ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争㉒

 翔竜山―――世界最高峰の山にしてドラゴンの住処。

 冒険者にとっては意味のある山だが、一般の人間にとっては危険な所だ。

 LP期になって色々と整備されてはきているが、今の時代は正に未開の地だ。

「ランス様、本当にドラゴンと協力出来るのですか?」

「あいつらに出来て俺様に出来ない訳無いだろうが」

 ジルの疑問をランスはあっさりと斬り捨てる。

 実際、魔王ククルククルとの戦いと、魔軍との戦いにもカインは介入してきた。

 今のドラゴンの中でも魔物に対しては凄まじい敵意を持ち、その気性はククルククルの時代から変わっていない。

 ある意味取り残されたドラゴンであり、異端であるのは間違いない。

 そしてカミーラに対して今も執着している部分もある。

 カミーラに興味を失ったのがドラゴンだが、そのカミーラを今でも求めている。

 今でもカインの中ではカミーラはドラゴンの王冠なのだ。

 だからこそ、カミーラはそんなカインの事をうるさいと思っているのだろうが。

「それにしてもドラゴンの住む山か…まさか私の人生でここに来ることになるとは思わなかったな」

「…お前、なんで居るんだ」

「フッ…私は人間だからね。あまりカラーの所には馴染めていない」

 そう言うのは巨大なアフロを持った変人、シロウズ・亜空だ。

「やはりカラーは人間に対して排他的なのは間違いない…無論、カラーの一族の事情を聞いて理解は出来るのだがね」

「………お前は別の意味で変な目で見られてるだけなのだがな」

 自嘲するシロウズに対し、メイは呆れた顔でシロウズを見ていた。

「それにしてもメイ、あなたの同行がよく許されたわね。カラーの防衛の要なんでしょ?」

「魔人の撃破もそうだが、魔人ハウゼルとシルキィの登場によりカラーの安全は確保されつつあるからな。だったら俺はカラーの未来のため、今から動いた方が良い。それ故に始祖様も反対されなかったのだろうな」

 ランス、ジル、レン、シロウズ、メイの5人だけがこの翔竜山を登っている。

 本当はシルキィもついてきたがったのだが、流石に魔人がドラゴンの所に行くのは問題だと指摘され、今はペンシルカウで留守番をしている。

「てい」

「うおわああああああ!?」

 突如としてランスがシロウズを突き落とそうとする。

 シロウズは慌てて岩に掴んで何とか落とされないようにしがみ付く。

「大将!? 一体何を!」

「いや、お前邪魔だからな。大体男なんぞいらん」

「あの…ランス様、それはいくらなんでも酷いのでは…」

「シロウズは確かな強さを持つ人間だ。ついて来ても邪魔にはならないと思うが」

 ランスの言葉にジルとメイがフォローをするが、レンはその二人に対して呆れた声を出す。

「邪魔って別に戦力って意味じゃ無くて、男だから邪魔って言ってるだけよ」

「………成程、お前の乱痴気騒ぎを見て気づかなかった俺が悪いな」

「別に私は大将の邪魔をする気はないのだが…」

「フン、ついてくるなら足手纏いにはなるなよ。邪魔なら捨てるからな」

 翔竜山を登っていくランス達だが、そこにはやはり野良モンスターは居る。

 居るのだが、ランスにとっては敵にはならない。

 ただ、道が悪いのでどうしても時間がかかるというのが面倒なだけだ。

「それにしてもドラゴンか…かつてカラーがメディウサの手の者に襲われた時、ドラゴンがやってきて魔軍を蹴散らしたと聞いている。これから会うのはそのドラゴンか?」

「そんなのも伝わってるのね。でも逆に言えばランスの事はそれだけ秘匿されているか」

「ああ。この男の話は露ほど出て来ない。ただ、歴代の女王はこの事を知らされているとは聞いている。俺は女王の側近であるが、お前達の事は知らされていなかった。ただ、それとは別に俺の祖とも言えるベネット・カラーから伝わっている事はあるがな」

