ランス再び   作:メケネコ

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NC期
第一歩から


「ぎゃあああああああ!」

「ボ、ボスが殺られた!」

 男の悲鳴が響き、その部下であろう男達がその光景を呆然と見ていた。

「こんなのがボスとはな。やはり雑魚は雑魚だな」

 男達──盗賊団のボスをたったの一撃で殺した男はつまらなそうに剣を収める。

「いや、流石にアンタに勝つのは無理でしょ」

 その男の隣に居る金色の髪をした美しい女性がため息をつく。

 元はといえば、この二人を盗賊団が襲おうとした事が、全て悪いのだ。

 そして当たり前のように盗賊団のボスである男は──ランスによって実にあっさりと斬り殺された。

「つ、強い…まさか一撃で倒すとは」

 サブリーダーらしき男…盗賊団にしては少し品が有りそうな男が呆然と呟く。

 この盗賊団のボスはそれなりに名の売れていた男だ。

 その力は町の自警団程度では相手にならず、国ですら梃子摺る程の名うての男だった。

 が、その男は実にあっさりと、それこそ無造作に放たれた一撃によって真っ二つになったのだ。

 ランスはその状況を見て、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。

「おい、お前達の隠れ家は何処だ」

 

 

 

「ほう、盗賊団かと思えば中々良い場所ではないか」

「はい。ここは昔砦として作られていた場所なので」

 盗賊団の隠れ家に案内されたランスは、以外にも清潔で広い場所に驚いていた。

 盗賊団等というものは、大抵は薄暗い洞窟のようなものを隠れ家にしているものだが、ここは随分と豪勢ともいえた。

「それでボス、これからどうすれば…」

 ランスの思いついた事…それはいっそのこと盗賊団のボスになってしまえばいいという事だった。

「フン、お前達は黙って俺についてこればいい」

 ランスのあまりにも自信に満ち溢れた言葉に、その盗賊団のサブリーダーの立場だった男は思わずランスに平伏する。

「分かりました。俺達はランス様に従います」

「うーん…アンタ、盗賊にしては随分とらしくないわね」

 レダの言葉にその男は恥ずかしそうに頭をかく。

「こう見えても自分は昔ある国で兵士として働いていまして…」

「ふーん…で、ランス。どうしてアンタは盗賊団のボスになってるのよ」

 新たな時代であるNC期…その世界でランス達はいきなり路頭に迷った。

 何しろこの世界にはリーザス・ゼス・ヘルマンといった『国』と呼べそうなものが存在しなかった。

 まるでJAPANに居たときのような戦国時代…まさにそんな時代だった。

 町から町へと移動するのも大変で、その度にヘルマンへ潜入したときのような面倒くさい手続きが必要となるために、移動もままならない。

 金を稼ごうにも、ギルドというのも存在しないために金を稼ぐのも難しい有様だ。

 そんな状態では定住も難しく、ランス達はこの数日モンスターを倒して少しの金を稼いでいた状態だった。

 今日もモンスターを倒して少しの路銀を稼ごうとしていた時に、突如として盗賊団に襲われたのだ。

 目的はレダだったようだが、そのボスと多数の取り巻きをランスとレダがあっさりと返り討ちにした。

「フン、あんな面倒くさい事をしていられるか。大体移動するのにも許可だの何だのと非常に不愉快だ」

「まあ…分からなくは無いけど」

 エンジェルナイトであるレダにも手続き等はあるのだが、人間と違ってそれこそ一瞬だ。

 特に自分のような悪魔の監視を主にしている戦闘タイプのエンジェルナイトであれば尚更だ。

 それに比べると人間の手続き等は面倒くさい…とはレダも感じていた。

「うむ、まずは飯だ。で、お前の名前は」

「ハイッ! 自分はリバウドと申します。そしてこれが妹の…」

「スピリツです。宜しくお願いします!」

 元兵士だった男と、その妹と名乗る女性が部下に指示を出す。

 そして運ばれてきた食事をランスは勢いよく食べ始める。

 何しろ食事をするのにも苦労する有様であるし、何しろシィルやロッキーが居ないために食事を作ることも難しいという有様だ。

 ランスも料理は上手ではないし、エンジェルナイトであるレダも料理をしたことが無い。

