「な、何だあ!?」
闘神Σは突然の出来事に困惑していた。
ドラゴンが現れるのはまあ分かるが、その上から人間が降って来て、いきなり魔人レイに斬りかかった。
魔人は魔人でその人間の登場に驚愕しつつも、喜々として迎え撃った。
そして今その人間と魔人は対峙している。
「…魔人とはお前か。全く、お前は何処にでも現れるな」
「腐れ縁ってやつかもしれねえな。ま、前回は潰されたが今回はそうはいかなかったようだな」
「前回…?」
「てめえ、本当に忘れてるのかよ! お前達がいきなり降って来て人の事を潰したんだろうが!」
「…そんな事あったか?」
「お前はそういう奴だったな。ま、今から起こる事には何も関係ねえがな!」
レイは雷を纏ってランスに対して構えを取る。
あのレイが突撃をする訳も無く、何処か警戒をしているさまにΣはより困惑する。
その時ドラゴンが闘神都市に着地し、その背中から複数の人間が降りてくる。
「あ、ここに居る魔人ってレイだったんだ。本当に何処にでも居るわね」
「魔人レイ…噂に名高い雷の魔人か」
レンは剣と盾を構え、メイは弓を構える。
「大丈夫ですか?」
「え? あ、ああ。おいらは大丈夫だけど…え? 誰?」
突然人間―――明らかに魔法使いと蛮人、そしてカラーも居る状況にΣはより困惑する。
「話は後で。今は魔人を倒す方が先だろう」
巨大なアフロが剣と盾を構え、魔法使い―――ジルの前に立つ。
その状況にもレイは困惑する事も無く、楽しそうに獰猛な笑みを浮かべる。
「ドラゴンに乗って来るとはな…しかもどっかで見た事のあるドラゴンじゃねえか」
レイはランス達が乗って来たドラゴンであるカインを見上げて笑う。
「ん…あ、お前、あの時俺達と一緒にククルククルと戦った人間じゃねえか。特に役に立ってた訳じゃねえけどな」
「ぐ…言うじゃねえか…」
カインの言葉にレイは苦虫を噛み潰したような顔になる。
あの時は何しろケッセルリンクとカミーラも居たので、レイ自身役に立ってたと言われれば確かにNOだ。
「しかし魔人になってやがったとはな…あ、そういやカミーラが当時の魔王の命令でお前を捕まえに来たんだったな。それで魔人になったって訳か」
「ま、そんな所だ。また会うとは正直思ってなかったけどな」
魔人であるレイも流石にランス達に相手に無謀な突撃をするような事はしない。
レイは魔人でありながら無敵結界を使っていない稀有な魔人だ。
だから闘神Σとの戦いでも傷を負う事もあった。
だからこそ、レイはこの戦争での歩みは遅い。
本来の歴史と違い、無敵結界を使って相手をすり潰すような真似はしていない。
戦いの勘を養いながら、魔人であったとしてもレイ自身の力で相手を倒す、それが彼のプライドでもあった。
「え、えーと…聞いてもいいかな? 皆…誰?」
「あなたが闘神Σさんですね。私達は闘神Θ…ルシラの頼みで来ました」
「え? ルシラ…闘神Θの!? いや、っていうか人間がどうやって…ってドラゴンに乗ってか。それにΘの事をルシラって…」
「フリークの知り合いよ。私達は」
「じっちゃんの!? あ、頭がこんがらがって来た…」
Σは色々な情報が入ってくる事に混乱する。
「おいデカブツ、お前は闘神だろ。こいつをぶっ倒すのに協力しろ。少しは戦力になるだろうが」
ランスも闘神の強さは勿論知っているので、戦力に数える。
そのランスの言葉を聞いて、Σも態度を改める。
そう、今は魔人との戦いの時なのだ。
「あったりまえさ! でもレイの電撃はおいら達闘神や闘将には厳しくて」
「気合で耐えろ」
「無茶言うなあ…でも、おいらだって黙って手をこまねいている訳じゃ無かったからね。蛮人…いや、人間っていうのも何か変だな。名前は?」
