ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争⑥

「む…ハウゼルか」

「はい。大丈夫みたいですね、ランスさん」

 ハウゼルはニッコリと微笑んでランスから体を離す。

「…ここは何処だ」

「ここはペンシルカウ、カラーの里です」

「ペンシルカウ? 魔人のお前が何でこんな所に…あだだ」

 ランスは口を開くと傷が痛むことに気づく。

「無理はしちゃだめですよ? もう峠を越したみたいですけど、凄い怪我だったんですから」

「うーむ…闘神都市が落ちてきて、何かが体にぶつかった事は覚えているが、そこから先が分からん…」

 自分の体から離れたハウゼルを引き寄せる。

「もう…無理は駄目ですよ?」

「少し寒い。温めろ」

「分かりました」

 ハウゼルはランスの言葉通りに再びランスに密着する。

「そういやジル達はどうなった。分かるか?」

「レンさんが私の姿を確認していました。彼女達は多分無事です。きっとこのペンシルカウに向かっていると思います」

「というかアレからどれくらい時間がたっとるんだ」

「ランスさんは三日間眠っていたんです。カラーの方が回復魔法をかけてくれましたが、本当に危ない所だったんですよ」

 ハウゼルの言葉に流石のランスも閉口する。

 彼女がそこまで言うのならば、本当に命の危機だったんだろう。

「魔人のお前がカラーの所に居てもいいのか? 今戦争中だろ」

「私はハンティさんと面識が有りますから…影ながら見守って来ただけで、実は私達がここに居るのを知っているのはカラーの女王と一部の側近だけなんです」

「そうか…寝る」

 ランスは目を覚ましたのは良いが、直ぐに疲労がやって来て直ぐに眠りにつく。

 ハウゼルはそんなランスに何処までも寄り添っていた。

 

 

「うむ、大分良くなったな」

 ランスはようやく自分の体が治った事に満足そうに手を動かす。

「ふむ…そなたは大分重症じゃったのだが…回復魔法をかけたとはいえ、危なかったのじゃぞ」

「誰だお前」

「妾はエアリス・カラー。当代のカラーの女王よ」

「カラーの女王か。ハンティと連絡は取れるか」

 ランスの言葉にカラーの女王は首を振る。

「始祖様は今は魔軍との戦争で忙しい。始祖様は蛮人…魔法を使えぬ地上の者達を助けているのでな」

「そうか…」

 ハンティの話を聞ければ良かったのだが、居ないのならば仕方ない。

「それにしてもお主がカラーに伝わる人間の男か。ふむ、たいそうな益荒男よ」

 エアリスと名乗った女王はカラカラと笑って見せる。

「お主はカラーの味方と聞いておるが、どうじゃ? 今のカラーを助けてくれるか?」

「カラーは今ピンチなのか?」

「そうとも言えるし、危機は未来にあるとも言える…危うい立場なのじゃよ、カラーは」

 ランスの言葉にエアリスは苦々しい顔をする。

「聖魔教団、お主はその名を知っているか?」

「名前くらいだがな。何があったかは詳しくは知らん」

「ではカラーが教団に手を貸した事は?」

「それは知ってる」

 あの時…最初にルーンに会った時に、カラーと教団が協力体制となる事は聞いた。

 ただ、その後はランスは飛び飛びで時間を移動させられたので、その後の事や今の状況は全く知らない。

「今の現状は理解しているであろう。魔軍と人間の間に戦争が始まった」

「魔人に絡まれたからな。それくらいは当然だ」

「幸いにも魔軍はカラーを狙ってはいない…が、それでもその手の輩はやって来る。そこを救ってくれたのがハウゼル殿よ。ケッセルリンク様の頼みとの事でな」

 ランスは自分の剣を見る。

 ただ、ケッセルリンクはランスと行動を共にしていたので、ハウゼルにそんな事を頼む時間は無い。

 ハウゼルは自主的にカラーを守るために動いてくれていたのだ。

「今はメイの力もあり魔軍を退けられているが…これが10年、20年続くのならば話は別じゃ。カラーは人が居なければ繁殖できぬ。もし人間が駆逐されるような事になれば、カラーも必然的に滅亡する」

