ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争㉜

 魔物の部隊―――当然そこには多かれ少なかれ不満が出る事もある。

 今回の戦争も、魔物兵達も色々と好き勝手出来る面もあるが、それでも制限はつく。

 魔物兵というのは魔物スーツを着なければ兵として役に立たない。

 それも魔物隊長、魔物将軍という上の者が居なければ即座に瓦解する、そんな程度の軍隊だ。

 その魔物将軍も今の状況に腐っているのだから、それが下の者に伝わらないはずが無かった。

「将軍…不満そうですな」

 部下の魔物隊長の言葉に、輜重部隊を任されている魔物将軍は露骨に不満を露にする。

「当然だ。補給も戦争には必要な事だが、よりによってそれがゾロッカ将軍の所だからな」

「…あの方ですからね」

「ああ。普通の戦争をして居ればこれ程までに早急な補給など必要無いのだ」

 ゾロッカは異常なまでに人間の数を減らす事に拘る。

 それ故に行く先々で人間を皆殺しにし、その後に残るのは廃墟だけだ。

 ただ、そんな事をしていれば当然行軍に影響も出る。

 それにゾロッカの開発した魔物スーツはほぼ確実に魔物兵に犠牲が出るものだ。

 そんな将軍の元に補給物資など必要なのか、そう思うのも当然の事だ。

「元帥の命令だ。それは実行しなければなるまい」

「レギン元帥も厳格な方ですね。何だかんだ言ってもこうして補給はしてくださる」

「ああ…だが、戦争を出来るだけでも感謝だな」

 魔物将軍の言葉に魔物隊長も笑う。

 魔王ガイは人間を解放した。

 おかげでモンスター達は人間に手を出せなくなったが、こうして戦争という行為自体は出来ている。

 それこそが魔物将軍の生き甲斐なのだ。

「しかし人間共も中々頑張りますな。魔人様が暴れていてもまだ時間がかかりそうです」

「うむ、その辺りは嬉しい誤算とも取れるがな。ただ、ゾロッカ大将軍は可能な限り人間共を皆殺しにしているそうだからな…」

「楽しみが減りますな」

「そうだな。だが、上手くいけば…」

 将軍と隊長が話していた時、魔物兵達が少しざわめき始める。

「おい、何だアレ?」

「さあ…パイアール様の兵器じゃないか?」

「そういやそんな感じもするな…」

 土煙を上げて猛烈なスピードでこちらに向かってくる物体を見て、魔物兵達は何かを話している。

「どうした、お前達」

「いえ、何かがこっちに近づいてきていまして…まさか人間共のはずはありませんし」

「当然だ。この地域に生き残っている人間はほぼ居ない。居たとしても、我等に反撃出来るような戦力は無いはずだ」

 魔物達がソレが何なのか分からず困惑していると、ソレは凄いスピードで魔物兵に向かってくる。

「お、おい! こっちに突っ込んでくるぞ!?」

「な、何だと!? お、おいこちらは…」

「がはははは! 死ねーーーーーーーっ!!!」

「うげっ!」

「ぐひゃっ!」

 そしてバイクに乗ったランスはそのバイクを器用に動かし、後輪を利用して魔物兵を吹き飛ばした。

 大きな質量を持った物体による一撃で魔物兵達はそのまま即死する。

「よーし、やれジル!」

「はい、ランス様!」

 ランスの合図でジルは用意していた魔法を放つ。

「ゼットン!」

 火炎系の上位魔法であるゼットンが魔物兵に向かって放たれる。

 それは灼熱の火炎となり、魔軍の補給物資と共に魔物隊長を含む魔物兵を巻き込み炸裂する。

 魔物兵達はうめき声一つ上げる事も出来ず、そのまま消し炭となって消滅する。

「に、人間共の襲撃か!?」

「がはははは! 皆殺しじゃー!」

 ランスはバイクから跳躍すると、そのまま魔物隊長を真正面から一刀両断する。

「ば、バカな!? 隊長が一撃で!?」

「ば、バケモノだ!」

 魔物隊長がランスに一撃で殺されたのを見て魔物兵達が怖気つく。

「バカ者! 相手は少ないのだ! 包囲して殲滅しろ!」

 魔物将軍は魔物兵を叱咤するが、その叱咤は直ぐに役に立たなくなる。

「た、大変です将軍!」

「何だ!?」

「と、闘将です! 闘将が襲って来ました!」

「何だと!? 闘将だと!? ば、バカな! 闘将と闘神は魔人様の相手をしていてこっちにまで来れないはずだ…!」

 部下の言葉に将軍は驚愕する。

「魔物兵を殲滅する! 一匹たりとも逃すな!」

「了解! 魔物相手なら遠慮はしないぜ!」

「無敵結界が無ければこっちのものじゃ!」

 ランスに従って来た3体の闘将はまさに一騎当千の兵だ。