「あんまり言いふらさないでよ。ま、こんな事信じる奴も居ないだろうけど」

「違いない。俺も正直あまり信じていなかった。ただ、ベネット・カラーが魔人シルキィ…当時人間だったシルキィ・リトルレーズンと協力して魔人メディウサを倒したという話はカラーに伝わっていた。だから俺は英雄の血筋として期待されているという事はあるがな」

「あいつが英雄か…なんか結びつかんな」

 ベネット・カラーは確かに有能で強いカラーであったのは間違いない。

 ただ、あまりにもその行動や言動が残念過ぎたせいで、カラー特有の美しい容姿をもっていながらも、ランスが手を出す事を躊躇った程だ。

 だからあのベネットが子孫を残せたのが今でも信じられない。

「ドラゴンが闘神都市の上空を飛んでいる事は知っていたが…全てのドラゴンが協力している訳では無いか。しかしドラゴンとはどういう生物なのか…興味深いな」

 シロウズもこれから向かうドラゴンという存在には興味深々だ。

「フン、無駄口叩いて無いでとっとと進むぞ。どうせ無駄口は叩けんようになるしな」

 ランスは翔竜山を登っていく。

 そして開けた広場に差し掛かった時、

「来たか! 人間共よ!」

「あん?」

 何処から声が聞こえると共に、何者かが崖から跳躍してくる。

 その存在はランス達の前で着地すると、その狂喜に満ちた笑みをランスに向ける。

「殺姫見参! フハハハハハ! 会いたかったぞ我が好敵手!」

「…あ、お前あの時のイカレたバトルノートか」

 ランスは相手が女である事と、そのあまりに強烈なキャラから流石に覚えていた。

「覚えていてくれたか! 嬉しいぞ!」

「まあ戦姫とミラクルとリックを組み合わせたような奴だからな…嫌でも覚えたぞ」

「それは僥倖! ならば我等のこの後の展開も予想して居よう!」

「…セックスか?」

「ハハハハハ! お主が人間でなければお前と子を作るのも良いのだが…まあそれは止めとこう。人間の精液は女の子モンスターには猛毒だしな」

 殺姫は指を鳴らすと、モンスターの一団がやって来る。

「これは…」

 その一団を見てジルは驚く。

 そこに居たのは確かにモンスターなのだが、自分達が知っているモンスターとは少し違っている。

「ソロモンよ! 私は帰って来た!」

 迷彩服に身を包んだサメラーイらしきモンスターが叫ぶ。

 が、内容は全く持って意味不明だ。

「やれやれ…殺姫よ、これが例の人間達か」

 白いラーカイム…モンスターの突然変異種のみで構成されている集団がランスの前に立ちはだかった。

 他にも身長2mを超えるかえる女の変異種であるうしがえる女や、鎌の代わりにハサミを持っているベベター、『ヤクルト下さい』という謎のプレートを持ったペンギンのような彩色を持つンギョー!等様々だ。

