ランス再び   作:メケネコ

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ランスと魔教団

「うむ、腕を上げたな。昔よりも上手くなったぞ」

「有難う御座います、ランス様!」

 ランスはジルの作った料理を素直に褒める。

 子供の体だった時からジルは料理をしていたが、体が大きくなった事と時間がジルの腕前を上げたのだろう。

 ランスからすればジルと別れてからそんなに時間が経っていないので、急激に料理の腕が上がったように見えている。

「もう昼だよ。アンタ等どんだけ盛ってたんだい」

 ハンティは呆れたようにランス達を見る。

 この男の事だから絶対朝までヤッているだろうと思っていたが、本当に朝までしていた事に呆れが来る。

「それよりも今までランスは何してたの? カミーラと居たってハンティから聞いたけど」

 レンも食事を取りながらランスに聞く。

「お前たちこそ何してたんだ。何か変な奴等と一緒に居ただろうが」

 ランスの視線にレンはジルを見る。

 レンから説明するのは面倒だと思っているだろうし、ジルの方が説明は分かりやすい。

「ハンティさんからの勧めで魔法学院という所で勉強してたんです。レンさんは私を守ってくれてたんです」

「勉強?」

「はい。凄い知識を持った方々で…私も色々と勉強になりました」

 ジルは嬉しそうに笑う。

「フーン…まあどうでもいいな。あ、だがあの変なのは何だ?」

 ランスは魔法学院というものには興味は無い。

 だが、あの時戦ったあの人形…ランスも知っている闘将に似ている奴だけは気になった。

 闘神、闘将といった所謂聖魔教団の遺産にはランスも縁が有る。

 闘神都市イラーピュでは闘神イプシロンや多数の闘将とも戦った。

 そこだけはランスも引っかかる所があった。

 ヘルマンでその設立者である最後の闘神、MMと戦ったのはランスも記憶していた。

「それは私達にも分かりません。私は自分の分野を研究してましたから…そっちには全く関与していなかったので…」

「そうか」

 ジルが知らないというのなら本当に知らないのだろう。

 ランスに対してそんな嘘を言う理由が全く無い。

 なので知っているであろうハンティに視線を向けるが、ハンティは肩をすくめる。

「言っとくけど私は何も話さないよ。今回は私は完全中立、どっちにも肩入れしない」

「カラーのために魔人をぶっ殺した俺様よりもか?」

「勿論カラーとして感謝しているさ。でも言っただろ、時代は変わったって。今は魔物よりも人間の脅威からカラーを守る必要がある。そのためにはどうしてもフリーク達の協力が必要になる」

