やはり闘神都市に乗り込むのは魔人でも大変なようで、アレから1週間たってもやはり魔人の襲撃は無い。
飛行魔物兵を用意するのも大変だし、魔物兵を用意するのも実は意外と大変なのだ。
魔軍は数に制限が有り、一定以上の数は用意してもらえない。
それでいて地上で戦う魔物兵の数も必要なので、そこから更に飛行魔物兵を用意する、という事も案外難しいのだ。
そこに不満は有るのだろうが、そもそも魔人が戦争に参加している時点で勝敗は決しているのだ。
魔王も戦争の許可はしたが、魔物兵の欲望を満たしてやる必要も無いので、数は用意されないという現実がある。
そこに不満を言っても仕方が無いので、魔物大将軍もそこでやりくりをするしか無いのだ。
「うーん、やっぱり電撃を防ぐのにはこれが一番かな」
そして闘神Σは次の戦いに備えて色々と準備をしていた。
勿論ランスからすればΣが何をやっているか全く分からないし興味も無い。
移動手段であるカインがまだ戻ってこないので、特にやる事も無いので闘神都市Σに滞在している。
「でもここって凄い材料あるわね。ネジとかばっかりだけど…」
「そりゃおいらの体の部品だからね。他の闘神と違って、おいらの体は特別なのさ」
「ルシラとは違うんですか?」
「ああ。他の闘神とは基本設計が違うんだよ。おいらはポピンズの技術で作った闘神で、他のは魔鉄匠の技術で出来た闘神ボディなのさ。その辺は拘りだね」
Σはそう言いながらも色々と何かを作っている。
勿論それが何なのかはΣ本人にしか分からないだろう。
「でもさ、ランスみたいな強い人間なら闘将にしようってルーンは考えなかったのかな?」
「フン、闘将なんぞに興味はない。大体、闘将になったらセックスも出来んだろうが」
「そうだよねー。おいらもその点は盲点だったなあ…」
ランスとΣは意外な程に険悪な関係にはならなかった。
ランスは男には辛辣で、男なんぞいらんと常々言っているが、それでも一定の付き合いはある。
リックやパットン、ガンジーのように付き合いの長い者も居るし、信長はランスが認める友達だった男だ。
Σは闘神なのでランスにとっては安全な男だし、ポピンズ出身のせいか差別意識も無い。
なのでこうして普通に話せる仲になっていた。
「しかしお前はポピンズのくせにエロいアイテムを作らんのだな」
「あー…まあポピンズの中にもそういうのは居るけどさ。おいらは闘神になるって決めてからそういうのは作らなくなったんだよな…それよりも魔物と戦う事を選んだからさ」
「ふーん。勿体ないな」
「あはははは。おいらを相手にそう言えるなんて凄いな! でも、そっちの方が付き合いやすくておいらも助かるけどね」
「それにしても闘神都市といっても色々あるな。ルシラの所とは違うしな」
「そりゃそうだよ。おいらが特別って事も有るけど、やっぱり個性は出るしね」
ランスは暇なので闘神都市Σを探検したりもした。
それは後にランスが行く事となる闘神都市Υとは全く違う。
闘神都市Υは色々なギミックが有り、ランスからすると全く意味の分からない施設も存在していた。
人間が使用する事を前提としていない施設が複数あり、ランスからすれば本当に意味の分からないダンジョンだ。
「しかし役に立つ物が全く無いな」
「そりゃ普通の人間に扱える物は少ないと思うよ。ただ、色々とルーンもじっちゃんも考えているみたいだけど。建設中の闘神都市Υには魔法レベルを上げる施設が作られてるって話だし」
「そんなのがあるの!?」
Σの言葉に驚いたのはレンだ。
魔法レベルを上げる…それこそまさにバランスプレイカーの技術だ。
(…私は全然知らなかったけど、聖魔教団ってそんな技術を持ってたんだ)
エンジェルナイトの時は人間界の歴史には興味も無かったし、そんなに関わる事も無かった。
だが、こうして地上に居ると色々な情報が入って来る。
そしてその話を聞いてランスは思い出した。
(そういやイラーピュで志津香が何か俺様に文句を言ってたな。その時魔法レベルが一時的に3になったとか言ってたな)
Σの言葉を聞いてランスは昔の冒険を思い出す。
イラーピュで志津香とやれたのはその時だけだったので、ランスはそれを覚えていた。
(…なら今でもあるのか?)
