「うーん、それにしても本当に元ジル様だなんて信じられないわね」
サイゼルはジルの作ったご飯を食べながら呟く。
「そんなに魔王ジルは凄かったんですか?」
ジルは魔王としてのジルとは会う事は出来なかったし、その記憶も無い。
なのでジルがどんな魔王なのかは知らなかった。
レンとスラルからある程度は聞いたが、二人ともそこまで深く魔王ジルと会った事も無い。
全てはケッセルリンクからの伝言だ。
「凄かったわよ。魔物も人間も嫌いって感じだったし。人間にとって悪夢の時代とか言われてるけど、それは魔物達も同じだったわ。むしろ魔物を毎日処刑していたくらいだったし」
サイゼルはジルによって魔人になった存在だ。
ただ、ジルは基本的にも魔人に興味が無く、殆ど放置も同然だ。
「まあ私とハウゼルには何か気にかけていたような感じはしたけど…結局は何もされなかったし」
サイゼルにとってはジルは恐ろしい魔王だった。
ノスは絶対的な忠誠を誓っていたが、それ以外の魔人からは恐れられていた存在だ。
「ガイはどうだったの? 私達、ガイに関してはそんなに知らないのよね。ケッセルリンクもそこまで付き合いなかったみたいだし」
「ガイ…今は魔王ガイか。私も付き合いは殆ど無かったけど…魔人筆頭だったし、ノスと一緒にジルの側近って感じだったかな。人間だった頃に魔人を倒した事もあるみたいだし。その辺はランスと同じね」
「そういやカオスを持ってたな…」
ランスは魔剣カオスの事を思い出す。
本来であればランスの剣として多数の魔人を倒してきた剣だ。
ただ、今のランスとの相性は最悪で、人間だった頃のカオスとも敵対しただけでなく、魔人ガイの剣としても敵対した間柄だ。
ランスとしては日光があるので別にカオスなんてどうでもいいと思っているが。
「そのガイも最初は人間を殺してたけど、シルキィが魔人になってから人間から手を引いたからね。色々と反発はあるけど、魔王には逆らえないし」
「シルキィさん…」
ジルはシルキィの事を思い出す。
シルキィは優しい人で、元魔王であるジルの事も守ってくれた人だ。
「サイゼル。お前はジルの事に驚いていたが、ハウゼルから聞いてなかったのか?」
「ハウゼルはそういう事は話さないわよ。私に伝えてその話が他の誰かに漏れるのを防ごうとしたんでしょ。ま、私だってこんな事言いふらすつもりは無いし。それにそもそも魔王が放置してるんでしょ? だったら他の奴等も動かないと思うし」
サイゼルはハウゼルが自分に何も教えてくれなかった事に憮然とする。
が、同時にハウゼルが話さなかった理由も分かった。
何しろ魔王ガイが絡んでいるのだ、その魔王が放置しているとしても、迂闊に話すのは危険だと判断したのだろう。
(私が危険なんじゃ無くて、ランス達が危険だって事よね…ガイがジル様を倒したって言うのは知ってたけど、まさかそんな事があったなんて)
「にしても魔王に挑むなんてバカな事してるわね。魔王には勝てる訳無いでしょ」
「フン、それも全部あのシルキィのバカが悪い。全く、今度会ったらたっぷりオシオキセックスしてやらんとな」
「それは好きにすれば良いけど…で、ランス達ってこれからどうするの?」
サイゼルの質問に皆がランスを見る。
何処へ行くか、それは全てランスの意思によって決まる。
「JAPANだ。久々に行ってみるのもいいからな」
「JAPANかあ…私、JAPANでやられたからいい思い出無いんだけどね…」
JAPANと聞いてサイゼルの顔が歪む。
「そんなのは知らん。俺様に喧嘩を売って来たお前が悪い」
「分かってるわよ。ただの愚痴よ、愚痴」
「で、お前はどうする?」
ランスに問われてサイゼルは考え込む。
「正直魔物界に居ても暇なのよね…でも、魔人は人間に手を出すなって言われてるし…」
魔王の命令は絶対、魔人は現在人間に手を出すことは出来ない。
