ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争⑯

「この辺か?」

 ランスは魔人がやって来るであろう方向を見ながら自分が隠れる場所を探す。

 今回の不意打ちはそれこそ失敗が許されない行動だ。

 なので流石のランスも少し慎重になっている。

 魔人に攻撃を当てられるのはランス…だけでは無いのだが、レンはなるべく自分の存在を隠したいとの事だった。

 ランスとしてもレンが無敵結界を無視出来るのは知ってはいるが、余計に魔人に狙われるのは嫌なので彼女の言葉を受けいれている。

「ランス、私が魔軍を引き受けても良いんだけど」

「ダメだ。お前の回復が無いとメイの奴がどうなるか分からんだろ」

「…そうだけどね」

 この中で最も回復魔法に優れているのは勿論レンだ。

 人間とは魔力が違うため、その回復量も遥かに大きい。

 神魔法LV2を持つ者が居れば話は別だが、生憎とそんな都合のいい者は存在していない。

「問題無いさ。私が引き受ける」

「通さないならお前でも構わん。だが、通した時はお前を殺すぞ」

「うむ、当然の言葉だ。だが、あのメイドの言葉によれば一個小隊すらも連れてこない様子。魔物隊長くらいならば私でも問題無く倒せる」

「どーでもいい。とにかくやるなら死ぬ気でやれ」

 ランスの言葉にもシロウズは特に気にすることも無く苦笑する。

「やってみるさ」

「フン、勝手にやってろ。ジル、お前もやる事は分かっとるな」

「はい。私はランス様のサポートを全力でします」

「うむ、まあお前はシィルよりも大分強いから問題無いか」

 ランスは今は隣に居ない奴隷の事を思い出す。

 もう離れてから大分立っているが、美樹に氷漬けにされていた時とは違い、元の時代に戻れれば必ず会えるのは分かっているので、JAPANの時のように不愉快な気分になる事は無い。

(シィルという人…私よりも前にランス様の奴隷になった人…)