ランスはジルを見る。
(どうせ志津香じゃ使えなかったしな)
志津香の邪魔をしたのはランスなのだが、当然ランスはもうそんな事は忘れている。
なので自分の都合の考えている…何時もの事だ。
「あくまでも噂だよ。すんごい技術が使われてるって話だしね。それに魔法レベル3を持ってるルーンには関係ない事だろうし」
「ルーンは…今でも生きてるんですよね?」
「うん。魔力の成長を止めたくないって理由でまだ闘神ボディに意識を移して無いよ。ただ、おいら達もどこまでもつか、なんだよね」
Σももう現状を理解しつつある。
魔人の強さは嫌というほど思い知った。
しかも魔人の中にはまだ参戦していない魔人も居るのだ。
魔人四天王と呼ばれる存在もおり、その中で今回の戦争に参加しているのは魔人カミーラだけだ。
そのカミーラですら、積極的に戦争に参加していない。
無敵結界を何とかしなければやはり魔人に勝つ事は出来ないのだ。
「大変です、Σ様!」
突然一体の闘将がやってくる。
「どうしたんだい。まさかもう魔人が来たのか!?」
「いえ、違います! もしかしたらもっとマズい事が起きているのかもしれません!」
「マズい事? 魔人以上にマズい事なんてあるかい?」
「…ある意味では」
闘将は機械の体なので外面からは焦りは伝わらない。
ただ、言葉に関しては本当にマズい事が起きている、という事だけは伝わって来る。
「虐殺です…地上の者達が虐殺されているんです」
「そんなの今に始まった事じゃ無いだろうが。戦争してるんだぞ」
魔物による人間の虐殺、それは別に珍しい事じゃない。
ランスも魔物によるゼスの襲撃を見てきたが、それは酷いものだった。
魔物とはそういう連中なので、ランスも魔物に対して一切の慈悲は見せない。
全ては経験値として、等しく相手を殺す、そんなのは冒険者として当然の事だった。
「本当の皆殺しです。一人の人間を捕らえることも無く、皆殺しにしているんです」
闘将の報告に沈黙が続く。
「…本当なんだね」
「はい。地上での情報が入って来まして…地上の一つの砦に立てこもっていた者達が皆殺しにされたと」
「まさかそんな事が…いや、これもおいら達の見通しの甘さなのかな…」
闘神は魔人と戦っているが、代わりに地上の者達は魔軍と戦う事になってしまっている。
本来は闘神と闘将が魔物達と戦う予定だったのだ。
そのためのボディであり、疲れない体なのに、魔人の足止めで手一杯だ。
「何とかしたいけど…」
Σは苦渋に満ちた声を出すしか出来ない。
闘神都市で助けに行こうにも、そもそも闘神都市で地上に降りるのは難しい。
浮上の為には大量の魔力が必要であり、それこそルーンでなければ何百人もの魔力が必要となる。
今、闘神都市を地上に下ろすのは愚策でしかない。
それこそ魔人の侵入を招き、闘神都市は瞬く間に破壊されてしまうだろう。
「ランス様。何とか出来ませんか?」
「出来る訳無いだろうが。俺様達だけで倒せると思っているのか?」
「それは…」
ランスの言葉にジルは何も言えなくなる。
今居るメンバーで魔軍を倒す事など不可能だ。
魔物将軍1体を倒す事すらも難しく、魔物大将軍を倒すなんて夢のまた夢だ。
いくらランスでも、こんな限られたメンバーで無理な突撃なんて出来る訳が無かった。
「情報を集めたいけど、集めるのも厳しいからなあ…」
悔しいが、Σが出来る事は無い。
これまでの魔軍の動きから、ここまで過激な虐殺をするなんて考えても居なかった。
魔物大将軍が変わった事で、地上でも大きな変化が起こってしまったのだ。
