「久しぶりだね、フリーク」
「ハンティ…」
黒髪のカラーと聖魔教団の創始者の一人であるフリーク・パラフィンは久々に出会った。
ハンティは聖魔教団が世界を統一する時に蛮人―――魔法を使えない者の味方をした。
フリークは個人的には友人だし、カラーという種族も聖魔教団に協力した。
カラーだけでなく、ホピンズの中にも聖魔教団に協力する者が居て、その者の一族は闘神になった者も居る。
ただ、それからはハンティはフリークとの関係を敢えて断っていた。
その線引きはハンティの中では絶対的なものではあったが、こじんてきな友人で有る事は変わらなかった。
「何をしに来たのじゃ。今はカラーも大変な事になっておるのだろう」
「そっちは一通り何とかなったんでね。フリークだから言うけど…魔人の1人を倒した」
「な、なんじゃと!? 無敵結界を持つ魔人をか!?」
「何事にも例外っていうのはあるんだよ。ただ、その事で一つだけ言わないといけない事があってね」
ハンティは苦い顔をしてフリークを見る。
そこにあるのは苦渋であり、決して喜びは無かった。
「…事情があるのじゃな?」
「ああ。あくまでもそいつ個人で無敵結界を持っている魔人を攻撃出来るってだけ。だからそいつでも魔人に勝つのは難しい。今回倒した魔人は弱かったから倒せただけさ。あくまで魔人の中での範囲で弱いってだけだけどね」
「嬉しそうでは無いのはそれが理由か」
「ああ。あいつが居ても今の状況は好転しない。それどころか、あいつを狙って変に魔人達が動けば、この戦争に巻き込まれることになる」
「…あの御仁は無関係という事じゃな」
フリークにはあいつというのが誰を示しているのか分かっている。
ハンティがここまで気軽に言い、尚且つこの戦争に巻き込みたくないという人物は一人しか居ない。
「それで、何を頼みに来た?」
「聖刀日光、そしてその仲間達の行方を捜したい」
「日光…魔人の無敵結界を斬れる武器の一つじゃな。ルーンもカオスと日光を探しておったが、結局見つからないまま魔人達から攻め込まれた」
本来の予定であれば、聖刀日光と魔剣カオスの武器を探し、全ての闘神都市と闘神の誕生を待ってから魔人達に戦いを挑む予定だった。
だが、その予定は狂い、今は人類は苦境に立たされている。
それでもここまで戦えるのは闘神都市の存在と、地上を攻め込んでくる魔物の数が想像よりも少ない事が大きい。
「ハンティ。お主は聖刀日光の状況を知っておるのか?」
「…知っていると言えば知っているし、知らないと言えば知らない。曖昧な言い方になるけどそう言うしか無いのさ」
煮え切らないハンティの言葉にフリークは困惑する。
そういう言い方をする人物では無いが、どうも歯切れが悪い。
「聖刀日光が見つからない理由は単純、今この世界に居ないからさ」
「何じゃと!?」
「昔魔王に挑み、異世界に飛ばされた仲間を探すため、異世界に渡ったのさ」
「そんな理由が…」
「正直、日光がこっちの世界にいるなら彼女の意思に全てを任せて良いと思っていたさ。私としても、まさか魔人の方から戦争を吹っ掛けてくるなんて思っても居なかったからね」
全てが予想外の事から始まった。
しかし、それが今の世界の流れなのだからもうどうしようもない。
「ハンティ、お主…」
「言っただろ、私はこの世界にあまり関わり合うのは避けてるって」
「じゃが、日光があれば…」
「もう終わった事を話し合うのは不毛だからする気は無いよ。それよりも、今は日光とその仲間を探さないといけなくなった」
ハンティの言葉にフリークはため息をつく。
衝撃の事実に驚きはしたが、同時にハンティの気持ちも理解出来た。
「儂に何を望む?」
「どんなに離れていても人を探せる道具があっただろ。それを譲って欲しい」
「分かった。しかし、日光がこの世界に戻って来た後はどうするつもりじゃ」
「それは日光が決める事さ。私が何か言う事じゃない。ただ、ランスももうこの戦争に巻き込まれている。多分日光ならランスに手を貸すだろうさ」
「…悔しいの」
ハンティの言葉を聞いて、フリークは絞り出すように答える。
その言葉の重みはハンティにも察するに余りある。
確かに聖魔教団に協力は出来なかったが、フリークもまたハンティの友人なのだ。
