「始まりますね」
「うむ…しかし…」
ランスとジルは木の裏に隠れ、メイトリックスとマリーゴールドの対峙を見ていた。
何時でも不意打ちが出来るようにランスは神経を集中させるべく動こうとしていた。
「…不細工だな」
「…ま、まあ女性の魔人の中では容姿は不十分だとは思いますけど」
ランスのストレートな言葉にジルは何とか言葉を選ぶ。
が、どんなに擁護しようが不細工は不細工だ。
ランスからすればおしおきセックスをしようとすら思わない、ただ只管に殺すという事を実行するための存在に成り下がった瞬間だった。
「うーむ、女の魔人はどいつも美人だったんだがな…いや、あのクソ蛇は別だが」
ランスはメディウサだけは本当に無慈悲に殺した。
どんな女でもおしおきセックスをしていたランスだが、メディウサだけはランスは許さなかった。
魔人マリーゴールドはそのメディウサと違って美人じゃ無いので、ランスとしても殺す事に躊躇いは無い。
「お前の顔を見せろ。あんな奴を見てるとダメージを受ける」
ランスはジルの顔を掴むとその顔をじっとみる。
「うむ、ダメージが回復したぞ」
「あ、あの…ランス様…そろそろメイさんの事を…」
「そうだな。あんな筋肉ババアはとっとと始末してズバッとセックスだ」
そう言ってランスとジルはメイトリックスと魔人マリーゴールドの戦いを注視するのだった。
「魔人か…初めて相手にするが、楽しそうだな」
そう言ってメイはニヤリと笑う。
それを見てマリーゴールドは不快そうに眉を顰める。
「魔人を相手に偉そうに良く言う。不愉快ね」
「お前の都合など知った事じゃない。俺にとって重要なのは、お前が強いかどうか、それだけだ」
メイは剣を構えマリーゴールドを強く睨む。
それを見てマリーゴールドは鼻で笑う。
相手は所詮は魔人ではない。
そしてその手に有るのは無敵結界を無効にできるカオスと日光でも無い。
つまりは相手は自分にダメージを与えることは出来ない。
それなのに何故こうまで自信に満ち溢れているのか―――それが不快だった。
魔人である自分に媚び諂うか、土下座して命乞いをする、それこそがマリーゴールドの歪んだ望みなのだから。
「さあ、始めようか」
「始まる? フフ、お前の命乞いがか」
そう言いながら巨漢の女二人がぶつかるのだった。
「おおおおおおおお!!」
シロウズは光り輝く剣を抜くと、そのまま一直線に魔物兵へと向かって行く。
「たかが人間一匹だ! 嬲り殺しにしてやれ!」
魔物隊長の言葉に魔物兵はニヤニヤとしながらシロウズに向かって行く。
所詮は人間一人、これだけの数の魔物兵相手にどうする事も出来ないというのが魔物兵の共通認識だった。
相手が闘神や闘将ならば話は別だが、所詮は生身の人間、相手にすらならないと思っていた。
「見せてもらおうか、魔物兵の実力とやらを!」
シロウズは光り輝く剣を構える。
「我が亜空家に伝わるこのbiimサーベルの力…その身をもって味わってもらうぞ!」
「ぎゃあああああ!」
光り輝く剣は魔物兵を容易く斬り裂く。
「な、何だと!?」
魔物隊長は部下の魔物兵があっさりと倒された事に驚愕する。
事実、魔物兵は1体でも人間の騎士3人が必要となるくらいに戦力差がある。
しかし、人類の中にはそれをひっくり返す者達が生まれる。
このシロウズもその中の1人だ。
「攻撃だ! 攻撃しろ!」
魔物隊長の言葉に魔物兵達がシロウズに殺到する。
今回連れてきた魔物兵の中には魔法魔物兵は存在していない。
その偏った人選が魔物隊長の首を絞めていた―――そもそも魔人が一緒に居ればこんな戦争は存在しなかったのだから。
「当たらなければどうという事は無い」
魔物兵の斧をシロウズは簡単に避け、カウンターを決めていく。
その一撃だけで魔物兵の体が斬られ死んでいく。
「ば、馬鹿な…!? 人間如きが!?」
「フッ、その人間に負ける…それを考えてもいないお前達が悪い」
