誰もが静まり返っていた。
恐ろしい程の静寂の中、確かにその魔人は存在していた。
魔人四天王カミーラ、闘神が目的であり、地上に全く興味を示さなかった魔人が今地上に降り立ったのだ。
「カ、カミーラ様、こ、これは事情があってですね…」
「お前の事情などどうでもいい。だが、お前はこのカミーラの命令に逆らった、それだけが事実だ」
ルナテラスは明らかにカミーラに対して怯えている。
それも当然だろう、カミーラが自分の使徒が命令に背いていい顔をする訳が無い。
下手すれば殺される…それくらいに厳しい魔人なのは間違い無かった。
ランスの知っているカミーラはそうだったし、実際今のカミーラからは薄らとだが怒りがあるように見えた。
「おいカミーラ。お前、何しに来た」
誰もが魔人カミーラの登場で委縮している中、ランスだけは平然と言葉を放つ。
そんなランスを見て、カミーラは薄く笑う。
「今回はこのバカを回収しに来ただけだ」
「あだっ!」
そう言ってカミーラはルナテラスの頭に強烈な拳骨を食らわせる。
その衝撃にルナテラスは頭を押さえて蹲るしかない。
「…成程、少々強くなったようだな。アベルの力は馴染んでいるようだ。忌々しいが、貴様をより狩り甲斐のある存在に仕上げた事だけは褒めてやってもいい」
カミーラはそう言うと恐ろしいスピードでランスに向かって行く。
それはルナテラスのスピードよりも遥かに速い。
が、それはランスも同じで、高速で繰り出されたカミーラの爪をランスはその剣で軽く受け止める。
「いきなりだな」
「私とお前の仲だ。今更挨拶など必要もあるまい」
カミーラはルナテラスよりも素早い動きでランスに爪を振るう。
それを刀で捌き、ランスは返す刃でカミーラに攻撃を加える。
カミーラがその攻撃を避けた事で、魔人の事を分かっている者達は息を呑む。
「無敵結界を…使っていない」
シロウズはそれを見て仮面の下で驚きの表情を浮かべる。
「ああ。魔人カミーラはそう言う魔人だよ」
「ノスと同じという事か? だが…」
「それでも魔人カミーラは強い…迂闊に動けば恐らくは今の疲労が濃い皆では持たないだろう」
ブリティシュとしても魔人カミーラを何とかしたいが、もしカミーラの邪魔をすれば、カミーラは間違いなく自分達にその矛先を向けるだろう。
ランスとカミーラの関係を少しは知っているブリティシュとしては、今迂闊に動く事でここに居る皆を危険にさらしてしまう事は分かっている。
カミーラに遊んでもらっている状況を甘んじて受けるしか無いのだ。
「使わないか…連続での使用はお前でも厳しいという事か」
「フン、そのうち慣れる」
「だったら直ぐに慣れろ。このカミーラが教えてやった力だ。その力を使いこなし、その力をもってしてこのカミーラに向かってこい。それでこそ、私が直に力の使い方を教えてやった甲斐が有るというものだ」
薄く笑ったカミーラは翼を使って上空に飛ぶと、ランスに向かって強烈なブレスを仕掛ける。
ランスはそれを剣で斬り裂く。
それを見て誰もが驚愕するが、一番驚いているのはルナテラスだった。
(本当に斬った。カミーラの…母のブレスを本当に斬れるのか。オレだってそんな事は出来ない…)
それを見てルナテラスはランスが…父が本気で自分と戦っていなかった事を思い知った。
自分とカミーラではドラゴンとしての格が違う。
まだ未熟なのは自覚があったが、こうして父と母が戦っているのを見て自分が二人の土俵に立てても居ない事に愕然とする。
と同時に、この二人と並び立つ事を想像し笑みがこみあげてくる。
それくらい自分の父と母は別格の存在だと思い知らされた。
「ラーンスアターーーーーック!」
上空に飛んでいるカミーラに対してランスが闘気と衝撃波、二つを合わせた新たな技をぶつける。
「!」
カミーラはまさかの攻撃に一瞬対応が遅れる。
衝撃波に巻き込まれて態勢が崩れた所にランスアタックの闘気が直撃する。
流石のカミーラも地面に叩きつけられる―――事も無く、翼を使い態勢を立て直して着地する。