それも永遠の命を持つであろう、これから先も通用しうる人間の。
「もしあの御仁と聖刀日光の力が有れば…と思ってしまうのじゃよ。あの御仁は魔人すらも倒せる力を持っている…それをお主の口から聞くとは思わなんだ」
「ランスに関しては私から人に話す事じゃ無いし、話しちゃいけない事でもあるのさ。でも、今回は私が決めたそのルールを破った…状況が状況だけど、本当はこんな事したくは無かったさ」
二人はそれぞれの思いを吐き出す。
「分かった。道具は直ぐに用意しよう。じゃが、問題はまだまだ山積みじゃぞ」
「分かってるさ。それでも何とかしないといけないのさ。それが今回の私の…カラーの役割なのさ」
「ラーンスあたたたーーーーーっく!!!」
「小賢しい! その程度でこのノスが倒れるとでも思ったか!」
ランスの強烈な一撃にもノスは耐える。
そして強烈な魔法と拳を合わせ、人間形態での全力でランス達にぶつかってくる。
その姿は正に魔人と言うべき存在だ。
後の世界に魔人=ノスと伝わるのも納得出来るほど、ノスはその圧倒的な力を見せつけていた。
「この…何て重さよ…!」
レンはランスの盾となりノスの攻撃を防ぐ。
それを見てもノスは楽しそうに笑うだけだ。
「フフフ…人間にも中々歯ごたえのある者も居るではないか。よもやこの戦いでこれほど楽しめるとは…予想もしていなかった」
ノスは正に魔人になってからの初めてかもしれない命のやり取りに歓喜していた。
勿論ノスはまだ本気ではない、本来の姿であるドラゴンの姿は見せていない。
「フン、そう言ってられるのも今の内だ!」
ランスは黒い雷光を纏い、凄まじい速度でノスを斬りつける。
剣と刀、それぞれの特性を生かしてノスにダメージを与えてはいる。
しかし、ダメージを与えた所で関係無く再生をしていってしまう。
その再生能力と進化、それが魔人としてのノスの力だ。
ドラゴンの時よりもよりパワーアップしたノスだったが、ノス自身、己の体をここまで進化させたのは久しぶりだ。
「これ程の体になったのはカミーラと本気でぶつかった時以来か。誇るがいい、お前達はこのノスにこれ程のダメージを与えたのだ」
「皮肉にしか聞こえないわね。まだ余裕を見せてるでしょ」
レンの指摘にノスは笑って見せる。
「そうだ。お前達はこのノスの遊び相手に過ぎん。そう簡単に壊れてくれるなよ」
ノスの凄まじい攻撃はどんどんと激しくなっていく。
それこそ闘神Θと戦っていた時は、まだ遊びの段階でも無かったと言わんばかりの攻撃だ。
「ノス! お前の相手は私だ!」
「良いだろう! 来るがいい、闘神!」
ルシラとノスは互いに激しく打ち合う。
ノスの攻撃は当たらないが、ルシラの攻撃もノスに対して有効打になりえない。
「ランス。ノスを闘神都市から落とす。そのために動く」
その時、メイがランスとレンの隣にやって来て囁く。
「あいつを? 出来るの?」
「ジルの魔法とカイン、そしてお前達の攻撃でだ。それ以外にあのバケモノをどうにかする手段は無い」
メイの言葉にランスはノスを見る。
メイの言う通り、今のランスではノスを倒す事は難しい。
カオスか日光が無い限り、ノスの凄まじい再生能力を抜いて致命傷を与える事は難しいのだ。
「チッ、それしか無いか」
今のランスではノスを倒す事は難しい。
ランスはこれまでの戦いでそれを思い知った。
「で、ルシラはそれを知ってるからあんな戦い方をしとる訳か」
ルシラはノスに押されているのは間違い無いが、徐々にではあるが闘神都市の中心部からどんどんと移動していく。
ノスがそれに気づいているか分からないが、それでもルシラとノスは拳を打ち合いながら移動していく。
ランスとレンはそれを追ってノスに攻撃をする。
「ライトボム!」
レンの放った光の爆発を受けてもノスはびくともしない。
「ああもう! 本当に堅い…!」
エンジェルナイトの自分が放った魔法も殆ど意味が無い事にレンは唇を噛む。
確かにエンジェルナイトは強いが、そもそもエンジェルナイトの脅威はその数だ。
それこそドラゴンを追い込む程の数、それこそが一番の武器だ。
今のレンはそのエンジェルナイトから階級を上げたのだが、その本来の力はまだ使えない。
