ランス達が戦っていた裏側―――そこではやはり交渉は存在している。
そもそも魔教団の戦力は圧倒的、最初から勝てる戦いでは無かったのだ。
それでも人は抵抗をする者だが、その中でも戦争はもう御免だという考えも持つ者も多くいた。
何しろ相手は鉄兵という集団であり、相手は疲れる事も無く何時間も戦い続けられる。
休息を必要とする人間にとってはまさに悪夢のような相手で、JAPANの侍をもってしてもどうしようもなかった。
妖怪王である末知女殿が鉄兵を追い払ったが、それでもジリ貧なのは変わらなかった。
JAPANの人間のトップが降伏を決めたのも無理は無い事だった。
最初は無条件降伏しか無いと思っていたが、予想外の事が起きた結果、望外の形で降伏する事が出来た。
魔教団も別にJAPANを荒らすつもりも無く、人類の統一が出来ればそれで良かった。
魔教団の目的は世界征服ではなく、人類の共通の敵である魔王を排除する事なのだから。
黒髪のカラーのおかげで何とか話は纏まり、戦争の終結は確定した。
ここに魔教団による世界征服は完了したのだ。
だが、世界のイレギュラーはやはり世界に大きな影響を及ぼした。
それがランスという人間であり、その人間をどうするかという問題は魔教団の中でも大きな話となっていた。
「例の人間を捕らえるべきだ!」
「そうだ。危険な蛮族は素材にするべきだ」
ルーンを中心にした24人の幹部たちの間でもそういう過激な言葉が出るのも無理は無い。
何しろその男は鉄兵をいとも簡単に壊したのだ。
そんな人間…いや、蛮族の存在を許す事が出来ないと思うのも無理も無い事だった。
「鉄兵を倒せる人間なんだ。闘将としても強い存在になるはずだ」
その言葉は誰もが思う事だ。
鉄兵の次の段階である闘将…それは鉄兵のように融通の利かない存在ではなく、その人間の生前の意識を残す事で更なる力を引き出させるのである。
その闘将には絶対服従魔法をかける事で魔教団には逆らえないようにするのだ。
失敗すれ始末すればいい、それくらいの認識でしかない。
「所詮は蛮人だ。どうとでもなるだろう」
その言葉に呆れたようなため息が響く。
「その蛮人に複数の鉄兵を壊され、ルシラも捕らわれた。甘く見るのは危険。魔人やその使徒を想定して行動をするべき」
「ミュウ…」
「あの男はルーンと同じ。ルーンが魔法の天才だとすると、あの男は剣の天才…いや、それだけじゃない。とにかく危険すぎる。本当に闘将にしたいのなら、こちらも多大な犠牲を払う必要が有ると判断するけど」
「蛮人相手にそんな…」
仲間の言葉にミュウはため息をつく。
「ジルとレンも相手にいるんだよ。絶対にこちらにも大きな犠牲は出るよ。それに見てない奴にどうこう言われたくはない」
ミュウは情報魔法の達人だ。
それ故にその言葉には大きな説得力が有る。
「そうだな…あの男に関わるのは危険な気がする。同じことをやれるのはルーンだけだろう。それもルーンでも魔法を唱える時間が必要になるという事もある」
セルジオも苦虫を噛み潰した顔でミュウの言葉に同意する。
あの失態は間違いなく自分のミスだ。
相手の力を過小評価し、その結果持って来た鉄兵は全て全滅し、ルシラも捕らえられた。
ルシラが行かなければ間違いなく自分達は殺されていただろう。
実際、あの男はセルジオならば躊躇いなく殺していただろう。
ルシラが捕らわれたのは、ランスがルシラを捕らえるという選択肢を取っただけに過ぎない。
(それにあの女…一体何者なのだ…)
そしてランスと共に居た女…その女が何かしたのかもしれないが、それが何なのかは全く分からない。
とにかく結果は鉄兵が全滅し、ルシラが捕らわれたという事だけなのだ。
「私達の目的は既に果たされます。ルシラも殺されるような事は無いだろうからね。まずはその話が一番必要なんじゃ無いかな」
魔教団のリーダーであるルーンの言葉に皆が頷く。
「まずはJAPANの降伏条件だけど、これは全て飲むことにするよ。妖怪王には手は出さないし、天志教にも手は出さない」
「…随分と譲歩していると思うがな」
「JAPANの者達を絶滅させるための戦いじゃ無いからね。私達の戦いは人類の統一。それを成し遂げた以上、無用な血を流したくはない。それにこの条件を飲めばルシラは無傷で返って来るよ」
