「久しぶりです、ランスさん…とお呼びしていいですか」
「誰だお前」
ルーンは二度目のランスとの邂逅に緊張していた。
対照的にランスは全くそんな様子もなく、つまらなそうにルーンを見る。
「前に会った時は一瞬だけでしたし、お互いに名前も名乗りませんでしたから。私はルーカ・ルーン。最近設立した魔教団のリーダーをさせてもらっています」
「知らん。興味も無い」
ルーンはランスに自己紹介をするが、ランスは本当に全く興味が無さそうに返答をするだけだ。
その様子にフリークは内心でため息をつく。
(ハンティの言った通りじゃな…男の話を聞くような奴では無いと)
ハンティを信用していない訳では無いが、まさか本当にハンティの言った通りの人間が出てくるとは思わなかった。
(じゃが…覇気はある。ルーンとは違うタイプじゃが、この青年も人の上に立てる器があるようじゃな)
同時に、フリークはランスが只者ではないとも感じていた。
最初に見た時はあの鉄兵を二体同時に相手をして、無傷のまま剣だけで制圧してしまった。
その腕前はまさに異常であり、フリークもまさかそんな人間が存在するとは思いもしなかった。
「…まずは私との話し合いの席についてくれた事に礼をします」
ルーンはランスの態度に少々驚くが、それを態度に出すことなく一礼する。
「カラーの頼みだから付き合ってやってるんだ。下らん話ならとっとと終わらせろ」
ランスの言葉にルーンはホッとする。
カラーとの関わり合いが想像以上に深いようだが、それでもカラーを通じれば話が通りそうだとも思った。
ただ、ランスの態度は露骨に悪いし、本当に自分に興味を持っていないのも分かってしまう。
「あ、ルシラの事か? それなら合意だ合意」
ランスはてっきりルシラの事で話をして来たのだと早とちりする。
これまでの経験から、男が乗り込んできたのかと思ってしまったのだ。
「いえ、ルシラとの事に関してはこれはルシラの私闘です。命を取られた訳でもありませんし、魔教団としては特に何も言う事は有りません」
と言ってからルーンは困ったように頬をかく。
「まあ…私個人としては色々と思う事もあるんですけど。でも、本人も納得しているのでこれ以上はもう何も言う気は無いです」
「当たり前だ。元々そっちから言い出したんだぞ」
「…はい、私が悪いです」
ルシラは少々納得がいかない表情ながらも素直に頭を下げる。
「で、何の用だ。俺様は忙しいからとっとと話せ」
本当にどうでもよさそうに言うランスにルーンは内心で難しい顔をする。
ルーンも理解してしまったのだ、ランスという人間は本当にこちらに興味が無い事を。
だが、それでもルーンはランスにどうしても聞きたい事があった。
「あなたは…魔法使いをどう思っていますか?」
「はぁ?」
その質問にランスは思わず声を出す。
「そういやルシラも同じことを聞いてきたな」
だが、ルシラもランスに同じことを聞いてきたので、ランスも流石に同じ質問を覚えていた。
「魔法使いは魔法使いだろうが。それに意味があるのか」
「…あなたは魔法使いだからといって差別はしないという事ですか?」
「だから何で魔法使いだからと差別しなければならんのだ。全く意味が分からん」
ランスからすればそういう差別が本当に意味が分からない。
分からないからこそ、ゼスで『魔法を使えない者』として差別された事に心底腹が立った。
腹が立ったついでにテロリスト同然の存在となり、それが原因で結局はゼスの中での差別は表面的には消滅した。
まだ色々と問題はあるだろうが、少なくとも2級市民と1級市民という階級は無くなったし、ゼス四天王も魔法を使えないウルザでも選出された。
そもそもランスは男か女か、ブスか可愛いか、その程度の認識しか無い。
だからこそ、鬼畜戦士と呼ばれているのだが、ランスはそんな事を一向に気にした事は無かった。
「…そうですか」
ルーンはランスの言葉を聞いて安堵する。
ルシラの言った通り、この男は魔法使いに対する差別意識は無い。
今の時代では当たり前の事をおかしいと思ってくれる人なのだと。
実際にはランスは生まれた時代が違う事と、自由都市生まれなのでそういった意識が最初から無いのだ。
「でも、ジルさんが奴隷だというのは…」
「売られたから買った。それ以外に何かあるのか」