(クエルプラン様から私の居る本来の時代までは力の解放は許されていない…)
クエルプランはあえてレンから事情を聞こうとはしなかった。
頭が覗かれたような感覚も無いので、上の者達は本当にランスとレンを注視してはいるが、放置しているのだ。
(まあ力を解放しても流石に魔人相手には勝てないだろうけど…)
階級が上がってもそこまで劇的に力が上がった訳では無い。
翼を開放して戦う事もまあ許されていない。
いざという時以外、レンはまだ力を使う事は出来ないのだ。
(歯がゆいわね…でも、それが私の役割)
レンの役目はランスを守る事、それは決して変わる事の無い事実。
それが例え勘違いだったとしても、1級神から与えられた役割を放置する事なんて絶対に無い。
「エンジェルカッター!」
「温いわ! そこそこやるようだが、その程度でこのノスを倒す事は出来ん!」
ノスには本当にレンの魔法が効いていない。
いくらレンの魔法レベルが1だとしても、それでも人間を超える魔力を持っているというのにだ。
「し、ねえええええええええ!」
ランスは相変わらず圧倒的な攻撃力でノスに攻撃を仕掛ける。
「フン! 貴様が一番歯ごたえがあるな! 闘神よりも楽しめる!」
電撃を纏ったランスの一撃を受けてもノスはびくともしない。
ランスもそれを承知の上で、速度を活かしてノスの弱い所を狙う。
ノスに攻撃を続けてるうちに、ランスは当然のように気づく。
それはノスの腹部にある、ランスが貫いた所にある傷だ。
その部分だけが鱗の色が違う。
(ドラゴンの攻撃は中々治らんとカミーラが言ってた通りだな)
この部分だけは大ダメージを与える事が出来る、それをランスは確信していた。
ただ、それは恐らくノスも自覚しているのだろう、ランスの攻撃に対しても警戒をしている。
そしてそれこそが魔人ノスの恐ろしさでもあった。
ノスには魔人特有の油断、というものが無い。
勿論人間を見下しているのは間違いは無いが、これまでランスが戦って来た魔人とは違う。
最大限にランスとカオス、そして聖刀日光を警戒していた魔人ザビエルとも違う用心深さがあった。
ノスには戦士としての油断が全く無い。
それは無敵結界が無い時代から存在しているドラゴンという事も関係しているのかもしれないが、とにかく付け入る隙が無い。
純粋に戦士としての強さ、それがノスの強さだと言わんばかりの振る舞いだった。
「フフフ…貴様の考える事は手に取るように分かる。貴様の狙い通り、この体には一つ貴様の剣が通る場所がある」
ランスの考えを読んだかのように、ノスは己の体に触れる。
「貴様が貫いた場所…完璧な再生ではない。しかし、そこだけだ」
「………」
ランスは忌々しそうにノスを睨む。
「貴様に出来るか? 出来るのならばやってみるがいい! さあ、このノスを楽しませろ!」
ノスはランスに向けて突進する。
巨体ながらもその動きは鋭い。
速さは無いが、動きに全く無駄がないのだ。
ランスはその一撃を避けながら、徐々に闘神都市の中心部から遠ざかる。
一見するとそれはノスによって追い詰められているようにしか見えない。
ジル達もそれを見てランス達を追うように動いて行く。
そしてランスはそこそこ闘神都市の端と距離を置き、ノスとぶつかり合う。
これ以上露骨にノスを誘導すれば、ノスは間違い無くランス達の意図に気づく。
それを悟らせないためには、ノスが『自分が人間に吹き飛ばされるはずが無い』というギリギリの距離を見切る必要がある。
そしてランスは戦士の才覚で、そのギリギリの距離を感じ取った。
「どうした人間! 闘神! その程度か!」
「やかましい! ここで終わりにしてやる!」
ランスとルシラがノスとぶつかる。
ルシラはその格闘技術を使い、ノスとの絶妙な距離を保って攻撃をする。
ランスはそんな事をお構いなしに攻撃をするが、不思議とそれが良い連携となっていた。
その時、ジルから再び強烈な魔力が吹き上がる。
「む…」
ノスもそれを感じ取り、ジルに視線を向ける。
何かをやろうとしているのは分かり、ノスもそれを敏感に感じ取る。
が、行動を移す前にランスが既に動いていた。
「とっとと死ね!」