 ジルもシィルという女の事はランスから聞いている。

 そしてランスが彼女を大切な人だと思っているという事も薄々分かっている。

 でもそれでもジルは構わなかった。

 ランスは自分にとってはかけがえのない人であり、自分の命を2度も救ってくれた恩人…いや、救世主だ。

 何よりも、自分との間に子供を作ってくれた人であり、ジルにとっても大切な人だ。

 子供は魔王ナイチサの手により殺されてしまったが、それでもランスとの間には大切な絆が有る。

 それが自分を繋ぎとめてくれた指輪であり、大切な思い出だ。

「でもレンさんの言っている事も分かるんです。もし魔人だけでなく、同時に魔軍の部隊まで来てたら…」

「その時はお前が吹っ飛ばせ。遠慮はいらん。全力でやれ」

 ランスの言葉にジルは驚く。

「いいんですか?」

「それしか無いだろうが。どの道魔人だけは俺様が絶対にぶっ殺すからな」

「…分かりました。ランス様は魔人にだけ集中して下さいね」

「当然だ。それ以外をどうにかするのがお前達の役割だろうが」

「あうっ」

 ジルの言葉にランスは彼女の頭を叩く。

 懐かしいやり取りにジルは叩かれた事よりも嬉しさの方が大きい。

 それにランスも手加減しているので、痛くは無い。

「問題は何時やって来るか、だな」

 そこにメイがやって来る。

「そこはエルシールに任せとけ。あいつならしくじらんだろ」

「ふむ…随分と信頼しているようだな。ケッセルリンク様の使徒とは顔見知りだと聞いていたが、どうやら只の顔見知りでは無いようだ」

 メイはランスがあのメイドの役割を全く疑って無いのを見て、楽し気な顔をする。

「どうやらかなりの修羅場を共に潜ってきているようだな。戦士特有の気の流れを感じるぞ」

「なんだそりゃ」

「お前のような男が無条件で他人を信じるとは思えない。出来ると言い切ったから信じた、そんな気がした」

「フン、そんなのでは無いわ」

 メイの指摘通り、エルシールはケッセルリンクのメイドの中では一番共に修羅場を潜り抜けた仲だ。

 藤原石丸とのJAPANでの戦いと、その石丸率いる人類軍と魔人の戦い。

 その激闘を潜り抜けただけあり、彼女の有能さはランスも理解している。

 統率力が有り、ランスとは戦いの付き合いが長いので、その辺りの事はよく分かっている。

「直ぐに俺もそうなる」

「は?」

「お前と共に居ると面白そうだ。その戦いの中で俺は更に力を増せるだろう。だから俺の名前を憶えておけ」

「いや、お前みたいな奴、そう忘れられる訳無いだろ」

 ランスの言葉にジルは思わず吹き出す。

 確かにランスの周りには居ないタイプの女性だし、彼女には女性とは思えぬほどの素晴らしい肉体が有る。

 それでいて女性の部分は失っていないし、カラーなので顔は当然良い。

 そんな存在をランスが忘れられる訳が無いだろう。

「俺は失敗しない。だからお前も失敗するな」

「何でお前が偉そうなんだ! 魔人を倒すのは俺だろうが!」

「その魔人の足止めをするのは俺だ。何ならどちらが強いか、一度確かめてみるか?」

「ほう。面白い事を言うな。俺様に勝てるとでも思っているのか?」

 二人は互いにニヤリと笑いながら顔を突き合わせる。

「あ、あのランス様…今はそんな事をしている暇は無いと思います」

「分かっとるわ。魔人をぶっ殺した後で思い知らせてやる」

「ああ、構わない。俺達がミスらなければ問題は無いからな」

 そう言ってメイは高笑いしながらランスから離れていく。

 それを見届けてランスは呆れたように声を出す。

「何なんだ、あいつは…」

「それは主を気に入ったからよ。アレはメイなりの主への信頼の証じゃな」

「あ、エアリスさん」

「メイはカラーの絶対的強者…呪いの腕は妾が上じゃが、身体能力ではメイの右に出る者は居ない。遥か未来でも、メイ程の強者が生まれるのは相当に先の事となろう」

「そんなもんか」

「主もカラーとの付き合いは長いじゃろうが、ケッセルリンク殿程の強さを持ったカラーを見た事があったか?」

「ケッセルリンクか…そう言われれば」

 エアリスの言葉にランスは考える。

 が、そこで眉を顰める。

「うーむ…どうしてもアイツの事が頭にちらつくな」

「アイツ、とは?」

「ベネットだベネット。あいつ、アホで残念な奴だったが強くはあったからな」

「うーむ…また判断に困る名を出しおって」

 ランスの言葉には流石のエアリスも頭を抱える。

 ベネット・カラーは確かに強かったが、あのカラーを強者と認めるのは何か負けなような気がしてならない。

 今でもランスが手を出したら負けと判断しているのがあのカラーなのだ。

「ま、まあとにかくメイはカラーの至宝よ。じゃから、そのメイを何とか生かして欲しい…それが妾の願いじゃ」

「そう簡単に死ぬ奴でも無いだろ。とにかく魔人は俺様がぶっ殺す」

「期待しておるぞ、ランス殿」

「がはははは! 俺様は美人の期待は絶対に裏切らんのだ!」

 

 

 