それ故に今現在になってようやく人類の国が復活したのだ。
おかげで魔人達は人間に手を出せずに魔王に対して不満を漏らしている奴も多い。
サイゼルは別に人間なんてどうでもいいので特に不満は無い。
ただ、退屈な日々が続くだけだ。
「じゃあお前も来るか」
「そうね。人間には手を出さないけど、アンタ達ならどうせ人間なんて相手にならないでしょうしね。暇潰しについて行くわ」
「そうか。あ、モンスターには手を出せるんだろ。そっちは手伝えよ」
「そっちは大丈夫だけどさ…モンスターって、何させる気よ」
「普通にダンジョンの攻略だ。魔人ならどうせダメージ喰らわんから良いだろ」
ランスの言葉にサイゼルは少し考えるが、
「ま良いわよ。暇潰しには丁度いいかもしれないし」
そう言ってサイゼルは少し楽しそうに笑った。
そしてランス達はバイクを走らせる。
最早魔軍も辺りに存在しないので、脅威は何も無い。
魔軍などはランスにとってはそこまで脅威では無いが、ランスが動くとランスを狙って動く魔人が必ず出てくる。
ランスとしてはそっちが問題だったので、魔人に狙われずに行動できるのは実に久しぶりの事だった。
「いやー、これ相変わらず凄いわね! パイアールが作ったんだって!?」
「うむ、あのガキからの報酬だ! 実にグッドだ!」
バイクはランスにとっては非常にお気に入りのアイテムだ。
ランスにとっての移動手段はうし車だ。
それはGI後期~LP期では当たり前の事だった。
何ならNC期でもうし車こそが移動手段なのは変わっていない。
そんな中、自分の意思で思うように動かせるバイク…ましてやランスはバイクの操縦技能を持っている。
なのでランスにとってはバイクは自分の手足のように動かせる、非常に効率の良い移動手段であり、非常に面白いアイテムだ。
GL期では使用は躊躇われたが、今は何の気兼ねも無く使うことが出来る。
サイゼルも自分の翼以外でこれほどの速さで移動できるのはやはり面白い。
あの魔人パイアールが作ったというのならば納得がいく。
ランスは大陸の東側に行くべくバイクを走らせる。
ただ、今の時代は人間の時代で有るが故に、バイクを見て茫然としている人間の姿が見える。
そんな人間達を無視してランスはバイクを走らせていく。
その時、ランスの視線の中に巨大な建物が見えてくる。
「…あれは」
それを見てランスは自分が知っている建物が出てきた事に少々驚く。
「ああ、アレね。パイアールが何か作ってたみたい。興味無いから何なのか分からないけど」
サイゼルは特に興味が無い様子でランスに話す。
「ハイパービルはあいつが作ったのか…」
ハイパービル、それはLP期にも存在する超高層ビルだ。
ビルと言ってもモンスターは徘徊しているし、何だか良く分からないモノが沢山ある。
だが、ランスにとっては色々とあった所だ。
魔人サテラと戦った場所であり、サテラを初めて抱いた場所だ。
それがあのパイアールが作ったというのは驚きだった。
「ああ…アレってパイアールが作ったんだ」
「知ってるのか?」
「知ってるというか…こういう建物が有るっていうだけ。ほら、アンタの住んでた所からも近かったでしょ。だから嫌でも目に入るし」
エンジェルナイトであるレンは世界を飛び回るのも仕事だ。
空を飛んでいれば当然ハイパービルも目に入る。
興味も無いので、それがどんな建物なのは全く分からないが。
「ランス様。そろそろ日も落ちそうですし、何処かで休みませんか?」
「それもそうだな」
ジルの言葉にランスも何処かで休もうと考える。
が、今の時代は人間が普通に出歩いているので魔法ハウスを建てる場所も考え物だ。
この魔法ハウスを見れば、人間ならば誰もが手に入れようと襲ってくるだろう。
ランスだってそれは同じだろうし、その度に返り討ちにするのも面倒臭い。
「どっか近くの町に行くぞ」
「魔法ハウスは使わないの?」