 エアリスの顔は非常に暗い。

 この戦争が何時終わるのか、それはもう誰にも分からないのだ。

 カラーからは、人類が今どんな状況なのか、それすらも判別するのが難しいのだ。

 ハンティも時折来るようだが、それでも不安は拭えないのは間違いない。

「そして今の魔物大将軍が問題でな。カラーの様子をよく見に来ておるのじゃよ」

「今の? 魔物大将軍なんてどんな奴でも変わらんだろうが」

「ランスさん。実は魔軍の今の状況は結構複雑なんです。魔物大将軍も年単位で変わるんです。今動いている魔物大将軍は、カラーの魔力を気にしているようなんです」

「何? 人間ならば分かるが、魔物がか?」

 人間はカラーのクリスタルを狙っている。

 ランスからすればそんなのは許されざる行為だが、まさか魔物がカラーのクリスタルを狙うとは思わなかった。

「魔物にもそういう輩が居るという事じゃ。それにしてもお主は本当に今の情勢を知らぬのか…ならば、ここに来てから日が浅いという事か」

 ランスの言動からエアリスはその状況を推察する。

 この女王は相当に頭がキレる女王のようだ。

「お主の仲間が来たら改めてそなたらを皆に話す。ハウゼル殿には窮屈をかけるが、今しばらくは大人しくしていてくれ」

「構いませんよ。私こそ無理を聞いていただいて申し訳ありません」

 ハウゼルの言葉にエアリスはコロコロと笑う。

「フフ…妾はまだ運が良い。だからこそ、この状況を乗り越えねばならぬ」

 そう言ってエアリス・カラーは小屋を出ていく。

「ランスさん、本当に大丈夫ですか?」

「三日も寝てれば傷は治る。スラルちゃんのせいで余計なモノが俺様の中にあるからな…」

「スラルさんが?」

「まあそれはいい。それよりも…」

 ランスはハウゼルを見てぐふふと笑う。

 その笑みを見て、ハウゼルは顔を赤くして自分の体を抱きしめる。

「ランスさん…そんな、傷が治ったばかりで…」

「がはははは! もう治ったと言ったろうが! それにお前と会うのも目的だったからな。早速目的の一つを果たしたぞ!」

 そう言ってランスはハウゼルをベッドに押し倒す。

「ランスさん…怪我が治ったばかりなのに…」

「治ったからやるんだろうが! 早速やるぞ!」

 ランスはハウゼルの服を脱がすと、そのまま二人はベッドの上で絡み合うのだった。

 

 

 

