「魔人バークスハム…誰だ?」
「呆れた…ランス君だって会ってるでしょ。あの真っ白い男よ。魔王城で会ったって私も直接聞いたし」
「…そういやそんな奴も居た気がするな」
真っ白い男、と言われてランスはようやく思い出した。
男である事、あまり印象が無かったのとLP期においてランスが交戦していない魔人なので覚えていなかった。
「今現在の魔人筆頭…つまりは魔人の中でもトップクラスの存在よ」
「お前より強いのか?」
「ええ、私よりも間違いなく強いわ。魔王ガイ様の親衛隊にして右腕…と言えば分かるかしら」
「何か良く分からんな」
「ノスとカミーラよりも強い、と言えば分かりやすいでしょ」
「…マジか?」
シルキィの言葉にランスは純粋に驚く。
ノスもカミーラも魔人四天王の地位に居る、又はいただけあり相当に強い。
その二人を上回るとなれば、それこそ相当な強さを持っているのは間違い無い。
「以前に戦った時は手加減していた…というか、相手は戦ったという感じも無かったのかもね。あっさりと私達を通したし」
レンも以前のバークスハムとの戦いを思い出し呟く。
あの時は全く本気で無かったのは間違い無く、底の見えない相手だったのは覚えている。
「でもバークスハムは今回の戦争には賛成も反対もしていませんでした。魔王様の命令があれば動くとは思いますけど…それでも積極的に動く人では無いはずです」
「そうね…どちらかと言うと、今回の戦争もやり過ぎないように調整している感じがするわ。そうじゃないと魔物大将軍の数をあそこまで制限するなんてしないし」
「この戦争のコントロールをしているのはバークスハムなのか?」
ハウゼルとシルキィの言葉にスラルは驚いた顔をする。
「ガイ様はそもそも関わるつもりも無いみたいなので…」
「魔人にも好きにすればいいってスタイルだし。だから私達みたいに参戦しなくてもお咎めも何も無いし」
バークスハムが何を考えているかは誰も分からない。
その意図を察しているのは恐らく魔王であるガイだけだろう。
「俺達を潰すためには滅茶苦茶数を用意してやがったんだけどな…」
黒部は昔を思い出し少し苦い顔をする。
あの時にやって来た魔人は1体だけだが、魔物兵の数は非常に多かった。
それこそ今の戦争の倍以上の数の魔物兵が投入された。
「藤原石丸は確実に潰したかったという事だろう。今回も聖魔教団は潰すが、地上の人間達はどうでもいい…そう思っているのかもしれんな」
「…まあそうだな。魔人相手に10年以上粘ってんだ」
昔の事を言ってももう仕方が無い。
「それよりもランス。どうすんだ」
「フン」
黒部の言葉にランスは詰まらなそうな顔をする。
「他の奴なら知らんが、まあルシラだしな」
「ランス様!」
「用意だけはしておけ。あのバカが戻ってきたら行くぞ」
闘神都市に向かうためにはドラゴンの力が必要になる。
今カインは居ないので、戻ってくるまでは何も出来ない。
「ランス君…バークスハムは強いわよ。多分今のランス君でも勝てない」
真剣な顔でシルキィが言う。
「何だ。俺様が負けるとでも思ってるのか」
「間違いなく負ける。魔人筆頭ってそれだけ強いのよ」
「むぐ…」
ランスは魔人筆頭と本格的に交戦した事は無い。
シルキィを助けるために魔王城に潜入した時にバークスハムとは戦ったが、相手は明らかに手を抜いていた。
それに無敵結界が有るので、そもそもまともな戦いにはならないのだ。
「だから戦うのは正直止めて欲しい。本当に無理だったら絶対に逃げてよ。ランス君ならその辺の判断を誤らないとは思うけど」
「分かった分かった。お前は本当にうるさいな」
「私はランス君の姉だもの。心配するのは当然でしょ」
「…姉?」
シルキィの言葉にブリティシュは怪訝な顔をする。
「こいつが勝手に言ってるだけだ」