「なんだお前等」

「フッ、我等マエリータ隊。貴様を倒すために結成された特別部隊よ!」

「所詮私の勝ち戦に華を添えるだけだな」

「意味が分からん。とにかく敵だという事は分かった」

 ランスは剣を構える。

 確かに変な連中ではあるが、普通のモンスターよりも強いのは分かる。

 普通は魔物スーツを着ていた方が統率が取れて圧倒的に厄介なのだが、目の前の連中は違う。

 それぞれが個々の力を活かしつつ、連携を取って来る相手という事なのだろう。

「その通り! 戦おう好敵手よ! 俺の目的はあくまでも魔人をも討ち取るお前の首のみ! さあ戦争の時間だ!」

 殺姫の言葉と共に、マエリータ隊と名乗るモンスター達が突っ込んでくる。

「フン、所詮ザコはザコだ」

 ランスは剣を抜き相手を迎え撃つ。

「ハハハハハ! 俺の目的はお前だ!」

「がはははは! せめて使徒クラスになって出直してこい!」

 ランスと殺姫がぶつかる。

 殺姫は前と違いセンスを構えてランスに向かって行く。

「素手で戦うのも好きだが、やはり得物があるとテンションが違うな!」

 殺姫は喜々としてランスに向かって行く。

 確かに殺姫は強い―――それこそ使徒に並ぶほどに、いや、並の使徒を超えている位には強い。

 だが、今のランスにとってはそれだけだ。

「フン!」

 ランスは殺姫の扇を剣で受け流し、そのままもう片方の刀で殺姫を斬りつける。

 勿論殺姫もその行動を予測して紙一重でランスと距離を取る。

 そして自分の胸から薄らと血が流れているのを感じ取り、胸を押さえる。

「成程、紙一重で躱したつもりだが…いや、私の認識する紙一重と実際の紙一重にかなりの差があるようだ」

 自分の血を手で拭うと、そのまま自分の血を舐めて見せる。

「うーむ、戦姫に似ていると思っていたが、戦姫より酷いな」

「ほう、貴様の知り合いには戦姫と呼ばれる者が居るのか。成程、気が合いそうだ」

「………いや、お前と会わせると碌なことにならんのは目に見えてるぞ」

 ランスは殺姫に剣を向ける。

「まあどうせお前はあいつに会う事は出来ん。俺様の邪魔をするなら…許さん」

「それは嬉しい。俺はお前にそういう目で見られる訳だからな。障害になると言うのならばそれだけの存在感が生まれたという事!」

 殺姫はそう言って複数の扇をランスに向かって投擲する。

「むっ」

 その扇はまるで刃のようにランスに向かってくる。

 扇当たればその体は斬られるのは明らかだ。

「フン、甘いわ!」

 ランスはその扇に向かって剣を振るう。

 ククルククルから無理矢理に覚えさせられたと言ってもいい衝撃波。

 ランスアタックとは違い破壊力はそこまで無いが、その分距離が圧倒的に違う。

 何よりもランスの必殺技と違い溜める必要もないし、その衝撃波に乗せて新たな必殺技も放つことが出来る。

 相手のバランスを崩したり、その衝撃波を使い防御壁のようなものを作り出す事も出来る。

 殺姫が放った扇もその衝撃波で吹き飛ばす事が出来る。

 しかし、扇を放った殺姫本人はその衝撃波の範囲には居ない。

「楽しいなあ!」

 既にランスの右側から回り込んでいた殺姫がその拳を放つ。

 が、ランスは刀でその拳を受け止めていた。

「何と!?」

 その防御行動には殺姫も目を見開く。

 自分の拳を受けて無傷の刀にも驚くが、何よりも自分の一撃をあっさりと刀の腹で受け流すというランスの技術に何よりも驚く。

「甘いわ!」

「ぐほっ!」

 そしてそのままランスの膝蹴りが殺姫の腹部に突き刺さる。

 自分が勢いよく踏み込んだ分、カウンターとなり想定を遥かに超えた一撃に殺姫は呻く。

 が、それでも殺姫はランスから離れずにその服を掴む。

「ここなら我の距離だな!」

「フン、ザコの考えそうな事だな!」

 ランスと殺姫は間近で睨み合う。

 殺姫には本当に楽しそうな笑みが浮かんでおり、本当に戦闘狂なのだという事が嫌でも分かる。

