「がはははは! 俺様参上!」
ランスはバイクに乗りながら高らかに宣言する。
「ちょ、ちょっとランス! あんた誰か跳ね飛ばしたよ!?」
「あん? 何か居たか?」
ハンティの言葉にランスは周囲を見渡すが、特に誰も見当たらない。
ちなみに足元は確認しないので当然の事ながら、バイクで体当たりされたセルジオの事など眼中に無い。
「ランス様!」
「お!」
そしてランスの姿を確認すると、ジルは嬉しそうにランスに抱き着く。
その柔らかい刺激にランスは嬉しそうな顔をするが、その顔を見て驚く。
「ってお前ジルか!?」
「はい、私です」
ランスはジルを体から離すと、改めてジルと名乗った女性を見る。
確かに顔つきはジルに間違い無いし、美しい水色の長い髪もランスが知るジルの髪そのものだ。
右手に巻いている包帯もジルの特徴だし、目の前の美女は間違いなくジルだ。
「…お前、育ったな」
「当然ですよ。アレから何年経ったと思ってるんですか?」
「うーむ、ハンティの言う通り本当に時間が違うのか…それにしても」
ランスは改めてジルを見る。
少女だった時は本当に可愛らしい容姿をしていたが、流石にランスのハイパー兵器が反応する事は無かった。
ミルよりも幼い容姿だったのだから、流石に反応すると問題だ。
が、今のジルはまさに別人だ。
ランスが初めてジルと出会った時よりも幼く見えるが、それ以上に女性としての魅力が凄まじかった。
「特にこっちが成長したな」
「ラ、ランス様…」
ランスはジルの胸に触れる。
今のジルの特徴は幼い顔立ちで有りながらも、その服の上からでも分かるスタイルだ。
魔王になる前よりも成長しており、あのケッセルリンクに勝るとも劣らない見事な胸をしている。
「うむ、いい感じだぞ。がははははは! 楽しみが増えたな!」
ランスが馬鹿笑いしていると、その足元から人間が起き上がる。
「貴様! 何のつもりだ!?」
「…あん? 誰だお前」
「人をあんな目にあわせておいてその態度は何だ!?」
「知らん。俺様の前に立つ奴が悪い」
ランスの言葉にセルジオは顔を真っ赤にして怒る。
まあランスのような態度をされれば怒るのは当たり前だろう。
「大体お前は何者だ!? というかソレは何だ!?」
セルジオはランスの乗っている奇妙な乗り物を見る。
ランスの乗っているバイクは当然の事ながらこの世界に流通するようなものではない。
この世界の天才の1人であるパイアールが作った世界にただ一つの乗り物だ。
鉄で出来た乗り物に誰もが興味を惹かれるのは無理は無い事だ。
「うるさい。お前みたいな暑苦しい男に用は無い。それよりもジル、レン、とっとと行くぞ」
「はい」
「そうね。とっとと行きましょ」
ランスがジルとレンの名前を呼ぶと、二人とランスの側へと行く。
「ま、待って下さい!」
「あん?」
それを見て声をかけたのはこの魔教団のリーダーであるルーンだ。
「何だお前」
「えーと私の名前はルーカ・ルーン…いえ、そう言う事では無く! あなたは何者ですか」
ルーンは真剣な顔でランスを見る。
理由は勿論、ランスが乗っている乗り物だ。
それは正に未知の物体、フリークが提唱した理論とは全く違うモノだ。
自分達が作った鉄兵に通じているようで通じていない…そんなモノが有る事にルーンは驚いた。
そしてもう一つ驚いたのは、そんな存在にジルとレンが全く驚いていなかった事だ。
つまり、彼女達はこれが何なのか理解しているという事だ。
ルーンの頭には色々な可能性が駆け巡り、色々な答えを導こうとする。
「最初に教えてやっただろうが。俺様はランス様だ。男なんぞに名乗ってやる筋合いは無いが、今日は気分が良いから特別に教えてやる。じゃあ行くぞ、ジル、レン」
ランスはルーンに全く興味を示さずに、ジルとレンをバイクに乗せようとする。
「ハンティ! お主…」
「あ、フリーク。いや、厄介な所を見られたね…」
フリークの視線にハンティは頬をかく。
別に黒髪のカラーである事を隠した事は無く、魔法学院の中にはハンティの事を知っている者も多い。
だが、ハンティが謎の乗り物の持ち主の知り合いという事にフリークは驚く。
(…もしやこの若者が前にハンティが言っていた…?)
