ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争㉛

 魔人―――それは人類にとっての恐怖の象徴。

 今の魔人戦争でも、闘神は魔人並みの戦闘力を持つとされていながらも、その力の前には無力だ。

 それは魔人の持つ無敵結界の力であり、それを何とかしない限りは魔人に傷一つつける事すら不可能だ。

 その魔人が今ペンシルカウにて闘将と出会った。

「…魔人」

 闘将ホセイトがハウゼルとシルキィを見て呟く。

 ハウゼルとシルキィはこの戦争に参加していない魔人だが、やはり魔人なのでその気配は恐ろしい程濃厚だ。

 これまで魔人と戦っていた闘将ならば気づかないはずが無かった。

 そしてとの呟きの残りの二人の闘将であるロブロズとルデムは―――

「うっひょーーーーー! 可愛い!」

「それにカラーってやっぱり美少女だー! イヤッホーーーーー!」

 両手を上げて万歳していた。

「お前達はそれしかないのか…」

 まともなホセイトは少し疲れたような声を出す。

「マスター、説明をして欲しい。何故ここに魔人が居るのか」

「ランス、いいか?」

「別にいいだろ。どうせスラルちゃんの命令に逆らえんのだろ」

 ランスの言葉にスラルは闘将達に説明をする。

 それはこれまで魔人を人類の敵として認識していた闘将にとっては信じられない話だった。

「全ての魔人が戦争に参加している訳では無いとは知っていましたが…まさか戦争に反対をしている魔人が居るとは」

 ホセイトは事情を聞かされて呻く。

 だが、確かに言われてみればそういう魔人が居ても別に不思議では無いのだ。

 大体全ての魔人がこの戦争に参加して居れば、聖魔教団はもっと早くに滅亡していただろう。

「私はこの戦争には反対だったんだけどね…でも、魔王様の許可が下りたのなら、魔人達は止まらないわ」

 シルキィの言葉を聞いて闘将達は無言になる。

 人類の敵だと思っていた魔人の中には、必ずしも戦争に乗り気ではない者達も居るのだという事。

 そしてまだその中には魔王も含まれているという事。

「でも何でカラーを守ってるんだ? やっぱり可愛いから?」

「ルデム、そんな訳が無いだろう」

「…確かに戦争には参加してませんが、だからと言って人類の味方も出来ませんから。幸いにもカラーはその範疇から外れて居ますから」

 ハウゼルは目を伏せ、痛ましい顔をする。

「そうか…複雑だが、受け入れるしか無いのだろうな」

 ホセイトは一度ため息をつくが、直ぐに気を取り直したようだ。

「それでマスター。これからはどうする? 例の魔物大将軍とやらを倒さなければならないのだろう」

「あ、そうですね…ランス様、どうしましょう」

「フン、その前に情報を集めるのが先だ」

(というか数が全然足らんしな)

 魔物大将軍を何とかする―――改めて考えても一苦労だ。

 ある意味魔人を倒すよりも面倒くさい気がする。

 何しろ魔物大将軍というのは基本的に前線に出て来ない。

 そのためには情報を集めて魔物大将軍が何処に居るかを探らないといけない。

 そして魔物大将軍を倒すためには、その周囲に居る魔物将軍や魔物隊長、そして魔物兵を引き付ける存在も必要となる。

 ゼスでカミーラ率いる魔軍と戦った時には魔物大将軍は居なかった。

 JAPANの時も同じで、ザビエルも魔物将軍を3体しか連れてこれなかった。

 なのでランスが戦ったのはザビエル率いる魔軍と戦った時なのだが、その時にはランスを支えるに十分な軍隊が居た。

 しかし、今の時代にそんな事が出来るか? という疑問が出てくる。

 何だかんだいってランスがそういう軍隊を率いる事が出来る者と知り合えたのも、これまでの冒険の過程でつながった縁も多い。

 だが、今は戦争中なのでそんな余裕は当然無い。

(このまま突っ込むなど論外だしな…)