「…ほう。新たな技を得たようだな。だが、まだ練り慣れていないと言った所か。その技を身に着けたのはここ最近の事だな」
「お前、そういう奴だったか? なんか理屈臭くなったな」
ランスの指摘にカミーラの表情が少しだけ動く。
「あ、不機嫌になったな。じゃあ図星か」
「………ライトニングレーザー」
「あ、いきなり魔法は…うぎゃあああああ!」
突然放たれたカミーラの魔法にランスは吹き飛ばされる。
「あだだだだ…お前、いきなり魔法を使うとか何考えてやがる!」
「お前がこのカミーラに無礼な態度をとったからだ。が、まあいい…お前が強まっているのは十分に感じ取れた」
そう言うとカミーラは完全に敵意を消す。
元々殺気も無かったが、その気も無しにあれ程の力で暴れるのはやはり魔人という事だろう。
「ここまでだ」
そう言ってカミーラはランスに背を向け、娘であるルナテラスの元へと向かう。
そのルナテラスの視線はカミーラに対してキラキラした目を向けていた。
それはまるで初めて面白いものを見たかのような顔だった。
「何だ。今回はもういいのか」
「今回の目的はお前ではない…まだ闘神とは遊べるからな」
そう言ってカミーラはルナテラスを見下ろす。
「バカ者が。今のお前が奴に勝てる訳もあるまい」
「…生きてる時間はオレの方が長いだろ」
「経験が違う。まだお前が敵う相手ではない。剣を無駄にしただけだ」
「え? あ、ああああああ!」
カミーラの指摘にルナテラスは自分の剣を見る。
その剣にはヒビが入っている。
そしてやや乱暴に扱ったせいか、その剣がボキッと折れてしまう。
「あああああああああ! オ、オレの剣がーーー!」
「戻るぞ、愚か者が」
「ぐえっ」
ルナテラスの襟元を乱暴に掴むと、カミーラはそのまま彼女を連れて飛び去って行ってしまう。
カミーラが完全に消え去ったのを見て、レンがランスの隣に立つ。
「本当に行っちゃったわね。どういう風の吹き回しかしら」
「知らん。アイツが適当なのは何時もの事だろうが」
ランスも剣を鞘に納め、自分の腹を押さえる。
「それよりも腹が減った。とっととペンシルカウに戻って飯だ飯」
「ランス!」
戦いが終わった事で、皆がランスの元へと集まる。
「ランス! 久しぶり!」
「お前か。生きてたのか」
「何とかね…」
「日光とカフェはどうした。一緒じゃ無いのか」
「その事は後で詳しく話すよ。それよりもこれからはどうするんだい?」
ランスは人類の方を見る。
確かに人類は魔物大将軍を倒したが、その魔物大将軍を遥かに上回る魔人が現れた事で勝利の余韻が完全に吹き飛んでいる。
「皆、一度撤退だ! そして魔軍に奪われた地を取り戻すために動く!」
そう言ったのはシロウズが。
周囲にハッキリと伝わる大声を放つと、その声に呼応するように人類は動き出す。
「大将、私は一度戻る。大将について行きたいが、今の好機を逃す訳にはいかない」
「そうか。好きにしろ。というか一々俺様に言うな」
「フッ…相変わらずの態度だが、今はそれが有難い。撤収だ!」
シロウズの合図に皆が一斉に動き始める。
その手腕は見事なものであり、シロウズが只の一兵士で無い事が分かる。
「お前は行かんのか」
「僕はランスについて行くさ。足手纏いにはならないからね」
「まあいい、好きにしろ」
ランスの言葉に黒部は目を見開く。
「おい、ランスが男の同行を認めたぜ」
「黒部も認めてると思うけど」
「俺は見ての通りだが、アイツは人間の男だろ。それなのにランスが認めるっていうのが驚きだぜ」
「まあそうね。ただ、ブリティシュはランスの足手纏いにはならない…というか、私が知ってる人類の中でも相当な上澄みだしね。これからの戦いには必要になるってランスも判断したんでしょ。この状況だしね」
レンの言葉に黒部は楽しそうに笑みを浮かべる。
「それよりも黒部殿、妖怪達はどうする?」
「ああ、そいつらは放っておいていいぜ。あの猫が送ってきたんだ、どうせJAPANに帰る方法だって用意しているだろうよ」