「まーおー!」

 大まおーも久々の自分の手作りでない料理を満足そうに口に運ぶ。

「…ところでコレは?」

「大まおーといって俺様の部下だ。お前達よりもずっと優秀だぞ」

 実際に大まおーは非常に優秀だ。

 魔法も使えるし、近接戦も意外な程に巧みだ。

 何よりも意外にも料理が少し出来るという特技や、スカウト技能もあるようで、罠の発見や鍵開けといった意外な才能を発揮していた。

「そ、そうですか」

 リバウドは少し怪訝な表情で大まおーを見ている。

「うーん…私は食べれないのが悔しいわね。今は料理も作ることも出来ないし」

 突如として現れた透き通った女性に全員が後ずさる。

「スラルちゃんの手料理か…確かに興味があるな」

「あ、あの…この女性は…?」

 スピリツが恐る恐るとスラルを指差す。

「ああ、彼女はスラルちゃんだ。俺様の女だ」

「俺様の女…」

 もしスラルに肉体があればその顔が紅くなっていたのが分かるだろうが、今は生憎幽霊のためにそれを拝むことは出来ない。

「私はスラル。見てのとおりのただの幽霊よ。無害だから安心してもいいわよ」

 そう言うと、書物を手に取り見始める。

 盗賊団はそんなランス達を奇妙な眼で見ていたが、あれだけの強さを見せられた後では何も言う事は出来なかった。

「うむ、中々満足したぞ」

「は、はぁ…何よりです」

 部下達が食器を片付けると、ランスは足を組んでリバウド達を見る。

 そのランスの視線を見て誰かがゴクリと息を呑んだ。

 目の前に居る男が非常に恐ろしく、そして頼もしいとも思える覇気を纏っているからだ。

「今の状況を教えろ。何がどうなってるのかさっぱり分からんからな」

「じょ、状況ですか?」

「何処に何処の国があるのかだとかだ。お前らも盗賊団ならそれくらいは把握しているだろう」

「わ、分かりました」

 リバウドはランス達が食事をしていたテーブルに地図を広げる。

 ランスも冒険者として地図等の道具は持っていたが、全てシィルに持たせていたために今は手元には無い。

 だから、その地図の記憶を元に今広げられている地図と比較しようとするが、

(うーむ…まったく分からんな)

 やはり記憶と同じような場所は無いといっても過言ではなかった。

 今までに何度か情報収集もしたのだが、誰もがリーザスもヘルマンもゼスも知らないという状態なのだ。

 JAPANに行ってみようとも考えたが、移動が面倒くさい事と、手続きなどの煩わしさも有り実行には移せていない。

「まずこの周辺には大きな国が二つあるんですが、その国同士が戦争を始めるのでは、という噂で持ちきりです」

「戦争だと?」

 ランスにとっては大きな戦争といえば、やはり思い出すのはリーザスとヘルマンの戦争だろう。

 その戦争に参加し、人類最強と呼ばれたトーマ・リプトンと呼ばれた男の事は、男の事などすぐに忘れるランスが今でも覚えている程の存在だった。

 そしてそれをも圧倒的に上回る魔人と呼ばれる存在…サテラ、アイゼル、ノス、そして魔王ジル…人類の歴史上に残る一戦である事は間違いないだろう。

「そのせいで最近はどちらもピリピリしていまして…ボスが二人を襲ったのも、最近は大きな略奪が出来ないからと息抜きのつもりだったらしいです」

 そのボスは息抜きのおかげでたったの一撃でランスに殺されてしまった。

 人生というのはどこで終わるかつくづく分からないものである。

「で、何が原因で戦争なぞ始めるのだ」

 リーザスのリア・パラパラ・リーザスは世界征服をしようとしていたが、それだけに見合う能力を持つ人間だった。

 JAPANはランスが知る限りでは、何年も支配者が決まらずに争いをし続けていた。

「ごく単純な構図です。領土拡大が目的の侵略戦争です。こちらの国の姫に縁談を持ち込みましたが…明らかに不釣合いの縁談です。当然その父は断りますが…それを口実に攻める算段なのです。姫が婚姻に応じる事は無いと分かった上の事でしょうな」

「ふーん。で、その姫とやらは美人なのか?」

 ランスの言葉にスピリツが頷く。

「はい。それ故に父は不釣合いとして縁談を断ったのですが、断らせることが目的ですので姫の事などどうでもいいのだと思います。何でも特別な宝があるという話ですから。シャロン姫の事は恐らく二の次なのでしょう」

