ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争⑩

「………ハウゼル、ランスと一緒に居るのね」

 魔人サイゼルは闘神との戦いを一時的に止め、己の居城に戻っていた。

 戦闘中に襲って来た突然の刺激に動きを止めた所を、闘神の攻撃で闘神都市から叩き落とされた。

 自前の翼があるので地面に落下するような事は無いが、それでも無様な姿だった。

 その理由は当然、ハウゼルがセックスをしているからだ。

 そうなると相手は当然ランスだろう。

「この時代に居るか…厄介な事になりそうだけど」

 サイゼルはランス達と別れた時の事を思い出す。

 今回の相手はその時にランスが戦っていた相手とそっくり―――いや、そのものと言っても良かった。

 こいつらが居なければ、サイゼルはもっと長い間ランスと共に居れた事だろう。

 それを邪魔された事を思い出し、サイゼルは闘神都市への攻撃を開始した。

 最初は怒りから攻撃をしていたが、流石に10年も経つとその怒りも薄れている。

 ノスやレキシントン達のように闘神都市落としを楽しんでいる訳では無い。

 というよりも、ここ最近は闘神都市を攻撃するのもあからさまに減っている程だ。

「それにしても…ホントどうしようかな…」

 ランスを探すにしても、あんまり表立って動きたくない。

 目立った動きをすれば間違いなくカミーラに感づかれる。

 そうなると自分としても面倒な事になるし、魔王に睨まれるのももっと御免だ。

 少しの間行方不明になっていた事をバークスハムにチクリと言われた事も有る。

 バークスハムはどうでもいいが、魔王に睨まれるのは正直嫌だ。

「それにしても…ハウゼルもゆっくり楽しんでるって訳か。まあ…私もそうだったのかも…」

 ランスと過ごした一か月を思い出しサイゼルは赤面する。

 今思えば自分でも本当にとんでもない事をしていたと思う。

 人間相手に共に過ごし、毎日のように肌を合わせていた。

 レンとジルとの3P、4Pも当たり前、夜には一人で寝るなんて事は殆ど無かった。

「でも…楽しかったしなあ…」

 僅かな時間ではあったが、サイゼルは楽しかった。

 冒険なんて下らないと思っていたが、中々面白かった。

 戦闘には参加しなかったが、醍醐味は堪能できたのではないだろうか。

「んっ…ハウゼルったら…」

 ベッドでゴロゴロしていると、体に甘い痺れがやってくる。

 常に体がシンクロしている訳では無いが、それでもかなりの頻度で襲ってくる。

「もう…私があんな事言ったからかな…」

 サイゼルはランスと一か月ほど一緒に居た事をほんのちょっぴり…いや、結構自慢した。

 ハウゼルは普通の顔をしていたが、その顔の裏では少し面白く無かったのかもしれない。

「ホントどうしようかな…」

 サイゼルもまた色々な意味で悩んでいた。

 

 

 