フリークはハンティからカラーの歴史も聞いていた。
カラーがこれまでに色々な苦労を重ねてきた事も聞いている。
魔人に狙われた事も有るが、それを何とか退けた事も知っている。
(そしてこの男が…二人が待っていた相手という事か…じゃが)
フリークはランスを見る。
確かに凄い覇気を感じる。
凄まじい生命力とでも言うべきか、こうして見ているだけでもフリークには分かる。
(まさかこんなタイプの男だとはの…)
ただ、この若者は相当に傍若無人で我儘なのは間違いない。
そしてこんな男がジルとレンが待っていた男だと知り、流石にルーンが気の毒になってしまう。
「という訳でジルとレンは…」
「あ、ああ…どの道儂には特に何が出来る訳でも無いがの…」
ハンティとの約束、それは二人に迎えに来た時まで預かるという事だった。
だからその約束は終わりを告げたのだが…それとは別の問題が今起きている。
フリークはそれを感じ取り、密かに冷や汗が流れる。
「ま、待って下さい! あなたは…彼女とどのような関係なのですか!」
ルーンは意を決してランスに尋ねる。
ルーンにとってはどうしても確かめなければならない事だ。
ランスは腰に剣を下げている事から、剣士である事は明らかだ。
同時に魔法を使えるような人物には見えない。
だとすると、今の時代においてはランスとジルの関係が気になるのは当然だ。
何故なら、魔法使いは今は蔑まれている存在だからだ。
「ジルは俺様の奴隷だ。文句あるのか」
それはランスにとっては当然の言葉。
何時の時代でも、ランスがそう答えるのは自然な事だ。
が、その言葉は今の時代には問題のある言葉だった。
ランスの言葉に呼応して、周囲の者達がランスに敵意を向けてくる。
「…何だ?」
それを感じ取りランスは怪訝な顔をする。
先程までの困惑が入り混じった視線から敵意、中には殺意すら混じった視線が突き刺さる。
ランスの中では別に奴隷を所持しているのは珍しい事では無い。
実際にある商売であり、ランスも正規の手段でシィルを買った。
なのでおかしな事を言ったとはランスは思っていない―――これがこの時代で無ければ。
「ジル…お前、こんな人間に良いように使われていたのか…? いや、そもそもこの男は幼いお前を奴隷として使っていたのか」
「え…あ、そういう事では…」
ルシラの言葉にジルは言葉に詰まる。
ジルは彼女との付き合いは長い…それこそジルがまだ少女だった頃からの付き合いなのだ。
その頃からの奴隷…端的に見ればランスという人間が鬼畜外道だと思われるのは間違いない。
実際にはジルがランスの奴隷なのは間違いは無いが、その時から色々な苦労、そして別れを経験しようやく再開出来た間柄なのだが、そんな事を話しても誰も信じないだろう。
ハッキリ言えば言い訳なんて通用しない…それこそランス達の言葉を信じるのは、ランスと付き合いの長い魔人達や、伝説の黒髪のカラーであるハンティくらいだろう。
「貴様…! この外道が!」
そしてランスの言葉に激怒したのはセルジオだ。
魔法使いを奴隷扱いする自分達の敵、彼がそう判断するのは当然の事だった。
その拳がランスに向けられた時―――その体が思いっきり吹き飛ばされる。
「ぐはっ!」
吹き飛ばされたセルジオは鼻血を押さえて何とか立ち上がる。
「レン…!」
セルジオを吹き飛ばしたのは盾を構えているレンだ。
レンは盾でセルジオの顔を打っただけでなく、その衝撃でセルジオを吹き飛ばしたのだ。
そしてレンの態度はその他の魔法使いを刺激するのに十分だった。
「行け!」
ルーンの合図に動きを止めていた鉄兵が動き出す。
「あん? 何だこいつ」
動き出した鉄兵を見てランスは怪訝な顔をする。
何処かで見た事があるような感じがするが、それが何なのかは思い出せない。
「ルーン、止めろ!」
フリークは止めようとするが、動き出した鉄兵は止まらない。
すると鉄兵はランスも驚くほどの速度でランスに向かってくる。
「チッ!」
生命体とは違い殺気は無いが、その速度と迫力は本物だ。
ランスはバイクから降りると同時に鉄兵がランスに向かってその拳を振るう。
その速度はランスが予想したよりも遥かに速い。
鉄兵の拳がランスに突き刺さる―――よりも早くランスは剣を抜き放っていた。
「!」