「美女が一番の宝だろうが。で、その宝とは何だ」

「これは噂でしかないのですが…魔法の家と呼ばれるものだそうです」

 その言葉を聞いてランスの目が光る。

「詳しく話せ」

「ええ…何でも普段は凄く小さいのに、いざとなると大きな家になるという話です。こういった魔法のアイテムは貴重ですから」

「がはははははは! それは良い事を聞いたぞ!」

 ランスがいつもの馬鹿笑いを浮かべ、盗賊団達はビクリと後ずさる。

「ねえランス、それってもしかして」

「ああ、ランスが何度も言ってきた例のアイテムではないか?」

「うむ、魔法ハウスの事だろうな」

 魔法ハウス──―それは普段はミニチュアサイズの家なのだが、使用の際には人が何人も泊まれる立派な家となる。

 カミーラダークの時に、ランスが難民キャンプの時に使っていたのものを、ゼス王であるガンジーの許可のもとに譲られた、世界に30程しかないと言われるアイテムだ。

 ヘルマン革命の時にも重用し、冒険の際にもテントを使う事無く立派な家があるので非常に快適な物だ。

「確かにアレがあると便利よね…こんな状況なら尚更だし」

「うん、私も大いに興味があるな。出来ればこの目で見てみたいし使ってもみたい」

 これまでの生活…魔王城から脱出してからは非常に苦労の連続だった。

 定住も難しく、路銀を稼ぐのにも一苦労、食事をするのにも苦労を重ねてきた。

 やはり寝る場所の確保も大変で、レダとしてもあの魔法ハウスがあれば助かると思っている。

 スラルはランスから魔法ハウスの事は聞いてはいたが、残念ながら実物を見た事は無かった。

 知識欲が旺盛なスラルとしては、ランスが話す魔法ハウスというものを是非とも見てみたかった。

「よーし、作戦を立てるぞ」

「え…作戦ですか?」

 ランスの言葉に盗賊団がどよめく。

 もし国家同士の戦争が起きれば、下手をすれば盗賊団は解散しなければならないとも感じていた。

「当たり前だ。これを利用して俺様はのし上るのだ。そうだ、思えば簡単ではないか。居場所が無いなら作ればいいのだ」

「流石にその考えはどうかと思うが…他ならぬランスが決めたんだ。私はランスを支えるだけだ」

「フン、貴様らまさかこれからも上手くいく等とは思ってないだろうな」

「それは…」

 盗賊団は言葉に詰まる。

 確かにこれまでは上手くやってはいけた…が、戦争が起きるとなればそうはいかない。

 流石に戦争となると商人等は来るだろうが、その代わりに護衛の人間の増える。

 そして派手に動けば間違いなく討伐隊が組まれる。

 それも警備隊では無く、正規兵がやってくるだろう。

 もうそうなれば最後、盗賊団の最後など死刑以外に道は無い。

「それにだ。貴様ら一生盗賊をやっていくつもりか?」

「………」

 皆が一斉に黙る。

 本当は分かっているのだろう、こうしていても自分達には未来は無いという事を。

「勝算はあるのですか?」

 スピリツが神妙な顔でランスを見る。

「やってもみずに分かる訳が無いだろう。勝つためにはそれだけの準備が必要なのだ。だから貴様らは死ぬ気で働け」

 言葉だけならば酷い言葉だろうが、この男の言葉にはそれだけの自信が感じられた。

 この男なら信じてみてもいい…そんな奇妙なカリスマがランスにはある。

「分かりましたボス…いや、ランス様。我々はあなたに従います」

 リバウドとスピリツがランスに跪くと、残りの者も一斉に跪く。

 ランスはその光景を見て何時ものように笑うと、

「よしお前ら、まずは偵察に行け。僅かな情報でも逃すんじゃないぞ」

「ハッ!」

 盗賊団にとっても情報は命…その手に慣れている者も多数いる。

 リバウドはその中でも手練れの者達に指示を飛ばす。

「がはははは! ようやく俺様の時代が始まるのだ!」

 ランスの馬鹿笑いが何処までも響いていた。

 

 

 

