ランスがソリッドブラッドと組み合わせたランスアタックを放つ少し前―――人類軍は何とか魔物兵と戦っていた。
最初の方は良かったが、こうして時間が経つと魔軍との差が出てくる。
魔物兵は人間の兵士のおよそ3倍の強さを持っている。
その地力の差が徐々に出てくるのだ。
「押せ! 押し返せ!」
「どの道人間共は皆殺しなんだ! 今すぐ殺せ!」
魔物兵達が人類を徐々に押し返しつつあった。
「チィ、マズいな…」
「最初の奇襲の勢いが削がれたね。後は待つしかない」
「彼ならやってくれるのかい?」
「間違い無くね。それが出来るからこそ、彼は僕から見ても規格外なのさ」
魔物兵が強いと言っても、それはあくまでも一般の兵士の話。
ブリティシュやシロウズに対してはそこまで強い相手ではない。
だが、相手は数が多いのでこのままではいくら二人が強くても押し切られるのは目に見ている。
だからこそ彼等は待つ―――あの男が動くのを。
そしてその時はついに来た。
「な、何だ!? 何が起きた!?」
凄まじい轟音と共に魔軍に巨大な稲妻が落ちる。
「アレは…雷神雷光か!」
「そのようだね。どうやらランス達が本格的に仕掛けたようだ!」
魔軍に対してあんな魔法を使えるのは地上には殆ど居ない。
そしてその状況で動いているのは間違い無くランス達だ。
魔軍は突如として放たれた魔法に対して混乱しているようだ。
「落ち着け! まずは我々はここにいる人間共を始末するのが先だ!」
「は、はいっ!」
魔物将軍の言葉に魔物兵達は落ち着きを取り戻し、ブリティシュ達に向かってくる。
その時、先程の電撃よりも凄まじい凶悪な何かが魔軍に対して襲い掛かった。
「な、何だアレは!?」
「白い…塊!?」
魔軍が広範囲を襲う何かに気を取られていると、その白い…いや、青白い何かが魔軍を飲み込んでいく。
それと同時に明らかに周囲の気温が下がるのが感じられる。
「アレは…間違い無い、ランスだ!」
「大将の技か!? まさかあんな事まで出来るのか!」
ブリティシュの言葉にシロウズは少し興奮気味に答える。
恐らくランスが放ったであろう一撃は大量の魔軍を飲み込み、それはこちらで指揮をしている魔物将軍をも飲み込んだようだ。
「た、大変だ! 将軍が死んだ!」
「え!? な、何だって!?」
そして自分達を指揮する魔物将軍が死ねば魔軍はパニックになる。
魔物兵は魔物隊長や魔物将軍が居なければ軍として纏まれない。
魔物将軍の突然の死に魔物兵が混乱するのも無理は無かった。
「今だ! 魔物兵を倒せ! あの一撃はこちらの味方の力だ! 一気に攻め込むぞ!」
ここが勝負の時と判断し、シロウズは鼓舞するように声を上げる。
「「「うおおおおおおお!!!」」」
残った人類軍はその言葉に呼応するように、雄叫びを上げて魔物兵に向かって行く。
魔軍の混乱と士気の向上、それが合わさってブリティシュ達はどんどんと魔軍を押していく。
魔物将軍が突然死して魔軍は既にバラバラになっていた。
魔物大将軍はまだ居るが、現場の指揮官が死んでしまったので、この場で魔軍を立て直せるものはもう居ない。
そして戦場ではその一瞬が命取りになるのだ。
こうしてブリティシュ達もまた、魔物を押し返していく。
「おのれ、人間が!」
「フン、お前達は本当にワンパターンな言葉しかないな。つまらん」
怒りをむき出しにして襲い掛かって来るゾロッカの触手をランスは刀であっさりと防ぐ。
一振りで複数の触手を斬るという一撃は最早常人の理解の及ぶところではない。
まるでランスの刀に引き寄せられるように触手が集まっていっている、という方が正しいかもしれない。
それだけ今のランスの剣は異常な光景だった。
「…理解の及ぶ範囲じゃ無いな。だが、この力があっても無敵結界を使っていないノスには及ばなかった。魔人の恐ろしさを改めて認識させられるな」
ランスの戦いを見ているメイが唇を噛む。
ランスという人間の強さ、そしてそれを物ともしなかった魔人四天王の力、それをより強く感じ取ったからだ。