「あの…私は別に魔法使いだから奴隷として売られた訳でも、魔法使いだから買われた訳でも無いので…」
ランスの言葉をジルが補足する。
実際はもっと複雑な事情があったのだが、結果としてはそれが事実だ。
ジルも最初は奴隷として買われた事に絶望していたが、ランスという人間は意識が違っていた。
確かに家事などはやらされるが、ランスの行動原理は冒険とセックスだ。
セックスも無理矢理やられるのではなく、自分との約束を守った上で合意の上で行われた。
それから本当に色々とあったが、ジルにとってはランスは命の恩人で有り、自分が愛する男なのだ。
その言葉を聞いてルーンは考える。
ルーンには将来のビジョンがある。
魔法使いの解放は過程であり、最終的な目標は魔王だ。
そのためにルーン達は鉄兵を生み出した。
鉄兵は完成ではなく、将来のための過程の一つでしかない。
ルーンは鉄兵の完成形を既に頭に描いては居るが、そのためにはまだまだ時間が必要となる。
その時間を止めるための技術こそが、今ルーン達が研究をしている技術なのだ。
(そして将来のためには彼のような人の力も必要となる…)
ルーンも魔法使いと鉄兵だけで全てが済むだなんて甘い事は考えていない。
そして何よりも、ルーンは鉄兵をあっさりと倒したランスの剣が忘れられなかった。
鋭い切れ味で真っ二つになった鉄兵、そして頭から砕かれたように破壊された鉄兵。
それを同じ人間がやったのだから、ルーンは衝撃を受けた。
そして魔法を使えない人間の中には、恐ろしく強い力を持った人間が居るという事を思い知らされた。
「…ランスさん。私達と共に来てくれませんか? 私達と一緒に、世界を良くするために」
ルーンが出した結論はこの言葉だった。
その言葉にはルシラも驚いたが声には出さない。
何となくだが、ルーンがランスとの会談を望んだ時にこういう事は予想していた。
一方のフリークは難しい顔をしている。
(ルーンの言葉は分かる。じゃが、ハンティの言葉通りならこの御仁が受けるとは思えぬからの…)
何度もハンティから言われていたが、この若者はある意味危険な存在になると。
何よりも、恒久的な協力を受けるのは難しい、という言葉が引っかかった。
それが何を意味するかは分からないが、ハンティは暗にランスとの協力は止めた方が良いと言っていたのだ。
フリークもそれはルーンに話したが、やはりルーンは彼に声をかけた。
(自分でやってみなければ分からんからの…それは仕方ない事か)
問題はこの後で、ルーン達はランスの反応を待つ。
「下らん。パスだパス。面倒くさい」
ランスから放たれたのはあっさりと、そしてハッキリとした拒絶だった。
悩む素振りなど全く無く、本当に面倒そうに言い放つランスにルーンは唖然とする。
断られる可能性は高いと思っていたが、まさかこんな態度で言い放つのは想像していなかった。
「…理由を伺っても?」
「面倒くさい。つまらん。俺様は俺様の好きなようにするだけだ」
「つまらない事…なのでしょうか。今の世界は魔法使いというだけで差別される世界です。ランスさんのような考え方を持っている人はほんの僅かです。だからこそ、私達は立ち上がろうと思っています」
「そんなの好きにすればいいだろうが。俺様を巻き込むな。お前達だけでやればいいだろうが」
「それは…」
ランスの言葉は乱暴だが別に間違った事を言っている訳では無い。
ランスからすればこちらに協力する理由は無いのだ。
これらの事は確かに魔法使いである自分達がやらなければいけない事なのだ。
「…私達は将来的にはこの世界を一つに纏めようと思っています」
ルーンはランスに対して自分達の目的を話す事にする。
そうしなければ、ランスに対して失礼だとも思ったし、何よりもそうした方が良いと判断したからだ。
「そして最終的には…魔王と魔人。それらに対抗する事が目的です」
「ふーん。好きにすればいいだろ。俺様には関係無い」
ルーンの言葉にもランスは全く興味無さげに言葉を返すだけだ。
その態度にはルーンも落胆するしか無かった。
ランスは本当に自分達の言葉などどうでもいいと考えているのが分かったからだ。
確かに魔法使いに対する偏見と差別は持っていない。
だが、同時に人類の未来に関してもさほど興味を持っていない。
(いや、それが普通なのかもしれない…)
今の時代は確かに魔人による被害は存在しない。