「あー久々のベッドかも」

 レダは意外と豪勢なベッドに寝転がると、これまでの疲れを飛ばすかのように体を大きく伸ばす。

「うむ…ようやく休めるな」

 ランスももう一つのベッドに腰を下ろす。

「ランス達は大変ね…幽霊の私はその辺は無縁だけど」

 スラルは二人に申し訳ないといった感じに苦笑いを浮かべる。

 実際にランスとレダには疲れが溜まっていたのは事実であり、スラルはそれとはまったくの無縁だった。

 大まおーに関しては疲れているかどうかも全く不明だ。

「魔王城から出てから…どれくらいたったかしらね」

「知らん」

「1年と1ヶ月と24日かしら。長かったわねー」

 魔王でいた時は時の流れが遅く感じたが、こうしてランス達と一緒にいると時間がたつのが早く感じる。

「もう1年も経っとったのか…」

 結構長いと思っていたが、意外と時間が経過していた事にランスも驚いていた。

 この一年…中々に忙しいものだった。

 あれから一向にセラクロラスは見つから無かった。

 ランスとしても、中々自由に動けない事には苛立ちを感じていた。

 冒険はもちろん好きだが、好きに動くことが出来ないというのはストレスを感じるものだった。

「それにしても…ランスの剣って未だに不思議よねぇ。最初は魂を取り込む剣かと思ったけど、そうでも無いみたいだし」

 スラルはベッドの横に立てかけてあるランスの剣を見ながら首を傾げる。

 自分は今はこの剣に捕らわれてるような感じだ。

 この剣からはそう遠くに行く事は出来ない。

「で、ランス。本当にこれからどうするの?」

 レダとしては正直ランスに大人しくしていて欲しい…もう既に本来の歴史は狂っているだろう事は分かっている。

 しかしそれでも上が動かない所を見ると、その行動を容認しているようだが、ランスを守る身としてはやはり動いてくれないほうがいい。

 最も、それをランスに要求するのは不可能だとも思っている。

「まずは魔法ハウスを手に入れる。それがあれば冒険も大分楽になるだろ。そしてシャロンちゃんも手に入れる。完璧な計画だ」

「…その自信はどこから来るのかしら」

 何時ものように自信過剰とも言える言動だが、魔人や魔王とも渡り合ったランスならば出来てしまうのだろうと思う。

「だがランス。本当にそんな事が出来るのか? こんな盗賊団では国と渡り合う等不可能だろう」

 スラルの疑問は最もだ。

 いくらランス、レダ、大まおー、スラルが強くとも、それで国を落とせるかと言えばNOだろう。

「フン、何も勝つ必要はない。勝ち馬に乗れればそれでいい」

「…どういう事?」

 スラルは首を傾げる。

「スラルちゃんは頭はいいが、その辺は素人だな。俺様の目的を達するためには、別に戦争に勝つ必要は無いからな」

「ごめん、私にも分からない」

 レダも少し顔を赤くして手を上げる。

 エンジェルナイトにはそもそも軍略等は必要としないため、このような状況とは全く縁が無いのだ。

 何しろ数が大量にいるため、例えドラゴンや魔王だろうが数の暴力で制圧する事が出来る。

「…お前もチルディと同じで頭は今一か」

 ランスは呆れたようにため息をつく。

「まあ分からないなら俺様に黙ってついてこればいい」

「お手並み拝見…とか偉そうに言えないのよね…私も」

「ランスが出来ると言っているんだ。それなりの策があるのだろう」

「がはははは! 俺様の完璧な作戦ならばお宝もシャロンちゃんも頂きだ! が、その前に…」

 ランスの顔がいやらしい笑いへと変わる。

 それを見てレダとスラルの顔が引きつる。

 それはこれまで何度も見てきた光景であり、被害はいつもレダが被る。

「と────っ!」

「ん…もう。本当にランスはそれしかないの」

 そう言いつつも実はレダは抵抗らしい抵抗はしない。

(この場合一番の被害はどうあってもランスの剣から離れられない私だと思う…)

 ランスと一緒に旅をしてから、これまでに幾度となく繰り返されていた光景。

 スラルはその度にこの光景を見てきた。

 魔王だった時から、意図せずしてランスが女性を抱いている場面に頻繁に遭遇してきた。

 …その場面を遠隔目玉で見てきたのは絶対に明かす事が出来ない事実だ。

 だがこの場面で一番不満なのは、

(…もう、どうして私の肉体は消滅しちゃったのか)

 実は自分がランスに触れられない事だったりする。

 毎回毎回ランスとレダのSEXを見てきていた。

 勿論それを見ないという選択肢はあるのだが、聞こえてくる声までは遮断する事は出来ない。

 その結果、スラルは実は興味津々で二人のSEXを見ているのだ。

 NC期となってから久々の、大きく柔らかいベッドでのSEXにはレダも興奮しているらしく、その普段の様子からは考えられないように情熱的だ。

「まーおー!」

「…お前はこの光景を見ても何も思わないのか」

「まお?」

 自分の問いにも大まおーは首を傾げるだけだ。

 スラルは一度ため息をつくと、ランスの剣の中に姿を消す。

 消すのだが、結局は2人の情事が気になって覗き見してしまうのだった。

 

 

 

「…魔王が変わっても世界は変わらないか」

 一人の美しい女性──―魔人ケッセルリンクは上空に浮かぶ月を見ながら一人ため息をつく。

 新たな魔王ナイチサは、魔王になるなり早々とスラルの城を放棄し、北の方へと移動した。

 数多の魔物兵達もナイチサに従い、北へと移動をしている。

 魔人も例外では無く、自分も北へと移動済みだ。

 こうして自分が人間界にいるのは、魔王ナイチサがあまり自分に命令をしないからに過ぎない。

(無理も無い事かもしれないがな)