「フン」

 ランスは詰まらなそうに鼻を鳴らす。

 ハンティがそう言うのなら絶対に話してくれないだろう。

 それにランスとしてもあんな連中と関わる気は全く無かった。

「それよりもそっちの方が気になるね。こっちの方は話したんだから、そっちも何をしてたのか話して欲しいね」

「そうだな。お前がカミーラと共に消えてからこれまで何があったのか、我も知りたい」

「あん? スラルちゃんか?」

 ジルの口から『我』という一人称が出た事でランスはそれを発したのが誰なのか察する。

「久しいな、ランス。そういう訳でお前の口から何があったのか知りたい」

「ああ。別に大したこと…いや、あったな。ドラゴンだドラゴン。ドラゴンの魔王だか言う奴と戦って来た」

 ランスの言葉に一瞬場が静まり返る。

「ドラゴンの魔王…まさか我の前の魔王のアベルか!?」

「そうだそいつだ、アベル。カミーラを魔人にした奴で、あいつも随分と殺気立ってたからな」

「生きていたのか!? というよりも魔王だと!?」

 スラルは困惑の表情を浮かべる。

 魔王としての知識が全て覚えている訳では無いが、流石に先代魔王の名前は憶えている。

 ただ、どういう経緯で自分が魔王になったのか、そして先代魔王がどうなったのかは記憶から抜け落ちていた。

「その魔王と戦ってたが時間切れとかでこっちに戻って来た。それが最近の話だな」

「…その後は?」

「戻った後はカミーラと戦って…その後はあいつに付き合わされて特訓させられてたな」

「それで時間がかかってたって訳かい。それよりもまさかあのカミーラが人間相手に特訓とはね」

 ハンティはその事実に驚く。

 密かにランスとカミーラが何をしていたのか見ていたが、確かに言われてみればあれは特訓そのものだろう。

 カミーラに殺気は全く無かったし、カミーラはランスに触れながら何かを教えていたようだった。

「じゃああの時アンタが使ってたのが、修行の成果って訳かい?」

「そこまで見てたのか。つまらん」

 ランスとしては自分の新たな力を見せつけてやろうと思ったが、ハンティは知っていたようだ。

「どんな力だ? 興味がある」

 スラルは目を輝かせながらランスを見る。

「うーむ…そう簡単に使えるもんじゃないからな」

 だが、ランスは意外にも難しい顔をする。

 それにはスラルも少し意外だった。

 ランスの事だから、喜々として新たな力を披露して自慢すると思っていたのだ。

「意外だな。まさかお前が力を披露するのを躊躇うとは」

「一度使うと次に使えるようになるまで時間がかかる。そうなるといざという時に面倒な事になるからな」

「そういう事か…ならば仕方ないな。お前がそこまで慎重になるというならば無理にいう訳にはいかないな」

 ランスの言葉を聞き、スラルも事情が事情だと思い無理に聞こうとはしない。

「それにしてもあのカミーラがね…どんな風の吹き回しなのかしらね」

 普段はあまり他人に興味を示さないレンもカミーラの事とあってか、流石に少しは興味が惹かれるようだ。

「さあな。アベルの奴をどついてすっきりしたようだったぞ」

「まあ…それもそうか」

 ハンティも事情を聴きある意味で納得する。

 カミーラが歪んだ一番の原因の奴との邂逅でカミーラも折り合いをつける事が出来たのだろうと思う。

「しかし魔王アベルか…お前は歴代魔王と全て邂逅した事になるな。それでも生き残っているのだから、やはり凄まじい何かを持ってるのだろうな」

 スラルはこれまでのランスの経歴を考え驚くしかない。

 歴代魔王と全て出会っているのはこの世界ではたった1体のはずだった。

 カミーラも初代魔王を知っているかもしれないが、カミーラの事情を考えれば直接会ったとは考えにくい。

 そうなると最古の魔人であるケイブリス…あの者しか全ての歴代魔王を見てきた者はいない。

 だがランスは現在までの歴代魔王全てと戦ったが、生き延びてきた。

 それは僥倖と言うに他ならない。

「で、アンタ達はこれからどうするんだい? 正直に言うとルーン達と争うならここにはあまり留まって欲しくは無いんだけどね」

「フン、言われなくてもどっかに行ってやるわ。もう鬱陶しい魔人共も居ないみたいだしな。まあ適当にうろつくのも良いし、いっそJAPANに行くのも良いかもしれんな。あ、それと日光達も探さんとな」

 カラーにはカラーで事情がある。ランスは傍若無人で非常識な性格だが、流石にカラー全体が関わって来ると話は別だ。

「じゃあ少ししたら外に行くって事でいいの?」

「引きこもってる理由ももう無いからな。新たなダンジョンを探すのもいいな」

「じゃあ色々と用意しないとダメですね。食料も少しは貯めとかないといけないですし…あ、でも今なら外で買えますけど…お金はどうしましょう」

 ジルも色々と考えるが、一つの問題点に行きわたる。

「あん? 金が無いのか?」

「まあ…お金と縁の無い生活だったでしょ? 殆どカラーの所に居たし、外で何か買うって事も無かったでしょ」

「そういやそうだな…」

 これまでの生活を思い返し、ランスも自分で金を使った事が殆ど無かったことを思い出す。

 そもそも魔王ジルの時代は通貨が殆ど意味をなさなかった時代だ。

 人類に大きな町は無かったし、小さな集落くらいはあったがランスとしてもそこに腰を下ろして留まった事もなかった。

 結局は住みやすいカラーの隠れ里に居るのが殆どだったのだ。

 なのでランスはモンスターを倒してもお金を回収する事は殆どしてこなかった。

 それが今になってちょびっと気になって来た程度だ。

「冒険者ギルドとかそういうのは無いのか?」

 GI期、LP期ならば冒険者ギルドが存在し、ランスもキースギルドに登録をしていた。

 何だかんだ言ってもキースはランスに美味しい仕事を回してきたし、報酬もきちんと支払われていた。

「悪いけどそこまで詳しくは無いね。私は基本的には人間とは不干渉の立場を取ってたんだ。知りたかったら自分達で調べなよ」

「まあいい。それならそれで楽しみが増えるからな」

 ハンティの言葉にランスは少しつまらなそうにしていたが、その時に一人のカラーが魔法ハウスに入って来る。

「始祖様! フリークさんと…ルーンさんが来ました!」

「フリークとルーンが? 確かに何時でも話を受けるとは言ったけどさ…流石に早すぎるね」

 ハンティは昨日の今日で動いた魔教団の創始者に驚く。

 そしてランスを見てため息をつく。

(目当てはカラーじゃ無くてランスか…)