ルーンの言葉に難しい顔をしている者も居るが、戦いには落としどころが必要となる。
だとすると妥協点はどうしても必要となる。
「もうJAPANとの話し合いは大体の上で合意が出来ている。だから後はこれからの話になるさ」
ルーンの言葉に誰も異議を唱える事は無い。
確かに戦いが終わるのならばそれに越した事は無いし、何よりも魔教団の真の目的は魔王や魔人なのだ。
「じゃあこれからの事を話すとしようか」
ルーンの言葉にこの場に集まった者達は頷くしか無かった。
「という訳で戦争は終わったよ」
「随分とあっさり終わりましたね…まだ一波乱あるかと思ったんですけど」
「まあもう勝敗は決してたからね。アンタ達が来ても来なくても結果は変わらないさ。ま、お町に関しては変わったかもしれないけどね」
「まあそんなもんだろ」
ランスとしては負けた事に関しては別にどうでも良かった。
お町が狙われてたらしいので相手を蹴散らしたが、その心配が無いのならJAPANがどうなるとランスにはどうでも良かった。
これがLP期なら話は別だが、今の時代でJAPANがどうなろうとランスとしては知った事では無かった。
一応懸念材料に魔人ザビエルが有るには有るが、正直日光が無い以上あの魔人と戦うのは避けたかった。
何だかんだ言っても、ランスが名前を憶えているくらいにあのザビエルという魔人はやり過ぎた。
それに今はあの魔人は封印されているし、手を出すのもバカバカしかった。
「で、ランス様はどうなりましたか?」
「ああ、手は出さないってさ。ま、アンタ達を本気で捕らえるならそれこそ被害は大きくなるだろうしね。ランスだって別に魔教団にケンカを吹っ掛けようなんて思って無いでしょ?」
「当たり前だ。面倒くさい」
ランスとしてはあの鉄人形の相手なんてしたくも無かった。
面倒臭いし、別に目的も無く国を相手にするほど馬鹿じゃない。
「ま、それなら良いでしょ。魔教団だって人間一人を捕らえる程暇じゃ無いって事さ」
「じゃあこれで本当に終わったって事?」
サイゼルの言葉にハンティは頷く。
「終わりさ。後は自由にしたらいいさ」
「ふーん。しかし随分とあっさりと終わったな。もうちょい長引くかと思っておったが」
ランスとしてはこんなにも早く終わるとは思っていなかった。
もう一波乱くらいはありそうな感じはしていたのだが、どうやらそれは杞憂だったようだ。
「言っただろ、長引かないって。ルーン達だって色々と考えてるのさ」
「まあいい。少しくらいJAPANでゆっくりするのもいいな」
お町に会うという目的は達したが、まだセックスはしていない。
それに結構疲れた戦いでもあったので、ランスとしても少しくらいゆっくりしたかった。
「それならばここで少し世話になればいい。お前達の力は誰もが認めている。無茶な事を言わなければ皆がもてなしてくれるだろう」
お町の言葉と同時に、一人の男と数人の女性が色々な食料を持って現れる。
「お町様。そして大陸の方。この度はJAPANを守るための戦いに参加して頂き、感謝の限りです」
「おうそうだ。しっかりと感謝しろ」
「ランス様…」
何処までも態度のでかいランスに対し、ジルは何とも言えない顔をする。
男は特に気分を害することも無く、ランスに対して笑みを浮かべる。
「JAPANは負けましたが、JAPANの文化は守り抜きました。これも皆様のおかげ。ささやかでは有りますが、もてなしをさせて頂きます」
男の合図に女達が様々な食べ物、そして酒を用意する。
「お町様、これをお納めください」
「うむ…貰ってやろう」
男がお町に対して恭しく頭を下げ、何かを差し出す。
「何だそれは」
「稲荷じゃ。我の好物だからな」
お町は嬉しそうに稲荷を頬張る。
「それでは皆様、ごゆるりと。食事の後は温泉も用意してありますで、どうかお寛ぎください」
そう言って男は失礼の無いように女達と共に消えていく。
「あの…今の人、誰ですか?」
「ああ…そういや紹介して無かったね。今のJAPANの一応の代表って奴さ。源頼経って言うのさ。魔教団との交渉を努めた奴でもあるのさ。感謝しなよ、あいつはアンタ達のために一歩も退かないでルーン達と交渉したんだから」
「男なんぞどうでもいい。それよりも飯だ飯。こういうのは久々だな」