「ランスが匙を投げるくらいだから相当よね…」
レンも呆れた顔でシルキィを見ている。
「そう言えば僕はランスとシルキィの関係は聞いて無いな…魔人メディウサを倒した事は日光から聞いたんだけどね」
「別に言いふらす事じゃ無いし…というか、あんまり公にはしたくない事だしね」
ブリティシュの疑問にシルキィは複雑な顔をする。
ランスと共に魔人と戦ったのは素晴らしい記憶ではあるが、それを言いふらすような事はしたくない。
万が一にもランスの不利益になるような事はあってはいけないのだ。
関係を知っているのはカミーラ、ケッセルリンク、ハウゼルサイゼル姉妹くらいだ。
何れの者達も何も言ってこない。
カミーラはシルキィに興味が無いし、ケッセルリンクもハウゼルサイゼル姉妹もランスの不利益になるような事はしない。
一応バボラとも人間だった頃に面識はあったが、魔人となってからはバボラは何も言ってこない。
むしろこちらに気さくに話しかけてくる事もあり、シルキィは拍子抜けしてしまった程だ。
「だからそっちも言いふらさないでよ?」
「信じる人が居ないと思うけどね。ただ、それよりもあなたが人類を解放してくれたのか…」
「決めたのは魔王様よ。それに…私も凄い葛藤があったからね…」
シルキィは苦い顔をする。
「今はそんな事はどうでもいいでしょ。それよりも何時でも行ける準備はしておきなさいな」
「そうだね。相手は魔人筆頭…厳しい戦いになるのは目に見えている」
「でもランス様、今居る人達皆で闘神都市に乗り込むんですか?」
ジルは今集まっている者達を見る。
一般のカラーの者達と魔人であるシルキィとハウゼルは当然参加出来ない。
闘神都市に乗り込める実力を持つのはランス、ジル、レン、メイ、黒部、お町、ブリティシュだ。
ランスはそれらを見て内心で少し考えていた。
(ややこしい事になってきたな。いや、面倒だから関わりたく無いが…うーむ)
聖魔教団は流石にランスも大いに関係がある。
聖魔教団の闘将であるフリークはランスも面識が有ったし、ヘルマン革命で同じ闘将であるバステトによって殺された。
ランスからすれば男が死のうが別にどうでもいいが、フリークは変わった奴だが別に死ねばいいとも思っていない。
生かしておけばこの先役に立つかもしれない、とも思う。
同時に、いつセラクロラスが現れるかも分からない状況だ。
とっとと来いと思っていたが、聖魔教団に貸しを作っておけばこの先損は無いかもしれない…そうも思ってしまった。
事実、聖魔教団はランスが思っていたよりも遥かに強い国家だ。
(いや、スラルちゃんが闘将に命令できるようになってたな…という事は、もしかしたら未来で闘将を好きに出来るという事か?)
ランスは聖魔教団のトップであるルーンを倒している。
もし今そいつを何とかすれば、ヘルマン革命が何か変わるのかもしれない。
(あ、いかんな。シィルがどうなるか…そういやどうなるんだ? 魔人もぶっ殺したしな…)
本当に今更ながら、ランスは自分が過去の歴史の中に居るのだと自覚する。
ランスはこの世界の歴史を知らないので、自分が何をした事で何が変わるかなんて知らないし興味も無い。
自分を過去に飛ばしたセラクロラスが悪いのだ、ランスは本当にそう思っている。
だが、自分の奴隷であるシィルに関しては話は別だ。
(そもそもシィルがああなったのは美樹ちゃんの事とあのザビエルの野郎が居たからだしな)
勿論女である美樹をランスは全く恨んでいない。
全てはあの魔人ザビエルが悪いと思っている。
だが、もし今ザビエルを始末出来れば…とも思ってしまう。
(JAPANは色々あったからな…そういやあの魂縛りとかいう妖怪とはセックス出来なかったしな。いや、アレは出来るもんじゃないか。ん? 魂縛り?)