 馬鹿正直に魔物大将軍に突っ込むなど愚の骨頂、そんな選択肢は最初からない。

「おいお前等。偵察にでも行ってこい」

 ランスの言葉に闘将達は自分達を指さす。

 そして一斉に手を横に振る。

「いやいや、俺達にそんな器用な事出来ませんって」

「そうそう。ぶっちゃけ戦う以外に取りえないし」

「そういうのは得意な者達に任せた方が良い。私達にも向き不向きがある」

「使えんな。闘将や闘神は本当に戦う以外何も出来ん奴等だな」

 ランスの言葉に闘将達は目に見えて落ち込む。

「まあまあランス様。闘将は目立ちますから…出来る人達に頼むしか無いですよ」

「おおっ…あっちのマスターも良いけど、こっちのマスターもいいな!」

「そうだな! こっちもこっちで困らせたい!」

「やかましい! 全く、闘将というのはやかましい奴しかおらんのか」

「大将、それに関しては私に任せて欲しい」

 シロウズがランスに対して名乗り出る。

「こう見えても私は地上ではそこそこ名の知れた男だ。それに私も一軍団を操る力が有ると自負している。地上の者達も今の状況を何とかしたいはずだ。そして闘将の助けが有るとすれば彼等の希望となる」

「出来る訳? あんたに」

 レンの言葉にシロウズは頷く。

「勿論だ。ただ、そのためには大将達と連携する必要もあるという事だけは理解して欲しい」

「フン、足手纏いになるなよ」

 ランスの言葉にシロウズは頷く。

「ただ、今の状況、何処が一番大きな反抗拠点かを知っておく必要は有る。一つの都市が殲滅されたのだろう」

「まだ人が生きている所で…一番大きな場所だけは見ておきました。ここです」

 ハウゼルが地図に〇をつける。

 そこが今の人類の大きな拠点なのだろう。

「些か遠いが、うしが有れば直ぐにでもたどり着けるだろう。では私は先に動く。連絡の方は…」

「はいコレ。Σから預かって来たわ。魔法通信機ってやつ。魔法を使える奴が居れば問題無く使えるらしいから」

「それは助かる。幸いにも私は神魔法の素質が有るので問題無い」

 そう言って通信機を受け取ると、シロウズは直ぐに動く。

「…地上の者達が気になるのだろうな。気持ちは分かる」

「そうね…私としても何とかしたいけど、何ともならないのがもどかしいわ…」

 メイの言葉にシルキィも暗い顔をする。

 そんなシルキィの頭をランスはぽんぽんと軽く撫でる。

「そんな顔をするな。俺様が何とかしてやる」

「うん…でも、危険なのは間違い無いわ。魔物大将軍って無敵結界が無いだけで魔人と同じくらい強いって話だし」

「問題無いと言ってるだろ。それよりもこっちからも動かんとな」

「珍しく積極的ね」

 珍しくランスがやる気になっているのを見てレンは目を丸くする。

 ランスは基本的に女が関わって居なければ積極的に動かない。

 冒険なら話は別だが、こうした戦争に積極的に関わるような人間じゃ無い。

「そんなのどうでもいいだろうが。それよりもこっちからも動くぞ」

「はい、ランス様!」

 ジルが返事をすると同時に、部屋に一人のカラーが入って来る。

「ランス、戻ってたのかい」

「あ、ハンティだ」

 戻って来たのはハンティ・カラーだ。

「って何で闘将がここに居る訳!?」

 そして闘将がペンシルカウに居るのを見て驚く。

「今説明するからちょっと待ちなさいよ」

 レンはこれまでの経緯をハンティに説明する。

 その言葉にハンティは納得したようだが、直ぐに苦い顔をする。

「状況は本当に悪いよ。魔軍がやってるのは殲滅戦…占領とかそういう事を一切考えていない、言葉通りの虐殺」

「そんなにか?」

 ランスも魔軍の行動は知っている。

 基本的に男は殺し、女は凌辱の限りを尽くす。

 それが魔物として当然の事であり、ランスもゼスでそういう光景を見てきた。

 それに、カミーラもゼス王宮を占領してそこを拠点としていた。