「はぁ…」

 ベッドの上で艶かしいため息が漏れている。

 全身が汗だくで、汗によってその髪が体に張り付いてしまっている。

 女性器からは大量に注がれた皇帝液が垂れ落ち、シーツの上で大きく広がっている。

「よかったぞ、ハウゼル」

「…私もです」

 ランスはくたくたになってしまったハウゼルを抱き上げる。

「もう…ジルに無理をしちゃだめですよ? まだ彼女は体は幼いんですから」

「別に無理はしとらんぞ。ジルだって喜んでただろうが」

「それでもです。私なら遠慮しなくていいんですから、もっと彼女を労ってあげて下さいね」

 ハウゼルと再会して一週間、毎日かかさずハウゼルとは体を重ねている。

 目的はランスの剣の力を満たすためだが、勿論セックスに義務感なんてあるはずもない。

 セックスをするだけで強くなれるのだから、ランスとしては最高の環境だ。

「ランス、大分力は入ってきているが、まだ足りないな。やはりこればかりは時間が解決するしか無いな」

 ケッセルリンクはランスの剣の中に居るため、剣の状況が良く分かる。

「そうか。ま、こんな事なら俺様は全然構わんがな」

「姉さん、こんな生活を一か月も続けてたのね…」

「お前とは環境が違い過ぎるがな。こう言っては何だが、サイゼルはもっと自由だったぞ」

「ケッセルリンクはずっとそれを見てたんですか?」

「ずっとでは無いがな。が、私は常にランスの側に居るからな。嫌でもその光景が目に入るし耳に入って来る。スラル様の気持ちが良く分かったよ」

 剣の中で呆れた声を出すケッセルリンクに対し、ハウゼルは笑う。

 そう言っているが、やはりケッセルリンクはランスと共に居る事が嬉しいのだろう。

「だが、一つ気になる事もなる」

「何だ」

「サイゼルの時と違い、ハウゼルの力が溜まる速度が遅い。サイゼルと共に過ごした時間は一か月だが、その時よりも力の溜まりが遅い」

「そうなのか」

 ランスは剣を手に取る。

 剣には明らかな変化が起こっており、凍り付きそうな程に美しい蒼い剣なのは変わらないが、それは片面だけだ。

 その裏側が、剣の鍔の所から燃え盛るような紅の色に染まっていっている。

 ただ、現状ではその部分は全体の7分の1程度の広さしかない。

 もし剣が完全に紅にそまるのが力の表れだとしたら、確かにその歩みは遅いと言える。

「これは私に心当たりが有る。それを検証するため、今夜は時間を欲しい。シルキィも連れて来てくれ。彼女も居た方が話が早い」

「前に言ってた事か?」

「ああ。やはりあの方の影響力は大きいからな…」

 ランスとケッセルリンクの言葉にハウゼルは首を傾げる。

「ハウゼル、君も来てくれると助かる」

「構いませんけど…何が有るんですか?」

「説明は出来ない。だからこそ実体験として味わってもらうしかない」

 ケッセルリンクの言葉に最後まで首を傾げるしかないハウゼルだったが、その夜その言葉の意味を嫌という程味わう事になる。

 

 

 

 そしてその夜―――

「で、何でこんなに沢山集まっとるんだ」

 カラーに用意してもらった大きな部屋、そこには沢山の者達が集まっていた。

「フッ、私は大将について行くと決めたからな。見届けるのが私の役目だよ」

「男はいらん。失せろ」

「そう言うな、ランス。あの事を考えれば必要だろう」

 追い出そうとするランスをケッセルリンクが止める。

(盾になる存在は必要だろう)

 そしてシロウズには聞こえないように小声で囁く。

「…ま、いいか。お前も役に立てるかもしれんからな」

「何やら不穏な空気が流れているが…まあいいさ」

「オレも付き合わせて貰う」

「メイか。ま、お前ならいいか」

 そしてメイもまたこの場に集められた者の1人だ。

 メイは明確に強いので、ランスとしても彼女が居るのは問題無かった。

「で、何が起きるの?」

「分かりません。でも、大変な事が起きるみたいです」

 シルキィとハウゼルも何も説明されないながらも、ランス達に付き合う。

「前程大所帯じゃ無いからいいんじゃない? あの時の方が酷かったし」

 レンはもう何が起きるのか予想が出来ているのか、この人数でも構わないようだ。

「ランス様…何が起きるんです?」

「面倒だから説明はせんぞ。どうせすぐに分かる。そうだろ、ケッセルリンク」

「ああ。最初は戸惑うだろうが、嫌でも理解する。それはそういう事だ」

 事情が分からないジルだが、ランスは説明を放棄する。

 説明したって分からないだろうし、どうせ直ぐに体験するのだ。

 だったら今細かく言う必要は無かった。

「さて…集まって貰ったがいいが、君達…シロウズとメイは構わないのだな?」

「ああ、勿論だ」

「偉大なる祖の1人、ケッセルリンク様の頼みとあれば、断る理由はありません」

「ふむ…ならば言葉は必要あるまい。それに死ぬことは無いだろうからな…」

 ケッセルリンクは剣の中から闇を生み出す。

「これは…?」

「さて…行こうか。原初の存在の元へと」

 ケッセルリンクがそう言うと、その場に居る者達は仲良くその場に倒れた。

 

 