シロウズの剣は容易く魔物兵の命を狩って行く。
その剣の腕前はまさに見事というしかない。
それこそあのリック・アディスンと比較しても良いくらいに。
「ぐぎゃあああああ!」
「ぐべええええええ!」
そして最後の魔物兵が斬られて死ぬ。
それを見て魔物隊長は即座に撤退する事を判断する。
それは当然の事であり、決して非難される行動では無いだろう。
問題なのは―――それを見ていた者の存在だ。
「クククククク! 何処へ行こうというのかね? マリーゴールドの部下の貴様が」
「な…何を!? グハッ!」
魔物隊長が声の主の方を向くが、その顔に向けて足が放たれる。
それだけで魔物隊長の顔面が陥没し、地面に倒れて悶絶する。
「お、お前は…」
顔を押さえながら魔物隊長は自分を蹴った存在を見上げる。
そこには赤黒いドレスを纏い、その手には申し訳程度に扇を持った女の子モンスターが存在していた。
「殺姫…何でお前がこんな所に!?」
その姿を見て魔物隊長は驚愕する。
殺姫は魔物達の間でも有名な―――戦争狂であり、最強の女の子モンスターの名を冠した、戦争でありながらも魔物スーツを着る事を免れた存在。
魔物大元帥直々に自由な行動を許可された、まさに最強クラスのモンスターであり、指揮官でもあるのだ。
だが、その名は悪名の方が高く、同じ魔物兵からは決して良く思われていない。
同時に手を出すのも躊躇われる、そんな微妙な存在だった。
ただ一つ分かっているのは、自分が楽しむためには手段を選ばない、生粋の戦争狂だという事だけだ。
「ここに居て悪いか? どんな行動をしようが自由、それが我が立場だ。それが許されるのは強いからだ。それ以上の理由は無い」
そう言って殺姫は魔物隊長の体を踏む。
それだけで鈍い音がして、魔物隊長の体から嫌な音が響く。
「たかが人間一人に倒される、まさに魔物の恥さらしよ。そんな奴に生きている価値は無いだろう? だから直ぐ楽にしてやる」
「や、やめ」
「死ね」
「ぎゃああああああ!」
そして更なる鈍い音と共に、魔物隊長の体がひしゃげた。
殺姫は乱暴に魔物隊長の体を蹴とばすと、自分に対して最大限の警戒をしているシロウズを見る。
「やるじゃないか、人間。ここまで強い人間は初めて見たかもしれないなあ。が、流石に闘将には及ばないがな」
「その言葉から察するに、闘将とも戦った事があるという事か」
「無論、闘将だけでなく闘神ともな。流石に魔人とも渡り合える闘神には勝てないが、その下の闘将ならば何体か潰した。中々楽しいオモチャだ」
その言葉にシロウズは唇を歪める。
目の前の存在は本当に強い、それを思わせる空気がビンビンに立ち上がっている。
「さて、マリーゴールドはどうなっているかな? それが非常に楽しみだ」
そう言って殺姫は本当に楽しそうに、そして禍々しい笑みを浮かべるのだった。
カラーと魔人の戦い―――それは本来は無謀なモノでしかない。
いや、そもそも魔人との戦いが無謀という他無いのだ。
これまで魔人を倒して来たパイアールもガイも、それぞれ並外れた技能を持っていたからこそ倒せたのだ。
そしてそれはランスも同じ、彼もまた並外れた力を持っているからこそ魔人を倒せてきた。
「ランス様…本当にメイは大丈夫でしょうか」
「知らん。そもそも相手の魔人が本当に弱いかどうかも分からんからな」
エルシール達は魔人マリーゴールドを『魔人』としては大したことは無いと言っていた。
が、それは比較対象がケッセルリンクだからかもしれないし、もしかしたら何か特殊な能力を隠し持っているかもしれない。
ランスがこれまで戦って来た魔人の中にも、非常に厄介な特殊能力を持っている者が沢山居た。
アイゼルは強力な洗脳能力を、ジークは魔王ジルにすら変身して見せた。
メディウサも相手を石化させる能力も持っていた。
ノスやザビエル、カミーラといった純粋に『強い』魔人も居るが、それらは何れも四天王級の力を持っている存在だ。
