「ッ! ランスの野郎…前より格段に強く成ってやがったか」
そう言うレイの口元には笑みが浮かんでいた。
自分が倒すべき敵は強ければ強い程倒し甲斐が―――そして競い甲斐がある。
ただ、ランスの方が今回は一歩も二歩も上回ってたというだけだ。
「やれやれ、意外と嬉しそうですね。そんなにランスと戦うのは楽しいですか?」
「フン、ほっとけ。それよりもお前がこっちに来てるとはな」
「まあ私も私で色々とやる事もあるので。地上の方も少しキナ臭くなってきたものでね」
「何かあったのか」
もしレイがそのままの性格だったのならば、アイゼルにこんな事を聞かなかっただろう。
ただ、過去の出会いがレイを少しだけマシな性格にしていた。
同僚とのコミュニケーションくらいは取れるくらいにいはなっているのだ。
「魔物大将軍が変わる事で色々と変わる事もあるんですよ。ただ、私としてはカラーに手を出さないかどうか…ここが少しの懸念ですね」
「カラー…ケッセルリンクか」
「ええ。未だに行方不明の魔人四天王…ですが、彼女の力は絶大です。もしもカラーが絶滅してたなんて事になれば…どんな恐ろしい事になるか」
「今居ない奴の事を気にしてもしょうがねえだろ」
「そうなのですけどね…まあ気にするに越した事は無いでしょう」
二人の魔人が話していると、
「レイ様! あ…こ、これはアイゼル様!」
一体の魔物将軍が部下を率いて走って来る。
「お前か」
それは魔人レイの下で働いている魔物将軍ゾノだった。
レイの配下として主に飛行魔物兵の調達や、物資の補充などの仕事についているが中々どうして魔物将軍の中でも優秀な方だ。
面倒臭い事は丸投げするレイとしては便利な奴だ。
「闘神都市から飛行魔物兵が帰還したのを見まして…それにしてもレイ様、その傷は…」
魔人レイは闘神との戦いでは無敵結界を使っていないのは周知の事実だ。
普通そんな事はありえないのだが、そのあり得ない事をするのが魔人レイだ。
これまでも闘神との戦いでは多少の傷を作って戻ってくる事は珍しく無いが、今回はこれまでよりも遥かに傷が大きく深い。
「まさか闘神に!?」
「ちげーよ。お前には関係ねぇ。次に動けるように準備をしておけ」
「ハッ!」
ゾノは特に深入りする事なくレイの命令通りに動く。
余計な事は詮索しないのもレイとしては有難い話だった。
「で、あなたは直ぐに闘神都市に行くのですか?」
「…いや、少し待つ。別に急ぐ必要もねえ。それにアイツはドラゴンで移動してるみたいだからな…中々会うのにも苦労しそうだな」
今回は偶然出会えたが、次に偶然があるとは限らない。
何しろランスとはそういう奴で、会いたいと思っていても会える奴じゃ無い。
「ああ、そうだレイ。あなたに面白い情報が有りますよ」
「もったいぶってねえでさっさと言え」
「もしかしたら…魔人筆頭が動くかもしれないと」
「バークスハムの野郎がか? あいつ、この戦争にも興味持ってなかっただろ」
「ええ。どういう風の吹き回しか…」
バークスハム、魔人筆頭としてガイの親衛隊として動いている魔人。
だが、何よりも未来を読めるとも言われる程の力を持っているとされており、他の魔人からも一目置かれる存在だ。
「あくまでもかもしれないという話ですよ。ただ…彼が動くとなると何か楽しくなるような気がしませんか?」
「さあな。俺はあいつのやる事にゃ興味はねえ」
アイゼルの言葉もレイには大した興味はない。
「では私はこれで。あなたも油断をすれば…あの男にやられますよ」
「それはそれで楽しそうだがな」
「そうそう…ここ最近地上に居ると言われていた、マリーゴールドがめっきり姿を見せなくなりました」
「………」
「どこぞの者にやられたか、闘神によって封印されたか…いずれにしろ、あなたにとっては楽しい事にはなるでしょうね」
そう言って今度こそアイゼルとその使徒達はレイの前から姿を消す。
それを感じながらレイは自分が受けた傷に触れる。
(まさか…マジでやり遂げやがったのか?)
