ランス再び   作:メケネコ

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邂逅前夜

「はぁ…そんな事に?」

 ルーンはカラーとの交渉を終えた後に、師であるフリークから全てを聞いた。

 ランス、と呼ばれた例の男がカラーの所に居るのは分かっていた。

 だからこそ、ルーンはカラーとの交渉の予定を少し急がせたのだ。

 急な知らせでもカラーは特に嫌がることなく受け入れてくれたのは幸いだった。

 その時にフリークとルシラも供をしてくれてたのだが…こうなるとは思っていなかった。

「彼女なら突っかかるとは思ってはいたんですが…例の方がそういうタイプの人だったとは…」

「儂も思っとらんかった…ハンティから忠告は受けていたんじゃがな。想像以上の御仁じゃった」

 フリークも見ると聞くとでは大きな違いが有ると思い知った。

 強烈な人間なのは間違い無いと思ってはいたが、自分の想像の遥か上を行っていた。

『女好きじゃ無くて女しか好きじゃない。そういうタイプの人間だよ』と言われていたが、まさかストレートにそのままの性格だとは思っていなかった。

 同時に、かなりやり難いタイプの人間だとも感じた。

 あのタイプの人間は間違いなくこちらの話に耳を傾けてくれない人間だ。

 間違いなくルーンとは違うタイプの人間で、分かり合うのは難しいとフリークも思ってしまった。

 ただ、そんな人間にも関わらず、カラーからはある程度受け入れられているのは不思議だった。

「それでルシラは…」

「まあ…間違いなくあの男に…」

 フリークは言葉を濁したが、当然その言葉の意味を分からぬルーンではない。

「言っとくけど私は口出しはしないよ。これは人間達の問題だからね。ただ、話を聞く限り挑発に乗ったのはルシラって奴さ」

「それに関しては申し訳ない…ルシラは情に厚い部分もあるからの…ジルを友人と見ていた故に、そのジルが奴隷という立場にあるのを受け入れられなかったのじゃろう」

「だから関わるのを止めなっていっただろ。ま、そういう訳にもいかないってのも分かるんだけどね…」

 フリークの言葉にハンティも苦い顔をする。

 正直こういう諍いが起きる事はハンティも予想していなかった訳じゃ無い。

 誰だって自分が友人だと思っている奴が奴隷だったなんて事は受け入れられないだろう。

 そしてその立場から解放しようと動くのも決して間違った事じゃない。

 だが、ランスとジルの関係は非常に複雑な関係だ。

 それこそ当事者以外の介入などそれこそ余計なお世話というものだろう。

 それを知らなければ口を出すのも理解出来ない訳では無いが、ハンティとしては『まあ当然か』くらいにしか思っていない。

「ルーン…お主はどうする気じゃ?」

 フリークの言葉にルーンは困った顔をする。

「どうするも何も…これはルシラの私闘ですし、私達が口を出す事でも無いとは思っています。彼女だってその辺りは分かっているでしょう。私達からは特に何もする気は無いですよ」