「…うーむ」

「どうしたんですか、ランスさん」

 散々セックスをして満足したランスだが、自分の手にある剣を見て首を傾げる。

 ハウゼルも上気した顔でランスを見る。

「いや、お前とやったのに剣に何の変化も無くてな…」

 これまでハウゼル、サイゼルの二人とセックスした時は剣に変化が出来ていた。

 実際、今のランスの剣は鮮やかな青をしており、ハウゼルとセックスした時のような変化が無い。

 ハウゼルとセックスをしたなら、ランスの剣は燃えるような赤に変わるからだ。

「どーなっとるんだ? 今回だけ何か違うのか」

 スラルに言われて、サイゼルの力を解放せずに戦って来た。

 その状態でハウゼルとセックスをすれば変化が起きると思っていたが、予想が外れてしまった。

「時間だろうな」

 突如としてランスの剣から声が聞こえる。

「ケッセルリンクか」

「私はお前の剣の中に居るから理由が分かる。それは過ごした時間の差だな」

「時間?」

「ああ。今この剣はサイゼルの力が強い…その理由は単純だ。お前はサイゼルと1ヶ月は行動を共にしていた。そしてほぼ毎日のように体を重ねていた。その差だろう」

「…そういやそうだったな」

 ランスは今の時代に来る前に、サイゼルと行動を共にしていた。

 サイゼルは人間には手出しをせず、ランスの冒険について来ただけだが、その間にランスと何度も何度もセックスをしていた。

「これは私の想像だが、剣の中のハウゼルとサイゼルの力が均等にならなければ真の力を解放出来ぬではないか。そもそもこの剣の中にはククルククルまで居るからな」

「…という事はハウゼルも同じ時間が必要なのか」

「そういう事だろうな」

「ほお」

 それを聞いてランスはニヤリと笑う。

 その笑みを見てハウゼルは顔を赤く染める。

 ただ、嫌がっている様子は微塵もなく、その様子はどこか嬉しそうにも見えた。

「ハウゼル。一体何があった」

 ケッセルリンクの言葉にハウゼルが顔を伏せる。

 そこにはやりきれなさが入り混じった暗い顔が有る。

「話してもいいのですけど、ジルさんやレンさんが来てからでも良いですか? 同じことを2度話すのもどうかと思いますし」

「そうだな…そろそろスラル様達もこちらに来ても良い頃だろうからな」

 ケッセルリンクがそう言うと、ランスの居る小屋に人が入って来る。

「お主達を訪ねて来た者達が居るぞ…ふむ、どうやら体は万全のようじゃな」

 入って来たのはカラーの女王であるエアリスで、部屋の状況を見てころころと笑う。

「ランス様!」

「ランス!」

 そしてその後ろからレンとジル、そしておまけのシロウズが顔を見せる。

「…きゃああああああ!」

 シロウズを見てハウゼルが急いで体にシーツを巻き付け、更に凄まじい勢いでコップが投げつけられる。

 それはシロウズの額に当たり、

「…サボテンが花をつけている」

 訳の分からない事を言いながらシロウズは倒れる。

「あ、忘れてた」

 完全に気絶したシロウズを見て、レンとジルは目を丸くするしか無かった。

 

 

 