「男に教える名前は無いが…まあお前はルシラの知り合いだから教えてやる。俺様が英雄ランス様だ」
「ランスか…おう、じゃあ協力しよう、ランス! あの魔人は強いぞ!」
ポピンズ出身である闘神Σは人類への偏見は無い。
蛮人と呼んではいたが、それは魔法を使える者と使えない者の呼称に過ぎない。
そしてあのルシラが援軍に寄越したという事と、過去にルシラやフリークが言っていた『人類の中には闘将を倒せる者も居る』という言葉。
ならば、きっとこの人間達がルシラとフリークが言っていた者達なのだろう。
「ランスに闘神が相手か…ま、中々に楽しめそうだな!」
レイもまた今の状況に最大限に闘志を漲らせていた。
ランスが相手というのもそうだが、更にはこれまで自分と戦って来られたΣもいる。
そしてレンに加えてあのドラゴンも一緒だとすると、これ以上の状況は中々ない。
レイ自身の闘争本能も加わり、今の状況はまさに最高だ。
「行くぜ! ランス!」
「フン! 今のお前など俺様の相手にならんわ!」
「言うじゃねえか! ま、強くなってるのはその通りなんだろうけどな!」
雷光を纏ったレイがランスに殴りかかる。
ランスはそれを剣で受け流すと、そのまますれ違いざまに刀でレイの脇腹を斬る。
流石に魔人の耐久力なので両断は出来ないが、それでもレイの体から血が飛び散る。
「すげぇ! 魔人相手にこうも簡単に血を流させた! 無敵結界を使っていないのはそうだけど、まさかこんな簡単に!」
ランスの腕を見てΣは歓喜の声を出す。
魔人レイはΣとの戦いでも無敵結界は使っていなかったが、それでもΣはレイ相手に劣勢だった。
雷を操る魔人という事で不利もあったが、それでもΣは闘神なので当然のように強い。
そのΣでも魔人レイ相手にはそう簡単に傷をつけられる事は無かった。
まさか蛮人…人間の剣士が魔人を相手にこうも戦えるとは思えなかった。
「流石にやるじゃねえか…! 前よりも強くなってやがる」
「フン、お前と一緒にするな!」
「俺も今回は本気で行くぜ! 悪く思うなよ!」
レイがそう言うと、その体から凄まじい電撃が放たれる。
その刺激には流石のランスもレイから距離を取る。
これこそが魔人レイの力であり、魔人になってからの戦い方だ。
常に雷を纏っているので、レイに接近するだけでもその雷で近づくものは傷を負う。
「おらぁ!」
そのままランスに向かって突っ込んでいくが、
「スノーレーザー!」
「ぐおっ!?」
ジルの放った魔法が直撃し、流石のレイも体をよろめかせる。
「何だ? この魔力…普通じゃねえな」
レイはその威力に目を見開いて驚く。
これまで聖魔教団という魔法使いの集団と戦ってきたが、これほどの魔法を受けた事は無かった。
闘神はどちらかというと魔法では無く、その強固な体で戦う者が圧倒的に多い。
レイが戦って来た闘神もそうだし、これまで戦っていた闘神Σもそうだった。
「…チッ、魔法に関しちゃ全く分からねえか」
魔人であるレイだが、魔法に関してはからっきしだ。
レイが使う雷だって魔法では無く、普通の雷だ。
なので何故これ程の魔力で魔法を放てるか、そのカラクリはレイにはさっぱり分からない。
「凄いな。さすがΘの知り合いだ! まさかこの闘神都市Σのマナバッテリーから魔力を引っ張るなんてなー!」
「ルシラに教えて貰ったんです。Σはそういう事は気にしないから遠慮するなって言ってたので」
「ははは! おいらはマナバッテリーを利用して攻撃魔法を使うなんて器用な事は出来ないからな! それで魔人と戦えるなら遠慮なく使ってくれ! あ、でもこの闘神都市が落ちるくらいに魔法は使わないでくれよ!」
「そんなに使えませんよ…今は」