 ルーンもまだ勢力が小さいとはいえ、一勢力のトップだ。

 その辺の事は弁えているし、これから先に必要な判断だ。

 ジルの事で思う事が無い訳では無いが、それとこれとは話は別だ。

「そうしてくれると私としても有難いけどね」

 ルーンの言葉にハンティは少し安心したようにため息をつく。

 揉め事が多い男だが、その揉め事はこれまでは人ではなく魔物や魔人に向いていた。

 なのでハンティとしてもランスに肩入れ出来ていたが、人間と人間同士なら少々話が変わって来る。

 その場合はハンティとしても今現在においてはどちらに肩入れをするつもりは無かった。

 心情的にはランスの方に向いている…それはこれまでのランスの経歴を考えれば当然の事だ。

 そして次の日の昼頃―――ルシラは非常に疲れた様子でルーン達の所へ戻って来た。

「………ルーン、フリーク先生」

 非常にぐったりとした様子でルシラが声をかけてくる。

 その様子は普段の凛としたルシラからは想像も出来ないくらいの顔をしている。

 目の下にはクマが出来、その疲労からか眠りが浅かったことが分かる。

 たった一日でルシラはまるで別人のように疲労していた。

「…その、大丈夫なのかい? ルシラ」

「…大丈夫に見える?」

「…いや、ごめん」

 ルーンはどんよりとした目で見てくるルシラから思わず視線を背ける。

 彼女に何があったかはもう大体想像が出来てしまう。

「…それでジルの嬢ちゃんの事はどうなったんじゃ?」

 取り敢えずこれだけは聞いておかなければいけないと思いフリークは声をかける。

 その言葉にルシラはため息をついて首を振るだけだった。

「無理。信じられないけどジルは奴隷って立場を受け入れてる」

「それは…諦めてるとかそういうのではなくてかい?」

「違う。というか…もうハッキリ言うけど、ジルはあのランスって奴の事が好きなんだと思う」

「えっ…」

 ルシラは少しルーンに対して気遣う様に声を出す。

 ルーンはその言葉に固まる。

「どういう関係なのかは全く分からない。でも、ジルは絶対服従魔法も何も使われてない。自分の意思であの男についていってるのよ」

 ルシラはため息をつきながら言葉を放つ。

「それでルシラ…お主は大丈夫なのか?」

「大丈夫に見えます?」

「…すまん」

 フリークの心配そうな言葉にルシラはどんよりとした目を向けてくる。

 その目を見てフリークは謝るしかない。

「今回は完全に私が悪いから、何もしないでいいから…」

 ルシラは本当に怠そうに椅子に座る。

 普段の彼女とは信じられないくらいの態度にフリークは心配になる。

「はぁ…ジルもどうしてあんな男がいいのやら…」

 ルシラは机に突っ伏して親友の事を思い返す。

 夜通しでランスとジルのセックスに巻き込まれるような形で散々と弄ばれてしまった。

 しかも朝起きた後でも再び犯されてしまった。

(私もあんな事まで…勢いって本当に怖い…)

 ルシラはルーンとフリークに見えない所で赤面する。

 初体験の後でもランスは当然のように止めてくれなかった。

(ジル…本当に幸せそうだった。私は本当に余計な事をしてたのね…)

 無理矢理やられてあんな嬉しそうな顔をジルがする訳が無い。

 自分は本当に余計な事をしただけで、こうしてあの男に犯されたのも完全に自業自得だ。

(でも…あの男、魔法使いだからって差別するような感じはしなかった。正直、もっと酷い目にあうと思っていたんだけど…)

 ルシラは魔法使いがどういう目にあっていたかも知っている。

 女ならば酷い目に合わされるのもおかしい事では無く、そういう女性をルシラも見てきた。

 だから自分もそういう目に合う事を覚悟してたのだが、実際には違った。

 良く言えばランスとのセックスは、確かに最初は痛かったが性のはけ口にされてるような感じはしなかった。

 むしろこちらとのセックスを本当に楽しんでるとしか思えなかった。

 強引に犯すのではなく、しっかりとこちらを感じさせるようにも思えた…ルシラは処女だったので彼女がそう感じただけだったが、別にトラウマになるような事も無い。

 それどころかジルと二人でランスに奉仕したり、勢いで口に含んだり、あまつさえキスまでしてしまった。

(でも…あの男の強さは本当だった。それと…何となくだけど、悪人って感じはしなかった。多分正義か悪かでいったら悪なんだろうけど、極悪人って感じじゃ無かった。凄い子供っぽい感じだったし)

 ルシラは酷い目にあいはしたのだが、それは自業自得と割り切ると、ランスという人間を客観的に見れそうな気がして来た。

 だからこそ、ランスはそこまで悪い人間では無いと思えてきた。

 勿論一夜だけの付き合いでは分からないが、不思議とそんな気もしていた。

(ま、私の勘違いかもしれないけどね)

 そう思ってルシラは眠りたくなって目を閉じようとした時、

「ルシラ…君に聞きたい事が有る」

 ルーンが真面目な様子で語りかけてくる。

 それには流石に眠いなどと言っている余裕もなく、ルシラは真っすぐにルーンの目を見る。

「何?」

「君の目から見て、ランスという人はどういう人間だった? 僅かな情報でも良い。君の感じた事を聞きたいんだ」

「…私が感じた事か。私視点だとあんまり好意的な意見は出ないわよ。だって私あの男にそれこそ今まで色々されてたし」

「それでもだよ。知るという事は大事だからね」

 ルーンの言葉にルシラはランスとの言葉を思い出す。

 ルーンにもフリークにも話していないが、ルシラはランスと会話をした―――それも普通の話を。

 

 

 

「うむ、腕を上げたようだな」

「ランス様がいなくなってから何年も経ってますからね。自然と腕が上がったんです」

 ランスの言葉にジルは嬉しそうに答える。

「時間が経とうが腕が上がらん奴は上がらんからな…」

 ランスは一人の女性を思い出す。

 戦闘に関しては要領もよく、人を率いる才能はあったのだが、料理に関してはダメな女…使徒になって長い年月が経っていたのに、一向に腕が上がった様子は無かったエルシールを。

