ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争④

「ガイ様…どうやら只ならぬ異物が迷い込んでいるようです」

「…あの男か」

 バークスハムの報告にガイは顔色一つ変えない。

 自分の腹心の部下の言いたい事は理解している。

 異物とはかつて自分と相対した人間であり、ジルが執着していた男の事だ。

「今更何も変わるまい。そうだろう」

「ええ。あの者が来たとて何も変わらない。人間の手元には聖刀も魔剣も無いのですから」

「ならば問題は無い。方針は何も変わらない」

 魔王の言葉に魔人筆頭は頷いて見せる。

「ですが、どう収拾をつけるのかはあります。このままでは恐らくは良い未来にはならないでしょう。人間にも魔物にも」

 バークスハムの言葉にガイは無言となる。

 ガイとしてはシルキィとの約束を破る気は無かったが、今回ばかりは押し切られる形で開戦してしまった。

 ただ、ガイが予想外だったのは人類が予想以上に粘って居る事だ。

 闘神都市、闘神、闘将…それらを作り出した聖魔教団はガイの想像以上の組織だった。

(私が人間だった頃からは想像も出来ぬな)

 自分が人間だった頃の世界は最悪だった。

 人間も魔物も暗黒に満ちた世界。

 魔人だけは好きに生きていたようだが、それでも人間に手を出すのは許されなかった。

 そんな中でジルに戦いを挑んだが、結局ガイは魔人にされる。

 そしてその中でジルを倒した事でガイは魔王になった。

 その歴史からまだわずかな時間しか経過していないのに、まさかこんな戦争になるとは思っても居ない。

「ガイ様、どのように収める気で?」

「人類を殺し過ぎる訳にはいかぬ」

 かつてガイはジルに一度だけ問い質した事があった。

 それは人間牧場を作った理由だ。

 そこはガイにとっては非常に不可解な施設だった。

 正直に言えば非生産的な施設だし、何よりもその中で人類は何をされる訳でも無く生かされていた。

 その人間牧場を管理する魔物こそ、地獄を見ていた…そんな施設だ。

 ジルの答えは、

『必要だからそうしている』

 という言葉だった。

 ガイはこの言葉は非常に不可解だった。

 まるで人類の数を一定数は保っていかなければならない、そんな風に感じられた。

 その答えを知ったのは『勇者』と呼ばれる人間の存在を知ってからだ。

 かつてジルを倒すために共闘した勇者だが、ランスとの戦いで行方不明となった。

 今にして思えば、ジルはその勇者の存在を鬱陶しく思っていたように感じた。

 確証は無いが、人類の何かが勇者の力に比例するのではないかと思っていた。

 そして結論として至ったのが人類の数だった。

「しかしそれでは今出撃している魔人達も魔物兵達も納得はせぬでしょう」

「聖魔教団が無くなれば奴等も飽きるだろう」

 確かに聖魔教団は強いが、無敵結界をどうにか出来る訳でも無いので、今の状況は正に遊んでいるだけだ。

 そして全ての闘神と闘神都市が無くなればそれで気が済むだろう。

 魔王のやるべき事は、その後の事だ。

「奴を使う」

 ガイの言葉にバークスハムは目を見開く。

「彼女を使うというのですか?」

「うむ。奴ならば人間共の間に不和を生み出す事が出来よう」

「…少々気が進みませぬな」

「奴も魔人だ。その力を使ってもらわねばならぬ。ジークとアイゼルも動かせば問題はあるまい」

「そうですね…どちらかと言えばジークとアイゼルがメインになるでしょうが」

 ガイは『奴』と呼んだ魔人を思い浮かべる。

 その力ゆえの孤独、そして制御できぬ力に苦しんでいる。

 ガイの力でもその力はどうする事も出来なかった。

 だが、その力を使わせる必要がある…将来のためにも。

「ワーグ・赤…魔人すらも恐れるその力、使わねば己で制御もままならぬものだ…」

 

 

 