シィルの事からザビエルの事を思い出し、そしてその時にエッチ出来なかった妖怪の事からお町の方を見る。
政宗も言っていたが、そもそも魂縛りを使ったのはお町だ。
お町がJAPANで争いを生み出し、魂縛りを使って信長と香の父親を間接的に殺したような事を3Gから聞いたような気がした。
「おいお町」
「なんじゃ?」
「お前、魂縛りとかいう妖怪を使うなよ」
「…! ランス、お主どこでそれを」
「いいから使うなよ」
「わ、分かっておるわ! あんな危険な妖怪、封印を解こうとも思わぬ…」
割と真剣に話してくるランスにお町も少し驚きながらも答える。
2人の会話に他の皆は訳が分からないという顔をしているが、ランスは特に気にしない。
(考えるだけ無駄だな。その時に考えればいいか)
今ランスが考えても意味は無いので、これまで通り思った通りに行動する事にする。
そう、全部セラクロラス…つまりは神が悪いのだ。
だったら自分には全く責任は無い、つまりはいつもの様に行動して居ればそれで良いのだ。
「うむ、これで大丈夫だな。それよりもスラルちゃん、闘将はお前に制御できるのか」
「闘将か? いや、少々難しいな…Σが貸してくれた闘将は我に権限を一時的に譲渡してくれたからだろうな。闘神や闘将を扱うには別の技能が必要なのだろうな」
「むう…それじゃ闘将は使えんという事か」
「そういう事だ。我としても少々研究したい所ではあるが…まあ無理だろうな」
2人の会話を聞いてハンティは内心で冷や汗を垂らす。
(全く…危険な事を考える奴だね。それくらいじゃないと魔人とは渡り合えないだろうって事何だろうけど…こいつには下手に力を与えるのは危険だね)
ランスは稀代の英雄になるか、もしくは暴君になる男だ。
治世の暴君、乱世の奸雄なのは間違い無い。
つまりは今のような世界が乱れている時は英雄になれるが、平和の時となると世界を乱す存在になりえる。
(魔人相手でも平気で手を出す男だし…正直聖魔教団にはあまり関わらせたくは無いんだけどね…)
ハンティとしては結構苦渋の決断なのだが、こういった時代こそランスのような男を必要としているのも事実だ。
実際、カラーを狙って来た魔人を倒し、人類の敵である魔物大将軍を討ち取っている。
結果だけ見れば間違いなく英雄と言われて当然の事だ。
「カインが戻ってきたら闘神都市Θに行くって訳ね」
取り敢えずのこれからの行動も決まり、ランス達はカインが戻って来るのを待つ事となった。
カインが戻ってくる前―――
「それで、私に話とは何ですか?」
「あ、そう警戒しないでくれ。僕は別に君に対して確かめたい事があるだけだからね」
ブリティシュはジルと話すべく、魔法ハウスにジルを訪ねていた。
ランスは今日はハウゼルとシルキィの二人をベッドに連れ込んでいるので、ジルはレンとお町と黒部と共に話し込んでいた。
「魔王ジル…とは思えないんだよね。正直な所」
「日光から聞いたの?」
「ああ。ただ、詳しい事は日光もカフェも教えてくれなかった。直接聞かない限り、僕も信じられないだろうからってね」
ブリティシュは皆と同じように椅子に腰かける。
「僕は魔王ジルに会った事がある。と、言っても本当に最後の最後、今の魔王であるガイがジルに反旗を翻した時の一度だけだけどね」
「それが何か?」
「うん…だから君がその魔王ジルの半身、と言われても信じられなくてね」
「正確には半身という訳では無いからな。今のジルの体は魔王ジルの妥協の末の行為だからな」
スラルは魔王ジルから直接その時の事を話されている。
分裂魔法を使って魔王であるジルと人間であるジルに分かれた。
そのためにスラルと取引を持ち掛けた結果が、今の人間ジルの姿だ。
「僕はジルに異世界に飛ばされていたからね…その後の事をどうしても知りたかった」
「フム…確かにお前には知る権利は有るか。だが、そのためには我はお前にどうしても確認しなければいけない事がある」
「それは何かな?」
「お前が将来的にランスの敵に回る可能性だ。魔人は魔王の命令に逆らえないから仕方が無い。が、魔人達は自発的にその事を話すようなことも無いだろう。魔王ガイもランス個人には興味を持たない。だが、お前は人間の上、それなりの立場に立つ事が出来る存在だ。そんな奴が将来ランスの敵にならない可能性は捨てきれない。端的に言えば、我はお前に真実を伝えて良いか信じる事は出来ない」
スラルは真っすぐな目でブリティシュを見る。
「…そうだね、確かにね。でも、僕がランスの敵に回るという事は無いと断言するよ」
「それは何故だ?」
「共に魔人と戦った仲間だからさ。確かに彼はいい人間とは言えないだろうが、同時に極悪非道の人間でも無い」