しかし、今の時代でも魔物による被害は存在している。
その被害は結構大きく、魔軍程統制は取れてはいないがそれでも脅威には変わりない。
「関係無いというのは乱暴ではありませんか? あなたにも魔物は脅威になるはずでは」
「野良モンスター如きが相手になる訳無いだろうが。経験値にしかならん」
傲慢な言い方かもしれないが、ランスにとっては野良モンスターは相手にならないくらいだ。
それはランスが強くなっている事と、これまでの戦いの相手が魔人や魔軍といった強力な相手だった事も有る。
「…協力し合う事も出来ませんか?」
「やりたきゃ勝手にやれ。俺様を巻き込むな」
それはしっかりとした拒絶だ。
ランスは実際にその手の事には全く興味が無い。
権力は好きだが、ある程度好き勝手したら放り投げるくらいにいい加減だ。
権力に固執はしないが、好き勝手はする、それがランスという男だ。
「ルーン、無理よ。こいつにはそういう考えは無いと思う」
ルシラはやっぱりと言わんばかりの顔でため息をつく。
それにこの男がルーンに素直に従うとも思えなかった。
それだけ我が強いと思い知らされた。
「…そうですか。ジル、君は?」
「私はずっとランス様と一緒に居ます。それが私の全てなんです」
ルーンはジルにも声をかけるが、ジルもまたハッキリと言葉を返す。
「分かりました。今回は引き下がります。ですが、将来的には私達は同じ地点を目指す事が出来ると思っています」
「なんだそりゃ。話が終わったんならとっとと失せろ。俺様も暇じゃ無いからな」
ランスの言葉にルーンは特に気を悪くする事無く、立ち上がりランスに一礼する。
その時、一人のカラーが飛び込んでくる。
「ランスさん! 魔軍です! 魔軍がやってきました!」
「何だと!」
その言葉にランスは立ち上がる。
「魔軍…モンスターじゃ無くて魔物兵か?」
「はい! 緑色と赤色と青色のモンスターが近づいてきているんです!」
緑、赤、青、それらは魔物兵の基本的な存在だ。
色々とバリエーションはあるが、基本はそれらの事を魔物兵と呼んで間違い無かった。
「って魔物兵が襲ってくるなんて事あるのか? 魔人共からは解放されたんじゃなかったのか?」
ランスは自分の疑問を口にする。
ハンティからも人類は少なくとも魔人からの被害は無くなったと聞いていた。
「どこの世界にもはみ出し者って居るもんでしょ。そういう連中は意外と好き勝手やってるって事でしょ」
「フン、たかが魔物兵如き、俺様の敵じゃ無いな。とっととぶっ殺すか。行くぞ、ジル」
「はい、ランス様」
ランスは速攻で魔物兵達を排除すべく動き出そうとする。
「待って下さい!」
「何だ。邪魔する気か」
その行動を止めたルーンに対し、ランスが殺気を向ける。
まさに邪魔する奴は許さんと言わんばかりの圧力に、ランスと一度戦ったはずのルシラは背筋が寒くなる。
そしてランスは自分との戦いは手加減どころか、遊び半分で流していたという事も理解してしまった。
優れた戦士だからこそ、それが分からない程ルシラは弱くは無い。
「いえ、私達も行きます。カラーを魔物達の好きにはさせられません」
「いらん、邪魔だ」
ルーンの言葉をランスは短く吐き捨てる。
「いえ、そんな事は…」
「ランス様…魔物兵が動いているなら、魔物隊長も居るでしょうし、もしかしたら魔物将軍も居るかもしれません。もしそうなら、私達だけじゃ手が足りないかも…」
戸惑うルーンに対し、ジルが助け船を出す。
「…フン、まあいい。俺様の邪魔はするなよ」
ジルの言葉にランスは気に入らないような顔を浮かべながらも、取り敢えずは同行を許可する。
今は何よりも魔軍の撃退が先だ。
「あの…聞いても良いですか?」
「ダメだ」
「………」
ルーンの質問をランスはあっさりと却下する。
その言葉の速さにはルーンも唖然としてしまう。
「魔軍を撃退するって言うけど、どうするの? 私達も協力するけど、私達は魔軍との交戦経験は無いのよね」
そこでルシラがルーンの聞きたかった事をフォローする。
「頭をぶっ潰す。魔物隊長を潰しているなら魔物将軍を潰す。そうすりゃ連中は勝手に逃げてくからな」
ランスの言葉を受けてルーンはルシラに頭を下げる。
(成程…こういう人か)
同時にランスの人となりも理解する。
男に厳しいが女には甘い…でも、ただ甘いだけの人物では無いのも分かる。