「大将。取り敢えずは我々だけでも地上に戻るべきだろう。地上が崩れては元の木阿弥だ」
「そうだ、ランス。恐らくは始祖様が情報を集めているはずだ。もしかしたらカラーが再び狙われないとも限らない」
「む」
メイの言葉にランスは呻く。
魔軍にとってはカラーもまた敵だ。
一応ケッセルリンクという防波堤はあるが、それを踏み越えていくバカは何処の世界にもいるのだ。
それは魔物だって例外では無いのだ。
「ランス様…」
「分かった分かった、そんな顔をするな。ちょっと見に行ってやる」
縋るようなジルの視線にランスは折れる。
ランスとしても、万が一カラーに危険が及ぶならばそれを排除しなければならない。
しかし、そんなランスでも出来る事と出来ない事はどうしてもある。
ゼスで魔軍を退けられたのもゼス軍とリーザス軍が対抗していたからだし、JAPANの時もランスの元には有力な大名と兵士が居た。
この時代にそんなものは無いので、現状の手持ちの戦力では魔軍を退けるのは不可能だ。
「おいらも協力したいんだけど…でも、現状は闘将もレイに倒されたりして厳しい状況なんだ」
「それは止めた方が良いだろうな。もし地上で闘将や闘神が暴れれば、そこを目掛けて魔人が押し寄せてくるだろう。それでは意味が無い」
シロウズも難しい顔をする。
シロウズは地上で魔軍と戦って来た戦士なので現状を良く分かっている。
こうして魔人や飛行魔物兵を闘神都市が担当している事もあり、地上も何とか持ちこたえてきたのだ。
闘神や闘将の加勢があれば有難いが、それが逆に地上進行を早める可能性も有る。
「大将、地上の様子を見に行く必要がある。私も何とかしたい」
「知らん。見に行ってはやるが、何とも出来ん事もあるぞ」
「分かっているさ。だが、それでも地上には私の仲間達がいる。彼等の苦境を見捨ててはおけない」
仮面の下でシロウズは唇を強く噛む。
地上の危機を聖魔教団は助けてくれないと思っていたが、実際には闘神都市も非常に危険な状況だったのだ。
こうして魔人と相対してシロウズはそれを強く思い知った。
やはり魔人とは常識外のバケモノなのだと。
その魔人に狙われている闘神都市の苦悩も分かったような気がする。
「俺としても今のカラーの状況も気になる。始祖様が何かしらの情報を掴んでいるかもしれない。一度地上に戻るべきだと思うが」
「そうね。魔人だって直ぐにこの闘神都市に来れるって訳でも無いしね。私達は別に必ずしも聖魔教団の味方って訳じゃ無いし」
「え? そうなの? じっちゃんやルーンの知り合いなのに?」
レンの言葉にΣは驚く。
「どっちかというと敵だったしね。ま、今はどうかは分からないけど」
「…難しい状況なんだなあ。でも、地上の事は任せるしかないか」
「闘将をこっちに回せんのか」
ランスの指摘にΣは頭をかく。
「こっちも難しい状況だからなあ…今回の事はおいらだって見逃せない。おいらたち聖魔教団は別に地上の人達を見捨てた訳じゃ無いって事をきちんと証明しないといけない。でも、基本的に闘将は闘神の命令しか聞かないんだ」
「やはり役に立たんではないか!」
「このボディはおいらが作ったけど、そういうシステムは全部ルーンとじっちゃんの領域だったからなあ…魔法使い達がコントロールできる事が前提条件なんだ」
元々聖魔教団は迫害されている魔法使い達の地位向上のために設立された組織だ。
魔法を使える事を前提にして組織が成り立っている。
「聖魔法が使えれば少しの間コントロールを預ける事も出来るけど…使えないのよね?」
「聖魔法…フリーク先生が使っていた魔法ですね。生憎と私には適正はありませんでしたが…」