黒部の言葉を象徴するように、お町が連れてきた妖怪達の姿がどんどんと霞のように消えていく。
「なんだありゃ」
「さあな。あいつはああいう奴なんだよ…俺だって苦手だ」
「まあいい。それよりもペンシルカウに戻るぞ」
「おおい!」
突如として大きな声と共にランス達の元へと走って来る奴等が見える。
「魔物大将軍を討ち取ったのか!?」
「魔物兵達が戦いを放棄して逃げていきおった。何が起きたのかと思って来たのじゃが…」
「どうやら終わったようですね」
闘将達も戦闘を終え、ランス達に合流して来た。
「何だお前等、生きてたのか」
「魔物兵に倒される程軟じゃないですぜ、俺達は」
「少々危ない所もあったのじゃがな…」
「とにかく作戦は終了を確認。しかし本当にこの数で魔物大将軍を討ち倒すとは…」
「フン、あの程度大した事無いわ。むしろその後の方が大変だったぞ…」
魔人カミーラの襲撃…とは言えないが、とにかくカミーラはランスの姿を確認した。
だが、それなのにカミーラはランスと戦う事はせず、使徒であろう女を連れてとっとと姿を消した。
ランスにはそれが非常に不可解だったが、今戦わなくて済んだのは正直助かった。
「…ちょっと不気味ね」
「カミーラの事か」
「そう、カミーラ。ランスと少しの小競り合いで満足するような奴じゃ無かったでしょ」
「奴の考えてる事は分からんからな。ま、とにかくまずは飯だ飯」
こうして魔物大将軍ゾロッカが戦死した事で、LP期でいうゼス地方から魔物兵達は散り散りになて逃げていった。
だが、この戦いが人類に有利になるという事は無い。
所詮は7体居る魔物大将軍の内の一体が死んだだけなのだから。
「…愚か者が。奴に手出しするなと言ったはずだ」
「だって…凄い強かったから。魔物の大軍を一撃で吹き飛ばした力、アレは本当に凄かった。正直憧れた」
娘の言葉にカミーラは特に表情を変える事は無い。
「それにしてもアイツがオレの父さんか。確かに凄い強い奴だった。母さんが執着するのも分かる気がする」
「…奴はこのカミーラの獲物だ。お前とて手を出す事は許さぬ」
「それはずるいな。オレの父さんでもあるんだから、オレだって遊ぶ権利はあるはずだぞ」
「ならばその意思をこのカミーラの前で示すのだな。出来ればの話だが」
母親の言葉にルナテラスは苦い顔をする。
今の自分では母の足元にも及ばない、それは紛れも無い事実だ。
「それにしてもこの剣がぶっ壊れるなんてな…結構良さそうなものだったのに」
「知らぬな」
「戦うためにはもっといい剣が必要なのかな…でも、そんなにいい剣なんて見つからないしなー」
ルナテラスが使っていた剣は七星が用意した剣だ。
ただ、七星も剣の目利きの経験が有る訳も無く、ある人物に選んでもらった剣だった。
だが、それでもランスとの打ち合いで簡単にへし折られてしまった。
「フン…ならば己で見つける事だな」
「だったら少しくらい自由に行動させてくれよ。過保護過ぎるだろ」
「まだダメだな」
「…分かったよ。あーあ、せっかく父…ランスと出会えたのにな。あ、そうだ母さん」
「…何だ」
「今回見逃したのはどうしてだ?」
娘の言葉にカミーラは少しの間無言だった。
その顔には何の表情も浮かんでいない―――と普通は思うが、娘であるルナテラスには分かる。
実際には結構喜んでいるのだろう。
ただし、母親は絶対にそれを認めない…何故なら素直じゃ無いし、プライドが非常に高いからだ。
「奴とは全力で戦わねば意味は無い。そのためには奴もこのカミーラに全力で抵抗しなければならぬ。まだあの力を完全に使いこなしてはいない…それではつまらぬ」
「そっか。母さんも母さんで複雑なんだな」
「奴はまだまだ強くなる…だからこそ面白い。そしてお前もまだ強くなるだろう…そのためにも少し大人しくしていろ」
「分かってるよ。どうせまだ戦争は終わらないだろうしな」
そう、まだまだ戦争は続く…地上に居る人類にとってはまだまだ終わらない苦しい戦争はまだ始まったばかりなのだから。