「しかしこれだけで戦えるのかの? 軍というからには数も多いし統率も取れているものじゃろ」
フリークの言葉をランスは鼻で笑う。
「ここに攻め入ろうなんて馬鹿は僅かだ。それに数など問題ではない。元々俺様とレンとジルが居れば余裕でぶっ潰せるんだ。お前達は黙って見ていろ」
「…随分と言い切るのね。魔軍と戦った経験も無い癖に」
「あるぞ。もう腐るほどやっとる。やり過ぎてもう飽きてきた」
「は?」
ルシラの言葉にランスは特に答える事もせず、カラーの案内に従って歩いて行く。
レンとジルがそれに付いて行くのを見て、ルーン達もその後を追う。
ペンシルカウを出ると、確かに森が騒がしいような気配が感じられる。
「うーむ、やっぱり居るな」
「分かるんですか?」
ランスの言葉にルーンは驚く。
「何だ、分からんのか」
「いや、私にも分からないから。ランスには一体何が見えてるのよ」
あっさりと言い放つランスに対し、レンも呆れたように声を出す。
それを聞いてランスの方が困惑する。
「滅茶苦茶魔物の気配がするだろうが」
「その…多分それを感じられるランス様が凄いだけだと思います」
ジルがランスに気を使って言葉を出す。
「そうか。まあ俺様は天才だからな。これくらいは当然だな!」
ランスは機嫌を良くしてがははと笑って見せる。
「…でもランス様、本当にそういうのが分かるんですか?」
「当然だ。何体いるかまでは分からんが、そういう気配とかは感じてるぞ」
事実ランスは森の中にモンスター、それも魔軍が居るという気配を感じていた。
長い戦闘経験、剣戦闘LV3、そしてランスの一流の戦士の才覚がそこまでランスの力を上げていた。
「距離までは…分からないか」
「流石にそこまでは分からんぞ。そんなに遠く無いのは分かるがな」
ランスの言葉にレンは武器と防具を構える。
久しぶりのランスとの戦闘だが、万が一にもランスをやらせる訳にはいかない。
それが彼女の任務(勘違い)なのだから。
「私達は魔軍との戦闘経験は無いんだけど、魔物兵ってかなり強いんでしょ? 私達だけでやれるの?」
ルシラは少し緊張した様子で答える。
「鉄兵を用意出来れば問題無いとは思いますけど」
ルーンとしても、折角友好条約を結べたカラーを傷つけさせる訳にはいかない。
だが、そのためには鉄兵の力が必要になるとも思っている。
ランスはその言葉を鼻で笑う。
「フン、直ぐに用意できないモノなど宛になるか。それより頭をぶっ潰せばいいだけだ」
「…随分とあっさりと言ってくれるわね」
自信満々に言うランスに対し、ルシラは懐疑的だ。
確かにランスは強いだろうが、相手は魔軍だ。
軍隊が相手であり、個人が相手ではない。
この考えはルシラやルーンにとっては当然の事だ。
だが、彼等は知らない…ランスはこれまでに魔軍と幾度となく交戦して居る事を。
「ランス、本当に近くに来るわ」
「よーし、隠れろ。奇襲でぶっ潰すぞ」
「は、はい」
レンの言葉にランスは合図をする。
ルーンは少し緊張した様子で茂みに隠れる。
「ルーンさん、強力な魔法は使わないで下さいね。あまり音が大きいと目立ちますから」
「あ、は、はい」
ジルの言葉にルーンはそう返事をするしかない。
そしてジルの顔を見てルーンは驚く。
ジルの表情はこれまでルーンが知っているジルでは無かった。
(これが…戦いの時の彼女)
戦闘経験が豊富なのを嫌でも理解させられる程の冷静さだ。
ルーンが息を潜めていると、声と足音が聞こえてくる。
「おい、本当にこっちで良いのか?」
「俺に聞くなよ…カラーがここに居るってのはあくまでも噂なんだからな」
それは魔物兵の声だった。
「それにしても何でカラーを狙うんだ? 今は人間共に手を出すなって言われてるだろ」
「カラーは人間じゃないからじゃないか? まあ俺は殺しが出来れば何でもいいけどな」
「目的は黒髪のカラーって奴だぞ。そいつだけは絶対に生かしておけよ」
魔物兵の言葉にフリークは驚く。
(黒髪のカラー…ハンティか。だとしたら…随分とハンティも舐められたものじゃな)
魔物兵の目的は黒髪のカラー、つまりはハンティのようだ。
ただ、ハンティは本当に強い。
あの瞬間移動が有る限り、ハンティを捕らえるなど不可能だろう。
フリークがそう思っていると、ジルが動く。
「ランス様から合図が来ました。動きます」