ランスの狙いは当然先程つけられた傷なのは分かっていた。
なのでノスも拳でランスの剣を払いのけた。
その衝撃でランスは独楽のように回転したと思った時―――ノスは自分の腹部に鋭い衝撃を感じた。
「ぐ…ま、まさか!?」
それは初めてノスが放つ驚愕の言葉。
ノスが先程ランスに刺された所と寸分たがわぬ同じところに、ランスの刀が突き刺さっていた。
「小僧…! キサマ!」
ノスは初めて怒りの声を上げる。
ノスからしても信じられない事に、ランスはノスの拳で打ち払われたように見えて、逆の手で刀を抜き後ろ向きのままノスの腹部に刀を突き刺してきたのだ。
それはノスからしても信じられない凄まじい技術と力だ。
しかもノスはこの戦いには愉悦はあっても油断は無い、今の姿での本気で戦いを挑んでいた。
それでも尚この人間はその自分の予測の上を行き、一度狙われ傷を受けた所と同じところに攻撃を受けるという屈辱を味わった。
「好きにしていいぞ! お前もそれくらい出来るだろうが!」
ランスのその言葉が誰に向けられたものなのかはノスには当然分からない。
だが、その言葉と共に自分の腹部に突き刺さった刀から凄まじいエネルギーの奔流を感じ取った。
「む、ぐおおおおおおお!?」
それはランスが使っていた電撃ではない、また別の力を感じ取れた。
刀そのものが小さく振動し、ノスの体を内側からかきまわす、そんな不愉快な感触を受け、ノスはランスに向けて拳放つ。
ランスは刀を放す事でノスの拳から逃れると、
「く、た、ば、れええええええええ! 超ランスアターーーーーーック!」
剣を構えてノスに向かって行く。
普段の必殺の一撃であるランスアタックの構えだが、そこに更に天から黒い雷がランスに向かって落ちてくる。
そして剣そのものが雷を纏い、それがノスの刀が突き刺さっている場所の近くに当たる。
「に、人間がああああああああ!」
ノスもまた怒声と共に、ランスに向かって拳を叩きこむ。
ランスもまたそのカウンターを受けて吹き飛ばされるが、その体をレンが抱きしめる。
「来い!」
一撃を受けても倒れていないランスが声をかけると、ノスの体から刀が抜けランスの手に収まる。
「小僧! 貴様!」
ノスが怒りで声を震わせていた時、
「ソリッドブラッド!」
ジルから必殺の魔法が放たれる。
それは無数の黒い氷が嵐となってノスに襲い掛かる。
「ぬううううううう!」
流石のノスも全力でそれを防御せざるを得ない。
黒色破壊光線すらも上回る、魔王スラルの持つ必殺の魔法。
それは魔王の力があって本来の力を発揮するのであって、当然ながら不完全な魔法。
「威力は抑えた! だが、我のこの技は威力だけにあらず!」
ジルの口から放たれたのはスラルの言葉。
「ソリッドブラッドの真価は、相手に何もさせない事を目的とした技。何もさせなければ何もおきない、それが我の生き方だった。それこそがこの技よ!」
スラルは臆病な魔王であり、リスクの有る事は絶対にしようとしない。
魔王という絶対的な存在でありながらも、スラルは周囲を恐れた。
そのスラルが生み出した己の必殺の魔法、それこそが相手の力を削ぐという事に特化したこのソリッドブラッドなのだ。
「む、ぬう!?」
その魔法の威力も高いが、それ以上にノスは己の体から力が抜けていくのを感じた。
張り詰めていた気が途切れるような戦士として不可解な感触、それがノスを襲っていた。
その魔法を受け、ノスはとうとう片膝を突いた。
「終わりだぜ! ノス!」
そしてそれを待っていた存在が居た。
カインはノスが膝を突くのと同時にノスに向けてその巨体で体当たりをしたのだ。
「カイン…!? 貴様!」
「ハッ! お前でもそういう事があるんだな! だがよ! 自分の楽しみで無敵結界を使わなかったお前のミスだぜ!」
ドラゴンであるカインの巨体から繰り出されるタックルにノスの体が宙に浮く。
その時、ノスは自分が誘い出されていた事に気づいた。
「おおおおおおお!」
ノスに向けてルシラが追い打ちをかけるように飛び蹴りを放つ。
「貴様等…! これが目的か!」
相手の目的は自分をこの闘神都市Θから落とす事、それに気づいた時にはもう遅かった。
「とっとと落ちやがれ! ランスアターーーック!」