戦時中は流石に上質な料理は食べれなかった。
なのでこうした明らかなごちそうを食べるのは久々だ。
「そういやそうね」
レンも久々の豪華な食事に目を輝かせる。
エンジェルナイトにも、地上の食事を取るために色々と理由をつけてまで行っている。
レンは職務に忠実…とも言えず、結構欲塗れな所もある。
エッチが好きなのもそうだし、長い間地上に居た事ですっかり地上の食事に嵌ってしまっている。
「前にJAPANに来た時はそんなに食事を楽しめませんでしたからね。加奈代さんはJAPAN出身でしたから、加奈代さんが居た時は作ってくれてましたけど」
「私はJAPANの食事は初めてね。あ、でもこれはこれでいい土産話になりそう」
ジルもサイゼルも並べられた食事には興味津々だ。
「がはははは! では早速頂いてやるとするか!」
ランスの合図でその日は遅くまで宴会が続くのだった。
そして宴会の後―――ランス達は温泉へと案内されていた。
「へー…これが温泉ってやつか」
「なんだお前、温泉は初めてか」
「向こうに温泉なんて気の利いたものは無いしね…そもそも私が魔人になった時なんて、人間達に文明なんて無かったもの」
「そういやそうだな。お前、ジルが作った魔人だったな」
サイゼルはJAPANのお酒を片手に風呂でくつろいでいる。
「このお酒っての結構美味しいわね」
「風呂にまで持ってくるくらいに気に入ったの? 何か意外ね」
「別にいいじゃない。そもそも私は人間界の食事自体が初めてみたいなもんだし」
「悪いなんて言ってないけど。それにしても、ここまで文明が復活したって言えば良いのかしら。人間もしぶといというか、大したものよね」
レンは何故か風呂にまで団子を持ち込んで食べている。
「…お前も十分楽しんでるな。天使ってのは皆そんななのか」
「みんな職務に忠実だけど、オフの時は意外とこんなものよ。何だかんだ理由つけて地上で食事する同僚も沢山居たし」
「ふーん。まあお前もセックスは断らんしな。そういうもんか」
「そういうものよ。数が多ければ色んな奴も居る。それは人間も魔物も同じでしょ。あー、このお団子美味しい」
満足そうに団子を頬張るレンは本当に満足そうだ。
「そういやこういうのも久々だな。それどころじゃ無かったしな…」
ランスはこれまでの事を思い出してゲンナリする。
NC期はまだ人類が栄えていた面もあったので、そこまでの苦労は無かった。
問題はGL期からGI初期…娯楽も何も無く、隠れながら行動をしなければならなかった。
確かに色々な女性とセックスは出来たが、そこに至るまでが苦労の連続だった。
魔王と戦い魔人と戦い、時には怪獣と戦い…とにかく戦いの連続だった。
こうして人里でゆっくり出来るのはそれこそいつ以来だろうか。
そう思う程に苦労の連続だった。
「ランスも色々と苦労をしたようじゃな。我もそれなりに苦労はしておるが、お前程ではあるまい」
お町も酒を片手に『分かる』と言わんばかりに頷く。
「そういやJAPANはどうだったんだ? ザビエルの奴が復活したとか言ってたな」
「色々あれど、大陸に比べれば平穏よ。魔人もJAPANで暴れる訳でもなし、しいて言えば帝が居ないからか人間同士の争いが起こった程度よ」
「人同士の争いって…それって大きな事なんじゃ?」
何でも無さそうに言うお町に対し、ジルが驚いた顔をする。
「我はランスと共に魔人や魔王とも対峙したからな…それに比べれば正直人同士の争いなど大したことは無い。我は妖怪王じゃが、人同士の争いに関与する気は無いしの」
「黒部はアレから復活したのか?」
ランスの言葉にお町は少し驚いたが、嬉しそうに微笑む。
「意外じゃな。お主が黒部殿の事をきにするとは」
「アホ。あいつは便利な奴だからな。壁として使ってやるだけだ」
「フフ…生憎と黒部殿はアレから復活する様子は無い。まあ近いうちに復活しそうな感じはするのじゃがな」
「そうか」
何だかんだ言って、ランスは黒部の事を覚えているくらいには気に入っている。
自分の邪魔をしない男…というよりも妖怪だし、ランスの女に手を出さない。
だがそれ以上に何だかんだ言っても、ランスと共に冒険をする事を認めるくらいに黒部の事を考えているのだ。
「人間界も大変ねー。魔物界は魔物界で結構暇なんだけどね」