 夜―――

「がはははは! 爽快だな!」

「うう…ランス様、私凄い恥ずかしいです…」

「それは皆同じですよ、ジルさん…一人違う人が居るみたいですけど」

「それって私? 私はまあ別に…というか、付き合い長いしね」

「もう…ランス君って絶対大きな戦いの前にこういう事するのね」

 ランスは自分の女達を集めてハーレムプレイを行っていた。

 ジル、ハウゼル、レン、そしてシルキィを集めて何時ものように騒いでいた。

「ランスさんって、そんな事ばっかりしてたんですか?」

「うん…メディウサを倒しに行く時も前日なのにエッチな事してたし…」

 ハウゼルの疑問にシルキィも呆れたため息をつくしかない。

 普通もっと何かやる事があるだろうとも思うが、ランスは本当にそういう男なのだ。

「…これから大事な戦いがあるのにですか? 凄いですね…」

 ハウゼルはどうやら本気で感心しているようだ。

 魔人との戦いすらも、普段の戦いと変わらないかのような態度は正に人とは思えない。

 ランスは普通の神経では無いので、誰と戦う前だろうがこんなものだ。

 レンは完全に慣れたもので、早速ランスとキスをしながら胸を揉ませている。

「楽しめばいいのよ。こいつは毎回こんなものだし、それに世界の命運をかけてる訳でも無いしね」

「カラーの命運はかかってると思うんですけど…ひゃうん」

 何かを言いそうだったジルの胸をランスが鷲掴みにする。

「だから俺様が救ってやるんだろうが。そのための前祝いだ」

「魔人を相手にする前にそういう事をする事が信じられないって言ってるの。もう…ランス君、どうしてこんな風に育っちゃったのかしら」

 シルキィは呆れたようにため息をつきながらも、ランスの頭を撫でる。

「だからそれを止めろと言っとるだろうが」

「もう習慣みたいなものだしね。多分一生直らないと思う」

「そんな事を堂々と言うな! 徹底的にあへあへ言わせてやるからな」

 相変わらずのシルキィにランスは文句を言うが、そのシルキィも相変わらずニコニコとしているだけだ。

「…シルキィ、あなた本当にランスさんを弟のように扱ってるんだ」

 流石にこうして夜を共にはした事は無いので、シルキィの新たな一面を見てハウゼルは驚く。

 こういう状況でもシルキィは全くブレずにランスと接している。

 人間だった頃からこうだったと言っていたが、まさか誇張も抜きで本当にこんな態度だったとは…ある意味シルキィらしくて安心する程だ。

「フン、そんな態度が出来るのも今の内だからな。がはははは! しっかり楽しむぞー!」

 ランスは本当に自分の奴隷、そして本来は敵である魔人達と共に一夜を過ごすのだった。

 

 

 

 そして運命の日―――その日はとうとう訪れた。

 魔人マリーゴールドが居なくなったことで、魔軍の基地は安堵の空気が漂っていた。

「ようやく行ったか…忌々しい魔人め」

 魔物大将軍チューザレはようやくここから消えた魔人に対して憎々し気に呟く。

 この部隊にとってはあの魔人は厄介者以外の何者でも無かった。

 自分達の役割はあくまでも人間、カラーを相手にする気は全く無かった。

 魔王の命令があればカラーでも相手にするが、許可が取れているのは人間だけだ。

 カラーも人間に与しているのかもしれないが、そこまで調べる気は無いし、どうでも良い事だった。

 何よりも…

「あの魔人は消えた様ですね」

「…ええ」

 今自分の前に居る存在、魔人四天王であるケッセルリンクの使徒が目の前に居る、それが何よりも考慮しなければならない事だった。

 使徒エルシール、あの魔人ケッセルリンクの使徒だ。

 使徒とは魔物大将軍よりも位が高い。

 何しろ使徒とは魔人から血を与えられた存在、魔物大将軍より弱くともそれでも地位が上なのだ。

 勿論それは魔物大将軍からすれば面白くは無いが、相手はあの魔人四天王の使徒だ。

 だが、何よりも気になる事がある。

「…宜しいのですか?」

「何がですか?」

「いえ…魔人様がカラーの所へ向かわせた事がです」

「ああ…その事ですか」

 チューザレの言葉にエルシールは薄く笑う。

「私達が誰の命令で動いているか、それは明らかでしょう」

「…まさか!?」

「そういう事です」

 エルシールの目は暗にこう伝えていた。

『これ以上詮索すれば命は無い』、それはつまりは彼女より上の存在の言葉だ。

「では私は消えます。後はお好きになさって宜しいですよ」

「…はっ」

 そう言って本当にエルシールはチューザレの前から姿を消す。

 同時にチューザレの体から冷や汗が流れるのが止まらなかった。

「まさか…あの方が帰還されたのか」

 魔人ケッセルリンクは先代魔王ジルの命令で何処かへと向かっている、それは魔軍の間では有名な話だ。

 それは異世界だのと色々と言われているが、分かっているのはケッセルリンクは魔王に重用されている存在だという事だ。

 そのケッセルリンクが使徒を動かして、魔人の1人をカラーの森へと誘い込んだ。

 その意味が分からない程チューザレは無能ではない。

「…粛清、か」

 ゴクリと息を呑む音が響く。

 魔人ケッセルリンクの目的は唯一つ、カラーの命を狙う魔人マリーゴールドを秘密裏に始末する…そういう事なのだろう。

 そのために使徒が動いている、チューザレはそう考えた。

 実際は間違っているのだが、凡その所では間違っていない。

 ケッセルリンクは実際にカラーに手を出そうとするマリーゴールドを始末したいのだから。

「まあいい。この戦争には関係の無い事だ。マリーゴールドは知らぬうちに姿を消す…それだけの事」

 チューザレはそう自分に言い聞かせ、次の戦争の準備を始めるのだった。

 