「あいつは別格よ。こんな三下と一緒にするべきじゃ無いわよ」
「まあそうかもしれないがな」
レンの言葉に苦笑し、メイは矢を構えると魔物兵に向かって放つ。
一度に二本の矢を放ったにも関わらず、その矢は魔物兵の心臓部を正確に貫く。
「お前の相手もいい加減に飽きたな。直ぐにぶっ殺してやる」
「おっとランス。先に奴を殺すのは俺だぜ?」
「お前は黙って見ていろ!」
「そうはいかねえ! まだ暴れたりねえからな!」
ランスと黒部はそう言うと同時にゾロッカに向かって駆ける。
「この…バケモノ共が!」
ゾロッカは恐怖と怒りが入り混じった言葉で叫ぶ。
ゾロッカの触手はランス達には通用しない。
黒部にはその強靭な肉体と回復力で。
レンには強力な防御魔法と盾による回避能力で。
ランスにはその凄まじい剣の腕で。
いくら魔物大将軍が強いと言っても、魔人のような強力な特殊能力が有る訳では無い。
無敵結界の無い魔人と称されようとも、魔人とは大きな差が有るのも事実だ。
「ハッ! その程度で俺達を皆殺しにしようなんざ笑わせるぜ!」
「そうね。分不相応な事言ってないでとっとと死になさい」
「所詮は経験値だな。魔物大将軍だからいい養分になるな」
好き勝手言われても、ゾロッカは返す言葉が無い。
(どうすれば…どうすればいい!?)
この場から何とか逃げられても、恐らくはその後は自分に出番は回ってこないだろう。
魔物大元帥であるレギンが一度失敗した自分を二度は使うはずが無い。
人間界に派遣される魔物大将軍の数は常に2。
それは決して曲げる事は無いだろうし、そもそもそれを決めたのは魔人筆頭であるバークスハムだ。
実際、それだけの数でも十分なのだ。
「もう面倒だな、さっさと殺すか。来い!」
「ぐがっ!」
ランスが声を上げると、ゾロッカの腹に突き刺さっていた剣が抜けてランスの手元に戻る。
その衝撃でゾロッカはついに地に膝を突く。
「おのれ…だがまだだ…お前達人間を殺しつくすまで死ぬことは出来ん!」
「うるさい。死ね」
ランスは剣を手にゾロッカに突っ込む。
触手がランスを襲うが、ランスにとってはそんなものは足止めにもならない。
剣で触手を斬り裂き接近する。
刀で本体である腹の中に到達する程に深い傷を与える。
「う、ぐおおおおおおお!」
ゾロッカの悲鳴が周囲に響く。
「ゾ、ゾロッカ大将軍!」
「お、お救いしろ!」
魔物兵が何とか大将軍を助けようとするが、
「やらせないよ。ゼットン!」
「そこまでじゃ。大雷撃!」
ハンティとお町によって魔物達は消し炭になる。
「がはははは! 止めだ!」
ランスがその腹に止めの一撃を加えようとした時だった。
「ぎゃあああああああ!」
「あん!?」
突如としてゾロッカの背中から剣が生えてくる。
正確には背後から剣で刺し貫かれた、というのが正しいだろう。
「大丈夫か! 大将!」
「む、貴様は…」
アフロの戦士であるシロウズが魔物兵を蹴散らしながら現れる。
「こ、こんな所で…」
そして魔物大将軍は断末魔の声を上げながら倒れる。
「無事かい。ランス」
魔物大将軍に剣を突き刺したのは、ランスも知っている男であるブリティシュだった。
「………」
ランスは無言でブリティシュに近づくとその頭を殴る。
「何をするんだい!?」
「やかましい! 俺様が止めを刺すところだったんだぞ! それを邪魔しおって!」
「え? じゃあもしかしてこいつが魔物大将軍だったのかい?」
ブリティシュは改めて自分が倒した魔物を見る。
それは確かに普通の魔物とは違う、明らかに上級の魔物だ。
「おいおい…どうするランス。賭けは不成立だぜ」
「どう考えても俺様の勝ちだろうが!」
「どっちが魔物大将軍を殺すかって賭けだったろ」
「ぐぬぬ…えーい、邪魔をしおって!」
「悪かったよ。でも、倒せたんだしとりあえずそれで良かったんじゃないかな?」
魔物大将軍の死体の側でのんきに話しているランス達を魔物兵達は遠巻きに見ていた。
「お、おい…ゾロッカ大将軍が…」
「し、死んだ…殺されたぞ…」
「に、逃げろーーーー!」