「ここに来るのも久々だな」

 そこは一見すると普通の大地に見える。

 その場所にランス達は立っていた。

「あの…ランス様、ここは」

「ここはランスの剣の中、と言う方が正しいかもしれない。私もこの剣に留まる事でこうしてお前達と話す事が出来るのだからな」

 ここは普通の大地―――本当にありふれた大地だ。

 何処にでもある光景なのだが、それは今の状況には相応しくない。

「…ねえ、ランス君。私、今凄い気がピリピリしてるわ」

 リトルを手にしたシルキィだが、その顔には大粒の冷や汗が垂れている。

 魔人四天王である彼女がこの先の存在を感じ取ったのだ。

「これは…一体何なんですか…」

 ハウゼルも同じようにタワーファイヤーを構える。

 メイとシロウズも武器を取り、周囲を警戒する。

 そしてその時はやって来た。

 激しい地響きと共に、大地から一本の何かが生えてくる。

「な、なんだアレは!?」

 シロウズはソレを見て驚愕の声を上げる。

 それは非常に不気味な存在―――触手のようなモノの先端に女性を模した何かがついている。

 美しい様で何処か無機質で、顔は有るはずなのにそれが顔だとは思えない、そんな物体だ。

 そしてそれはランス達を見下ろして確かに笑った―――ように見えた。

「相変わらずだな、コイツは」

「成程ね…私は初めてだけどこういう事か」

 レンはその物体を見て真顔になる。

「居るのは知ってたけど、まさかこういう展開になるなんて考えてもいなかった。ケッセルリンク、まさかずっとこうなの?」

「ああ。恐らくはランスがこの御方との決着をつけたその日から」

 ケッセルリンクの言葉にレンはため息をつく。

 まさかこいつとこうしてまた出会うなんて想像もしていなかった。

「ランス様…何なのですか? コレは」

「こいつか? こいつはククルククルだ。初代魔王だと」

「初代魔王…!? ま、まさかこんなのが!?」

 シルキィは目の前の魔王―――ククルククルを見て戦慄する。

 ソレは間違いなく異形の物体なのは間違いない。

 だが、確かに言われてみれば分かる、この存在は間違いなく『魔王』だ。

「一体どういう事なんですか…!?」

 ハウゼルも目を白黒させながらランスを見る。

「知らん。何時の間にかこいつが俺様の剣の中に居た。迷惑な話だ」

 その言葉が聞こえたのか、ククルククルがその巨体をゆっくりと動かしてランスの顔を覗き込む。

「そうだ、お前…俺様の邪魔をしているらしいな」

 ランスの言葉にククルククルの先端の女性を模した部分が首を傾げるような仕草をする。

「俺様はハウゼルとやりまくってとっととこの剣をパワーアップさせねばならんのだ。それを邪魔するなら許さんぞ」

 そう聞いてククルククルは何処か楽しそうに笑った―――ように見えた。

 次の瞬間、ククルククルから凄まじいオーラが噴き出てくる。

「うおっ!?」

 その波動を浴びたランスは吹き飛ばされる。

「ランス!」

 レンがランスをキャッチし、ランスは勢いよく立ち上がり剣を構える。

「おい! 突然何を…」

 何をしやがる―――そう言おうとしたランスの口が止まる。

 そこに居たのは間違いなく魔王ククルククルだった。

 生物としての圧倒的な力の差、それこそリーザスの時に出会った魔王ジルの時と同じだ。

 ランスをして恐怖が先に出た圧倒的な存在、この世界の支配者である魔王が目の前に現れたのだ。

「ランス様…」

 ジルが不安そうにランスの袖を掴む。

「ク…何と言う事だ…これが魔王…」

「オレが震えている…? 恐怖で?」

 シロウズとメイもまた、圧倒的な魔王の気配に体を震わせる。

「これが…初代魔王…」

「ガイ様の方が強いのに…それでもこの気迫…」

 シルキィとハウゼルも初代魔王、歴代魔王最強の存在に背筋が震える。

「これが…魔王」

 ジルも魔王の本当の気迫をその身で思い知った。

 同時に魔王ガイは自分達に魔王としての力を示していなかった事を思い知った。

「フン、急にやる気になりおって」

 ランスは魔王の圧倒的なプレッシャーに怯えることも無く、平然と剣を構える。

 確かにこの魔王は強いが、ランスはこれまで歴代の魔王と対峙してきた。

 アベル、スラル、ナイチサ、ジル、ガイ…何れも恐ろしく強い相手だった。

 全力でランスを潰しに来た魔王はLP期のジルだけだが、それでももう魔王と何度やりあえば慣れる。

 普通そんな事は有りえないのだが、そのあり得ない事をやってのける、そして巻き込まれてしまうのがランスという男なのだ。

「だったら実力行使だ! 俺様が勝ったら大人しく俺様の言う事を聞け!」