「酷い目にあった…」

 シロウズは額を押さえて頭を振る。

「やかましい。俺様の女を見るな。いや、むしろ死ね」

 ランスはやはり男には冷淡だ。

「フ…このくらいで死ぬのはご免被る。しかし、何故彼女…魔人がここに?」

 シロウズはハウゼルの正体を感じ取っていた。

 いくら優しい性格と言っても彼女は魔人、やはり相対するととてつもないプレッシャーを感じる。

 ただ、彼女からは殺気が全く感じられない。

「そうですね。ハウゼルさんがどうしてカラーの所に? 今は戦争中ですよね?」

 ジルもハウゼルの立場を考えて複雑な表情を浮かべる。

「…そうですね。私としてはランスさんには事情を話しても良いとは思うのですが、部外者に詳しい事情を聞かれるのは…」

 ハウゼルはエアリスとシロウズを見て複雑な表情を浮かべる。

 エアリスにはハウゼルは現在の事情は説明していない。

 彼女もそれを感じ取っており、ハウゼルから無理に話を聞きだすような事は無かった。

「構わないさ。聞かれてもどうなるものでも無いだろうからな。だが、私は聞く権利がある。そうだろう」

 ランスの剣からケッセルリンクが声を放つ。

「…大将の剣は喋るのか」

「そんな事はどうでもいい。ハウゼル、いいから話せ。どうせ聞かれた所でこいつらには何も出来んだろ」

 ランスの言葉にハウゼルは少し悩むが、確かにランスの言う通り聞かれても大したことではない。

 どうせもう戦争は起こってしまっているし、そもそももう10年も経過してしまっているのだ。

 今更人類がどうする事も出来ないレベルまで時間は進んでしまったのだ。

「そうですね…どこから話しますか? 私も詳しい内部事情…魔王様とバークスハム様の考えまでは知っている訳じゃありません」

「開戦の経緯からだ。そこから頼む」

 ケッセルリンクの言葉にハウゼルは頷く。

「最初は一体の闘将が魔物を人間の大陸から追い出した事から始まったんです。その時点で、一部の魔人はその闘将に興味を持っていました」

「一部の魔人と言うのは…」

「ノス、レキシントン、レイ、レッドアイです」

 何れも好戦的な魔人の名前が出た事にケッセルリンクは剣の中で顔を歪ませる。

「何故ガイは認めた。ガイは人間を解放したはずだ。それがシルキィが魔人となった条件だったはずだ」

「それに関しては私は何も分かりません。ですが、魔王様は戦いを認めました。人間からすれば、魔人が突然攻めてきた形になりますね」

「そうだ。魔人の突然の襲撃に人類は対応出来なかった。初動の遅さが致命的だったとも言える。ただ、魔人の強さを思い知った今、結果は変わらなかったと思うがな」

 ハウゼルの言葉にシロウズも難しい顔をする。

「それから時間が経過するごとに、参加する魔人の数が増えていきました。カミーラ、バボラ、パイアール、アイゼル、ジーク、ガルティア、姉さん、マリーゴールド、ジョンソン、そしてバークスハム様…バークスハム様は殆ど戦場には出ていませんが、一応参戦している形にはなります」

「カミーラの奴も居るのか…」

 出てきた魔人の殆ど…いや、全ての魔人とランスは交戦経験がある。

 ジークとアイゼルはランスが倒し魔血魂となったが、それは未来の話であり今は関係の無い話だ。

「全部で14…絶望的な数だな」

 シロウズも数については知ってはいたが、改めてこうして魔人の口から名前が出ると絶望度が違う。

「他の魔人は参戦していないのか? ますぞえは除くが」

 ジルの口からスラルが言葉を放つ。

 ジルの口調が変わった事にシロウズは驚いた顔をする。

「参戦していないのは私とシルキィ、メガラス、ワーグ、ケイブリス、そして今名前が出たますぞえです」

「…成程な。魔王も本気で人間を滅ぼすつもりは無いという事だな。あくまでも参戦は魔人の自由という事か」

「どういう事よ、スラル」

 レンの疑問にスラルはため息をつく。

「本気で聖魔教団を潰すならメガラスを動かす。奴が動かないという事はそういう事だ」

 魔人メガラス―――世界最速の存在にして、温厚で争いを好まない魔人。

 しかし、その強さは本物で、世界で2番目に古い魔人だ。

「…あいつ、そんなに強いのか」

 メガラスの事はランスも覚えている。

 確かにあの魔人は強かった、それはランスでも認めざるを得ない。

 あのスピードもさることながら、やはり空を飛べるというのはそれだけで脅威なのだ。

「ランス、お前はまだアイツの強さを理解していないのかもしれないが、メガラスはカミーラよりも強い。今のカミーラならば分からんが、アイツは魔人四天王クラスの力がある魔人だ。闘神都市など、メガラスにとっては何のメリットにもならない」

「…マジか? アイツ、カミーラよりも強いのか?」

 スラルの言葉には流石のランスも驚くしかない。

 今思えば、メガラスには殺気が全く無かった。

 純粋にランスの実力を測っているだけに見えた。

「何にせよ、魔王側は本気じゃないという事だ。つまりは、この戦いは本当に魔人側の意向だけで進められた戦いで有り、魔王としては聖魔教団など大したことは無いと判断したのだろうな。魔王が動けば聖魔教団など意味が無いからな…」

「つまりはアイツは出て来ないという事か?」

「人類が魔人を淘汰し、魔王にまで食いついたとならば話は別だがな。まあ日光もカオスも無い以上は意味の無い仮定だ。これは我の予想だが、聖魔教団が敗北すれば魔物達は人類圏から手を引くだろうな」