ジルは闘神都市Σのマナバッテリーから直接魔力を受け取っている。
その為の術をルシラから教えてもらい、こうして実践している。
使った魔力は後でレンと一緒にマナバッテリーに補充すれば問題は無い。
カインが飛べるようになるまで、闘神都市Θのマナバッテリーにはジルとレンとメイが魔力を補充していた。
ジルとレンは普通の人間よりも遥かに魔力があるので、結構簡単に補充が出来ていた。
「エンジェルカッター!」
「光の矢!」
レンとメイも続けざまに魔法を放つ。
魔法は絶対に命中するので、レイもそれに対しては防御をするしかない。
魔人は魔法防御力も高いので、二人の魔法も防御すればそれほどダメージにはならないし、レイには魔人特有の再生能力がある。
なので魔法を受けてもそれほど大きなダメージにはならない。
「へっ! 上等じゃねえか! 吹っ飛べ!」
レイが天に手を伸ばすと、それに呼応するように天から雷が落ちてくる。
「おおっと! それ以上好きにはさせねえぞ!」
Σの言葉と共に、闘神都市の台地から大きな鉄塔がせり上がって来る。
すると天から落ちた雷はランス達には落ちず、その鉄塔に向かって落ちる。
「どうだ! お前の雷もこれで効かないぞ!」
「…やるじゃねえか」
得意気に言うΣに対し、レイも驚いた様子だがそれでも素直にΣの力を認める。
「だがよ、こいつならどうだ!」
レイは天から雷を落とすのではなく、そのまま身に纏った雷を手に集めてランス達に放つ。
その様はまさに魔法の電磁結界そのものだ。
「フン!」
なんとランスはその稲妻の波を剣で斬り裂いてレイに迫って来る。
「やっぱりお前には効かねえか!」
レイはそれに驚くが、それでも本当に楽しそうにランスへと向かって行く。
元々カミーラのブレスすらも斬る事が出来るランスならば、自分の雷だって斬れるのは想定内。
だとすれば後は肉体と肉体のぶつかり合いだ。
そしてそれこそがレイの得意分野であり、レイの望みでもある。
「行くぜ、ランス!」
「お前の顔もいい加減見飽きたぞ。とっとと死ね!」
レイは闘神都市に倒れている闘将の残骸を手に取ると、それをランスに向けて投げつける。
「むっ!」
その行動には流石のランスも驚く。
流石に闘将のボディを斬るならばランスだって必殺級の技で無ければ斬れない。
なのでその闘将を避けるが、その先にレイが回り込んでいた。
「貰うぜ! ランス!」
「させるかー!」
レイとしてはそこでランスに一撃を入れるつもりだったが、レイが動くのと同じようにΣもまた動いていた。
「今のおいらには前程雷は効かないぞ! 人間! おいらも一緒に戦うぞ!」
「フン、足手纏いになったら捨てるぞ!」
ランスも闘神の強さは分かっているので加勢に文句は言わない。
闘神にターゲットが向けば、それだけランスが得意な不意打ちもしやすくなる。
「攻撃はランスと闘神に任せて援護に回った方が良いわね」
「そうだな。私は神魔法で皆を援護しよう。あなた程では無いが、私でも力になれるはずだ」
レンの言葉にシロウズは同意し、防御魔法を使用する。
AL教の神官戦士でもあるシロウズにとっては神魔法もまた得意分野だ。
「私はそのままレイを狙う。魔法では大したダメージにはならないみたいだが、弓ならば行ける」
メイは魔法よりも弓の方が得意だ。
剣も得意なのだが、流石にランスと闘神と魔人の間には入る事は出来ない。
ならばこうしてもう一つの得意分野である弓で攻撃するのが最適だ。
「じゃあ俺はあそこにいる連中をぶっ飛ばしてくるか!」
カインは闘神都市の周囲に居る飛行魔物兵を睨むと、そのまま翼を羽ばたかせてその群れの中へと突っ込んでいく。