「さーて、ランス…お前に限ってまさか弱くなってるなんて事は無いよな?」

「フン、こっちは散々カミーラに追い回されとるんだ」

「違いねえ。ま、カミーラを退けられるならこれくらいは何ともねえだろ!」

 そう言ってレイは手から電撃を放つ。

「はいはい、あいさつ代わりって訳?」

 レンはランスの前に立つと、その盾でレイの電撃を散らす。

「へっ、相変わらずじゃねえか。ま、それくらいじゃねえとやり甲斐が無いってもんだぜ!」

 レイはそう言ってランスに向かって行く。

 何の躊躇も無い、真っ直ぐな攻撃―――それが魔人レイの攻撃方法なのだ。

「フン、相変わらずの単細胞が!」

 ランスは真っすぐだが非常に速いレイの攻撃を剣で受け止める。

 魔人の攻撃は凄まじい威力なのは間違い無いのに、ランスはそれを剣の腹で受け止めたのだ。

「止めた!? 魔人の一撃を!?」

「…成程、これは私の思っていた以上の人のようだ」

 ラギとシロウズはレイの一撃を止めたランスに驚愕する。

「ハッ! 弱くなってねえみたいで安心したぜ! それでこそ楽しめるってもんだ!」

 レイは続けざまにランスに攻撃を仕掛けるが、ランスはそれを全て剣で防ぐ。

 防ぐだけでなく、レイに向かってカウンターをも仕掛ける。

 何時の間にか振られていた刀にレイの頬が斬られる。

 そこからは血が滲み、レイは少し慌てた様子で距離を取る。

「何時の間に抜きやがった? 相変わらずだな」

「フン、もうちょい踏み込んでいればお前の首を落としていたんだがな」

 レイの傷は直ぐに塞がるが、レイは警戒するようにランスとの距離を取る。

「魔人に傷が!? まさか本当に無敵結界を使っていないのか!?」

 シロウズは驚いたように叫ぶ。

「ああ、使わねえ。んなもん使ったってコイツには何の意味もねえ。むしろ使ったら逆にヤられる可能性があるからな。だからよ…お前達も精々抗うんだな。出来なきゃ死ぬだけだ!」

 レイから凄まじい雷光が放たれる。

「おお…アレがレイ様の力…」

 魔物兵達は魔人レイの力に感嘆する。

「…確かにレイ様は強い。だが、あの人間達も並では無いぞ」

 魔物将軍ゾノだけは別の視点で物を見ていた。

(奴はグーンをあっさりと殺した…どうやって殺したのかは今でも検討もつかん。だが、こうしてレイ様と戦う人間を見ていると、まさに闘神や闘将を相手にしているのと同じよ…かつて1体で2000の魔物を倒したという闘将とな)

 レイは無敵結界を使っていない。

 使ってもつまらねえと本人は言っているが、魔物将軍からすれば酔狂以外の何物でもない。

 だが、それを抜きにしてもやはり魔人様の強さは本物だと思っていても、目の前の人間も恐ろしく強いのが分かってしまう。

「おらぁ!」

 レイの攻撃は人間が喰らえばそれこそ一撃で死んでしまう威力だ。

 ランスはその一撃を簡単にいなし、反撃すら叩きこむ。

「氷の矢!」

「光の矢!」

「ッ! うざってえ!」

 ジルとレンの魔法を受けれてレイが態勢を崩す。

「死ねーーーーーーっ!」

 そこをランスが攻撃をする。

 単純だが強力な攻撃にはレイも攻めあぐねて居る。

「凄い…魔人を相手に互角に戦ってる…」

「戦闘では優位を保っては居るが…何れは体力の差が出るな」

 ラギは純粋な戦闘力に驚くが、シロウズはこれが続くのは危険だと冷や汗が流れる。

 人間と魔人では基礎能力が違い過ぎる。

 疲れを知らない闘神と闘将ですら魔人相手にはどうにもならないのだ。

 相手が無敵結界を使っていないとしても、普通の人間が魔人に対抗出来る訳が無いのだ。

(なのに…大将は魔人に食いつている)

 確かにランスが不利なのは間違いない。

 だが、それでもランスはまともに魔人とぶつかっていた。

「いい加減に死ねーーーーーっ!!」

「出来るもんならな!」

 ランスの剣をレイは当たらないように避ける。

 実はそれだけでもレイにとっては冷や汗が流れる。

(こいつの剣…何時の間にかヤバイ事になってやがる。俺の勘が告げている…こいつをまともにくらうのは絶対にヤバイってな)

