからどう見てもアンタ一筋でしょ、あの子は。ま、経緯を考えれば当たり前だけど。それにしてもアンタもそう言う事気にするんだね」
「やかましい! まあそれはどうでもいい。とっとと奴等と合流するぞ、と言いたいが…」
ランスは周囲を見渡す。
「お前は瞬間移動で来たんだよな」
「そうだけど」
「確か俺様と一緒には瞬間移動は出来んと言ってたな」
「人間と一緒だと危険すぎるからね。流石にそんな事は出来ないね」
「じゃあ歩いてここを超えるという事か?」
かなりうんざりしながらランスは呟く。
正直言えばランスはここがリーザスとヘルマンの間の山という事しか分からない。
ランスから見れば山なんてどこも同じような景色をしている。
東西南北も分からないし、そもそも何処を歩けば人里に出るかも分からない。
「そんな心配しなくていいわよ。いい物持ってきてやったからさ」
ハンティはそう言って木の陰に向かうと、そこから大きな物を持ってくる。
「これ、持ってきてやったよ」
「おお! 俺様のバイク!」
ハンティが持って来たのはランスのバイクだった。
これがあれば移動は格段に楽になる。
「アンタ達が特訓している間に、人里への道順は私が調べておいてやったよ」
「気が利くな。が、バイクで通れるのか?」
「もう人間の時代になって100年以上経ってるからね。道とかも意外と整理されてきてるよ。ココだって別に断崖絶壁って訳じゃ無いしね。家が有るくらいだから開けている所だよ」
「まあいい。これがあるならばこんな所からはおさらばだ」
ランスはバイクに跨るとエンジンをかける。
久々の音と感触にはランスも結構ご満悦だ。
バイク技能があるランスにとっても、このバイクはやはり爽快で気持ちのいい乗り物だ。
うし車よりも早いし、何よりも走らせていて楽しい。
「…一つ良いかい?」
「何だ?」
「いや、私も乗らせて貰っていいかい?」
「あん?」
「いやー、アンタってカラーの子を乗せて走りに行ったりしたこともあったでしょ? 聞いたら皆楽しかったって言うからさ。実は結構気になってて…」
ハンティはバイクを見て目を輝かせる。
「お前の案内が無いと帰れんだろうが。とっとと乗れ」
「じゃあ遠慮なく」
ハンティはランスの後ろに乗ると、ランスはそのままバイクを走らせる。
それまで泊っていた家の前に止まると、そこからメイドさんが出てくる。
「あら、行かれるのですか?」
「おう、世話になったな」
「いえいえ、誰かに尽くす事が私の幸せ、お二人のお世話が出来て私も楽しかったです」
「お前も行くか? 乗せてってやってもいいぞ」
ランスの言葉にメイドさんは首を振る。
「いえ、ここが私のご主人様の家、ここを守るのが私の使命なのです」
「そっか。じゃあ元気でな」
「はい、お気をつけて」
ランスはそのままバイクを走らせて消えていく。
それを見届けて、メイドさんはため息をつく。
「また…一人ですかね」
「あ、メイちゃーん!」
その時、気の抜けそうな明るく優しい声がメイドさんの耳に入る。
その方向に目を向けると、そこには一人の女性が嬉しそうにこちらに走って来るのが見える。
「ウェンリーナー様!」
「久しぶりー。元気だった?」
「はい、勿論です。ウェンリーナー様もお変わりなく」
ウェンリーナー―――聖女の子モンスターと呼ばれる存在がメイドさんに抱き着く。
「えへへー」
「ウェンリーナー様に頂いた薬草、早速効果が有りましたよ」
「役にたったんだ。良かったー」
「はい。所でこちらには何を?」
「久しぶりにメイちゃんに会いに来たの。メイちゃんってモンスターの中では住めないって聞いたから…」
ウェンリーナーは悲しそうな顔をするが、メイドさんはニッコリと微笑む。
「私はメイドさんの突然変異、メイド長さんですから。でも、悲しいなんてありませんよ。こうしてウェンリーナー様も訪ねて来てくれましたし、この前はセラクロラス様も訪ねてきてくださいました」
「そうなんだー。じゃあ私、少しここでお世話になってもいい?」
「勿論ですよ、ウェンリーナー様。今お茶の用意を致しますね」
そう言ってメイドさんはウェンリーナーと共に小屋の中へを消えていくのだった。
すいません大分遅れました
年末で忙しいの風邪のダブルコンボで寝込んでました…
ペースを戻すと言いながら情けないです…