ペンシルカウに戻って来たランスはまずは何よりも食事だった。
「むぐむぐ」
「はい、ランス君。急いで食べ過ぎないようにね」
「相変わらずお前はうるさいな」
「私はランス君のお姉さんだしね」
「………いや、もうお前には何を言っても無駄なんだろうな」
相変わらず姉を名乗るシルキィにランスは呆れるが、もう何も言わない。
言っても直るような奴では無いし、別にランスの害になっている訳でも無い。
「それにしてもお前やたら食うな。昔はそうじゃ無かっただろ」
「あの力を使うとどうしても腹が減るようだ。まあそれで済んでるんだから効率は良いと言えるがな」
ランスと共に食事をしている黒部に、同じように食事を取っているスラルが答える。
既にランスの剣から出てジルの体に入っている。
「我もジルも結構魔力を使ってしまったからな…少しの間は戦闘を控えんとな」
「そうなのか。ま、アレくらいの力を身に着けたんだ。また手合わせをしたいくらいだぜ」
「知らん。疲れるだけだろうが」
「ランスが新たな力を得たという事は良い事じゃ無いかな。相変わらず魔人カミーラに狙われてるみたいだし」
ブリティシュもランス達に付き合い食事を取っている。
「で、お前は誰なんだよ」
「改めて自己紹介をした方がいいかな。僕はブリティシュ、ランスとは…そうだね、仲間というのが良いかな」
「仲間だあ!? お前がか」
ブリティシュの言葉に黒部は不満そうな顔をする。
「黒部、前に一通りの説明をしただろう。ブリティシュは魔人を傷つけられる日光、カオスの仲間だった男だ」
「ああ、魔人の無敵結界を斬れるって奴だろ。石丸の奴もその無敵結界のせいでザビエルに傷一つつけれなかったからな…」
黒部にとっては魔人の無敵結界は忌々しいものだ。
何しろザビエルの前にはあの藤原石丸ですらどうしようもなかった。
そして黒部自身も、無敵結界を持つ魔人レキシントン相手にはどうしようもなかった。
ただ、ランスの一撃がレキシントンを大きく傷つけられたのは知っている。
「魔人の無敵結界を何とか出来るってんなら石丸の奴でもザビエルを倒せたかもな」
「ザビエルを倒せたとしても魔王は無理だ。魔王の前では強さなど意味をなさない。例え石丸とランスが手を組もうが、魔王の相手には何の意味も無い」
「…だろうな。あの時に見た魔王ジル…流石にアイツには勝てる気がしねえ…」
「そうじゃな…魔王は無理じゃろうな」
黒部もお町も魔王ジルに会った事がある。
流石に戦う事は無かったが、あの威圧感と恐怖は今でも覚えている。
アレは最早別次元の存在、まさに別格だ。
「日光とカフェはこっちに戻って来てないのかい?」
ブリティシュはこちらに戻って来れた経緯をランス達に話した。
それは中々面白そうな話だが、ブリティシュが戻って来ていても日光とカフェがまだ戻れていないというのが気になる所だ。
「生憎ね。というか日光があったらこの戦争、魔人以外は何とかなるんじゃないかしらね…ランスが居れば尚更ね」
「…君がそこまで言うのかい?」
「闘神は魔人と互角、というのは嘘じゃ無いわね。ただ、魔人も強さには激しい差があるから…特に魔人四天王と呼ばれる存在とノス…それとメガラスは別格だし」
「そうね。私も一応魔人四天王ではあるけど、その中では正直強さは落ちるだろうし。というかメガラスは私より強いし」
レンの言葉にシルキィは難しい顔をしながら頷いて見せる。
「…それにしてもランス。今の時代の事は話は聞いてたけど、彼女が魔人四天王なのは本当なのかい? 彼女は魔王ガイが魔人にしたんだろう?」
ブリティシュは微妙な顔をしながらシルキィを見る。
「君が一部の魔人と友好的なのは知ってるけど…まさか君の姉を名乗る人が居るのは流石に衝撃というか何というか…」
「あなたが日光とカフェが言ってたチームのリーダーって訳ね。うん、凄い強そう」
「…日光とカフェも知っているのか」
「私が人間だった頃だけどね…」
シルキィは昔の事を思い出したのか、昔を懐かしむように笑う。