レイはランスと共に少しの間居たからその目的も知っている。
魔人の持つ無敵結界を斬るための力を求めていた。
その後でカオスと日光という剣が出来たので、それも有耶無耶になったと思ってたのだが。
(それはそれで楽しい事になるだろうな)
それでこそやりがいがある、そう思いながらレイは上空に浮かぶ闘神都市を見て笑った。
「助かったよ! いやー、蛮人…いや、魔法を使えない人間の中にもこんなに強いのが居るなんて思わなかったなー」
戦いが終わり、闘神Σはランス達に向けて朗らかに話し始めた。
その態度はランスが知っていた尊大な態度だった闘神Υや闘神M・Mとは大違いだ。
「あなたが闘神Σ…何ですよね?」
「ああ。間違い無くおいらが闘神Σさ!」
ジルの言葉にもΣは明るい声で答える。
「何だ、男か…つまらん。いや、闘神だからどうでもいいな」
「いや、そう言われても…あ、でも闘神Θに頼まれたって言ってたよな。Θは大丈夫なのか!? あいつは強いから魔人に狙われてるって話だからさ」
「大丈夫だから俺様が来てやったんだろうが。ルシラの頼みじゃなかったらこんな所にくるか」
「…もしかしてΘと知り合い? Θの本名知ってるみたいだし」
Θの人間の時の名前であるルシラの名前が出た事でΣは少し混乱する。
何しろΘがルシラの名前を捨てたのは今から数十年前であり、目の前の人間達の年齢と一致しない。
「人間だった頃なら俺様の女にしてやったんだが…流石に闘神は無いな」
「ええ…ルシラって結構な年だけど…って闘神に年齢なんて関係無いか」
「あの…あなた、人間の闘神ですか? 私が見た闘神とはちょっと違うような気がします」
ジルは闘神Σの体全体を見る。
闘神Σはジルが知っている闘将や鉄兵とは違う。
ルシラも闘神としては異質だが、ジルから見てもΣはこれまでのルーンやフリークの作っていたものとは違う気がした。
「あ、分かるのかい! 嬉しいなあ…おいらは人間じゃ無くてポピンズ出身なんだよ。だからおいらのボディは魔鉄匠が作ったんじゃなくて、おいら達自身で作り上げたのさ!」
「達? あんた一人じゃ無くて?」
レンの言葉にΣは頷く。
「三代に渡って作り上げた自慢のボディさ! フリークのじっちゃんと色々と協力し合って作ったんだ!」
「先生と…成程、それなら納得ですね」
「先生? 君はじっちゃんの知り合いなのか?」
「ええ。私も一応はフリーク先生の生徒だった時期があります」
「………うーん、君みたいな凄い魔法使いならおいらの爺ちゃんや父ちゃんから話位は聞いててもおかしくないんだけどなあ」
Σはジルがフリークの生徒だったという言葉に首を傾げる。
レイとの戦いを見て分かったが、ジルは間違い無く凄腕の魔法使いだ。
それも聖魔教団の幹部…それこそ闘神に選ばれても不思議ではない程の魔法使いだ。
それ程の魔法使いが教団内で有名にならないはずが無いのだ。
「それよりも俺様はお前に用がある」
「え? 何だい?」
「魔王の呪いを解くアイテムをお前が持ってるんだろう。よこせ」
「…ええ。突然だなあ。ただ、おいらでもそんなアイテムは持って無いよ? そんなアイテムがあったらそれこそ聖魔教団の秘宝レベルだろうし」
「何だと! じゃあ無駄骨ではないか! ルシラの奴め…」
Σの言葉にランスは怒りを露にする。
「落ち着きなさいよランス。それよりも結構酷い状況だったみたいね」
レンは闘神都市Σを見渡す。
そこには破壊されバラバラになった闘将が転がっている。
恐らくは魔人レイの仕業だろうが、凄い光景だ。
「ああ…あの魔人レイの電撃はおいら達には天敵だからね。だから色々と対抗策を用意してたんだけど…これでもまだ防げないか」
Σは壊れてしまった避雷針を見る。
魔人レイが天から放ってくる電撃対策に作ったが、どうやら強度が足りなかったようでレイの本気の雷撃には耐えられなかった。
「よーし、もっと耐久力のあるものに変えないと! そうなると新しい素材を使ってみるのもいいなあ…」
ウキウキと話し始めるΣに対し、ランス達は呆気にとられる。
「…お前、何か闘神らしくないな」