ブリティシュの言う通り、ランスという男は人によって好き嫌いが激しい存在だ。
だが、それは生物であれば当たり前の感情だし、ランスだってそういう好き嫌いは激しい。
ランスの場合はそれが極端で、それが人には受け入れられないという事が多いというだけだ。
「彼の目的がどんな事だろうが、結果的にそれは良い事にも繋がっている…不思議な事だよね。そして何よりも…僕が個人的に彼の事を仲間だと思っているからかな」
ブリティシュは少し照れくさそうに笑う。
「フン、言うじゃねえか。ま、あいつと一緒に魔人と戦ってんなら分かるぜ」
「確か君は魔人レキシントンと戦ったんだよね?」
「ああ。生憎と俺はそこで一度死んじまったがな」
「僕は魔人メディウサと戦った。その後で魔人カミーラと魔王ジルに会ったけど…正直戦いにはならなかったね」
あの時の恐怖は良く覚えている。
魔王ジルはそれだけ圧倒的な存在だった。
「スラルさん。私はブリティシュさんを信じても良いと思います。だってそうじゃないとランス様がブリティシュさんの同行を許可するとは思えませんし…」
「………それを言うな。ま、ランスもお前の事を拒否する姿勢を見せなかったという事は、お前は安全圏の存在で、そして何よりも自分に付いていける存在だと思っているからだろうな」
スラルは生来寄りの臆病な性格を持っている。
勿論これは無敵結界の無い魔王として生まれてしまった故の反動という事もある。
最強の生命体の魔王であろうとも、ドラゴンの王相手には負けたという事実があるのを知っている魔王だ。
それ故に魔王は無敵であるという事を神に願い、魔王と魔人は無敵結界を得るという事になった。
スラルは元魔王であり、現在はほぼ人間そのものだ。
臆病な性格は慎重な性格となり、それ故に自分達の障害になる物はなるべく排除しなければならないという思考になってしまう。
ましてやブリティシュ程の力と素質があれば人間界ではかなりの影響力を持てるだろう。
だからこそ、そのブリティシュがもし自分達の敵になれば…という事を考えてしまうのだ。
「別にいいんじゃない? ブリティシュが日光を裏切るとは思えないし」
「ははは…僕だって皆を、仲間を裏切るつもりなんて無いよ」
「スラル、お前は相変わらず気にし過ぎだぜ。ま、そういう所もお前らしいけどな」
黒部の笑いにスラルはジルの顔で苦い顔を浮かべる。
「これは生まれつきの性格だ。多分直らんよ」
「ランスの側に居るならお前くらい慎重な奴が居てもいいだろ。ランスもお前の忠告なら聞くしな」
「ランスもアレでいて色々と考えているだろうしな。単純そうに見えて結構狡猾な所も有るからな」
黒部とお町の言葉にレンも頷いて見せる。
「女に対しては本当に欲望に正直だけどね」
スラルはため息をつく。
「人間でここまでランスと関わったのは恐らくお前が初めてだ。他の奴等は魔人になったり使徒になったりしているからな…普通の人間なら寿命で死ぬから特に考える必要も無かったからな」
「考えすぎじゃない? スラルらしいとは思うけど」
「性分だ。仕方が無い」
「ともかく、僕は大丈夫だと判断してもらってもいいかな?」
「ランスもお前を否定しなかったからな。そんな奴は黒部以来だな」
「ケッ、俺よりこんな奴がいいってか?」
黒部がジロリとブリティシュを睨む。
「はは…よろしく頼むよ」
「楽しそうに話してる所申し訳ないけど、いいかい?」
「ハンティか」
スラル達が話している途中にハンティがやって来る。
「ハンティ、我から聞きたい事があるのだがいいか?」
「何だい? 答えられる範囲でなら答えるけど」
「ランスの介入を本来あまり歓迎しないお前が、今回は随分と言葉が変わると思ってな」
ハンティはスラルの指摘に苦い顔をする。
「言ってる事がコロコロと変わってるのは分かってるさ。でも、私としても正直どうすればいいか分からないんだよ」
「黒髪のカラーであるお前でもか?」
「それは関係無いだろ。今回が人類と魔軍の初めての大規模な戦争だ。私だって経験した事が無いんだ。だから何が正しいか…それが全く見えてこないのさ」
ハンティは自嘲的な笑みを浮かべる。
「ただ、アイツに何とかしてもらう以外に何も思い浮かばないのさ。正直、あの魔人の事に関してもランスが居ないとカラーは下手すればペンシルカウを出て行かなきゃいけない所だったからね」
「魔人? まさかここに魔人が来たんですか!?」
ブリティシュは驚きの声を上げる。
「ああ。その魔人はランスが倒してくれたけどね。ただ、聖魔教団にあまり関わられるのは正直躊躇ってたんだけど…でも現状はそうもいかない」
「魔人を倒した? 日光もカオスも無いのに?」