「だが…確かに大した事無さそうだな」
ランスは魔人マリーゴールドを見てそう判断する。
「そうなんですか?」
「うむ、これまで魔人とは嫌という程戦ってきたが、そいつらに比べると全然だな」
「ランス様の基準が魔人カミーラだからだと思うんですけど…」
「そのカミーラに比べて数段劣るといっとるんだ。それに腕力だけならもっと厄介な奴も居たしな」
ランスがメイとマリーゴールドの動きを注視していると、ついに場が動いた。
互いにランスを超える巨漢の女がぶつかる。
だが、問題なのは相手が魔人だという事。
メイの凄まじい一撃は無敵結界によって阻まれる。
「! 無敵結界…これか」
マリーゴールドがメイトリックスに向けて拳を放つが、メイはそれを回避する。
その動きを見て、ランスはニヤリと笑う。
「ランス様?」
「うむ、アイツは確かに雑魚だな。無敵結界があるだけの普通の魔人だな」
「普通の魔人、ですか?」
「動きを見れば分かる。アイツは戦いは素人だな」
魔人の強さの大半は勿論無敵結界だ。
それがある限りは、どれだけの強さが有ろうが魔人を傷つけることは出来ない。
例え実力差があろうとも、魔人を傷つける事が出来なければ意味は無い。
ランスであっても、カオスが無ければ魔人相手には無力だったのがその証拠だ。
「でもランス様。メイさんでは魔人には勝てないですよ」
「だから俺様がぶっ殺すんだろうが。黙って見てろ」
ランスは二人の戦いを見る。
確かにメイは強い―――ランスから見てもそれは明らかだ。
正直に言えば、ランスが強いと認めているリックすらも上回るだろう。
剣の腕だけならばリックが上かもしれないが、メイには弓も魔法も呪いもある。
そしてフィジカルに関しては、リックよりも上回っているかもしれない。
だが、それでも魔人相手には意味の無い事なのだ。
「やっぱりダメですね…メイさんの攻撃は相手に届いていません」
「当たり前だ。俺様なら話は別だがな」
「…無敵結界の上から相手を衝撃だけでふらつかせるランス様と一緒にするのは可哀想だと思います」
ランスの剣は例え無敵結界の上からでも魔人に衝撃を与えられる程だ。
無敵であるはずの無敵結界でも、その上からの衝撃までは無効にすることは出来ない。
ただ、そんな事が出来るのはそれこそLV3技能の持ち主である藤原石丸か、ランス位のものだろう。
だがその技能の持ち主でも、無敵結界の前には勝つことは出来ない…それが魔人という存在なのだ。
だからこそランスも無敵結界を何とかするために色々と苦心していたのだ。
「フン、やはり無駄に硬いな。無敵結界は」
「フフフ、どれだけ攻撃をしようが無意味。あなたの剣はこの私の体を揺らす事すら出来ない」
「フッ、生憎と無敵結界は必ずしも無敵では無い事を知っている。そして俺ならば、あの極致に辿り着けるはず!」
メイは魔人相手にも果敢に攻撃を続ける。
「光の矢!」
魔法を、弓を、剣を使い魔人相手にも一歩も退かない。
その力はまさに強靭な戦士と言うべきもので、ランスですらもその強さには感心する程だ。
「うーむ、予想以上に強いな、アイツ。まさかここまで食いつくとはな」
「そうですね…私も人間…では無いですけど、ここまで魔人と戦える存在はランス様以外には知りません」
「それはどうでもいいが…退屈だな」
ランスは二人の戦いを注視しているが、いい加減退屈になって来た。
もっと手っ取り早く隙が出来ると思ったが、意外とそのタイミングが来ない。
ランスが狙っているのは言葉通り『必殺』のタイミングだ。
ただ相手を傷つけるための奇襲ではなく、この一撃で相手を殺すか致命傷を与えるタイミングを虎視眈々と狙っているのだ。
確かにマリーゴールドは隙だらけではあるが、それでも今ランスが襲撃しても致命傷になるかは難しい所だ。
ランスの剣は無敵結界を無視出来るが、解除も出来ないし再生能力も殺せない。
なので絶対にこの場で相手を殺す必要があるのだ。