ドラゴンでも上位種であるカインならば一人でも飛行魔物兵を蹴散らせるだろう。
「じゃあ私達はそのまま魔人を相手にする。ジル、遠慮なくやりなさい」
「はい。この闘神都市ならば、私も存分に魔法を使えますから」
ジルは集中力を高め、次の魔法の詠唱を始める。
幸いにもあのノス程の防御力は無いので、ジルの魔法ならば十分に通用する。
それに厄介なレイの能力も、闘神Σが対策を施していたので今の所はそこまで脅威にはなっていない。
「スノーレーザー!」
そして闘神都市のマナバッテリーの恩恵を利用してレイに魔法を放つ。
「チッ! これほどとはな…やっぱりにてめえの仲間だけあってやるじゃねえか」
ジルの強力な魔法を受けレイは舌打ちする。
まるで魔人の魔法を受けているような感触に流石のレイも足が止まる。
「がはははは! 俺様の奴隷の中でも優秀だからな! お前もいい加減にとっとと死ねーーーーーっ!」
ランスの一撃をレイは転がっている闘将の体で防ぐ。
流石にランスの一撃をまともに受けるのは危ないとレイも分かっているのだ。
「レイ、覚悟!」
Σの攻撃もあり、流石のレイも防御に回らざるを得なくなる。
レイにとっては便利な力である遠距離への電撃を封じられている。
勿論接近戦はレイにとっては大得意ではあるのだが、闘神のフィジカルとランスの技術、それに魔法や弓による遠距離攻撃。
それらが組み合わさり、レイは思うように動けない。
「うざってえ!」
レイの体から凄まじい雷光が放たれ、ランスとΣは距離を取らなければならなくなる。
「あちち!」
「さ、流石にこうして直接電撃を流されるときくなあ」
闘神Σも魔人レイに対する対抗策は練っていても、レイの力はΣの予想以上であるので完璧な対策も出来ない。
ランスとしても接近戦でこうして細かな傷が出来るのは面倒くさい。
「回復の雨!」
ランス達が距離を取った事でレンが回復魔法を放つ。
ランスの火傷は治るが、あの面倒くさい雷が有ると思うとランスとしても面倒になる。
「面倒な奴め」
「ハッ! そうじゃねえと面白くねえだろ」
レイはランスの軽口に楽しそうに笑う。
「おいデカブツ。あいつの電撃を何とかする手段は無いのか」
「いや~、流石に雷を纏って直接殴って来る事に対しての対抗手段は無いなあ。こうして遠距離からはなたれる電撃を何とかするので精一杯だからさ」
「フン、使えんな」
ランスはそう言うが、それが魔人レイの力なのだから文句を言っても仕方ない。
魔人というのはそれ程面倒くさい相手なのだ。
「生憎な、俺だってただ遊んでた訳じゃねえぜ。それにそろそろ溜まって来てやがるからな」
レイはそう言って上空を見上げる。
そこには既に巨大な雷雲が厚い層となっていた。
「流石にこれだけ溜まればそのチンケなもんじゃ止められねえだろ!」
既にランスと戦う前にはレイの雷雲は溜まっていた。
それが十分に溜まったので、レイも必殺の電撃を放つことが出来る。
「消し飛べ!」
その威力は正に雷神雷光とも言うべきで、凄まじい電撃がランス達に向かって襲い掛かって来る。
「この!」
「くっ!」
レンとシロウズは何とかバリアーを張るが、それでも完全に威力を殺しきれない。
一部がΣの用意した避雷針に当たるが、その避雷針にもすさまじい負荷がかかって壊れてしまう。
「あばばばばばば!」
Σもその凄まじい電撃を受けてビリビリと痺れている。
だが、そんな中ランスだけはレイに向かって突っ込んで行った。
「死ねえええええええ!」
「何だと!?」
見ればランスはほぼ無傷だ。
それどころか、レイと同じように雷を纏っている。
「上等じゃねえか…! 何時の間にそんな力を身に着けてやがった!?」
レイはランスを迎え撃つ。