 占領行為を全く行おうとしないのは違和感がある。

「ああ。それもどれもこれも酷い有様さ。今回の魔物大将軍は人類を殺す事を目的としているみたいだよ」

「魔物大将軍によって方針が違うって事ね。そして魔王もそれに対して何も言わない」

 シルキィとしても何とかしたいが、どうにもできない。

 下手に魔王に命令されて魔物界に留まっているだけというのも体が受け付けない。

「じゃあ魔物大将軍が死ねば…」

「別の魔物大将軍が送られてくるだけなんだけどね…」

 今の魔物大将軍を倒しても事態の解決はしない。

 それは今を生きる者達にとっては重すぎる事実だ。

「フン、まずはぶっ殺してからだろうが。ハンティ、お前は今まで何をしてた」

「こっちはこっちで色々とやる事があってね。ま、それは後で教えるよ。それよりも今をどうするか…だろ?」

「問題はそこよね。これからどう動くか…そしてどうやったら魔物大将軍を倒せるか、という問題だしね」

 レンの言葉に誰もが口を閉ざす。

 正直に言えばこの戦力で魔物大将軍率いる軍団を倒すなど不可能だ。

 配下には魔物将軍や魔物隊長も複数する。

 魔物将軍を倒せば指揮が崩壊するとはいえ、それをするにも戦力が足りない。

「シロウズが何処まで戦力を引っ張れるか、それ次第だな」

 メイの言葉が全てであり、まずは数を用意しなければ戦争という舞台にも立てない。

「それまでは待つぞ」

 ランスの言葉に誰もが同意し、ランスも少しの間情報を集めるために待機をするしか無かった。

 

 

 

 そして一週間が経過する。

 幸いにも魔軍に特に動きも無く、人類が虐殺される事も無かった。

 ランスはいつも通りにセックスをして過ごしていた時、通信機から連絡が入る。

『大将、居るか?』

「シロウズさんからです!」

「お前か。随分遅かったな」

『それは失礼をした。だが、こちらも兵を纏める事に成功した。こちらとしても死力を尽くす覚悟が有る』

 シロウズが辿り着いた時、その都市は当然のようにピリピリしていた。

 魔軍による恐怖もあるが、それよりも虐殺行為があったために皆が一致団結し、魔軍に対して行動するという行動を取っていた。

 それもあり、シロウズも部隊を纏めるのが非常に早くいった。

『魔軍はまだこちらに向かっては来ていない。どうやら補給線が伸びているようだ』

 魔軍は占領せず虐殺と破壊行為をしていたので、魔物領からの補給線が完全に伸び切っていた。

 勿論それは戦力上愚策ではあったが、そもそもこの戦争においてはもう結果は分かり切っている。

 補給線が伸びようが、魔軍には大した影響は無いのだ―――この男が居なければ。

「ほう…そんな事になっていたのか」

 その報告を聞いてランスはニヤリと笑う。

「よーし、じゃあその補給の連中を襲いに行くぞ」

「相手の補給と断つんですな」

 ホセイトはランスの言葉の意味を理解し頷く。

「でも直ぐに新たな補給が来ないか? 相手だってそう馬鹿では無いだろう」

 メイは疑問を発するが、シルキィが首を振る。

「今回はそんなに潤沢に戦えないのよ、魔軍も。使える物資とかは決められてるのよ。バークスハム殿がそう決めてるらしいわ」

「…誰だ?」

「呆れた…本当に男の魔人は覚えて無いのね。魔王城で会ったあの真っ白い男の魔人よ」

「ああ、あいつか。そういや居たな、そんな奴」

 ランスは男の事など全く覚えていないので、魔人であってもバークスハムの事は忘れていた。

 何より、バークスハムはランスが出会う前に倒されていた魔人なので、その存在も知らなかった。

 だからランスは知らない…バークスハムは魔人筆頭として凄まじく強い事を。

「魔軍は決まった数しか補給されないし、人間にやられたからと言ってすぐさま補充される程緊迫して無いのよ。その辺りも地上の魔物達の進軍が遅い理由ね。地上の人間達も良く持ちこたえている、という事もあるんだろうけど」