「そろそろ人間の世界を見ておくのもいいからな。少しは冒険の足しになるものもあるかもしれんからな」
ランスはバイクをしまい、徒歩で一つの町へと近づいて行く。
そこそこ大きそうな町を選び、ランスは久々に人間の町へと足を踏み入れた。
そこは特に特徴も有る訳でも無い、普通の町だった。
町の住民がランス達の事を見ているが、それは間違いなくランスの側に居る女性達に目を奪われているからだろう。
エンジェルナイトのレン、魔人であるサイゼル、そして元魔王のジル…何れも美女なのだから無理も無い。
「ねえ、私本当に大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。変身魔法をかけてますから、背中の翼も見えないですし。
「だといいんだけど…」
サイゼルは少し不安そうな顔をしている。
人間の町へと入るに当たり、サイゼルはジルに変身魔法をかけて貰っていた。
背中の翼と頭部の角は今は見当たらず、服装も普段のレオタードから魔法使い風の服に着替えている。
流石にあの服装だと目立ち過ぎると判断されたからだった。
「ランス様、これからどうしますか」
「まずは宿だ宿。出来るだけいい所に行くぞ」
ランスとしてはまずは寝床を確保したかった。
幸いにも治安は良さそうで、ジル達に色目を向ける連中は居ても襲ってくるような輩は居ない。
そして一番良さそうな宿を見つけると、そこで一番大きな部屋を取る。
宿の人間は特に何も言う事も無く、部屋へと案内する。
「へー…ここが人間の町か」
サイゼルは初めての人間の町に興味があるようだ。
「何だ。そんなに珍しいのか」
「珍しいも何も私にとっても初めてだしね。だって私を魔人にしたのジル様よ」
「ああ…」
その言葉にランスは納得する。
ジルの時代に人間の町など存在しない。
隠れ里みたいなものならあるが、こうやって繁栄した人間の町を見るのは初めてだろう。
「昔よりも明るいですね。やっぱり魔王が人類を解放して長い年月が経っているからでしょうか」
ジルも昔…NC期を思い出す。
嫌な思い出も多いが、その中でもランスに会えた自分は本当に幸運だ。
「とにかく飯だ飯。行くぞ」
ランス達は荷物を下ろすと、下の階の食堂で食事を取る。
「中々美味しいじゃない。食事は昔とそう変わらないのね」
レンは久しぶりの人類の食事を楽しむ。
エンジェルナイトでも人類の食事は美味しいと感じる。
エンジェルナイトの中では身分を隠して地上で食事をしたり、買い物をする者も多い。
その辺りは結構アバウトで、レンの同僚も人類の食事の事で話をしていたのを思い出す。
「普通だ普通。まあ久しぶりだから美味く感じるだけかもしれんな」
ランスはこれまで旅をしてきた女達の料理を食べてきた。
最初は大まおーが作っていたが、次々に仲間になっていき、今ではケッセルリンクの使徒となっている者達が料理をしていた。
ジルを買ってからはジルが、GL期では日光が料理を担当していた。
「うーん、美味しい。向こうはこういう料理って無いからねー」
サイゼルも料理を楽しんでる。
「そういやお前等は食事はどうしてるんだ」
「まあメイドさんが作ったり、おかし女の作ったおかしを食べたり…色々よ。こっちほどバリエーションが豊富じゃないって分かったけど」
ランス達は食事を楽しんでいるが、ジルが思い出したようにランスを見る。
「ランス様。そろそろ食料の備蓄が無くなりそうなんですけど…」
「あん? もうか」
「はい。ランス様が居ない間に食料も傷んでしまっていましたので…」
「そういえば私達は10年程ランスと離れていたしね。私達も魔法学院に居たし、食事に困るって事も無かったし」
ランスにとってはさして時間が経過していなかったが、ジル達は話は別だ。
当然食料にも同じ事が言え、備蓄していた食料は既に悪くなっているのが殆どだ。