 相手は自分の言葉を理解していない、そう思ってのランスの言葉だった。

 だが、ククルククルはその言葉を聞いて笑った。

 口角を吊り上げ、実に楽しそうにランスを見ている。

「む…何だこいつ、俺様の言葉が分かるのか?」

「さあな…だが、ククルククルは紛れも無く己の意思で行動している。外でその力を振るう事は無いが、それでもこの剣の中ではあの魔王は間違いなく魔王なのだ」

 ケッセルリンクはランスの横に並ぶ。

「ランス、ククルククルは圧倒的だ。私一人では手も足も出ない、そんな存在だ」

「知った事か。俺様の邪魔をするなら魔王でも潰す!」

 ランスがそう言うと同時に、ククルククルはその巨体をランスに向けてきた。

 触手一本でもククルククルの力は異常だ。

 何しろ第1級神に尤も近づいた最強の魔王なのだ。

 ククルククルは真っすぐにランスに向かってくる。

「ランス君!」

 そのランスの前にリトルを纏い、巨人のような体躯になったシルキィが前に出る。

 そしてククルククルの強烈な突撃を受け―――吹き飛ばされる。

「うあっ!」

「シルキィ!? まさかシルキィが一撃で吹き飛ばされるなんて…!」

 その様子を見てハウゼルが驚きの声を上げる。

 ハウゼルは親友であるシルキィの力は十分に分かっている。

 リトルを纏ったシルキィはまさに動く要塞、生半可な攻撃ではシルキィを止める事は出来ないのだ。

 そのシルキィが体当たり一つであっさりと吹き飛ばされる…相手は魔王であってもその力は本の一部だけのはずなのにだ。

「ライトニングレーザー!」

 ジルがククルククルに向かって魔法を放つ。

 勿論魔法は絶対命中なのでククルククルに当たる。

 が、ククルククルは全く影響が無いかのように動く。

「効いてない!?」

「効いてない訳じゃ無い。凄まじい再生速度で回復しているんだ」

 驚くジルに対し、ジルの中からスラルが口を出す。

「私の魔力でも駄目なんですか?」

「お前の魔力という問題じゃ無い。奴はカミーラ、ケッセルリンクの魔人四天王二人でも勝てぬ相手だ。一部だけとはいえ、魔王というのはそういうものだ」

 目の前の魔王は全盛期には遠く及ばない。

 それどころか、現役のどの魔王よりも下―――そんなのは当然だ、この魔王は不完全なのだから。

 神が用意した魔王のバックアップの一部、それが目の前のククルククルだ。

 ククルククル本人ではなく、神が遊びのために生み出した魔王の残骸、それが目の前の存在だ。

 本体を用意しても絶対に倒す事は出来ないという理由から、魔王の一部だけを具現化させた偽りの魔王だ。

 だがそれでも―――どんな魔人よりも遥かに強い、それがククルククルだ。

「奴の恐るべき力はその圧倒的な体力と再生能力。特殊な力なんて必要無い、それが初代魔王ククルククルなのだ」

 ククルククルはあっさりとランス達を蹂躙する。

 その圧倒的過ぎる力にランスも冷や汗を流している。

「ま、なんだこいつ!? なんか前よりも強くなってるぞ!?」

「ああ。どうやらレベルが上がっているようだ」

「どうやってだ!? こんな所でレベルが上がるなんて事があるのか!?」

「ある。お前と共に居ればな」

「何だと!?」

 ケッセルリンクはランスの顔を見て顔を顰める。

「お前が成長するように、この剣も成長しているんだ。そしてお前のレベルと共にククルククルも強くなってしまったんだ。お前の強さがククルククルを育ててしまったと言ってもいい…私もその恩恵に預かってしまっているからな」

「お前もか!?」

「かつてのスラル様だってそうだっただろう。それと同じことが奴にも起きただけの事だ」

 その言葉にはランスも絶句するしか無かった。

「危ないランス!」

 その一瞬の隙をククルククルは見逃さなかった。

 口から放たれた強烈な衝撃波にランスとケッセルリンクは吹き飛ばされる。

「どわあああああああ!」

「く…ランス!」

 衝撃波に飲み込まれたランスの体が軋み、全身が悲鳴を上げる。

 ケッセルリンクはランスと同じようにダメージを受けながらも空中でランスを掴んで何とか着地をする。

「あだだだだだ! ま、前よりも圧倒的に強くなっとるではないか!」

「そうだ。それが魔王ククルククルなのだ」

「大体魔王ってそんなに簡単に強くなれるのか?」

「アレはあくまでもククルククル本体ではなくその一部、ならば独立した存在だからレベルが上がる必要な経験値も少ないのだろう。だが、相手は魔王…その1レベルの差が大きいのだ。レベルが上がりやすい人類や一般の魔物と違ってな」