 それも闘将達には疲れや疲労も無く、それこそ一日中戦ってられるほどの力が有る。

 更に言えば、闘将は魔物兵程度軽く捻る事が出来る。

 その強固な体は並の物理攻撃では傷一つつける事は出来ないのだ。

「レン! ジル! 奴等の持って来た物は全部燃やせ!」

「了解! 火爆破!」

「はい、ランス様! 業火炎破!」

 ランスの声に合わせてレンとジルは魔物兵達が持って来た補給物資を燃やし始める。

「お、おのれ人間!」

 魔物将軍は怒りに我を忘れてランスに向かって行く。

 まさか自分達がこんな所で奇襲を受けるとは思っても居なかった。

 いや、そもそもここの周辺は既に魔軍の支配下、人間がこんな所に居るとすら思っていない。

 その事もあり、魔物将軍は頭に血が上っていた。

 なのでこの男がどれ程の強さを持っているのか、それを推し量る事も出来なかった。

「死ね! 人間!」

 魔物将軍が鉄球を振り上げ、ランスに向けて叩きつける―――前に鉄球を持っていた手が宙を舞った。

「え?」

 一瞬の出来事に魔物将軍は目を丸くする。

 あまりの切味に痛みすら感じなかったが、即座にその頭にランスの剣が突き刺さる。

 そのまま魔物将軍は一言も口を開く事なく絶命する。

 そして目の前で魔物将軍が死んだ事に気づいた魔物兵のやる事は一つしかない。

「しょ、将軍が殺られた!」

「に、逃げろー!」

 魔物兵はまだまだ数が多かったにも関わらず、蜘蛛の子を散らせたように逃げていく。

 そして一度逃げた魔物兵は魔軍に合流することなく、スーツを脱ぎ捨てて野良の魔物になる事が多い。

 誰だって殺されるために軍隊に合流しようなんて考えないし、そもそも魔物にはそんな忠誠心なんて存在しない。

 魔物兵は人間をいたぶり、殺したいがために魔物兵をやっているのだ。

 それが出来ないと分かればもう軍隊になんて所属する理由は無い。

「どうする? ランス。追いかけて殺す?」

「無視していいだろ。どうせあいつらはもう魔軍に合流せんだろうからな」

 ランスも魔軍の脆さは十分に分かっている。

 頭を潰せば魔物なんてまともな軍隊として成り立たないのだ。

 勿論、そんな事が出来る人間なんて世界にも一握りしか居ないだろうが。

「それにしても一瞬だな。俺でも出来る事が殆ど無かった」

 補給物資を破壊し、魔物兵相手にも簡単に戦っていたメイが苦笑しながら合流する。

「まさか人間がここまでの強さを持ってるとは…」

「俺は他の闘将から聞いてたけど、マジで強いんだな」

「むしろそれだけの強さを持ってて何で闘将になっとらんのかわからんわい」

 闘将達は改めてランス達の強さを目の当たりにして感心している。

「それよりもお前達も魔物兵をきちんとぶち殺したんだろうな」

「それは無論であります。魔物兵相手ならば魔法を使う魔物兵で無い限りは我等は負けない」

「そうそう。今回魔法を使う魔物兵も少なかったし、その魔物兵もカラーの嬢ちゃんが真っ先に撃ち殺してくれたし」

「闘将の弱点は知っている。ならば魔法を使う連中から排除するのが一番だ」

 メイも闘将の言葉に腕を組んで頷いている。

「カラーは弓が上手いのが多いけど、メイは別格ね」

 レンも素直にメイの腕前を称賛する。

「お前が褒めるなんて珍しいな」

「こういう時は素直に認めるわよ。今回は上手くいったけど、問題なのはこれからでしょ」

「フン、分かっとるわ」

 ランスは残されている魔物兵の補充物資を見る。

 そこにあるのは食料や武器といった品物が多数残って居る。

「持って行くわけにもいかんしな。ジル、レン、メイ、残らず吹き飛ばしとけ」

「分かりましたランス様」

「そうね。跡形も無く吹き飛ばせばいいか」

「分かった。持ち帰れないのが残念だが、仕方ないな」

 そう言って魔法を使える者達が物資を次々に吹き飛ばしていく。

「問題は魔軍の本隊ですな」

 そう、まだ魔軍の本隊が残って居る。

 魔物大将軍を倒さぬ限り、人間達は無造作に殺されていくのが現実だ。

(もうちょい数が必要だな)

 ランスは戦場では意外と冷静だ。

 調子に乗るのがランスの悪い癖だが、今の状況では流石に調子に乗るような事は無い。

 何しろ数も居ないし、ランスを支援できる程の国も無いし、一発逆転の道具が有る訳でも無い。

 だがそれでもランスは負ける気は更々無い。

(まあいざとなったら逃げればいいか)

 そんな事を考えながら、ランス達は帰路につくのだった。

 

 

 