ジルがそう言った時、
「我は使える。魔鉄匠とやらの技術は無かったが、聖魔法については我は少しは適正があったようだ」
ジルの口からスラルが答える。
「ホントか、スラルちゃん」
「ああ。攻撃魔法としては我は使う気にはならなかったが、そういったコントロール位は出来ると思うぞ」
「え? そうなの? っていうか、同一人物が全く違う事を言ってるんだけど…」
突然の事にΣも困惑する。
「気にするな。とにかく、我ならば聖魔法を少しは使える。だから闘将のコントロールも問題無く出来ると思うぞ」
「………もし本当にそうなら、地上の人達を助けて欲しい。ただ、移送の問題もあるから多くは派遣出来ないけど」
この闘神都市から地上に闘将を運ぶならドラゴンで移動しなければいけない。
ただ、ドラゴンの体の関係上一度に運べる数はそう多くない。
「3体が限度かな。でも闘将は1体でも魔物1000単位と戦えるんだ。だから十分な戦力になると思う」
「3体か…」
ランスは渋い顔をするが、移動の関係等を考えるとそう文句は言えない。
それこそ闘将を1000体派遣されようが、その闘将の移動方法が無い。
ドラゴンに運んでもらうという手段が無い訳では無いが、そもそも魔人が闘神都市を狙ってくる以上はそれを了解しないだろう。
だとすると、それくらいの数が妥当という判断になってしまう。
「まあいい。寄越せ」
「ああ。ただ、その地上の魔物大将軍を倒せたらこっちに戻してくれよ」
Σが合図を送ると、そこに3体の闘将が入って来る。
「今からおいらのコントロールを解くよ。そしてスラル…って言うんだっけ? 君をマスターにする」
「ああ、問題無い。我とジルは今は一心同体だからな。ジルでも問題無くコントールできるだろう」
Σは何だか良く分からない道具を操作する。
それが何なのかランスには全く分からないし興味も無いが、その動作が終わったのか3体の闘将がスラルに向かって跪く。
「闘神都市Σ第七部隊、闘将3体。貴殿の指揮下に入ります。我が主でよろしいか」
「ああ。我はスラル。我に従え」
主従の礼を終えると、2人の闘将がやおら立ち上がる。
「イヤッホーーーーー! 新しいマスターは美少女だーーーーー!」
「うひょう、かわいい! 困らせたい、怒られたい!」
そして拳を突き上げて喜びを露にする。
「…………は?」
あまりの光景にはランスも思わず茫然とする。
「…ん?」
スラルも闘将の態度に思わず目を点にする。
「黙らんかお前等! いきなりはしゃぎおって!」
そして最初にスラルに跪いた闘将が喜んでいる闘将を諫める。
「えーっ、いいじゃないッスかー。仕事は楽しくしましょうぜー」
「…ホントにこれが闘将なのか? なんか…大分イメージと違うぞ」
「ま、まあおいらもだけど闘将も生前の人格を保ってるから…こういうのも居るって事なんだよなあ」
ランスの言葉にΣは何とかフォローしようとする。
「闘将ホセイト、闘将ロブロズ、闘将ルデム、我等だけですが、役に立つ事を誓います」
闘将ホセイトと名乗った真面目そうな闘将が改めてランス達に挨拶する。
「…何か聖魔教団という存在のイメージが変わるなあ」
「そうだな。俺も闘将とは無機質な存在だと思っていたからな」
シロウズとメイが互いに頷き合う。
ただ、何にせよランス達に強力な戦力が増える事になる。
そしてそれもまた、後の歴史にも少々の影響を与える事となるが、それはまだ誰も知らない事だった。
地上―――そこには地獄の光景が広がっていた。
死体、死体、死体…無数の人間の無残な死体があちこちに転がっている。