そしておまけと言わんばかりに、ランスがククルククル直伝の衝撃波を放つ。
空中で態勢を崩していては、ノスでもその衝撃には逆らう事が出来なかった。
「うおおおおおおおおおおお!」
そしてとうとうノスの巨体が闘神都市から落下していく。
ノスの怒声はあっという間に小さくなり、その姿も見えなくなる。
「…終わったか?」
「いや、この程度でノスの奴は死なねえ」
ルシラの言葉にカインは苦々しい言葉を放つ。
「それに無敵結界を落下中に使ってるだろうしな。そういう所は抜け目ねえ奴なんだよ。戦いで死ぬのは良いだろうが、こんなつまらねえ死に方を受け入れる奴じゃあねえよ」
「だがそれでも…魔人ノスをこの闘神都市Θから一時的にとはいえ、排除出来た訳か」
ルシラは安心したようにため息をつく。
(恐ろしい相手だった…しかもノスはまだ本気には程遠かった…ランス達が居なければ、間違い無くこの闘神都市Θは落ちていただろう)
魔人は必ずしも1体だけで襲ってくるとは限らない。
闘神と戦う事を優先しているノスだったが、その最中に他の魔人がマナバッテリーを壊す可能性は十分すぎる程あるのだ。
もしノスとの戦いが長引いて居れば、間違い無く他の魔人によって墜落していたのは間違い無かった。
「フン、化け物ジジイが…疲れたぞ。それに腹が減った」
ランスは魔人ノスとの戦いが一先ず終わり、疲れた声で腰を下ろす。
「ジル。何か食い物をだせ」
「保存食しかありませんけどいいですか?」
「構わん。まずは何か食わせろ」
「今は干し肉くらいしかありませんけど…」
ジルから差し出された干し肉をランスは口にする。
「やっぱりこの力は滅茶苦茶腹が減るな。レベルが下がらんだけまだマシか」
ドラゴンの力はやはりランスに大きな負担をかける。
だが、それが空腹程度であるならばランスも許容範囲内だ。
「ジル! レン! ランス!」
そして戦いが終わった事で、ルシラは改めてランス達に駆け寄る。
「会いたかった…こんな形で会ってしまったのは正直残念だが」
「ルシラ…なのよね?」
「ああ。私もこの闘神ボディに意識を移したが、間違い無くお前と共に魔法学院で学んだルシラだよ」
そう言うルシラの声は間違い無く歓びに弾んでいた。
こうしてもう会えぬと思っていた者達が再会するのだった。
地上―――そこには一つの大きなクレーターが出来ていた。
そしてその中心から一体の魔人が起き上がる。
「フフフ…中々楽しませてくれるではないか」
そう言って立ち上がった魔人…ノスは笑った。
傷口からはまだ血が流れており、意外な深さにもノスは構わずに笑う。
「闘神だけかと思っていたが…人間も中々やる。昔を思い出すわ…」
ノスはドラゴンとして魔王ククルククル率いる魔物や魔人と戦った。
これ程の傷を負ったのはその時以来かと思いながらも、宙に浮かぶ闘神都市を見る。
「良いだろう、少しの間時間をくれてやる。それがこの傷を与えた貴様たちへの褒美だ」
傷は深くは無いが、決して浅くも無い。
同じドラゴン種族によってつけられた傷は、例え凄まじい再生能力を持つノスであったとしても治療には時間がかかる。
それはこの世界の摂理なので、ノスであってもどうしようもない。
「まあいい…こんな所で本来の目的を見失う訳にはいかぬ」
勿論、この戦争から手を引くなどノスとしてはありえない。
だが、ノスの目的は別にあるのだ。
そのために、今は魔王ガイの下で大人しくして置く必要はある。
「何れ時が来る…あの方の復活のための時がな」
そう言うノスの目には、かつての己の主の居城があるのだろう。
「今はまだ雌伏の時よ…」
ノスはそう言って楽しそうに唇を歪めるのであった。
ノスはもうこの話のラスボスだな…
というか多分この戦争でノスより苦戦する魔人は居ない
ケイブリスもシルキィもケッセルリンクも参戦して無いからもうしょうがない
日光が居ない理由を色々と考えた故に異世界という事で
一応地上で人類のために戦っていたと考える事も出来なくはありませんが、その場合聖魔教団が長い時間をかけて日光を探せなかったという事が不自然ですし…
まあ一番の理由はカオス日光があったら聖魔教団が魔王以外は倒せてたというのが公式なので…