「何だと。補給部隊が全滅しただと」

「は、はい…将軍も討たれ、物資も全て破壊されたようです」

 部下の報告にゾロッカは低い声で答えた。

 部下の魔物将軍もそんな大将軍の言葉には震えるしかない。

「…まだ人間共が居たという事か?」

「そ、そうかもしれません。もしかしたら墜落した闘神都市に何かがあった可能性も…」

「可能性は否定出来ん。だが、それでも今更だ」

 もし墜落した闘神都市から動きがあったのなら、既に魔人が動いていてもおかしくない。

 闘神都市は魔人の獲物なので、魔物兵達は殆ど手が出せない。

 そもそも、空中に浮かぶ闘神都市に乗り込む事が一般の魔物兵には難しいし、魔物兵では闘将の群れを相手するのは厳しいのも現実だ。

「では一体何者が…」

 ゾロッカが怒りを込めながらも冷静であった事に部下達は安堵する。

「分からぬ。だが、問題なのは補給物資は無いという事だ」

 補給物資は届かない、それが現実だ。

「レギン元帥にお頼みすれば…」

「無駄だな。元帥の上には魔人筆頭が、そして魔王様が居る。今回の戦いの条件は知っているだろう」

 その言葉に魔物将軍達の顔が沈む。

 確かに戦争は好きに出来るが、それでも色々と制約がかけられていた。

 そもそも魔人が好きに暴れている状況なので、魔物兵も色々と魔人に対して気を遣わなければならないのだ。

 何しろ魔人がその気ならば、魔物達の命ですらも軽いのだ。

 下手に意見すれば殺されるのも珍しく無く、必要ならば貴重な飛行魔物兵もこちらから持って行かれる。

 全ては魔人の気分次第、それが魔軍という軍隊の現実でもあった。

「人間共に動きはあるか」

「今の所は…ただ、防備を固めているのは間違い無いかと」

「…ならばそちらは一度放っておけ。それよりも補給部隊を襲った連中を突き止めろ。ドラゴンの線は無いのだろう」

「は、はい! 破壊の跡からしてドラゴンの可能性は低いかと…」

「少しの間は偵察部隊を出しておけ」

「「「はっ!」」」

 ゾロッカの言葉に魔物将軍達は勢いよく返事をしてテントを出ていく。

「人間共め…そう簡単にはいかぬという事か」

 この戦争で人類の数を10分の1にする―――それがゾロッカの目的だ。

 可能な限り人間を殺し、世界をさっぱりさせなければならない。

 そのためにジグソウという魔物スーツを開発したのだ。

 全ては1000年の夢のため、愚かな人類は世界には必要無いという妄執のため。

 魔物大将軍ゾロッカはその歪んだ妄想を膨らませ、実行していた。

 

 

 