それを見てセルジオは驚愕する。
鉄兵とは硬いだけで無く、その速さも攻撃力もずば抜けている。
だが、この男はその鉄兵よりも遅く動いたにも関わらず、鉄兵よりも素早く攻撃をしたのだ。
鋼と鋼のぶつかり合う音がして、ランスは驚く。
「うお!? 何だこいつ!?」
ランスの剣は最早適当に振るっても魔物兵でもあっさりと斬り殺せるレベルだ。
だが、そのランスの剣を持ってしても、目の前の鉄兵を斬る事は出来なかった。
そして鉄兵はランスの攻撃等意にも介せずに攻撃を仕掛けてくる。
「チッ!」
ランスは舌打ちして鉄兵の攻撃を捌く。
確かに鉄兵は固くて強い―――だが、ランスから見れば技術が無い。
だから攻撃方法はただ殴って来るだけで、ランスからすれば捌くのも造作も無い。
威力はあるようだが、それでもランスが相対してきた魔人や妖怪に比べれば大したことは無い。
ランスは鉄兵を剣で斬るが、その剣は鉄兵の体に通らない。
それにランスは不愉快そうな顔をする。
「何だこいつら。面倒くさいな」
ランスは鉄兵から距離を取る。
一方の鉄兵をけしかけていたルーンも鉄兵を見て驚愕していた。
それは鉄兵についた無数の傷だ。
確かに鉄兵は相手の剣で倒れはしない。
が、その体は剣を弾くのではなく、その剣先が鉄兵の体に傷をつけていた。
鉄兵は強いが無敵ではない、それは分かっては居るが、まさか人間を相手にこんな傷をつけらるとはルーンをしても想定外だった。
「ルーン! やめるんじゃ!」
「先生! ですがあの男は彼女を奴隷扱いしています! 許せる事ではありません!」
フリークの言葉にルーンも言い返す。
そう、ルーンは魔法使いの解放のために立ち上がり魔教団を設立したのだ。
そして目の前には魔法使いを奴隷扱いする男が居る。
そういう相手をルーンは許す事は出来なかった。
「ちょっと! 止めなよアンタ達!」
ハンティも止めようとするが、ランスも鉄兵も止まらない。
「うーん…止めた方がいいのかしらね」
レンは武器を出しては居たが、突如として鉄兵と戦いが始まった事に首を傾げる。
ランスを守るのが任務だが、鉄兵に関しては正直問題は無いとは思っている。
むしろ問題なのは他の魔法使いの存在だ。
ここに居る魔法使い達はレンの目から見ても人間にしては中々強い。
特にルーンに関してはエンジェルナイトから昇格した自分をも凌駕している。
(ルーン程じゃないけどそれでも人間にしては強い魔法使いが沢山居る。流石にこの数を全部相手にするのは難しいわね)
レンは周囲を見渡す。
ランスと鉄兵の動きを見ている者が殆どだが、その中では何時でも魔法を放てるように用意している者も居る。
魔法は絶対に命中するという性質を持っているので、いくらランスがドラゴンの加護やシルキィ特性の服を装備していても厳しいだろう。
(先制攻撃をして直ぐに逃げるのが一番だったんだけど、機を逸したかな)
レンが気になっているのはやはり既にランスを警戒している連中。
その中でもやはりルーンに関しては警戒心を強くしなければいけない。
「くっ!」
そしてランスと鉄兵の戦いに驚いていたセルジオが起き上がる。
「動くんじゃ無いわよ」
「レン…!」
「動いたら殺すわ。私はジルと違ってアンタ達を始末するのに躊躇いは無いわよ」
「貴様…」
セルジオはレンを見て戦慄する。
前々から自分達に興味を持たない奴だとは思っていた。
同時に、敵に回った時は躊躇いなくこちらを殺せる奴だとも感じていた。
そして今その脅威が現実になってしまった。
「そんな警戒しなくていいわよ。別に私だって無理にそっちと戦う気は無いし」
レンに殺気は無い。
それ故にセルジオは不気味さを感じ取っていた。
(こいつ…本当に同じ人間なのか?)
あまりに無機質な感じがするレンにセルジオの背筋が寒くなる。
だが、自分も動く事は出来ない…セルジオもまたランスと鉄兵の戦いを見届けるしか無かった。
ルーンは驚愕していた。
それはランスという魔法を使えない人間の強さを目の当たりにしたからだ。
ルーンは剣は全く分からないが、自分が作った鉄兵の強さは完璧に把握している。
だからこそ、自分達の知識と技術を全て費やしてきた鉄兵が人間相手に押されているのが信じられなかった。
(この鉄兵は本来は魔物兵との戦いを想定しているというのに…!)