ランスと再会できるのも何時か分からなかったので、食料の調達も出来なかった。
「まあ今なら簡単に手に入るだろ。金はあるからな」
「そうね。金だけは貯まってたからね」
ランスは本来であれば金に困っている人間だ。
勿論それはランス自身の金遣いの荒さであり、自業自得だ。
しかし、これまでのランスはその金を使う暇が無かった。
NC期は兎も角、GL期では金を使う場所が無かった。
娯楽施設は無いし、特に必要なアイテムを買える訳でも無い。
だからモンスターを倒した後で手に入る金も消費される事なく貯まっていった。
「じゃあそれで買ってもいいですか?」
「好きにしろ。レン、お前もついて行け」
「別にジルにそんな心配はいらないと思うけど」
「アホか。荷物持ちだ荷物持ち。お前は買い物なんか出来んのだからそれくらい役に立て」
「悪かったわね…」
ランスの指摘にレンは半眼でランスを睨む。
ただ、ランスの言ってる事は正しいので文句は言えない。
「じゃあ私もそっちに付き合うかな。暇だし」
「好きにしろ。俺様は俺様で好きにするからな」
ランスには目的がある。
(せっかく人間の時代になったんだからな。色々な大人の道具も出来てるだろうからな…)
マンネリは避けなければならない。
ランスはそう言い訳をしながら、お楽しみに向けて動こうとしていた―――だが、ランスは一つの事実を忘れていた、いや、知らなかった。
この時代、まだLP期のような水準に到達していなかった事を。
次の日、それぞれは好きなように動いていた。
ジル達は生活のための道具、それと食料を探しに動いている。
そしてランスはというと、大人のオモチャを探しに町を散策していた。
娼館もきちんと存在しているし、その手のアイテムは直ぐに見つかると思っていた。
が、ランスの思うようにはいかなかった。
「うーむ、有るには有るが、単調な物しか無いな。これならあのハニワが渡した物でも変わらんな」
その手の大人のオモチャは有るには有るが、ランスが想像していた物は無かった。
それも当然―――今の時代、まだ魔蓄技術は広まっていない。
それを生み出したフリークは居るのだが、生憎と今は魔法使いが差別されている時代。
聖魔教団が世界の統一をするまで、魔蓄技術が広まる事は無い。
そしてランスはその魔蓄技術の恩恵を受けていた。
LP期ではそれが当たり前だったので、ランスとしてもNC期と大して変わらない事に落胆していた。
「そういや宿も手動のランプだったな…」
宿は寝床などはそこそこ良かったが、ランスにとっては設備は古臭く感じた。
パイアールが設備を整えた魔法ハウスと比較するのは間違いだが、LP期の宿と比べても劣っている。
「あ、そうか。魔池が無いのか」
そしてランスは思い至った。
当たり前のように使えていたモノが存在しないのだから、不便に思うのも当たり前だ。
なので大人のオモチャもそういう機能がついていないのだ。
「うーむ、期待外れだな」
無い物を考えても仕方ないので、ランスは別の店を見る事にする。
冒険者であるランスは冒険に必要なアイテムを決して忘れない。
快適な冒険をするため、そして己の命を守るため、準備は整えるのがランスには当たり前だった。
だが、その店の品ぞろえもランスにそっては不満足だった。
(うーむ、やはりハピネス製薬が無いから基本のアイテムが売っとらんな)
確かにアイテムはある。
帰り木や捕獲ロープといったアイテムは販売している。
しかし、LP期の品揃えに比べればやはり大きく劣る。
だが、それは仕方の無い事だろう。
そもそも時代が違うのだから、その辺りが違うのは当たり前なのだ。
ましてやLP期の頃のように人類が栄えている訳でも無い。
仕方が無いのでランスはジル達と合流する事にする。
正直な話、期待外れだったが、それを今言ってもどうしようもない。
とっとと目的地であるJAPANに行く方がよっぽど有意義だ。