 剣の範囲よりも更に接近した事で自身の優位だと殺姫は感じたが、その頭部に衝撃が走る。

 ランスが剣の柄で殺姫の頭部を殴ったのだ。

 同時にランスの顔が苦痛に歪む。

 頭部を打つと同時に殺姫の拳がランスの腹部に突き刺さったからだ。

 だが、それでもランスは倒れない。

 これまでランスが戦ってきたのは殺姫を遥かに上回る魔人や悪魔、そして怪獣といった存在なのだ。

 この程度で倒れるランスではないのだ。

「とーーーーーっ!」

 ランスは殺姫に向かって強烈な蹴りを入れる。

 その衝撃を流石に逃がす事が出来ず、殺姫は吹き飛ばされる。

 そしてそれを見逃さず、ランスはランスアタックの構えを取る。

「ラーンスあたたたたーーーーっく!」

 今まで体に馴染んでいるランスの必殺技。

 飛び上がり強烈な一撃を入れるその技は、魔人であっても驚異的な威力であり、カオスを持っていればそれだけで魔人に重傷を負わせる威力を持っている。

 今のランスの一撃は昔のランスアタックの威力を更に上回っている。

 いくら殺姫が最強の女の子モンスターであっても、その一撃を受ければ耐える事は出来ない。

「なんだと!?」

 だが、その一撃は殺姫に届く事は無かった。

 地面から突然ガーター大統領が現れ、ランスの前に立ちふさがったのだ。

「ドナルド!」

 ガーター大統領の突然変異種であるモンスターはランスの一撃を受けても倒れなかった。

 それどころかランスに向かって強烈な拳を叩きこんでくる。

 ランスはそれを剣で受け流すが、同時に距離を取らされてしまった。

「退けと言うのか!? …いや、確かにそうか」

 ガーター大統領が何を言ったのかは分からないが、殺姫は即座に合図を放つ。

 するとこれまで戦っていた者達が一斉に戦いを止め、ランス達と距離を取る。

「流石は魔人を倒した人間と言うべきか…私が相手になっていないとはな」

「フン、言っただろうが。所詮ザコはザコだとな」

 ランスはそう言ってモンスターの一味を見る。

 モンスター達もあちこち傷だらけではあるが、死者は一名も居ないようだ。

 ランスは仲間達を見る。

 こちらにも当然死者は居ないが、シロウズとメイには決して浅くはない傷がある。

 レンは流石に無傷だし、ジルも傷を負っているだろうがその頑強な肉体のおかげで目立った傷は皆無だ。

「いや、ここまでの差があるとは正直予想を遥かに上回っていた。まあ今回は只の顔見せだ。我々は我々で本来の任務に戻るとしよう。撤収!」

 殺姫の言葉にマエリータ隊と名乗った連中はランス達の前から姿を消す。

 それを見届けてからランスは剣を収める。

「何だったんだあいつ等」

「突然変異のモンスターだけの集団…もしかしてランスを倒すためだけに結成されたとか?」

「そんな暇なのか? 魔物の連中は」

 レンの言葉にランスは呆れたように呟く。

 大体今のランスは魔人達にとってはそこまで大きな脅威にはならない。

 ランス自身戦争そのものにはあまり乗り気では無いし、別に聖魔教団を助けるつもりも無い。

 闘神都市に向かおうとしているのは個人的な理由があるからだ。

「それにしても強いな…魔物兵よりも遥かにやっかいだ。何よりも個性がありつつ、統制がとれた魔物達なんて見た事が無い」

 シロウズは自分に回復魔法をかけながら呟く。

「フン、あんな連中すら倒せんのか、お前は」

「手厳しいな。だが、それだけの強さがあるという事だよ。私は自分の実力を良く分かっているつもりだ。あの魔物達は相当に厄介な集団だ」

「同感だ。魔物兵よりも強く、統率が取れている。あんな連中が戦争を出来れば、それだけで脅威になるのは間違いないな」

「まあいい。それよりもとっとと行くぞ。山頂まではまだまだあるからな」

 ランスは襲って来た魔物の事は無視し、ドラゴンを探すべく山頂に向かうのだった。

 

 