「あ、こらお前達逃げるな!」
魔物兵達は魔物大将軍の死を見て一斉に逃げ始める。
魔物大将軍が死亡した事でこの場に居る魔物達の指揮系統は完全に崩壊した。
まだ生き残っている魔物将軍は居るが、その魔物将軍でもこの混乱は止められない。
この場に魔人が居れば問題無かっただろうが、魔人達は闘神都市しか眼中に無い。
なのでもうこの魔物兵達を纏められる存在は居なかった。
「フン、これで終わりだな」
「本当に頭を潰せれば終わりなんだね」
「魔人が居れば話は変わるんだけどな」
ブリティシュは黒部を見上げる。
「で、ランス…彼は誰だい? 変わった知り合いみたいだけど」
「お前もランスの知り合いか?」
黒部もブリティシュを見る。
「…成程、お前も中々やるみたいだな」
そう言ってニヤリと笑う。
「それよりも退散しない? 下手したら魔人が来るかもしれないし。レキシントンとかレキシントンとか」
「…そういや前にもそんな事があったな。とっとと戻るか」
勝利に沸いている人類軍を無視してランスは戻ろうとした時だった、
ドンッ!
空から何かが降りてきてランスの前に立つ。
「な、何だ!?」
「空から来た…? ま、まさか魔人!?」
人類軍の間に動揺が走る。
それも当然、魔人は主に闘神都市へと攻撃していて、地上に関してはあまり興味が無いようだからだ。
それでも魔人の恐ろしさは身に染みており、あの闘神ですらも魔人の前では無力だった。
そして空から落ちてきた女はランスをジロジロと見ている。
薄い紫色の髪をした美人だが、その顔には挑戦的な笑みが浮かんでいる。
「何だお前」
「んー…あの女が執着するからどんな奴かと思ったんだけど、想像よりも普通だな」
その女は明らかに人では無かった。
理由は当然、その頭部から角が生えており、背中には翼が生えている。
そして何よりも、その顔立ちがあまりにもランスが知る女に似ていた。
「…カミーラの知り合いか?」
「知り合い…知り合いか。まあそうと言えばそうだろうね。ただ、今回オレが興味があるのはお前さ、ランス」
その女は背負っていた剣をランスに向けてニヤリと笑う。
「ランスの名前を知っている…けど私達はアンタを知らない。どういう事?」
「別にどうだっていいだろ。オレはあのカミーラが認めたお前と戦いたい、ただそれだけさ!」
あまりにもカミーラに似た顔立ちをした女を前に、ランスはニヤリと笑って剣を抜く。
「がはははは! まあ誰だろうが女が相手ならどーでもいいわ! ズバッと倒してズバッとセックスじゃー!」
「ははははは! 実に欲望に忠実だな! 聞いていた通りで逆に新鮮だ!」
そう言って女―――ルナテラスはランスと同じように笑うと、ランスに向かって斬りかかって来る。
「フン!」
ランスはそれを同じように剣で迎え撃つ。
2人の刃がぶつかり合い、火花を散らす。
「ほう、中々やるではないか」
「お前もな! 結構本気で打ち込んだんだけどな…簡単に防ぎやがったか!」
「で、お前の名前は何だ? まだ名乗って無いだろうが。俺様の名前は知ってるのに、お前の名前を知らんというのは不公平だろうが」
「まあそうだな。オレの名前はルナテラス…魔人カミーラの使徒さ!」
ルナテラスはランスから離れると、大きく息を吸い込む。
「む」
「こういう事も出来る!」
そう言ってルナテラスはカミーラと同じようにブレスを放つ。
「フン!」
ランスはそれを剣を振るう事でブレスを斬り裂く。
それを見てルナテラスは目を丸くするが、直ぐに楽しそうにその口元に笑みを浮かべる。
「すげぇ! 本当にオレのブレスを斬りやがった! 聞いてたけど本当にそんな事が出来るんだな!」
「がはははは! カミーラのブレスに比べれば全然足らんな!」
「言われなくても分かってるさ。流石に今は勝てないからなあ…が、お前を倒せば一つ上の段階に行けそうだ」
ルナテラスは肩に剣を乗せて笑って見せた。
その姿を見て、ランスの剣の中でケッセルリンクが訝し気な顔をする。
「…あの女、まさか」
「ケッセルリンク?」