そのためのチャンスがまだ巡ってこない…言い換えれば、メイはそれだけ魔人相手に粘っていると言えるし、マリーゴールドも完全に相手を見下して舐めプをしているという事でも有る。
なのでランスとしては非常に退屈な状況になった。
「ラ、ランス様…それだとメイさんが…」
「死ぬような事は無いだろ。レンだって見てるだろ」
いざとなればレンが出てきてメイを救う手立てになっている。
ただ、そうなる事は無いだろうなとランスは見立てている。
「フン、奴には調子に乗って貰った方が良いからな」
ランスはニヤリと笑いながらジルを抱き寄せる。
「ラ、ランス様?」
「暇だから楽しませろ」
そう言ってランスはジルの胸を揉み始める。
「い、今はそんな事は…あんっ」
ジルの抗議を無視してランスはその胸を服の上から触る。
「大声を出すなよ。気づかれるかもしれんぞ」
「そ、そんなランス様…」
何とか声を出さないようにジルは必死に声を押さえる。
自分の口に手を当て、体を動かさないようにして震えている。
ランスはそんなジルの気持ちなんて考えないようにその大きな胸を揉む。
服の上からでも分かるジルの巨乳、これでもまだ発展途上だというのだからランスとしても将来が楽しみだ。
むにむにとジルの胸を揉むうちに、とうとうランスは服の中に手を伸ばした。
「んんっ!」
その刺激にジルは必死に自分の口を押えるしかない。
まさかランスがこんな事をしてくるなんて思っても居なかったし、それでも敏感に感じてしまう自分に驚いもいる。
そしてランスがその先端に手を伸ばそうとした時、ジルの頭がランスの顔に突き刺さった。
「うげ!」
「いい加減にしろ! こんな事をやってる場合か!」
ジルの口からランスを叱責する声が出てくる。
「スラルちゃんか。何をする」
「それはこっちのセリフだ。こんな時に何を考えてるんだ。あ、いやお前はそういう奴だったな」
スラルは呆れたように過去を思い出す。
まだ自分が魔王だった頃、ランスを捕らえて閉じ込めては居たのだが、その時にもランスは全く緊張感が無かった。
それどころか、レン、ケッセルリンク、そしてカミーラとセックスをしていたくらいだ。
普通の人間では無いのは分かっていたが、流石に今はそんな時じゃ無いとスラルは思う。
ジルもジルで抵抗しないので、こうしてスラルが実力行使をするしか無かった。
「それよりも見てみろ、そろそろ事態が動くぞ」
「そんなの分かっとるわ」
ランスはメイとマリーゴールドの戦いを見る。
そこでは激しい戦いが繰り広げられている。
「おおおおおおおおおおお!」
メイは雄たけびを上げてマリーゴールドに斬りかかる。
「効かないと分かってよくやる…」
その体はマリーゴールドの攻撃を受けたため、あちこちに傷が出来ている。
マリーゴールドの攻撃方法は現状は手と足だけだ。
魔法や特殊能力のようなモノは持っていないようだ。
技術に関してもそうでも無い様で、メイも傷を負っていてもまだ立てている。
立ててはいるが、やはり相手は魔人…無敵結界があるのでダメージは与えられていない。
流石にランス程の力と技が無いので、衝撃で相手をふらつかせる事も出来ない。
それでも、メイは全く諦める素振りは見せない。
それがマリーゴールドには不満…気に入らなかった。
「無様ね。勝てないと分かっていてもあがくその姿…見苦しい」
その言葉にメイは笑う。
「俺からすればお前の方が余程見苦しい。たかがカラー1人倒せぬくせにな」
メイは分かっていて敢えて挑発する。
この戦いでもう相手の性格は十分に分かっている。
(こいつは戦士ではない。魔人という力で敵を踏みにじりたい、ただそれだけの存在だ。だから、自分より下と認識した相手にこう言われて穏やかではない)
その認識の通り、マリーゴールドには明らかに怒りの色が見える。
「…もういいわ。さっさとお前を殺し、カラーを皆殺しにするとしましょう」