いや、転がっているのは普通の死体では無く、ずたずたに斬り裂かれたものや爆発によって千切れたもの、そして焼け焦げたものがあちこちに転がっているのだ。
その光景を見て、魔物大将軍ゾロッカは満足気に頷いた。
「ふむ…中々良いな。この調子で人間共の居る所にジグソウを放つのが効率が良い。少しずつ地上をさっぱりさせんとな」
「し、しかし…その度に我等魔物兵の数も少なく…」
「それが何か問題があるのか? いくらでも補充はきくだろう」
「そ、それはそうですが…」
ゾロッカの部下である魔物将軍は明らかにまともではない大将軍の言葉に戦々恐々する。
ゾロッカが持って来た新型魔物スーツであるジグソウ…確かにそれは非常に効率よく、そして魔物兵が楽しむ暇も無く人間達を殺していった。
飛行魔物兵をベースとした新たな魔物スーツ…それは円盤型の魔物スーツに巨大な回転型チェーンソーを着け、人間達を斬り刻むというものだった。
それだけでなく、障害物がある時は魔物スーツが自爆し、中に居る人間ごと爆破するというものだ。
確かに惨殺能力は高いし、あくまでも人間を殺すのには効率が良い魔物スーツだろう。
だが、あまりにも殺しに特化し過ぎているせいで、魔物達の楽しみが無い。
人間を直接いたぶり、時には拷問し、犯し、殺す。
それが魔物にとっての勝利の余韻なのだが、この魔物スーツにはそれが一切ない。
全てのモノを削ぎ落し、ただただ人間を殺すための道具となるのがゾロッカが用意した魔物スーツなのだ。
そしてそれを一度着れば最後、ほぼ確実に命を落とすという魔物側に確実に死者が出るものだ。
「テストの結果が良ければ、このジグソウを人間共の全ての住処に放つ。そうすれば確実に人間共を効率よく殺すことが出来る」
「………」
ゾロッカの言葉に魔物将軍達は絶句し、息を呑むしか無かった。
(く、狂ってる…まさか本当にこの世界の10分の9の人間を抹殺するつもりなのか…)
魔物大将軍ゾロッカは『人類の10分の9を抹殺する』という事を言っていたが、まさかそれを本当に実行するつもりだとは思っても居なかった。
しかもそれを機械的に行うという無機質さが異常だった。
魔物大将軍とて色々と個性があるが、このゾロッカはまさに異常だ。
人間を憎むでも楽しむでも無く、ただただ機械的に人口を減らすという行為にのみ固執する。
その感性がどうしても理解出来ないし、したくもない。
ただ、魔物大将軍としての力量は確かで、その采配に疑問を感じる事は無い。
「だが、カラーが住まうという森…」
「そ、そこは無理ですゾロッカ大将軍! そこはドラゴンが居る地域と近いです! 下手にドラゴンを刺激するのは…そ、それに今はおられませんが、ケッセルリンク様が…
「分かっている。私とて無意味にドラゴンに手を出すつもりは無い。いくらドラゴンが聖魔教団に協力しているといってもな。それにケッセルリンク様に対しても申し訳が立たぬ」
聖魔教団に協力しているドラゴンが居るのは有名な話だ。
ただ、地上の魔物達にはあまり縁の無い事で、相手は人間だけだ。
それにケッセルリンクに対して万が一にも敵対する訳にはいかない。
「次の場所を探す。そこにジグソウを送り込む前にまずは抵抗する奴等を皆殺しにしなければならん」
「…ハッ」
大将軍の言葉に皆は頷くしかない。
そして再び旨味の無い虐殺が起きる…そう思うと魔物将軍達の気は晴れなかった。
「戻ったぞ」
ペンシルカウにランス達は戻ってくる事が出来た。
相変わらず地上は酷いありさまだったが、ペンシルカウは一応は平和と言えた。
「おかえりなさい、ランス君」