 それは魔人としての本能ではなく、少しの間ではあるがランスと共に行動した事が影響しているのかもしれない。

 何をしてくるか分からない奴だったが、今はその持っている剣が魔人に対しての殺意を増しているように感じられた。

 魔人メディウサとランスが戦っている時、実際はレイはその手に持っていた日光に対して強い警戒心を抱いた。

 カオスを持っていたガイとの戦いの時も、カオスが持っている殺意と魔人に対する絶対的な力を思い知らされた。

 そして今ランスが持っている剣からはそれと同じくらいの殺意を感じられる。

 無敵結界は破られないので、カオスと日光程警戒する事は無い。

 だが、レイはそのポリシーから楽しむ時は無敵結界を使わないようにしていた。

 無敵結界を使っていると、絶対にこの男と戦う時に不利になる―――そう感じていた事から、只管に自分の感覚に従いそうしてきた。

 そしてそれが功を奏した形でレイに帰って来ていた。

「しぶとい奴め」

「何度もやりあえばな。嫌と言う程分かってくるもんさ」

 ランスの言葉にレイはニヤリと笑って返す。

「じゃあこっからは俺も本気でやらせてもらうぜ」

「何だと。今まで本気じゃ無かったとでもいうつもりか」

「ある意味な。お前との戦いの時は場所が悪かったからな…ここは屋外だ。遠慮なく俺も本気を出せるってもんだぜ!」

 レイがそう言うと、突如として雷雲が上空に現れる。

「こっからが本番だぜ…行くぜ、ランス!」

 レイが手をかざすと、雷雲から強烈な電撃がランスに向かって落ちてくる。

「うお!?」

「危ない!」

 レンはランスの前に立つと、落ちてくる稲妻を盾で防ぐ。

「っ! 結構重いわね」

 その衝撃には流石のレンも顔を歪める。

「へっ、よく防ぎやがったな。じゃあ続けていくぜ!」

 そう言うとレイは雷雲から放たれる稲妻を利用して、ランス達に攻撃を仕掛けてくる。

「これは…電磁結界級の威力…それを詠唱無しに放ってくるなんて…!」

 ジルもレイの電撃を防ぎながら唇を噛む。

 レイの使ってくるのは魔法では無い故に絶対命中では無いが、それでも広範囲に攻撃を仕掛けてくる事が出来る。

 以前魔人メディウサとの戦いでは、レイは悪魔と対立していたが、屋内故にこの攻撃が出来なかったのだろう。

 つまり、今の状態こそが100%力を発揮できる魔人レイの姿と言う事だ。

「フン、つまらん手品だ!」

「言うじゃねえか!」

 ランスはレイとの距離を一気に詰め、剣で斬りかかる。

 レイもランスを迎え撃ち、二人は再び真正面からぶつかる。

「くっ! これが魔人の力…私じゃあ何も出来ない…!」

 ラギは魔人の力に戦慄し、体が強張る。

 ラギも地上で戦う闘将の姿を見た事は有るし、その力に驚愕したものだ。

 だが、目の前の魔人はその闘将をも遥かに凌駕している。

 彼女とて決して弱い訳では無いが、目の前の魔人相手では近づく事すら出来ない事に歯噛みするしかない。

「君は砦に戻りアイテムを持ってくるんだ。確かに相手は強いが、その力が分かれば対抗策はある!」

 シロウズはラギの肩を叩くと、剣を構える。

「シロウズ!」

「君が早く戻ってくればそれだけ生存率は上がる! 行け!」

 そう言ってシロウズも二人の戦いに参加するべく駆けていく。

 それを見てラギは急いで砦へと戻る。

 この戦いを有利に結ぶために行動をするしか無いのだ。

「助太刀するぞ! 大将!」

「あん!? 俺とランスの邪魔をすんじゃ…っておい!? 何か見た事あるぞコイツ!?」

 レイは突然現れたシロウズを改めて視界に入れた事で驚愕する。

 これほど特徴のある頭をしている奴は忘れない―――ましてや一時期協力してたのだから当たり前だ。

 その当たり前を忘れる奴も居るのだが…レイは覚えていた。

「行くぞ!」

 シロウズは剣を振るい、レイに斬りかかる。

 それはランスに比べれば遅いが、それでも普通の人間よりも遥かに速い。

 なのでレイはシロウズではなくランスに注意を向けていた。

 こういう時に隙を逃さないのがランスという男なのだ。

 案の定、ランスは必殺の構えを取っていた。

「チッ!」

 レイはランスと距離を取ろうとするが、

「スノーレーザー!」

 ジルの放った魔法をまともに受けてしまう。

「ぐおっ!?」

 その魔法の威力は聖魔教団の連中をも上回る強大な魔力だった。