待ち合わせ場所の自分達が利用した宿屋に向かう。
そこには既に買い物を終えたジル達が待っていた。
「早かったわね」
「フン、何も無いから早く終わったんだ」
レンの言葉にランスは不機嫌さを隠さずに答える。
「とっとと行くぞ。こんな所にもう用は無い」
「随分と不機嫌ねー。私は結構楽しかったけど」
「やかましい」
揶揄するようなサイゼルの言葉にもランスはぶっきらぼうに返すしか出来ない。
ランス達はすんなりと町を出て、魔法ハウスに色々と補充する。
それが終わり、バイクに乗って再びJAPANを目指そうとした時だった。
「やっほー、ランス」
「ん…? あ、セラクロラスか」
何時の間にかランスの直ぐ側にセラクロラスが居た。
「まさか又か?」
「うんそう。今回は力が戻って無いから、ちょっとだけだから。てやぷー」
その言葉と共にランス達は再び移動した時―――目の前にあるのは戦場だった。
「な、何だ!?」
流石のランスの目の前の状況には驚きの声を上げる。
「どういう状況?」
レンも驚きながらも剣と盾を構える。
戦っているのはJAPANの侍…そして妖怪だった。
ただ、侍と妖怪が戦っているのではなく、協力して何か別の存在と戦っているようだった。
「く! こいつら…硬すぎる!」
侍の刀がその何かの装甲に弾かれる。
「ぐわあああああ!」
そしてカウンターで一撃を受け、侍が倒れる。
「これは…鉄兵!?」
ジルはその何かを見て驚きの声を上げる。
「鉄兵? なんだそりゃ」
「あのねランス! こいつらと戦ったのはつい最近でしょ!? ホントに忘れてるの!?」
いくら何でも物忘れが激し過ぎる―――いや、興味の無い事は覚える気すら無いランスには呆れてしまう。
そんなやり取りをしていると、鉄兵がランスを敵と判断したのか、襲い掛かって来る。
ランスはその鉄兵に攻撃を加えるが、その驚異的な装甲にランスの剣が弾かれる。
「あ! こいつ等あの時の奴か!」
「今更!」
鉄兵はランス達を囲むと、一斉に襲い掛かって来る。
「チッ!」
ランスは鉄兵の攻撃を剣で弾く。
その衝撃はやはり普通の魔物や人間の攻撃に比べると重い。
前回は2体だったが、今回はそれよりも数が多い。
「もう! 何なのよ!?」
相手が人間なのか分からないので攻撃が出来ないサイゼルは苛立ちを募らせている。
「って危ないわよ!」
サイゼルはランスの背後から攻撃しようとしてきた鉄兵を見て、ランスと背中合わせになる。
鉄兵の攻撃はサイゼルに当たるが、その攻撃は無敵結界によって弾かれる。
「ジル! こいつ等を吹っ飛ばせるな!」
「大丈夫です! ランス様!」
ジルはランスに言われるまでも無く既に詠唱を開始している。
そして不思議な事に、鉄兵はジルに対して攻撃を仕掛けてくる事は無い。
「全く! 無駄に硬くて面倒くさいわね!」
レンの攻撃も鉄兵には致命傷にはならない。
「でも…魔法は効くみたいね! エンジェルカッター!」
だが、魔法に対しては話は別なようで、レンの放った魔法が鉄兵を斬り刻む。
「ぶっ殺す! ラーンスアターーーーーーック!」
ランスの放った広範囲のランスアタックが鉄兵を吹き飛ばす。
重量のある鉄兵だが、ランスの攻撃には完全に耐える事は出来ない。
直ぐに起き上がりランスに向かって行くが、ランスは特に気にする事無く鉄兵を迎え撃つ。
先程は囲まれていたが、サイゼルのおかげで背後の心配は無い。
そして一体ずつ向かってくるのであれば、ランスにとっては少し強いくらいのモンスターでしかなかった。
「フン!」
ランスの凄まじい速度の居合斬りが鉄兵の胴体を真っ二つにする。
それでも何体か襲い掛かって来るが、その時ジルの魔法の詠唱が完了した。
「行きます! 雷神雷光!」
ジルの手から凄まじい電撃が放たれ、その電撃は的確に鉄兵だけを狙う。
鉄兵は電撃を受け動けなくなる。