 ルーンはどうやら想像以上にランスという人間が気になっているようだ。

(ま、無理も無いか。ハッキリ言えば功績だけならランスはルーンを超えている。ルーンがランスより劣ってるって事じゃない…二人は全く違うタイプの人間だしね。それだけに興味が有るって事か…それとも鉄兵をランスが苦も無く倒した事か…ま、そればっかりは無理も無いか。ランスはこれまで多くの魔人と戦ってきているしね)

 ハンティとしてはあまりルーンとランスを会わせたくは無い。

 タイプが違う人間という事もあるが、何よりもランスとルーンは恐らく時代が違う。

 カラーとランスが協力体制を取れるのも自分がランスの存在を知っているからで、ランスはセラクロラスの力によって時代を飛ばされてしまう事から時代に根を下ろすのが難しいのだ。

 それを考えればランスが誰かと恒久的に協力体制を取る、という事は出来ないのだ。

 例外なのは寿命が無い者達―――それこそ自分やケッセルリンク、そして妖怪であるお町くらいだろう。

「始祖様…如何致しますか?」

「会うさ。元々予定に入っていた事だからね。じゃあ悪いけど私は行くよ。アンタ達は…まあ来ない方が良いだろうね。ランスは興味すら無いだろうし」

「男なんぞと会う気は無い。時間の無駄だからな」

「そう言うと思ったさ。じゃあ私は行くよ。あ、そうだ、魔法ハウスはしまっておきな。これは魔法を使える奴等なら誰が欲しがってもおかしく無いからね」

 そう言ってハンティは魔法ハウスから出ていく。

 残されたのはランス、ジル、レンの3人と報告に来たカラーだけだ。

 そのカラーは興味深そうにランスを見ている。

 今のカラーの状態はランスも聞いているため、人間が嫌いというのは間違っていないのはここに来てからの空気でランスも分かる。

 だが、彼女は幸いにもランスに対して…いや、人間に対して悪感情をもっていないようだ。

「カラーが人間と手を組むというのは本当なのか?」

「え? あ、はい。そういう話はあります」

 ランスに急に話しかけられたカラーは少しびっくりしながら答える。

「ふーん、カラーがか」

「今のカラーの状況なのですが…」

 カラーの少女が今のカラーの状況を話し始める。

 ランスからすれば正直信じられない事でも有る。

 ランスが良く知っているカラーは人間に対して排他的で、パステルには酷い目にあわされた。

 ただ、ランスがセラクロラスによって飛ばされた世界ではそこまでカラーは排他的ではなかった。

 排他的な面が強くなったのはNC期でカラー王国なる国が作られ、そしてそれが崩壊したと聞かされてからだ。

 魔王ジルの時代ではそもそも人間に自由が殆ど無かったので、カラーが人間の脅威に晒される事は少なかった。

 そしてGI期…人間が自由を得た事、そして魔人による人間界への干渉が出来なくなった事で、人間がカラーのクリスタルを求めてカラー狩りが行われるようになった、という話だ。

「ですがその中で始祖様と友人になった人間が居まして…それがフリークという方なんです。そしてそのフリークさんの縁で色々と話があるみたいです。私みたいな下っ端のカラーには詳しい話はありませんけど」