「さて…後はランスさん達次第ですが…まああの方なら問題無いでしょう」

 エルシールは魔物達の基地から離れ、シャロン達と合流すべく動き始める。

 誰もエルシールの行動を咎める者はおらず、自由に行動できるのはやはり彼女が使徒だからだ。

「エルシール」

「エルシールさん」

「シャロンさん、バーバラ」

 そして目的の人物と合流する。

 これからまだやる事は無数にあり、そのためにも素早く報告はしなければならない。

「動きました。バーバラは急いで連絡を」

「はい、エルシールさん」

 バーバラはエルシールの言葉を受けて直ぐに動く。

 マリーゴールドがペンシルカウに向かう前に間違いなく報告できるだろう。

 これで自分達の役割は一応は終わりを告げた。

 が、やはり問題という物はどうしても出てしまう。

「…殺姫の様子はどうですか?」

「多分動いてるでしょうね…私が下手に監視するといらぬ要素を招きかねないので、予想するしか無いですけど…」

「流石の使徒でもあの魔物を欺くのは難しいですか…」

 シャロンの言葉にエルシールは苦い顔をする。

 殺姫はバトルノートの突然変異種だが、その頭脳はやはりバトルノートらしく非常に切れ者だ。

 だからこそ、迂闊な動きをして変に悟られる訳にはいかなかった。

 ランス達に報告はしたが、それでも彼女の動きに関してはランス達に任せる以外に無い。

「後は任せるしかありません」

「そうですね…問題なのはやはりマリーゴールドの方ですから」

 二人は顔を見合わせ、直ぐにでも行動を開始するのだった。

 

 

 

「フッ、ようやく快楽主義の豚が動いたか。随分と素早いな。まるで何かに誘われているかのようだ」

 殺姫は魔人マリーゴールドが動いた事に笑みを浮かべる。

 その笑みはやはり禍々しいが、それを指摘出来る者は誰も居ない。

「さて、我等も動くか」

「宜しいのですか? 姫様。姫様は一応は魔物将軍と同格の権威は与えられています。もう少し数を増やしても…」

 殺姫にそう進言した魔物隊長だが、殺姫の顔を見て体を振るわせる。

 そこには『お前は何を下らない事を言っているんだ』と言わんばかりの顔がある。

「クックック、何故そんなつまらん真似をしなければならぬ? 楽しみが減るじゃ無いか」

「…は、はい」

 殺姫にあるのは魔軍という軍団ではなく、自分が楽しむために行動をするという一点のみ。

 自分が楽しめれば他の者がどうなろうが、軍がどうなろうが知った事では無いのだ。

 それ故に他の者達からは恐れられ、疎まれてはいるのだが、文句を言える奴など誰も居ない。

 普通なら女の子モンスターであるが故に、男の子モンスターから凌辱されるような展開もあるかもしれないが、突然変異種のモンスターなので性的に狙われる事も無い。

 それに何よりも、この殺姫に対して暴力的な行動を取ろうと思う者も居ない。

(うう…これが殺姫様の迫力…最強の『女の子モンスター』…)

 そう、彼女こそ魔物界の最強の女の子モンスターなのだ。

 だが、魔物達の間にはこんな逸話がある―――魔物大将軍ですら手を出せない程の強さだと。

 だからこそ彼女を指揮系統の異物とみなしながらも、誰も文句を言えないのだ。

 ここの担当の魔物大将軍であるチューザレでさえ、殺姫に対して何も言う事が出来ずにいた。

「さあ、行くぞ。奴等を追ってカラーの住まう森へ」

「「「ははっ!!!」」」

 殺姫の言葉に魔物兵達は一斉に跪くのだった。

 

 

 

 運命の朝―――

「よーし、今日に決まるな」

「そ、そうですね、ランス様…」

 乱交の翌日―――いや、明け方までやっていたのでジルはまだ少々寝不足だった。

 だが、ランスは気力十分と言わんばかりにつやつやとしており、元気いっぱいだ。

「相変わらず元気ね、ランス君」

 一緒に乱交をしたはずのシルキィだが、彼女も元気ハツラツだ。

(シルキィさん…あんなにエッチな事してたのに…)