「そうかい? おいらがポピンズだからかな? こういう工作が好きだからって事もあるけど」
「フン、まあいい。それよりも魔王の呪いを解くアイテムはお前達の本拠地にあるんだな」
「保証は出来ないなあ…おいらだってそんなアイテムがあるなんて事は聞いた事も無いし…それに今デトナ・ルーカには入れないと思うよ」
「チッ、使えん。お前それでも闘神か」
「それは闘神は関係ないんじゃないかなあ。あ、そうだ。おいらからも聞きたい事があるけどいいかい?」
Σはこれまでの戦いから生じていた疑問をランス達にぶつける。
「魔人レイとは知り合いなのかい? どう見ても顔見知りみたいだったし、魔人が名前を呼んでたし」
「敵ってだけよ。だからそっちにとっても利害は一致すると思うけど」
「…ちょっと気になるけど、まあそれで納得する事にするよ」
何かを隠しているのは明らかだが、魔人は共通の敵だし彼等とは協力関係を築けるのは間違いない。
実際、この少女はフリークの生徒だと言うのだから猶更だ。
「でも結局は問題を先送りにしてるに過ぎないんだよなあ…やっぱり無敵結界をどうにかしないとダメだなあ。でも、どれだけ探しても見つからないんだよなあ」
「日光の奴、一体何処にいるんだ。あいつの事だから率先して戦っていると思ったが」
カオス…に関しては魔王ジルを封印しているのでそもそも使う事等出来ない。
この世界の全ての魔人を合わせたよりも、魔王ジル一人の方が余程危険だ。
そうなると日光しかないのだが、何とその日光が居ないのだ。
「日光が無いと魔人の再生能力が止められないからね。いくらランスが魔人にダメージを与えられるといっても、日光が無いと魔人を倒すのは難しい」
レンの言葉にジルも悩ましい顔をする。
「ジル、それよりももっとなんか寄越せ。腹が減って仕方ない」
「あ、そうですね。あの力を使うとどうしてもランス様は凄いお腹が減っちゃいますからね」
ジルから渡された軽食をランスはもぐもぐと食べる。
「お腹がすいてるなら取り敢えず内部に来ないかい? 当分は魔人の襲撃も無いだろうし」
「気楽に言うな。それをするのは俺達だろう」
Σの言葉に呆れたように一体のドラゴンが降りてくる。
「しかしお前がここに来るとは思わなかったぞ、カイン」
「俺にとっては魔人共は今でも敵だからな。ま、それに良い暇潰しになる」
そしてその隣にカインが降り立つ。
「ブラックドラゴン…いや、聖魔教団以外の人間がドラゴンに乗って来るなんて本当に驚いたなあ」
「生憎俺はブラックドラゴンじゃねえ。その上位種のドラゴンだ。一緒にするな」
「…おいら、ドラゴンの種類には詳しくないからなあ」
「カイン、少しは手伝えよ。お前の電撃ならば魔人の撃退も出来るだろう」
同じドラゴンの言葉にカインは少し苦笑いのような表情を浮かべた後、ランスを見る。
「直ぐには移動はしねえだろ」
「そうだな。少しくらいはゆっくりするか」
ランスとしても急いで他の闘神都市に移動する気も無い。
ならば少しくらいゆっくりしても問題は無い。
「少しの間魔物の連中と遊ぶ事にするか。ま、いい暇潰しだ」
カインはそう言ってドラゴン達と共に何処かに行ってしまった。
「あいつ…俺様の足のくせに勝手な事をしおって」
「まあまあ。ランスだって少しは落ち着きたいでしょ」
「フン、大体闘神都市なんて楽しくも何とも無いからな。女もおらんし、退屈なだけだ」
「そよれりも話をきかせてくれよう。食事くらいなら用意できるからさ」
「ランス様。行きましょうよ」
「分かった分かった。まあどうせ暇だしな」
ランス達はΣに案内され、闘神都市Σの内部へと入る。
そこはランスがよく知る闘神都市とほとんど変わらないので、やっぱり退屈だ。
(そういやイラーピュもそうだが、闘神都市は面倒なギミックが多かったな)
最初にランスが飛ばされた闘神都市の内部は迷宮になっており、先に行くのも中々面倒だった。
ゼスの四天王の塔も地下は闘神都市になっており、その内部も中々に複雑だった。
「取り敢えずここで休んでてくれよ。取り敢えず食事を持ってくるからさ」
そう言ってΣは何処かへと歩いて行く。