 自分が本領を発揮するのは夜であり、魔王からしても扱いにくい存在なのかもしれないとも思う。

 カミーラ等は今は自由に動けなく、内心は相当なストレスを抱えているだろう。

 その辺は使徒である七星が上手く発散させているのだろう。

「しかし使徒か…」

 こうしてケッセルリンクが人間の地に来ているのは、カミーラとの話からだ。

 

「ケッセルリンク…貴様は使徒を作らないのか」

「突然だな。しかし前にも言ったが、今はあまりその気は無いな」

 カミーラとは意外と話が合う事がわかり、共通の話題もあるために互いに行き来する仲になっていた。

 その時に振られるのがやはり使徒の話だった。

「スラルはもういない…お前も義理立てする必要もあるまい」

「確かにスラル様は魔王では無くなったが、それでもスラル様は存在している」

 魔王スラルが消滅してから一年…それはあっという間だった。

 しかし魔王が変わってもカミーラは何も変わらない。

 自分はどうなるかと思ったが、意外にも何も変わっていない事に気づく。

 それは、スラルがランスの側にいるからであり、ランスも今でもこの世界で生きている事が分かったからだろう。

「だがカミーラ…お前はどうなのだ? 今でもランスを使徒へと考えているのだろう。お前が動かないのは何故だ」

 ケッセルリンクの言葉にカミーラは苦い顔をする。

「私はそう簡単に動かしてはもらえぬようでな…恐らくは今の魔人で好きに動けるのはお前くらいだろう。夜にしか動けぬのが幸いしたな」

「そうか…そんな事になっていたのか」

 ケッセルリンクは昼間には動けないため、魔王ナイチサとも顔を合わせたのもまだほんの2回程だ。

 その肝心の魔王なのだが、聞いた話には北へと移動の時に人間を殺したとの事だ。

 残忍で凶悪な性格で、他の生き物は遊び道具程度にしか思っていない…が、同時に人間を放置している部分もある。

 二面性の強い魔王…それがケッセルリンクの持った感想だった。

「しかしランスを探しているのだろう。と、言ってもそう簡単には見つからないだろうがな」

「暇つぶしには丁度いい…私も新たな試みを試している。そういうのもいいだろう」

「そうか…ならば私も使徒の件…考えてみてもいいかもしれぬな」

「ランスがお前の使徒になる事を望めばどうする?」

 カミーラの言葉にケッセルリンクは一瞬言葉に詰まる。

 見ればカミーラは薄い笑みを浮かべており、どこか自分をからかうようにも感じられる。

 だから、ケッセルリンクも薄い笑みで応える。

「ランスが望めば…私の使徒にするだろうな。その場合は私を恨むなよ」

「ククク…貴様も言うようになった。その時は好きにすればいい…最も、あの男がそれを望むとは思わぬがな」

「分かっているなら聞くな」

 ケッセルリンクとカミーラは互いに薄く笑う。

 本来の歴史において、ケッセルリンクは主の消滅に多大なるショックを受けた。

 しかし、この世界においてはスラルは消滅せずに幽霊としてこの世界に留まっている。

 それ故にケッセルリンクにも大いに余裕があった。

 

「だがしかし…人間の世界というのもゴタゴタしているものだな」

 ケッセルリンクは魔人故に人とは思えぬ方法での移動を可能としている。

 夜にしか動けないのは難点だが、それらの町の空気はその肌で感じられる。

 今ケッセルリンクが居る所では、どうやら人同士の戦争が始まるらしい。

 人同士の争いはそう珍しい事ではない。

「さて…少しの間、ここに留まるとするか」

 ケッセルリンクは一人夜の闇に消えていった。

 

 

 ──天界──

 

「申し訳ありません、クエルプラン。あなたにこのような役目を押し付けてしまって」

「いえ、構いません。これが私の仕事というのであれば、やり遂げましょう」

「ではお願いします。あなたの本来の仕事の支障にはならないと思いますので」

「ええ…ではお願いします。システム神」




NC期に突入しました
この時期からようやく魔軍と人間が本格的にぶつかる時代に
少しは筆が進む…といいなあ

ナイチサの住処ですが、北の方であるヘルマン地方とさせて頂きました
そうでないと、藤原家が世界の半分を制圧なんて出来ないと思いました
ご了承下さい

各キャラの現在のステとかはやっぱり活動報告に記載した方がいいのでしょうかね
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