 致命傷には程遠いが、それでもレーザー級の魔法をまともに受ければレイも態勢を崩す。

 そこを狙ってランスが必殺の一撃を放つ。

「ラーンスアタタターーーーーック!」

「やらせるかよ!」

 同時にレイもランスに向かって電撃を放つ。

 雷雲でレイの雷は強化されており、その一撃は流石のランスも体が痺れる。

 だが、同時にランスも必殺技を振り切っていた。

 ある程度距離を取られたが、ランスアタックはオーラとなってレイに襲い掛かる。

「ぐおっ!」

「チィッ!」

 二人は同時にうめき声を上げる。

 雷撃でダメージを受けたランスと、ランスアタックのオーラを受けてダメージを受けたレイ。

 互いに膝をつくが、直ぐに立ち上がる。

「やるじゃねえか…結構距離があったんだがな」

 レイの胸から血が流れるが、それは纏った雷光によって蒸発する。

 だが、確かな痛みが逆にレイの魔人としての血が滾らせる。

「ランス! ヒーリング!」

 レンはランスに近寄り回復魔法をかける。

「問題無い。そんな焦って回復せんでもいい」

 ランスは立ち上がると、レイをギロリと睨む。

「まあこんくらいじゃねえと楽しめねえってもんさ」

「これだから脳筋のバカの相手は嫌なんだ」

 二人は互いに睨み合いながら、距離を詰めようとタイミングを見計らう。

「シロウズ! 皆!」

 その時一度砦に戻っていたラギが急いでやってくる。

「これ!」

 そして皆にお守りのようなアイテムを渡す。

「よくやってくれた、ラギ!」

「あの…これは?」

「あの魔人に対する対抗策のアイテム! それが有れば結構大丈夫だと思う! …多分」

 黄色いお守りを見て最初はそれが何かは分からなかったが、手にした事で理解する。

「こんなアイテムも作られてたんですね」

「ええ。全ては聖魔教団から始まった…でも、聖魔教団が私達の生活を豊かにしたのも事実だから…そして魔軍と対抗するために色々としていた事も」

 ラギは複雑な顔で答える。

「何なのか知らねえが、そんなので俺の攻撃に耐えられると思うなよ」

 再びレイの周囲に電撃がほとばしり、レイはそれをランス達に向けてくる。

 電撃はランス達に当たるが、その反応にレイは目を見開く。

「何だと…」

 確かに雷撃はランス達に当たったはずだ。

 ランスとレン、そしてジルならばともかく、残りの雑魚二人(レイ視点)ならば消し炭になってもおかしくない威力なのだ。

 だが、その二人もレイの電撃に耐えた。

「電撃を使う魔人が相手なら、その電撃に対抗策を取れば良い、それが人間が持つ知恵だ」

 シロウズが取りに行かせたのは、電撃の攻撃を軽減するアイテムだ。

 聖魔教団は色々なアイテムを作っていたが、このアイテムも例外ではない。

 防げるのはあくまでも電撃攻撃だけなので、汎用性は無い。

 が、相手が電撃を使う相手…それこそ雷魚や角くじらのようなモンスターが相手ならばこの上なく有効だ。

 そしてそれは相手が魔人だろうと例外ではない。

「上等じゃねえか…! そんなチャチなもんで俺の攻撃を防げると思うなよ」

 レイは逆に嬉しそうに口角を上げると、ランスに向かって突っ込んでくる。

「オラァ!」

「それしか無いのはお前は!」

「生憎とこれしか無いんだよ、俺は!」

 ランスとレイが再びぶつかる。

 レイの電撃はより激しくなり、アイテムを持っていてもその電撃はやはり影響を与える。

「援護する、大将!」

 シロウズの手には何時の間にかバイ・ロードのように輝く剣が握られている。

「このb・i・i・mサーベルを受けてみろ!」

「やっぱりお前エドワウじゃねえか!?」

 光り輝く剣を見てレイは怒鳴る。

 かつてのあの強烈な印象を残したアフロがそのままに襲って来たのだから、誰だって驚愕する。

 そう、そのままの印象…つまりはこの男は強い。

 レイはそれを即座に判断する。

「死ねーーーーーっ!」

 だが、問題なのはやはりランスだ。

 ランスの剣は明確にレイにダメージを与えらえる。

 いくら魔人としての再生能力があったとしても、痛いものは痛い。

 それに今のランスの剣は何故か魔人に対しての再生能力が間違いなく遅い。

 カオス程では無いが、何発も貰うのは流石にまずい。

 だが―――それでもレイは笑った。

「死ぬのは…お前だぜ!」