「日光から聞いてないのか? シルキィの事くらいは話していても良いと思ったのだが」
「話は聞いてても性格までは分からなかったからね。その辺は二人とも少しぼかしてたし…ただ、君のおかげで人類は解放されたという事は知ってるよ」
「それでもこの戦争は止まらなかった。私はそれが悔しいけどね…」
痛ましい顔をするシルキィを見てブリティシュもそれ以上何も言わない。
どの道魔王が戦争を許可したのだから、魔人四天王であっても魔人でしかない彼女に拒否権は無いのだ。
それでもこの戦争に参戦していない事が、彼女なりの誠意なのだろうと納得するしかない。
「で、ランス君ってこの後どうするの? 正直に言わせてもらうけど、魔物大将軍が1体死んだくらいで戦況は何も変わらないわよ。次の魔物大将軍が送られてくるだけよ」
「別にどうもせん。アイツをぶっ殺したのは俺様には俺様の事情があっただけだしな。それに何度も言っとるが、この戦争は人間の負けだしな。今更どう動こうが変わらんだろ」
「負け、か。じゃが、それはどうしようもないのかもしれんな。JAPANでお前達と再会した時も既に結末は決まっておったからな…」
ランスの言葉にもお町は言葉通りに受け止めるしかない。
実際、ここから人類が逆転する事は不可能だろう。
聖刀日光があれば魔王以外は何とか出来るくらいには聖魔教団は強いのだが、無い物を言ってもどうしようもないのだ。
「成程な…ま、それも仕方のねえ事か。それが戦争ってもんだしな…」
黒部も少し苦い顔をしながらもそれを受け入れるしかない。
「聖魔教団が崩れれば…魔王様は軍を引き上げるとは思うのですけど。でも、それまでにはまだ長い時間がかかりそうです…」
ハウゼルは悲しそうな顔で言うが、それはもうどうしようもない。
魔王がどう動くか、それがこの世界の全てなのだ。
全ては魔王の行動次第でこの世界はどうにでもなってしまう、それがこの世界の理だ。
「…そう言われると私としてはこれからアンタ達とどう接するべきか悩むんだけどね」
ハンティはランス達の言葉を聞いて微妙な顔をする。
ただ、ランスの言っている事も間違ってはいないだろう。
実際、ハンティも聖魔教団がここから逆転するなんて考えてすらいない。
「何だハンティ。まだ何かあるのか」
「一応ね…カインに頼んで闘将達を闘神都市Σに送ってるんだけど…」
「それがどうした」
「闘神と関わった以上分かってるとは思うけど、ルーンもフリークももうアンタ達が今の時代に居る事を知ってるんだよ」
「それがどうした」
「だったら考える事は分かるだろ。アンタと手を組みたがるって事さ」
ハンティはどうしていいか悩んでいるようにランスに言う。
「知らん。何度も言うが、こんな負け戦に本気で関わるつもりは無いぞ」
「…まああんたならそう言うだろうね」
「ランス、聖魔教団の力は僕も少しは理解しているつもりだけど…君が協力してもやはり無理かい?」
「当たり前だろうが。俺様一人で全部の魔人と戦えとでもいうつもりかお前は」
「…そうだね。日光が無いと不可能か」
ランスの現実を見据えた言葉にブリティシュも苦い顔をするしか無い。
今の状況で魔人と戦うなど無謀にも程がある。
それに今は参戦していない魔人も多数いるというが、魔王の命令があれば全ての魔人が襲ってくる。
その数は非常に多く、一度にそんな数の魔人に狙われてはランスが持たないだろう。
「多分だけど、聖魔教団のトップが倒れたら魔王様は魔人達を引き揚げると思う。逆に言うと、聖魔教団が滅びるまではこの戦争は終わらないわね…」
「そうですね…ガイ様なら禍根を絶つまでは戦争を止めないでしょうね」
2人の魔人の言葉にその場の空気が重くなる。
結局の所、魔物大将軍を1体倒したところで現状は何も変わらないのだ。
それを嫌という程思い知らされた戦いでもあった。
「それよりももっと持ってこい。やっぱり腹が減るからな」
ただ、ランスだけはそんな事は関係無いと言わんばかりに食事を取るのだった。