「…あなた達、何でそんなに元気なのよ」

 あれだけセックスをしたにも関わらず、全く疲れた様子を見せない二人にルシラはため息をつく。

「私はまだ眠いし腰は痛いし…」

「フン、体力が無いだけだろ」

「別にそういう体力はいらない…あ、でもジルのご飯はホントに美味しい…」

 ルシラはジルの作った料理を食べて今度は安堵のため息をつく。

(…凄い気になる事は言ってたけど、多分教えてはくれないんだろうな)

 ランスとジルの会話は正直突っ込み所が満載だ。

 だが、それを尋ねても二人は何も答えないだろうし、そもそも自分もそれを疑ってかかるに違いない。

 そう思ってルシラはもう二人の事は割り切る事にした。

 ただ、それでもルシラはランスに聞きたい事はあった。

「ねえ、アンタはどうしてジルを買ったの?」

「はあ?」

「ジルを買った理由」

「何だそりゃ」

 突然の質問にランスはくだらないと思いながらも、ジルと出会った事を思い出す。

 ランスがジルを買ったのは別に理由なんて無い。

 ふらっと訪れた町で奴隷を販売していた。

 その中に凄まじく綺麗な女が居た、だから買っただけだ。

 その後でジルは実は後の『魔王ジル』だったと判明したが、それはランスがジルを買った理由とは関係は無い。

「別に理由なんて無いぞ。一目見て気に入ったから買っただけだ」

「…そんなものか。まあ別におかしくはないか」

 ランスの言葉を聞いてルシラも特に疑う事無く受け入れる。

 魔法使いが奴隷として売られるなんて別に珍しい事でも何でもない。

 それは今の時代では当たり前の事だからだ。

「ジルが魔法使いだから…買った訳じゃ無いって事?」

 ただ、これだけは聞かなければならなかった。

 ルシラにとってはそれが何よりも大切な事だからだ。

「訳の分からん事を言うな。魔法使いだろうが何だろうが奴隷は奴隷だ。別にこいつが魔法使いだから買ったなんて事は無いぞ」

 その言葉にルシラは目を丸くする。

「…そうなんだ」

「というか何でお前はそんなに魔法使いに拘る。ハンティが言ってたが魔法使いが差別されてるとか言ってたが、一体何なんだ」

 ランスからすれば魔法使いが差別される、という事が理解出来ない。

 むしろ、魔法が使えない者達が差別されていたゼスにおいてランスは酷い目に合わされた。

 そのゼスもランスが関わった事と、魔人の介入があって一応は魔法使いとそれ以外の者達との溝は埋まっていった。

 その経験があったので、ランスとしては魔法使いが差別されているという事が実感出来なかった。

 ランスがこの世界に戻って来てから、魔法学院とペンシルカウ以外に行っていないのも原因の一つだ。

「…アンタ、魔法使いだからってバカにしたりしないの?」

「何だそりゃ。何で魔法使いだからって差別しなければならんのだ。あ、ブスと男は別だ」

 その言葉にルシラは目を見開く。

 ジルを奴隷にしているという言葉から、この男も今の世界の人間と同じように魔法使いを差別していると思っていたのだ。

「ジル…本当に?」

「はい。私はランス様に買ってもらったからこうして今も生きていられるんです。ランス様以外に買われてたら…もっと悲惨な日になっていたのは間違い無いから…」

 ジルは奴隷として売られた事を思い出す。

 賢者として称えられていたが、そのせいで恨みを買った。

 そして奴隷として売られ、恐らくはその後は酷い凌辱を受け殺されていたのは間違い無いだろう。

 だが、ランスはその未来を潰してくれた。

 その後で魔王ナイチサによって魔王の後継者にされてしまうが、それでもランスは助けてくれた。

 ジルにとってはランスは文字通りの命の恩人で有り、自分が生涯をかけて愛し抜く男なのだ。

「………そう、なんだ」

 ルシラは茫然とするしか無かった。

 まさか今の時代にそんな考えの人間が居るなんて思っても居なかった。

 世界は広いのでそういう人間は居るとは思っている。

 ただ、この男は魔法使いに対して偏見を持っていない―――つまりは只の女好きなのだ。

「ごめん、ジル…私、早とちりしてた」

「ルシラは思い立ったら一直線だったから…」

「代償は高くついたわよ…こんな形でセックスを経験するなんて考えても居なかったし」

 一日中本当に好き勝手されてしまった。

 しかも初体験が3Pな上、自分の友達の濃厚なセックスも見せつけられた。

 世界広しと言えども、こんな倒錯的な初体験をさせられたのは珍しいだろう。

「お前だって感じてただろうが」

「感じたら和姦だとか馬鹿な事言わないでよ。無理矢理された訳じゃ無いけど、私が望んだ訳じゃ無いから」