「成程な。ならばその補給部隊が壊滅したとしても、魔軍本隊からの援助は無いという事か」

 メイの言葉にシルキィが頷く。

「そういう事。そもそも魔人が居るからね…地上の魔軍なんておまけみたいなものだしね」

 そもそも魔人の後ろには魔王が居る。

 魔王が居る以上、人間の抵抗など無意味だ。

 何しろ魔王は一人でこの世界の生命体を全滅させる事が可能だからだ。

 それを許さぬために勇者というリミッターがあるのだが、今の時代勇者の存在はほぼほぼ役立たずだ。

 実際、この30年続いたという第一次魔人戦争において、勇者が活動したという記録は無い。

「奴等の補給を絶つ、確かに戦略的には有効だ。だが、問題も出るな」

 メイが難しい顔をする。

「言ってみろ」

 ランスに促され、メイは口を開く。

「ここで補給部隊が全滅したとなれば、当然魔軍はその原因を調べるだろう。その結果、カラーの仕業だと奴等が断定する可能性も無くは無い。その場合、間違い無くペンシルカウの未来に問題が出る」

 メイの言葉にハンティも難しい顔をする。

「カラーの未来は色々と問題も多い。下手に動いて魔物にも人間にも睨まれる、何て事は避けたいのさ」

「今どうにかせんと人間が消えるだろうが。人間がいなくなったら困るのもカラーだろうが」

「…そうなんだけどね」

 ランスの指摘にハンティも複雑な表情を浮かべる。

「とにかく連中はぶっ殺す。それしか無いんだろうが」

「まあね…やれやれ、アンタくらいに無責任に考えられたらどれ程楽なのかね」

「フン、世界がどうなろうが俺様の知った事じゃない」

 全ては女と冒険のため。

 ランスの行動原理はこの二つに集約する。

 魔物大将軍をぶっ殺すのも全ては女の為―――ケッセルリンクのためだ。

 ここで聖魔教団に恩を売っておけば、絶対に自分の利になる。

 フリークに関しても、未来でイラーピュ、そしてヘルマン革命で共に行動した奴だ。

 口にはしないが、ランスにとってもフリークは中々面白いじいさんなのだ。

 そのフリークに対しても恩を売れるだろうし、もしかしたら聖魔教団の中にある便利なアイテムを取れるかもしれない。

 そういう冒険者的な打算もランスにはある。

「それよりもとっとと動くぞ。こういうのは急がんといかんからな」

 魔物相手では一手の遅れが大変な事になる。

 なにしろ魔物兵は人間の兵士よりも強い。

 今のランスならば魔物兵など大したことは無いが、それ以外の者にとっては脅威。

「そうだな。今が無くなっては未来を語る事も出来なくなってしまう。始祖様、俺はこのままランスについて行きます」

「ああ、好きにしなよ。別に私に許可を取らなくたっていいさ。ただ、私だって何もしてない訳でも無いからね。じゃあ私も行ってくるよ」

 そう言ってハンティも瞬間移動で姿を消す。

「おい闘将共。お前達も来い。連中を皆殺しにするぞ」

「了解した。魔軍は我等聖魔教団の敵。魔人には勝てないが、魔物兵相手ならば問題ありませぬ」

「久しぶりに魔軍との戦いだなー」

「これまで魔人とばっかり戦ってきたしな」

 闘将達もやる気十分といった感じだ。

「よーし、じゃあ行くか」

 そしてランス達も魔物大将軍を打ち倒すべく、行動を開始する。

 

 

 