「それが何時になるかは分かるぬ…ならばその期間は地上の者達にとっては地獄よ」

 エアリスはスラルの言葉に苦渋の表情を浮かべる。

 地上の人間の地獄=カラーにとっても危機だ。

 繁殖手段である人間の男の確保もそうだが、何よりもカラーのクリスタルを狙う人間も出かねない。

 これまでは聖魔教団が人間界の覇者として君臨していたので、それに協力したカラーも人間達から狙われる事は無かった。

 が、その支配体制が崩壊すれば、残された人間の中にはカラーのクリスタルを狙う者が出てくる。

 そうなるとカラーとしては非常に困る事になる。

「ランス、お前がどう動くかで戦況は変わるだろう。お前にはそれだけの力がある」

 スラルは真っすぐにランスを見る。

「…何で俺様が動かなければならんのだ」

「まあそうよね。ランスが動いたところで事態は好転はしないわね」

 ランスは面倒くさそうにため息をつき、レンも予想していたと言わんばかりに頷く。

「確かにな…カオスも日光も無い以上ランスでも魔人に対抗は出来ない。私としても迂闊に動いて欲しくは無い」

 ケッセルリンクとしても現状の世界情勢にランスに巻き込みたくはない。

「…いや、待てよ。闘神都市があるんなら、ケッセルリンクの呪いを解くアイテムもあるな」

 しかし、ランスはそこで思い出した。

 シィルは魔王リトルプリンセスの呪いで氷の中に閉じ込められていた。

 それを解放するため、ランスはヘルマン革命の中から魔王の呪いから解放するアイテムを受け取った―――と思っている。

 真実は違うのだが、ランスにとっては闘神都市の中に魔王の呪いを解くアイテムが有るという認識なのだ。

 これはランスに説明しなかったクルックーも悪いのだが、結果としてそれが世界を魔王という支配者から解放する事になったのは、クルックーですら想像もしていなかった事だ。

 とにかく、ランスの中では『聖魔教団は魔王の呪いを解除するアイテムを所持している』という事実が存在してしまっている。

 そしてランスとしてもとっととケッセルリンクを解放したいという思いがある。

「ランス…だが、私の事でお前を危険な目にあわせたくはない」

「アホ、お前が解放されんとシャロン達がうるさいだろうが」

「それは…」

 己の使徒の事を言われて流石のケッセルリンクも言葉に詰まる。

 自分にとってはまだ一年も経っていない事だが、使徒達にとってはもう400年以上主が居ない生活を強いているのだ。

 その事で彼女達に何か影響が無いとも限らない、それを思うと心苦しさがある。

「…ランスさん、私はあなたに協力します。ケッセルリンクを解放する、という名目で動けば特に誰かに何を言われるという事も無いでしょうし」

 ハウゼルはランスの決意を聞き、協力を申し出る。

「いいのか? 魔王の奴が何か言わないか」

「私も参戦しているという事であれば問題無いですよ。事実、参戦していると言っても好きに動いている魔人も居ます。だったら私も好きに動いても良いでしょう」

「そうか。まあどっちにしろお前とはずっとやらなきゃならん事があるからな」

 ニヤニヤと笑うランスに対してハウゼルは赤面する。

「だったらついでケッセルリンクの使徒に声をかけたらどうだ? 彼女達は使徒、魔物将軍よりも強い立場の者だからな」

 スラルの言葉にハウゼルはランスの剣を見る。

 それに呼応するように、剣から彼女の声が放たれる。

「頼めるか、ハウゼル。私としても、現状をあの子たちに伝えておきたい。それに、パレロアならばパイアールとのコンタクトの相手として丁度いいだろう」

「それとシルキィもだな。彼女としても現状を何とかしたいと思っているはずだ」

「ランス、ケッセルリンクを呪いから解放するなら覚悟が必要になる。魔軍も、そして下手をすれば聖魔教団すらも欺く必要があるかもしれない」

 スラルの言葉にランスは鼻で笑う。

「フン、別にあんな連中は俺様の味方じゃ無いからな。今のうちにぶっ壊しておくに限る」

 そう、聖魔教団の遺産は将来は人間の敵になる。

 ならばランスからすれば聖魔教団の連中は敵なのだ。

「随分と大変な事になってきたのう…じゃが、カラーとしてはお主等に賭ける方が良いのかもしれぬな」

「…いいのか?」

 珍しくランスが気を遣うように言葉を出す。

 ランスが常にカラーの味方なのは、やはり将来に生まれる娘のリセットの事を考えているからだろう。

「構わぬよ。それに始祖様と、カラーの英雄のためとなれば、我々が協力しない方が不誠実じゃ。しかし、妾が表立って協力するのは都合が悪い。なので、今居る世代の中でも尤も強い者をそなたらの協力者としたい」