「ふむ…それなのにお主はここにおる。魔王の事は良いのか?」
「別に人間に手を出さなければいいんじゃない? 実際私もこうしてここに居れる訳だし。あー、でもJAPANのご飯って美味しいわね。独特な味で私は結構好みかな。ハウゼルも好きそうだし、今度一緒に来ようかな」
ハウゼルは酒を片手に幸せそうに温泉を楽しむ。
「それなのだがな…サイゼル。お前はそろそろ戻った方がいい」
ジルの口調が突然変わる。
「お、スラルちゃんか」
「ああ。大体の事はジルの中から見ていたから把握している。その上で口を挟む」
「戻った方が良いって何でよ」
サイゼルは不満そうに唇を尖らせる。
「理由は色々あるが、まず一つは魔王。前にお前自身が言ってただろう。自分は魔王ジルに見張られていたと。ならば同じ事をガイがしようとしてもおかしくは無い。まあこっちは可能性は低いとは我も思うのだが…」
「だったら尚更何でよ」
「お前の存在を魔教団に知られたからだ。お前が魔人である事までは見抜いては居ないだろう。だが、お前の事を認知はしているはずだ。そうなるとランスにとって都合が悪い」
「はあ?」
スラルの言葉にサイゼルは首を傾げる。
「どういう意味よ。迷惑かけてるつもりは無いけど」
「ランスが魔人と共に居る事そのものが都合が悪いんだ。何も知らない人間はランスの事を使徒か魔人に与している人間だと思うだろう」
「…意味が分からないけど」
「人間とはそういうものだと思っておけ。これが人類同士で争っているのならば我も問題無いと思うが、魔教団が圧倒的な力で世界を纏めたのはランスにとって都合が悪い」
「人間ってホント意味分からないわね…まあ私も迷惑かける気は無いし、何よりもケッセルリンクが怖いし…戻る事にするか」
サイゼルにはスラルの言っている深い意味は分かっていないが、元魔王でありケッセルリンクが今でも主と認めている存在がそう言うのであれば、素直にそれに従おうと思う。
それに一番怖いのはやはりケッセルリンクが復活した後だ。
その時に何か言われるのが一番恐ろしい。
「何だ。帰るのか」
「まあ…自覚は無いけど確か10年経ってるのよね。だったら一回魔物領に戻っておかないとまずいかもしれないし…」
「そうか。まあ仕方ないな」
「ランスにしてはあっさりと納得するわね」
ランスの言葉にレンは少し驚いたように呟く。
「別にこれが最後という訳でも無いからな。どうせまた会うからな」
「随分と言い切るな」
「これまでずっとそうだっただろうが。俺様が何回カミーラと戦ったと思っている」
「…そんなにあのカミーラと戦ってたんだ」
若干うんざりした様子のランスを見て、サイゼルは心底同情する。
なにしろ相手は魔人四天王の1人であり、恐ろしく強い相手なのだ。
そのカミーラに命を狙われており、尚且つそれを退けてきたとなると並大抵の事では無い。
「そういえばランスはカミーラと特訓をしてたと言ってたな。まだそれを教えてもらって無いな」
カミーラの名前が出た事で、スラルは気になった事を口にする。
「特訓…あのカミーラと?」
サイゼルは心底嫌そうな顔をする。
あのカミーラと特訓なんて非常に嫌な予感しかしない。
「別に見せる必要のある相手じゃ無かったからな。あんな連中程度に使うのは勿体ない。何より使うと腹が減るからな」
「フム…ならば魔人クラス相手にならば使うという事か? だとすると少しの間はその機会は無さそうだな」
スラルは残念そうに呟く。
「それよりもだ…」
ランスはむふふと笑うと、サイゼルとスラルを自分の側に引き寄せる。
「しっかりと楽しむとするか」
「もう…あんなにやったのにまだ足りない訳?」
「ランス…我もジルと意識を共有しているのだ」
サイゼルとスラルは少し顔を赤くするが、嫌がるような事は無い。
「ふむ…ならば我が相手をしてやる。どうせお前もその気だったのだろう」
お町が立ち上がると、その見事な肉体が露になる。
ただ、ランスが知るお町よりもずっと若く、胸もLP期のお町よりも小さい―――尤も、それでも十分すぎる程に豊満な胸ではある。
「そうだ、俺はお前とやりに来たんだ。なのに変な戦いに巻き込みおって」
「別に我が巻き込んだ訳では無い。自ら巻き込まれに来たのだろうが。ま、助かったとは言ってやる」