残されたランス達はそれぞれ思い思いの所に腰を落ち着かせる。
「ランス様…もしこれから魔人と戦うとしたら、もっと苦しくなると思うんですけど…」
「フン、問題無い。俺様なら余裕だ余裕」
「…ランス様」
ランスはそう言うが、ジルには分かる。
ランスも実際には余裕が無いのだ。
今回の魔人レイといい、前回の魔人ノスといい、何れも魔人は無敵結界を使っていなかったから何とか戦えたのだ。
もし他の魔人と戦えば、それこそランス以外に魔人を傷つける事は出来ない。
そしてそれが魔人達に伝われば…ランスは狙われる。
殺姫という魔物が率いる魔物達は知っているようだが、情報の共有がされていないのは救いだ。
「そうね。正直あまり関わり過ぎると…危険ね」
レンとしてもランスを守るためにはこれ以上の介入はなるべく避けたい。
しかし、世界はそれを許してくれない…そんな予感もあるのも事実だ。
「しかし、だからと知って聖魔教団の本拠地に乗り込むのは難しいだろう」
「そうだな。我々カラーも一応は協力しているようだが、そこまで深く関わって居ない。事実、始祖様はどちらかと言えば聖魔教団とは敵対していたからな」
「むむむ…」
シロウズとメイの言葉にランスは呻く。
想像以上に状況が悪すぎる。
これならばまだヘルマンによるリーザス襲撃、ゼスで起こったカミーラダークの方がまだマシだ。
カオスと日光があれば本当に何も問題は無かったのだ。
何故なら、カオスと日光は既に魔人を倒すという結果を出しているのだから。
(確かにこれ以上魔人と戦うのは面倒だ。だが、聖魔教団とやらが滅ぶっていつだ?)
ランスも聖魔教団が滅んだ国家だという事は知っている。
ただ、それが何時滅んだのかが分からないので、ランスとしてもどれくらいの間身を隠して居れば良いのかが分からない。
それに早くケッセルリンクと元に戻したいという気持ちもある。
そのためには動くしか無いのだが、ランスが動くと必然とドラゴンも動くのでどうしても目立ってしまう。
(…あ、そういや闘神と闘将とかは人類の敵だったな)
そしてランスは重大な事を思い出す。
ランスが居るLP期では、闘神や闘将は人類の敵として存在している。
しかし、ランスはその理由までは知らない。
そういう所はランスは全く覚えていないので、過去の歴史を有効に使う事が出来ないのだ。
「で、魔王の呪いを解くアイテムを探してるんだよね?」
ランスが考え込んでると、食料を持った闘神Σが入って来る。
闘神という戦うための体を器用に使い、食料を並べていく様はまるで人間のようだ。
「随分器用ですね…そんな手で」
「まあおいらは自分の体を改造するためにこの手にしたからね。ポピンズだから、その点はしっかりしとかないと」
Σは少し照れくさそうな仕草を見せる。
「でも、魔王の呪いを解くアイテムは、さっきも言ったけどおいらも知らないんだよね。知ってるとしたらルーンとかじっちゃんになるんだけど…流石に今は難しいんじゃないかなあ」
Σの言葉に誰も言葉を発しない。
それが今の現状であり、人間を超越する闘神ですら中々自由に動けないのだから、人間であるランス達ならば尚更だ。
「…戦争が終わるまでは無理じゃないかなあ。ただ、この戦争が何時終わるかは分からないけどね」
そう、今は魔物と人類の戦争中。
それがどんなものかはランスも存分に思い知っている。
カミーラダークの時はランスがリーダーとして好き勝手出来ていたが、流石に今は勝手が違う。
ランスを支えてくれる優秀なブレインは居ないし、好きに動ける財源も人員も無い。
時代を移動しているランスの明確な欠点として、明確な基盤が無いのだ。
ランス城も無ければ各国とのコネも無い。
流石にその状況ではランスだって好きに動くのは難しかった。
ハンティの頼みだから色々と動いたが、早くも頓挫しそうな状況にランスも先が見通せない。
それだけこの戦争は大きすぎた…それこそランスですらも経験した事の無い事だった。
「でもΘにこんな知り合いが居たなんてなあ。それにフリークのじっちゃんとも知り合いなんだろ? でもどうして魔法使いなのに聖魔教団に入らなかったんだ? 確かに蛮人…魔法使いじゃない者達に味方した魔法使いも居たけどさ」