中には電撃の威力に負け、その体が破裂する鉄兵も居る。
その一撃だけで、十数体居た鉄兵は全て沈黙する。
「どうなっとるんだ」
ランスは鉄兵が動かなくなったのを見て嘆息する。
やはり硬くて面倒くさい…が、魔法が有効なのは新たな発見だった。
その時、一人の侍が警戒しながらランスに声をかけてくる。
「貴殿達は…一体何者だ?」
「あん? ってお前の格好は…侍か。って事はここはJAPANか?」
「いかにもここはJAPAN…今や最後の独立国だがな」
「最後? 何を言っとるんだ」
目の前の侍の言ってる事はランスには分からなかった。
「ランス!」
その時、一人の女性がランスの目の前に現れる。
それは大陸の衣装を纏った、複数の尻尾を生やした女性だ。
「あ、お町か!」
「ああ、久しいな、ランス」
そこに居たのはかつてランスと共に戦った妖怪王であるお町だった。
「流石にJAPAN…今までの敵とは大違いだな。一人一人が強い」
大柄な男―――セルジオはJAPANの侍の強さを称える。
「でもこれで最後。何処からも援軍は来ないし、時間の問題よ」
隣に居る女性…ルシラの言葉にセルジオも頷く。
確かに強いが、もう時間の問題だった。
魔教団の中でも前線に出る事が多い二人は、JAPANの者達の強さを見るべく前線に赴いていた。
鉄兵の強さは圧倒的で、相手が侍でも何も問題は無い。
「問題は妖怪王か」
「ええ。妖怪王が今のJAPANの心の支えになっている。そして妖怪王は本当に強い。鉄兵でも1体や2体じゃ相手にならない。でも、それでも周りはそうはいかない」
妖怪王の強さは本物で、その電撃は鉄兵をも打ち倒す。
が、周囲の者達はそうはいかない。
別に妖怪王を倒す必要は無く、周囲の者達を降伏させればいいと思っていたのだが…実際は中々上手くは行かない。
ただ、それでもどんどんとJAPANの地を征服していけている。
「ルーンも来てるしね。これで最後になるといいんだけど」
「ああ…人類の意思を纏める為にはそれしかないからな…」
ルシラもセルジオもこの戦いを決して楽しんではいない。
全ては未来の人類のために―――そう思っていた時だった。
凄まじい雷光が二人にも感じられる。
「な、何だ!?」
「これは…雷神雷光!? でもJAPANにこれほどの魔法使いが居る…ありえない!」
「…退くぞ、ルシラ」
「セルジオ!?」
「あの威力の魔法なら鉄兵が全滅して居てもおかしくない。分かるだろう、鉄兵は対魔法使いを想定して作られていない」
「…分かったわよ」
セルジオの言葉にルシラは納得する。
鉄兵の弱点、それはまさに魔法だ。
そもそも魔法使いではない相手を想定して作られているのが鉄兵だ。
その辺りの防御力は意外な程に低い。
あれ程の魔法を受ければ鉄兵は全滅して居てもおかしくはない。
(それよりも…あれだけの威力の魔法を放てるのは、私の知る限りじゃ二人しかいない。一人はルーン…そしてもう一人は…)
ルシラはまさかとも思いながらも、10年前に別れた友人の事が頭から離れなかった。
大分遅くなりまして申し訳ないです
理由としては聖魔教団絡みで色々と設定を確認した結果、何回か書き直しとなってしまいました
最初はバルシン王国にランスが幹部になって魔教団と戦おうかと考えたのですが、ただ間延びするだけなので没に
そして次に聖魔教団の本部って何処だ? という疑問が頭に出て来ちゃったせいで話の展開が無理になってきそうでまた書き直しに
いや、ラングバウが聖魔教団の本部なんだろうけど、墜落した設定だから何処にバルシン王国があるか分からなくなっちゃって…
だってヘルマン地方にあったら真っ先に魔人が襲ってくるんじゃねとか色々と考えた結果何度か書き直しに
ただ、聖魔教団とは戦いにしたかったのでJAPANという事になりました
ランス04が出てればこの辺の事も多分明かされるんでしょうけど…望み薄そうなのが悲しい