「とはいえやっぱり出来る事って無いわね」

 アレから1週間―――特にランス達に動きは無かった。

 魔軍の方はアレから動きが全く無かった。

「想像以上に魔軍もカツカツなんだと分かったな。いや、戦争してるのに何でそんなになっているのかは知らんが」

 メイも想像以上に遅い魔軍の行動に少し呆れていた。

「魔軍としての行動は遅いけど、魔人は一方的に攻めてくる。そっちの方が問題なんだけどね…」

 シルキィの言葉はその場に居る者に重く伸し掛かる。

 魔物将軍率いる魔物兵よりも魔人1体の方が非常に重い。

 その魔人が地上に居ないだけでも人類は楽なのだ。

「しかし補給部隊が倒されたのに本当に追加の補給って行われないんですね」

「補給なんて無くても十分だって判断なのでしょうね。その辺を考えているのは魔物大元帥…いえ、魔人筆頭バークスハムなんでしょうけど」

「どうでもいい。それよりも今のうちにぶっ殺すのが一番だ」

 ランスはそう言うが、実際には今は動けない。

 魔物達の数は本当に多い。

 そんな中に突っ込んで行っても玉砕になるだけで意味は無い。

 ランスは確実に魔物大将軍を殺したいので、チャンスはそう多くは無い。

 とはいえ、ランスも今の戦力では流石に魔物大将軍を倒す事は出来ない。

 膠着状態―――というには魔軍が有利過ぎるが、それでもランスは待つしか無かった。

 と言ってもランスは毎日毎日ジル、レン、ハウゼル、シルキィとセックスばかりしているので、こういう日が続いても別に問題は無いのだが。

「でもやっぱり動けないのもね…シロウズからも何の変化も無しっていう連絡しか来ないし」

「地上の者と連携しなければこちらも動けませんからな。流石に今の数で魔物大将軍率いる部隊とぶつかるのは無謀」

「ああ。相手が動けないというのは望ましい事なのだが…相手がアクションを起こさないと動けないというのももどかしいな」

 闘将もメイも今の状況に少し焦れている感じだ。

 だが、それでも待つしかない。

 今の状況ではランス達でもどうしようもないのだ。

 しかし―――その状況がとうとう動く時が来た。

「遅くなったね。ようやく、私も仕事が出来たって感じがするよ」

 そう言って入って来たのはハンティだ。

 その顔にはやり遂げたような顔がある。

「何だハンティ。お前がそんな得意げな顔をするなんて珍しいな」

 ハンティとの付き合いはそれなりに長いが、あのハンティがこうも楽しそうな顔をしているのは珍しいと思った。

「ああ、アンタが求めていた援軍ってのを連れてきたのさ」

 そう言ってハンティが手を叩くと、一人の女性が入って来る。

「あ、お前…お町か!」

「うむ、久しぶりじゃな。ランス」

 そこに居たのはJAPANで妖怪王をしているお町だ。

 その首にはランスが渡した黒部の牙がかけられている。

 それが有れば妖怪でもJAPANから大陸に渡る事が出来る。

「ってお前だけか?」

「まあ…そうじゃな。JAPANから出られるのは我だけよ」

 そう言ってお町は苦笑する。

「おいハンティ。確かにお町は中々強いが、それでも一人だぞ」

 確かにお町が来たのは戦力的にも女的にも嬉しいが、それでもたった一人だ。

 1人増えた所で援軍としては流石に厳しい。

 それを聞いてお町も笑う。

「確かに我一人ではそうじゃな。じゃが、お主にとっての最良の援軍を連れてきたつもりじゃ」

 お町はそう言ってコロコロと笑う。