そして嗜虐的な笑みを浮かべると、メイへと無造作に向かって行く。
「フン!」
メイはそれをあえて真っ直ぐに迎え撃つ。
その一撃はやはり無敵結界に阻まれるが、構わずにメイは攻撃を仕掛ける。
例え相手に効かなくとも、それでも良いと言わんばかりに攻撃を叩きこむ。
「うるさいわね」
マリーゴールドはそんなメイの攻撃を鬱陶しそうに払いのける。
それだけでメイの体がふらつき、そこをマリーゴールドの強烈な平手打ちが叩きこまれる。
「グハッ!」
その一撃はメイの体を吹き飛ばし、メイはその衝撃に吐血して倒れる。
倒れたメイに近づいたマリーゴールドは、その胸に足を乗せる。
「無様ね。お前の抵抗はまるで無意味。でも楽しかったわ、虫のあがきも」
そのままメイの体を踏みつぶすべく、その胸に向かって足を向ける。
「フン!」
メイはその足を手で掴む。
「あら、まだ足掻くの? まあ楽しいからいいけど」
マリーゴールドはあえてその状況を楽しみ、メイの腹部にその足を乗せる。
「ぐはっ!」
その一撃でメイは吐血するが、その手はマリーゴールドの足を離さない。
「フン、まだ抵抗する。いいわ、もっと滅茶苦茶にしちゃいたくなる」
マリーゴールドは本当に楽しそうに、愉悦の笑みを浮かべる。
その笑みは醜悪で、まさに人を蹂躙する魔人という存在そのものだった。
だが、それを見ても尚メイは笑う。
「ククク…本当に魔人というのは面白い。勝てる戦いを平気でドブに捨てる…戦士として三流だ」
メイの言葉にマリーゴールドは眉を顰める。
この状況でも尚も強気の態度を崩さないメイの言葉が不快になっている。
このカラーは圧倒的な実力差に命乞いをしなければならないのだ。
それなのに、今もこうして笑う―――それが非常に不愉快だった。
不愉快だったが、もう戦いは終わったのだ。
「負け惜しみね。まあもう少し楽しもうかしら。まずはその手足からへし折ってあげるわ」
マリーゴールドはそう言って足を上げようとするが、メイは全力でその足を掴む。
それは攻撃では無いので、無敵結界に弾かれる事は無い。
もう勝負はついた―――それは事実だ。
メイももう今この魔人の足を掴むくらいしか出来ない。
マリーゴールドもそれを分かっており、それでもメイを苦しめるべく足を上げた時、
「死ねーーーーーーーーーっ!!!」
背後から声が聞こえたかと思うと、マリーゴールドの胸から一本の剣が突き出ていた。
「…え?」
「がははははは! 隙だらけだ!」
ランスはマリーゴールドに突き刺した剣を捻り、その傷口を広げていく。
「な、なんで…」
マリーゴールドは無敵結界が発動していない事に茫然としながら、その凄まじい痛みを自覚する。
「ぎゃあああああああ!」
まるで体の中から焼かれるのと同時に、凍らされるような言いようの無い痛みが襲ってくる。
ランスはそんな事はお構いなしにその傷口を広げていく。
その剣が心臓を斬りつけようとした時、魔人としての本能かマリーゴールドは凄まじい力でランスを跳ね飛ばした。
「うおっ!?」
流石のランスもその衝撃には驚くが、その力はシルキィに比べると大したことない。
「フン、どれだけ暴れようがもうお前は終わりだ。とっとと死ねーーーーーーっ!!!」
ランスはマリーゴールドに斬りかかる。
マリーゴールドは何とか避けようとするが、心臓近くを貫かれたために体が上手く動かない。
そしてランスの剣は容易くマリーゴールドの腹部に突き刺さった。
「な、そ、そんな…無敵結界が…!?」
「そんなもの、こいつの前には全く役に立たんわ!」
ランスは腹部を斬り裂き、マリーゴールドに蹴りを入れる。
が、流石にその蹴りは無敵結界によって弾かれる。
「うーむ、やはりコイツじゃ無いとダメか」
マリーゴールドは問題無く無敵結界が発動している事で更に混乱する。
そんなマリーゴールドに向けてランスは剣を向けて告げる。
「まあいい。どうせお前はここで死ぬからな。女を虐める奴は許さん。ぶっ殺す!」