「脱落者は無し、僥倖だな」

「我々は3年待ったのだ!」

「しかし殺姫の言う通りあの人間は強いな。お前がまるで相手になっていなかった」

 ブライトの言葉に殺姫は苦笑する。

「分かってはいたが、やはり悔しいものだな。最強の女の子モンスターの肩書も地に落ちた。だが、それでこそ世界は面白い」

 殺姫は楽しそうに笑うが、これからの事を考えて笑みを消す。

「さて、確かに我々は負けたが、本来の任務に戻るべきか? どう思う、ブライト」

「戻るべきだろう。あの人間達が何をしようとしているのか気にはなるが、所詮は人間だ。それよりも殺姫が大元帥より受けた指令を優先するべきだ」

 ブライトの言葉に皆が頷く。

 マエリータ隊と偉そうな名前がついてはいるが、れっきとした魔物大元帥の直属の部隊に等しい。

 魔物大元帥もそのつもりで殺姫が独自の部隊を作るのを許可したのだ。

 殺姫もそれに文句は無いし、十分すぎる程便宜を図ってくれているのは分かっている。

「動けぬ大元帥の代わりに、奴に鈴をつけろという事だろうからな」

「でも大丈夫なの? 立場は殺姫よりも上なんでしょ? 私達を潰すのだって簡単でしょ?」

 フードではなく、三角帽子を被ったまじしゃんが疑問を口にする。

「それは問題無い。我々がレギン大元帥の直属の部隊なのはもう知れ渡っているだろう。まあ酔狂な部隊として疎まれるのは間違い無いがな」

 殺姫はニヤリと笑う。

「いざとなれば処分していいとも言われている。今回の戦争、どうやら魔人側と魔王側で何やら食い違いが起きているようだな」

「姫、それってどういう意味?」

「我等魔軍全てが戦争に駆り出されている訳じゃ無い。その証拠に大将軍が派遣されている数は常に2体という制限を設けている。魔人の目的はあくまでも闘神都市、人間の全滅が目的じゃない」

 殺姫はそれがおかしいかのように唇を歪める。

「ゾロッカは死んでもいい、大元帥だけでなく魔人筆頭もそう考えているのだろう。だが、今の人間達に大将軍を倒せるとも思えんがな」

「…そうだな。しかし、それは我々とて同じ。殺姫、これからどうする?」

「あの人間への顔見せは終わった。今の所はそれで十分だ」

 殺姫はランス達が向かって行くであろう、頂上を見上げる。

 今の位置からでは頂上は見えないが、そこに居る存在は知っている。

「さあて、どう動くか…非常に面白い。さてお前達、戦争をしに行こうか」

 マエリータ隊は一先ず本来の任務に戻る。

 だが、当然まだまだランス達との繋がりは切れないのであった。

 

 

 