ルーンにとっては魔法使いの解放、人類の平定は目的のための第一歩にしか過ぎない。
その目的は魔王…この世界の絶対的な存在であり、人間達に地獄を見せてきた存在を倒すためだ。
そのための鉄兵が、まさか一人の人間を倒す事が出来ないなんて想像もしていなかった―――ただ一人の例外を除いて。
(これではまるで古の英雄である藤原石丸のような…)
かつての英雄藤原石丸…大陸の半分を制圧したが、魔人に倒されてしまった最初の英雄と呼べる男。
鉄兵と戦っている男がまるでその英雄のようにすら感じられてしまう。
「がはははは! とっととぶっ壊れろ!」
ランスは圧倒的だった。
これまで魔人とも戦い続け、そして魔王や異世界の魔物とも長い間戦って来た。
その相手に比べれば、ただ硬いだけの相手などランスにとっては普通のモンスターとの違いは無い。
ただ、いくら攻撃しても全く応えないのは正直言って面倒くさい。
(…凄い。これ程の強さを持つ人が居たなんて)
そしてルーンは素直に驚愕し、感動すら覚えていた。
ルーンは剣に関してはからっきしだが、それでもランスが異常な強さを持っているのが分かる。
この鉄兵は人間の1部隊をあっさりと壊滅させる程の力を持っているのに、この人間には全く手が出ていない。
(技…と言うのかな? 私はこうしてみても何が起きてるか分からないけど…)
ランスの動きに鉄兵は全くついていけなくなってきている。
無理にランスの動きについて行こうとすれば、それだけ鉄兵に負担がかかる事になる。
そしてとうとうその時が来た。
「とっととぶっ壊れろ! ラーンスあたたたたーーーーっく!!!」
ランスの攻撃でバランスを崩した鉄兵に、ランスの必殺の一撃が突き刺さる。
「! なんだと!?」
「ば、馬鹿な…!」
セルジオとルシラが驚愕に目を見開く。
ランスの一撃は鉄兵の頭部に突き刺さると、そのまま頭部から鉄兵を斬り裂いたのだ。
いや、斬り裂いたという言葉は生ぬるく、頭部から鈍器で殴られたようにグチャグチャになってしまっている。
「お前もだ! とっとと死ね!」
そしてもう一体の鉄兵がランスに襲い掛かると同時に、ランスは刀に手をかける。
鉄兵の拳を避け、ランスはそのまま刀を一閃する。
すると鉄兵の上半身が崩れ、そのまま地面に落ちる。
鉄兵の下半身だけが一歩二歩と歩くが、それもバランスを崩し倒れる。
「フン、雑魚が」
ランスは刀を収めると、もう一度剣を抜く。
「次はお前だな」
そしてルーンに剣を向ける。
「…あ」
ルーンはそこに来て自分の立場を理解する。
魔力は高いが、肉弾戦はからっきしの自分が、鉄兵すらも倒した人間と戦えるとは思えない。
何とか防御魔法を唱えようとするが、相手がそれを許すとは思えない―――そう思った時だった。
「いい加減にしろ、この馬鹿共!」
「うわっ!?」
「あんぎゃーーーっ!!」
突如として周囲に凄まじい稲妻が落ちてくる。
「何時までバカやってんだい!」
それは雷神雷光を放ったハンティだった。
その額には青筋が浮いており、かなり怒っているのが分かる。
「ランス! 私は言ったよね! ああいう言葉は控えろって!」
「あいつが俺様の奴隷なのは事実だろうが! 大体奴隷なんぞ珍しく無いだろうが!」
「人の言う事は素直に聞けって言ってんの! 今だってアンタが余計な事言わなきゃこんな事にはなってないんだよ!」
「う、うお…」
本気で怒っているハンティを見て流石のランスも驚く。
これまではハンティは一歩引いた目線でランス達と付き合ってきたが、これほどの感情を表にしたのは初めて見た。
「分かった分かった。もう何もしない。それで良いだろ」
ランスは素直に剣を収める。
元々ハンティとやり合う気は無いし、カラーを敵に回す訳にもいかない。
何だかんだ言っても、今ランスの事情を理解し、受け入れてくれるのはカラーの里しか無いのだ。
「ルーン、あんたもだよ」
「わ、分かりました…」
ルーンも凄まじい迫力を見せるハンティには戦々恐々とするしかない。
「じゃあもう行きな。里の奴には話はつけてあるから」
「分かったからそう怒るな。ジル、レン、行くぞ」
ランスは素直にバイクに跨ると、ジルとレンもその後ろに座る。
そしてそのままランスはバイクを走らせると、魔教団からあっという間に姿を消す。