「大丈夫でしたか? ランスさん」
それもそのはず、ここには魔人ハウゼルと魔人シルキィの二人が居るのだから。
「二人はまだここに居て大丈夫なの? 魔王からは何か言われないの?」
レンの言葉にシルキィは苦笑する。
「不思議とね…ガイ様から特には何も言われて無いわ。勿論、命令があったら皆とも戦わないといけないから私としては複雑な状況なんだけど…」
魔王ガイは本当に何も言ってこない。
自分達の現状を把握していない…いや、興味が無いので調べる気も無いのかもしれない。
ただ、魔人筆頭のバークスハムならば把握していてもおかしくは無い。
しかし、そのバークスハムもこの戦争に関わる気はない様で、魔王の側を離れていない。
「それよりもランスさん…今の地上の状況を知ってますか?」
ハウゼルが悲しそうな目でランスを見る。
「知っとるぞ」
「そうですか…私達としても何とかしたいと思うのですが…やはり手を出す訳にもいかなくて…」
「気にするな。お前が悪い訳じゃ無いだろ」
ランスはハウゼルの頭をぽんぽんとする。
「だから俺様が来たんだろうが」
「ランス君が来てどうにかなる事ならいいんだけどね…」
シルキィはランスの言葉にも難しい顔をする。
「なんだシルキィ。俺様でも出来んとでもいう気か」
ランスの言葉にシルキィは首を振る。
「倒すだけならランス君なら出来ると思う。ただ、そのための状況を作るのが難しいと思う。これは戦争だもの。やっぱり数は必要よ」
「何だお前。昔はそんな事も気にせずに突っ込んで行ったくせに」
「そ、それは昔の事でしょ! 今は私も魔人四天王だもの…それくらいは考えるわよ」
シルキィは顔を真っ赤にしてランスに詰め寄る。
「フン、魔人というヤツはどいつもこいつも成長せんからな」
ランスはシルキィを無視して周囲を見渡す。
「ハンティはおらんのか」
「始祖様は今はおりません。でも、何か重大な事が起きたと言っておりました」
カラーの1人がランスに報告する。
「そうか。しかし今の戦況はどーなっとるんだ」
ランスがハウゼルとシルキィを見る。
ランスの視線を受けて、二人の魔人は同時に首を振る。
「少しくらい調べておこうとかは思わなかったのか、お前達は」
「申し訳ありません…」
「私達が動くと面倒な事になると思って…」
「まあいい。それよりも今の戦況を報告できる奴はおらんのか」
その言葉にもカラー達も同じように首を振る。
「ランス、カラー達にそこまで求めるのは酷だ。そもそもカラー達にとってはこの戦争は本来は対岸の火事…とまでは言わないが、関わり合いになりたくない出来事だろうからな」
「別にそこまで言って無いだろ。だが、これじゃあロクに動けんぞ」
情報なしに戦略的な行動は出来ない。
こう見えてもランスもその辺は色々と考えている。
伊達や酔狂でリーザス、ゼス、ヘルマン、JAPANで戦争をしてきた訳では無いのだ。
「それよりも…気になってたんだけど、これ闘将よね」
そしてシルキィは突っ込もうかどうか少し悩んでいたが、とうとう突っ込む事に決める。
それはランス達の後ろに居る3体の闘将の事だ。
その闘将もシルキィとハウゼルを見て無言だった。
こうして地上において、本来出会う事が無い魔人と闘将が出会うのだった。
最初は闘将をオリジナルにしようかと思いましたが、キャラの増やし過ぎは絶対自分の首を絞めると思ってランス10で登場した闘将になりました
結構性格分かりやすいキャラでしたし
ガイヤ、マッチュ、オノレテガとか考えてたけど絶対途中で
ガイア、マッシュ、オルテガとかくの目に見えてたんだよな…