そして二人の間ですさまじい雷光がぶつかり合う。
魔人レイには電撃が効かないという体質だが、それは今のランスも同じようなものだった。
レイから放たれる雷はランスが身に纏うアベルの体質によって同じように無効になる。
今のランスならば、レイの纏う雷を気にする事無く戦う事が出来る。
「チッ!」
「ぐぐぐ…」
レイは何とかランスの一撃を避けようとしたが、それでもランスの剣は肩口に突き刺さる。
ランスはそこから傷口を広げるべく剣を捻ろうとするが、レイは力づくでランスの剣を跳ね飛ばす。
ランスの手から剣が離れるのを見てレイは拳による一撃をランスに放とうとするが、ランスの手は既に腰の刀に伸びていた。
それを見てレイは慌てるが、それでも拳を振り下ろす手を止めない。
ランスはその拳を刀で受け流し、二人はそのまま交差する形になる。
だが、ランスはそれこそ伝説の技術を持っている存在だった。
「新ランスアターーーーーック!」
この新たなランスアタックはこれまでのランスアタックと違い、勢いをつけてジャンプをする必要は無い。
居合斬りの技術を使った新たな必殺の一撃。
そしてレイもその技を知っている。
「ランス…!」
「死ねーーーーーーっ!!」
ランスは刀を抜き、そのままレイを通り抜けるようにして移動する。
するとレイの体に無数の傷がつき、そこから血が勢いよく飛び散る。
「ぐっ…はっ…!」
レイは新たなランスの必殺の一撃を見ただけで、受けた事は無かった。
だからこそ、改めてこうしてランスの一撃を受ける事で、ランスの異常な強さをその身で思い知った。
自分が人間ならばこの一撃で間違い無く死んでいただろう。
「だがよっ!」
それでもやはりレイは魔人だった。
その一撃を受けてダメージを受けても決して倒れはしない。
ランスに向かって襲い掛かるが、その時ランスが身に纏っていた雷が形を持ってレイを睨んだ。
「何だ!? ぐっ!」
その雷で出来たドラゴンは何とレイに向かってその牙をむいた。
レイの肩口にドラゴンが食いつき、レイの体から血が噴き出る。
(イメージじゃ無かったって事かよ!? まさか直接動きやがるとは…!)
その驚愕の一瞬がレイの命運を分けた。
見ればランスの手には既に剣が握られている。
それだけでなく、
「氷柱地獄!」
レイの雷撃から逃れていたジルがレイに向かって魔法を放つ。
無数の氷柱がレイを襲い、その体を容易に傷つける。
そしてランスが剣を構えてレイに向かって飛び上がるのが見える。
「ラーンスあたたたーーーっく!」
「くっ!」
流石のレイも血の気が引いた時、
「紅色破壊光線!」
何処からともなく飛んできた魔法がランスを吹き飛ばした。
「何だ!?」
レイも流石にその状況には目を見開く。
吹き飛ばされたランスをレンを受け止め、回復魔法をかける。
「誰だ!?」
幸いにもランスにはそれほどのダメージでは無かったようで、突如として魔法を放って来た奴に対して怒鳴る。
「あの…本当に良かったのですか? マスター」
「ええ、構いませんよ。ランスはレイだけの獲物という訳では無いのですから」
そこには金色の髪をした美青年と、赤い髪、青い髪、黄色の髪をした女が居た。
「アイゼル! てめぇ! 邪魔しやがって!」
「レイ、別に私はあなたの邪魔をしたつもりはありませんよ。ただ、ランスは私にとっても興味深い人間という事です」
そこには魔人アイゼルとその使徒が立っていた。
「魔人…アイゼル!」
レンはその魔人を見て唇を歪める。
まさかのもう一人の魔人の登場にレンも流石に驚愕する。
「な! 魔人がもう一体!?」
立ち上がったΣがもう一体の魔人を見る。
そこにはΣが見た事のない美青年…だが、間違い無く魔人である存在が立っていた。