 ランスの言葉にルシラは半眼でランスを睨む。

 この男は本当に自分の体を好きにしてくれた。

 嫌だと言っても何度も強制的に絶頂を迎えさせられ、初めてにも関わらず口にも無理矢理流し込まれた。

 確かに最後の方は気持ち良かったが、それとこれとは話は別だ。

「うーむ、まだ足りなかったか。ここまでやれば落とせると思ったのだが」

「どんだけ自分に自信持ってるのよ…そこまで行くとむしろ感心するわ。まあでも…正直言うとこうして話せたのは良かった事なのかも」

 最初の出会いは最悪だったが、それでもルシラとしては結構実りのある出会いだった。

 この男の強さを思い知り、ジルは奴隷と言いつつも幸せそうな事、そしてこの男は魔法使いに悪感情を持っていない事。

 まあ人間としては悪人よりなのかもしれないが、それでも底なしの悪意みたいなものは感じられない。

 何よりもこいつはセックスを本当に楽しそうにしていたし、ジルもそんなランスに応えていた。

 こいつが本物の外道なら、ジルがあんな顔をするはずが無い、それくらいは人を見る目はあるつもりだ。

「まあとにかく…ごめん。ジルにもアンタ…ランスにも悪かったわ」

 なのでルシラは素直に謝罪した。

 だが―――ルシラはやはりまだランスという男を知らなかった。

「ほー、自分が悪いと分かったか」

「え…ま、まあ、今回に関しては私が全面的に悪かったけど…」

 ニヤリと笑ったランスの顔にルシラは嫌な物を感じる。

 それはルシラがランスに勝負を挑んだ後、ランスが戦いの条件を色々出した時の顔そのものだ。

 ルシラの背筋が寒くなると同時に、ランスはルシラの側まで近寄るとその体を担ぎ上げる。

「ぎゃああああ! 何するのよ!」

「がはははは! 当然お詫びのセックスだ! まだやり足りんと思っていたんだ。お前が俺様に謝罪するのならばその謝罪を有難く受けてやる!」

「何で謝罪イコールセックスになるのよ!? アンタ頭おかしいんじゃないの!?」

「普通だ普通! 心配するな、今度は思いっきりやってやる!」

「何ふざけた事言ってるのよ! あ、こら離せー!」

 ルシラは叫びながらもランスによって寝室に連れ込まれてしまう。

 それを見てジルは仕方ないなと言わんばかりに笑みを浮かべる。

 騒がしいが、ようやく日常が戻って来た事にジルは幸せを感じていた。

 

 

 

「…まあ特に極悪人って感じはしなかったな。ただ、断じて良い奴じゃ無い」

 ルシラはランスとの会話とこれまでの事を思い出し、自分の素直な感情を延べる。

「極悪人じゃないけど良い人でも無い?」

「そう。ただ、ハッキリ言うと私達の目的には絶対に相容れない存在でもあると思う。まあ…魔法使いに対しては差別意識は持ってないのは良い事だと思うけど」

「差別意識を持っていない? でもジルの事は奴隷と言っていたんだろう?」

「本人がそれを良しとしてるんだから他人がどうこう言う事じゃ無い関係だと思う。それに…奴隷と言うほど単純な関係じゃ無いと思う。私達じゃ入る事が出来ない関係を感じた。ただ、あいつは魔法使いを魔法使いとして見てる。私を抱いたのも私が女だからっていう理由以外ないわ。魔法使いを辱めたいとか、そういう意図は無かったと思う。私も…まあ酷い目にあったとは思うけど、死ぬような目には合わなかったし」

 ルーンはそれを聞いて考える。

 今の時代、殆どの人間が魔法使いに対する差別を持っている。

 それが当たり前だからこそ、世界の魔法使いを解放するためにルーンと自分達が動き始めようとしているのだ。

「…そうか」

 ルシラの言葉を聞いてルーンは考え込む。

「ルシラ…お主がそこまで言うとは意外じゃの」

 フリークの言葉にルシラは疲れたようなため息をつく。

「一日かけて思い知らされたの。あいつは私を魔法使いじゃなくて完全に女としか見てなかった。私にとっても屈辱よ。私は明らかに手加減された…手も足も出なかった」

 ルシラにとっては一番ショックだったのはこの事実だ。

 強いのは分かっていた…だが、ここまで力の差が有るとは思っていなかった。

「…私達の同士になってはくれないかな」

「ルーン!?」

 ルーンの言葉にフリークは驚く。

 ただ、ルシラはその言葉にため息をついた。

「無理ね。そういう奴じゃ無いと思う」

 そこだけはルシラは確信していた。

 そういうタイプの人間じゃ無いは間違い無い。

「そう…なのかな」

 ルーンはあっさりと否定された事に声が小さくなる。

「…でも、私は話してみたいな。魔法使いに差別意識を持っていないという人と」

 