「それにしても…まさか闘将までここにおるとはな。JAPANを荒らさなかった事だけはまあ感謝してやるが…」

 そう言って闘将達を少し複雑な表情で見る。

 以前にお町はJAPANの守護者として聖魔教団とも敵対していた。

 最終的にJAPANは聖魔教団に降伏したが、幸いにもJAPANは聖魔教団に完全に征服された訳では無かった。

 今でもJAPANの文化は残っており、特に変わった事も無い。

「あの…この人…なのかな? 彼女は誰?」

「あ、そういやお前は会った事なかったか。シルキィはJAPANには行かなかったからな」

 シルキィとの付き合いも結構長かったが、彼女はお町との面識は無かった。

「こいつはお町。JAPANの妖怪で俺様の女だ」

「勝手な事を言うな。何時誰がお主の女となった」

 ランスの頭をお町がその大きな尻尾で叩く。

「あ、なんか懐かしい感触が…」

「へえ…JAPANの妖怪か。そういや私はJAPANには行かなかったからなあ…」

 シルキィは人間だった頃を思い出し、遠い目をする。

「それにしてもランス。また女の魔人か…お主は本当に女となれば見境が無いのう」

「まあランス君から女の人を取ったら何も残らないしね…あ、紹介が遅れたわね。私はシルキィ、シルキィ・リトルレーズン。魔人四天王の1人で…ランス君の姉よ」

「何と…ランス、お主に身内が居たのか?」

 シルキィの自己紹介にお町は目を丸くする。

「こいつが勝手に言ってるだけだ。何度言っても聞かんからな…こいつは」

「それはともかく、お前だけか? 確かにお前は役に立つが、流石に一人だと厳しいぞ」

 ランスはハンティをジロリと睨む。

 確かにお町の加入は大きいが、焼け石に水とはこの事だ。

 いくら強くても流石に軍隊が相手では本当に厳しい。

「心配いらぬ。それを加味した上で、我はここにやってきた」

 お町はランス達を手招きすると、ペンシルカウの広場にやってくる。

 そしてオロチの牙を外すと、それを地面に置く。

「あ、それ外して大丈夫なの?」

 レンの言葉にお町は懐から一枚の鱗を取り出す。

「ああ…オロチの鱗か。じゃあもしかして…」

「その通り。今のこの時期ならばあの方が復活されるのだ」

「…何だと」

 お町が『あの方』という存在などランスには一体しか思い浮かばない。

 そしてお町は何やら言葉を放つと、オロチの牙が眩い光を放ち始める。

 その光が収まった時―――そこには巨躯の体を持つ、異形の物体が立っていた。

 異形の存在は欠伸をしてから周囲を見渡す。

「ここは…JAPANじゃねえな?」

 そしてランスの姿を見て、ニヤリと笑って牙を見せる。

「久しぶりじゃねえか! ランス! レン!」

「おう。お前も随分と寝てたようだな」

「本当にね。でも、復活出来たって事なの? 黒部」

「完全にって訳じゃなさそうだがな…ま、それでも長い間は居れるだろ」

 黒部は自分の体からそう判断する。

「黒部殿、一時的とはいえ復活させる事となり申し訳ありませぬ」

「気にするな。それよりもスラルは何処だ? 姿が見えねえが」

 ランスとレンが居るのにスラルが居ない。

 その事を黒部が口にすると、

「我は今この体の中に居る。久しいな、黒部」

 ジルの口からスラルが言葉を放ち、黒部に対して笑う。

「…お前、本当にスラルか? 声も姿も違うしよ…っていうか、その姿どっかで見た事あるような気がするな」