そう言いながらランスの正面に向かうとランスに抱き着きキスをする。
そしてお湯の中のハイパー兵器を掴むと、そのまま自分の中へと迎え入れる。
「ふぅ…久しぶりだが、悪くない…」
そのまままったりとした様子でランスを抱きしめている。
「がはははは! せっかくだ、この場でズバッと5Pと行くか!」
ランスはしっぽりと温泉を楽しみ、滅茶苦茶になった温泉をジルが魔法を使って何とか綺麗に後始末したのだった。
魔法ハウスのジルの部屋、そこにはランス達が集まっている。
「で、こんな所に呼び出して何の用だ。スラルちゃん」
「うむ…サイゼルも居る事だしな。ここらで我の研究の足しになれば良いかと思ってな」
「私? 別に何もしてないと思うけど…」
自分の名前が出た事にサイゼルは困惑する。
研究、というとでてくるのはあのパイアールなので、正直サイゼルにはその手の事は全く分からない。
なのであんまりよいイメージも無い。
「ああ、サイゼル本人は関係無い。いや、有ると言えば有るのだが…こればかりはランスが関わる事だから難しい所ではある」
「どういうこっちゃ。意味が分からん」
「説明するよりも見せた方が早いか。ランス、お前の剣をここに乗せてくれ」
スラルは何らかの金属で出来ているであろう台を指さす。
ランスは特に気にする事もなく、言われた通りに剣を乗せる。
「うむ…やはりサイゼルとセックスを沢山していた証拠だな。やはりサイゼルの力が強い」
「…何か凄いこと言われてるけど、否定しづらい」
JAPANで戦いが終わってからはランスは休息と称してやりたい放題だ。
サイゼルも近いうちに魔物界に戻ろうとは思っているが、そんなに急ぐ必要は無いかと思ってまだランス達と共に居る事を選んだ。
「ランス。一人の剣士として正直に答えてくれ。今までの剣の中でどれが一番使いやすい?」
「あん?」
「お前の剣はその力に合わせて変化をして来た。そして今はサイゼルの力が強い状態だ。それらを加味し、お前としてはどの状態の剣が使いやすかった?」
「ふむ…」
スラルの言葉にランスは考える。
ランスは基本的に武器なら何でも使う。
普通のロングソードもJAPANの刀も、大きくて取り扱いが難しいとされるバスタードソードも使う。
そして今ランスが使っている剣の前に使っていたのが魔剣カオスだ。
カオスは一般的なロングソードとそんなに変わらずに使う事が出来ていた。
逆に刀の類はランスには若干使い勝手が悪かった―――神のイタズラが起きるまでは。
「別にどんなのでも変わらんな。どんな形だろうと俺様が使えば問題無いからな」
「成程…確かにお前の剣の形が変わった事でお前が弱くなったという事は無いな。なので聞き方を変えよう。どの状態が一番便利だった?」
「便利…となると、やはり魔法を防げるヤツが便利だったな。まあ炎と氷だけだが…」
ランスの剣は炎の魔法と氷の魔法のみではあるが、魔法を防ぐ事が出来る。
流石に雷、光、闇の魔法に関しては防げないが、その分今のランスにはシルキィが作ってくれた強力な防具がある。
一見すると只の服に見えるが、実際にはシルキィがミスリルや色々なアイテムを駆使して作ってくれたまさに一級品だ。
鎧に関しては消耗品で有る事と、長い間魔王が人間界を支配してきた関係で供給が難しかったという状況もある。
「フム…成程」
スラルもランスの言葉を聞いて頷く。
「我がしていた研究は、お前の剣に関してだ。我もお前の剣の中に居たからこそ分かる。だからこそ、お前の剣をより使いやすいようにしてやりたいとな。ただ、現品が無かったので机上の空論だったし、何よりあの時の設備も無いからな…我としたことが失敗したな」
「だったら取りに行けば良いだろ。前の所にあるんだろ」
ランスの言葉にスラルはため息をつく。
「奴等が残して居ればな。我…いや、ジルは奴等にとっては魔法使いではない人間について行った裏切り者だ。そんな人間の居場所を奴等が残しているかどうか…」
「まずは行ってみれば良いだろ。それから判断すれば良いだろ」
「ランスの言う事も尤もか。ならば行ってみるか」
「そろそろ休憩も終わりだな。新たな冒険が俺様を待っているな」
そう言ってランスは楽しそうに笑う。
新たな冒険、それこそがランスが求めているスリルなのだから。