 その言葉を聞き、ランスはジルを見る。

「ジル。お前は何も聞いとらんのか」

「組織に誘われたのは間違いありません。でも、私はその言葉には乗りませんでした。なので私は詳しい話は聞いていません」

「むう…」

 ジルの言葉にランスは唸る。

 カラーがランスよりあんな連中を頼るというのは気に入らないが、だからといってランスが出来る事は無い。

 セラクロラスによって飛ばされる事もあるし、恒久的にカラーを助けるという事は出来ない。

「それよりちょっと外で話さない? ハンティも言ってたでしょ。魔法ハウスをしまっておきなって。ランスも余計な奴等に狙われるの嫌でしょ?」

「面倒だが…まあいい。少しは外の空気でも吸っとくか」

 魔法ハウスはランスにとっては貴重なアイテムだ。

 それを狙われるのは面倒だと思い素直に外に出る。

 レンが魔法ハウスを回収し、ランス達は適当な木の下に移動する。

「で、カラーはそのなんちゃらに協力するのか」

 ランスの言葉にカラーの少女が頷く。

「もうその方向で話は進んでいます。私達にも大きな事ですから…カラーを狙う人間達が日に日に多くなっていってるんです。私の友達も…」

「分かった。それ以上言うな」

 人間に捕らわれたカラーがどうなるか、それはランスも知っている。

 カラーを犯し、クリスタルを奪う…即ちカラーを殺すのだ。

 そしてカラーを犯した奴は呪われ命を落とす、それはランスもよく知っている。

「で、その連中はカラーのクリスタルを狙わないのか」

「今までそうした話は聞いてません。そもそもそんな相手なら始祖様が止めると思いますし」

「…それもそうか」

 ランスは話は終わったと思いこれからどうするかと考えていると、

「ジル!」

 突如としてジルの名前を呼ぶ女の声が聞こえる。

 ランスがその方向を見ると、そこには一人の女が立っていた。

「どっかで見たような…」

 美人なのでランスが忘れる訳が無いが、それでも名前を聞いた覚えはない。

「ルシラ」

 ジルは金色の髪をした女性の名を呼ぶ。

「知り合いか?」

「はい。魔法学院で一緒に魔法を習っていました」

「お前…やはりあの時の男か。本当にカラーの所に居るのだな。蛮人のお前が」

「蛮人? なんだそりゃ」

 いきなりの言葉に流石のランスも眉を顰める。

 突然そんな扱いをされれば誰だって怒るのは間違い無いだろう。

「魔法を使えない奴の事だ。お前はどう見ても魔法は使えないし学も無さそうだ。そんな奴は蛮人で良いだろう」

「いきなり失礼な奴だな。そもそも誰だお前は」

「私の名前はルシラ。ジルの友人だ」

 ジルの友を名乗った事にランスはジルを見る。

 ジルは曖昧な表情のまま作り笑いをしている。

「一応…それなりに親しい間柄だったとは思います。でも私は事情が事情なので…」

「ああ…」

 ジルの事情はランスも当然分かっている。

 今の彼女は右手と右足が人とは思えない姿になっている。

 なので極力人との付き合いは避けていたのだが、それでもジルに声をかける者は存在した。

 その中の1人がこのルシラと名乗った女なのだ。

「お前こそ何者だ。ジルの事を奴隷と呼ぶなど…最低の男だな」

「ジルは俺様の奴隷だ。お前にそんな事を言われる筋合いは無いぞ」

「ジル…嫌なら嫌とハッキリと言うべきだ。何故私を頼ってくれない。この男の手から逃れられない理由があるのか? それとも洗脳されているのか?」

「なんて失礼な奴だ。しかも人の話を聞く気の無い奴だぞ、こいつは」

 ランスの言葉まるっきり無視する彼女に対してランスも腹が立ってくる。

「あ、あの…別に私はランス様の奴隷で有る事に…」

「それが間違っている。大体お前は昔から私達と共に魔法学院で学んでいたはずだ。そのお前が何故突然奴隷となるのか、私にはそれが分からない」

「うーん…」

 ルシラの言っている事は間違ってはいない。

 ジルは魔法学院で10年程の時間を過ごしてきた。

 そのジルが突然誰かの奴隷だと言われても納得する奴は居ないだろう。

 そしてジルの事情を説明した所で、それを信じる奴もまた存在しないだろう。

 なのでジルが頭を悩ませていると、

「だからこいつは俺様の奴隷だと言ってるだろうが!」

「あんっ」

 ランスが突然ジルの背後からその豊満な胸を掴む。

「ラ、ランス様!? だ、駄目ですこんな所で…」

「お前は黙ってろ。この女に現実を教えてやるだけだ」

 むにむにとその形の良い大きな胸を揉む。

 服の上からでも分かる豊満な胸が形を変える度、ジルは悩ましい声を上げる。

「な、何をやってるんだお前は! ジ、ジル! お前も何でそんなあっさりと受け入れてるんだ!」

 顔を真っ赤にしてルシラが怒鳴る。

「俺様が俺様の奴隷に何をしようが勝手だ」

「だ、だからって人前でそんな事をするもんじゃないでしょ!? 何考えてるのよ!」

「お前こそ他人に口を出すな。それにジルが嫌がっているように見えるか?」