この疑問は聖魔教団に所属する魔法使いならば当然の疑問だ。
Σも魔法使いが差別されているのは知っていたし、Σの一族もまたポピンズの異端として少々疎まれていた。
その時に出会ったのがフリークであり、ルーンと出会う前にフリークと知り合うという逆のパターンだった。
「私は…別に差別にあったという事も無かったですし、それに私はランス様についていくと決めてましたので」
「私はそもそも聖魔教団に興味無いし」
「ふーん、魔法使いにも色々いるんだなあ。それよりもおいらとしてはこっちに興味があるし」
Σはランスに視線を向ける。
「魔人と互角に戦えるなんてそんな人間が居るなんて思っても居なかったよ! いやー、本当に強いんだな!」
Σは本当に感心したようにランスを見る。
「フン、あんなの大したことない。あの電撃が無ければアイツなどザコだザコ」
今のランスは電撃の攻撃に強い耐性がある。
アベルが元々雷竜だった事もあり、その力を使えば電撃の攻撃に非常に強い耐性を得れる。
厄介だったレイの電撃を防ぐ事が可能となり、そうすれば後は接近戦となるのだが、そうなるとランスの方が技術に関しては上だ。
レイが素手で戦うタイプの魔人であり、剣を持つランスの方がリーチを長く戦える。
そしてランスの技術ならばレイと互角に戦える…それ程までにランスの力は上がっていた。
それこそまさに経験であり、ランスの持つ戦士としての才覚そのものだ。
「うーん、おいらの作った避雷針でも完全には防げなかったなあ…でも、このまま改良を重ねればあいつの電撃は何とかなりそうだぞ!」
「喜んでる所悪いけど、こっちに来る魔人ってレイだけじゃないんじゃない? アイゼルも姿を見せた訳だし」
「あ、そうだ…また新しい魔人が姿を見せたんだよな…って名前知ってるって事はまさか知り合い?」
姿を見せたのは魔人アイゼルだ。
魔人アイゼルもまた非常に厄介な特殊能力を持っており、相手を洗脳して手駒にするという非常に強力な魔人だ。
レンからすればかつて一度戦いを挑まれた魔人…だが、ランスにとっては違う。
LP期においてのヘルマンによるリーザス侵攻…その時に起きた魔王ジルの復活。
その時にランスが倒した魔人、それがランスにとっての認識だ。
「別に知り合いって訳でも無いけどね」
「ふーん…まあいいや。詳しくは聞かないよ。でも、問題はここからだよなあ…」
Σとしては今回は以前と同じように魔人を闘神都市を撃退しただけだ。
聖魔教団はこの長い戦争で魔人のただ一人も倒せていない。
魔人の無敵結界がある限り、魔人を傷つけることは出来ない。
ただ、その魔人を撃退するという事が聖魔教団の凄さを表しているのだ。
「あ、そうだ! Θって魔人と戦ってたみたいだけど、どの魔人と戦ってたんだ!?」
闘神Θは闘神の中でも上位に位置する闘神だ。
だが、それでも魔人を撃退するのに手いっぱいなのだ。
「ノスよ。魔人ノス」
「ノス…ってノス!? あのノスだったの!?」
魔人ノスはこの戦争の中では一番強いとされている魔人だ。
それを撃退する事も難しい…そんな存在だ。
「いや、みんな本当に強いんだな…」
Σはランス達を見て本当に感心したようにため息をつくのだった。
魔王城―――
そこにはこの戦争に参戦していない魔人が1人いた。
魔王の親衛隊であり、今現在の魔人の中で一番強いとされる魔人筆頭バークスハムはこの戦争も静観していた。
この戦争は既に勝敗は決しており、後は魔人達が満足するまで暴れるだけだ。
バークスハムは未来を読めると言われる魔人であり、その魔人が少し頭を悩ませていた。
「ふむ…困ったものだな」
それはバークスハムが視た『本来』の未来とは違った未来が視えていた。
それが良い事なのか悪い事なのか…それはバークスハムにも分からない。
ただ、それは魔王ガイにとって悪い未来ではない…そうとも感じ取っていた。
「ならば…動くか」
魔人筆頭バークスハム―――本来はこの戦争に興味の無かった魔人が今動こうとしていた。