「ランス様ならば魔人を斬れます。でも、魔人にダメージを与えられるのはあくまでもランス様だけ。魔人の再生能力も無効に出来ませんから、ランス様でも魔人を相手にするのは難しいです…」
「そうか…魔人を傷つけられるのは彼だけか。なら厳しいね…」
魔人とは無敵結界を何とかしただけで倒せる程甘い存在ではない。
ブリティシュも魔人メディウサとの戦いでそれは思い知っている。
「それでそのバークスハムという魔人はどんな魔人なんだい? 僕の知らない魔人だからね」
「それはハウゼルとシルキィに聞きなさいよ。私達だってよく知らないし」
「…そうだね。それも明日になりそうだけどね」
パイアールが魔法ハウスを改造した事もあり、防音設備も完璧だ。
だからこちらにまで音が聞こえてこないのは有難い。
「魔人筆頭、か。どんな強さを持っているのか…」
魔人筆頭は魔人の中でもトップクラスに位置する存在だ。
ブリティシュも魔人筆頭だった頃のガイと共にジルに立ち向かった。
だからこそ、その強さに対して警戒を強めていた。
「ねえランス君…」
「何だ」
ハウゼルとの激しいセックスを終え息をついていたランスにシルキィは話しかける。
「バークスハムとどうしても戦わないといけないの?」
「む…」
魔人バークスハム、ランスもようやくその存在を思い出していた。
シルキィを助けるために魔王城に向かった時に戦った真っ白い人間の魔人。
ランスはその時戦ったのだが、相手は全く本気で無かったのはランスも当然気づいている。
本当にただの足止めのために立ちふさがったのであり、殺す気は全く無かったのだろう。
「彼は本当に強いわよ。でも、それ以上にバークスハムと戦う必要があるのかなって」
「そう…ですね。正直私もバークスハムがこの戦争に乗り気だとも思っていませんし…」
満ち足りた表情をして体を弛緩させていたハウゼルも起き上がる。
「そうなのよね…何でバークスハムが今更この戦いに参加したのか…それが分からないのよね」
「ランスさんの言う通り、もう結果は分かり切っていますからね…今更彼が出てくるというのは少し違和感が有ります」
「む…」
魔人の中では穏健派…戦争を好まない二人がそう言い切るので、流石のランスも驚きと共に少し考える。
「バークスハムはガイ様の決定には従うけど、この戦争に参加したのも最初の最初だけだったし」
「それ以降は全く動きませんでしたからね…何が彼を動かしているのか…」
「でもバークスハムは未来が視えている、なんて噂もあるし。もしかしたらそれが原因なのかもね…」
バークスハムに関しては謎が多い。
ただ、魔王ガイとの関係は良好で、ガイからも信頼されている。
「フン、未来が視えてようがぶっ殺せるだろ。俺様の邪魔をするならぶっ殺すだけだ」
「日光も無いのに無理に決まってるでしょ。私にはランス君は止められないけど…絶対に生きて戻って来なさいよ」
「そうですよ、ランスさん。こんな所で死んだらダメですよ。私としてもこの戦争に介入するのも本当は止めて欲しいんですから」
2人は左右からランスに抱き着く。
「がはははは! 俺様がそう簡単に死ぬ訳無いだろうが!」
そう言ってランスは再び二人に襲い掛かった。
闘神都市Θ―――
「成程、これが聖魔教団のトップクラスの力か。確かに強い…ノスが『遊ぶ』だけの事は有るか」
「…何かの嫌がらせか」
魔人バークスハムは既に闘神都市Θに乗り込んでいた。
そして闘神Θと戦いを繰り広げていた。
いや、それは戦いですら無い。
魔人には無敵結界があるので決してダメージを与えられないからだ。
だが、この魔人バークスハムは違った。
「私が戦えば確実にお前に勝つ。だが、勝つという事は未来には繋がらぬ」
「意味の分からぬ事を…!」
闘神Θはバークスハムに攻撃を仕掛けるが、バークスハムにその攻撃は当たらない。
「貴様…!」
「無敵結界とは便利なモノだが、それが有るから闘神を上回る…そう思われても困る。私の剣を避けられるという事は確かに面白いが…スノーレーザー」
バークスハムは闘神Θ向かって魔法を放つ。
それは闘神や闘将の絶対的な弱点。
ノスの攻撃を受けずに戦っていたΘであっても、魔法だけは絶対に避ける事が出来ない。
「グッ!」
「まだ落としはしない。それなりに相応しい舞台というものがある」
バークスハムは笑顔一つ見せず、真面目な顔でΘを見る。
いや、もしかしたらバークスハムは闘神Θを見てもいないのかもしれない。
その底知れない魔人の存在には闘神Θも何も言う事が出来なかった。
「私の見立てではもう少しという所か。それまで付き合ってもらおうか」
色々とあって投稿大分遅れました
GW中も忙しいんだよなあ…辛い