「やれやれ…」
それを見届けてハンティはため息をつく。
まさに一触即発、ハンティがここで爆発しなければランスとルーンの間で殺し合いが起きていただろう。
そして今の場合、ルーンはランスに斬られていた可能性は高い。
(ルーンはランスの事を知らないからね…ルーンは魔力がどれだけ高くても魔法使いだ。ランスのあの剣の前にはどんな魔法防御も意味は無いし、何よりもあの力を見た存在としてはね…)
ハンティはランスとカミーラの特訓を見ていた。
邪魔になるといけないので遠くから、ランスとカミーラに気づかれる事なく遠距離から魔法で見ていた。
そしてランスが新たに発言した力を見て驚愕した。
(どこからあんな力を得たっていうのかね…ま、それ以上に苦労をしているから、それくらいの役得ってのは有っても良いとは思うけどね)
ランスが魔人や魔王と渡り合って来た事は知っている。
その中でランスが得た力は大きいが、それを人間同士の戦いで使わせるのはハンティとしては避けたかった。
これが魔王ジルの時代や人間を支配していた頃のガイの時代ならまだいいが、時代は変わってしまったのだ。
今は人間同士が争う時代へと変化している。
その中でランスの力は危険すぎる。
(ルーンとぶつかったら大変な事になる…それは避け無いといけないからね)
ハンティから見てもランスとルーンは人類のカテゴリーの中ではずば抜けている。
だからこそ、こんなくだらない事で命を落とすなんて馬鹿らしい事は防がなくてはならなかった。
あまり時代に干渉したくは無いが、ハンティにはハンティの事情もあるのだ。
「ハンティ…すまん」
「いいよ。ランスがここに来たらこうなるって事は予想出来てた。それでもあいつのバイクに乗って楽しんだ私が悪いよ」
フリークの言葉にハンティも苦い顔をするしか無い。
「じゃがあの御仁が…」
「そ、二人の待ち人って事。じゃあ私も行くよ」
ハンティはそう言って姿を消す。
瞬間移動でこの場から立ち去ったのだ。
それを見届けてフリークはまだ地面に座っているルーンに手を伸ばす。
「大丈夫か、ルーン」
「あ、はい…僕は大丈夫です。でもあの人は…」
「儂も知らん。が、ハンティは知っているし、ジルとレンが待っていた者なんじゃろうな」
フリークはジルとレンが待っていた者があんな強烈な青年だとは思っても居なかった。
魔法使いであるジルを奴隷と言うのだから、ここに居る者が猛烈に反発するのは当然の事だ。
「いえ、それよりも…」
ルーンは慌てて動かなくなった鉄兵の元へと向かう。
それを見て、フリーク達もまた動かない鉄兵を見る。
「…なんだこれは」
セルジオもルーン達と同じく鉄兵を見て低く唸る。
「あいつ…本当に人間か? こんな事が…」
胴から真っ二つになった鉄兵の切断面に触れる。
「…恐ろしく冷たい。いくら鉄兵だからってこんなに冷える訳が無い」
ルシラもセルジオと同じように切断面に触れて嘆息する。
「人間業じゃない」
ルシラとセルジオは魔法使いだが肉弾戦闘にも明るい。
だからこそ、この異常な状態に背筋が寒くなる。
「…こっちの方が凄い…いや、酷いな」
ルーンはもう一体の動かなくなった鉄兵に触れる。
そこには頭から滅茶苦茶な力で砕かれたような無残な姿の鉄兵がある。
「どうやったらこんな風になるんだ」
鉄兵はルーンが作ったが故にその強度が分かる。
そもそも普通の人間の軍隊に対抗するため、決して疲れる事も無い無敵の兵士を必要としたのだ。
人間の兵士と違い、この鉄兵は疲労も無ければ休息も必要無い。
そして何よりもこの鉄の体は普通の攻撃でどうにかなるものでは無い。
それこそ魔法が弱点と言えるが、今の時代において魔法使いが重宝される事はこの魔教団以外にはありえない。
だからこその鉄兵なのだが、その鉄兵が1人の人間にこうもあっさりと破壊されるなんて想像も出来なかった。
「でも…凄い」
ルーンは自慢の鉄兵が壊されても尚感動していた。
「彼とは…また会えないかな」
そう言って、ルーンはランスの消えた後をただ見るのだった。
もう少しで落ち着きそう…
なのでペースを本当に上げたいです
鉄兵はどれだけ強いのかとちょっと思案中
この作品ではあっさりと倒す描写になりましたけど、
実際どれだけ強いんだろ