「それにしても…手酷くやられましたね。無敵結界を使っていなくとも、あなたがやられるとは思っていませんでしたが…まさかこんな所に出くわすとは。私も運が良い」
「邪魔すんじゃねえ。今は俺がランスと闘神と遊んでんだよ」
「ええ、勿論邪魔なんてしませんよ。ただ、今の状況は結構マズい状態でしてね」
「あん? どういう事だ」
レイがアイゼルに尋ねた時、ランス達の隣に巨大なドラゴンが降りてくる。
「こっちは片付いたぜ。と、思ったら魔人が増えてやがるのか」
空を飛んでいた魔物兵を蹴散らしたカインが魔人を睨む。
「あなたが連れてきた飛行魔物兵は全滅したようです」
アイゼルの指摘にレイは唇を歪めるが、その身に纏っていた雷光が弱くなっていく。
ランスにつけられた傷は決して浅くはない。
勿論これからも戦闘の継続は可能だし、今も傷はどんどんと治ってはいる。
だが、ランスの剣につけられた所はやはり少し治りが遅い。
かつてのカオス程では無いが、それでも時間が経過すればどんな影響が出るか分からない。
「アイゼル。まさか今からお前が戦うってのか?」
「いいえ。私としては少し様子見をしに来たつもりですので」
「じゃあ何しに来たんだよお前は」
「あなたが何度も挑んでいる闘神というのを見てみたかっただけですよ。ただの興味本位です」
「ケッ! 相変わらずの奴だ」
戦闘態勢を解いたレイはランスとΣに向けて指を刺す。
「今回はここまでにしとくぜ。次に会う時はもっと楽しませろよ」
「何だお前。逃げる気か」
ランスの挑発にレイはニヤリと笑う。
「ああ、逃げる。次の戦いのためにな。また会おうぜ、ランス」
レイがそう言うと、アイゼルが掴まって来たであろう飛行魔物兵達がやってくる。
魔人と使徒はその飛行魔物兵に掴まると、そのまま闘神都市から離れていく。
「え…魔人が撤退した? あの状況で?」
Σは魔人達が大人しく撤退した事に驚く。
レイはともかく、もう一体の魔人はまだ戦っても居ないので余力があったはずだ。
それなのに撤退していった事が信じられなかった。
「フン」
ランスは詰まらなそうに剣を収める。
「ランス、結構余裕そうね。レイだって手加減はしてなかったでしょ?」
「ああ。あいつの鬱陶しい電撃もあの力を使えば何でか知らんが殆ど効かなくなったからな」
「そりゃあいつが雷の魔人だからだろ。アベルも俺も雷竜だからな。その力を使えば自然と電撃に耐性がつくんだろ」
「そんなもんか。まあ便利だからいいが…やはり腹が減る」
ドラゴンの力を使うと無性に腹が減る。
本当にそれだけがネックだ。
「あ、そうだ! 皆ありがとうよ! おいらの名前は闘神Σ!」
闘神Σは嬉しそうにランス達に挨拶をする。
「で、一体何者なんだい? 正直説明して欲しいんだけど」
こうしてランスは闘神Σと出会った。
本来の出会いよりも遥か昔の話―――そしてある意味必然とも言える出会いでもあった。
今年最後の更新になりましたが、遅くなりました
それもランス10を再度プレイして色々と考えていたもので
そしてちょっと没になった設定でも
最初闘神Nを考えていたのですが、色々とあって出すのを止めました
「闘神Nは伊達じゃない!」とか言わせようかと思ったけど話が無駄に長くなりそうなので…
聖魔教団が滅びないと後の時代に移り変われないのと、あまり闘神を出すとそれはそれでどうかと思った次第です
ぶっちゃけ闘神ZとΣの二人でも十分過ぎる戦力ですし
ランス10ではカオスも日光も有るからそこに闘神が加わると…という事も
それも全てカオス日光あったら聖魔教団が勝ってたという設定がね…
闘神Nは公式の設定によってあえなくボツとなりました