「いや、まさかそんな事が? しかし…」
突如として口元を押さえたケッセルリンクに対しスラルは怪訝な顔をする。
「何か思い当たる事でも有るのか?」
「…いえ、私の思い過ごしだとは思いますが…」
ケッセルリンクはルナテラスの剣、そして仕草がランスに似ている事に違和感を覚えた。
他の者には分からないかもしれないが、剣を肩に乗せる仕草といい、先程から浮かべている得意気な笑いといい、ケッセルリンクが良く知っている者の仕草にそっくりだ。
だが、顔つきは明らかにカミーラに似ている。
カミーラのような成熟した肉体では無いが、あまりにもカミーラに似すぎていた。
「おい、さっきの技使えよ」
「あん?」
「電撃を纏ったあの力だよ。オレは空から見てたんだ。アレ、ドラゴンの力だろ?」
「ほう、よく知っとるな」
「分かるさ。ま、そういうのは自然と分かってしまうものなのさ」
「ことわーる! お前なんかに使うのは勿体ないわ!」
ランスはそう言ってルナテラスに突っ込んでいく。
その踏み込みの速さにはルナテラスは目を見開くが、それでもランスの剣を自分の剣で防いだのは流石という所だろう。
しかしランスの膂力に驚いたのかバランスを崩す。
が、直ぐにその翼を使って空中へと逃げる。
「あ、こら降りて来い!」
ランスの文句にルナテラスはバツが悪そうな顔をする。
その時、
「ファイヤーレーザー!」
「エンジェルカッター!」
空中に居る彼女に向かってジルとレンが放った魔法が襲い掛かる。
「あだっ!」
空中に居た彼女はそれをまともに受けて吹き飛ばされる。
流石に魔人の使徒を名乗るだけあり、2人の魔法を受けても死ぬことは無い。
「邪魔すんな!」
「一人でこんな所にやって来て何言ってるのよ」
「ランス様の邪魔はさせません!」
「全く…厄介な奴等が居るとは聞いてたが想像以上だな。が、この男について来ているのだから当然か」
ルナテラスはニヤリと笑って起き上がると、その剣が雷に包まれる。
「む」
ランスはそれを見て少し驚く。
それはスラルがランスに与える付与の力そのものだ。
スラルもランスの剣の中で驚く。
「ほう…面白い技を使うな。だが、アレは付与の力では無いな」
「お前も使えよ。魔物兵をぶちのめしたあの力を。オレはお前と純粋に力のぶつかり合いがしたいんだ」
挑発するかのようにルナテラスはランスに剣を向ける。
「断る。アレは妙に腹が減るからな。今だってメチャクチャ腹が減っとるんだ。とっとと終わらせてやる」
「それは残念だ!」
そう言いながらもルナテラスはランスに向かって剣を振るう。
再び二人の刃がぶつかり合うが、ランスの体に痺れが走る。
「むっ!」
「ハハハ! こういう事も出来るって事さ!」
まるで魔人レイと同じようにルナテラスの剣から放電された電撃がランスの体を襲う。
「おいスラルちゃん!」
「分かってる!」
ランスの声に合わせてスラルが応えると、ランスの剣もルナテラスと同じように稲妻を帯びる。
「へえ! ドラゴンの力無しでそういう事も出来るのか!」
感心したように声を上げると、ルナテラスは翼を使って宙に浮きあがる。
そのまま体を回転させ、剣ではなく翼でランスを攻撃する。
ランスはそれを剣で受け反撃しようとするが、ルナテラスは既にランスの剣の範囲外の宙の上に飛んでいた。
「おいコラ! 降りて来い!」
「オレはカミーラ様とは違うぜ? 無敵結界は無いからな。こういう戦い方だってするさ」
ルナテラスは空中からブレスを放つ。
その威力はカミーラよりも弱いが、それでも脅威な事には変わりない。
「ランス!」
「大将! 危ない!」
ランスの前にブリティシュとシロウズが盾を構えてブレスから身を護る。
「成程…! まさにドラゴンのブレスだ! これが使徒の力という事か」
「使徒…これ程のものか!」
2人は何とかルナテラスのブレスに耐える。
「スノーレーザー!」
「デビルビーム!」
「雷撃!」
メイ、ジル、お町が攻撃を加えるが、どれ程の魔法防御力を持っているのか、その翼で耐える事で殆どダメージを受けていないようだ。