「え…」

 ランスの言葉にルシラはジルの顔を見る。

 ジルは顔を真っ赤にして、ルシラの視線から目を逸らす。

 だが、その顔と体は全く嫌がっているようには見えず、むしろ喜々として受け入れているとさえ思える。

「いやいやいや、だからと言ってこんな所でするな! ジル! あんた本当に大丈夫!? この男に弱味握られて脅されてるんじゃないの!?」

「さっきからお前は俺を何だと思っとるんだ」

「女の子を食い物にする鬼畜野郎!」

「ぷっ」

 レンがルシラの言葉を聞いて噴き出す。

 彼女の言っている事はある意味間違っていない。

 可愛い子と見れば襲うし、敵対した女はほぼ例外なくオシオキと称してセックスする。

 ただ、それでも自分の女となれば絶対に守るし、どんな敵にも恐れる事無く向かって行く。

 鬼畜野郎という点だけは絶対に否定できない所だ。

「おいジル。お前本当にこんなのと友達なのか。友達は選んだ方がいいぞ」

「アンタが言うなアンタが! というかいい加減ジルから手を離しなさい!」

 痺れを切らしたのか、ルシラはランスとジルを強引に引きはがす。

「あ、こら何をする」

「これ以上好き勝手にはさせないわ。ジルは私が助けるわ」

「えええ!?」

 何時の間にか助けられる対象となっていた事にジルは驚きの声を上げる。

「もう大丈夫よ、ジル。あなたもきちんと嫌な事は嫌と言わないとダメ。あ、もしかして絶対服従魔法かけられてるとか? だとしたらとんでもない奴ね」

 勝手に言って勝手に納得しているルシラにランスも完全に呆れてしまう。

「私と勝負しなさい」

「は?」

「だから私と勝負しなさい。私が勝ったらジルは私達が連れていく。文句は言わせないわ」

 ルシラの言葉にランスは『何を勝手な事言ってやがる!』と、怒鳴ろうとしてその言葉を引っ込める。

 そして改めてルシラの体を見る。

 魔法使いとの事だが、それに見合わぬ体を持っている。

 その体からはどちらかというと格闘家、と言われても遜色ない程には鍛えている事がうかがえる。

 それでいてスタイルも悪いという事も無く、ランスのハイパー兵器も十分に反応するレベルだ。

 顔も良く、その美しい金色の髪は彼女の美しさを際立たせていた。

 それを見たランスはニヤリとその口元に笑みを浮かべる。

「ほー、随分と勝手な事を言うな。元々ジルは俺様が金を出して買ったんだぞ」

「奴隷として買ったんでしょ。じゃあ私がジルを買ったお金の倍の金を出すって言ったらアンタはジルを解放する訳?」

「そんな事する訳無いだろうが。ジルは俺様の奴隷だ。他の奴にはもったいない」

 ランスはニヤニヤと笑いながら答える。

 その顔にルシラは怒りを滲ませてランスを睨む。

「だったら力づくでもジルを解放する。アンタみたいな最低の人間からね」

「あ、あのルシラ。別に私は…」

 何時の間にか自分の意思を無視して話が進んでいる事にジルは流石に声を出すが、それは二人には届いていないようだ。

(ランス様…凄い悪い事を考えてる…)

 何よりも、ランスが何を考えているのか長い付き合いで分かるので、これから何が起きるかも予想がついてしまった。

「ほう。じゃあ俺様が勝ったら何をしてくれる」

「…何が言いたい訳?」

「お前が勝ったら俺様がジルを奪われる。そんなの不公平だろうが」

「人を奴隷として扱っといて厚かましい奴ね」

「じゃあジルに聞くか。おいジル、お前は俺様から離れてこいつ等の所に行きたいか?」

「え? それは嫌です。私はずっとランス様と一緒に居たいです」

「だそうだ。それともお前はジルの意思を無視して連れてくつもりか?」

「そ、それは…」

 ルシラは流石に考え込む。

(もしジルが絶対服従魔法をかけられてるなら、それを解除しないといけない。でも私にはそんな魔法は使えない…ルーンならすぐに解除出来るだろうけど…)

 どちらにしろ、ジルを連れていくにはこの男を何とかしないといけない。

 ジルを無理に連れて行こうとしても、この様子なら間違いなく拒否されるだろう。

 それならば、この男の言葉を受けるしかない。

「分かったわ。アンタの要求は何よ」

「がはははは! 当然セーックス! 俺様が勝ったらやらせろ。勿論合意の上でな」

「…やっぱり最低な奴ね。受けてやるわよ。その代わり、私が勝ったらジルを連れていく。それが最低限の条件よ」

「よーし、交渉成立だ。お前も後で約束を破るような真似はするなよ」

「アンタじゃ無いしそんな事はしないわよ!」

 そう言ってルシラは構えを取る。

 ランスもニヤリと笑うと剣を構える。

 それを見てジルはため息をつく。

(ルシラ…ランス様に勝てる訳無いのに。だってランス様は魔人とも渡り合える、本当の英雄なんだから)

「がはははは! 行くぞ!」

「来なさい!」

 そうして後の闘神との戦いが始まる。

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