 エアリスが手を叩くと、一人のカラーが入って来る。

 そしてその入って来たカラーを見てランスは言葉に詰まる。

 カラーという種族は例外なく美女だ。

 それが当然であり、ランスも不細工なカラーは見た事が無い。

「メイ。そなたらはこの者達と行動を共にし、協力するのじゃ」

「了解です、エアリス様」

 メイと呼ばれたカラーが恭しくランス達に頭を下げる。

「俺の名前はメイトリックス・カラーだ。メイと呼んでくれて構わない。よろしく頼む」

「…う、うむ」

 ランスも思わずそう返事をするしかない。

 メイと呼ばれたカラーを見て皆が茫然としている。

 それだけこのカラーは、カラーとしては異質だった。

 まず凄い背が高い―――190を優に超えているだろう。

 そして何よりも特徴的なのは、その逞しいとしか言えない程の見事な筋肉だった。

 それでいて顔は美女なのだから、違和感が凄い。

「この者は当代最強のカラー…それこそかつて英雄と呼ばれたケッセルリンク殿に勝るとも劣らない実力が有ると思っておる。何しろメイは魔物隊長ですら一人で討ち取る程の猛者じゃからな」

「女王様…お戯れはその辺で。俺の実力は偉大な祖であるケッセルリンク様には遠く及ばない。ただ、この肉体が俺を裏切った事は無い…それだけだ」

「ま、まあそうよね…見れば分かるわよね…」

 メイの見事な肉体を見てレンすらも驚愕している。

 筋肉モリモリだが、女性的な部分もきちんとあるのだが、やはりそれがカラーというのが凄い違和感が有るのだ。

「メイはこう見えて弓も出来るし魔法も出来る。そしてその腕力は魔物兵すらも一撃で砕く…メイを超えるカラーはこの先生まれるかどうか分からぬ」

 エアリスも頼もしそうにメイを見る。

「かつて魔人メディウサを倒したシルキィと行動を共にした偉大なるカラー、ベネット・カラーの子孫じゃからな」

「「「何ーーーーーーっ!!!?」」」

 ランス、レン、スラルが同時に叫ぶ

「ど、どうしたのじゃお主等」

「いや、あいつ…ガキを作れたのか?」

「ま、まあこうしてメイが居るのじゃから当然の事なのじゃが…」

「あの残念の呪いにかかっていたアイツがか…」

「…相手は死んだんじゃない? それこそ命がけになったと思うんだけど」

「ランスを超える猛者が居るのだな…やはり人というのは業が深い生き物だな…」

「随分と好き勝手言いよるの…ベネットは我等カラーの英雄の1人なのじゃが…ま、まあ非常に残念だったという逸話は残ってはいるのじゃが…」

 好き勝手言うランス達に苦言を言いつつも、エアリスは少し目を逸らす。

 彼女の伝説は色々な意味でカラーにも残って居るのだが…正直その大半は碌な事で無いのだ。

 カラーの問題児で有り、同時にカラーの英雄でもある、それがベネット・カラーなのだ。

「ま、まあいい。それよりもハウゼル、シルキィを連れて来い。お前なら直ぐだろ」

「ええ、シルキィさんとはよく連絡を取ってますから。明日にでも連れて来れます。ケッセルリンクの使徒の方々も直ぐに合流できると思います」

「フン、魔人だろうが闘神だろうが俺様からすれば大したことない。どっちもぶっ倒してやるわ!」

 ランスはそう言って何時のもように笑うのだった。




今回は説明回なので早く仕上がりました

オリ魔人が出て来ましたが、ここは悩みましたがやっぱり数合わせという感じで出さざるを得ませんでした
公式で15体の魔人と言われている以上、やっぱり数だけは出さないといけないので…
名前の元ネタは大悪事から取っています
設定としてはケイブリスに殺されなかった魔人の残りという感じです

メイトリックス…元ネタはまあ当然分かって頂けるかと
ベネットの子孫だからそうなるのは仕方ないです
イメージとしてはデアボリカの董青ですが、昔のゲーム過ぎて分かりませんよね…
某動画サイトにデアボリカのプレイ動画が有るので、知らない方はそちらを見ていただければと思います
女ケッセルリンクもデアボリカのジゼルが元ネタなので、同じデアボリカの元ネタでいいかなと思って
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