 黒部はジルの姿を見て首を捻る。

 一度何処かで見た事が有るような気がするが、何かが違う。

「今は我は肉体を持たぬのでな。ジルの中に入っている。こんな姿で悪いな」

「いや、別に構わねえぜ。俺と出会った時はお前は幽霊だったからな。で、アレから何年たった?」

 黒部がレンに向かって尋ねる。

「今は魔王が変わってGI期…魔王ガイの時代。そして今は…何年だっけ?」

「今はGI430年だ」

「そうそう、GI430年。で、今は人類は魔軍と戦争中って訳。ただ、あの時と違うのは魔人の数が10を超えてるって事」

「マジか!? 10を超える魔人が来てるってのか!?」

 その言葉だけで黒部は今の状況を理解した。

 黒部は藤原石丸に仕えていた時、魔人ザビエル率いる魔軍と戦争をしている。

 ただ、その時に参戦したのは魔人ザビエル…そして途中から襲って来た魔人レキシントンだけだ。

 しかもレキシントンの狙いはランスだけで、実質的には戦争に参加していたとは言い難い。

 それでも黒部は改めて魔人という存在の強さを思い知ったのだ。

「…状況が理解出来ねえな。そして今俺が呼び覚まされた理由もだ。説明はしてくれるよな」

 こうして妖怪王黒部が約400年分ぶりに目を覚ました。

 そしてもう一つの場所で、また別の英雄が行動を開始していた。

 

 

 

「魔軍の動きは無い様だな」

「ええ、シロウズ。あなたの言った通り、本当にランスさんがやってくれたみたいね」

「お前が残って居てくれて助かったよ、ラギ」

「幸いにもね。ただ、もうダメかもしれないと覚悟していたけどね」

 人類が魔軍と戦うために用意された拠点の一つ、シロウズはそこに辿り着き纏め上げた。

 巨大なアフロという容姿だが、不思議と変なカリスマを持ち、そして友であるラギと再会した事でここを纏め上げる事に成功していた。

 そしてランス率いる部隊と協力し、何とか魔物大将軍を倒すための行動を開始していた。

 ただ、それは並大抵の事では無い…何しろこちらには闘神も闘将も居ないのだ。

 有るのは聖魔教団が用意している数少ないアイテムだけだ。

 シロウズも状況は厳しいのは自覚していたが、その中に一つの希望が出てきた。

「戻ったよ、シロウズ」

「戻ってくれたか、ブリティシュ」

 シロウズの元に現れた精悍な青年は紛れも無く、あのエターナルヒーローの1人、ブリティシュだった。

「ランスからの連絡はまだ無いんだよね?」

「ああ。大将も何かしらの策を立てているのだろう。ただ、そのためには我々との連携は必須。その中で、大将の知り合いである君が現れた事は偶然では無いと信じたいな」

「僕の事はまだ話さなくていいさ。僕はこっちでやる事があると思うからね」

「今はそうだが、君は大将の元へと行くべき人だと私は思っている。ただ、今はその言葉を有難く受け取らせてもらうよ」

「ああ。人類は魔物に負けるわけにはいかない。あの時に誓った事を無かった事にする訳にはいかない。僕を助けに来てくれた日光とカフェのためにもね」

 エターナルヒーローのリーダーであるブリティシュの帰還。

 それもまた、これからの人類の希望となりえる事だった。




遅れました
キーボードが壊れるとか本当運悪い…

黒部とブリティシュの再登場です
でもこれくらいの戦力無いとこの戦争無理だよなあ
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