 

 

「で、ランス。これからどうするの?」

 ルシラが出て行ってからレンが家へと入って来てランスに尋ねる。

「もうコソコソする必要は無いからな。バイクでJAPANにでも行くか」

 今はようやく人類が魔王の支配から逃れた時代。

 ランスは魔王と魔人から狙われていたので、結構移動するのも大変だった。

 何だかんだ言っても、ランスとしても自由に動けないのはストレスが溜まるものだった。

 なのでランスは遠慮なく自由に動けることに少々浮足立っていた。

 NC期は割と自由にバイクを走らせることが出来たが、GL期では不可能だったのだから無理は無い。

「JAPAN…お町に会いに行く気?」

「そうだな。あいつも成長してるだろうからな。あいつの体を味わうのもいいな」

 ランスは気分よく笑っていたが、その時一人のカラーが入って来る。

「あの…宜しいですか?」

「あん? ああ、君は俺様を案内したカラーか」

「はい。その…ルーカ・ルーンという方が皆さんに会いたいそうです」

「知らんな。男か?」

 ランスの言葉にカラーの少女が頷く。

 それを見てランスはあからさまに詰まらなそうな顔をする。

「なんだ男か。だったら会う必要は無いな。断れ」

「え…ええと…それだと私達もちょっと困ると言いますか…」

 まさかランスが断るとは思っていなかった少女は困惑した様子だ。

 だが、それでも意を決してランスに向かって頭を下げる。

「すいません! カラーのために何とか会ってくれませんか!」

「…何だと?」

 カラーがランスに頭を下げた事で、ランスも不機嫌そうな表情は崩さないながらも話を聞く姿勢になる。

 流石にカラーの為と言われればランスとしても無下には扱えない。

「私達カラーはルーンさんの所属してる魔教団に協力をする事になったんです。そのルーンさんがカラーを仲介してでも皆さんに話をしたいとなると…私達としてもちょっと断り辛くて…」

「フン、カラーを挟まなきゃ話せんような奴と話してやる義理は無い。が、他ならぬカラーのためだからな。仕方ないから会ってやる」

「あ、有難う御座います!」

 ランスの言葉に少女は頭を何度も下げる。

「ランス様…いいんですか?」

「まあカラーには何度も世話になってるからな」

 ランスはこれまでにカラーには何度も助けられた。

 一番最初にケッセルリンクに助けられたことも、ペンシルカウを拠点として使わせてくれた事も、カラーの協力で魔人と戦った事も何度もある。

 それにリセットの事もあり、ランスとしてはカラーを助ける事には抵抗は無い。

「ルーンがね…一体ランスに何の話なのかしらね。ランスは魔法使いじゃ無いのに」

「そういやお前達は知ってるのか?」

 ランスの言葉にレンとジルは頷く。

「私は顔見知り程度の仲で親しくも何とも無いわ。ジルは同じ魔法使いとして色々と話していたけど」

「ランス様…ルーンさんは凄い魔法使いです。それこそ私を上回るくらいに」

「あん? 今のお前をか?」

 ジルの言葉にランスは驚く。

 今のジルはランスが知る限り最高峰の魔法使いなのは分かる。

 ランスと何度も共に冒険した魔想志津香よりも、ゼス四天王であるマジック・ザ・ガンジーよりも凄まじい魔力を有している。

 魔王の血が残って居る事も関係あるだろうが、ランスが知る限りではジルを上回る魔法使いはそう存在しない。

 魔力だけはあるが役に立たないアニスという例外は有るが、それでもジルは魔法使いとしては非常に強い。

 そのジルが自分よりも上回る魔力を持っていると言い切るのがランスとしても驚きだ。

 何しろ今のジルの中にはスラルも居るのだ。

 ジルの謙遜だとしたら、スラルが真っ先に否定しているはずだ。

「ランス様が倒したあの鉄兵を造ったのもルーンです。凄まじい技術を確立したのがルーカ・ルーンという魔法使いなんです」

 そう言うジルの目はどこまでも真剣だった。

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