 その言葉を聞いてランスは全く納得いってない顔をする。

「だったら何もしてない奴がどうしてそんなに強くなっとるんだ!」

「お前に力を貸してただろう。そういう策略もあったのだろうな」

 ケッセルリンクの言葉にランスは何も言えなくなる。

 ランスを利用したと言えばその通りだが、同時にランスもククルククルの力を利用していた事になる。

 互いに互いを利用しあった関係、ならば立場は同じだ。

「チッ、その上で俺様の邪魔をしている訳か」

「いや、邪魔をしているつもりはないとは思うぞ」

「あん?」

「私の勘だ。それよりも来るぞ!」

 ケッセルリンクの言葉と同時に、地面から数本の触手がランス達目掛けて向かってくる。

 ランスは舌打ちをしながら向かってくる触手に向けて剣を振るう。

 それは触手のくせにやたらと硬い上に弾力がある。

 何とかランスの腕をもってして斬る事が出来たが、それでも一本だ。

 無数の触手がランスとケッセルリンク目掛けて襲ってくるのだ。

「フン!」

 ランスは触手を己の動体視力を持って軽々と避けながらククルククル本体へと向かう。

 背後から触手が追いかけてくるが、それはケッセルリンクが足止めする。

 そしてランスは剣を構えて必殺技の態勢を取る。

「ラーンスアターーーーーーック!」

 ランスの必殺の一撃がククルククルの太い触手を断ち切るべく襲い掛かる。

 だが、

「うげ! なんつー硬さだ!」

 ランスの剣はその触手の半分にも届かない。

 以前もこんな事があったが、その時よりももっと硬い。

 ランスのレベルもアレから大分上がっているというのに、ククルククルの一番太い、女性を模った体を支える部分は斬る事が出来なかった。

「ランス君!」

 シルキィがその巨体でククルククルに体当たりをする。

「ウソ!?」

 だが、驚愕の声を上げたのはシルキィの方だった。

 ククルククルの触手はシルキィの体当たりに負ける事無く、その体を支えていた。

 逆にシルキィの体に巻き付いていき、シルキィの鎧が悲鳴を上げる。

「ぐっ…何て力…!」

「とっととその体を放せ! ランスアターーーーーック!」

 シルキィの体に巻き付く触手に再び必殺技を放つが、やはりその体を斬る事は出来ない。

 それでも少しは効果があったのか、それともシルキィに興味が無かったのか、ククルククルはその体を放してランスを見る。

 そうしたかと思ったら、ククルククルから凄まじい衝撃波が全身から放たれた。

「うぎゃああああああ!」

「きゃあああああ!」

 ランス達の悲鳴と共に、皆がその場から吹き飛ばされる。

 そしてランスはそのまま意識を失った。

 

 

「はっ!」

 ランスが目を覚ますと、そこはランス達が集まっていたカラーの家だった。

 皆はまだ倒れている―――いや、眠っているようだった。

「な、何が起きた?」

 困惑するランスだったが、そこにケッセルリンクが声をかける。

「どうやら気絶をすると現実世界に戻って来るようだな」

「気絶? 何のことだ」

「ククルククルの衝撃波で私とシルキィ、ハウゼル以外は皆気絶した。同時にお前達の姿が消えたからな。あの空間で気絶するという事はこちらに戻ってこれるという事なのだろう」

「…俺様が負けたのか」

「まあ無理はあるまい。私もあそこまで力をつけているとは思っても居なかった。だが、これは相当にキツイな。相手が前回よりも強い上に、こちらは前回よりも戦力が無いからな」

「ぐぬぬ…」

 ランスは呻くが、それでも結果は変わらない。

 ククルククルをどうにかしない限り、ランスの剣にハウゼルの力はサイゼルの力と同等までには溜まらない。

 溜まったとしても相当に時間がかかるだろう。

 この調子では1ヶ月を優に超えてしまう。

 カラーを狙っている魔人が居る現状、これは非常にまずかった。

 それには流石のランスもどうするべきか、非常に頭を悩ませるのだった。

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