 シルキィは英雄色を好むという言葉がしっくり来るくらいにランスとのエッチに積極的だった。

 この中で一番セックスをしてたのも間違いなく彼女だろう。

「さて、いよいよね」

 レンもすっきりしたと言わんばかりに着替えている。

「もう…ランスさん、本当にエッチ過ぎます。今日が決戦なのでしょう?」

 ハウゼルも呆れた様子でランスを見ている。

「さて、これが私からの贈り物ね」

 シルキィが昨日から持ってきていた箱を開ける。

「これは…」

「そう、頼まれてたランス君達の防具。私の付与の力を使って作った逸品のつもりよ」

 そこにはランス達のためにシルキィが作った防具の一式が入っていた。

 と、言ってもシルキィが普段身に纏っているリトルのようなものではなく、人間に合わせた一般的な防具。

「じゃあ合わせていくわね」

 シルキィはそう言って瞬く間にランスに服を着せ、それに合わせて防具もつけて行く。

 その行動は非常に手馴れている。

 流石にビスケッタ程では無いが、これが姉力とでも言っても良いのか分からないが、とにかくあっという間だ。

「どう? ランス君」

 シルキィの用意した防具を装備し、ランスは少し体を動かす。

「…悪くない」

「そう、良かった」

 ランスの言葉にシルキィは笑みを浮かべる。

 ランスがそう言うという事は気に入ってくれているという事だ。

「私がリトルに使っている材質と同じのを使ったからね」

 材質はシルキィは全く手を抜かず、それこそ本気で作ったモノだ。

「ただ、やっぱり時間がね…もっと時間が有ったら、それこそ全身鎧を…」

「いらんいらん。大体人間の俺様が装備出来る訳無いだろうが」

「…姉弟揃って同じ鎧とか結構憧れてたんだけど」

「アホか。そもそも勝手に俺様の姉を名乗るな。姉を名乗る不審者になってるだろうが」

 ランスはシルキィに頼んだ胸当て、腕、足の防具に触れ、ニヤリと笑う。

「よーし、これで準備は出来たな。魔人をぶっ殺すぞ」

「は、はい」

 ランスの言葉にジルも気を引き締めて返事をする。

「で、これがジルのね」

 シルキィはジルの為に作った服、そして杖をランスの時と同じように手馴れた様子でジルに着せる。

「あ…これ、凄いです。私にぴったりです」

「ジルはスタイルがアンバランスだから…作るのに苦労したわね」

「そうだな。お前は貧しいからな」

「大きなお世話よ!」

 ランスの軽口に対してシルキィは軽くランスを睨む。

 今のジルはまだシルキィよりも身長は低いが、その違いは大きな胸だ。

 スタイルの差が大きすぎるので、シルキィもサイズを合わせるのに苦労させられた。

「さて、行くとするか」

「私達は手出しは出来ませんけど…ランスさん達なら大丈夫だと信じています」

「当然だ。とっとと終わらせるぞ」

 ランスは黒い剣を掴む。

 そこからは凄まじい熱気と冷気を感じ取れる。

「さーて、とっとと終わらせるか」

 それはこれから魔人と対峙するという緊張感からは無縁の言葉だった。

 

 

 

「ここからがカラーの連中のたまり場だそうです」

 魔物隊長が恐怖で震えながら案内をする。

 そこに居るのは巨躯の女の魔人―――ただし非常に不細工な女が居る。

「そう、ここがカラーの」

 魔人マリーゴールドは醜悪な笑みを浮かべる。

 それを見て魔物兵達は背筋を震わせる。

 確かに自分達も人間を苦しめて楽しみたいが、この魔人の嗜虐性には魔物達ですら呆れるほどだ。

 それでいて短気で粗暴、好かれる要素が全く無い褒める所の無い存在だ。

「では私が行くわ。あなた達は後から来なさい」

 そう言って魔人マリーゴールドが歩いて行くと、その姿が忽然と消える。

「こ、これは!?」

「た、隊長!?」

「慌てるな! 魔人様がカラーの隠れ里に入ったというだけだろう」

 魔物隊長は困惑する魔物兵達を押さえる。

(…しかし何故あの方はあの魔人を案内したのだ?)

 魔物隊長にペンシルカウの存在を教えたのは使徒であるエルシールだ。

 何故そんな事をするのかは分からないが、あの使徒は上の指示だと言っていた。

「では隊長、我々も…」

「う、うむ…」

 部下の言葉に隊長も動こうとしたとき、大きな木の陰から一人の男が現れる。

「魔物隊長率いる魔物兵…数は20程。魔人が率いるにしては随分と少ないな」

「だ、誰だお前は!?」

「み、見るからに怪しい奴め!」

 魔物兵達はその男を見て動揺する。

 まあそこから仮面を被ったアフロの男が現れれば無理も無いだろう。

「ペンシルカウに入りたいのならば…私を倒してからにしてもらおうか。尤も…このシロウズ・亜空を倒せるのならばな」

 

 

 

 ペンシルカウに入ったマリーゴールドには嗜虐的な笑みが浮かんでいた。

 ここから行われる殺戮に酔っているのは明らかだ。

 が、その顔が歪む。

 視界に腕を組み待ち構えている1人の女の姿を見たからだ。

「お前が魔人か」

「…あら、あなたは?」

「俺が誰かなんかはどうでもいい。俺の目的はお前を倒す事。それだけだからな」

 カラーの女―――メイトリックスは背中から大きな剣を抜くと構える。

「来い、魔人よ。俺が相手になってやろう」

 




すいません風邪をひいてしまい投稿が大分遅れました
完治したのでこれからはもっと早くに投稿できるように頑張ります
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