「ま、まだつかないのか…」

 シロウズは息を切らせながら何とか歩く。

 翔竜山を登り始めて数時間、ランス達はまだまだ歩き続けていた。

「もうそろそろよ。ま、ここからが大変なんだけどね」

「フン、足手纏いになるなら捨てるぞ」

 ランスとレンは全然平気そうな顔をして歩いている。

「あの…ランス様。少し休憩しませんか? シロウズさんもメイさんも疲れているみたいですし」

 ジルも平気な様子だが、疲労が濃いシロウズとメイを見てランスに声をかける。

「お前でも平気なのにな。だらしない奴等だ」

 その言葉を受け入れ、ランスも足を止める。

 丁度良い休憩場所を見つけて、それぞれ思い思いの場所に座る。

「しかしドラゴンか…聖魔教団がドラゴンと協力関係にあるのは知っているが、聖魔教団以外に力を貸してくれる者なのか?」

 メイは水を飲みながらランスに尋ねる。

「私も同感だ。何かの意図が有ってこの場所に来ているのは分かるが、私達にも教えてくれてもいいのではないか?」

「ここには私とランスと知り合いのドラゴンが居るのよ」

 ランスの代わりにレンが答える。

「ドラゴンの知り合いか…いや、聖魔教団がドラゴンの協力を取り付けているんだ。個人がドラゴンと協力関係にあってもおかしくはないか…」

 レンの答えにシロウズはある意味で納得する。

 そもそもドラゴンとの協力自体が人間には考えられない事だったのだ。

 それを成し遂げたルーンという存在が居るのならば、同じような事をする人間が居ても不思議はない。

 不思議では無いが、普通はあり得ないと思うだろう。

「でもランス様、本当に力を貸してくれるでしょうか? もしかしたらこの戦争にも参加しちゃってるのかも…」

「む…それはいかんな。もしそうなら俺様がここまで来た意味が無いではないか」

「結構好戦的なドラゴンだったしね。参加していてもおかしくは無いわね」

 カイン―――魔王アベルと兄弟であり、かつての魔王との戦いで行方不明となったドラゴン。

 紆余曲折を得て、現在のルドラサウム大陸へと戻って来たが、精神は魔王アベルの時代のままだ。

 つまりは現在のドラゴンのような性格ではなく、獰猛で魔物に対しても敵愾心がむき出しのドラゴンだ。

 それ故にあまり下界への干渉は好ましくないらしく、翔竜山で大人しくしているらしい。

 以前に色々とあり魔物大将軍を蹴散らすためにやって来たが、今回は参戦しているかどうかは分からない。

「それも登ってみれば分かる」

「それしか無いわね。そもそも人類が闘神都市に行くのはそれだけ難しい訳だしね」

 宙に浮かぶ都市である闘神都市、そこには行くだけでも大変だ。

 だからこそ、魔人や魔物達もそう簡単には攻め込めない。

 闘神の強さも相まって、無敵結界の有る魔人相手に30年間戦い続けられたのは伊達ではない。

「聖魔教団か…正直、聖魔教団が発足した時はこうなるとは思っても居なかったのだがな」

 闘神都市の話題になったからか、シロウズが気落ちした様子で呟く。

「そういえばお前は何歳なのだ?」

「私は24だ。だからこの戦争が始まった時は14だった。それまでは聖魔教団の庇護のもと、何不自由なく暮らしていたよ」

 メイの言葉にシロウズは答える。

「そんなに凄かったんですか? 聖魔教団って」

「…君の言葉は正直私には信じられない事だよ。聖魔教団が人類を統一していた時代は、魔物の脅威もほとんど無く、農業も魔農民と呼ばれる存在がやっていた。とにかく、平和な時代…そうとしか言えないな」

「ほう」

 シロウズの言葉にランスは少し興味を持つ。

 ランスも闘神都市に飛ばされた事があるし、ヘルマン革命ではその創始者である闘神M・Mとも戦った。

 なのでちょびっとだけ気になったのだ。

「そんなにか」

「ああ。空には次々に闘神都市が打ち上げられてた時代だからな」

 シロウズは過去を思い出すかのようにしているが、その顔が真顔になる。

 ランスも当然その巨大な気配には気づく。

 上空に巨大が影ができ、それはどんどんと近づいてくる。

 そしてそれはランス達の前に降りたつ。

「人間がここに何の用だ? …ってお前ランスか!?」

 そのドラゴンはランスを見て目を丸くする。

「ランス様!」

「まさかこんな簡単に会えるとは俺様でも驚きだぞ」

 ドラゴンを見てランスも少し呆れたように声を出す。

「とにかくお前に会いに来てやったんだ。有難く思え、カイン」

 そこに居るドラゴンこそ、ランス達が探していたドラゴン、カインだった。




色々と考えるとホント第一次魔人戦争って長すぎるよなあ…
第二次魔人戦争が4ヶ月程度で終わった事を考えると本気で長い
正直言うと何処から何処まで飛ばすかとか色々と迷って少し書き直したりとかもあります
ΣとZは登場確定だから何処で出すとか考えます
ですので闘神都市ZとΣが何時落ちたか分からないので、その辺りは完全にオリジナルとなります
バボラに特効しつつ、ゼスに残ってるのがZなんだよなあ…
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