「え?」
ジルの言葉にルーンは驚く。
ルーンがジルに何かを訪ねる前にジルは動いた。
「氷の矢!」
「な、何だ!? うぎゃああああ!」
ジルの放った氷の矢は初級の魔法にも関わらず魔物兵の一体を貫き絶命させる。
ジルが魔法を放つのと同時にランスは既に動いていた。
「死ねーーーーーーーーっ!!」
「ぐげっ!?」
「がはっ!」
ランスは魔物兵に不意打ちで斬りかかる。
そして一太刀で魔物兵を絶命させるという恐るべき剣技を披露する。
「あ、え、ええと」
ルーンは慌ててランス達を援護しようとするが、それよりも早くランス達は動いていた。
「に、逃げ…」
「逃がす訳無いでしょ。死になさい」
慌てて逃げようとする魔物兵の背後に回り込んだレンが冷酷に告げる。
そして剣で魔物兵を貫き、盾で魔物兵の頭を叩き潰す。
「雷の矢!」
「光の矢」
「がははははは! 皆殺しだ!」
ルーン達が動く前にランス達はあっさりと魔物兵の群れを全滅させる。
20体ほどの魔物だったが、ランス達にとっては大した相手では無い様で、それこそ相手が反撃する間もなくあっさりと鎮圧したのだ。
それを見てルーンは唖然とする。
「す、凄いの…」
「え、ええ…」
フリークもランス達の早業には舌を巻くしかない。
ハンティから『強い』とは聞いていたが、聞くと見るとでは全く違う。
それこそレベルが違う、そうとしか思えない程の実力だった。
「…ジル、魔物…いや、魔軍との戦闘経験あるの?」
ルシラはジルをじっと見る。
ジルの動きは迷いが無く、ランスとの連携も完璧だった。
短い戦闘だったが、短い時間だったからこそランス達の強さを思い知らされる。
「私にも色々とありましたから。ランス様、この魔物兵はまだ生きてます」
「お、生きてたか」
「手加減しましたから」
「うむ、グッドだ。おいお前、死にたくなかったら答えろ」
ランスはまだ息のある魔物兵の頭を乱暴に蹴り飛ばす。
「ひ、ひいいいいいい!」
魔物兵はランスを見て完全に怯えてる。
自分の仲間達があっさりと殺されたのを見れば無理も無いだろう。
ランスはその魔物兵の額に当たる部分に剣を突き付ける。
「で、お前達はここに何をしに来た。3秒以内に答えろ。答えなかったら殺す。3、2」
「は、話す! 話します! く、黒髪のカラーです! 将軍が黒髪のカラーを探してるんです!」
「黒髪のカラー…ハンティか? あいつをか」
「どうして魔物がハンティを狙うのじゃ? それが分からん」
フリークは魔物兵がハンティを狙う理由が分からない。
魔物兵に対しての知識は文献で残って居る程度でしかない。
ただ、魔物兵とは人間を殺すための存在、その魔物がカラーであるハンティを狙うというのが理解出来なかった。
「…単純に考えればハンティを魔物将軍の頭脳にするって事じゃない?」
「あいつをか?」
レンの言葉にランスは微妙な顔をする。
確かにハンティは強いし魔力も非常に高い。
が、その力を考えればハンティを捕らえるなんてそれこそ不可能に近いだろう。
「だからこそカラーを狙った可能性も…カラーを人質にするとか」
「うーむ、甘すぎるとしか言えんな。ま、あいつを知らないからそういう事を考えられるんだろうが」
ランスから言わせれば甘いにも程がある。
それこそ見切り発車に近いが、魔物将軍とはそんなに頭が悪かっただろうかとランスは思ってしまう。
何だかんだ言っても魔物将軍というのは魔物の中でも強敵なのだ。
「そ、それがあの方は黒髪のカラーを頭脳にして、それを功績に魔人にしてもらうって言ってて…」
「魔人!?」
魔人という単語が出た事でルーン、ルシラ、フリークの顔色が変わる。
もしそれが魔物将軍の狙いなら、絶対に阻止しなければいけない事だ。
「随分と夢を見てる奴だな。ま、聞きたい事はもう無いからな。じゃあ死ね」
「うぎゃああああああ!」
魔物将軍の目的を聞きだした事でランスはあっさりと魔物兵を刺し殺す。
「じゃあとっとと魔物将軍をぶっ殺すか」
「そうね。手早く終わらせましょ」
ランスとレンはそれが何とも無い事であるかのように言い放つ。
(この人は…一体何なんだろう)
その言葉を聞き、ルーンはランスという男に興味を抱くのだった。
この時代に魔軍が動いているかどうかはまあ匙加減という事で
正直魔軍が動かないと話が動かしにくい…GI期なら猶更です