 雷雲から雷が放たれ、ランスに襲い掛かる。

「はっ!」

 だが、それはレンによって受け流される。

「だったらこいつは避けられねえだろ!」

 横から襲って来たシロウズを蹴り飛ばすと、雷がランスにではなくレイに落ちる。

 レイはそれを体に貯める事で、強烈な一撃を放つことが出来る。

 雷雲の規模は最大では無いが、それでも人間相手には十分すぎる。

 それを纏った強烈なタックル、芸も何も無いがそれが一番効率的に相手を壊す事が出来る。

「行くぜ、ランス!」

「フン、一人で勝手に盛り上がってろ!」

 レイはランスに狙いを定めるが、ランスの後ろで強力な魔力を感じ取る。

「ランス様! スノーレーザー!」

 ジルは魔法を放つが、レイは構わずにランスに向かって行く。

 いかに魔力が高かろうとも、魔人であるレイならば一撃受けた所で大したことは無い。

 それよりもランスを倒せればそれでいい、レイはそう判断してランスに突撃していく。

 しかし、レイの予想は完全に外れる―――ジルの放った魔法はレイではなく、ランスに当たったのだ。

 正確にはランスの持つ剣に。

「何!?」

 ランスの剣に当たった魔法はそのままランスの剣に吸い込まれるように消えていく。

 するとランスの蒼い剣が更なる輝きを放つ。

「がはははは! 死ねーーーーーっ!」

「それはこっちのセリフだぜ!」

 レイは全く臆することなくランスに向かって突っ込む。

 そしてランスも退く事なくレイに向かって剣を振り下ろす。

「ラーンスアターーーーーーック!」

「おおおおおおおおお!」

 凄まじい冷気と雷が互いにぶつかりあい、凄まじい光を放つ。

 そしてまともにぶつかり合った二人は大きく吹き飛ばされることになる。

「ふっ」

 吹き飛ばされたランスをレンが受け止める。

「うげっ」

 凄まじい勢いで吹き飛ばされたせいか、流石のランスもうめき声を漏らす。

「酷いわね。ヒーリング!」

 そしてランスはその手も体にも傷や火傷がある。

 魔人レイとぶつかり合ってこれくらいで済んでいるのだから運が良い方だ。

「ぐっ…マジかよ…」

 そしてレイの方も肩から胸にかけて大きな傷が出来ている。

 そこからは出血もあるが、それ以上にその傷口が凍り付いている。

 血が止まるというレベルではなく、まるで傷口から氷が入って来るような感覚にレイは吐き気を覚える。

「レ、レイ様!」

「ま、まさか魔人様が…!?」

 魔物兵は地面に膝を突き、口元を押さえるレイを見て驚愕する。

 無敵の存在である魔人が人間相手にここまでの傷を負わされているのだ。

 それは最早魔物兵にとっては恐怖でしか無かった。

「へ…やるじゃねえか。こんな事まで出来るようになったなんてよ」

 だが―――それでも魔人レイは立ち上がった。

 冷える傷口からは絶えず痛みはあるが、その痛みも今のレイにとっては心地よい。

 ランスと争える、競い合っているという実感がレイに熱を与えていた。

「チッ、浅かったか…」

 ランスも手応えから致命傷には至らないとは思っていたが、まさかここまで元気なのは予想外だった。

 一応全力で放ちはしたのだが、やはり相手は魔人…何度かぶち込まなければ死ぬような事は無いのだろう。

「まだまだこれからだぜ…行くぜ! ランス!」

 そう言ってレイはランスに雷を落とす。

 が―――その雷はランスに当たらずに、上空で何かにぶつかってしまう。

「何だ?」

 一度ぶつかればその雷が貫通するなんて事は無い。

 それを訝し気に思った時、魔物将軍が慌てた声を出す。

「レイ様! 大変です! 上です!」

「上だと?」

 レイは上空を見上げた時、その顔にはハッキリとした驚愕が浮かぶ。

「マジかよ…! こんな時に…!」

「ランス様! 上です!」

「何だ? って何じゃこりゃああああ!?」

 ランスも同じように空を見上げて驚愕の声を上げる。

 魔人レイの放った雷は、落ちてきた闘将に当たってしまったのだ。

 そして―――ランス達の上空にはまさに落ちてこようとしている闘神都市の姿が在った。

 




闘神都市落としってそれだけで人類には大損害ですよね…
リーザスと自由都市には遺跡は見つかってないけどやっぱりあるんでしょうね
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