「ハハハ! いいねえ、どいつもこいつも強くていいじゃないか! でも、やっぱりオレはお前の力を存分に味わいたいんだけどな」
空中からランスに剣を向けルナテラスは笑う。
「お前とタイマン出来るってんならオレは地上に降りてやってもいいぜ?」
挑発するように笑うルナテラスを前に、ランスはブリティシュとシロウズを押しのけて前に出る。
「フン、だったら少しくらい本気でやってやる。降りて来い」
「いいねえ、そう来ないと!」
ランスの言葉にルナテラスは嬉しそうに笑うと本当に地上に降りてくる。
「邪魔するなよ。オレの目的はそいつだけだ。他の奴にはあんまり用は無いからよ」
「偉そうに言いおって。俺様に勝てると思っているのか」
「さあ…それはどうかね。でも、お前と戦う事でオレも新たなステージに立てる…さっきも言っただろ。それが今の目的なんでね!」
2人は再び剣でぶつかり合う。
「さあやろうぜ! カミーラと何度も戦ったお前の力をオレに見せてくれよ!」
「フン! カミーラよりも弱い奴が俺様に勝てると思っているのか!」
「だから超えるんだよ! あいつをな!」
凄まじい膂力でルナテラスはランスを押す。
その力にはランスも少し驚くが、それでも技術においてはランスが圧倒的に上だった。
ランスはあっさりと剣を受け流すと、返す刃でルナテラスを斬りつける。
「っ! 一体何時抜いた?」
腕を斬りつけられ、ルナテラスはランスから距離を取る。
ランスの手には刀が握られており、それで斬りつけられたのは明白だ。
だが、ルナテラスにはどうやって斬られたのか、全く理解が出来なかった。
「がはははは! 力はまずまずだがその程度で俺様に勝てると思うなよ!」
「力でぶつかるからいいんじゃないか! それが戦いさ!」
ランスは相手を叩き落とすべく、遠距離でも攻撃でき、尚且つ範囲の大きい技を放つために構えを取る。
そして全身の体を振るい、闘気の渦をルナテラスに放つ。
だが、驚くべきことに、ルナテラスもまたランスと似たような構えから、同じような技を同時に放つ。
「「何だと!?」」
2人の声が同時に放たれ、そして互いに放った闘気の渦がぶつかり合って消滅する。
その余波で二人は吹き飛ばされる。
「ランス様と同じ技!?」
ジルはその光景を見て息を呑む。
レンも険しい表情でランスと同じ技を放ったルナテラスを見ていた。
「貴様! 俺様の技をパクリおって!」
「それはこっちのセリフだ! オレの技をパクったのはお前だろ!」
2人は同時に同じような事を叫んで互いに剣を突き合わせる。
「カミーラの奴が教えたのか? いや、あいつはそんな奴じゃ無いしな…」
「カミーラ様からは教わってねえよ。オレが独自で編み出したんだ。それをお前が使ってるって何だよ。オレが三日三晩考えて編み出したカッコイイ必殺技だったのに」
「む、カッコイイか。まあ当然だな、俺様の技だからな!」
「だからオレの技だって言ってるだろうが! まあカッコイイ必殺技なのはその通りだが」
2人はそのまま得意気に笑い合う。
「…何なんじゃ、あの二人は」
「まあ…気が合うって事じゃねえか? 俺はそれよりも別の事が気になってるけどな」
「それはどういう事じゃ? 黒部殿」
「何となくだけど似てる感じがしてな」
「あの二人がか? 確かに調子に乗りやすそうな所はそっくりだとは思うが」
「ま、そんな事は今は問題じゃねえな…」
そう言う黒部の顔が真剣なモノに変わる。
「黒部殿?」
「来やがる…相当な気配がな!」
黒部がそう言った時、天から凄まじい速さで何かが降って来る。
そしてソレはルナテラスの背後に着地する。
それだけで周囲の空気が重くなり、誰もが恐怖で体を震わせる。
それはルナテラスも例外ではなかった。
「「うげっ!」」
ランスとルナテラスが同時に呻く。
「…こんな所で何をしている?」
「かあ…カミーラ様…」
そこに現れたのは、魔人ノスと同じ四天王の一人であり、今もまた闘神都市に攻撃を加えている存在、魔人カミーラだった。