「で、アレが例の連中か?」

 ランス達は高台の上から魔物兵達の列を見る。

 魔物将軍1体と、複数の魔物隊長、そして魔物兵達が何やら運んでいる光景だ。

「輜重部隊、とでも言えば良いかもしれないな。だが、俺の予想よりも遥かに数が少ないな」

「まあそりゃそうでしょ。魔軍にとっては地上の人間なんて相手にならないって感じでしょうからね」

 メイの言葉にレンも軽く返す。

 実際、護衛の魔物兵は決して多いとは言えない。

 普通の魔物兵とは違い、軽装の魔物兵の数が多い。

 ランスもこれまで魔物兵を色々と見てきたが、魔物兵というのはバリエーションが意外と多い。

 緑、青、赤、灰の一般的な魔物兵では無く、変わった衣装を着た魔物兵にも遭遇してきた。

 そして今回の魔物兵達はそれこそ戦闘のための兵では無いのか、魔物スーツも非常に貧弱だ。

「それにしても変な光景ですよね。態々魔物領から補給物資を持ってきてるんですよね?」

「色々と理由が有るんです。一番の理由は魔王様の意向なんですよね」

 ハウゼルは心配だからとここまでついて来てくれている。

 戦闘には参加できないが、こうした軽い偵察くらいにならば付き合ってくれるようだ。

「魔王の意向…ね」

「あくまでも目的は闘神都市…魔王様とバークスハム様にはそんな感じがするんです。言ってしまえば、地上はどうでもいい…そんな感じもするんです」

 ハウゼルはこの戦争が始まってからの違和感を口にする。

 今回の戦争は非常に非効率的だ。

 そもそも今回の戦争は『人間界を攻めても良い』という言葉だけだった。

 攻めても良い、つまりは攻めなくても何のお咎めも無いのだ。

 もし魔王がその気ならば、現存する全ての魔人を総動員して闘神都市だけでなく、地上まで蹂躙する事が出来るのだ。

 それをしていないというのは、魔王にとっては地上に居る人間なんてどうでもいいと思っているとしか考えられない。

 バークスハムもその意図を感じ取っているのか、地上を攻める魔物兵の数は非常に少ない。

 だからこそ、地上の者達はまだ耐える事が出来ているのだ。

 もし全ての魔物兵が参戦しているのなら、人類はもうとっくの昔に終わっている。

「それと新しい魔物大将軍が人々の拠点すらも破壊しているからでしょうね。戦略的には愚策だし」

 レンにとっても今回の魔物大将軍のイカレ具合には呆れてしまう。

 戦争をしているのではなく、虐殺を目的にして行動しているので人間達が使っていた拠点を利用しようともしない。

 まさに破壊と殺戮、それが今回の魔物大将軍の目的なのだ。

「だからこそ付け入る隙がある、とも言えるけど…」

「バカなだけだろ。そういうヤツはとっとと殺すに限る」

 ランスはそう言うが、流石にまだ準備が整っていない。

 まずはそのための準備…即ち、ここで補給線を断つ事で相手を干上がらせる。

 ただ、相手も馬鹿じゃ無いのでそんな事をすれば当然人間達から略奪するだろう。

 そしてその時こそ、魔物大将軍を殺すチャンスが生まれる。

「本当に魔物の領域からの援軍とかは来ないんですか?」

「その気配は無し。ただ、決まった周期で魔物大将軍が入れ替わり、それに伴って魔物兵も入れ替わるの。変な事かもしれないけど、これが魔王様の方針なの」

「魔王が居ればそれだけで終わるしね。本来はこんな戦争なんて起きようもない。それが魔王だもの」

 この戦いは魔王からすれば本当にどうでもいい戦いなのだ。

 魔王とはこの世界の頂点であり、絶対的な支配者。

 どんな馬鹿げだ事だろうが許されるのが魔王なのだ。

「マスター、貴殿等は随分と魔王に詳しいな」

 闘将ロブロズがジルに尋ねる。

 ランス達の会話を聞き、疑問に思ったようだ。

「色々とあるんです…私達には」

「そうか、色々か…まあ確かにこうして魔人と共に居るという事こそが明らかに異常な事なのだがな」

「えー、俺っちは気にならないけどなあ。ハウゼルさんてメチャクチャ綺麗だし!」

「こんな優しい魔人が居るだなんて信じられないくらいじゃからな」

 闘将達も今の現状をすんなりと受け入れている。

 それもこの闘将達の性格ゆえなのだろう。

 それを見越して、Σもこの三体をランスに預けたのかもしれない。

「そろそろ行くぞ。一匹残らず魔物共をぶっ殺すぞ」

 ランスはバイクに乗ると、ジルとレンとメイもバイクに跨る。

「それかっこいいなあ…俺も乗ってみたい」

 闘将ロブロズが羨ましそう(?)な声でランスのバイクを見る。

「男なんぞ乗せん。それにお前等闘将がこれに乗れる訳無いだろうが」

「そりゃそうだ! よーし、魔物相手に暴れるとするか!」

「うむうむ、魔人相手は無理じゃが、魔物兵ならば問題無いわい」

「ではマスター、我々も続きます!」

「フン、遅れたら承知せんぞ! 行くぞ!」

 ランスはバイクを走らせ、魔物の群れに突っ込んでいく。

「行くぞ! ロブロス、ルデム!」

「了解!」

「突撃じゃー!」

 そして闘将達もランスに続く。

 こうして、本来はありえない光景―――地上の人間と闘将が協力して魔軍と戦うという事が始まろうとしていた。

 

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